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特開2023-150591検出装置、検出方法及び制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150591
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】検出装置、検出方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/12 20170101AFI20231005BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231005BHJP
   G06V 20/17 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
G06T7/12
G06T7/00 640
G06V20/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059772
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(71)【出願人】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智之
(72)【発明者】
【氏名】柴山 卓史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】西村 徹
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA02
5L096AA06
5L096CA04
5L096FA06
5L096FA12
5L096GA08
5L096GA40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出する検出装置、検出方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】検出装置1は、第1光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第1植生指標画像及び第2光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第2植生指標画像を生成する植生指標画像生成部と、第1植生指標画像に含まれる各画素の植生指標と、第2植生指標画像に含まれる各画素の植生指標との間の差分値を、対応する画素の画素値とする差分画像を生成する差分画像生成部と、差分画像からエッジ画素を抽出するエッジ画素抽出部と、エッジ画素に基づいて、枯損木が存在する枯損木領域を検出する検出部と、枯損木領域に関する情報を出力する出力部(通信部、表示部)と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1時期に対象領域を上空から撮影した第1光学画像、及び、前記第1時期とは異なる第2時期に前記対象領域を上空から撮影した第2光学画像を取得する画像取得部と、
前記第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、前記第2光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出する指標算出部と、
前記第1光学画像に含まれる各画素の前記植生指標を、対応する画素の画素値とする第1植生指標画像、及び、前記第2光学画像に含まれる各画素の前記植生指標を、対応する画素の画素値とする第2植生指標画像を生成する植生指標画像生成部と、
前記第1植生指標画像に含まれる各画素の前記植生指標と、前記第2植生指標画像に含まれる各画素の前記植生指標との差分値を、対応する画素の画素値とする差分画像を生成する差分画像生成部と、
前記差分画像からエッジ画素を抽出するエッジ画素抽出部と、
前記エッジ画素に基づいて、枯損木が存在する枯損木領域を検出する検出部と、
前記枯損木領域に関する情報を出力する出力部と、
を有することを特徴とする検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記エッジ画素で囲まれる領域を、前記枯損木領域として検出する、請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記エッジ画素抽出部は、前記差分画像に対して平滑化処理を実行し、前記平滑化処理が実行された前記差分画像から前記エッジ画素を抽出する、請求項1又は2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記エッジ画素抽出部は、前記差分画像内の変曲点を前記エッジ画素として抽出する、請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記指標算出部は、前記第1光学画像及び前記第2光学画像の少なくとも一方の画像から、画像に含まれる複数の画素ごとにGSI指標を算出し、
前記植生指標と前記GSI指標との差分に基づいて、前記一方の画像から植生領域を抽出する植生領域抽出部をさらに有し、
前記植生指標画像生成部は、
前記第1光学画像において前記植生領域に対応する領域に含まれる画素の前記植生指標を、対応する画素の画素値とするように前記第1植生指標画像を生成し、
前記第2光学画像において前記植生領域に対応する領域に含まれる画素の前記植生指標を、対応する画素の画素値とするように前記第2植生指標画像を生成する、
請求項1~4の何れか一項に記載の検出装置。
【請求項6】
コンピュータにより、
第1時期に対象領域を上空から撮影した第1光学画像、及び、前記第1時期とは異なる第2時期に前記対象領域を上空から撮影した第2光学画像を取得し、
前記第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、前記第2光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、
前記第1光学画像に含まれる各画素の前記植生指標を、対応する画素の画素値とする第1植生指標画像、及び、前記第2光学画像に含まれる各画素の前記植生指標を、対応する画素の画素値とする第2植生指標画像を生成し、
前記第1植生指標画像に含まれる各画素の前記植生指標と、前記第2植生指標画像に含まれる各画素の前記植生指標との間の差分値を、対応する画素の画素値とする差分画像を生成し、
前記差分画像からエッジ画素を抽出し、
前記エッジ画素に基づいて、枯損木が存在する枯損木領域を検出し、
前記枯損木領域に関する情報を出力する、
ことを特徴とする検出方法。
【請求項7】
出力部を有するコンピュータの制御プログラムであって、
第1時期に対象領域を上空から撮影した第1光学画像、及び、前記第1時期とは異なる第2時期に前記対象領域を上空から撮影した第2光学画像を取得し、
前記第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、
前記第2光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、
前記第1光学画像に含まれる各画素の前記植生指標を、対応する画素の画素値とする第1植生指標画像、及び、前記第2光学画像に含まれる各画素の前記植生指標を、対応する画素の画素値とする第2植生指標画像を生成し、
前記第1植生指標画像に含まれる各画素の前記植生指標と、前記第2植生指標画像に含まれる各画素の前記植生指標との間の差分値を、対応する画素の画素値とする差分画像を生成し、
前記差分画像からエッジ画素を抽出し、
前記エッジ画素に基づいて、枯損木が存在する枯損木領域を検出し、
前記枯損木領域に関する情報を前記出力部から出力する、
ことを検出装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置、検出方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、敷地内における植栽樹木の巨木化及び老木化の進行、並びに未管理樹木の増加等により、点検対象となる樹木が増加傾向にあり、点検作業の効率化が求められている。
【0003】
特許文献1には、衛星画像の解析により推定された樹種と、正規化植生指標(Normalized Difference Vegetation Index、NDVI)とを組み合わせて、樹木の健全度を樹種に応じて判定する樹木の健全度判定方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-144607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹木の点検作業において、枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出することが求められている。
【0006】
本発明は、枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出することができる検出装置、検出方法及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る検出装置は、第1時期に対象領域を上空から撮影した第1光学画像、及び、第1時期とは異なる第2時期に対象領域を上空から撮影した第2光学画像を取得する画像取得部と、第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、第2光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出する指標算出部と、第1光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第1植生指標画像、及び、第2光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第2植生指標画像を生成する植生指標画像生成部と、第1植生指標画像に含まれる各画素の植生指標と、第2植生指標画像に含まれる各画素の植生指標との間の差分値を、対応する画素の画素値とする差分画像を生成する差分画像生成部と、差分画像からエッジ画素を抽出するエッジ画素抽出部と、エッジ画素に基づいて、枯損木が存在する枯損木領域を検出する検出部と、枯損木領域に関する情報を出力する出力部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一側面に係る検出装置において、検出部は、エッジ画素で囲まれる領域を、枯損木領域として検出する、ことが好ましい。
【0009】
本発明の一側面に係る検出装置において、エッジ画素抽出部は、差分画像に対して平滑化処理を実行し、平滑化処理が実行された差分画像からエッジ画素を抽出する、ことが好ましい。
【0010】
本発明の一側面に係る検出装置において、エッジ画素抽出部は、差分画像内の変曲点をエッジ画素として抽出する、ことが好ましい。
【0011】
本発明の一側面に係る検出装置において、指標算出部は、第1光学画像及び第2光学画像の少なくとも一方の画像から、画像に含まれる複数の画素ごとにGSI指標を算出し、植生指標とGSI指標との差分に基づいて、一方の画像から植生領域を抽出する植生領域抽出部をさらに有し、植生指標画像生成部は、第1光学画像において植生領域に対応する領域に含まれる画素の植生指標を、対応する画素の画素値とするように第1植生指標画像を生成し、第2光学画像において植生領域に対応する領域に含まれる画素の植生指標を、対応する画素の画素値とするように第2植生指標画像を生成する、ことが好ましい。
【0012】
本発明の一側面に係る検出方法は、コンピュータにより、第1時期に対象領域を上空から撮影した第1光学画像、及び、前記第1時期とは異なる第2時期に前記対象領域を上空から撮影した第2光学画像を取得し、第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、第2光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、第1光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第1植生指標画像、及び、第2光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第2植生指標画像を生成し、第1植生指標画像に含まれる各画素の植生指標と、第2植生指標画像に含まれる各画素の植生指標との間の差分値を、対応する画素の画素値とする差分画像を生成し、差分画像からエッジ画素を抽出し、エッジ画素に基づいて、枯損木が存在する枯損木領域を検出し、枯損木領域に関する情報を出力する、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の一側面に係る制御プログラムは、出力部を有するコンピュータの制御プログラムであって、第1時期に対象領域を上空から撮影した第1光学画像、及び、前記第1時期とは異なる第2時期に前記対象領域を上空から撮影した第2光学画像を取得し、第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、第2光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、第1光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第1植生指標画像、及び、第2光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第2植生指標画像を生成し、第1植生指標画像に含まれる各画素の植生指標と、第2植生指標画像に含まれる各画素の植生指標との間の差分値を、対応する画素の画素値とする差分画像を生成し、差分画像からエッジ画素を抽出し、エッジ画素に基づいて、枯損木が存在する枯損木領域を検出し、枯損木領域に関する情報を出力部から出力する、ことを検出装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、検出装置、検出方法及び制御プログラムは、枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】検出装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】枯損木領域検出処理の一例を示すフローチャートである。
図3A】RGB画像の一例を示す図である。
図3B】赤バンド画像の一例を示す図である。
図4A】緑バンド画像の一例を示す図である。
図4B】青バンド画像の一例を示す図である。
図5A】近赤外バンド画像の一例を示す図である。
図5B】植生指標画像の一例を示す図である。
図6A】GSI指標画像の一例を示す図である。
図6B】植生領域について説明するための模式図である。
図7A】針葉樹が第1時期に撮像されたRGB画像の一例を示す図である。
図7B】針葉樹が第2時期に撮像されたRGB画像の一例を示す図である。
図7C】画素の植生指標の関係を示すグラフを示す図である。
図8A】広葉樹が第1時期に撮像されたRGB画像の一例を示す図である。
図8B】広葉樹が第2時期に撮像されたRGB画像の一例を示す図である。
図8C】画素の植生指標の関係を示すグラフを示す図である。
図9A】不健全木が第1時期に撮像されたRGB画像の一例を示す図である。
図9B】不健全木が第2時期に撮像されたRGB画像の一例を示す図である。
図9C】画素の植生指標の関係を示すグラフを示す図である。
図10A】差分画像の一例を示す図である。
図10B】平滑化処理が適用された差分画像の一例を示す図である。
図11】差分画像内の領域から抽出されたエッジ画素の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0017】
図1は、検出装置1の概略構成の一例を示す図である。検出装置1は、コンピュータの一例であり、枯損木が存在する枯損木領域を検出する。検出装置1は、記憶部11、通信部12、表示部13、操作部14及び処理部15を備える。
【0018】
記憶部11は、プログラム又はデータを記憶する。記憶部11は、例えば、半導体メモリ装置を備える。記憶部11は、処理部15による処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。プログラムは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピュータ読み取り可能かつ非一時的な可搬型記憶媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部11にインストールされる。
【0019】
通信部12は、出力部の一例である。通信部12は、検出装置1を他の装置と通信可能にする。通信部12は、通信インタフェース回路を備える。通信部12が備える通信インタフェース回路は、有線LAN(Local Area Network)又は無線LAN等の通信インタフェース回路である。通信部12は、データを他の装置から受信して処理部15に供給すると共に、処理部15から供給されたデータを他の装置に送信する。
【0020】
表示部13は、出力部の一例である。表示部13は、画像を表示する。表示部13は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイを備える。表示部13は、処理部15から供給された表示データに基づいて画像を表示する。
【0021】
操作部14は、検出装置1に対するユーザの入力操作を受け付ける。操作部14は、例えば、キーパッド、キーボード又はマウスを備える。操作部14は、表示部13と一体化されたタッチパネルを備えてもよい。操作部14は、ユーザの入力操作に応じた信号を生成して処理部15に供給する。
【0022】
処理部15は、検出装置1の動作を統括的に制御するデバイスであり、一又は複数個のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備える。処理部15は、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を備えてもよい。処理部15は、記憶部11に記憶されているプログラム並びに通信部12及び操作部14からの入力に基づいて検出装置1の各種処理が適切な手順で実行されるように、各構成の動作を制御すると共に、各種の処理を実行する。
【0023】
処理部15は、画像取得部151、指標算出部152、植生領域抽出部153、植生指標画像生成部154、差分画像生成部155、エッジ画素抽出部156、検出部157及び出力制御部158を機能ブロックとして備える。これらの各部は、処理部15によって実行されるプログラムによって実現される機能モジュールである。これらの各部は、ファームウェアとして検出装置1に実装されてもよい。
【0024】
図2は、枯損木領域検出処理の一例を示すフローチャートである。枯損木領域検出処理は、予め記憶部11に記憶されているプログラムに基づき主に処理部15により検出装置1の各要素と協働して実行される。
【0025】
まず、画像取得部151は、通信部12を介して外部の情報処理装置(例えば、光学衛星に搭載された情報処理装置)から、第1時期に対象領域を上空から撮影した第1光学画像を取得する。また、画像取得部151は、通信部12を介して外部の情報処理装置から、第1時期とは異なる第2時期に対象領域を上空から撮影した第2光学画像を取得する(ステップS101)。対象領域は、森林等の樹木が含まれる領域である。検出装置1は、対象領域に含まれる樹木を点検対象とし、対象領域から、枯れた樹木である枯損木が存在する枯損木領域を検出する。
【0026】
第2時期は、第1時期より所定期間だけ後の時期に設定される。所定期間は、例えば一般的に樹木が枯損し始めてから人間の目視によりその変化が認識され得るまでの期間(例えば一年間)等に設定される。第1時期及び第2時期は、任意の時期に設定されてよく、相互に異なる季節又は相互に異なる時間帯等に設定されてもよい。第2時期は、第1時期から一年以内に設定されてもよく、第1時期より二年以上後に設定されてもよい。
【0027】
検出装置1は、後述するように、第1光学画像と第2光学画像とを比較することにより枯損木領域を検出する。第1時期及び第2時期は、夏に設定されることが好ましい。一般に、健康な樹木の葉量は、枯損木の葉量より多くなる。夏は、樹木の活性度が高く、他の季節と比較して、健康な樹木の葉量と、枯損木の葉量との差が大きくなる。検出装置1は、第1時期及び第2時期を夏に設定することにより、枯損木領域をより高精度に検出することができる。
【0028】
第1光学画像及び第2光学画像は、Pleiades光学衛星画像等である。第1光学画像及び第2光学画像は、光学衛星に搭載されている光学センサが感知した、対象領域内の各位置における太陽光の反射光(電磁波)及び各位置からの放射光(電磁波)の強度を、各位置に対応する各画素の画素値とする画像である。第1光学画像及び第2光学画像は、光学衛星に搭載されている光学センサが感知する電磁波の波長のうちの所定幅(バンド)の波長毎に生成された複数の画像を含む。
【0029】
第1光学画像及び第2光学画像は、それぞれ赤バンド画像と、緑バンド画像と、青バンド画像と、近赤外バンド画像とを含む。赤バンド画像は、赤色光の波長を含むバンドにおける光の強度を各画素の画素値とする画像である。緑バンド画像は、緑色光の波長を含むバンドにおける光の強度を各画素の画素値とする画像である。青バンド画像は、青色光の波長を含むバンドにおける光の強度を各画素の画素値とする画像である。近赤外バンド画像は、近赤外光の波長を含むバンドにおける光の強度を各画素の画素値とする画像である。
【0030】
第1光学画像及び第2光学画像は、それぞれRGB画像をさらに含む。RGB画像は、各画素の画素値を、赤バンド画像の対応する画素の画素値(16bit)と、緑バンド画像の対応する画素の画素値(16bit)と、青バンド画像の対応する画素の画素値(16bit)とからなる48bitの色値とするカラー画像である。ここで画素値のbit数は一例であり、衛星の仕様等に応じて8bitや12bitの画素値を有する画素を用いてもよい。
【0031】
図3Aは、所定の対象領域301を上空から撮像したRGB画像300の一例を示す。
【0032】
図3Aに示すように、RGB画像300に含まれる対象領域301には、樹木が含まれる植生領域302と、樹木が含まれない非植生領域303とが含まれる。また、植生領域302には、枯損木が存在する枯損木領域304と、枯損木が存在しない非枯損木領域305とが含まれる。非植生領域303には、裸地領域のように土壌が地表面に表れている土壌領域306と、コンクリート等が存在し、土壌が地表面に表れていない非土壌領域307とが含まれる。
【0033】
図3Bは、対象領域301を上空から撮像した赤バンド画像310の一例を示す。
【0034】
図3Bに示す例では、放射又は反射する赤色光の強度が大きい位置に対応する画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、放射又は反射する赤色光の強度が小さい位置に対応する画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。
【0035】
図4Aは、対象領域301を上空から撮像した緑バンド画像400の一例を示す。
【0036】
図4Aに示す例では、放射又は反射する緑色光の強度が大きい位置に対応する画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、放射又は反射する緑色光の強度が小さい位置に対応する画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。
【0037】
図4Bは、対象領域301を上空から撮像した青バンド画像410の一例を示す。
【0038】
図4Bに示す例では、放射又は反射する青色光の強度が大きい位置に対応する画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、放射又は反射する青色光の強度が小さい位置に対応する画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。
【0039】
図5Aは、対象領域301を上空から撮像した近赤外バンド画像500の一例を示す。
【0040】
図5Aに示す例では、放射又は反射する近赤外光の強度が大きい位置に対応する画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、放射又は反射する近赤外光の強度が小さい位置に対応する画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。
【0041】
次に、指標算出部152は、第1光学画像から、第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出する(ステップS102)。植生指標は、対象領域における植生の状況を把握するための指標であり、植物の量又は活力を示す。指標算出部152は、広ダイナミックレンジ植生指数(Wide Dynamic Range Vegetation Index、WDRVI)を植生指標として算出する。WDRVIは、植物の量又は活力が大きいほど、高い値を有し、植物の量又は活力が小さいほど、低い値を有する。指標算出部152は、赤バンド画像及び近赤外バンド画像に基づいて、下記式(1)から、各画素の植生指標を算出する。
WDRVI=(αIR-R)/(αIR+R) …(1)
【0042】
ここで、αは補正係数であり、例えば0.1以上且つ0.2以下の範囲内の値に設定される。IRは、近赤外バンド画像内の対応する画素の画素値、即ちその画素に対応する位置における近赤外光の強度である。Rは、赤バンド画像内の対応する画素の画素値、即ちその画素に対応する位置における赤色光の強度である。WDRVIは、-1.0以上であり且つ+1.0以下である範囲内の値を有する。植物については、クロロフィルの働きにより、近赤外光の反射率が高く、赤色光の反射率が低いことが知られている。また、植物については、衰弱することでクロロフィルの働きが鈍化し、近赤外光の反射率が低くなることが知られている。したがって、検出装置1は、上記式(1)により算出されるWDRVIを植生指標として利用することにより、植生領域の検出精度を向上できる。
【0043】
なお、指標算出部152は、WDRVIの代わりに、正規化植生指標(Normalized Difference Vegetation Index、NDVI)を植生指標として算出してもよい。その場合、指標算出部152は、赤バンド画像及び近赤外バンド画像に基づいて、下記式(2)から、各画素の植生指標を算出する。
NDVI=(IR-R)/(IR+R) …(2)
【0044】
なお、WDRVIは、葉面積指数(Leaf Area Index、LAI)が大きい領域で、NDVIの値が飽和する問題を緩和するために改良された植生指数である。LAIは、植物群落の葉量を表す指数であり、葉が多いほどLAIの値は大きい。検出装置1は、WDRVIを植生指標として利用することにより、NDVIを植生指標として利用することと比較して、植生領域の検出精度をより向上できる。
【0045】
また、指標算出部152は、WDRVIの代わりに、GRVI(Green-red Ratio Vegetation Index)を植生指標として算出してもよい。その場合、指標算出部152は、緑バンド画像及び赤バンド画像に基づいて、下記式(3)から、各画素の植生指標を算出する。
GRVI=(G-R)/(G+R) …(3)
【0046】
ここで、Gは、緑バンド画像内の対応する画素の画素値、即ちその画素に対応する位置における緑色光の強度である。
【0047】
指標算出部152は、各画素の画素値を植生指標とする植生指標画像を生成する。
【0048】
図5Bは、WDRVIを植生指標として、赤バンド画像310及び近赤外バンド画像500から生成された植生指標画像510の一例を示す。
【0049】
図5Bに示す例では、植生指標が高い画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、植生指標が低い画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。図5Bに示すように、対象領域301に対応する領域511のうち、植生領域302に対応する領域512では植生指標が高く、非植生領域303に対応する領域513では植生指標が低い。したがって、検出装置1は、WDRVIを植生指標として利用することにより、植生領域と非植生領域とを精度良く識別することができる。
【0050】
なお、植生領域302に対応する領域512のうち、非枯損木領域305に対応する領域515では全体的に植生指標が高く、枯損木領域304に対応する領域514では一部の領域で植生指標がわずかに低い。また、非植生領域303に対応する領域513のうち、非土壌領域307に対応する領域517では植生指標が十分に低いが、土壌領域306に対応する領域516では植生指標がわずかに高い。
【0051】
次に、指標算出部152は、第1光学画像から、第1光学画像に含まれる複数の画素ごとにGSI指標(Grain Size Index)を算出する(ステップS103)。GSI指標は、粒度指数とも呼ばれ、裸地領域を検出するための指標である。GSI指標は、その画素に対応する位置が裸地領域に含まれる可能性が高いほど高い値を有する。指標算出部152は、赤バンド画像、緑バンド画像及び青バンド画像に基づいて、下記式(4)から、各画素のGSI指標を算出する。
GSI指標=(R-B)/(R+G+B) …(4)
【0052】
ここで、Bは、青バンド画像内の対応する画素の画素値、即ちその画素に対応する位置における青色光の強度である。GSI指標は、WDRVIと同様に、-1.0以上であり且つ+1.0以下である範囲内の値を有する。
【0053】
指標算出部152は、各画素の画素値をGSI指標とするGSI指標画像を生成する。
【0054】
図6Aは、赤バンド画像310、緑バンド画像400及び青バンド画像410から生成されたGSI指標画像600の一例を示す。
【0055】
図6Aに示す例では、GSI指標が高い画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、GSI指標が低い画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。図7Aに示すように、対象領域301に対応する領域601のうち、土壌領域306に対応する領域606では、植生領域302に対応する領域602及び非土壌領域307に対応する領域607と比較して、GSI指標が高い。したがって、検出装置1は、GSI指標を利用することにより、土壌領域と他の領域とを精度良く識別することができる。
【0056】
次に、指標算出部152は、第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標とGSI指標との差分を算出する(ステップS104)。指標算出部152は、各画素の画素値を、植生指標画像の対応する画素の画素値から、GSI指標画像の対応する画素の画素値を減じた差分値とする画像を指標画像として生成する。
【0057】
上記したように、植生指標は、対象領域における植生の状況を把握するための指標であり、植生領域では高い値を有し、非植生領域では低い値を有する。しかしながら、非植生領域のうち、土壌領域には、草地又は畑地が含まれる場合があり、その場合、植生指標は土壌領域においても高い値を有する。GSI指標は、土壌領域に対応する領域において、他の領域より高い値を有する。したがって、植生指標からGSI指標を減算した差分は、植生領域では植生指標に近似する高い値を維持し、土壌領域では植生指標に対して十分に低い値を有する。なお、非土壌領域では、植生指標が低いため、植生指標からGSI指標を減算した差分は低い値を有する。指標算出部152は、裸地領域らしさを示すGSI指標を用いて植生指標を補正することにより、草地又は畑地を植生領域として抽出する可能性を低減できる。
【0058】
次に、植生領域抽出部153は、指標算出部152が生成した指標画像に対して二値化処理を実行する(ステップS105)。植生領域抽出部153は、指標画像に含まれる各画素の画素値が閾値以上であるか否かを判定する。閾値は、例えば大津の二値化により決定される。なお、閾値は、指標画像に含まれる各画素の画素値の平均値又は中央値等に設定されてもよい。また、閾値は、予め固定値に設定されてもよい。植生領域抽出部153は、各画素の画素値を、指標画像の対応する画素の画素値が閾値以上である場合に有効値とし、指標画像の対応する画素の画素値が閾値未満である場合に無効値とする二値画像を生成する。
【0059】
次に、植生領域抽出部153は、指標算出部152が算出した植生指標とGSI指標との差分に基づいて、第1光学画像から植生領域を抽出する(ステップS106)。植生領域抽出部153は、二値画像に対してラベリング等の処理を実行し、相互に隣接する有効画素で構成される領域を有効領域として抽出する。植生領域抽出部153は、抽出した有効領域の座標を示すデータを植生領域ポリゴンデータとして生成し、光学画像内で、植生領域ポリゴンデータに対応する領域を植生領域として抽出する。
【0060】
図6Bは、植生領域について説明するための模式図である。
【0061】
図6Bに示す画像610は、図3Aに示したRGB画像300と同じ画像である。画像610において、領域612は、植生領域抽出部153により抽出された植生領域302に対応する領域を示す。図6Bに示すように、植生領域302に対応する各領域が、植生領域抽出部153により植生領域612として抽出されている。このように、検出装置1は、植生指標とGSI指標との差分を利用することにより、植生領域を高精度に検出することができる。
【0062】
また、以降、この植生領域に対してのみ処理が実行されるため、検出装置1は、枯損木領域検出処理を高速化できる。なお、植生領域抽出部153は、例えばJAXAが提供する日本域高解像度土地利用土地被覆図等により、土地の利用状況を事前に取得している場合には、その利用状況に基づいて植生領域を抽出してもよい。
【0063】
なお、ステップS102において、指標算出部152は、第2光学画像から、第2光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出してもよい。その場合、指標算出部152は、ステップS103において、第2光学画像から、第2光学画像に含まれる複数の画素ごとにGSI指標を算出し、ステップS104において、第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標とGSI指標との差分を算出する。そして、植生領域抽出部153は、ステップS106において、第2光学画像から植生領域を抽出する。これにより、植生領域抽出部153は、第1光学画像が撮像された時には存在しておらず、第2光学画像が撮像される前に植生された樹木が含まれるように植生領域を抽出することができる。一方、植生領域抽出部153は、第1光学画像から算出された植生指標及びGSI指標を利用することにより、第2光学画像が撮像される前に完全に枯損した樹木が含まれるように植生領域を抽出することができる。
【0064】
また、指標算出部152は、第1光学画像から、第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出しつつ、第2光学画像から、第2光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出してもよい。その場合、植生領域抽出部153は、ステップS106において第1光学画像から抽出された植生領域のうち、第2光学画像から抽出された植生領域に対応(重複)する領域のみを植生領域として抽出する。また、植生領域抽出部153は、ステップS106において第1光学画像から抽出された植生領域及び第2光学画像から抽出された植生領域の少なくとも一方に対応する領域を植生領域として抽出してもよい。
【0065】
次に、植生指標画像生成部154は、第1光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出し、第2光学画像に含まれる複数の画素ごとに植生指標を算出する(ステップS107)。植生指標画像生成部154は、ステップS102の処理と同様にして、各画素の植生指標を算出する。植生指標画像生成部154は、第1光学画像において植生領域に対応する領域に含まれる各画素の植生指標を算出する。また、植生指標画像生成部154は、第2光学画像において植生領域に対応する領域に含まれる各画素の植生指標を算出する。検出装置1は、各光学画像において植生領域に対応する領域のみについて植生指標を算出することにより、各光学画像に含まれる全ての画素の植生指標を算出する場合と比較して、枯損木領域検出処理を高速化できる。
【0066】
なお、植生指標画像生成部154は、第1光学画像及び第2光学画像のうち、ステップS102において指標算出部152により既に植生指標が算出されている画像については、算出済みの植生指標を利用し、植生指標の算出を省略してもよい。
【0067】
次に、植生指標画像生成部154は、第1光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第1植生指標画像を生成する。また、植生指標画像生成部154は、第2光学画像に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とする第2植生指標画像を生成する(ステップS108)。
【0068】
植生指標画像生成部154は、第1光学画像において植生領域に対応する領域に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とするように第1植生指標画像を生成する。また、植生指標画像生成部154は、第2光学画像において植生領域に対応する領域に含まれる各画素の植生指標を、対応する画素の画素値とするように第2植生指標画像を生成する。検出装置1は、植生領域に対応する領域の画素についてのみ画素値を植生指標に設定することにより、全ての画素について画素値を植生指標に設定する場合と比較して、枯損木領域検出処理を高速化できる。
【0069】
次に、差分画像生成部155は、第1植生指標画像に含まれる各画素の植生指標と、第2植生指標画像に含まれる各画素の植生指標との差分値を、対応する画素の画素値とする差分画像を生成する(ステップS109)。差分画像生成部155は、第2植生指標画像内で植生領域に対応する領域に含まれる各画素の植生指標から、第1植生指標画像内の対応する画素の植生指標を減じた差分値を、対応する画素の画素値とするように差分画像を生成する。
【0070】
第1光学画像と第2光学画像において相互に対応する画素には同一位置が写っている。各位置に存在する樹木の活性度が第1時期から第2時期までの間に変化していない場合、差分画像においてその位置に対応する画素の階調値は略0となる。一方、各位置に存在する樹木の活性度が第1時期から第2時期までの間に低下した場合、差分画像においてその位置に対応する画素の階調値は、絶対値の大きい負の値となる。
【0071】
図7Aは、第1時期からその一年後の第2時期まで健全な状態を維持した針葉樹が、第1時期に撮像されたRGB画像700の一例を示す。図7Bは、その針葉樹が第2時期に撮像されたRGB画像710の一例を示す。
【0072】
図7AのRGB画像700及び図7BのRGB画像710に写っている樹木は、全て健全な状態を有している。但し、第1時期と第2時期とで日照条件が変化しており、RGB画像710は、RGB画像700と比較して全体的に明るい(高輝度である)。
【0073】
図7Cは、RGB画像700及びRGB画像710において相互に対応する画素の植生指標の関係を示すグラフ720を示す。
【0074】
図7Cの横軸は、RGB画像700内のライン701、及び、RGB画像710においてライン701に対応するライン711上の画素位置を示す。図7Cの縦軸は、各画素位置に配置された画素の植生指標(WDRVI)を示す。点群721は、ライン701上の各画素の植生指標、即ち第1時期における植生指標をプロットした各点を示す。点群722は、ライン711上の各画素の植生指標、即ち第2時期における植生指標をプロットした各点を示す。図7Cに示すように、第1時期から第2時期まで健全な状態を維持した針葉樹について第1時期における植生指標と第2時期における植生指標とは相互に近似している。しかしながら、第1時期と第2時期とで日照条件が変化しているため、第1時期における植生指標と第2時期における植生指標とは全体的に相互に異なっている。但し、第1時期における植生指標と第2時期における植生指標との差は、全ての位置において略一定である。
【0075】
図8Aは、第1時期からその一年後の第2時期まで健全な状態を維持した広葉樹が、第1時期に撮像されたRGB画像800の一例を示す。図8Bは、その広葉樹が第2時期に撮像されたRGB画像810の一例を示す。
【0076】
図8AのRGB画像800及び図8BのRGB画像810に写っている樹木は、全て健全な状態を有している。但し、第1時期と第2時期とで日照条件が変化しており、RGB画像810は、RGB画像800と比較して全体的に明るい(高輝度である)。
【0077】
図8Cは、RGB画像800及びRGB画像810において相互に対応する画素の植生指標の関係を示すグラフ820を示す。
【0078】
図8Cの横軸は、RGB画像800内のライン801、及び、RGB画像810においてライン801に対応するライン811上の画素位置を示す。図8Cの縦軸は、各画素位置に配置された画素の植生指標(GRVI)を示す。点群821は、ライン801上の各画素の植生指標、即ち第1時期における植生指標をプロットした各点を示す。点群822は、ライン811上の各画素の植生指標、即ち第2時期における植生指標をプロットした各点を示す。図8Cに示すように、第1時期から第2時期まで健全な状態を維持した広葉樹について第1時期における植生指標と第2時期における植生指標とは相互に近似している。しかしながら、第1時期と第2時期とで日照条件が変化しているため、第1時期における植生指標と第2時期における植生指標とは全体的に相互に異なっている。但し、第1時期における植生指標と第2時期における植生指標との差は、全ての位置において略一定である。
【0079】
図9Aは、第1時期には健全であったが、その一年後の第2時期には不健全になっていた樹木が、第1時期に撮像されたRGB画像900の一例を示す。図9Bは、その樹木が第2時期に撮像されたRGB画像910の一例を示す。
【0080】
図9AのRGB画像900に写っている樹木は、全て健全な状態を有している。但し、図9BのRGB画像910において、RGB画像900の領域902に対応する領域912に写っている樹木の一部は、不健全な状態を有している。また、第1時期と第2時期とで日照条件が変化しており、RGB画像910は、RGB画像900と比較して全体的に明るい(高輝度である)。
【0081】
図9Cは、RGB画像900及びRGB画像910において相互に対応する画素の植生指標の関係を示すグラフ920を示す。
【0082】
図9Cの横軸は、RGB画像900内のライン901、及び、RGB画像910においてライン901に対応するライン911上の画素位置を示す。図9Cの縦軸は、各画素位置に配置された画素の植生指標(WDRVI)を示す。点群921は、ライン901上の各画素の植生指標、即ち第1時期における植生指標をプロットした各点を示す。点群922は、ライン911上の各画素の植生指標、即ち第2時期における植生指標をプロットした各点を示す。図9Cに示すように、樹木が不健全な状態になっている領域912に対応する範囲923では、第2時期における植生指標は、第1時期における植生指標より低い。特に、範囲923での第2時期における植生指標と、第1時期における植生指標との差は、範囲923以外の範囲での第2時期における植生指標と、第1時期における植生指標との差より大きい。
【0083】
図10Aは、差分画像1000の一例を示す。
【0084】
図10Aに示す例では、差分値が低い画素ほど、高い輝度(白色に近い)で示され、差分値が高い画素ほど、低い輝度(黒色に近い)で示されている。差分画像1000内の各領域1001は、第1時期には健全であったが、第2時期には不健全になっていた樹木が存在する領域であり、各領域1001以外の領域1002は、第1時期から第2時期まで健全な状態を維持している樹木が存在する領域である。
【0085】
図10Aに示すように、第1時期には健全であったが、第2時期には不健全になっていた樹木が存在する領域1001では、植生指標の変化量(低下量)が大きい。一方、第1時期から第2時期まで健全な状態を維持している樹木が存在する領域1002においても、植生指標の変化量(低下量)が小さいものの、第1時期と第2時期との日照条件の変化の影響により、植生指標は変化(低下)している。
【0086】
なお、差分画像生成部155は、第2植生指標画像内で植生領域に対応する領域に含まれる各画素の植生指標から、第1植生指標画像内の対応する画素の植生指標を減じた差分値の絶対値を、対応する画素の画素値とするように差分画像を生成してもよい。
【0087】
次に、エッジ画素抽出部156は、差分画像生成部155が生成した差分画像に対して平滑化処理を実行する(ステップS110)。エッジ画素抽出部156は、平滑化処理として、例えば差分画像にメディアンフィルタを適用する。エッジ画素抽出部156は、差分画像にメディアンフィルタを適用することにより、差分画像内の各画素の画素値を、その画素及びその周辺画素の画素値の中央値に置換する。これにより、エッジ画素抽出部156は、ごま塩ノイズ又はスパイクノイズ等のノイズを除去する。
【0088】
図10Bは、平滑化処理としてメディアンフィルタが適用された差分画像1010の一例を示す。
【0089】
図10Bに示す差分画像1010は、図10Aに示す差分画像1000にメディアンフィルタを適用することにより生成された画像である。図10Bに示すように、差分画像1000にメディアンフィルタが適用されることにより、植生指標が大きく変化した領域1001の輪郭は維持されつつ、ノイズが除去される。したがって、検出装置1は、差分画像から、植生指標が大きく変化した領域の輪郭を高精度に検出することができる。
【0090】
なお、エッジ画素抽出部156は、ガウシアンフィルタ又は逐次近似フィルタ等の他の公知の平滑化処理を差分画像に適用してもよい。
【0091】
次に、エッジ画素抽出部156は、差分画像からエッジ画素を抽出する(ステップS111)。エッジ画素抽出部156は、平滑化処理が実行された差分画像からエッジ画像を抽出する。エッジ画素抽出部156は、例えば差分画像内の変曲点をエッジ画素として抽出する。変曲点は、例えば、差分画像内で水平方向又は垂直方向に連続する画素群において、各画素の植生指標を示す曲線の曲率が符号を変える点である。
【0092】
例えば、エッジ画素抽出部156は、差分画像内で水平方向に連続する複数の画素の画素値についてソーベル法により一次微分を行い、画素値の勾配(一次微分値)が極大値又は極小値となる画素を変曲点として抽出する。同様に、エッジ画素抽出部156は、差分画像内で垂直方向に連続する複数の画素の画素値に対してソーベル法により一次微分を行い、画素値の勾配(一次微分値)が極大値又は極小値となる画素を変曲点として抽出する。
【0093】
なお、エッジ画素抽出部156は、差分画像内で水平方向に連続する複数の画素の画素値についてラプラシアン法により二次微分を行い、画素値の勾配の傾き(二次微分値)が0となる画素(ゼロクロッシング点)を変曲点として抽出してもよい。その場合、さらに、エッジ画素抽出部156は、差分画像内で垂直方向に連続する複数の画素の画素値についてラプラシアン法により二次微分を行い、画素値の勾配の傾き(二次微分値)が0となる画素(ゼロクロッシング点)を変曲点として抽出する。
【0094】
また、エッジ画素抽出部156は、周辺画素の画素値の最大値から最小値を減じた差分値が所定閾値以上である変曲点に限りエッジ画素として抽出してもよい。所定閾値は、事前の実験により、健全な樹木が写っている領域と不健全な樹木が写っている領域の境界で算出される上記の差分値と、健全な樹木が写っている領域内で算出される上記の差分値との間の値に設定される。周辺画素は、所定距離(例えば3画素)以内の画素に設定される。
【0095】
また、エッジ画素抽出部156は、例えば、水平方向又は垂直方向において、隣接する画素又は所定距離だけ離れた画素との画素値の差が上記の所定閾値以上である画素をエッジ画素として抽出してもよい。
【0096】
これにより、検出装置1は、枯損木領域と非枯損木領域との境界を高精度に抽出することができる。
【0097】
図11は、図10Bに示す差分画像1010内の領域から抽出されたエッジ画素の一例を示す。
【0098】
図11に示す画像1100は、図10Bに示した差分画像1010と同じ画像である。画像1100において、植生指標が大きく変化した各領域1001の輪郭1101上の画素がエッジ画素として抽出される。
【0099】
次に、検出部157は、エッジ画素抽出部156が抽出したエッジ画素に基づいて、枯損木が存在する枯損木領域を検出する(ステップS112)。検出部157は、エッジ画素抽出部156が抽出したエッジ画素で囲まれる領域を、枯損木領域として検出する。検出部157は、エッジ画素を有効画素とし、非エッジ画素を無効画素とするエッジ画像を生成する。なお、検出部157は、エッジ画像内で相互に所定距離だけ離間する有効画素(エッジ画素)をつなげるように、エッジ画像内で有効画素に対して膨張・収縮処理を実施してもよい。検出部157は、生成したエッジ画像から、ラベリング等により有効画素で囲まれる領域を検出する。検出部157は、差分画像内で、エッジ画像から検出した領域に対応する領域を枯損木領域として検出する。一方、検出部157は、植生領域内で、枯損木領域以外の領域を非枯損木領域として検出する。
【0100】
図11に示す画像1100では、各輪郭1101で囲まれる領域1102が枯損木領域として検出される。
【0101】
図7C及び図8Cに示したように、健全な状態を維持した樹木について異なる時期に撮像された二つの光学画像からそれぞれ算出された植生指標は、日照条件の変化の影響により、相互に異なる可能性がある。そのため、異なる時期に撮像された二つの光学画像からそれぞれ算出された植生指標の差の大きさに基づいて枯損木領域が検出される場合、日照条件が変化することによって、枯損木を含まない領域が枯損木領域として誤って検出される可能性がある。一方、日照条件の変化により発生する、第1時期における植生指標と第2時期における植生指標との差は、画像内の全ての位置において略一定である。また、図9Cに示したように、樹木が不健全な状態に変化している領域と、樹木が健全な状態を維持している領域との境界において、第1時期における植生指標と第2時期における植生指標との差が大きく変化する。
【0102】
検出装置1は、異なる時期に撮像された二つの光学画像からそれぞれ算出された植生指標の差を示す差分画像内のエッジ画素、即ち異なる時期における植生指標の差の変化に基づいて枯損木領域を検出する。これにより、検出装置1は、異なる時期に生成された二つの光学画像から、日照条件の変化により画像全体に与えられる画素値の変動の影響を受けることなく、枯損木領域を高精度に検出することができる。
【0103】
次に、出力制御部158は、枯損木領域に関する情報を出力し(ステップS113)、一連の枯損木領域検出処理を終了する。出力制御部158は、検出部157により検出された枯損木領域に関する情報を表示部13に表示することにより出力する。出力制御部158は、通信部12を介して、枯損木領域に関する情報を外部の情報処理装置に送信することにより、出力してもよい。出力制御部158は、例えばRGB画像上で枯損木領域を他の領域と異なる色で表示すること又は太線で囲うことにより強調表示して、他の領域に対して区別可能に表示した画像を生成し、枯損木領域に関する情報として出力する。出力制御部158は、枯損木領域を示す緯度又は経度を枯損木領域に関する情報として出力してもよい。
【0104】
なお、ステップS103の処理は省略され、ステップS106において、植生領域抽出部153は、GSI指標画像を用いずに、植生指標画像のみを用いて植生領域を抽出してもよい。また、ステップS106において、植生領域抽出部153は、植生指標画像を用いずに、GSI指標画像のみを用いて植生領域を抽出してもよい。また、ステップS102~S106の処理は省略され、ステップS107において、植生指標画像生成部154は、第1光学画像の全領域に含まれる各画素の植生指標、及び、第2光学画像の全領域に含まれる各画素の植生指標を算出してもよい。また、ステップS110の処理は省略され、ステップS111において、エッジ画素抽出部156は、平滑化処理が実行されていない差分画像からエッジ画像を抽出してもよい。
【0105】
なお、図9では樹木の不健全な状態の検出にWDRVIを用いているが、これに限られるものではなく、上述したNDVI及びGRVI、並びに、SAVI(Soil Adjusted Vegetation Index)等の植生指標を用いてもよい。また、複数の植生指標を2以上組み合わせて用いてもよい。一般に、撮影時期や撮影に用いるセンサの特性に応じて、各指標を用いた場合における植生領域の検出精度に差があると考えられる。このため、複数の指標を組み合わせて用いる場合には、例えば、検出部157が複数の指標から求めた枯損木領域の論理和を求めることにより植生領域の検出漏れを低減することができる。
【0106】
また、検出部157が複数の指標から求めた枯損木領域の論理積を求めることにより、より植生領域である可能性の高い領域を特定し、当該領域を優先的に目視にて現地確認するなど、点検作業を効率化することができる。更に、検出部157が複数の指標から求めた枯損木領域の論理和と論理積を組み合わせて用いることも可能である。
【0107】
以上詳述したように、検出装置1は、異なる時期における植生指標の差の変化に基づいて、枯損木領域を検出する。これにより、検出装置1は、異なる時期に生成された二つの光学画像から、日照条件の変化により画像全体に与えられる画素値の変動の影響を受けることなく、枯損木領域を検出することができる。したがって、検出装置1は、枯損木が存在する枯損木領域を高精度に検出することができる。
【0108】
また、検出装置1は、撮像時期が異なる任意の二つの光学画像を用いて、枯損木領域を高精度に検出することができる。したがって、検出装置1は、枯損木領域を検出するための光学画像を特定の基準に従って選別する必要がなく、効率良く、枯損木領域を検出することができる。
【0109】
また、検出装置1が枯損木領域を画像処理で自動的に検出することにより、利用者は、効率良く樹木の点検作業を行うことができる。したがって、検出装置1は、利用者の利便性を向上させることができる。
【0110】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本発明の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 検出装置
151 画像取得部
152 指標算出部
153 植生領域抽出部
154 植生指標画像生成部
155 差分画像生成部
156 エッジ画素抽出部
157 検出部
158 出力制御部
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11