(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150604
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】フラットデッキの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20231005BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E04B5/40 G
E04B1/94 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059802
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 智也
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA11
2E001GA15
2E001HB02
2E001JA01
(57)【要約】
【課題】充填物をリブ内部の長さ方向において均一に充填されたフラットデッキを施工現場で製造することで施工工期の短縮を図り、耐火性の高いフラットデッキの施工方法を提供する。
【解決手段】本発明のフラットデッキの施工方法は、フラット部と、前記フラット部の一方の面に突設されるリブとを備えるフラットデッキを用意する工程と、前記フラットデッキを建築構造物に敷設する工程と、前記建築構造物に敷設した前記フラットデッキの前記リブを加熱する工程と、加熱した前記リブの内部に、前記リブに形成された注入口から充填物を充填する工程とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラット部と、前記フラット部の一方の面に突設されるリブとを備えるフラットデッキを用意する工程と、
前記フラットデッキを建築構造物に敷設する工程と、
前記建築構造物に敷設した前記フラットデッキの前記リブを加熱する工程と、
加熱した前記リブの内部に、前記リブに形成された注入口から充填物を充填する工程とを含む、フラットデッキの施工方法。
【請求項2】
前記充填する工程において、前記注入口がある位置におけるリブの温度と前記リブの長さ方向端部の温度が40℃以上80℃以下である、請求項1に記載のフラットデッキの施工方法。
【請求項3】
前記充填する工程において、前記注入口がある位置におけるリブの温度と、前記リブの長さ方向端部の温度の差が20℃以内である、請求項1又は2に記載のフラットデッキの施工方法。
【請求項4】
前記建築構造物に敷設した前記フラットデッキの前記フラット部にコンクリートを打設する工程をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のフラットデッキの施工方法。
【請求項5】
前記コンクリートを打設する工程の後に、前記リブに注入口を形成する工程をさらに含む、請求項4に記載のフラットデッキの施工方法。
【請求項6】
防火区画構造を形成する区画材と突き合わされる位置において前記リブに前記注入口を形成する、請求項5に記載のフラットデッキの施工方法。
【請求項7】
前記充填物が耐火材料である、請求項1~6のいずれか1項に記載のフラットデッキの施工方法。
【請求項8】
前記充填物がウレタンフォームである、請求項1~7のいずれか1項に記載のフラットデッキの施工方法。
【請求項9】
前記注入口は、前記リブの底面部分に形成される、請求項1~8のいずれか1項に記載のフラットデッキの施工方法。
【請求項10】
フラット部と、前記フラット部の一方の面に突設されるリブとを備えるフラットデッキを用意する工程と、
前記フラットデッキを建築構造物に敷設する工程と、
前記リブに形成された注入口から充填物を充填する工程とを含み、
前記注入口が、前記リブの防火区画構造を形成する区画材と突き合わされる位置に配置される、フラットデッキの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物におけるフラットデッキの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリートなどの建築構造物の床又は屋根構造を築造するために、フラットデッキが使用されることがある。フラットデッキは、長手方向に沿って延び、内部に空洞を有する複数のリブがフラット部の下面に形成され、上面が平坦に形成される(例えば、特許文献1参照)。フラットデッキは、床又は屋根構造において、例えば、フラット部の上面にコンクリートが打設されるための型枠材として使用される。
【0003】
建築構造物においては、石膏ボードなどの面材によって防火区画構造が形成されることがある。防火区画構造は、火災時に火炎が燃え広がることを防ぐために、防火区画構造以外の区画は遮音や断熱を確保するために、床構造や、屋根構造との間に隙間が形成されないようにする必要がある。例えば、床構造にフラットデッキが設けられた場合、その下面に防火区画構造などの区画を形成するための区画材が突き合わせられると、リブ内部の空洞により、床構造と区画材の間に隙間ができる。そのため、区画材が突き合わされる部分では、フラットデッキを切断するなどしてリブを取り除く必要がある。リブを取り除く作業は、例えばコンクリートを打設した後、現場で行うことになる。建築現場においてリブを取り除く作業を行うと、施工が手間であり、かつ、安全面で問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、リブ内部に充填物を充填されたフラットデッキが提案されている。フラットデッキの内部に充填物として充填されると、リブ内部の空洞により、床構造と区画材の間に隙間ができることが防止され、リブを取り除く作業を省略することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リブ内部に充填物を充填されたフラットデッキは、事前に製造したものを用いる場合には、工場での充填物の注入加工を行うため、施工現場への納期が従前より長くなり、フラットデッキを用いた建築構造物の施工工期が長くなる問題があった。
また、リブ内部に充填物を充填されたフラットデッキを施工現場で製造する場合、充填物をリブ内部の長さ方向において均一に行き渡すことが困難であり、リブ内部の充填物の充填が不十分となることから耐火性が低下してしまうことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、充填物をリブ内部の長さ方向において均一に充填されたフラットデッキを施工現場で製造することで施工工期の短縮を図り、耐火性の高いフラットデッキの施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]フラット部と、前記フラット部の一方の面に突設されるリブとを備えるフラットデッキを用意する工程と、前記フラットデッキを建築構造物に敷設する工程と、前記建築構造物に敷設した前記フラットデッキの前記リブを加熱する工程と、加熱した前記リブの内部に、前記リブに形成された注入口から充填物を充填する工程とを含む、フラットデッキの施工方法。
[2]前記充填する工程において、前記注入口がある位置におけるリブの温度と前記リブの長さ方向端部の温度が40℃以上80℃以下である、[1]に記載のフラットデッキの施工方法。
[3]前記充填する工程において、前記注入口がある位置におけるリブの温度と、前記リブの長さ方向端部の温度の差が20℃以内である、[1]又は[2]に記載のフラットデッキの施工方法。
[4]前記建築構造物に敷設した前記フラットデッキの前記フラット部にコンクリートを打設する工程をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載のフラットデッキの施工方法。
[5]前記コンクリートを打設する工程の後に、前記リブに注入口を形成する工程をさらに含む、[4]に記載のフラットデッキの施工方法。
[6]防火区画構造を形成する区画材と突き合わされる位置において前記リブに前記注入口を形成する、[5]に記載のフラットデッキの施工方法。
[7]前記充填物が耐火材料である、[1]~[6]のいずれかに記載のフラットデッキの施工方法。
[8]前記充填物がウレタンフォームである、[1]~[7]のいずれかに記載のフラットデッキの施工方法。
[9]前記注入口は、前記リブの底面部分に形成される、[1]~[8]のいずれかに記載のフラットデッキの施工方法。
[10]フラット部と、前記フラット部の一方の面に突設されるリブとを備えるフラットデッキを用意する工程と、前記フラットデッキを建築構造物に敷設する工程と、前記リブに形成された注入口から充填物を充填する工程とを含み、前記注入口が、前記リブの防火区画構造を形成する区画材と突き合わされる位置に配置される、フラットデッキの施工方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、充填物をリブ内部の長さ方向において均一に充填されたフラットデッキを施工現場で製造することで施工工期の短縮を図り、耐火性の高いフラットデッキの施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るフラットデッキの施工方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2(a)は、本発明の第1の実施形態に係るフラットデッキを示す表面側の平面図であり、
図2(b)は、
図1(a)のA-A方向における断面図である。
【
図3】発明の第1の実施形態に係るフラットデッキの施工方法にて施工された構造物を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るフラットデッキの施工方法におけるフラットデッキの施工状態を示す断面図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係るフラットデッキの施工方法におけるフラットデッキの施工状態を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第1の実施形態に係るフラットデッキの施工方法におけるフラットデッキの施工状態を示す断面図であり、
図6(b)は、同状態のフラットデッキの裏面側平面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係るフラットデッキの施工方法を示すフローチャートである。
【
図8】発明の第2の実施形態に係るフラットデッキの施工方法にて施工された構造物を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るフラットデッキの施工方法は、
図1に示すように、以下の工程S1~S4を含む。
S1:フラット部と、前記フラット部の一方の面に突設されるリブとを備えるフラットデッキを用意する工程
S2:フラットデッキを建築構造物に敷設する工程
S3:建築構造物に敷設したフラットデッキのリブを加熱する工程
S4:加熱したリブの内部に、リブに形成された注入口から充填物を充填する工程
【0012】
本施工方法の工程S1において、
図2(a)及び(b)に示すように、フラット部11と、フラット部11の一方の面11Dに突設され、内部に空洞があるリブ12(12
1,12
2)とを備えるフラットデッキ1を用意する。
【0013】
フラットデッキ1は、フラット部11の上面11Uが平坦面、又は平坦面に微小な凹凸が形成され、フラット部11の下面11Dに複数のリブ12
1,12
2が突設されている。複数のリブ12
1,12
2は、横方向(Y軸方向)に沿って並べられる。なお、
図1において、リブは2つ設けられる例を代表的に示すが、リブの数は特に限定されない。各リブ12
1,12
2は、内部に空洞がある突条であり、縦方向(X軸方向)に沿って延在する。各リブ12の長手方向における両端部12A,12Bは、
図3に示すように、閉塞する構成となっており、圧潰することで閉塞し、又は、閉塞部材を用いる構成とすることができる。なお、フラットデッキ1は、例えば、鋼板などの金属板やその他の材料をロール成形やプレス成形などすることで得ることができる。
【0014】
フラットデッキ1のリブ12の断面形状は、
図2(b)に示すように、内部に空洞が形成された空洞部12aと、下面11D及び空洞部12aを連結する連結部12bとを備える。空洞部12aが形成する空洞の断面形状は、特に限定されず、内部に空洞が形成される限り、三角形、四角形及び円形などの種々の形状を取り得る。連結部12bは、空洞部12aから幅が狭められて一対の板状部が合わされるように配置されており、各板状部が、空洞部12aの上端を下面11Dに連結する。
【0015】
フラットデッキ1は、隣接して配置されるフラットデッキのリブ12と連結させる爪部18Cを備える。爪部18Cは、フラット部11の側端部18Aに設けられる。爪部18Cは、例えば、フラット部11が折り曲げられて形成される。爪部18Cは、隣接して配置されるフラットデッキ1の最も側端部18B側に設けられたリブ12の連結部12bに嵌合可能である。なお、爪部18Cは、フラットデッキ1の最も側端部18B側に設けられたリブ12の連結部12bを構成する一対の板状部の間の上方の開口より、一対の板状部の間の隙間に差し込まれて嵌合される。
なお、フラットデッキ1は、爪部14を備えていなくてもよく、例えば、複数のフラットデッキ1を連結せずに、並べて配置してもよい。
【0016】
本施工方法の工程S2において、
図3に示すように、フラットデッキ1を建築構造物である支持材14に敷設する。
フラットデッキ1は、
図3に示すように、例えば、長手方向における両端部それぞれが梁などの支持材14に載せられて、支持材14間に架設されることで、床構造及び天井構造などを構成する。フラットデッキ1は、建築物の床又は天井のスラブ等のコンクリート打設時に使用され、具体的には、フラット部11の上面11Uにコンクリートが打設される型枠の一部として使用される。
フラットデッキ1は、爪部18Cが隣接して配置されるフラットデッキ1の最も側端部18B側に設けられたリブ12の連結部12bに差し込んで嵌合されることで、隣接して配置されるフラットデッキ1同士を接続させて配置することが可能である。また、フラットデッキ1は、爪部14を備えていなくてもよく、例えば、複数のフラットデッキ1を連結せずに、並べて配置してもよい。また、フラットデッキ1は、複数ではなくてもよく、複数ではない場合には、接続させる必要はない。いずれかの手段にて、
図3に示すように、フラットデッキ1を支持材14間に架設させて配置することで、コンクリートを打設するための平坦部を形成することができる。
【0017】
本施工方法の工程S3において、
図4に示すように、加熱装置40を用いてリブ12を加熱する。加熱装置40としては、リブ12を加熱可能な装置であれば特に限定はなく、例えば、接触式ラバーヒータなどの接触式ヒータ、遠赤外線ヒータ、ガスヒータ及びオイルヒータ等が挙げられる。
【0018】
加熱装置40を用いてリブ12を加熱する方法としては、加熱装置40を、例えば、支持材14に支持させた状態でリブ12を加熱すればよい。より具体的には、
図4に示すように、加熱装置40を、上段にフラットデッキ1を架設している支持材14の下段に架設し、フラットデッキ1の1つのリブ12の長さ方向全体に対して加熱する方法が挙げられる。また、上記方法において、1つのリブ12を加熱した後に、横方向(Y軸方向)に沿って並べて配置されたリブ12へ加熱装置40を移動させることを繰り返し、隣接するリブ12を順次加熱するとよい。加熱装置40は、架設している支持材14での移動を容易にするために、車輪及び滑車等(図示しない)を備えることが好ましい。例えば、加熱装置40は、車輪及び滑車を支持材14上に配置させて、Y軸方向に沿って移動させるとよい。このように、支持材14に支持された使用される加熱装置としては、遠赤外線ヒータ、ガスヒータ及びオイルヒータ等が挙げられる。また、接触式ラバーヒータなどの接触式ヒータは、リブ12に直接取り付けてリブ12を加熱すればよい。
【0019】
本施工方法の工程S4において、工程S3の後、加熱したリブ12の内部に、リブ12の空洞部12aの底面部分に形成された注入口16から充填物を充填する。
リブ12の内部に充填物を充填するにあたって、リブ12の長手方向に沿って全体に充填させる必要はない。すなわち、充填物は、リブ12の長手方向に沿って部分的に充填してもよい。
具体的には、充填物は、注入口16からリブの両端部12A,12Bと注入口16の間の中途部分まで充填され、リブの両端部12A,12Bに充填物が充填されなくてもよい。また、後述するとおり、注入口16が2つ以上設けられる場合には、注入口16と注入口16の間の部分には、典型的には充填物が充填されるが、必ずしも充填されなくてもよい。
なお、以下の説明において、リブ12の長さ方向端部とは、リブ12において充填物が充填された部分における端部を意味する。したがって、リブ12の内部全体に充填物が充填された場合には、リブ12の両端部12A、12Bを意味するが、リブ12の内部全体に充填物が充填されない場合には、長さ方向端部とは、端部12A、12Bよりも内側部分である。
【0020】
本施工方法の工程S4において、注入口16がある位置におけるリブ12の温度と、リブ12の長さ方向端部の温度はいずれも40℃以上80℃以下であることが好ましい。また、本施工方法の工程S4において、注入口16がある位置におけるリブ12の温度と、リブ12の長さ方向端部の温度の差は、20℃以内であることが好ましい。工程S5の後、加熱したリブ12の注入口16がある部分とリブ12の長さ方向端部の温度の関係が上記範囲内となると、リブ12の内部において均一に反応した充填物を内部に充填しやくなり、例えば、空洞部12aの横断面全体にわたって充填物を充填させやすくなる。リブ12の内部において均一に反応した充填物で充填する観点から、注入口16がある位置におけるリブの温度とリブ12の長さ方向端部の温度は、45℃以上75℃以下であることが好ましく、50℃以上75℃以下であることがより好ましく、55℃以上75℃以下であることがさらに好ましい。また、同様の観点から、注入口16がある位置におけるリブ12の温度と、リブ12の長さ方向端部の温度の差は、15℃以内であることが好ましく、10℃以内であることがより好ましく、5℃以内であることがさらに好ましい。
【0021】
本実施形態において、
図5に示すように、敷設されたフラットデッキ1のフラット部11の上面11U上にコンクリート30を打設する工程をさらに含むとよい。コンクリート30を打設する工程は、典型的には、充填物をリブ12に充填する前、すなわち、工程S3の前に行うが、充填物をリブ12に充填した後に行ってもよい。
【0022】
本実施形態において、コンクリートを打設する工程の後に、
図6(a)及び(b)に示すように、リブ12に注入口16を形成する工程をさらに含むことが好ましい。コンクリート打設後であれば、リブ12に注入口16を設けても、フラットデッキ1の機械強度の低下により敷設したフラットデッキ1が変形したりすることを防止できる。
当該工程により、リブ12の底面部分には、
図6(a)及び(b)に示すように、充填物を注入するための注入口16が形成される。リブ12は、底面部分に注入口16を形成することで、充填物を底面部分から注入させて、リブ12の横断面において空洞部12aの空洞全体に行き渡らせることができる。なお、底面部分とは、リブ12の空洞部12aの断面形状が三角形や、四角形では、リブ12の底面を構成する面であるとよいが、リブ12の空洞部12aの断面形状が円形などの三角形、四角形以外の構造では、底面側から見て視認できる部分を底面部分とする。
注入口16は、各リブ12の長手方向の中央近傍に設けられてもよいし、各リブ12の両端部12A,12Bに寄った位置に設けられてもよい。
また、注入口16は、各リブ12において1つ設けられてもよいし、2つ以上設けられてもよい。
【0023】
ただし、本実施形態では、リブ12に注入口16を形成する工程は、工程S1、工程S2及び工程S3の前に行ってもよい。具体的には、リブ12に注入口16が形成されたフラットデッキ1を用意してもよく、フラットデッキ1を建築構造物に敷設する前にリブ12に注入口16を形成してもよく、コンクリートを打設する前にリブ12に注入口16を形成してもよい。
【0024】
本実施形態におけるフラットデッキの施工方法によれば、リブ内部に充填物を充填されたフラットデッキは、事前に製造したものを用いることなく、充填物をリブ内部の長さ方向において均一に充填されたフラットデッキを施工現場で製造することができ、建築構造物の施工工期の短縮を図ることができる。
また、本実施形態におけるフラットデッキの施工方法によれば、充填物をリブ内部の長さ方向において均一に充填された耐火性の高いフラットデッキを施工することができるので、耐火性の高い建築構造物とすることができる。
【0025】
本実施形態において、充填物としては、発泡体を使用することができる。充填物として発泡体を使用することで、比重が軽く建材全体の軽量化を図ることができる。充填物に使用される発泡体としては、有機発泡体が好ましい。充填物の有機発泡体としては、例えば、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、スチレンフォーム、PVCフォーム及びポリエチレンフォームなどのポリオレフィンフォームからなる群から選ばれる1種であることが好ましく、中でもウレタンフォーム及びフェノールフォームのいずれかであることがより好ましく、ウレタンフォームがさらに好ましい。また、有機発泡体以外の発泡体(無機発泡体)としては、水ガラス、発泡コンクリートなどが挙げられる。
【0026】
充填物は、防火性を高める観点から、耐火材料であるとよい。耐火材料は、建築基準法及び建築基準法施行令において定められる難燃材料相当の性能を示す材料(以下、「難燃材料」という。)のことを意味するが、準不燃材料相当の性能を示す材料(以下、「準不燃材料」という。)であることが好ましく、不燃材料相当の性能を示す材料(以下、「不燃材料」という。)であることがより好ましい。難燃材料相当の性能とは、ISO5660-1に準拠し、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、放射熱強度50kW/m2にて加熱したときに、5分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下となるものをいう。また、準不燃材料相当の性能とは、同様にして10分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下となるものをいう。また、不燃材料相当の性能とは、同様にして20分経過時の総発熱量が8MJ/m2以下となるものをいう。
【0027】
充填物としてのウレタンフォームなどの有機発泡体は、難燃材料、準不燃材料及び不燃材料の少なくともいずれかに相当する性能を有していればよく、不燃材料相当の性能を有していることが好ましい。なお、有機発泡体は、ISO-5660の試験方法に準拠した測定を行う際は、有機発泡体を縦10cm、横10cmおよび厚み5cmに切断した試験用サンプルを準備し、試験用サンプル用いてコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験を行う。
【0028】
<ウレタンフォーム>
充填物を構成するウレタンフォームについてより詳細に説明する。本実施形態で使用するウレタンフォームは、ウレタン樹脂組成物を硬化させ、発泡させることで形成されるものである。ウレタンフォームに含まれるウレタン樹脂は、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを混合させ反応させることで得られる反応生成物である。ウレタン樹脂組成物は、リブ12の内部に容易に注入でき、かつリブ12の空洞部12aにおいて隙間なく充填できるように、各種成分を混合して作製した直後においては液状である。
リブ12の空洞部12aを充填して閉塞させるウレタンフォームの施工方法としては、液状のウレタン樹脂組成物を吐出する吐出装置を用いた吐出充填が好適である。なお、吐出装置としては、例えばウレタン樹脂組成物が2液硬化型である場合には、1液と2液とを混合する混合部と、混合されて得られたウレタン樹脂組成物を吐出する吐出口とを備えるものを使用する。このような吐出装置としては、高圧式発泡機、低圧式発泡機、その他混合・吐出システム、スプレーガン及びコーキングガンなどと呼ばれるものを使用すればよい。
【0029】
ウレタンフォームを形成するウレタン樹脂組成物は、一般的にポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを含有するものである。
ウレタンフォームに使用するポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
ポリイソシアネート化合物は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が好ましい。
【0031】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール、ポリマーポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物と、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等が挙げられる。
【0032】
芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール等が挙げられる。
脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
【0033】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
ここで多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。また多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
またヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0034】
ポリマーポリオールとしては、例えば、上記した芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステルポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、多価アルコールの変性ポリオールまたは、これらの水素添加物等が挙げられる。
多価アルコールの変性ポリオールとしては、例えば、原料の多価アルコールにアルキレンオキサイドを反応させて変性したもの等が挙げられる。
変性ポリオールに使用する多価アルコールとしては、例えば、グリセリン及びトリメチロールプロパン等の三価アルコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン、ジペンタエリスリトール等、ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体等の四~八価のアルコール、 フェノール、フロログルシン、クレゾール、ピロガロール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、1-ヒドロキシナフタレン、1,3,6,8-テトラヒドロキシナフタレン、アントロール、1,4,5,8-テトラヒドロキシアントラセン、1-ヒドロキシピレン等のフェノールポリブタジエンポリオール、ひまし油ポリオール、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの重合体又は共重合体、及びポリビニルアルコール等の多官能(例えば官能基数2~100)ポリオール、フェノールとホルムアルデヒドとの縮合物(ノボラック)が挙げられる。
【0035】
多価アルコールの変性方法は特に限定されないが、アルキレンオキサイド(以下、AOと略す)を付加させる方法が好適に用いられる。
AOとしては、炭素数2~6のAO、例えば、エチレンオキサイド(以下、EOと略す)、1,2-プロピレンオキサイド(以下、POと略す)、1,3-プロピレオキサイド、1,2-ブチレンオキサイド、1,4-ブチレンオキサイド等が挙げられる。
これらの中でも性状や反応性の観点から、PO、EOおよび1,2-ブチレンオキサイドが好ましく、POおよびEOがより好ましい。
AOを二種以上使用する場合(例えば、POおよびEO)の付加方法としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、これらの併用であってもよい。
【0036】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物等の少なくとも一種の存在下に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイドの少なくとも1種を開環重合させて得られる重合体が挙げられる。
ポリエーテルポリオールにおいて使用する活性水素を2個以上有する低分子量活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、エチレンジアミン、ブチレンジアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0037】
ウレタンフォームにおいて使用するポリオールは、燃焼した際の総発熱量の低減効果が大きいことからポリエステルポリオール、またはポリエーテルポリオールを使用することが好ましく、ポリエステルポリオールがより好ましい。その中でも分子量200~800のポリエステルポリオールを用いることが好ましく、分子量300~500のポリエステルポリオールを用いることがさらに好ましい。
【0038】
ウレタン樹脂のイソシアネートインデックスは、120~1,000の範囲であることが好ましく、200~800の範囲であればより好ましく、300~600の範囲であればさらに好ましい。イソシアネートインデックスが120以上となると、イソシアネート基が水酸基より過剰となり、三量化されやすくなり、不燃性を付与しやすくなる。また、1,000以下となると、不燃性と製造コストとのバランスが良好になる。
【0039】
なお、イソシアネートインデックスは、以下の方法により計算することができる。
イソシアネートインデックス
=ポリイソシアネートの当量数÷(ポリオールの当量数+水の当量数)×100
ここで、各当量数は以下のとおり計算することができる。
・ポリイソシアネートの当量数=ポリイソシアネートの使用量(g)×NCO含有量(質量%)/NCOの分子量(モル)×100
・ポリオールの当量数=OHV×ポリオールの使用量(g)÷KOHの分子量(ミリモル)
OHVはポリオールの水酸基価(mgKOH/g)である。
・水の当量数=水の使用量(g)/水の分子量(モル)×水のOH基の数
上記各式において、NCOの分子量は42(モル)、KOHの分子量は56100(ミリモル)、水の分子量は18(モル)、水のOH基の数は2とする。
【0040】
《難燃剤》
ウレタンフォームには難燃作用を付与するために、難燃剤を含有させることが好ましく、リン酸エステル等の液状難燃剤の使用が挙げられる。難燃剤としては、難燃性を向上させるために、固体難燃剤を使用することも好ましく、固体難燃剤と液状難燃剤とを併用することも好ましい。
液状難燃剤は、常温(23℃)、常圧(1気圧)で液体となる難燃剤であり、固体難燃剤は、常温(23℃)、常圧(1気圧)で固体となる難燃剤である。液状難燃剤の具体例としては、リン酸エステルが挙げられる。
固体難燃剤としては、赤リン、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
ウレタンフォームに使用される難燃剤は、不燃性、取り扱い性などの観点から、赤リンとリン酸エステルを含むことがさらに好ましい。また、難燃剤は、赤リンとリン酸エステルと、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物から選ばれる少なくとも1種とからなるものも好ましい。
【0041】
〈リン酸エステル〉
リン酸エステルとしては、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用できる。モノリン酸エステルとは、分子中にリン原子を1つ有するリン酸エステルである。モノリン酸エステルとしては、常温、常圧で液体のものであれば限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートなどのハロゲン含有リン酸エステル、トリブトキシエチルホスフェートなどのトリアルコキシホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどの芳香環含有リン酸エステル、モノイソデシルホスフェート、ジイソデシルホスフェートなどの酸性リン酸エステル等が挙げられる。
【0042】
縮合リン酸エステルとしては、例えば、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ビスフェノールAポリフェニルホスフェートなどの芳香族縮合リン酸エステルが挙げられる。
市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(商品名CR-733S)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名CR-741)、芳香族縮合リン酸エステル(商品名CR747)、レゾルシノールポリフェニルホスフェート(ADEKA社製、商品名アデカスタブPFR)、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート(商品名FP-600、FP-700)等を挙げることができる。
【0043】
上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度の低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いためモノリン酸エステルを使用することが好ましく、トリス(β-クロロプロピル)ホスフェートを使用することがより好ましい。リン酸エステルは一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0044】
リン酸エステルの配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5~52質量部の範囲であることが好ましく、1.5~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0~15質量部の範囲であることがさらに好ましく、2.0~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
リン酸エステルの配合量を上記下限値以上とすることで、火災時にウレタンフォームから形成される緻密残渣が割れることを防止できる。また、リン酸エステルの配合量を上記上限値以下とすることでウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。また、上記範囲内とすることで不燃性を付与しやすくなる。
【0045】
〈赤リン〉
本発明に使用する赤リンに限定はなく、市販品を適宜選択して使用することができる。赤リンは、赤リン単体で配合される必要はなく、適宜、表面処理などがされていてもよい。
ウレタンフォームにおける赤リンの配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、3.0~18質量部の範囲であることが好ましく、4.0~12質量部であることがより好ましい。赤リンの配合量を上記下限値以上とすることで、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、ウレタンフォームに不燃性を付与しやすくなる。また赤リンの配合量を上記上限値以下とすることでウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。なお、ウレタン樹脂は、上記したように、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の反応生成物であり、ウレタン樹脂100質量部とは、ウレタン樹脂組成物におけるポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の合計100質量部を意味する。
【0046】
〈リン酸塩含有難燃剤〉
リン酸塩含有難燃剤としては、例えば、各種リン酸と周期律表IA族~IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンから選ばれる少なくとも一種の金属または化合物との塩からなるリン酸塩を挙げることができる。
リン酸は特に限定はないが、モノリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸等の各種リン酸が挙げられる。
周期律表IA族~IVB族の金属として、リチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられる。脂肪族アミンとして、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられる。また芳香族アミンとして、ピリジン、トリアジン、メラミン、アンモニウム等が挙げられる。
なお、上記のリン酸塩含有難燃剤は、シランカップリング剤処理、メラミン樹脂で被覆する等の公知の耐水性向上処理を加えてもよい。
【0047】
リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
モノリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ニアンモニウム等のアンモニウム塩、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、 リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等が挙げられる。
【0048】
またポリリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムアミド、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。
これらの中でも、リン酸塩含有難燃剤の自己消火性が向上するため、モノリン酸塩を使用することが好ましく、リン酸二水素アンモニウムを使用することがより好ましい。
リン酸塩含有難燃剤は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0049】
リン酸塩含有難燃剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5~52質量部の範囲であることが好ましく、1.5~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0~15質量部の範囲であることがさらに好ましく、2.0~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
リン酸塩含有難燃剤の配合量が上記下限値以上であると、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。また、リン酸塩含有難燃剤の配合量が上記上限値以下とするとウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0050】
〈臭素含有難燃剤〉
臭素含有難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有する化合物であれば特に限定はないが、例えば、芳香族臭素化化合物等を挙げることができる。
芳香族臭素化化合物の具体例としては、例えば、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモビフェニル、ヘキサブロモシクロデカン、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモジフェニルエーテル、ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン、エチレン-ビス(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA等のモノマー有機臭素化合物が挙げられる。
また、臭素化ビスフェノールAを原料として製造されたポリカーボネートオリゴマー、ポリカーボネートオリゴマーとビスフェノールAとの共重合物等の臭素化ポリカーボネート、臭素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジエポキシ化合物、臭素化フェノール類とエピクロルヒドリンとの反応によって得られるモノエポキシ化合物等の臭素化エポキシ化合物、ポリ(臭素化ベンジルアクリレート)、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA、塩化シアヌールおよび臭素化フェノールの縮合物、臭素化(ポリスチレン)、ポリ(臭素化スチレン)、架橋臭素化ポリスチレン等の臭素化ポリスチレン、 架橋または非架橋臭素化ポリ(-メチルスチレン)等のハロゲン化された臭素化合物ポリマーが挙げられる。
燃焼初期の発熱量を制御する観点から、臭素化ポリスチレン、ヘキサブロモベンゼン等が好ましく、ヘキサブロモベンゼンがより好ましい。
臭素含有難燃剤は一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0051】
本発明に使用する臭素含有難燃剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5~50質量部の範囲であることが好ましく、1.5~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0~15質量部の範囲であることがさらに好ましく、2.0~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
臭素含有難燃剤の配合量を上記下限値以上とすると、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。また臭素含有難燃剤の配合量を上記上限値以下とすると、ウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0052】
〈ホウ素含有難燃剤〉
ホウ素含有難燃剤としては、ホウ砂、酸化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸塩等が挙げられる。
酸化ホウ素としては、例えば、三酸化二ホウ素、三酸化ホウ素、二酸化二ホウ素、三酸化四ホウ素、五酸化四ホウ素等が挙げられる。
ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、周期表第4族、第12族、第13族の元素およびアンモニウムのホウ酸塩等が挙げられる。
具体的には、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸セシウム等のホウ酸アルカリ金属塩、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸バリウム等のホウ酸アルカリ土類金属塩、ホウ酸ジルコニウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ素含有難燃剤は、ホウ酸塩であることが好ましく、ホウ酸亜鉛であればより好ましい。
ホウ素含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0053】
ホウ素含有難燃剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5~50質量部の範囲であることが好ましく、1.5~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0~15質量部の範囲であることがさらに好ましく、2.0~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
ホウ素含有難燃剤の配合量が上記下限値以上であると、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。またホウ素含有難燃剤の配合量が上記上限値以下とするとウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0054】
〈アンチモン含有難燃剤〉
また本発明に使用するアンチモン含有難燃剤としては、例えば、酸化アンチモン、アンチモン酸塩、ピロアンチモン酸塩等が挙げられる。
酸化アンチモンとしては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。アンチモン酸塩としては、例えば、アンチモン酸ナトリウム、アンチモン酸カリウム等が挙げられる。ピロアンチモン酸塩としては、例えば、ピロアンチモン酸ナトリウム、ピロアンチモン酸カリウム等が挙げられる。
アンチモン含有難燃剤は、酸化アンチモンであることが好ましい。
アンチモン含有難燃剤は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0055】
アンチモン含有難燃剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5~50質量部の範囲であることが好ましく、1.5~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0~15質量部の範囲であることがさらに好ましく、2.0~10質量部の範囲であることが最も好ましい。アンチモン含有難燃剤の配合量が上記下限値以上であることで、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。またアンチモン含有難燃剤の配合量が上記上限値以下とするとウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0056】
〈金属水酸化物〉
金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ等が挙げられる。金属水酸化物は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することもできる。
【0057】
金属水酸化物の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、1.5~50質量部の範囲であることが好ましく、1.5~20質量部の範囲であることがより好ましく、2.0~15質量部の範囲であることがさらに好ましく、2.0~10質量部の範囲であることが最も好ましい。金属水酸化物の配合量が上記下限値以上であることで、ウレタンフォームの自己消火性が保持され、耐火性が付与されやすくなる。また金属水酸化物の配合量が上記上限値以下であることでウレタン樹脂組成物の発泡が阻害されない。
【0058】
上記難燃剤の好ましい組み合わせとしては、例えば、下記の(a)~(n)のいずれか等が挙げられ、これらの中では赤リンとリン酸エステルとを少なくとも含む組み合わせが好ましい。
(a)赤リンおよびリン酸エステル
(b)赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤
(c)赤リンおよび臭素含有難燃剤
(d)赤リンおよびホウ素含有難燃剤
(e)赤リンおよびアンチモン含有難燃剤
(f)赤リンおよび金属水酸化物
(g)赤リン、リン酸エステルおよびリン酸塩含有難燃剤
(h)赤リン、リン酸エステルおよび臭素含有難燃剤
(i)赤リン、リン酸エステルおよびホウ素含有難燃剤
(j)赤リン、リン酸塩含有難燃剤および臭素含有難燃剤
(k)赤リン、リン酸塩含有難燃剤およびホウ素含有難燃剤
(l)赤リン、臭素含有難燃剤およびホウ素含有難燃剤
(m)赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤および臭素含有難燃剤
(n)赤リン、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤およびホウ素含有難燃剤
【0059】
固体難燃剤の合計配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、4.5~70質量部の範囲であることが好ましく、4.5~40質量部の範囲であることがより好ましく、4.5~30質量部の範囲であることがさらに好ましく、4.5~20質量部の範囲であることが最も好ましい。
固体難燃剤の配合量を上記下限値以上とすると、ウレタンフォームに不燃性を付与しやすくなる。また、火災時に、ウレタンフォームから形成される緻密残渣が割れることを防止できる。固体難燃剤の配合量を上記上限値以下とすると、ウレタン樹脂組成物の発泡が難燃剤により阻害されない。
【0060】
本発明のウレタンフォームは、上記したとおり、ウレタン樹脂組成物を硬化し発泡して形成される。ウレタン樹脂組成物は、上記したポリオール化合物とイソシアネート化合物と難燃剤を含み、かつ一般的にはさらに、触媒、発泡剤、及び整泡剤を含む。
【0061】
《触媒》
ウレタン樹脂組成物は、触媒として、例えば樹脂化触媒、三量化触媒、又はこの両方を含有するとよいが、両方を含有することが好ましい。樹脂化触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネートとの反応を促進させる触媒である。
【0062】
樹脂化触媒は、ポリオール化合物とポリイソシアネートとの反応を促進させる触媒である。樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物などのアミン系触媒、金属系触媒などが挙げられる。
イミダゾール化合物としては、イミダゾール環の1位の第2級アミンをアルキル基、アルケニル基などで置換し3級アミンが挙げられる。具体的には、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-2-エチルイミダゾール、1,2-ジエチルイミダゾール、及び1-イソブチル-2-メチルイミダゾールなどが挙げられる。また、イミダゾール環中の第2級アミンをシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物などでもよい。
また、ピペラジン化合物として、N-メチル-N’N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジンなどの3級アミンが挙げられる。
また、樹脂化触媒としては、イミダゾール化合物、ピペラジン化合物以外にも、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチルアミン、N-メチルモルホリンビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノールアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、トリプロピルアミン等の各種の3級アミンなどが挙げられる。
金属触媒としては、ビスマス及び錫から選択される金属塩が挙げられ、ビスマス塩であることが好ましい。
樹脂化触媒の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.02~5質量部の範囲であることが好ましく、0.04~3質量部の範囲であることがより好ましく、0.04~2質量部の範囲であることがさらに好ましく、0.06~1質量部の範囲であることが最も好ましい。
樹脂化触媒の配合量を上記下限値以上とすることで、ウレタン結合の形成が促進され、硬化性が良好となる。また、樹脂化触媒の配合量を上記上限値以下とすることで適切な発泡速度を維持することができ取扱いやすい。
【0063】
三量化触媒は、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。三量化触媒を使用することで、不燃性を向上させやすくなる。
三量化触媒としては、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等を使用することができる。
【0064】
三量化触媒の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.6~10質量部の範囲であることが好ましく、0.6~8質量部の範囲であることがより好ましく、0.6~6質量部の範囲であることがさらに好ましく、0.6~3.0質量部の範囲であることが最も好ましい。
三量化触媒の配合量を上記下限値以上とすると、イソシアネートの三量化が阻害される不具合が生じない。また、三量化触媒の配合量を上記上限値以下とすると、適切な発泡速度を維持することができ、取扱いやすい。
【0065】
《発泡剤》
ウレタン樹脂組成物に含有される発泡剤は、ウレタン樹脂の発泡を促進する。発泡剤の具体例としては、例えば、水、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等のフッ素化合物、CHF3、CH 2F2、CH3F等のハイドロフルオロカーボン、ジクロロモノフルオロエタン、(例えば、HCFC141b(1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン)、HCFC22(クロロジフルオロメタン)、HCFC142b(1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン))、HFC-245fa(1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン)、HFC-365mfc(1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン)等のハイドロクロロフルオロカーボン化合物、HFO-1233zd(E)(トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン)、HFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン)、HFO-1336mzz(Z)(シス―1,1,1,4,4,4、-ヘキサフルオロブタ-2-エン)、HFO-1224yd(Z)等のハイドロオレフィン化合物、ジイソプロピルエーテル等のエーテル化合物、あるいはこれらの化合物の混合物等の有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガス等の無機系物理発泡剤等が挙げられる。
【0066】
ウレタン樹脂組成物に使用する発泡剤の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1~30質量部の範囲であることが好ましい。また、発泡剤は、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1~18質量部の範囲であることがより好ましく、0.5~18質量部の範囲であることがさらに好ましく、1~10質量部の範囲であることが最も好ましい。
発泡剤の含有量を上記下限値以上とすると、発泡が促進され、得られるウレタンフォームの密度を低減することができる。発泡剤の含有量を上記上限値以下とすると、発泡体が破泡せず、発泡体が形成されないことを防ぐことができる。
【0067】
《整泡剤》
ウレタン樹脂組成物に含有される整泡剤は、ウレタン樹脂組成物の発泡性を向上させる。
整泡剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等のポリオキシアルキレン系整泡剤、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系整泡剤等の界面活性剤等が挙げられる。
ウレタン樹脂に対する整泡剤の配合量は、例えば、ウレタン樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部の範囲であれば好ましい。
樹脂化触媒、三量化触媒、発泡剤及び整泡剤はそれぞれ一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0068】
ウレタン樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
無機充填材は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を使用することができる。
【0069】
さらにウレタン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0070】
さらにウレタン樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、沈降抑制剤、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、粘着付与樹脂等の添加剤を含むことができる。
【0071】
ウレタン樹脂組成物は反応して硬化するため、ウレタンフォーム成形前においては、2液に分割しておくとよい。具体的には、ポリオール化合物を含むポリオール液剤と、ポリイソシアネート化合物を含むイソシアネート液剤に分割しておくとよい。この際、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物以外の成分は、適宜、ポリオール液剤又はイソシアネート液剤に配合しておくとよいが、好ましくはポリオール液剤に配合する。ポリオール化合物は、反応性が低く、ポリオール化合物及びポリイソシアネート化合物以外の成分と混合させても、副反応が生じにくいためである。
【0072】
ウレタン樹脂組成物は、リブ12の空洞部12aに注入して、空洞部12aで硬化かつ発泡させることで、ウレタンフォームにすることができる。リブ12の空洞部12aにウレタン樹脂組成物を注入する方法は、特に限定されないが、ポリオール液剤とイソシアネート液剤とを、リブ12の空洞部12aに注入する前に混合して混合物を得て、その混合物をリブ12の空洞部12aに注入してもよいし、ポリオール液剤とイソシアネート液剤を、リブ12の空洞部12aに別々で注入して、空洞部12aで混合してもよい。
具体的には、特に限定されないが、イソシアネート液剤と、ポリオール液剤とを2つの容器に別々に収容して、それらをコーキングガンなどにて混合して、その混合物をコーキングガンから吐出させリブ内部に注入するとよい。
ウレタン樹脂組成物は、各成分を混合すると反応が開始し、時間の経過と共に粘度が上昇し、硬化及び発泡が進行し、流動性を失い、ポリウレタンフォームとなる。ウレタン樹脂組成物は、通常、常温付近(例えば、10~40℃程度)に放置することで硬化及び発泡をさせるとよいが、必要に応じて、加熱等してもよい。
【0073】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るフラットデッキの施工方法は、
図7に示すように、工程S1,S2、S4を含む。
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を説明する。また、説明を省略する部分は、第1の実施形態と同様である。また、以下の説明では、上記第1の実施形態と同一の構成を有する部材には同一の符号を付す。
【0074】
本施工方法の工程S4において、
図8に示すように、注入口16は、リブ12の防火区画構造を形成する区画材20と突き合わされる位置に配置されるように形成する。
区画材20は、フラットデッキ1のフラット部11の一方の面11D側と突き合わせて配置される。具体的には、区画材20の上端面がリブ12の底面に突き合わされるように配置される。そのため、本施工方法の工程S4においては、防火区画構造を形成する区画材20と突き合わされる位置に注入口16が配置されることで、防火区画構造を形成する区画材20と突き合わされる位置のリブ12の内部に確実に充填物を注入することができる。注入口16が配置される位置及びその近傍は、横断面において確実に充填物が充填されやすいためである。よって、防火区画構造を形成する区画材20と突き合わされる位置のリブ12の内部において充填剤が充填されて隙間ができることがなく、耐火性の高いフラットデッキを施工することができる。
【0075】
区画材20を構成する面材は、建築構造物における区画を形成するための部材である。面材としては、例えば、石膏ボード、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート(ALC)板、プレキャストコンクリート(PC)板、ガラス繊維強化コンクリート(GRC)板、軽量木毛セメント板、木片セメント板、金属サンドイッチパネル、ケイ酸カルシウム板、スレート板、コンクリート、レンガ、ガラス及び金属板(例えば、アルミニウム、鉄)等が挙げられる。中でも、耐火性及び施工性の観点から、石膏ボード、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート、プレキャストコンクリート板及びガラス繊維強化コンクリート板からなる群から選択される1種であることが好ましく、石膏ボードがより好ましい。
本実施形態においては、
図8に示すように、面材21よりなる区画材20を示す。面材21は、建築構造物における壁25を構成することができる。壁25には、建築構造物に据え付けられた支持枠体26が設けられる。支持枠体26は、例えば、水平方向に延在する横桟と、鉛直方向に延在する縦桟よりなる枠状部材であり、その支持枠体26の両面に面材21がビスなどの固定部材により固定される。
区画材20の種類に応じて、支持枠体26は適宜省略してもよいし、他の支持体を代わりに使用してもよい。また、区画材20は、支持枠体26への固定が省略され、リブ12の底面12Dに固定されてもよいし、支持枠体26が省略され、リブ12の底面12Dにのみ固定されてもよい。
【0076】
本実施形態に係る防火区画構造は、区画材20とフラットデッキ1の下面11Dの間には必要に応じて不燃材料(図示しない)を設けてもよい。
不燃材料としては、ロックウール、グラスウールなど公知の隙間を埋めることが可能な不燃の材料を使用できる。
【0077】
以上のように、本実施形態においては、防火区画構造を形成する区画材20と突き合わされる位置のリブ12の内部に確実に充填物を充填することができ、良好な防火性、遮音性、断熱性などを有する区画を形成することができる。
【0078】
また、本発明は、第2の実施形態において、本施工方法の工程S4の前に、リブ12を加熱する工程S3をさらに含んでもよい。
加熱したリブ12の注入口16から充填物を注入することで、注入口16近傍に均一に反応した充填物で充填することができるので、注入口16が配置される防火区画構造を形成する区画材20と突き合わされる位置のリブ12の内部に確実に充填物を充填することができる。また、注入口16及びその近傍以外の部分にも均一に充填物で充填しやすくなる。よって、防火区画構造を形成する区画材20と突き合わされる位置のリブ12の内部において充填剤が充填されて隙間ができることがなく、耐火性の高いフラットデッキを施工することができる。
【0079】
なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様に、充填物がリブ12の長手方向に沿って全体に充填させる場合に適用してもよいし、リブ12の長手方向に沿って全体に充填されない場合に適用してもよいが、リブ12の長手方向に沿って全体に充填されない場合に適用すると効果的である。リブ12の長手方向に沿って全体に充填されない場合には、リブ12の内部には、空洞のままの空洞部12aがあり、その部分に区画材を突き合わせると、耐火性が低下する。一方で、注入口16およびその近傍部分は、空洞部12aの横断面全体にわたって充填物が充填されやすいので、注入口16に区画材を突き合わせることで、耐火性を良好に維持しやすくなる。
【0080】
(その他の実施形態)
以上では、リブ12の底面部分に注入口16を設けた態様を示したが、リブ12の底面部分以外に注入口16を設けた態様であってもよい。例えば、リブ12の空洞部12aを構成する側面に注入口16を設けた態様であってもよい。
また、第2の実施形態において、区画材が突き合わされる部分は、注入口16が設けられた部分である態様を示すが、必ずしも注入口16が設けられた部分に限定されない。例えば、注入口16が設けられた部分でなくても、リブの空洞部12aの横断面全体にわたって充填物が充填されている部分に区画材が突き合わされると耐火性の高いフラットデッキを施工することができる。
【実施例0081】
以下に実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、本発明における各物性の測定方法、評価方法は以下のとおりである。
【0082】
[温度測定]
実施例及び比較例でフラットデッキのリブに注入する充填物の液温を測定した。結果を表2に示す。
実施例及び比較例でフラットデッキのリブに注入する際のリブ右端、リブ中央、リブ左端の温度を測定した。結果を表2に示す。
実施例及び比較例でフラットデッキのリブに注入する際のリブ中央とリブ右端又はリブ左端との温度差を算出し、差が大きいものを採用した。結果を表2に示す。
【0083】
[施工工期]
フラットデッキの出荷日を0日とした際、現場施工開始までにかかる期間を下記基準にて評価した。結果を表2に示す。
A:施工開始まで1週間以内
B:施工開始まで1週間を超え、2週間未満
C:施工開始まで2週間以上
【0084】
[充填性(耐火性)]
リブの長手方向における両端部及び両端部から0.3mにてフラットデッキ切断し、切断面を下記基準にて評価した。結果を表2に示す。
A:リブの長手方向における両端部まで充填物が満充填
B:両端部から0.3mの切断面にて充填物が満充填であったが、リブの長手方向における両端部にて充填物が充填していない箇所あり
C:リブの長手方向における両端部及び両端部から0.3mの切断面にて充填物が充填していない箇所あり
【0085】
表1に示した配合により、実施例及び比較例に関わるウレタン発泡体を得るために、(1)ポリオール含有組成物及び(2)ポリイソシアネートの2つに分けて準備した。なお表1中の成分詳細は以下の通りである。
【0086】
(1)ポリオール含有組成物
〔ポリオール〕
・p-フタル酸ポリエステルポリオール(川崎化成工業社製、製品名:マキシモールRLK-087、水酸基価=200mgKOH/g)
〔触媒〕
・三量化触媒:2-エチルヘキサン酸カリウム塩(エアープロダクツ社製、製品名:DABCO K-15)、濃度70~80質量%
・樹脂化触媒(アミン系):1,2-ジメチルイミダゾール(東ソー株式会社製、製品名:TOYOCAT-DM70)濃度65~75質量%
〔整泡剤〕
・シリコーン系整泡剤(東レダウコーニング社製、製品名:SH-193)
〔発泡剤〕
・HFO-1233zd(E)(セントラル硝子社製、製品名:ソルスティスLBA)
・水
〔沈降抑制剤〕
・フュームドシリカ(日本アエロジル社製、製品名:アエロジルR976S)
〔液状難燃剤〕
・トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート(大八化学社製、製品名:TMCPP)
〔固体難燃剤〕
・赤燐系難燃剤(燐化学工業株式会社製、製品名:ノーバエクセル140、金属水酸化物被覆、赤燐分94質量%以上)
・ホウ酸亜鉛(早川商事社製、製品名:Firebrake ZB)
・エチレンビス(ペンタブロモフェニル)(アルベマール社製、製品名:SAYTEX 8010)
【0087】
(2)ポリイソシアネート
・ポリイソシアネート(MDI、住友化学株式会社製、商品名:スミジュール44V20)
【0088】
【0089】
[実施例1]
リブの縦方向(X軸方向)の長さ(リブ両端部間の長さ)が3mであるフラットデッキを用意した。用意したフラットデッキを建築構造物である支持材に敷設し、敷設されたフラットデッキのフラット部の上面にコンクリートを打設した。そして、フラットデッキのリブ底面の中央に注入口を形成した。その後、加熱装置として3m長の接触式ラバーヒータを用いて、ラバーヒータの温調設定をリブ温度が60℃付近になるように設定して加熱した。別途、表1に示したウレタンフォームを形成するための配合を有するポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを用意し、それぞれ、密閉容器に収納した。グラコ社製吹付装置H-25を用いて、各密閉容器から排出したポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを混合させた液温35℃のウレタン樹脂組成物を、施工現場にて、注入口からリブ内部(容積3,200ml)に0.19kg注入した。リブ内部に注入されたウレタン樹脂組成物を、反応かつ発泡させて、リブ内部を充填する充填物としてのウレタンフォームを形成した。
【0090】
[実施例2]
3m長のラバーヒータを1m長のラバーヒータに分け、それぞれの温調設定を調整し、注入口がある位置におけるリブの温度と、リブの長さ方向端部の温度が所定の差となるように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0091】
[実施例3]
3m長のラバーヒータの温調設定をリブ温度45℃付近になるように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0092】
[実施例4]
3m長のラバーヒータを1m長と2m長のラバーヒータに分け、それぞれの温調設定を調整し、注入口がある位置におけるリブの温度と、リブの長さ方向端部の温度が所定の差となるように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0093】
[実施例5]
3m長のラバーヒータの温調設定をリブ温度75℃付近になるように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0094】
[実施例6]
3m長のラバーヒータを1m長と2m長のラバーヒータに分け、それぞれの温調設定を調整し、注入口がある位置におけるリブの温度と、リブの長さ方向端部の温度が所定の差となるように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0095】
[実施例7]
液温35℃を40℃、ヒータ温調設定をリブ温度50℃付近になるように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0096】
[実施例8]
液温35℃を25℃、ヒータ温調設定をリブ温度75℃付近になるように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0097】
[参考例1]
リブの縦方向(X軸方向)の長さ(リブ両端部間の長さ)が3mであるフラットデッキを用意した。そして、フラットデッキのリブ底面の中央に注入口を形成した。その後、加熱装置として3m長の接触式ラバーヒータを用いて、ラバーヒータの温調設定をリブ温度が60℃付近になるように設定してリブを加熱した。別途、表1に示したウレタンフォームを形成するための配合を有するポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを用意し、それぞれ、密閉容器に収納した。グラコ社製吹付装置H-25を用いて、各密閉容器から排出したポリオール含有組成物とポリイソシアネートとを混合させた液温35℃のウレタン樹脂組成物を、施工現場ではない別工場にて、注入口からリブ内部(容積(容積3,200ml)に0.19kg注入した。リブ内部に注入されたウレタン樹脂組成物を、反応かつ発泡させて、リブ内部を充填する充填物としてのウレタンフォームを形成した。
上記の別工場で製造したリブ内部に充填物を充填されたフラットデッキを建築構造物である支持材に敷設し、敷設されたフラットデッキのフラット部の上面にコンクリートを打設した。
【0098】
[参考例2]
3m長のラバーヒータを1m長と2m長のラバーヒータに分け、それぞれの温調設定を調整し、注入口がある位置におけるリブの温度と、リブの長さ方向端部の温度が所定の差となるように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0099】
[参考例3]
3m長のラバーヒータを1m長と2m長のラバーヒータに分け、それぞれの温調設定を調整し、注入口がある位置におけるリブの温度と、リブの長さ方向端部の温度が所定の差となるように変更した以外は実施例1と同様に実施した。
【0100】
【0101】
表2に示すように、各実施例は、充填物をリブ内部の長さ方向において均一に充填されたフラットデッキを施工現場で製造することで施工工期の短縮を図り、充填性(耐火性)の高いフラットデッキを得ることができた。