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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150582
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】農作物の蔓切断装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 23/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A01D23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059760
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】黒原 孝仁
(72)【発明者】
【氏名】萩原 智恵
【テーマコード(参考)】
2B072
【Fターム(参考)】
2B072AA02
2B072DA20
(57)【要約】
【課題】農作物の蔓を切断するときに、切断力を確実に蔓に伝えることが可能であって、蔓を良好に切断することができる農作物の蔓切断装置を提供すること。
【解決手段】農作物の蔓切断装置は、圃場を移動しながら蔓を切断する蔓切断装置であって、蔓を起こして受ける蔓受け部材と、前記蔓受け部材で受けられた蔓を切断する切断刃と、を備えている。蔓受け部材は、切断刃で切断される蔓の切断部の両側を受けることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を移動しながら蔓を切断する蔓切断装置であって、
蔓を起こして受ける蔓受け部材と、
前記蔓受け部材で受けられた蔓を切断する切断刃と、
を備えている農作物の蔓切断装置。
【請求項2】
前記蔓受け部材は、前記切断刃で切断される蔓の切断部の両側を受ける請求項1に記載の蔓切断装置。
【請求項3】
前記蔓受け部材は、前記移動に伴って切断前の蔓を上方に案内する案内部を有している請求項1又は2に記載の蔓切断装置。
【請求項4】
前記蔓受け部材は、当該蔓受け部材で受けられた蔓を保持する保持部を有している請求項1~3のいずれか1項に記載の蔓切断装置。
【請求項5】
前記蔓受け部材の下端には、前方に向けて尖った尖先部が形成されており、
前記案内部は、前記尖先部から前記保持部に向けて蔓を案内する請求項3を引用する請求項4に記載の蔓切断装置。
【請求項6】
前記案内部は、前方から後方に向かうにつれて上方に移行する第1傾斜面を有し、
前記第1傾斜面の下端に前記尖先部が設けられ、前記第1傾斜面の上端に前記保持部が設けられている請求項5に記載の蔓切断装置。
【請求項7】
前記蔓受け部材は、後方から前方に向かうにつれて上方に移行する第2傾斜面を有し、
前記保持部は、前記第1傾斜面の上端と前記第2傾斜面の下端との間に設けられ、
前記第1傾斜面と前記第2傾斜面は、前記保持部を介してV字状に繋がっている請求項6に記載の蔓切断装置。
【請求項8】
前記保持部は、前記第1傾斜面の上端と前記第2傾斜面の下端との間において後方に向けて凹んで形成されている請求項7に記載の蔓切断装置。
【請求項9】
前記移動の方向と直交する幅方向に隙間をあけて並設され且つ互いに連結された一対の前記蔓受け部材から構成される蔓受け構造体を備え、
前記一対の蔓受け部材の一方は、前記切断部の両側のうちの一方側を受け、
前記一対の蔓受け部材の他方は、前記切断部の両側のうちの他方側を受け、
前記切断刃は、前記一対の蔓受け部材の隙間を通って移動する請求項2に記載の蔓切断装置。
【請求項10】
前記蔓受け構造体は、互いに平行に対向して配置された2枚の平板状の前記蔓受け部材から構成されている請求項9に記載の蔓切断装置。
【請求項11】
前記移動の方向と直交する幅方向に延伸し且つ軸心回りに回転する回転軸を備え、
前記切断刃は、前記回転軸に取り付けられており、前記回転軸と共に前記軸心回りに回転して前記蔓受け部材で受けられた蔓を切断する請求項1~10のいずれか1項に記載の蔓切断装置。
【請求項12】
前記蔓受け部材は、前記回転軸の延伸方向に沿って間隔をあけて複数設けられており、
複数の前記切断刃は、前記延伸方向において、複数の前記蔓受け部材の夫々に対応する位置に配置されている請求項11に記載の蔓切断装置。
【請求項13】
前記回転軸の軸心方向から見たとき、前記保持部は、前記切断刃の先端の回転軌跡の内側に位置し、前記尖先部は、前記切断刃の先端の回転軌跡の外側に位置している請求項5を引用する請求項11又は12に記載の蔓切断装置。
【請求項14】
前記回転軸及び前記切断刃の上方を覆うカバーを備え、
前記蔓受け部材は、前記カバーに固定されて前記回転軸の前方に配置されている請求項11~13のいずれか1項に記載の蔓切断装置。
【請求項15】
走行車両に対して着脱可能に連結される連結部を備え、
前記回転軸は、前記走行車両から伝達される動力により回転する請求項11~14のいずれか1項に記載の蔓切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を移動しながら農作物の蔓を切断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農作物の蔓を切断する装置として、特許文献1に開示された蔓切断装置が知られている。
特許文献1に開示された蔓切断装置は、畝に植えられた甘薯の蔓を、左右一対のタインが平面回動する掻込装置で掻い込み、機体の両側に設けられた蔓切断装置で切断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-192008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された蔓切断装置は、切断装置により蔓を切断する際に、蔓を他の部材で受けることなく切断するため、切断力を確実に蔓に伝えることが難しく、蔓を良好に切断できない場合があった。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、切断力を確実に蔓に伝えることが可能であって、蔓を良好に切断することができる農作物の蔓切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が上記課題を解決するために講じた技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
農作物の蔓切断装置は、圃場を移動しながら蔓を切断する蔓切断装置であって、蔓を起こして受ける蔓受け部材と、前記蔓受け部材で受けられた蔓を切断する切断刃と、を備えている。
好ましくは、前記蔓受け部材は、前記切断刃で切断される蔓の切断部の両側を受ける。
【0006】
好ましくは、前記蔓受け部材は、前記移動に伴って切断前の蔓を上方に案内する案内部を有している。
好ましくは、前記蔓受け部材は、当該蔓受け部材で受けられた蔓を保持する保持部を有している。
好ましくは、前記蔓受け部材の下端には、前方に向けて尖った尖先部が形成されており、前記案内部は、前記尖先部から前記保持部に向けて蔓を案内する。
【0007】
好ましくは、前記案内部は、前方から後方に向かうにつれて上方に移行する第1傾斜面を有し、前記第1傾斜面の下端に前記尖先部が設けられ、前記第1傾斜面の上端に前記保持部が設けられている。
好ましくは、前記蔓受け部材は、後方から前方に向かうにつれて上方に移行する第2傾斜面を有し、前記保持部は、前記第1傾斜面の上端と前記第2傾斜面の下端との間に設けられ、前記第1傾斜面と前記第2傾斜面は、前記保持部を介してV字状に繋がっている。
【0008】
好ましくは、前記保持部は、前記第1傾斜面の上端と前記第2傾斜面の下端との間において後方に向けて凹んで形成されている。
好ましくは、前記移動の方向と直交する幅方向に隙間をあけて並設され且つ互いに連結された一対の前記蔓受け部材から構成される蔓受け構造体を備え、前記一対の蔓受け部材の一方は、前記切断部の両側のうちの一方側を受け、前記一対の蔓受け部材の他方は、前記切断部の両側のうちの他方側を受け、前記切断刃は、前記一対の蔓受け部材の隙間を通って移動する。
【0009】
好ましくは、前記蔓受け構造体は、互いに平行に対向して配置された2枚の平板状の前記蔓受け部材から構成されている。
好ましくは、前記移動の方向と直交する幅方向に延伸し且つ軸心回りに回転する回転軸を備え、前記切断刃は、前記回転軸に取り付けられており、前記回転軸と共に前記軸心回りに回転して前記蔓受け部材で受けられた蔓を切断する。
【0010】
好ましくは、前記蔓受け部材は、前記回転軸の延伸方向に沿って間隔をあけて複数設けられており、複数の前記切断刃は、前記延伸方向において、複数の前記蔓受け部材の夫々に対応する位置に配置されている。
好ましくは、前記回転軸の軸心方向から見たとき、前記保持部は、前記切断刃の先端の回転軌跡の内側に位置し、前記尖先部は、前記切断刃の先端の回転軌跡の外側に位置している。
【0011】
好ましくは、前記回転軸及び前記切断刃の上方を覆うカバーを備え、前記蔓受け部材は、前記カバーに固定されて前記回転軸の前方に配置されている。
好ましくは、走行車両に対して着脱可能に連結される連結部を備え、前記回転軸は、前記走行車両から伝達される動力により回転する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る農作物の蔓切断装置によれば、蔓受け部材によって蔓を起こして受け、蔓受け部材で受けられた蔓を切断刃により切断することができるため、切断力を確実に蔓に伝えることが可能となり、蔓を良好に切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】蔓切断装置を走行車両の後部に装着した状態を示す側面図である。
図2】蔓切断装置の要部を示す一部断面背面図であって、蔓切断装置の下図を背面図で示し、上部を平面図に展開して示している。
図3】蔓切断装置の要部を示す側面図である。
図4】回転軸、蔓受け構造体、切断刃、横杆等を示す背面図である。
図5A】蔓受け部材の第一実施形態を示す側面図である。
図5B】保持部を有さない蔓受け部材(蔓受け部材の変形例)を示す側面図である。
図6】蔓受け構造体、横杆等を示す正面図である。
図7】蔓受け部材の第二実施形態を示す側面図である。
図8】蔓受け部材の第三実施形態を示す側面図である。
図9】回転軸、切断刃等を示す背面断面図である。
図10】回転軸、切断刃等を示す側面図である。
図11】蔓受け構造体で蔓を受けている状態を示す正面図である。
図12】複数の蔓受け構造体で蔓を受けている状態を示す正面図である。
図13】蔓切断装置の作用(動作)を示す側面図である。
図14】蔓切断装置の作用(動作)を示す側面図である。
図15】蔓切断装置の作用(動作)を示す側面図である。
図16】蔓切断装置及び土壌消毒装置を備えた作業機の側面図である。
図17】蔓受け構造体と注入部との位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る農作物の蔓切断装置の実施形態について説明する。
本発明に係る蔓切断装置は、さつまいも(甘藷)の蔓を切断するための装置として好適に用いられるが、他の農作物の蔓(例えば、スイカの蔓やメロンの蔓など)を切断するために用いることも可能である。本発明に係る蔓切断装置は、主として、地表面に沿って伸びた蔓や地中で伸びた蔓を切断するために好適に用いられる。また、本発明に係る蔓切断装置は、収穫が終わった後の農作物の蔓を切断するために好適に用いられる。
【0015】
本発明に係る蔓切断装置は、圃場を移動しながら蔓を切断する蔓切断装置である。図1に示すように、本実施形態の蔓切断装置1は、走行車両2の後方に装着され、走行車両2に牽引されて圃場を移動する。但し、蔓切断装置1は、走行車両2の前方や側方に装着されるものであってもよい。走行車両2の種類は特に限定されないが、本実施形態の場合、走行車両2はトラクタである。
【0016】
走行車両(トラクタ)2は、車体3と走行装置4とを備えている。走行装置4は、前輪(不図示)と後輪4Rとを有している。走行装置4は、車体3を走行可能に支持している。車体3には、走行装置4等に動力を供給する原動機(不図示)が搭載されている。車体3の後部には、原動機からの動力を外部に取り出すためのPTO軸5が突出している。
車体3の後部には、蔓切断装置1等の作業装置を連結するための連結機構6が設けられている。連結機構6は、3点リンク機構から構成されている。3点リンク機構は、トップリンク6a、ロアリンク6b、リフトロッド6c、リフトシリンダ(不図示)を有している。連結機構6は、リフトシリンダの駆動によって、当該連結機構6に連結された作業装置(蔓切断装置1等)を車体3に対して昇降することができる。
【0017】
図1図2に示すように、蔓切断装置1は、機枠10を有している。機枠10は、ギヤケース11、サポートアーム12、伝動ケース13、サイドフレーム14を有している。図2に示すように、ギヤケース11は、機枠10の幅方向(左右方向)の中央部に配置されている。以下、機枠10の幅方向を「機幅方向」という。サポートアーム12は、ギヤケース11から左方と右方に夫々突出している。伝動ケース13は、一方(左側)のサポートアーム12の外端に取り付けられている。サイドフレーム14は、他方(右側)のサポートアーム12の外端に取り付けられている。
【0018】
ギヤケース11には、PIC軸15が設けられている。PIC軸15は、ギヤケース11から前方に突出している。PIC軸15には、走行車両2のPTO軸5からユニバーサルジョイント16を介して回転動力が伝達される。PIC軸15に伝達された動力は、ギヤケース11内のギヤ伝動機構17、サポートアーム12内の伝動軸18及び伝動ケース13内のチェーン伝動機構19を介して、回転体20に伝達される。回転体20には、回転軸21が接続されている。回転軸21は、回転体20から伝達される動力によって回転する。このように、回転軸21は、走行車両2から伝達される動力により回転する。
【0019】
図2に示すように、回転軸21は、機幅方向に延びている。言い換えれば、回転軸21は、蔓切断装置1の移動の方向(前方向)と直交する幅方向(左右方向)に延伸している。回転軸21は、機幅方向に延びる軸心回りに回転する。図3に矢印A1で示すように、回転軸21は、回転軸21の前側が上方から下方に向かうように回転する。
図1に示すように、機枠10には、連結ブラケット22及びマスト23が設けられている。連結ブラケット22には、3点リンク機構のロアリンク6bの後端が連結されている。マスト23には、3点リンク機構のトップリンク6aの後端が連結されている。連結ブラケット22及びマスト23は、走行車両2に対して連結される蔓切断装置1の連結部を構成している。
【0020】
蔓切断装置1は、連結部を走行車両2に対して着脱することによって、走行車両2に対して着脱可能である。蔓切断装置1は、走行車両2に装着されることによって、走行車両2と共に圃場を移動することができる。蔓切断装置1を使用しないときには、走行車両2から取り外すことができる。
図1図4に示すように、蔓切断装置1は、蔓受け部材30と切断刃40とを備えている。蔓受け部材30は、蔓を起こして受ける部材である。切断刃40は、蔓受け部材30で受けられた蔓を切断する。
【0021】
蔓受け部材30は、蔓切断装置1の移動に伴って、地表面に沿って伸びた蔓や地中に伸びた蔓を地表面又は地中から離れた状態とする動作(起こし動作)と、地表面又は地中から離れた状態となった蔓を支える動作(受け動作)を行う。
図3図5Aに示すように、蔓受け部材30は、尖先部31と、案内部32と、保持部33とを有している。
【0022】
尖先部31は、蔓受け部材30の下端に形成されている。尖先部31は、前方に向けて尖っている。つまり、尖先部31は、前方に向かうにつれて細くなる先細り形状となっている。言い換えれば、尖先部31は、側面視において、先端が前方を向いた鋭角状に形成されている。本実施形態の場合、尖先部31の先端には、小さいアール(円弧状部分)が形成されている。
【0023】
尖先部31は、前方に向けて尖っている(先細り形状となっている)ことにより、蔓切断装置1の移動に伴って蔓の下方に入り込んで蔓を起こすことができる。蔓が地中で伸びている場合、尖先部31は地表面よりも下方に配置される。これにより、地中で伸びている蔓を地中から上方に起こすことができる。蔓が地表面に沿って伸びている場合、尖先部31は地表面に沿って配置される。これにより、地表面に沿って伸びている蔓を地表面から上方に起こすことができる。
【0024】
案内部32は、切断前の蔓を上方に案内する。具体的には、案内部32は、切断刃40により切断される前の蔓を、尖先部31から保持部33に向けて案内する。より詳しくは、案内部32は、蔓切断装置1の移動に伴って、尖先部31により起こされた切断前の蔓を、尖先部31よりも上方にある保持部33に向けて案内する。
案内部32は、前方から後方に向かうにつれて上方に移行する第1傾斜面34を有している。図3図5Aに示すように、第1傾斜面34は、側面視にて直線状に形成されている。図1に示すように、第1傾斜面34は、地表面(水平面)GLに対して傾斜している。第1傾斜面34の地表面(水平面)GLに対する傾斜角は鋭角である。地表面GLに対する傾斜角の具体的な角度は、蔓の太さや種類等に応じて設定されるが、例えば30°~45°の範囲の角度に設定することができる。
【0025】
図3図5Aに示すように、第1傾斜面34の下端に尖先部31が設けられ、第1傾斜面34の上端に保持部33が設けられている。尖先部31により起こされた切断前の蔓は、蔓切断装置1の移動(前進)に伴って、第1傾斜面34に沿って移動することにより上昇し、保持部33に導かれる。
上述した尖先部31と案内部32は、蔓受け部材30の下部位30Aを構成している。下部位30Aの側面視形状は、上方に向かうにつれて次第に太くなる(前後方向の幅が広くなる)ように形成されている。蔓受け部材30は、下部位30Aに加えて、下部位30Aの上方に位置する上部位30Bを有している。上部位30Bの側面視形状も、上方に向かうにつれて次第に太くなる(前後方向の幅が広くなる)ように形成されている。保持部33は、下部位30Aと上部位30Bとの境界部に設けられている。
【0026】
蔓受け部材30の上部位30Bは、後方から前方に向かうにつれて上方に移行する第2傾斜面35を有している。つまり、第2傾斜面35は、第1傾斜面34とは反対の向きに傾斜している。図3図5Aに示すように、第2傾斜面35も、第1傾斜面34と同様に、側面視にて直線状に形成されている。また、図1に示すように、第2傾斜面35は、地表面(水平面)GLに対して傾斜している。第2傾斜面35の地表面(水平面)GLに対する傾斜角は鋭角である。地表面GLに対する傾斜角の具体的な角度は、蔓の太さや種類等に応じて設定されるが、例えば30°~45°の範囲の角度に設定することができる。本実施形態の場合、第2傾斜面35の傾斜角度は、第1傾斜面34の傾斜角度よりも大きく設定されている。
【0027】
図5Aに示すように、上部位30Bの上部には、取付部36が設けられている。図3図4図6に示すように、取付部36には、後述する取付体54が取り付けられる。取付部36は、貫通孔36aを有している。この貫通孔36aと取付体54に設けられた孔にボルトBL1を挿通し、ボルトBL1にナットを螺合することにより、取付部36が取付体54に取り付けられる。
取付体54は、後述するカバー50に取り付けられる。これにより、蔓受け部材30がカバー50に対して固定される。図1図3に示すように、蔓受け部材30は、カバー50の前部に固定されて回転軸21の前方に配置されている。蔓受け部材30は、カバー50に対して着脱可能である。
【0028】
図3図5Aに示すように、保持部33は、第1傾斜面34の上端と第2傾斜面35の下端との間に設けられている。第1傾斜面34と第2傾斜面35は、保持部33を介してV字状に繋がっている。保持部33は、第1傾斜面34の上端と第2傾斜面35の下端との間において後方に向けて凹んで形成されている。つまり、保持部33は、第1傾斜面34の上端と第2傾斜面35の下端との間に形成された凹みから構成されている。保持部33は、蔓受け部材30で受けられた蔓を保持する。具体的には、保持部33は、蔓受け部材30で受けられた蔓を上方と下方と後方の三方から囲んで保持する。言い換えれば、蔓は、保持部33を構成する凹みに嵌まり込んで保持される。
【0029】
図5Aに示すように、保持部33を構成する凹みは、第1部位33aと第2部位33bとを有している。第1部位33aは、地表面GLに対して略平行な面(略水平面)であり、第1傾斜面34の上端から後方に延びている。第1部位33aと第1傾斜面34との境界部は、側面視にて180度未満の角を形成している。本実施形態の場合、第1部位33aと第1傾斜面34との境界部は、側面視にて鈍角を形成しているが、直角又は鋭角を形成していてもよい。第2部位33bは、後下方に向けて膨らむ円弧状の面である。第2部位33bは、一端部(下端部)が第1部位33aの後端と連続し、他端部(上端部)が第2傾斜面35の下端と連続している。
【0030】
保持部33に蔓を確実に保持するために、第1部位33aの長さは、切断対象となる蔓の太さ(直径)よりも長く設定することが好ましい。また、第2部位33bの円弧の半径は、切断対象となる蔓の半径以上に設定することが好ましい。また、第1部位33aの長さは、第2部位33bの円弧の半径よりも大きく設定することが好ましい。各部位の寸法は、特に限定されず、切断対象となる蔓の太さに応じて適宜設定される。一例として、切断対象となる蔓の直径が約3mmの場合、第1部位33aの長さは10mm以上、第2部位33bの円弧の半径は5mm以上に設定される。
【0031】
図15に示すように、保持部33は、第1傾斜面34により上方に案内された蔓を保持し且つ蔓の切断時において切断刃40から作用する力を受ける構成である。つまり、保持部33は、蔓を保持する機能と切断時に蔓を受ける機能とを兼ね備えている。後述の如く回転する切断刃40が第1傾斜面34に最も接近した状態(図15参照)では、保持部33は切断刃40の先端部よりも基端部側に位置していて、側面視において保持部33と切断刃40とは上下方向で重複する位置にある。
【0032】
このように、保持部33が蔓を保持し且つ切断刃30から作用する力を受けることができるため、蔓の切断時において、蔓が切断刃40から逃げる(切断刃40に押されて動く)ことを防止することができる。そのため、切断刃40の切断力を確実に蔓に伝えることが可能となり、蔓を良好に切断することができる。
このように、蔓受け部材30は、蔓を保持する機能と蔓を受ける機能とを兼ね備えた保持部33を有することによって、蔓を良好に切断することができる。そのため、蔓受け部材30は、蔓を保持する保持部33を有することが好ましい。但し、蔓受け部材30は、保持部33を有さないものであってもよい。
【0033】
図5Bは、保持部33を有さない蔓受け部材30の一例を示す図である。図5Aに示すように、保持部33を有する蔓受け部材30は第1傾斜面34と第2傾斜面35との間に保持部33を構成する凹みが設けられている。つまり、第1傾斜面34の上端と第2傾斜面35の下端とが凹みから構成される保持部33を介して繋がっている。これに対して、図5Bに示すように、保持部33を有さない蔓受け部材30は、第1傾斜面34と第2傾斜面35との間に保持部33を構成する凹みが設けられていない。そのため、第1傾斜面34の上端と第2傾斜面35の下端とは、直接(凹みから構成される保持部33を介さずに)繋がっている。
【0034】
蔓受け部材30が保持部33を有さない形態(図5B参照)である場合、蔓は、第1傾斜面34と第2傾斜面35との境界に形成されるV字状の屈曲部に位置した状態で切断される。この場合、蔓受け部材30は、第1傾斜面34の上端付近(第2傾斜面35に近い部分)において、蔓の切断時に切断刃40から作用する力を受けることができる。つまり、保持部33を有さない蔓受け部材30の場合、保持部33に代わって第1傾斜面34が蔓を受ける機能を発揮することができる。
【0035】
図3図5A図5Bに示すように、蔓受け部材30の下部には、前後方向に直線状に延びる水平面37が形成されている。水平面37は、地表面に沿って伸びた蔓を切断する場合は、地表面に接地させて使用することができる。また、水平面37は、地中に伸びた蔓を切断する場合は、地中に埋没した状態で使用することができる。これにより、蔓を切断刃40により切断するときに、蔓受け部材30が切断刃40から受ける力を、水平面37を介して地表面や地中の土壌で受けることができる。
【0036】
図1図3図5A図5Bに示した蔓受け部材30は、側面視の形状が全体としてV字状であるが、蔓受け部材30の形状はこれに限定されない。蔓受け部材30は、例えば、図7図8に示す形状とすることができる。尚、図1図3図5A図5B図7図8において、符号BL4で示される部材は、蔓受け部材30により後述する蔓受け構造体60を構成した場合に用いられるボルトである。
【0037】
図7は蔓受け部材30の別の実施形態(第二実施形態)を示す側面図であり、図8は蔓受け部材30の更に別の実施形態(第三実施形態)を示す側面図である。以下、これらの実施形態の蔓受け部材30について、上述した実施形態(第一実施形態)の蔓受け部材30と異なる構成を説明し、第一実施形態の蔓受け部材30と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0038】
図7に示すように、第二実施形態の蔓受け部材30は、下部位30Aの側面視の形状が、先端(尖先部31)が鋭角状の略三角形に形成されている。第二実施形態の蔓受け部材30は、第一実施形態の蔓受け部材30と比べて、水平面37がより長く、下部位30Aの幅(上下方向の幅)がより広く形成されている。
第二実施形態の蔓受け部材30は、第一実施形態の蔓受け部材30と比べて、下部位30Aの幅が広いため、剛性(強度)が高いという点で優れている。一方、第一実施形態の蔓受け部材30は、第二実施形態の蔓受け部材30と比べて、軽量であるという点で優れている。
【0039】
図8に示すように、第三実施形態の蔓受け部材30は、第二実施形態の蔓受け部材30の下部位30Aに切り欠き部38を設けた形状を有している。切り欠き部38は、下部位30Aの後縁を前方に向けて円弧状に切り欠いて形成されている。
第三実施形態の蔓受け部材30は、第一実施形態の蔓受け部材30と比べて、下部位30Aの幅が広いため、剛性(強度)が高いという点で優れている。また、切り欠き部38を有するため、第二実施形態の蔓受け部材30と比べて、軽量であるという点で優れている。
【0040】
上述した実施形態(第一、第二、第三実施形態)の蔓受け部材30は、下部位30Aを構成する尖先部31及び案内部32と、保持部33と、上部位30Bとが一体に形成されている。つまり、蔓受け部材30は、単一の部材から構成されている。しかし、蔓受け部材30は、複数の部材を組み合わせて構成してもよい。例えば、上部位30Bと下部位30Aとを別の部材から構成して組み合わせるようにしてもよい。
【0041】
図1図4図9図10に示すように、切断刃40は、回転軸21に取り付けられている。切断刃40は、回転軸21と共に回転軸21の軸心回りに回転する。切断刃40は、回転することにより、蔓受け部材30で受けられた蔓を切断する。切断刃40は、回転軸21の延伸方向(機幅方向)において、蔓受け部材30と対応する位置に設けられている(図2参照)。蔓受け部材30と対応する位置は、蔓受け部材30で受けられた蔓を切断刃40が切断可能な位置である。
【0042】
図3に示すように、回転軸21の軸心方向から見たとき、蔓受け部材30の保持部33は、切断刃40の先端の回転軌跡R1の内側に位置する。これにより、保持部33に保持された蔓を、切断刃40により確実に切断することができる。また、回転軸21の軸心方向から見たとき、蔓受け部材30の尖先部31は、切断刃40の先端の回転軌跡R1の外側に位置している。これにより、切断刃40が尖先部31により起こされる前の蔓(保持部33に保持されていない蔓)に接触することを防止できる。
また、図3に示すように、回転軸21の軸心方向から見たとき、蔓受け部材30の保持部33は、回転軸21よりも前方に位置する。これにより、蔓受け部材30により下方から支持された蔓を、切断刃40が上方から下方に向けて移動(回転)する動きにより切断することができるため、切断を良好に行うことが可能となる。
【0043】
図3図4図9図10に示すように、回転軸21の外周面には、ブラケット41が取り付けられている。切断刃40の基端部には、ボルトBL5及びナットNT1により、基端部材42が取り付けられている。基端部材42は、ブラケット41に対して着脱可能である。具体的には、基端部材42をブラケット41に挿入してボルトBL2を締めることによって、基端部材42をブラケット41に取り付けることができる。また、ボルトBL2を取り外すことにより、基端部材42をブラケット41から取り外すことができる。基端部材42をブラケット41に取り付けることにより、切断刃40が回転軸21に取り付けられる。基端部材42をブラケット41から取り外すことにより、切断刃40を回転軸21から取り外すことができる。
【0044】
切断刃40は、基端部材42と共にブラケット41に対して着脱することによって、回転軸21に対して着脱することができる。これにより、切断刃40が摩耗したり破損したりした場合において、新しい切断刃40への交換を容易に行うことが可能となる。
図3図10に示すように、切断刃40は、回転軸21の周方向に180°間隔で取り付けられている。言い換えれば、2つの切断刃40が、回転軸21の軸心から互いに反対方向に延びるように取り付けられている。図4図9は、2つの切断刃40が回転軸21から上方と下方に延びている状態を示している。2つの切断刃40は、回転軸21の延伸方向(機幅方向)における同じ位置に取り付けられている。つまり、2つの切断刃40は、機幅方向の位置が同じである。
【0045】
但し、回転軸21の延伸方向における同じ位置に取り付けられる切断刃40の数は、2つには限定されず、1つ又は3つ以上であってもよい。回転軸21の延伸方向における同じ位置に3つ以上の切断刃40を取り付ける場合、3つ以上の切断刃40は、回転軸21の周方向に同じ間隔をあけて取り付けられる。例えば、3つの切断刃40を取り付ける場合、3つの切断刃40は回転軸21の周方向に120°間隔で取り付けられる。
【0046】
図1図3に示すように、蔓切断装置1は、回転軸21及び切断刃40の上方を覆うカバー50を備えている。カバー50は、回転軸21及び切断刃40の上方を覆うように、機枠10に取り付けられている。カバー50は、回転軸21の上方で機幅方向に延びている。カバー50によって、作業者が回転軸21及び切断刃40に接触することを防ぐことができる。
【0047】
カバー50の後部には、後部カバー51が取り付けられている。後部カバー51は、回転軸21及び切断刃40の後方を覆う。後部カバー51は、カバー50の後部から後下方に向けて延びている。後部カバー51の長さは、当該後部カバー51の下端が接地可能な長さに設定することができる。後部カバー51の下端を接地させることにより、蔓の切断作業が行われた後の地表面を均すことができる。
【0048】
図1図3に示すように、カバー50の前部には、横杆52が取り付けられている。図2に示すように、横杆52は、回転軸21の上方において回転軸21と平行に、機幅方向に延びている。横杆52は、四角筒状の部材である。図3に示すように、横杆52は、接続部材53によってカバー50の前部に接続されている。尚、接続部材53は図2にも示されているが、図2ではカバー50が省略されている。
図3図6に示すように、蔓受け部材30の上部に上述した取付体54が固定され、この取付体54が横杆52に取り付けられている。これにより、蔓受け部材30が横杆52に取り付けられている。
【0049】
図3図6に示すように、取付体54は、板状部54aと筒状部54bとを有している。板状部54aと筒状部54bとは一体に形成されている。板状部54aは、ボルトBL1によって蔓受け部材30の取付部36に取り付けられる。筒状部54bは、四角筒状に形成されている。筒状部54bには、横杆52が挿通されている。また、筒状部54bは、ボルトBL3により横杆52に取り付けられている。これにより、取付体54が横杆52に取り付けられている。また、蔓受け部材30は、取付体54を介して横杆52に取り付けられている。
【0050】
上述したように、蔓受け部材30は、切断刃40により切断される蔓を受ける部材である。蔓受け部材30は、蔓の切断刃40により切断される部分(切断部)の片側(左側又は右側)のみを受けるように構成してもよいが、切断部の両側(左側と右側)を受けるように構成されることが好ましい。言い換えれば、蔓の切断刃40により切断される部分(切断部)を挟んだ両側が、蔓受け部材30により受けられるように構成されることが好ましい。このように構成することにより、切断時において、蔓が切断刃40から逃げることを効果的に防ぐことができる。そのため、切断刃40の切断力をより確実に蔓に伝えることが可能となり、蔓を良好に切断することができる。
【0051】
以下、蔓受け部材30が蔓の切断部の両側を受けるための構成の一例である蔓受け構造体60について説明する。
図2に示すように、蔓切断装置1は、一対の蔓受け部材30,30から構成される蔓受け構造体60を備えている。図6に示すように、蔓受け構造体60は、互いに平行に対向して配置された2枚の平板状の蔓受け部材30から構成されている。2枚の蔓受け部材30,30は、蔓切断装置1の移動の方向と直交する幅方向(機幅方向)に隙間GPをあけて並設されている。2枚の蔓受け部材30,30は、同じ形状のものが回転軸21の軸心方向(側方)から見て重なるように配置される。
【0052】
2枚の蔓受け部材30,30は、互いに連結されている。具体的には、図6に示すように、2枚の蔓受け部材30,30は、ボルトBL4とナットNT2により互いに連結されている。2枚の蔓受け部材30,30の間には、筒状のスペーサ61が介在されている。スペーサ61の内部には、ボルトBL4の軸が貫通している。スペーサ61は、2枚の蔓受け部材30,30の隙間GPを一定に維持する機能を有している。図3に示すように、回転軸21の軸心方向から見たとき、ボルトBL4は、切断刃40の先端の回転軌跡R1の外側に位置している。これにより、切断刃40がボルトBL4及びスペーサ61と干渉することを回避できる。
【0053】
図4に示すように、2枚の蔓受け部材30の隙間GPは、切断刃40の厚さよりも大きく設定されている。これにより、2枚の蔓受け部材30,30の隙間GPを通って切断刃40が移動(回転)することができる。2枚の蔓受け部材30の隙間GPは、切断刃40との干渉を確実に回避するために、切断刃40の厚さよりも十分に厚く設定することが好ましい。一例として、2枚の蔓受け部材30の隙間GPは、切断刃40の厚みの3倍~5倍に設定することができる。
【0054】
切断刃40は、2枚の蔓受け部材30,30と平行に配置することが好ましい。切断刃40は、全体が2枚の蔓受け部材30,30と平行に配置されていてもよいが、少なくとも蔓を切断する部分が2枚の蔓受け部材30,30と平行に配置されていればよい。このように切断刃40を配置することによって、2枚の蔓受け部材30,30で受けられた蔓が延びる方向に対して直角に切断刃40を当てることができるため、蔓を確実に切断することが可能となる。
【0055】
図11に示すように、蔓受け構造体60を構成する一対の蔓受け部材30,30の一方は、蔓TRの切断部TR1の両側のうちの一方側(左側)の部分TR2を受ける。蔓受け構造体60を構成する一対の蔓受け部材30,30の他方は、蔓TRの切断部TR1の両側のうちの他方側(右側)の部分TR3を受ける。これにより、蔓TRの切断部TR1を挟んで間隔をあけた2箇所が夫々蔓受け部材30,30によって受けられる。
【0056】
蔓の切断部TR1を挟んだ両側が一対の蔓受け部材30,30によって下方から受けられた状態において、切断刃40が一対の蔓受け部材30,30の隙間GPを通って上方から下方へと移動する。これにより、切断刃40による切断時に蔓に加わる力を、蔓の切断部TR1の両側で受けることができるため、切断時に蔓が逃げることが防止され、蔓を確実に切断することが可能となる。
【0057】
尚、上記実施形態では、蔓受け構造体60が一対(2つ)の蔓受け部材30から構成されるものについて説明したが、蔓受け構造体60を3つ以上の蔓受け部材30から構成されるものとしてもよい。この場合、蔓受け構造体60は、機幅方向に互いに隙間をあけて並設され且つ互いに連結された3つ以上の蔓受け部材30から構成される。そして、3つ以上の蔓受け部材30により形成される2つ以上の隙間をそれぞれ通って切断刃40が移動(回転)する。
【0058】
蔓受け部材30は、回転軸21の延伸方向(機幅方向)に沿って間隔をあけて複数設けることが好ましい。この場合、複数の蔓受け部材30は、機幅方向に間隔をあけて並んでカバー50に取り付けられる。複数の蔓受け部材30を設ける場合、回転軸21の延伸方向において、複数の蔓受け部材30の夫々に対応する位置に複数の切断刃40が配置される。複数の切断刃40は、夫々回転軸21に取り付けられる。
【0059】
本実施形態の場合、図2に示すように、複数の蔓受け構造体60が、回転軸21の延伸方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。また、回転軸21の延伸方向において、複数の蔓受け構造体60の夫々に対応する位置に複数の切断刃40が配置されている。
このように構成することにより、図12に示すように、長く伸びた蔓TRや複数の蔓を、複数の蔓受け部材30又は複数の蔓受け構造体60によって受けて、複数の切断刃40によって切断することができる。そのため、長い蔓を細かく切断することができるとともに、蔓の切断作業の効率を大幅に向上させることができる。
【0060】
回転軸21の延伸方向(機幅方向)に複数の切断刃40を配置する場合、複数の切断刃40の位相(回転軸21の周方向における切断刃40の位置)は、全て同じとしてもよいし、一部又は全部を異ならせてもよい。複数の切断刃40の位相を全て同じとした場合、長く伸びた蔓を複数箇所で同時に切断することができるため、切断時に蔓が逃げることを効果的に防止することができる。複数の切断刃40の位相を異ならせた場合、個々の切断刃40による切断のタイミングがずれるため、切断時に回転軸21等に加わる負荷が小さくなり、切断時に発生する振動を抑制することができる。
【0061】
回転軸21の延伸方向に複数の蔓受け部材30又は複数の蔓受け構造体60を配置する場合、蔓受け部材30又は複数の蔓受け構造体60の数は、図示した数には限定されず、適宜変更することができる。また、蔓受け部材30又は蔓受け構造体60は、機幅方向の位置(回転軸21の延伸方向における位置)を調整することができる。蔓受け部材30又は蔓受け構造体60の機幅方向の位置は、筒状部54bを横杆52に沿って機幅方向に移動させることにより調整することができる。
【0062】
回転軸21の延伸方向に複数の切断刃40を配置する場合、切断刃40の数は、図示した数には限定されず、蔓受け部材30又は蔓受け構造体60の数に応じて適宜変更することができる。また、切断刃40は、機幅方向の位置(回転軸21の延伸方向における位置)を調整することができる。切断刃40の機幅方向の位置は、ブラケット41を回転軸21に沿って機幅方向に移動させることにより調整することができる。
以下、図13図15を参照しながら、上記実施形態の蔓切断装置1の作用(動作)について説明する。図13図15において、蔓切断装置1の移動方向を矢印A2で示し、切断刃40の移動(回転)方向を矢印A3で示している。
【0063】
図1に示すように、蔓切断装置1は走行車両2の後部に装着され、走行車両2に牽引されて、切断対象となる蔓が存在する圃場を移動する。蔓切断装置1が圃場を移動すると、蔓受け部材30の尖先部31が地表面GLに沿って又は地中を移動し、地表面に沿って伸びた蔓又は地中に伸びた蔓を、尖先部31の先端で引っ掛けて起こす(図13の矢印A4参照)。尖先部31の先端で起こされた蔓TRは、蔓切断装置1の更なる移動によって、案内部32の第1傾斜面34に沿って後上方に案内される(図14の矢印A5参照)。第1傾斜面34に沿って案内された蔓TRは、蔓切断装置1の更なる移動によって、第1傾斜面34の上端から保持部33に向けて移動し(図14の矢印A6参照)、保持部33により保持される。そして、保持部33により保持された蔓TRは、切断刃40の回転移動により切断される(図15参照)。
【0064】
このように、上記実施形態の蔓切断装置1によれば、地表面に沿って伸びた蔓又は地中に伸びた蔓を尖先部31によって起こして、案内部32により保持部33に案内し、保持部33に保持された蔓を切断刃40により切断することができる。これにより、地表面に沿って伸びた蔓又は地中に伸びた蔓を確実に切断することができる。
本発明に係る蔓切断装置1は、土壌消毒装置70と共に使用することができる。
図16は、蔓切断装置1を土壌消毒装置70と共に使用している状態を示している。言い換えれば、図16は、蔓切断装置1と土壌消毒装置70とを備えた作業機を示している。この作業機は、圃場を移動しながら蔓の切断と土壌の消毒を行うことができる。
【0065】
土壌消毒装置70は、圃場の土中に薬液を注入することにより、土壌の消毒を行う装置である。土壌消毒装置70は、走行車両2の後部(又は蔓切断装置1の後部)に連結される連結部と、薬液を収容したタンクと、タンクに収容された薬液を圧送するポンプと、ポンプから圧送される薬液を土中に注入する注入部71とを備えている。図16では、注入部71のみを示し、連結部、タンク及びポンプの図示を省略している。
図16に示すように、注入部71は、蔓切断装置1の後方に配置される。注入部71は、蔓切断装置1の後方において土中に差し込まれる。注入部71は、土中に差し込まれた状態で、走行車両2と共に移動する。注入部71を土中に差し込んだ状態において、ポンプを駆動してタンク内の薬液を注入部71に供給する。供給された薬液は、注入部71の先端から吐出される。これにより、蔓切断装置1の後方において、注入部71から土中に薬液が注入される。
【0066】
図17に示すように、土壌消毒装置70は、複数の注入部71を備えている。複数の注入部71は、機幅方向に間隔をあけて配置されている。複数の注入部71は、機幅方向において、蔓切断装置1の複数の蔓受け構造体60と夫々対応する位置に配置される。即ち、複数の蔓受け構造体60の夫々の後方に注入部71が配置される。
図17に示すように、注入部71は、機幅方向において、一対の蔓受け部材30,30の間(仮想線L1,L2の間)に配置される。言い換えれば、一対の蔓受け部材30,30の隙間GPの後方に注入部71が配置される。これにより、注入部71の前方に存在する蔓を、切断刃40により確実に切断することができる。そのため、土壌消毒装置70を走行車両2と共に移動させたときに、注入部71に蔓が引っ掛かることを防止することができる。
【0067】
蔓切断装置1を土壌消毒装置70と共に使用する場合、2つの蔓受け部材30,30の隙間GP(図4参照)は、少なくとも注入部71の土壌に差し込まれる部分の幅以上に設定される。これにより、注入部71の土壌に差し込まれる部分の前方にある蔓を、確実に切断刃40により切断することができる。
また、蔓受け部材30の下端は、注入部71の下端と同じ高さ又は注入部71の下端よりも下方に配置することが好ましい。これにより、注入部71に引っ掛かる高さにある蔓を蔓受け部材30により起こして切断することができるため、注入部71に蔓が引っ掛かることをより確実に防止することが可能となる。
【0068】
上記した実施形態に係る蔓切断装置1によれば、以下の効果を奏することができる。
農作物の蔓切断装置1は、圃場を移動しながら蔓を切断する蔓切断装置であって、蔓を起こして受ける蔓受け部材30と、蔓受け部材30で受けられた蔓を切断する切断刃40と、を備えている。
この構成によれば、蔓受け部材30によって蔓を起こして受け、蔓受け部材30で受けられた蔓を切断刃40により切断することができる。そのため、切断時において蔓が切断刃40から逃げることを防止することができ、切断刃40の切断力を確実に蔓に伝えることが可能となり、蔓を良好に切断することができる。
【0069】
また、蔓受け部材30は、切断刃40で切断される蔓TRの切断部TR1の両側TR2,TR3を受ける。
この構成によれば、蔓受け部材30が蔓TRの切断部TR1の両側TR2,TR3において切断刃40の切断力を受けることができるため、切断時において蔓が切断刃40から逃げることをより確実に防止することができる。そのため、切断刃40の切断力を、より確実に蔓に伝えることが可能となり、蔓を良好に切断することができる。
また、蔓受け部材30は、移動に伴って切断前の蔓TRを上方に案内する案内部32を有している。
この構成によれば、切断前の蔓を案内部32によって上方に案内することが可能であるため、地表面に沿って伸びた蔓や地中にある蔓等の低い位置にある切断前の蔓を上方に案内して切断刃40により切断することができる。
【0070】
また、蔓受け部材30は、当該蔓受け部材30で受けられた蔓を保持する保持部33を有している。
この構成によれば、蔓受け部材30で受けられた蔓を保持部33により保持することができる。そのため、切断時において蔓が保持部33に保持されることによって、蔓が切断刃40から逃げることを確実に防止することができる。そのため、切断刃40の切断力を確実に蔓に伝えることが可能となり、蔓を良好に切断することができる。
【0071】
また、蔓受け部材30の下端には、前方に向けて尖った尖先部31が形成されており、案内部32は、尖先部31から保持部33に向けて蔓を案内する。
この構成によれば、地表面に沿って伸びた蔓や地中に伸びた蔓を尖先部31の先端で引っ掛けて持ち上げ、案内部32に沿って保持部33に向けて案内することができる。そのため、地表面に沿って伸びた蔓や地中に伸びた蔓を、確実に保持部33に向けて案内して切断刃40により切断することができる。
【0072】
また、案内部32は、前方から後方に向かうにつれて上方に移行する第1傾斜面34を有し、第1傾斜面34の下端に尖先部31が設けられ、第1傾斜面34の上端に保持部33が設けられている。
この構成によれば、地表面に沿って伸びた蔓や地中に伸びた蔓を、第1傾斜面34の下端にある尖先部31の先端で引っ掛けて持ち上げた後、第1傾斜面34に沿って上昇させて、第1傾斜面34の上端にある保持部33へと導くことができる。そのため、地表面に沿って伸びた蔓や地中に伸びた蔓を、確実に保持部33に向けて案内して切断刃40により切断することができる。
【0073】
また、蔓受け部材30は、後方から前方に向かうにつれて上方に移行する第2傾斜面35を有し、保持部33は、第1傾斜面34の上端と第2傾斜面35の下端との間に設けられ、第1傾斜面34と第2傾斜面35は、保持部33を介してV字状に繋がっている。
この構成によれば、第1傾斜面34の上端と第2傾斜面35の下端との間のV字状の部分において、蔓を保持部33に保持することが可能となるため、保持部33に保持された蔓が保持部33から脱落することを効果的に防止することができる。そのため、保持部33により保持された蔓を切断刃40により確実に切断することができる。
【0074】
また、保持部33は、第1傾斜面34の上端と第2傾斜面35の下端との間において後方に向けて凹んで形成されている。
この構成によれば、蔓TRを保持部33の凹みに保持することが可能となるため、保持部33に保持された蔓が保持部33から脱落することを確実に防止することができる。そのため、保持部33により保持された蔓を切断刃40により確実に切断することができる。
また、蔓切断装置1は、当該装置の移動の方向と直交する幅方向に隙間GPをあけて並設され且つ互いに連結された一対の蔓受け部材30,30から構成される蔓受け構造体60を備え、一対の蔓受け部材30,30の一方は、切断部TR1の両側のうちの一方側を受け、一対の蔓受け部材30,30の他方は、切断部TR1の両側のうちの他方側を受け、切断刃40は、一対の蔓受け部材30,30の隙間GPを通って移動する。
【0075】
この構成によれば、蔓の切断時において、一対の蔓受け部材30,30によって蔓TRの切断部TR1の両側を受けることができるため、蔓を確実に切断することができる。また、一対の蔓受け部材30,30から構成される蔓受け構造体60は、単一の蔓受け部材30に比べて剛性(強度)が高くなるため、蔓TRの切断時に切断刃40から加わる力によって、蔓受け部材30が変形したり破損したりすることを防ぐことができる。
また、蔓受け構造体60は、互いに平行に対向して配置された2枚の平板状の蔓受け部材30から構成されている。
この構成によれば、蔓受け構造体60の厚み(機幅方向の長さ)を小さくすることができる。そのため、多数の蔓受け構造体60を限られた小さいスペースに並べて配置することが可能となる。
【0076】
また、蔓切断装置1は、当該装置の移動の方向と直交する幅方向に延伸し且つ軸心回りに回転する回転軸21を備え、切断刃40は、回転軸21に取り付けられており、回転軸21と共に軸心回りに回転して蔓受け部材30で受けられた蔓を切断する。
この構成によれば、切断刃40を回転させて蔓受け部材30で受けられた蔓を切断することができるため、切断刃40を小さいスペース内で移動させて蔓受け部材30で受けられた蔓を切断することが可能となる。また、切断刃40を駆動するために複雑な機構を必要としないため、当該機構を小型化することができる。
また、蔓受け部材30は、回転軸21の延伸方向に沿って間隔をあけて複数設けられており、複数の切断刃40は、前記延伸方向において、複数の蔓受け部材30の夫々に対応する位置に配置されている。
【0077】
この構成によれば、長く伸びた蔓や複数の蔓を複数の蔓受け部材30により受けて、複数の切断刃40により切断することができる。そのため、長い蔓を細かく切断することができるとともに、蔓の切断作業の効率を大幅に向上させることができる。
また、回転軸21の軸心方向から見たとき、保持部33は、切断刃40の先端の回転軌跡R1の内側に位置し、尖先部31は、切断刃40の先端の回転軌跡R1の外側に位置している。
この構成によれば、切断刃40を回転させたときに、保持部33に保持された蔓を確実に切断することができるとともに、尖先部31によって起こされる前の蔓に切断刃40が接触することが防止できる。
【0078】
また、蔓切断装置1は、回転軸21及び切断刃40の上方を覆うカバー50を備え、蔓受け部材30は、カバー50に固定されて回転軸21の前方に配置されている。
この構成によれば、カバー50によって作業者が回転軸21及び切断刃40に接触することを防ぐことができ安全である。また、蔓受け部材30を回転軸21の前方に位置決めすることができるため、蔓受け部材30で受けた後の蔓を切断刃40によって切断することができる。
また、蔓切断装置1は、走行車両2に対して着脱可能に連結される連結部(連結ブラケット22、マスト23)を備え、回転軸21は、走行車両2から伝達される動力により回転する。
【0079】
この構成によれば、連結部(連結ブラケット22、マスト23)を走行車両2に連結することにより、走行車両2の走行に伴って蔓切断装置1を移動させることができる。そのため、蔓切断装置1に移動機構を設けたり、人手で蔓切断装置1を移動させたりする必要がない。また、蔓切断装置1を使用しないときには、蔓切断装置1を走行車両2から取り外すことができる。また、回転軸21が走行車両2から伝達される動力により回転するため、蔓切断装置1に回転軸21を回転させるための駆動源を設ける必要がなく、蔓切断装置1を小型化、軽量化することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0081】
1 蔓切断装置
21 回転軸
22 連結部(連結ブラケット)
23 連結部(マスト)
30 蔓受け部材
31 尖先部
32 案内部
33 保持部
34 第1傾斜面
35 第2傾斜面
40 切断刃
60 蔓受け構造体
50 カバー
GP 一対の蔓受け部材の隙間
R1 切断刃の先端の回転軌跡
TR 蔓
TR1 蔓の切断部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
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