(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150581
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】水力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03B 15/16 20060101AFI20231005BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F03B15/16
H02P9/04 C
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059759
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須原 淳
(72)【発明者】
【氏名】久保 憲亮
【テーマコード(参考)】
3H073
5H590
【Fターム(参考)】
3H073AA02
3H073BB14
3H073BB24
3H073CC16
3H073CC26
3H073CD02
3H073CD18
3H073CE32
5H590CA11
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE01
5H590CE05
5H590EA07
5H590EB04
5H590EB21
5H590FA08
5H590FB02
5H590FC11
5H590HA02
5H590HA04
5H590HA06
5H590HA12
5H590JA02
5H590JB02
(57)【要約】
【課題】水車が設置される流路の流量を急に増減させることなく、負荷への供給電力を急に増減できるようにする。
【解決手段】発電電力を第1電力(P1)に変換してリンク部(21)に供給するAC/DCコンバータ(13)と、リンク部(21)から供給される第2電力(P2)を供給電力(PS)に変換するインバータ(14)と、リンク部(21)に接続された調整機構(30)とを備えた水力発電システム(1)において、調整機構(30)に、供給電力(PS)が増加したときに、第1電力(P1)と第2電力(P2)との差である第3電力(P3)を減少させて、調整機構(30)からリンク部(21)に調整電力を融通させ、供給電力(PS)が減少したときに、第3電力(P3)を増加させて、リンク部(21)から調整機構(30)に調整電力を融通させ、AC/DCコンバータ(13)に、調整電力が0となるよう、第1電力(P1)を調整させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる第1流路(2a)に設置された流体機械(11)と、
前記流体機械(11)によって駆動される発電機(12)と、
前記発電機(12)によって発電された発電電力を第1電力(P1)に変換してリンク部(21)に供給するコンバータ(13)と、
前記リンク部(21)から供給される第2電力(P2)を交流の供給電力(PS)に変換して負荷(7)に供給するインバータ(14,72)と、
前記リンク部(21)に接続されて、前記第1電力(P1)と前記第2電力(P2)との差である第3電力(P3)を調整する調整機構(30)と、を備えた水力発電システムであって、
前記調整機構(30)は、
前記供給電力(PS)が増加したときに、前記第3電力(P3)を減少させて、前記調整機構(30)から前記リンク部(21)に第1の調整電力を融通し、
前記供給電力(PS)が減少したときに、前記第3電力(P3)を増加させて、前記リンク部(21)から前記調整機構(30)に第2の調整電力を融通し、
前記コンバータ(13)は、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0となるよう、前記第1電力(P1)を調整する水力発電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水力発電システムにおいて、
前記第1の調整電力の最大値は、前記供給電力(PS)の予め設定された瞬時最大増加量以上であってかつ前記発電機(12)が発電できる発電電力の最大値よりも小さい水力発電システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水力発電システムにおいて、
前記第2の調整電力の最大値は、前記供給電力(PS)の予め設定された瞬時最大減少量以上であってかつ前記発電機(12)が発電できる発電電力の最大値よりも小さい水力発電システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水力発電システムにおいて、
前記調整機構(30)は、
電力消費手段(31)と、
前記リンク部(21)から前記電力消費手段(31)に流れる前記第3電力(P3)の量を制御する制御部(35,61)とを有する水力発電システム。
【請求項5】
請求項4に記載の水力発電システムにおいて、
前記調整機構(30)は、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0のとき、前記第1の調整電力の最大値以上となるよう前記第3電力(P3)を調整する水力発電システム。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水力発電システムにおいて、
前記調整機構(30)は、
蓄電池(51)と、
前記リンク部(21)の電力を前記蓄電池(51)に充電する充電モードと、前記蓄電池(51)の電力を前記リンク部(21)に供給する放電モードとを備え、前記蓄電池(51)の充放電量を制御する制御部(53,61)と
を有する水力発電システム。
【請求項7】
請求項6に記載の水力発電システムにおいて、
前記調整機構(30)は、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0のとき、0または前記蓄電池(51)の充電量を閾値以上とするのに必要な電力となるよう前記第3電力(P3)を調整する水力発電システム。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水力発電システムにおいて、
前記調整機構(30)は、
電力消費手段(31)と、
前記コンバータ(13)から前記電力消費手段(31)に流れる直流電力の量を制御する第1制御部(61)と、
蓄電池(51)と、
前記リンク部(21)の電力を前記蓄電池(51)に充電する充電モードと、前記蓄電池(51)の電力を前記リンク部(21)に供給する放電モードとを備え、前記蓄電池(51)の充放電量を制御する第2制御部(61)と
を有する水力発電システム。
【請求項9】
請求項8に記載の水力発電システムにおいて、
前記調整機構(30)は、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0のとき、0から前記第1の調整電力の最大値までの値となるよう前記第3電力(P3)を調整する水力発電システム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の水力発電システムにおいて、
前記第1流路(2a)に設けられた第1電動弁(17)と、
前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0となるように、前記第1電動弁(17)を制御する第1電動弁制御手段(19)とを備える水力発電システム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の水力発電システムにおいて、
前記第1流路(2a)と並列に設けられた第2流路(2b)に設けられた第2電動弁(18)と、
前記第1流路(2a)の流量、及び前記第2流路(2b)の流量の合計が所定の指令値になるように、前記第2電動弁(18)を制御する第2電動弁制御手段(19)と
を備える水力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体機械と、前記流体機械によって駆動される発電機とを備えた水力発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流路に設置された水車と、前記水車によって駆動される発電機と、前記発電機によって発電された発電電力を第1電力に変換してリンク部に供給する発電機制御インバータと、前記リンク部から供給される第2電力を交流の供給電力に変換して交流系統及び負荷に供給する系統連系制御インバータと、リンク部に制動ユニットを介して接続された抵抗とを備えた水力発電システムが開示されている。この水力発電システムでは、交流系統に異常が発生したときに、系統連系制御インバータと交流系統との接続を遮断し、発電機制御インバータに直流電圧一定制御、系統連系制御インバータに出力電圧一定制御を行わせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような水力発電システムを水道局が運営する上水道に設けた場合、上述のように系統連系制御インバータと交流系統との接続を遮断した自立運転状態で、負荷への供給電力が急に増減することがある。しかし、このような場合に、発電機の発電電力を供給電力の増減に追従させるために、水車が設置される流路の流量を急に増減させることが望ましくない場合がある。
【0005】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、水車が設置される流路の流量を急に増減させることなく、負荷への供給電力を急に増減できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、流体が流れる第1流路(2a)に設置された流体機械(11)と、前記流体機械(11)によって駆動される発電機(12)と、前記発電機(12)によって発電された発電電力を第1電力(P1)に変換してリンク部(21)に供給するコンバータ(13)と、前記リンク部(21)から供給される第2電力(P2)を交流の供給電力(PS)に変換して負荷(7)に供給するインバータ(14,72)と、前記リンク部(21)に接続されて、前記第1電力(P1)と前記第2電力(P2)との差である第3電力(P3)を調整する調整機構(30)と、を備えた水力発電システムであって、前記調整機構(30)は、前記供給電力(PS)が増加したときに、前記第3電力(P3)を減少させて、前記調整機構(30)から前記リンク部(21)に第1の調整電力を融通し、前記供給電力(PS)が減少したときに、前記第3電力(P3)を増加させて、前記リンク部(21)から前記調整機構(30)に第2の調整電力を融通し、前記コンバータ(13)は、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0となるよう、前記第1電力(P1)を調整する。
【0007】
第1の態様では、リンク部(21)と調整機構(30)との間で調整電力を融通することにより、流体機械(11)のトルクや回転数を急に変更することなく、負荷(7)への供給電力(PS)を急に増減させることができる。したがって、第1流路(2a)の流量を急に増減させることなく、負荷(7)への供給電力(PS)を急に増減させることができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記第1の調整電力の最大値は、前記供給電力(PS)の予め設定された瞬時最大増加量以上であってかつ前記発電機(12)が発電できる発電電力の最大値よりも小さい。
【0009】
第2の態様では、第1の調整電力の最大値を、発電機(12)が発電できる発電電力の最大値以上とした場合に比べ、調整機構(30)を小型化及び低コスト化できる。
【0010】
第3の態様は、第1又は2の態様において、前記第2の調整電力の最大値は、前記供給電力(PS)の予め設定された瞬時最大減少量以上であってかつ前記発電機(12)が発電できる発電電力の最大値よりも小さい。
【0011】
第3の態様では、第2の調整電力の最大値を、発電機(12)が発電できる発電電力の最大値以上とした場合に比べ、調整機構(30)を小型化及び低コスト化できる。
【0012】
第4の態様は、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、前記調整機構(30)は、電力消費手段(31)と、前記リンク部(21)から前記電力消費手段(31)に流れる前記第3電力(P3)の量を制御する制御部(35,61)とを有する。
【0013】
第5の態様は、第4の態様において、前記調整機構(30)は、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0のとき、前記第1の調整電力の最大値以上となるよう前記第3電力(P3)を調整する。
【0014】
第6の態様は、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、前記調整機構(30)は、蓄電池(51)と、前記リンク部(21)の電力を前記蓄電池(51)に充電する充電モードと、前記蓄電池(51)の電力を前記リンク部(21)に供給する放電モードとを備え、前記蓄電池(51)の充放電量を制御する制御部(53,61)とを有する。
【0015】
第7の態様は、第6の態様において、前記調整機構(30)は、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0のとき、0または前記蓄電池(51)の充電量を閾値以上とするのに必要な電力となるよう前記第3電力(P3)を調整する。
【0016】
第8の態様は、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、前記調整機構(30)は、電力消費手段(31)と、前記コンバータ(13)から前記電力消費手段(31)に流れる直流電力の量を制御する第1制御部(61)と、蓄電池(51)と、前記リンク部(21)の電力を前記蓄電池(51)に充電する充電モードと、前記蓄電池(51)の電力を前記リンク部(21)に供給する放電モードとを備え、前記蓄電池(51)の充放電量を制御する第2制御部(61)とを有する。
【0017】
第8の態様では、発電機(12)の発電電力が0である期間における蓄電池(51)から負荷(7)への電力供給を可能にできる。
【0018】
第9の態様は、第8の態様において、前記調整機構(30)は、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0のとき、0から前記第1の調整電力の最大値までの値となるよう前記第3電力(P3)を調整する。
【0019】
第10の態様は、第1~9の態様のいずれか1つにおいて、前記第1流路(2a)に設けられた第1電動弁(17)と、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0となるように、前記第1電動弁(17)を制御する第1電動弁制御手段(19)とを備える。
【0020】
第10の態様では、供給電力が急に増減したときに、リンク部(21)と調整機構(30)との間で調整電力を融通できるので、コンバータ(13)及び第1電動弁(17)の制御によって発電電力を急に増減させる必要がない。したがって、第1電動弁(17)の開閉速度を比較的遅く設定することにより、第1電動弁(17)の高速な開閉に起因する水撃の発生を抑制するとともに、設備コストを削減できる。
【0021】
第11の態様は、第1~10の態様のいずれか1つにおいて、前記第1流路(2a)と並列に設けられた第2流路(2b)に設けられた第2電動弁(18)と、前記第1流路(2a)の流量、及び前記第2流路(2b)の流量の合計が所定の指令値になるように、前記第2電動弁(18)を制御する第2電動弁制御手段(19)とを備える。
【0022】
第11の態様では、コンバータ(13)及び第1電動弁(17)によって第1電力が調整されることにより第1流路(2a)の流量が変化しても、第1流路(2a)の流量、及び第2流路(2b)の流量の合計を所定の指令値に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る水力発電システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、抵抗の電圧と、スイッチのオンオフ状態とを示すタイミングチャートである。
【
図3】
図3は、水力発電システムの特性マップを表したグラフである。
【
図4】
図4は、実施形態1における供給電力、抵抗の消費電力、発電電力、及び各流路の流量を表すタイミングチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態2における供給電力、蓄電池の充放電電力、発電電力、及び各流路の流量を表すタイミングチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態3における供給電力、抵抗の消費電力、蓄電池の充放電電力、発電電力、及び各流路の流量を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0025】
《実施形態1》
図1は、本開示の実施形態1に係る水力発電システム(1)を示す。この水力発電システム(1)は、流路(2)を流れる流体としての水の位置エネルギーを利用して電力を得る。流路(2)は、配水槽(3)と住宅などの水の供給対象(4)や配水池(5)との間の管路を構成している。流路(2)は、落差を有して水が流れる水路である。流路(2)は、第1流路(2a)と、第1流路(2a)と並列に設けられた第2流路(2b)と、第1流路(2a)を流れる水、及び第2流路(2b)を流れる水が合流して流れる第3流路(2c)とを含んでいる。
【0026】
水力発電システム(1)は、流体機械としての水車(11)と、発電機(12)と、AC/DCコンバータ(13)と、系統連系インバータ(14)と、調整機構(30)と、切替部(15)と、流量センサ(16)と、第1電動弁(17)と、第2電動弁(18)と、第1電動弁制御手段及び第2電動弁制御手段としての指令部(19)とを備えている。水力発電システム(1)は、発電した電力を電力系統(6)及び負荷(7)に供給できる。電力系統(6)はいわゆる商用電力である。
【0027】
水車(11)は、第1流路(2a)に設置されている。水車(11)としては、ポンプ逆転水車、プロペラ水車、クロスフロー水車、水中タービン水車、チューブラ水車、カプラン水車、ぺルトン水車、ターゴインパルス水車、フランシス水車等を用いることができる。
【0028】
発電機(12)は、回転軸(20)を介して水車(11)に連結されている。水車(11)が回転すると、水車(11)によって発電機(12)が駆動される。これにより、発電機(12)が回生運転を行う。回生運転中の発電機(12)は、電力を発生する。
【0029】
AC/DCコンバータ(13)は、コンバータ本体(13a)と、コンバータ制御部(13b)とを有している。
【0030】
コンバータ本体(13a)は、複数のスイッチング素子を備え、発電機(12)によって発電された電力(交流電力)をスイッチングして直流の第1電力(P1)に変換してリンク部(21)に供給する。コンバータ本体(13a)の出力は、リンク部(21)に接続された平滑コンデンサ(図示せず)によって平滑化され、系統連系インバータ(14)に出力される。
【0031】
コンバータ制御部(13b)は、調整機構(30)の抵抗(31)(後述)で消費される消費電力(第3電力(P3))が所定の基準電力Pst(
図4に示す)となるように、コンバータ本体(13a)のスイッチング素子のオンオフを制御することにより、発電機(12)のトルクを制御する。かかる制御は、後述する調整機構制御部(35)によって算出される消費電力の量に基づいて行われる。コンバータ制御部(13b)は、マイクロコンピュータによって構成されている。
【0032】
系統連系インバータ(14)は、インバータ本体(14a)と、インバータ制御部(14b)とを有している。
【0033】
インバータ本体(14a)は、複数のスイッチング素子を備え、リンク部(21)から供給される直流の第2電力(P2)を交流の供給電力(PS)に変換して電力系統(6)又は負荷(7)に供給する。
【0034】
インバータ制御部(14b)は、インバータ本体(14a)のスイッチング素子を制御する。インバータ制御部(14b)は、マイクロコンピュータによって構成されている。
【0035】
調整機構(30)は、リンク部(21)に接続されて、第1電力(P1)と第2電力(P2)との差である第3電力(P3)を調整(消費)する。調整機構(30)は、供給電力(PS)が増加したときに、第3電力(P3)を減少させて、調整機構(30)からリンク部(21)に第1の調整電力を融通し、供給電力(PS)が減少したときに、第3電力(P3)を増加させて、リンク部(21)から調整機構(30)に第2の調整電力を融通する。第3電力(P3)は、第1及び第2の調整電力が0のときに、所定の基準電力Pst(
図4に示す)となる。したがって、コンバータ制御部(13b)は、第1及び第2の調整電力が0となるように、コンバータ本体(13a)を制御することにより、第1電力(P1)を調整する。
【0036】
ここで、第1の調整電力の最大値は、供給電力(PS)の仕様で予め設定された瞬時最大増加量以上であって、かつ発電機(12)が発電できる発電電力の最大値よりも小さい。ここで、瞬時最大増加量は、単位時間あたりに増加可能な供給電力(PS)の量である。また、第2の調整電力の最大値は、供給電力(PS)の仕様で予め設定された瞬時最大減少量以上であって、かつ発電機(12)が発電できる発電電力の最大値よりも小さい。また、瞬時最大減少量は、単位時間あたりに減少可能な供給電力(PS)の量である。
【0037】
調整機構(30)は、電力消費手段としての抵抗(31)と、スイッチ(32)と、抵抗電流測定部(33)と、直流電圧測定部(34)と、調整機構制御部(35)とを有している。調整機構(30)の抵抗(31)、スイッチ(32)、及び調整機構制御部(35)は、共通の制御盤に設けられている。
【0038】
抵抗(31)の一端は、スイッチ(32)を介してリンク部(21)の正極に接続されている。一方、抵抗(31)の他端は、リンク部(21)の負極に接続されている。
【0039】
スイッチ(32)は、抵抗(31)とリンク部(21)との間に、抵抗(31)と直列に接続されている。
【0040】
抵抗電流測定部(33)は、抵抗(31)に流れる電流を測定する。
【0041】
直流電圧測定部(34)は、リンク部(21)の正極-負極間の電圧を測定する。
【0042】
調整機構制御部(35)は、リンク部(21)から抵抗(31)に流れる第3電力(P3)の量を制御する。具体的には、調整機構制御部(35)は、
図2に示すように、直流電圧測定部(34)によって測定された電圧が、所定の上限電圧値よりも低い状態から高い状態に遷移したときに、スイッチ(32)をオンし、所定の下限電圧値よりも高い状態から低い状態に遷移したときに、スイッチ(32)をオフする。調整機構制御部(35)は、第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0のとき、前記第1の調整電力の最大値以上となるよう第3電力(P3)を調整する。つまり、基準電力Pst(
図4に示す)は、第1の調整電力の最大値以上に設定される。
【0043】
また、調整機構制御部(35)は、抵抗電流測定部(33)によって測定された電流と、直流電圧測定部(34)によって測定された電圧とに基づいて、抵抗(31)で消費された消費電力の量、すなわち第3電力(P3)の量を算出し、コンバータ制御部(13b)に送信する。
【0044】
調整機構制御部(35)は、マイクロコンピュータによって構成される。
【0045】
切替部(15)は、系統連系インバータ(14)によって出力される供給電力(PS)を電力系統(6)と負荷(7)のいずれに供給するかを、指令部(19)からの切替指示に応じて切り替える。
【0046】
流量センサ(16)は、第3流路(2c)に流れる水の流量を測定する。第3流路(2c)に流れる水の流量は、第1流路(2a)の流量、及び前記第2流路(2b)の流量の合計である。
【0047】
第1電動弁(17)は、第1流路(2a)に設けられている。第1電動弁(17)は、指令部(19)からの第1制御信号に応じて開閉する。
【0048】
第2電動弁(18)は、第2流路(2b)に設けられている。第2電動弁(18)は、指令部(19)からの第2制御信号に応じて開閉する。
【0049】
指令部(19)は、切替指示を切替部(15)に出力することにより、切替部(15)を制御する。供給電力(PS)の供給先を電力系統(6)とした状態(発電機(12)が電力系統(6)と連系して運転する状態)で、図示しない異常検出手段によって停電等の異常が検出されると、指令部(19)は、供給電力(PS)の供給先を負荷(7)に切り替える。
【0050】
また、指令部(19)は、第1制御信号及び第2制御信号を出力することにより、第1電動弁(17)及び第2電動弁(18)を制御する。詳しくは、指令部(19)は、第3電力(P3)が所定の基準電力Pstとなるように、第1電動弁(17)を制御する。また、指令部(19)は、流量センサ(16)により測定された流量、すなわち第1流路(2a)の流量、及び第2流路(2b)の流量の合計が所定の指令値になるように、第2電動弁(18)を制御する。
【0051】
<水力発電システム及び流路の特性>
図3は、水車(11)の特性を示すグラフ(特性マップ(M)と呼ぶ)である。
図3の縦軸は、水車(11)の有効落差(H)、横軸は、水車(11)を流れる水の流量(Q)である。有効落差(H)は、配水槽(3)の液面から流路(2)の流出端までの間の落差から、配水槽(3)の水が管路を経て流路(2)の流出端に至るまでの管路抵抗に相当する落差を減じたものである。
【0052】
水車(11)の有効落差(H)及び流量(Q)の関係は、
図3に示すシステムロスカーブ(流動抵抗特性線)(S)で表すことができる。システムロスカーブ(S)は、流量(Q)の増大に伴って有効落差(H)が減少する特性を有する。
【0053】
図3の特性マップ(M)では、水車(11)における流量(Q)と有効落差(H)とに相関する特性として、発電機(12)のトルク(T)、及び発電機(12)の回転数(回転速度)(N)が表されている。
【0054】
特性マップ(M)では、発電機(12)のトルク(T)が0の曲線(無拘束特性曲線(T=0))の右側に、キャビテーションが発生しやすいキャビテーション領域と、キャビテーションが発生しにくい適切運転領域とが左側から順に形成される。特性マップ(M)上、流量(Q)の増大に応じてトルク値(T)も増大する。また、有効落差(H)が大きくなるほど回転数(N)も上昇する。システムロスカーブ(S)上においては、流量(Q)の減少に応じてトルク値(T)が減少する。また、システムロスカーブ(S)上においては、流量(Q)の増大に応じて回転数(N)が減少する。破線で示した等発電電力曲線は下に凸な曲線であって、有効落差(H)及び流量(Q)の増大に応じて発電電力も増大する。
【0055】
以上のような特性マップ(M)の各パラメータの関係は、テーブル(数表)や、プログラム内の数式(関数)という形でコンバータ制御部(13b)に記憶される。従って、コンバータ制御部(13b)は、特性マップ(M)で表される各パラメータの関係を利用することで、各種の演算や制御が可能である。
【0056】
-運転動作-
実施形態1に係る水力発電システム(1)の運転動作について、
図4を参照して説明する。
【0057】
時刻t10では、切替部(15)が、供給電力(PS)の供給先を負荷(7)とし、水力発電システム(1)は自立運転をしている。また、抵抗(31)が第3電力(P3)として所定の基準電力Pstを消費するように調整機構制御部(35)がスイッチ(32)を制御している。この状態から、時刻t11において、負荷(7)の消費電力、すなわち系統連系インバータ(14)によって出力される供給電力(PS)がステップ状に増大すると、調整機構制御部(35)の制御により、抵抗(31)の消費電力、すなわち第3電力(P3)が減少する。つまり、調整機構(30)からリンク部(21)に第3電力(P3)の減少分の電力が、第1の調整電力として融通される。
【0058】
そして、時刻t11から時刻t12の間において、AC/DCコンバータ(13)が、第1の調整電力が0となるように、すなわち、第3電力(P3)が基準電力Pstに戻るように発電機(12)の発電電力及び第1電力(P1)を増加させる(調整する)。具体的には、コンバータ制御部(13b)が、第1の調整電力が0となるように、コンバータ本体(13a)のスイッチング素子のオンオフを制御する。また、指令部(19)も、第3電力(P3)が基準電力Pstに戻るように第1電動弁(17)を制御する。このときの第1電動弁(17)の制御による第1電力(P1)の増加速度は、負荷(7)の消費電力の増加速度に比べて、ゆっくりである。このとき、調整機構制御部(35)は、所定タイミング毎に、抵抗電流測定部(33)によって測定された電流と、直流電圧測定部(34)によって測定された電圧とに基づいて、第3電力(P3)を算出し、コンバータ制御部(13b)に送信する。コンバータ制御部(13b)が、この第3電力(P3)を参照して、第3電力(P3)が基準電力Pstとなるように、コンバータ本体(13a)のスイッチング素子のオンオフを制御する。また、指令部(19)も、この第3電力(P3)を参照して、第3電力(P3)が基準電力Pstとなるように、第1電動弁(17)を制御する。これにより、第1電動弁(17)の開度が増大し、第1流路(2a)の流量が増加する。このときの第1電動弁(17)の制御による第1電力(P1)の増加速度も、負荷(7)の消費電力の増加速度に比べて、ゆっくりである。このとき、指令部(19)は、流量センサ(16)により測定された流量が所定の指令値CVになるように、第2電動弁(18)を制御するので、第2流路(2b)の流量は減少し、第3流路(2c)を流れる総流量は、所定の指定値CVに一定に維持される。時刻t11から時刻t12の間においては、水車動作点を
図3中、点Aから点Bに移動させるように、トルクと、第1電動弁(17)の開度とが制御される。このような制御により、時刻t12において、第1の調整電力が0となる。すなわち、第3電力(P3)が基準電力Pstに戻る。
【0059】
その後、時刻t13において、負荷(7)の消費電力、すなわち系統連系インバータ(14)によって出力される供給電力(PS)がステップ状に減少すると、調整機構制御部(35)の制御により、抵抗(31)の消費電力、すなわち第3電力(P3)が増加する。つまり、リンク部(21)から調整機構(30)に第3電力(P3)の増加分の電力が、第2の調整電力として融通される。
【0060】
そして、時刻t13から時刻t14の間において、AC/DCコンバータ(13)が、第2の調整電力が0となるように、すなわち、第3電力(P3)が基準電力Pstに戻るように発電機(12)の発電電力及び第1電力(P1)を減少させる(調整する)。このときの第1電動弁(17)の制御による第1電力(P1)の減少速度は、負荷(7)の消費電力の減少速度に比べて、ゆっくりである。具体的には、コンバータ制御部(13b)が、第2の調整電力が0となるように、コンバータ本体(13a)のスイッチング素子のオンオフを制御する。このとき、調整機構制御部(35)は、所定タイミング毎に、抵抗電流測定部(33)によって測定された電流と、直流電圧測定部(34)によって測定された電圧とに基づいて、第3電力(P3)を算出し、コンバータ制御部(13b)に送信する。コンバータ制御部(13b)は、この第3電力(P3)を参照して、第3電力(P3)が基準電力Pstとなるように、コンバータ本体(13a)のスイッチング素子のオンオフを制御する。また、指令部(19)も、この第3電力(P3)を参照して、第3電力(P3)が基準電力Pstとなるように、第1電動弁(17)を制御する。これにより、第1電動弁(17)の開度が低減し、第1流路(2a)の流量が減少する。このとき、指令部(19)は、流量センサ(16)により測定された流量が所定の指令値CVになるように、第2電動弁(18)を制御するので、第2流路(2b)の流量は増加し、第3流路(2c)を流れる総流量は、所定の指定値CVに一定に維持される。時刻t13から時刻t14の間においては、水車動作点を
図3中、点Bから点Aに移動させるように、トルクと、第1電動弁(17)の開度とが制御される。このとき、第1電動弁(17)の開度を一定にしたまま第1電力(P1)を減少させるには、水車動作点を、共通のシステムロスカーブ(S)上でキャリブレーション領域の点C等に移動させる必要が生じる。これに対し、本実施形態1では、トルクと、第1電動弁(17)の開度とを制御するので、水車動作点を適切運転領域に配置したまま、第1電力(P1)を減少させることができる。このような制御により、時刻t14において、第2の調整電力が0となる。すなわち、第3電力(P3)が基準電力Pstに戻る。
【0061】
このように、本実施形態1では、時刻t11及び時刻t13において、リンク部(21)と調整機構(30)との間で調整電力を融通することにより、水車(11)のトルクや回転数を急に変更することなく、負荷(7)への供給電力(PS)を急に増減させることができる。したがって、第1流路(2a)の流量を急に増減させることなく、負荷(7)への供給電力(PS)を急に増減させることができる。また、供給電力(PS)が急に増減したときに、リンク部(21)と調整機構(30)との間で調整電力を融通できるので、AC/DCコンバータ(13)及び第1電動弁(17)の制御によって発電電力を急に増減させる必要がない。したがって、トルク又は回転数の変更速度、及び第1電動弁(17)の開閉速度を比較的遅く設定することにより、流量急変に起因する水撃の発生を抑制するとともに、設備コストを削減できる。
【0062】
また、第1及び第2の調整電力の最大値を、発電機(12)が発電できる発電電力の最大値よりも小さく設定したので、第1の調整電力の最大値を、発電機(12)が発電できる発電電力の最大値以上とした場合に比べ、抵抗(31)の消費電力の最大値を小さくできる。したがって、抵抗(31)を小型化及び低コスト化できる。
【0063】
《実施形態1の変形例》
上記実施形態1では、調整機構制御部(35)が、第3電力(P3)(抵抗(31)の消費電力)の算出を、抵抗電流測定部(33)及び直流電圧測定部(34)の測定値に基づいて行ったが、直流電圧測定部(34)の測定値と、スイッチ(32)のデューティ比とに基づいて行ってもよい。第3電力(P3)をP、直流電圧測定部(34)によって測定された電圧をVdc、抵抗(31)の抵抗値をR、スイッチ(32)のオン時間をTon、オン時間とオフ時間の合計をTonoffとすると、第3電力(P3)は以下の式によって算出できる。
【0064】
P=(Vdc
2/R)*Ton/Tonoff ・・・式
《実施形態2》
図5は、本開示の実施形態2に係る水力発電システム(1)を示す。本実施形態2では、水力発電システム(1)が、直流電流測定部(41)と、直流電圧測定部(42)と、第1~第3の出力電流測定部(43a~43c)と、第1~第3の出力電圧測定部(44a~44c)とをさらに備えている。
【0065】
直流電流測定部(41)は、AC/DCコンバータ(13)の出力電流を測定する。
【0066】
直流電圧測定部(42)は、AC/DCコンバータ(13)の出力電圧を測定する。
【0067】
第1の出力電流測定部(43a)は、系統連系インバータ(14)によって出力されるu相の電流を測定する。
【0068】
第2の出力電流測定部(43b)は、系統連系インバータ(14)によって出力されるv相の電流を測定する。
【0069】
第3の出力電流測定部(43c)は、系統連系インバータ(14)によって出力されるw相の電流を測定する。
【0070】
第1の出力電圧測定部(44a)は、系統連系インバータ(14)によって出力されるu相v相間の電圧を測定する。
【0071】
第2の出力電圧測定部(44b)は、系統連系インバータ(14)によって出力されるv相w相間の電圧を測定する。
【0072】
第3の出力電圧測定部(44c)は、系統連系インバータ(14)によって出力されるw相u相間の電圧を測定する。
【0073】
また、本実施形態2では、調整機構(30)が、蓄電池(51)と、DC/DCコンバータ(52)と、充放電制御部(53)とで構成されている。
【0074】
本実施形態2では、調整機構(30)は、リンク部(21)に接続されて、第1電力(P1)と第2電力(P2)との差である第3電力(P3)を調整する。調整機構(30)は、供給電力(PS)が増加したときに、第3電力(P3)を減少させて、調整機構(30)からリンク部(21)に第1の調整電力を融通し、供給電力(PS)が減少したときに、第3電力(P3)を増加させて、リンク部(21)から調整機構(30)に第2の調整電力を融通する。
【0075】
DC/DCコンバータ(52)は、複数のスイッチング素子を有し、リンク部(21)の電力を蓄電池(51)に充電する充電動作と、蓄電池(51)の電力をリンク部(21)に供給する放電動作とを実行する。
【0076】
充放電制御部(53)は、DC/DCコンバータ(52)の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することにより、リンク部(21)の電力を蓄電池(51)に充電する充電モードと、蓄電池(51)の電力をリンク部(21)に供給する放電モードとで動作する。充放電制御部(53)は、リンク部(21)の電圧に基づいて、DC/DCコンバータ(52)の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することにより、蓄電池(51)の充放電量を制御する。本実施形態2では、充放電制御部(53)は、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0のとき、蓄電池(51)の充電量を閾値以上とするのに必要な電力となるよう第3電力(P3)を調整する。なお、充放電制御部(53)が、前記第1の調整電力及び前記第2の調整電力が0のとき、蓄電池(51)の充放電量を0とするのに必要な電力となるよう第3電力(P3)を調整するようにしてもよい。
【0077】
また、充放電制御部(53)は、直流電流測定部(41)、直流電圧測定部(42)、第1~第3の出力電流測定部(43a~43c)、及び第1~第3の出力電圧測定部(44a~44c)の測定値に基づいて、第3電力(P3)を算出する。詳しくは、充放電制御部(53)は、直流電流測定部(41)、及び直流電圧測定部(42)の測定値に基づいて、AC/DCコンバータ(13)の出力電力(第1電力(P1))を算出し、第1~第3の出力電流測定部(43a~43c)、及び第1~第3の出力電圧測定部(44a~44c)の測定値に基づいて、系統連系インバータ(14)の出力電力を算出する。そして、充放電制御部(53)は、AC/DCコンバータ(13)の出力電力と系統連系インバータ(14)の出力電力との差分に基づいて、第3電力(P3)を算出する。
【0078】
コンバータ制御部(13b)は、充放電制御部(53)により算出された第3電力(P3)を参照して、当該第3電力(P3)が所定の基準電力Pst(
図6に示す)となるように、コンバータ本体(13a)のスイッチング素子のオンオフを制御する。
【0079】
-運転動作-
実施形態2に係る水力発電システム(1)の運転動作について、
図6を参照して説明する。
【0080】
時刻t20では、切替部(15)は、供給電力(PS)の供給先を負荷(7)とし、水力発電システム(1)は自立運転をしている。また、蓄電池(51)に第3電力(P3)として所定の基準電力Pstが充電されるように充放電制御部(53)がDC/DCコンバータ(52)を制御している。この状態から、時刻t21において、負荷(7)の消費電力、すなわち系統連系インバータ(14)によって出力される供給電力(PS)が増大すると、充放電制御部(53)の制御により、蓄電池(51)の充電電力、すなわち第3電力(P3)が負の値まで減少し、蓄電池(51)は放電状態となる。つまり、調整機構(30)からリンク部(21)に第3電力(P3)の減少分の電力が、第1の調整電力として融通される。
【0081】
そして、時刻t21から時刻t22の間において、充放電制御部(53)は、所定タイミング毎に、直流電流測定部(41)、直流電圧測定部(42)、第1~第3の出力電流測定部(43a~43c)、及び第1~第3の出力電圧測定部(44a~44c)の測定値に基づいて、第3電力(P3)の量を算出し、コンバータ制御部(13b)に送信する。コンバータ制御部(13b)は、この第3電力(P3)の量を参照して、第3電力(P3)の量が基準電力Pstとなるように、コンバータ本体(13a)のスイッチング素子のオンオフを制御する。そして、実施形態1と同様に、指令部(19)により第1電動弁(17)及び第2電動弁(18)が制御され、時刻t22において、第1の調整電力が0となる。すなわち、第3電力(P3)が基準電力Pstに戻る。
【0082】
その後、時刻t23において、負荷(7)の消費電力、すなわち系統連系インバータ(14)によって出力される供給電力(PS)が減少すると、充放電制御部(53)の制御により、蓄電池(51)の充電電力、すなわち第3電力(P3)が増加する。つまり、リンク部(21)から調整機構(30)に第3電力(P3)の増加分の電力が、第2の調整電力として融通される。
【0083】
そして、時刻t23から時刻t24の間において、充放電制御部(53)は、所定タイミング毎に、直流電流測定部(41)、直流電圧測定部(42)、第1~第3の出力電流測定部(43a~43c)、及び第1~第3の出力電圧測定部(44a~44c)の測定値に基づいて、第3電力(P3)の量を算出し、コンバータ制御部(13b)に送信する。コンバータ制御部(13b)は、この第3電力(P3)の量を参照して、第3電力(P3)の量が基準電力Pstとなるように、コンバータ本体(13a)のスイッチング素子のオンオフを制御する。そして、実施形態1と同様に、第1電動弁(17)が制御され、時刻t24において、第2の調整電力が0となる。すなわち、第3電力(P3)が基準電力Pstに戻る。
【0084】
その他の構成及び動作は、実施形態1と同じであるので同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0085】
したがって、本実施形態2によれば、第1及び第2の調整電力の最大値を、発電機(12)が発電できる発電電力の最大値よりも小さく設定したので、第1の調整電力の最大値を、発電機(12)が発電できる発電電力の最大値以上とした場合に比べ、蓄電池(51)の容量を小さくできる。したがって、蓄電池(51)を小型化及び低コスト化できる。
【0086】
《実施形態3》
図7は、本開示の実施形態3に係る水力発電システム(1)を示す。本実施形態3では、調整機構(30)が、実施形態1の抵抗(31)及びスイッチ(32)をさらに備えている。また、充放電制御部(53)に代えて、第1制御部及び第2制御部としての調整電力制御部(61)を備えている。
【0087】
調整電力制御部(61)は、リンク部(21)から抵抗(31)に流れる前記第3電力(P3)の量を制御する。つまり、調整電力制御部(61)は、AC/DCコンバータ(13)から抵抗(31)に流れる直流電力の量を制御する。調整電力制御部(61)は、具体的には、実施形態1の調整機構制御部(35)と同様に、直流電圧測定部(34)によって測定された抵抗(31)の電圧が、所定の上限電圧値よりも低い状態から高い状態に遷移したときに、スイッチ(32)をオンし、所定の下限電圧値よりも高い状態から低い状態に遷移したときに、スイッチ(32)をオフする。
【0088】
また、調整電力制御部(61)は、実施形態2の充放電制御部(53)と同様に、DC/DCコンバータ(52)の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することにより、リンク部(21)の電力を蓄電池(51)に充電する充電モードと、蓄電池(51)の電力をリンク部(21)に供給する放電モードとで動作する。充放電制御部(53)は、リンク部(21)の電圧に基づいて、DC/DCコンバータ(52)の複数のスイッチング素子のオンオフを制御することにより、蓄電池(51)の充放電量を制御する。
【0089】
調整電力制御部(61)は、第1の調整電力及び第2の調整電力が0のとき、0から前記第1の調整電力の最大値までの値となるよう第3電力(P3)を調整する。
【0090】
また、調整電力制御部(61)は、実施形態2の充放電制御部(53)と同様に、第3電力(P3)を算出する。
【0091】
-運転動作-
実施形態3に係る水力発電システム(1)の運転動作について、
図8を参照して説明する。
【0092】
時刻t30から時刻t34において、水力発電システム(1)の調整電力制御部(61)は、実施形態1の時刻t10から時刻t14における調整機構制御部(35)と同様に動作する。時刻t30から時刻t34では、調整電力制御部(61)は、第1の調整電力及び第2の調整電力が0のとき、第1の調整電力の最大値となるよう第3電力(P3)を調整する。
【0093】
その後、時刻t35から時刻t36において、指令部(19)が流量の指令値CVを徐々に0まで低減させると、第1電動弁(17)及び第2電動弁(18)の開度も低減し、発電電力も0まで減少する。これにより、抵抗(31)で消費される電力、すなわち第3電力(P3)も0まで減少する。
【0094】
その後、時刻t37で、負荷(7)の消費電力、すなわち系統連系インバータ(14)によって出力される供給電力(PS)が増大すると、調整電力制御部(61)は、充放電制御部(53)の制御により、蓄電池(51)の放電電力を増やす。つまり、調整機構(30)からリンク部(21)に第3電力(P3)の0からの減少分の電力が、第1の調整電力として融通される。時刻t36以降では、調整電力制御部(61)は、第1の調整電力及び第2の調整電力が0のとき、第3電力(P3)を0となるよう調整する。
【0095】
このように、本実施形態3では、発電機(12)の発電電力が0である期間にも、蓄電池(51)から負荷(7)に電力を供給できる。
【0096】
その他の構成及び動作は、実施形態2と同じであるので同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0097】
《実施形態4》
図9は、本開示の実施形態4に係る水力発電システム(1)を示す。本実施形態4では、水力発電システム(1)が、インバータ切替部(71)及び負荷用インバータ(72)を備え、切替部(15)を備えていない。
【0098】
インバータ切替部(71)は、リンク部(21)から供給される第2電力(P2)を、系統連系インバータ(14)と負荷用インバータ(72)の両方に出力するか、系統連系インバータ(14)だけに出力するか、又は負荷用インバータ(72)だけに出力するかを、指令部(19)からの切替指示に応じて切り替える。
【0099】
指令部(19)は、切替指示をインバータ切替部(71)に出力することにより、インバータ切替部(71)を制御する。第2電力(P2)の出力先を系統連系インバータ(14)にした状態(発電機(12)が電力系統(6)と連系して運転する状態)で、図示しない異常検出手段によって停電等の異常が検出されると、指令部(19)は、第2電力(P2)の出力先を負荷用インバータ(72)に切り替える。負荷用インバータ(72)は系統連系インバータ(14)と同様の構成を有している。
【0100】
その他の構成及び動作は、実施形態1と同じであるので同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0101】
《その他の実施形態》
上記実施形態1~4、及び実施形態1の変形例では、水力発電システム(1)に、第3流路(2c)に流れる水の流量を測定する流量センサ(16)を設けたが、第1流路(2a)に流れる水の流量を測定する流量センサと、第2流路(2b)に流れる水の流量を測定する流量センサとを設けてもよい。そして、これら2つの流量センサによって測定された流量の合計に基づいて、指令部(19)が第2電動弁(18)を制御するようにしてもよい。
【0102】
また、上記実施形態1~4、及び実施形態1の変形例では、コンバータ制御部(13b)が、コンバータ本体(13a)のスイッチング素子のオンオフを制御することにより、発電機(12)のトルクを制御したが、トルクに代えて回転数を制御するようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施形態1,4、及び実施形態1の変形例では、調整機構制御部(35)を、抵抗(31)と共通の制御盤に設けたが、調整機構制御部(35)の機能を、コンバータ制御部(13b)を構成するマイクロコンピュータ、インバータ制御部(14b)を構成するマイクロコンピュータ、又は指令部(19)に設けてもよい。
【0104】
また、上記実施形態1~4、及び実施形態1の変形例では、第1電動弁(17)及び第2電動弁(18)の制御を指令部(19)に実行させたが、コンバータ制御部(13b)を構成するマイクロコンピュータに実行させてもよい。
【0105】
また、上記実施形態1、4においても、上記実施形態2と同様に、第3電力(P3)が、直流電流測定部(41)、直流電圧測定部(42)、第1~第3の出力電流測定部(43a~43c)、及び第1~第3の出力電圧測定部(44a~44c)の測定値に基づいて算出されてもよい。
【0106】
また、上記実施形態1~4において、AC/DCコンバータ(13)に入力されるu相、v相、w相の電圧及び電流を測定する測定手段を設けてもよい。そして、第3電力(P3)が、AC/DCコンバータ(13)に入力される入力電力と、実施形態2の方法で算出された系統連系インバータ(14)の出力電力との差分に基づいて算出されるようにしてもよい。
【0107】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0108】
以上説明したように、本開示は、流体機械と、前記流体機械によって駆動される発電機とを備えた水力発電システムとして有用である。
【符号の説明】
【0109】
1 水力発電システム
2a 第1流路
2b 第2流路
7 負荷
11 水車(流体機械)
12 発電機
13 AC/DCコンバータ
14 系統連系インバータ
17 第1電動弁
18 第2電動弁
19 指令部
21 リンク部
30 調整機構
31 抵抗(電力消費手段)
35 調整機構制御部
51 蓄電池
53 充放電制御部
61 調整電力制御部
72 負荷用インバータ