(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150601
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】表示駆動装置、基準ガンマ電圧供給装置及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20231005BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20231005BHJP
G02F 1/133 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 611E
G09G3/20 612F
G09G3/20 641Q
G09G3/20 624C
G02F1/133 550
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059798
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 鋼児
【テーマコード(参考)】
2H193
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H193ZA04
2H193ZA07
2H193ZD23
2H193ZF04
2H193ZF05
2H193ZF13
2H193ZF33
2H193ZF34
2H193ZH26
2H193ZH53
5C006AF13
5C006AF44
5C006AF46
5C006AF52
5C006AF53
5C006AF73
5C006AF83
5C006BB16
5C006BC03
5C006BC11
5C006BF04
5C006BF25
5C006BF34
5C006BF43
5C006FA41
5C006GA02
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD06
5C080DD08
5C080DD22
5C080EE29
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080KK50
(57)【要約】
【目的】回路規模の増大を抑えて、フリッカの発生を抑制することが可能な表示駆動装置、基準ガンマ電圧供給装置及び表示装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明は、基準共通電圧を増幅した電圧を共通電圧として共通電極に印加する共通電圧生成回路と、所定のガンマ特性に沿った第1~第kの基準ガンマ電圧を生成する基準ガンマ電圧生成回路と、共通電極の電圧を表示パネルから取り込み、取り込んだ共通電極の電圧と基準共通電圧との差分に基づき第1~第kの基準ガンマ電圧各々の電圧値を調整した第1~第kの補償基準ガンマ電圧を生成するガンマ補償回路と、夫々が第1~第kの補償基準ガンマ電圧を受け、第1~第kの補償基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧を生成し、当該複数の階調電圧のうちから映像信号にて示される輝度レベルに対応した階調電圧を選択しこの階調電圧をデータラインの各々に供給する複数のデータドライバと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータライン、及び前記複数の表示セルに共通に接続されている共通電極を含む表示パネルを映像信号に応じて駆動する表示駆動装置であって、
基準共通電圧を受け、前記基準共通電圧を増幅した電圧を共通電圧として前記共通電極に印加する共通電圧生成回路と、
所定のガンマ特性に沿った第1~第k(kは2以上の整数)の基準ガンマ電圧を生成する基準ガンマ電圧生成回路と、
前記共通電極の電圧を前記表示パネルから取り込み、取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との比較結果に基づき前記第1~第kの基準ガンマ電圧各々の電圧値を調整した第1~第kの補償基準ガンマ電圧を生成するガンマ補償回路と、
夫々が前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を受け、前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧を生成し、前記複数の階調電圧のうちで前記映像信号にて示される輝度レベルに対応した階調電圧を前記データラインに供給する、少なくとも1つのデータドライバと、を有することを特徴とする表示駆動装置。
【請求項2】
前記ガンマ補償回路は、前記取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との差分を前記第1~第kの基準ガンマ電圧の各々に加えることで前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を得ることを特徴とする請求項1に記載の表示駆動装置。
【請求項3】
前記ガンマ補償回路は、前記第1~第kの基準ガンマ電圧を個別に受け、夫々が前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を個別に生成する第1~第kの補償回路を含み、
前記第1~第kの補償回路の各々は、
第1の定電流を生成する第1の電流源と、
前記取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との大きさの比で前記第1の定電流を2分割した電流を第1のノード及び第2のノードに夫々流す第1の差動段と、
第2の定電流を生成する第2の電流源と、
前記基準ガンマ電圧と前記補償基準ガンマ電圧との大きさの比で前記第2の定電流を2分割した電流を前記第1のノード及び前記第2のノードに夫々流す第2の差動段と、
前記第4のノードの電圧を増幅した電圧を前記補償基準ガンマ電圧として出力するアンプと、を含むことを特徴とする請求項2に記載の表示駆動装置。
【請求項4】
複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータライン、及び前記複数の表示セルに共通に接続されている共通電極を含む表示パネルのガンマ特性に沿った第1~第k(kは2以上の整数)の基準ガンマ電圧を生成する基準ガンマ電圧生成回路と、
前記表示パネルから前記共通電極の電圧を取り込み、取り込んだ前記共通電極の電圧と所定の基準共通電圧との比較結果に基づき前記第1~第kの基準ガンマ電圧各々の電圧値を調整した第1~第kの補償基準ガンマ電圧を生成するガンマ補償回路と、を有し、
前記ガンマ補償回路は、夫々が前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧を生成し、前記複数の階調電圧のうちで入力映像信号にて示される輝度レベルに対応した階調電圧を前記データラインに供給する少なくとも1つのデータドライバに、前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を供給することを特徴とする基準ガンマ電圧供給装置。
【請求項5】
前記ガンマ補償回路は、前記取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との差分を前記第1~第kの基準ガンマ電圧の各々に加えることで前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を得ることを特徴とする請求項4に記載の基準ガンマ電圧供給装置。
【請求項6】
前記ガンマ補償回路は、前記第1~第kの基準ガンマ電圧を個別に受け、夫々が前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を個別に生成する第1~第kの補償回路を含み、
前記第1~第kの補償回路の各々は、
第1の定電流を生成する第1の電流源と、
前記取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との大きさの比で前記第1の定電流を2分割した電流を第1のノード及び第2のノードに夫々流す第1の差動段と、
第2の定電流を生成する第2の電流源と、
前記基準ガンマ電圧と前記補償基準ガンマ電圧との大きさの比で前記第2の定電流を2分割した電流を前記第1のノード及び前記第2のノードに夫々流す第2の差動段と、
前記第4のノードの電圧を増幅した電圧を前記補償基準ガンマ電圧として出力するアンプと、を含むことを特徴とする請求項5に記載の表示駆動装置。
【請求項7】
複数の表示セルが接続されている複数のデータライン、及び前記複数の表示セルに共通に接続されている共通電極を含む表示パネルと、
基準共通電圧を受け、前記基準共通電圧を増幅した電圧を共通電圧として前記共通電極に印加する共通電圧生成回路と、
前記表示パネルのガンマ特性に沿った第1~第k(kは2以上の整数)の基準ガンマ電圧を生成する基準ガンマ電圧生成回路と、
前記共通電極の電圧を前記表示パネルから取り込み、取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との比較結果に基づき前記第1~第kの基準ガンマ電圧各々の電圧値を調整した第1~第kの補償基準ガンマ電圧を生成するガンマ補償回路と、
夫々が前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を受け、前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧を生成し、前記複数の階調電圧のうちで入力映像信号にて示される輝度レベルに対応した階調電圧を前記データラインに供給する、少なくとも1つのデータドライバと、を有することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
前記ガンマ補償回路は、前記取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との差分を前記第1~第kの基準ガンマ電圧の各々に加えることで前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を得ることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記ガンマ補償回路は、前記第1~第kの基準ガンマ電圧を個別に受け、夫々が前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を個別に生成する第1~第kの補償回路を含み、
前記第1~第kの補償回路の各々は、
第1の定電流を生成する第1の電流源と、
前記取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との大きさの比で前記第1の定電流を2分割した電流を第1のノード及び第2のノードに夫々流す第1の差動段と、
第2の定電流を生成する第2の電流源と、
前記基準ガンマ電圧と前記補償基準ガンマ電圧との大きさの比で前記第2の定電流を2分割した電流を前記第1のノード及び前記第2のノードに夫々流す第2の差動段と、
前記第4のノードの電圧を増幅した電圧を前記補償基準ガンマ電圧として出力するアンプと、を含むことを特徴とする請求項8に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像信号に応じて表示パネルを駆動する表示駆動装置、基準ガンマ電圧供給装置及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、液晶表示装置として、ゲームを快適にプレイするのに適した性能を有するゲーミングモニタが注目されている。ゲーミングモニタでは、通常のモニタよりも高いリフレッシュレートで映像を表示させることで、表示遅延を抑え且つ動きの滑らかな映像表示を実現している。
【0003】
ところで、例えばPCゲームで扱う、リアルタイム描画によって各フレームの画像が生成される映像ソースは、その時々の描画負荷によって各フレームの描画にかかる時間が異なる、いわゆる可変フレームレートの映像である。よって、このような映像ソースを受けるモニタ側のリフレッシュレートが固定であると、誤った映像が表示されてしまう。
【0004】
そこで、現在、可変フレームレートの映像ソースに追従させてリフレッシュレートを動的に変化させることができる可変リフレッシュレート同期機能を備えたゲーミングモニタが主流となっている。
【0005】
しかしながら、ゲーミングモニタ側でリフレッシュレートが動的に変化すると、当該リフレッシュレートの変化に伴うガンマ特性の変動により、画面全体の輝度が変化してしまい、これがフリッカとして目視されるという問題が生じる。
【0006】
そこで、リフレッシュレートを検知し、そのリフレッシュレートに最適な映像のガンマ値をメモリから読みだし、読み出したガンマ値でガンマ特性を変更することで、フリッカを抑制するようにした液晶表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該液晶表示装置では、自身に含まれるタイミングコントローラが、表示データと共に表示タイミングを示すイネーブル信号及びクロック信号を受け取り、これらイネーブル信号及びクロック信号に基づきリフレッシュレートを検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載の液晶表示装置では、フレーム毎にそのフレーム長(時間)を計測することで、リフレッシュレートが変化したか否かを判定している。よって、各フレームのリフレッシュレートの計測後にガンマ値の変更を行うことになるので、ガンマ値の変更タイミングが少なくとも1フレーム分遅延することになる。したがって、このような方法ではフリッカを防止することができないという問題があった。
【0009】
また、液晶表示装置の表示パネルの高精細化に伴い、当該表示パネルを駆動するドライバの回路規模が増加するので、回路規模の縮小化が望まれている。
【0010】
そこで、本発明は、回路規模の増加を抑えて、フリッカの発生を抑制することが可能な表示駆動装置、基準ガンマ電圧供給装置及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る表示駆動装置は、複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータライン、及び前記複数の表示セルに共通に接続されている共通電極を含む表示パネルを映像信号に応じて駆動する表示駆動装置であって、基準共通電圧を受け、前記基準共通電圧を増幅した電圧を共通電圧として前記共通電極に印加する共通電圧生成回路と、所定のガンマ特性に沿った第1~第k(kは2以上の整数)の基準ガンマ電圧を生成する基準ガンマ電圧生成回路と、前記共通電極の電圧を前記表示パネルから取り込み、取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との比較結果に基づき前記第1~第kの基準ガンマ電圧各々の電圧値を調整した第1~第kの補償基準ガンマ電圧を生成するガンマ補償回路と、夫々が前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を受け、前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧を生成し、前記複数の階調電圧のうちで前記映像信号にて示される輝度レベルに対応した階調電圧を前記データラインに供給する、少なくとも1つのデータドライバと、を有する。
【0012】
本発明に係る基準ガンマ電圧供給装置は、複数の表示セルが夫々に接続されている複数のデータライン、及び前記複数の表示セルに共通に接続されている共通電極を含む表示パネルのガンマ特性に沿った第1~第k(kは2以上の整数)の基準ガンマ電圧を生成する基準ガンマ電圧生成回路と、前記表示パネルから前記共通電極の電圧を取り込み、取り込んだ前記共通電極の電圧と所定の基準共通電圧との比較結果に基づき前記第1~第kの基準ガンマ電圧各々の電圧値を調整した第1~第kの補償基準ガンマ電圧を生成するガンマ補償回路と、を有し、前記ガンマ補償回路は、夫々が前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧を生成し、前記複数の階調電圧のうちで入力映像信号にて示される輝度レベルに対応した階調電圧を前記データラインに供給する少なくとも1つのデータドライバに、前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を供給する。
【0013】
本発明に係る表示装置は、複数の表示セルが接続されている複数のデータライン、及び前記複数の表示セルに共通に接続されている共通電極を含む表示パネルと、基準共通電圧を受け、前記基準共通電圧を増幅した電圧を共通電圧として前記共通電極に印加する共通電圧生成回路と、前記表示パネルのガンマ特性に沿った第1~第k(kは2以上の整数)の基準ガンマ電圧を生成する基準ガンマ電圧生成回路と、前記共通電極の電圧を前記表示パネルから取り込み、取り込んだ前記共通電極の電圧と前記基準共通電圧との比較結果に基づき前記第1~第kの基準ガンマ電圧各々の電圧値を調整した第1~第kの補償基準ガンマ電圧を生成するガンマ補償回路と、夫々が前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧を受け、前記第1~第kの補償基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧を生成し、前記複数の階調電圧のうちで入力映像信号にて示される輝度レベルに対応した階調電圧を前記データラインに供給する、少なくとも1つのデータドライバと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、表示パネルのガンマ特性に沿った基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧を生成し、当該複数の階調電圧のうちで入力映像信号によって示される輝度レベルに対応した階調電圧を表示パネルに供給する複数のデータドライバの各々に、基準ガンマ電圧ではなく表示パネルの共通電極の電圧変動分を補償した補償基準ガンマ電圧を供給する。
【0015】
すなわち、表示パネルの共通電極の電圧を取り込み、この共通電極の電圧と基準共通電圧との差分に基づき、基準ガンマ電圧の電圧値を調整した補償基準ガンマ電圧を生成するガンマ補償回路を、データドライバの外部に設ける。当該ガンマ補償回路によれば、リフレッシュレートの変更等により表示パネルの共通電極の電圧に変動が生じると、その電圧変動に追従して電圧値を変動させた補償基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧が生成される。これにより、リフレッシュレートの変化後も変化前の表示輝度を維持させることが可能となるので、フリッカの発生を抑制することが可能となる。更に、データドライバの外部にガンマ補償回路を設けることで、各データドライバの回路規模の増大を防いでいる。
【0016】
よって、本発明によれば、回路規模の増加を抑えて、フリッカの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る表示駆動装置を含む表示装置100の構成を示すブロック図である。
【
図2】表示セルPCの等価回路の一例を示す回路図である。
【
図3】データドライバ13_1の内部構成を示すブロック図である。
【
図4】階調電圧生成回路133の内部構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】ガンマ補償回路16の内部構成の一例を示す回路図である。
【
図6】ガンマ補償回路16によって共通電圧Vcomの電圧変動が補償された補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH及びG_LL各々の電圧値の推移を表す波形図である。
【
図7】リフレッシュレートの変化に伴い生じる表示画像の輝度変動の形態の一例を概略的に表す波形図である。
【
図8】リフレッシュレート変化時における表示画像の輝度変動の抑制動作を表す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明に係る表示装置100の構成を示すブロック図である。
【0020】
表示装置100は、可変リフレッシュレート同期機能を備えた例えば液晶表示装置である。
【0021】
図1に示すように、表示装置100は、駆動制御部11、走査ドライバ12、データドライバ13、共通電圧生成部14、基準ガンマ電圧生成回路15、ガンマ補償回路16及び表示パネル20を含む。
【0022】
尚、駆動制御部11、走査ドライバ12、データドライバ13、共通電圧生成部14、基準ガンマ電圧生成回路15及びガンマ補償回路16は、夫々個別の半導体ICチップに形成されている。よって、表示装置100では、駆動制御部11、走査ドライバ12、データドライバ13、共通電圧生成部14、基準ガンマ電圧生成回路15及びガンマ補償回路16が個別に形成されている複数の半導体ICチップが、表示パネル20の基板上、或いは表示パネル20の基板とは異なる他の基板上に配置される。ただし、ガンマ補償回路16については、基準ガンマ電圧生成回路15が形成されている半導体ICチップ、又は共通電圧生成部14が形成されている半導体ICチップに形成されていても良い。
【0023】
表示パネル20には、夫々が2次元画面の水平方向に伸張する走査ラインS1~Sm(mは2以上の整数)と、夫々が2次元画面の垂直方向に伸張するデータラインD1~Dn(nは2以上の整数)とが交叉して配置されている。走査ラインとデータラインとの交叉部には、例えば液晶表示素子としての表示セルPCが形成されている。更に、表示パネル20には、板状の共通電極CE、この共通電極CEに共通電圧を入力する為の端子TM0、及び共通電極CEの電圧を取り出す為の端子TM1が設けられている。
【0024】
図2は、データラインD1と走査ラインS1との交叉部に形成されている表示セルPCを抜粋して各表示セルPCの等価回路の一例を示す回路図である。
【0025】
図2に示すように、表示セルPCは、共通電極CE上に積層された画素電極EL及び液晶層LCと、画素スイッチとしてのMOS型の薄膜トランジスタTRと、を含む。画素電極ELは、表示セルPC毎に独立して設けられた透明電極であり、共通電極CEは、表示パネル20の全表示セルPCの形成領域に対応して形成された単一の透明電極である。薄膜トランジスタTRのゲートは走査ラインS1に接続されており、当該薄膜トランジスタTRのソースはデータラインD1に接続されている。更に、薄膜トランジスタTRのドレインは画素電極ELに接続されている。
【0026】
図1において、駆動制御部11は、映像信号VSを受け、当該映像信号VSから水平同期信号を検出して走査ドライバ12に供給する。更に、駆動制御部11は、当該映像信号VSに基づき各表示セルPC毎の輝度レベルを例えば8ビットの階調で表す表示データ片の列を含む画像データ信号VPDを生成し、これをデータドライバ13に供給する。尚、駆動制御部11は、映像信号VSの垂直同期信号の周波数に追従させて、画像データ信号VPDにおける各フレーム内の垂直ブランキング期間の長さを調整する。
【0027】
走査ドライバ12は、水平同期信号に応じて、選択パルスを含む選択信号を走査ラインS1~Smの各々に順次択一的に印加する。
【0028】
データドライバ13は、画像データ信号VPDに含まれる表示データ片の系列における1水平走査分のn個の表示データ片毎に、各表示データ片を、輝度レベルに対応した電圧値を有する階調電圧に変換する。そして、データドライバ13は、n個の表示データ片の夫々に対応した階調電圧を個別に増幅することでn個の駆動電圧G1~Gnを生成して表示パネル20のデータラインD1~Dnに夫々印加する。
【0029】
共通電圧生成部14は、基準共通電圧Vcom_RFを受け、当該基準共通電圧Vcom_RFを増幅するアンプBFAを含む。
【0030】
アンプBFAは、基準共通電圧Vcom_RFを例えば利得1で増幅することで、上記した階調電圧として取り得る電圧範囲の中間の電圧、つまり正極側の電圧値と負極側の電圧値との境界となる電圧を、共通電圧Vcomとして生成する。共通電圧生成部14は、当該共通電圧Vcomを表示パネル20の端子TM0に供給する。これにより、表示パネル20に形成されている全ての表示セルPCに含まれる液晶層LCには、共通電極CEを介して共通電圧Vcomが印加される。
【0031】
基準ガンマ電圧生成回路15は、基準共通電圧Vcom_RFよりも高電圧であり、且つ夫々が表示パネル20のガンマ特性に沿った電圧値を有する基準ガンマ電圧G_UH_RF、及び基準ガンマ電圧G_UL_RFを生成する。尚、基準ガンマ電圧G_UH_RFは基準ガンマ電圧G_UL_RFよりも高電圧である。
【0032】
更に、基準ガンマ電圧生成回路15は、基準共通電圧Vcom_RFよりも低電圧であり、且つ夫々が表示パネル20のガンマ特性に沿った電圧値を有する基準ガンマ電圧G_LH_RF、及び基準ガンマ電圧G_LL_RFを生成する。尚、基準ガンマ電圧G_LH_RFは基準ガンマ電圧G_LL_RFよりも高電圧である。
【0033】
つまり、基準ガンマ電圧生成回路15は、
G_UH_RF>G_UL_RF>Vcom_RF>G_LH_RF>G_LL_RF
なる大小関係を有する4系統の基準ガンマ電圧を生成する。
【0034】
尚、以降、基準共通電圧Vcom_RFよりも高電圧の基準ガンマ電圧G_UH_RF及びG_UL_RFを正極側の電圧として扱い、基準共通電圧Vcom_RFよりも低電圧の基準ガンマ電圧G_LH_RF及びG_LL_RFを負極側の電圧として扱う。
【0035】
基準ガンマ電圧生成回路15は、これら基準ガンマ電圧G_UH_RF、G_UL_RF、G_LH_RF、及びG_LL_RFをガンマ補償回路16に供給する。
【0036】
ガンマ補償回路16は、基準ガンマ電圧G_UH_RF、G_UL_RF、G_LH_RF、G_LL_RF、及び基準共通電圧Vcom_RFを受けると共に、表示パネル20の端子TM1から、共通電極CEの電圧を帰還共通電圧Vcom_FBとして取り込む。
【0037】
ガンマ補償回路16は、帰還共通電圧Vcom_FBと基準共通電圧Vcom_RFとの比較結果、つまりVcom_FBとVcom_RFとの差分に基づき、基準ガンマ電圧G_UH_RF、G_UL_RF、G_LH_RF、及びG_LL_RF各々の電圧値を調整する。これにより、ガンマ補償回路16は、基準ガンマ電圧G_UH_RF、G_UL_RF、G_LH_RF、及びG_LL_RFの各々に対して、共通電圧Vcomの電圧変動分を補償したものを補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH、及びG_LLとして生成する。
【0038】
ガンマ補償回路16は、生成した補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH、及びG_LLをデータドライバ13に供給する。
【0039】
データドライバ13は、h個(hは2以上の整数)のデータドライバ13_1~13_hから構成される。尚、データドライバ13_1~13_h、夫々個別の半導体ICチップに形成されている。
【0040】
データドライバ13_1~13_hは、表示パネル20のデータラインD1~Dnを互いに隣接するw(wは2以上の整数)本のデータラインからなるデータライン群に区分けした各データライン群に対応して設けられている。例えばデータドライバ13_1は、データラインD1~Dnのうちのw本のデータラインD1~Dwの各々に、夫々に対応した駆動電圧を供給する。また、データドライバ13_hはデータラインD1~Dnのうちのw本のデータラインDq(qは2以上の整数)~Dnに、夫々に対応した駆動電圧を供給する。
【0041】
データドライバ13_1~13_hの各々は同一の内部構成を有し、夫々が個別に、駆動制御部11から供給された画像データ信号VPD、及びガンマ補償回路16から供給された補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH、及びG_LLを受ける。
【0042】
図3は、データドライバ13_1~13_hのうちからデータドライバ13_1を抜粋して、その内部の構成を概略的に表すブロック図である。
【0043】
図3に示すように、データドライバ13_1は、データラッチ部131、DA変換部132、及び階調電圧生成回路133を含む。
【0044】
データラッチ部131は、画像データ信号VPDに含まれる表示データ片の系列中から自身に対応したw個の表示データ片を取り込み、夫々を表示データP1~PwとしてDA変換部132に供給する。
【0045】
階調電圧生成回路133は、補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH、及びG_LLに基づき、共通電圧Vcomより高く且つ夫々異なる電圧値を有する256個の正極側の電圧群、及び共通電圧Vcomより低く且つ夫々異なる電圧値を有する256個の負極側の電圧群を生成する。
【0046】
図4は、階調電圧生成回路133の構成の一例を示す回路図である。
【0047】
図4に示すように、階調電圧生成回路133は、ガンマアンプGA1~GA4、及びラダー抵抗LDRを含む。
【0048】
ガンマアンプGA1は、補償基準ガンマ電圧G_UHを受け、当該補償基準ガンマ電圧G_UHを例えば利得1で増幅して得た電圧をラダー抵抗LDRの一端に印加する。ガンマアンプGA4は、補償基準ガンマ電圧G_LLを受け、当該補償基準ガンマ電圧G_LLを例えば利得1で増幅して得た電圧をラダー抵抗LDRの他端に印加する。ガンマアンプGA2は、補償基準ガンマ電圧G_ULを受け、当該補償基準ガンマ電圧G_ULを例えば利得1で増幅して得た電圧を、ラダー抵抗LDRにおける中央の接続点よりも上記した一端側の抵抗接続点に印加する。ガンマアンプGA3は、補償基準ガンマ電圧G_LHを受け、当該補償基準ガンマ電圧G_LHを例えば利得1で増幅して得た電圧を、ラダー抵抗LDRにおける中央の接続点よりも上記した他端側の抵抗接続点に印加する。
【0049】
ラダー抵抗LDRは、直列接続された複数の抵抗からなる抵抗群を含み、上記した補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH及びG_LLを受け、512箇所の抵抗の接続点に生じた電圧を階調電圧V0~V255及びY0~Y255として出力する。すなわち、ラダー抵抗LDRは、補償基準ガンマ電圧G_UH及びG_UL間の電圧を分圧することで正極性の階調電圧群としての階調電圧V0~V255を生成する。更に、ラダー抵抗LDRは、補償基準ガンマ電圧G_LH及びG_LL間の電圧を分圧することで負極性の階調電圧群としての階調電圧Y0~Y255を生成する。
【0050】
かかる構成により、階調電圧生成回路133は、夫々が表示パネル20のガンマ特性に対応した電圧値を有する正極性の階調電圧V0~V255及び負極性の階調電圧Y0~Y255をDA変換部132に供給する。
【0051】
DA変換部132は、w個のデコーダ(DEC)を含む。各デコーダ(DEC)は、表示データP1~Pwの各々に対応して設けられており、階調電圧V0~V255及びY0~Y255を受ける。各デコーダは、階調電圧V0~V255及びY0~Y255のうちから、自身が受けた表示データPが示す輝度レベルに対応した1つの階調電圧を選択し、これを増幅したものを駆動電圧として表示パネル20の対応するデータラインDに印加する。すなわち、DA変換部132は、表示データP1~Pwに基づき生成したw個の駆動電圧を駆動電圧G1~Gwとして、表示パネル20のw本のデータラインDに印加する。
【0052】
次に、
図1に示すガンマ補償回路16の動作について詳細に説明する。
【0053】
図5は、ガンマ補償回路16の内部構成の一例を示す回路図である。
【0054】
ガンマ補償回路16は、正極側ガンマ補償回路PH及びPL、負極側ガンマ補償回路NH及びNLを有する。
【0055】
図5に示すように、正極側ガンマ補償回路PHは、第1の差動段(Vcom差動段とも称する)を構成するNチャネルMOS(metal oxide semiconductor)型のトランジスタQ1及びQ2、第2の差動段(GMA差動段とも称する)を構成するNチャネルMOS型のトランジスタQ3及びQ4を含む。また、正極側ガンマ補償回路PHは、上記したVcom差動段及びGMA差動段の負荷としてのカレントミラー回路を構成するPチャネルMOS型のトランジスタQ5及びQ6を含む。更に正極側ガンマ補償回路PHは、定電流Ivcomを流す電流源Ua1、定電流Igmaを流す電流源Ua2、及びアンプBaを含む。
【0056】
トランジスタQ1及びQ2各々のソースには、電流源Ua1の高電位側端子が接続されている。電流源Ua1の低電位側端子には、基準ガンマ電圧G_LH_RF以下の電圧値を有する負極電源電圧が印加されている。トランジスタQ1のゲートには帰還共通電圧Vcom_FBが供給されており、そのドレインはノードn1を介してトランジスタQ3及びQ5各々のドレイン、トランジスタQ5及びQ6各々のゲートに夫々接続されている。トランジスタQ2のゲートには基準共通電圧Vcom_RFが供給されており、そのドレインはノードn2を介してトランジスタQ4及びQ6各々のドレイン、及びアンプBa1の入力端に夫々接続されている。
【0057】
上記した構成により、Vcom差動段(Q1、Q2)は、帰還共通電圧Vcom_FBと基準共通電圧Vcom_RFとの大きさの比で定電流Ivcomを2分割した電流をノードn1及びn2に夫々流す。
【0058】
トランジスタQ3及びQ4各々のソースには、電流源Ua2の高電位側端子が接続されている。電流源Ua2の低電位側端子には、上記した負極電源電圧が印加されている。トランジスタQ3のゲートには基準ガンマ電圧G_UH_RFが供給されている。トランジスタQ4のゲートはアンプBaの出力端に接続されている。トランジスタQ5及びQ6各々のソースには、基準ガンマ電圧G_UH_RF以上の電圧値を有する正極電源電圧が印加されている。アンプBaは、トランジスタQ6とトランジスタQ4との接続点であるノードn2に生じた電圧を増幅した電圧を、補償基準ガンマ電圧G_UHとして出力する。
【0059】
上記した構成により、GMA差動段(Q3、Q4)は、基準ガンマ電圧G_UH_RFと補償基準ガンマ電圧G_UHとの大きさの比で定電流Igmaを2分割した電流をノードn1及びn2に夫々流す。
【0060】
正極側ガンマ補償回路PLは、上記した正極側ガンマ補償回路PHと同一の回路構成を有する。よって、
図5では、正極側ガンマ補償回路PLの詳細な回路図を省略している。ただし、正極側ガンマ補償回路PLでは、トランジスタQ3のゲートで基準ガンマ電圧G_UL_RFを受け、アンプBaが補償基準ガンマ電圧G_ULを出力すると共に、この補償基準ガンマ電圧G_ULをトランジスタQ4のゲートに供給する。
【0061】
また、
図5に示すように、負極側ガンマ補償回路NHは、第1の差動段(Vcom差動段とも称する)を構成するPチャネルMOS型のトランジスタT1及びT2、第2の差動段(GMA差動段とも称する)を構成するPチャネルMOS型のトランジスタT3及びT4を含む。また、負極側ガンマ補償回路NHは、上記したVcom差動段及びGMA差動段の負荷としてのカレントミラー回路を構成するNチャネルMOS型のトランジスタT5及びT6を含む。更に負極側ガンマ補償回路NHは、定電流Ivcomを流す電流源Ub1、定電流Igmaを流す電流源Ub2、及びアンプBbを含む。
【0062】
トランジスタT1及びT2各々のソースには、電流源Ub1の低電位側端子が接続されている。電流源Ub1の高電位側端子には上記した正極電源電圧が印加されている。トランジスタT1のゲートには帰還共通電圧Vcom_FBが供給されており、そのドレインはノードnd1を介してトランジスタT3及びT5各々のドレイン、トランジスタT5及びT6各々のゲートに夫々接続されている。トランジスタT2のゲートには基準共通電圧Vcom_RFが供給されており、そのドレインはノードnd2を介してトランジスタT4及びT6各々のドレイン、及びアンプBbの入力端に夫々接続されている。
【0063】
上記した構成により、Vcom差動段(T1、T2)は、帰還共通電圧Vcom_FBと基準共通電圧Vcom_RFとの大きさの比で定電流Ivcomを2分割した電流をノードnd1及びnd2に夫々流す。
【0064】
トランジスタT3及びT4各々のソースには、電流源Ub2の低電位側端子が接続されている。電流源Ub2の高電位側端子には上記した正極電源電圧が印加されている。トランジスタT3のゲートには基準ガンマ電圧G_LH_RFが供給されている。トランジスタT4のゲートはアンプBbの出力端に接続されている。トランジスタT5及びT6各々のソースには、上記した負極電源電圧が印加されている。アンプBbは、トランジスタT6とトランジスタT4との接続点に生じた電圧を増幅した電圧を、補償基準ガンマ電圧G_LHとして出力する。
【0065】
上記した構成により、GMA差動段(T3、T4)は、基準ガンマ電圧G_LH_RFと補償基準ガンマ電圧G_LHとの大きさの比で定電流Igmaを2分割した電流をノードnd1及びnd2に夫々流す。
【0066】
負極側ガンマ補償回路NLは、上記した負極側ガンマ補償回路NHと同一の回路構成を有する。よって、
図5では、負極側ガンマ補償回路NLの詳細な回路図を省略している。ただし、負極側ガンマ補償回路NLでは、基準ガンマ電圧G_LL_RFをトランジスタT3のゲートで受け、アンプBbが補償基準ガンマ電圧G_LLを出力すると共に、この補償基準ガンマ電圧G_LLをトランジスタT4のゲートに供給する。
【0067】
以下に、
図5に示す正極側ガンマ補償回路PH及びPL、負極側ガンマ補償回路NH及びNLの詳細な動作について説明する。
【0068】
表示パネル20の共通電極CE上の電圧、つまり共通電圧Vcomに、ノイズが混入していない場合には、基準共通電圧Vcom_RFは、
Vcom_RF=Vcom_FB
となり、
正極側ガンマ補償回路PH及びPL、負極側ガンマ補償回路NH及びNL各々のVcom差動段(Q1、Q2、T1、T2)は、夫々が(1/2)・Ivcomの電流を出力する。よって、正極側ガンマ補償回路PH及びPL、負極側ガンマ補償回路NH及びNL各々のGMA差動段(Q3、Q4、T3、T4)では、定電流Igmaも等分に分流される。その結果、(1/2)・Ivcom+(1/2)・Igmaの電流が、正極側ガンマ補償回路PH及びPL、負極側ガンマ補償回路NH及びNL各々のカレントミラー回路(Q5、Q6、T5、T6)に流れ込む。よって、G_UH/G_ULは、G_UH_RF/G_UL_RFと等しくなる。
【0069】
一方、共通電圧VcomにノイズΔVが混入し、当該することで、帰還共通電圧Vcom_FBが、
Vcom_FB=Vcom_RF+ΔV
となった場合には、Vcom差動段に流れる電流は、
Vcom_FB側:(1/2)・Ivcom+(1/2)・ΔV・Gmq1
Vcom_RF側:(1/2)・Ivcom-(1/2)・ΔV・Gmq2
Gmq1:トランジスタQ1の相互コンダクタンス
Gmq2:トランジスタQ2の相互コンダクタンス
となる。
【0070】
この際、Vcom差動段の電流とGMA差動段の電流が合流してカレントミラー回路に供給される。
【0071】
よって、GMA差動段に流れる電流は、G_xx_RF側(xxはUH、UL、LH、LL)がVcom_FB側の(1/2)・ΔV・Gmq1を補填するように動作することで、(1/2)・Igma-(1/2)・ΔV・Gmq1が流れる。更に、GMA_xx側がVcom_RF側の(1/2)・ΔV・Gmq2を補填するように動作することで、(1/2)・Igma+(1/2)・ΔV・Gmq2が流れる。その結果、IgmaがVcom側とGMA側の差動で同じ値となるように設定すると、G_xx=G_xx_RF+ΔVとなり、Vcom_FBの電圧変動分がそのままG_xxに上乗せされる。
【0072】
これにより、
G_xx-Vcom_FB=(G_xx_RF+ΔV)-(Vcom_RF+ΔV)
=G_xx_RF-Vcom_RF
となり、
補償基準ガンマ電圧G_xxと帰還共通電圧Vcom_FBとの差分が常に一定となる。
【0073】
上記した動作により、正極側ガンマ補償回路PHは、基準ガンマ電圧G_UH_RFに対して、
G_UH_RF+Vcom_FB=G_UH+Vcom_RF
を満たすような補償基準ガンマ電圧G_UHを生成し、これをアンプBaを介して出力する。つまり、正極側ガンマ補償回路PHは、基準ガンマ電圧G_UH_RFに、帰還共通電圧Vcom_FBと基準共通電圧Vcom_RFとの差分を加算した電圧を、補償基準ガンマ電圧G_UHとして出力する。
【0074】
また、正極側ガンマ補償回路PLは、基準ガンマ電圧G_UL_RFに対して、
G_UL_RF+Vcom_FB=G_UL+Vcom_RF
を満たすような補償基準ガンマ電圧G_ULを生成し、これをアンプBaを介して出力する。つまり、正極側ガンマ補償回路PLは、基準ガンマ電圧G_UL_RFに、帰還共通電圧Vcom_FBと基準共通電圧Vcom_RFとの差分を加算した電圧を、補償基準ガンマ電圧G_ULとして出力する。
【0075】
また、負極側ガンマ補償回路NHは、基準ガンマ電圧G_LH_RFに対して、
G_LH_RF+Vcom_FB=G_LH+Vcom_RF
を満たすような補償基準ガンマ電圧G_LHを生成し、これをアンプBbを介して出力する。つまり、負極側ガンマ補償回路NHは、基準ガンマ電圧G_LH_RFに、帰還共通電圧Vcom_FBと基準共通電圧Vcom_RFとの差分を加算した電圧を、補償基準ガンマ電圧G_LHとして出力する。
【0076】
また、負極側ガンマ補償回路NLは、基準ガンマ電圧G_LL_RFに対して、
G_LL_RF+Vcom_FB=G_LL+Vcom_RF
を満たすような補償基準ガンマ電圧G_LLを生成し、これをアンプBbを介して出力する。つまり、負極側ガンマ補償回路NLは、基準ガンマ電圧G_LL_RFに、帰還共通電圧Vcom_FBと基準共通電圧Vcom_RFとの差分を加算した電圧を、補償基準ガンマ電圧G_LLとして出力する。
【0077】
以上、詳述したように、ガンマ補償回路16は、表示パネル20から取り込んだ帰還共通電圧Vcom_FBと基準共通電圧Vcom_RFとの差分を、基準ガンマ電圧G_UH_RF、G_UL_RF、G_LH_RF、及びG_LL_RF各々の電圧値に加算することで、各基準ガンマ電圧の電圧値を調整する。これにより、ガンマ補償回路16は、基準ガンマ電圧G_UH_RF、G_UL_RF、G_LH_RF、及びG_LL_RFの各々に対して、共通電圧Vcomの電圧変動分を補償したものを補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH、及びG_LLとして生成する。
【0078】
図6は、ガンマ補償回路16によって帰還共通電圧Vcom_FBの変動分が補償された補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH及びG_LL各々の電圧値の推移を表す波形図である。尚、
図6では、1フレーム分の表示期間を抜粋して、データドライバ13が駆動電圧G1~Gwを表示パネル20に供給するアクティブ期間AP、及び垂直ブランキング期間BP各々での各電圧の波形を表している。
【0079】
図6に示すように、ガンマ補償回路16によれば、表示パネル20の共通電極CEに生じている電圧変動を反映させた帰還共通電圧Vcom_FBの変動に拘らず、アクティブ期間AP及び垂直ブランキング期間BPに亘り、帰還共通電圧Vcom_FBと補償基準ガンマ電圧G_UHとの差は一定の電圧差Vf1となる。また、帰還共通電圧Vcom_FBと補償基準ガンマ電圧G_ULとの差は一定の電圧差Vf2となる。また、帰還共通電圧Vcom_FBと補償基準ガンマ電圧G_LHとの差は一定の電圧差Vf3となる。更に、帰還共通電圧Vcom_FBと補償基準ガンマ電圧G_LLとの差は一定の電圧差Vf4となる。そして、ガンマ補償回路16は、このように帰還共通電圧Vcom_FBの変動分が補償された補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH、及びG_LLを、データドライバ13_1~13_h各々の階調電圧生成回路133に供給する。
【0080】
すなわち、基準ガンマ電圧生成回路15及びガンマ補償回路16を含む基準ガンマ電圧供給部は、表示パネル20のガンマ特性に沿った基準ガンマ電圧(G_UH_RF、G_UL_RF、G_LH_RF、G_LL_RF)に対して共通電極CEの電圧(Vcom_FB)の変動分を補償した補償基準ガンマ電圧(G_UH、G_UL、G_LH、G_LL)を、データドライバ13_1~13_hの各々に供給する。
【0081】
以下に、ガンマ補償回路16による、表示装置100のリフレッシュレートの変更に伴い生じる輝度変動の抑制処理について説明する。
【0082】
図7は、リフレッシュレートの変化時に生じる、従来の表示装置の表示画像の輝度変動の形態の一例を概略的に表す波形図である。
【0083】
図7に示す一例では、従来の表示装置が高周波数のリフレッシュレートでの表示駆動(高RF駆動RP1)を行い、時点t0で低周波数のリフレッシュレートでの表示駆動(低RF駆動RP2)に切り替えた場合での表示画像の輝度を輝度YQとして表す。
【0084】
尚、
図7では、高RF駆動RP1を行う期間、及び低RF駆動RP2を行う期間のいずれにおいても、同一輝度の画像を表示する駆動を行っているものとする。
【0085】
また、表示装置の可変リフレッシュレート同期機能によると、高RF駆動RP1及び低RF駆動RP2のいずれを行う場合にも、各フレーム内でのアクティブ期間APの長さは同一であるものの、垂直ブランキング期間BPの長さがリフレッシュレートが低くなるほど長くなる。
【0086】
この際、垂直ブランキング期間BPでは、画像データ信号に基づく駆動電圧が表示パネルに印加されないので、表示パネルの共通電極CEに印加されていた共通電圧Vcomの電圧値が、
図7に示すように時間経過につれて徐々に低下してゆく。尚、高RF駆動RP1の実行時における垂直ブランキング期間BPよりも、低RF駆動RP2の実行時における垂直ブランキング期間BPの方が長い。よって、
図7に示すように、高RF駆動RP1時における垂直ブランキング期間BPでの共通電圧Vcomの低下量よりも、低RF駆動RP2時における垂直ブランキング期間BPでの共通電圧Vcomの低下量が大きくなる。
【0087】
従って、このような共通電圧Vcomの変動に起因して、
図7に示すように、高RF駆動RP1時において表示画像から視認される視認輝度AY1が、低RF駆動RP2に切り替わることで視認輝度AY2に遷移する。よって、これがフリッカとして視認されてしまうと考えられる。
【0088】
そこで、表示装置100では、ガンマ補償回路16により、表示パネル20の共通電極CEの電圧、つまり共通電圧Vcomの電圧変動分を補償した補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH及びG_LLを生成する。そして、当該補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH及びG_LLに基づいて、データドライバ13_1~13_h各々の階調電圧生成回路133が、各データドライバ毎の階調電圧V0~V255及びY0~Y255を個別に生成する。
【0089】
これにより、補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH及びG_LLの各々と、帰還共通電圧Vcom_FBとの差分は、
図6に示すように常に一定となる。よって、補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH及びG_LLに基づいて生成される階調電圧V0~V255及びY0~Y255各々の電圧値と、帰還共通電圧Vcom_FBとの差も、画像データ信号VPDによって表される画像自体が変化しなければ、当該帰還共通電圧Vcom_FBの変動に拘わらず常に一定となる。
【0090】
図8は、ガンマ補償回路16による、リフレッシュレート変化時における表示画像の輝度変動の抑制動作を表す波形図である。
【0091】
ガンマ補償回路16によれば、リフレッシュレートが変化したか否かに拘わらず、常時、共通電圧Vcomの電圧変動分を補償した補償基準ガンマ電圧G_UH、G_UL、G_LH及びG_LLに基づき、階調電圧V0~V255及びY0~Y255の生成が為されるようになる。
【0092】
よって、ガンマ補償回路16によれば、高RF駆動RP1から低RF駆動RP2に切り替わるリフレッシュレートの変化に伴い共通電極CEの電圧(Vcom_FB)が変動しても、そのリフレッシュレートの変化時点(t0)の前後において切替直前の視認輝度AY1が維持される。これにより、リフレッシュレートの変化時点(t0)から1フレームの期間が経過した時点(t1)でリフレッシュレートの変化を検知してガンマ特性の調整が開始される場合に比べて迅速に、視認輝度の変動、つまりフリッカを抑制することが可能となる。
【0093】
更に、表示装置100では、
図1に示すように、データドライバ13_1~13_hの外部にガンマ補償回路16を設けることで、当該ガンマ補償回路16を、データドライバ13_1~13_hの各々で共有化している。これにより、データドライバ13_1~13_h各々の回路規模の増加を防いでいる。
【0094】
よって、本発明によれば、回路規模の増加を抑えて、リフレッシュレート変化時のフリッカの発生を抑制することが可能となる。
【0095】
尚、上記実施例では、リフレッシュレートの変化に伴う共通電圧Vcomの変動を例にとって表示輝度の変動を抑制する動作を説明したが、例えば外来ノイズ等を受けて共通電圧Vcomが変動した場合にも同様に、表示輝度の変動を迅速に抑制することが可能である。
【0096】
また、上記実施例では、512個の階調電圧(V0~V256、Y0~Y255)を生成する為に4個の補償基準ガンマ電圧(G_UH、G_UL、G_LH、G_LL)を用いているが、補償基準ガンマ電圧及び階調電圧及びの数は、夫々4個及び256個に限定されない。
【0097】
また、
図1では、表示パネル20を複数のデータドライバ(13_1~13_h)で駆動する表示装置100にガンマ補償回路16を適用した場合の構成を示しているが、表示パネル20を1つのデータドライバで駆動する表示装置に、ガンマ補償回路16を設けても良い。つまり、ガンマ補償回路16は、自身が生成した補償基準ガンマ電圧(G_UH、G_UL、G_LH、G_LL)を、少なくとも1つのデータドライバに供給するものであれば良い。
【0098】
要するに、本発明に係る表示駆動装置としては、以下の共通電圧生成回路、基準ガンマ電圧生成回路、ガンマ補償回路、及び少なくとも1つのデータドライバを含むものであれば良い。
【0099】
すなわち、共通電圧生成回路(14)は、基準共通電圧(Vcom_RF)を受け、これを増幅した電圧を共通電圧(Vcom)として表示パネル(20)の共通電極(CE)に印加する。
【0100】
基準ガンマ電圧生成回路(15)は、所定のガンマ特性に沿った第1~第k(kは2以上の整数)の基準ガンマ電圧(G_UH_RF、G_UL_RF、G_LH_RF、G_LL_RF)を生成する。
【0101】
ガンマ補償回路(16)は、共通電極(CE)の電圧を表示パネルから取り込み、取り込んだ共通電極の電圧(Vcom_FB)と基準共通電圧(Vcom_RF)との比較結果(差分)に基づき第1~第kの基準ガンマ電圧各々の電圧値を調整した第1~第kの補償基準ガンマ電圧(G_UH、G_UL、G_LH、G_LL)を生成する。
【0102】
データドライバ(13_1~13_h)は、夫々が第1~第kの補償基準ガンマ電圧(G_UH、G_UL、G_LH、G_LL)を受け、これら第1~第kの補償基準ガンマ電圧に基づき複数の階調電圧(V0~V255、Y0~Y255)を生成する。そして、これら複数の階調電圧のうちで入力映像信号(VS)にて示される輝度レベルに対応した階調電圧をデータラインの各々に供給する。
【符号の説明】
【0103】
13_1~13_h データドライバ
14 共通電圧生成部
16 ガンマ補償回路
20 表示パネル
133 階調電圧生成回路