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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150614
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】バルブボディ及びその鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/10 20060101AFI20231005BHJP
   F03C 1/253 20060101ALI20231005BHJP
   B22C 9/24 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B22C9/10 D
F03C1/253
B22C9/24 Z
B22C9/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059815
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳
(72)【発明者】
【氏名】阪井 祐紀
【テーマコード(参考)】
3H084
4E093
【Fターム(参考)】
3H084AA08
3H084AA43
3H084AA45
3H084BB23
3H084CC02
3H084CC12
3H084CC32
3H084CC58
4E093QB01
4E093UA08
4E093UC01
(57)【要約】
【課題】バルブボディの生産性を向上させる。
【解決手段】第2ケース20は、カウンタバランス弁Cのスプールを収容する第1収容孔21及びカウンタバランス弁CのバルブポートP1,P2を形成するための第1中子51と、シリンダブロック3と対向する平面25に開口し、カウンタバランス弁CのバルブポートP1,P2に接続される第1、第2給排ポート23,24を形成するための第2中子52と、を用いて製造される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプから吐出される作動流体によって回転駆動するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックを収容するハウジングと、
前記ポンプと前記シリンダブロックとを接続する流路上に設けられるスプール弁と、
前記スプール弁を収容し、前記ハウジングの開口を閉塞するバルブボディと、を備える液圧モータの前記バルブボディを製造する鋳造方法であって、
前記スプール弁のスプールを収容する孔及び前記スプール弁のバルブポートを形成するための第1中子を製造する工程と、
前記シリンダブロックと対向する平面に開口し、前記スプール弁の前記バルブポートに接続される給排ポートを形成するための第2中子を製造する工程と、
前記第1中子と前記第2中子とを用いて前記バルブボディを製造する工程と、を含む、ことを特徴とするバルブボディの鋳造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブボディの鋳造方法であって、
前記第2中子は、前記シリンダブロックと対向する前記平面を形成する中子と一体に形成される、ことを特徴とするバルブボディの鋳造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載されたバルブボディの鋳造方法であって、
前記第2中子は、前記第1中子に対して前記液圧モータの回転軸の径方向にオフセットして配置される、ことを特徴とするバルブボディの鋳造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載されたバルブボディの鋳造方法であって、
前記第1中子と前記第2中子とが当接した個所には、前記第1中子と前記第2中子とによって段部が形成される、ことを特徴とするバルブボディの鋳造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載されたバルブボディの鋳造方法であって、
前記スプール弁は、カウンタバランス弁である、ことを特徴とするバルブボディの鋳造方法。
【請求項6】
ポンプから吐出される作動流体によって回転駆動するシリンダブロックと、
前記シリンダブロックを収容するハウジングと、
前記ポンプと前記シリンダブロックとを接続する流路上に設けられるスプール弁と、
前記スプール弁を収容し、前記ハウジングの開口を閉塞するバルブボディと、を備える液圧モータに用いられるバルブボディであって、
前記スプール弁のスプールを収容する収容孔と、
前記収容孔に開口するバルブポートと、
前記シリンダブロックと対向する平面に開口し、前記バルブポートと連通する給排ポートと、を有し、
前記バルブポートと前記給排ポートとを接続する流路には、段部が形成されることを特徴とするバルブボディ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブボディ及びその鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シリンダブロックを収容するモータハウジングと、モータハウジングの一部を構成するバルブボディに形成された吸込ポート及び吐出ポートと、を備えた油圧モータが開示されている。
【0003】
特許文献1に記載の油圧モータでは、バルブボディに形成された吸込ポート及び吐出ポートに至る流路上にカウンタバランス弁が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3-9080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の油圧モータでは、内側吐出ポート及び内側吸込ポートがカウンタバランス弁のバルブポートにそれぞれ連通している。
【0006】
ここで、図5を参照して、特許文献1に記載のバルブボディの鋳造方法の一例について説明する。図5は、油圧モータの回転軸方向におけるカウンタバランス弁のスプールを収容する収容孔121近傍の断面図である。
【0007】
図5に示すバルブボディ120を製造する際には、まず、第1給排ポート(吸込ポート)123からカウンタバランス弁のバルブポートP11に至る流路126を形成する中子151、及び第2給排ポート(吐出ポート)124からカウンタバランス弁のバルブポートP12に至る流路127を形成する中子152を製作し、この中子151,152を、さらに、収容孔121を形成する中子153と一体にした中子154を製作する。
【0008】
その後、中子154と、シリンダブロック(図示せず)に対向する平面125を形成する中子155と、を用いてバルブボディ120を鋳造する。
【0009】
このように、バルブボディ120を鋳造する際には、中子151,152を製作したうえで、さらに収容孔121を形成する中子153と一体にした中子154を製作する必要がある。このため、中子154を製作する際には、2段階の作業工程が必要となり、中子の製作に時間及びコストを要していた。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、バルブボディの生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポンプから吐出される作動流体によって回転駆動するシリンダブロックと、シリンダブロックを収容するハウジングと、ポンプとシリンダブロックとを接続する流路上に設けられるスプール弁と、スプール弁を収容し、ハウジングの開口を閉塞するバルブボディと、を備える液圧モータのバルブボディを製造する鋳造方法であって、スプール弁のスプールを収容する孔及びスプール弁のバルブポートを形成するための第1中子を製造する工程と、シリンダブロックと対向する平面に開口し、スプール弁のバルブポートに接続される給排ポートを形成するための第2中子を製造する工程と、第1中子と第2中子とを用いてバルブボディを製造する工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
この発明では、バルブボディを第1中子と第2中子とを用いて製造する。第1中子は、スプール弁のスプールを収容する第1収容孔及びスプール弁のバルブポートを形成し、第2中子は、シリンダブロックと対向する平面に開口し、第1、第2給排ポートを形成する。第1中子と第2中子をこのような構成としたことで、第1中子を1回の作業工程で製作することができる。これにより、中子を製作する時間を短縮することができるので、バルブボディの生産性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明は、第2中子が、シリンダブロックと対向する平面を形成する中子と一体に形成されることを特徴とする。
【0014】
この発明では、第2中子を支持する部材を別途設ける必要がないので、コストの上昇を抑制できる。
【0015】
また、本発明は、第2中子が、第1中子に対して液圧モータの回転軸の径方向にオフセットして配置されることを特徴とする。
【0016】
この発明では、第2中子が、第1中子に対して液圧モータの回転軸の径方向にオフセットして配置されていても、アンダーカットが発生しないので、第1中子と第2中子によってバルブボディを製造することができる。
【0017】
また、本発明は、第1中子と第2中子とが当接した個所には、第1中子と第2中子とによって段部が形成されることを特徴とする。
【0018】
この発明では、第1中子と第2中子とが当接した個所に段部が形成されるので、第1中子と第2中子とが当接する個所においてアンダーカットが発生することを防止できる。
【0019】
また、本発明は、スプール弁が、カウンタバランス弁であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、ポンプから吐出される作動流体によって回転駆動するシリンダブロックと、シリンダブロックを収容するハウジングと、ポンプとシリンダブロックとを接続する流路上に設けられるスプール弁と、スプール弁を収容し、ハウジングの開口を閉塞するバルブボディと、を備える液圧モータに用いられるバルブボディであって、スプール弁のスプールを収容する収容孔と、収容孔に開口するバルブポートと、シリンダブロックと対向する平面に開口し、バルブポートと連通する給排ポートと、を有し、バルブポートと給排ポートとを接続する流路には、段部が形成されることを特徴とする。
【0021】
この発明では、バルブボディを、スプール弁のスプールを収容する収容孔及びスプール弁のバルブポートを形成する第1中子と、シリンダブロックと対向する平面に開口し、第1、第2給排ポートを形成する第2中子と、によって形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、中子を、スプール弁のスプールを収容する第1収容孔及びスプール弁のバルブポートを形成するための第1中子と、シリンダブロックと対向する平面に開口し、第1、第2給排ポートを形成するための第2中子と、によって構成しているので、第1中子を1回の作業工程で製作することができる。これにより、中子を製作する時間を短縮することができるので、バルブボディの生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係る油圧モータの断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る第2ケースの平面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る第2ケースの鋳物状態での図1のIII-III線に沿う断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る第2ケースの鋳物状態での図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図5は、比較例に係るバルブボディの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る液圧モータとしての油圧モータ100について説明する。図1は、油圧モータ100の断面図である。
【0025】
油圧モータ100は、例えばパワーショベルやホイールローダ等の流体圧によって駆動する作業機の走行用駆動装置に用いられる。本実施形態では、作動流体として作動油を用いる場合を例に説明するが、作動水等の他の流体を作動流体として用いてもよい。
【0026】
図1に示すように、油圧モータ100は、例えば、容量が可変の斜板型アキシャルピストンモータである。油圧モータ100は、図示しない油圧源としてのポンプから吐出された作動油の供給を受けて回転駆動される。油圧モータ100は、ポンプと油圧モータ100とを接続する流路上に設けられた方向切換弁(図示せず)によって正回転あるいは逆回転に切り換えられる。油圧モータ100が正回転することで、作業機は前進し、油圧モータ100が逆回転することで、作業機は後進する。油圧モータ100は、容量が可変の斜板型アキシャルピストンモータに限らず、容量が固定の斜板型アキシャルピストンモータであってもよい。
【0027】
次に、図1及び図2を参照して、油圧モータ100の具体的な構成について説明する。
【0028】
油圧モータ100は、負荷(不図示)に連結された出力軸2と、出力軸2に連結され出力軸2と一体に回転するシリンダブロック3と、出力軸2及びシリンダブロック3を収容する金属製のケース1と、を備える。出力軸2は、ケース1に軸受17,18を介して回転自在に支持されている。以下、出力軸2の回転軸Oが延在する方向を軸方向といい、出力軸2の回転軸Oと直交する方向を径方向という。
【0029】
図1に示すように、ケース1は、シリンダブロック3を収容するハウジングとしての第1ケース10と、ボルトを介して第1ケース10に結合される第2ケース20と、を有する。
【0030】
図1に示すように、第1ケース10は、有底筒状に形成される。第1ケース10の底部11には、出力軸2が挿通される貫通孔12が設けられる。
【0031】
図1に示すように、第2ケース20は、第1ケース10の開口部13を覆うように第1ケース10に取り付けられる。第2ケース20には、スプール弁としてのカウンタバランス弁CのスプールC1を収容する第1収容孔21と、二速切換弁SのスプールS1を収容する第2収容孔22と、が形成される。第2ケース20は、上述のように、第1ケース10の開口部13を覆うカバーとして機能するとともに、カウンタバランス弁Cや二速切換弁Sのバルブボディとして機能する。
【0032】
また、第2ケース20には、カウンタバランス弁Cの第1収容孔21に開口するバルブポートP1,P2(図3参照)それぞれと連通する第1給排ポート23と第2給排ポート24(図2及び図3参照)が設けられる。なお、図2は、第2ケース20を、シリンダブロック3と対向する平面25側から見た平面図である。
【0033】
図2に示すように、第1給排ポート23及び第2給排ポート24は、第2ケース20の中心軸(出力軸2の回転軸O)を挟んで互いに対向する位置に、平面25に円弧状に開口するように形成される。
【0034】
図1に示すように、第2ケース20とシリンダブロック3との間には、シリンダブロック3の基端面が摺接するバルブプレート8が取り付けられる。バルブプレート8は、カウンタバランス弁CのバルブポートP1,P2にそれぞれ連通する連通孔(図示せず)を有する。
【0035】
図1に示すように、シリンダブロック3における出力軸2を中心とする同心円上には、出力軸2と平行に複数のシリンダ4が設けられる。それぞれのシリンダ4内には、容積室4aを形成するピストン5が往復摺動自在に挿入される。
【0036】
ピストン5の先端には、球面座5aを介してシュー6が連結される。シュー6は、第1ケース10内に設けられた斜板7に面接触している。油圧モータ100では、シリンダブロック3の回転に伴って、各シュー6が斜板7に摺接し、各ピストン5が斜板7の傾転角度に応じたストローク量で往復動する。
【0037】
油圧モータ100は、停止状態のシリンダブロック3が回転することを防止する摩擦制動式のブレーキ装置40と、斜板7の傾転角を変更するための傾転角制御ピストン9と、をさらに備える。
【0038】
図1に示すように、ブレーキ装置40は、シリンダブロック3と共に回転するディスクプレート41と、ディスクプレート41を第1ケース10に圧接させるブレーキピストン42と、ブレーキピストン42をディスクプレート41が第1ケース10に圧接する方向に付勢するばね43と、を備える。なお、本実施形態では、油圧モータ100は走行装置に用いられるため、油圧モータ100を制動するブレーキ装置40は駐車ブレーキ装置として機能する。
【0039】
図1に示すように、ブレーキピストン42は、本体部42aと、先端側に設けられ本体部42aの外径より小さな外径の先端部42bと、を有する。ブレーキピストン42の本体部42a、先端部42b、及び第1ケース10の内周面によって、ブレーキ解除用チャンバ44が区画される。
【0040】
油圧モータ100では、方向切換弁を前進位置あるいは後進位置に切り換えたときに、ブレーキ解除用チャンバ44に油圧が供給される。これにより、ブレーキピストン42が、ばね43の付勢力に抗して移動することによりブレーキが解除され、出力軸2及びシリンダブロック3が回転可能となる。なお、ブレーキ装置40は、第1ケース10に対して回転不能に設けられ、ディスクプレート41と当接するフリクションプレートを備えていてもよい。この場合には、ブレーキピストン42がディスクプレート41とフリクションプレートを圧接することで、シリンダブロック3に対するブレーキ力が生じる。
【0041】
傾転角制御ピストン9は、第1ケース10の底部11に形成された孔11a内に摺動自在に設けられる。傾転角制御ピストン9は、孔11aと傾転角制御ピストン9によって区画された圧力室11bに油圧が供給されると、斜板7を押し上げ、斜板7の傾転角を小さくする。これにより、ピストン5のストローク量が小さくなるので、出力軸2の回転速度を上昇させることができる。なお、圧力室11bへの油圧の供給及び圧力室11bからの油圧の制御、すなわち、斜板7の傾転角の制御は、二速切換弁Sを切り換えることによって行われる。
【0042】
このように構成された油圧モータ100では、ポンプから方向切換弁及びカウンタバランス弁Cを通じて各容積室4aに導かれる液圧(油圧)によって各ピストン5がシリンダ4から突出する。そして、突出したピストン5がシュー6を介して斜板7を押すことにより、シリンダブロック3が回転し、シリンダブロック3の回転が出力軸2を介して負荷に伝達される。
【0043】
次に、第2ケース20の製造方法について、図3及び図4を参照しながら、説明する。図3は、第2ケース20の鋳物状態での図1のIII-III線に沿う断面図である。図4は、第2ケース20の鋳物状態での図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【0044】
第2ケース20は、例えば、アルミニウム合金や鉄系の合金を材料として鋳物により形成される。第2ケース20を鋳物によって形成するにあたり、第1収容孔21を成形するために第1中子51と、第1給排ポート23及び第2給排ポート24を成形するために第2中子52と、を製作する。
【0045】
具体的には、第1中子51は、カウンタバランス弁CのスプールC1が収容される第1収容孔21と、カウンタバランス弁CのバルブポートP1と第1給排ポート23とを接続する流路26と、カウンタバランス弁CのバルブポートP2と第2給排ポート24とを接続する流路27と、を一体に形成するための中子である。第2中子52は、第1、第2給排ポート23,24を形成するための中子であって、平面25を形成するための中子でもある。
【0046】
上述のように、図5に示す比較例のバルブボディ120を鋳造する際には、まず、中子151,152を製作し、この中子151,152をさらに収容孔121を形成する中子153と金型を用いて、あるいは、これらを焼き固めることによって一体にした中子154を製作している。このように、図5に示す比較例のバルブボディ120を鋳造する際には、中子154を製作するために二段階の作業工程を必要としているので、中子154の製作に時間及びコストを要していた。
【0047】
そこで、図5に示す比較例において、バルブボディ120を鋳造するための中子の製作時間を短縮するために、例えば、中子155と中子151,152を一体に形成することが考えられる。しかしながら、図5に示すように、第1、第2給排ポート123,124の幅は、バルブポートP11,P12の幅よりも狭くなっており、また、第1、第2給排ポート123,124は、バルブポートP11,P12に対して径方向外側に、つまり、油圧モータ100の回転軸Oに対して径方向にオフセットしている。このため、図5に領域Aとして示すような窪んだ部分が存在することになる。このような窪んだ部分が存在すると、中子155と中子151,152を一体に形成する場合に、この一体にした中子を、図5の上下方向に分割した金型を用いて製作しようとしても、窪んだ部分(領域A)が、いわゆるアンダーカットになるため、下側となる金型から引き抜くことができない。
【0048】
このため、図5の奥行方向に分割した金型を用いて製作することが考えられる。しかしながら、第1、第2給排ポート123,124は、本実施形態の第1、第2給排ポート23,24と同じように円弧形状に形成されるため(図2及び図3参照)、この場合も、窪んだ部分(領域A)が、いわゆるアンダーカットになるため、例えば、図3の上下方向に分割した金型を用いても、バルブボディ120を金型から引き抜くことができない。
【0049】
したがって、図5に示す比較例のような第1給排ポート123、流路126及びバルブポートP11を一体に形成するための中子151や、第2給排ポート124、流路127、及びバルブポートP12に至る流路127を一体に形成するための中子152を、他の中子や型と一体にすることは難しい。
【0050】
そこで、本実施形態では、比較例のような第1給排ポート123、流路126及びバルブポートP11を一体に形成するための中子151や、第2給排ポート124、流路127、及びバルブポートP12に至る流路127を一体に形成するための中子152に換えて、図4に示すように、第1、第2給排ポート23,24と流路26,27との接続部分で中子を分割して、第2ケース20を製造する。具体的には、第1収容孔21、バルブポートP1,P2、及び流路26,27を一体に形成するための第1中子51と、 第1、第2給排ポート23,24と平面25を形成するための第2中子52と、を用いて、第2ケース20を製造する。
【0051】
中子をこのように分割した構成とすることで、アンダーカットが存在しないので、第1中子51及び第2中子52を容易に製造することができる。
【0052】
また、図5に示す比較例では、まず、中子151,152を製作し、この中子151,152をさらに収容孔121を形成する中子153と一体にした中子154を製作するため、中子154を製作する金型の他に、中子151,152を製作する金型が必要になるとともに、中子154を製作する作業工程が二段階になる。
【0053】
これに対し、本実施形態では、第1収容孔21、バルブポートP1,P2、及び流路26,27を一体に形成するための中子を1つの第1中子51によって構成している。本実施形態の第1中子51は、1回の作業工程で製作することができるので、図5に示す比較例に比べ、中子を製作する時間を短縮することができる。また、第1中子51の構成を採用することにより、図5に示す比較例のように、最終的な中子を作る前段階の中子を作るための金型を不要にすることができる。これにより、金型の数を削減できる。
【0054】
また、第1、第2給排ポート23,24が、バルブポートP1,P2に対して油圧モータ100の回転軸Oの径方向にオフセットしていても、第1中子51や第2中子52を用いることで、アンダーカットが発生することがない。
【0055】
さらに、本実施形態の製造方法では、図4に示すように、第1中子51と第2中子52とが当接した個所には、すなわち、バルブポートP1と第1給排ポート23とを接続する流路26上、及びバルブポートP2と第2給排ポート24とを接続する流路27上には、第1中子51と第2中子52とによって段部28a,28b,29a,29bが形成される。これにより、第1中子51と第2中子52とが当接する個所においてアンダーカットが発生することを防止できる。
【0056】
なお、上記実施形態では説明を省略したが、第2ケース20を製造するにあたり、二速切換弁SのスプールS1が収容される第2収容孔22を形成するための中子は、別途用意する。この場合、第2収容孔22を形成するための中子は、第1中子51と一体であっても別体であってもよい。
【0057】
また、上記実施形態の油圧モータ100では、第2ケース20内に二速切換弁Sを設けていたが、二速切換弁Sは設けられていなくてもよい。
【0058】
また、第2中子52として、第1、第2給排ポート23,24を形成する中子と平面25を形成するための中子とが一体である場合を例に説明したが、例えば、第1、第2給排ポート23,24を形成する中子と一度に形成できる別の中子があれば、これらを一体に形成した中子を第2中子52としてもよい。
【0059】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0060】
油圧モータ100(液圧モータ)は、ポンプから吐出される作動流体によって回転駆動するシリンダブロック3と、シリンダブロック3を収容する第1ケース10(ハウジング)と、ポンプとシリンダブロック3とを接続する流路上に設けられるカウンタバランス弁C(スプール弁)と、カウンタバランス弁C(スプール弁)を収容し、第1ケース10(ハウジング)の開口部13を閉塞する第2ケース20(バルブボディ)と、を備える。第2ケース20(バルブボディ)を製造する鋳造方法では、カウンタバランス弁C(スプール弁)のスプールC1を収容する第1収容孔21及びカウンタバランス弁C(スプール弁)のバルブポートP1,P2を形成するための第1中子51を製造する工程と、シリンダブロック3と対向する平面25に開口し、カウンタバランス弁C(スプール弁)のバルブポートP1,P2に接続される第1、第2給排ポート23,24を形成するための第2中子52を製造する工程と、第1中子51と第2中子52とを用いて第2ケース20(バルブボディ)を製造する工程と、を含む。
【0061】
この構成では、第2ケース20(バルブボディ)を別体として構成した第1中子51と第2中子52とを用いて製造する。第1中子51は、カウンタバランス弁C(スプール弁)のスプールC1を収容する第1収容孔21及びカウンタバランス弁C(スプール弁)のバルブポートP1,P2を形成し、第2中子52は、シリンダブロック3と対向する平面25に開口する第1、第2給排ポート23,24を形成する。第1中子51及び第2中子52をこのような構成とすることにより、第1中子51を1回の作業工程で製作することができる。これにより、中子を製作する時間を短縮することができるとともにコストを削減できるので、第2ケース20(バルブボディ)の生産性を向上させることができる。
【0062】
また、例えば、ポンプやカウンタバランス弁C(スプール弁)の大きさ(特性)を変更した場合には、第1、第2給排ポート23,24とバルブポートP1、P2の位置を変更する必要がある。このように第1、第2給排ポート23,24とバルブポートP1、P2の位置が変更されると、これらの位置関係が変化する。従来のように、二段階の工程で中子を製作している場合には、それぞれの段階の金型、つまり、二つの金型の形状を変更する必要がある。これに対し、この構成では、流路26、27に形成された段部28a,28b,29a,29bによって、第1、第2給排ポート23,24とバルブポートP1、P2との位置の変化量を吸収させることができる。これにより、第1中子51及び第2中子52のいずれかの形状を変更することで対処することができる。つまり、この構成では、ポンプやカウンタバランス弁C(スプール弁)の大きさ(特性)を変更した場合には、第1中子51及び第2中子52を成形する金型のうち、一方の金型のみの形状を変更することで対応できる。
【0063】
また、第1中子51及び第2中子52の構成を採用することにより、図5に示す比較例のように、最終的な中子を作る前段階の中子を作るための金型を不要にすることができる。これにより、金型の数を削減できる。
【0064】
第2ケース20(バルブボディ)の鋳造方法では、第2中子52は、シリンダブロック3と対向する平面25を形成する中子と一体に形成される。
【0065】
この構成では、第2中子52を支持する部材を別途設ける必要がないので、コストの上昇を抑制できる。
【0066】
第2ケース20(バルブボディ)の鋳造方法では、第2中子52は、第1中子51に対して油圧モータ100(液圧モータ)の回転軸Oに対して径方向にオフセットして配置される。
【0067】
この構成では、第2中子52が、第1中子51に対して油圧モータ100(液圧モータ)の回転軸Oに対して径方向にオフセットして配置されていても、アンダーカットが発生しないので、第1中子51と第2中子52によって第2ケース20(バルブボディ)を製造することができる。
【0068】
第2ケース20(バルブボディ)の鋳造方法では、第1中子51と第2中子52とが当接した個所には、第1中子51と第2中子52とによって段部28a,28b,29a,29bが形成される。
【0069】
この構成では、第1中子51と第2中子52とが当接した個所に段部28a,28b,29a,29bが形成されるので、第1中子51と第2中子52とが当接する個所においてアンダーカットが発生することを防止できる。
【0070】
第2ケース20(バルブボディ)の鋳造方法では、スプール弁は、カウンタバランス弁Cである。
【0071】
油圧モータ100(液圧モータ)は、ポンプから吐出される作動流体によって回転駆動するシリンダブロック3と、シリンダブロック3を収容する第1ケース10(ハウジング)と、ポンプとシリンダブロック3とを接続する流路上に設けられるカウンタバランス弁C(スプール弁)と、カウンタバランス弁C(スプール弁)を収容し、第1ケース10(ハウジング)の開口部13を閉塞する第2ケース20(バルブボディ)と、を備える。第2ケース20(バルブボディ)は、カウンタバランス弁C(スプール弁)のスプールC1を収容する収容孔(第1収容孔21)と、収容孔(第1収容孔21)に開口するバルブポートP1,P2と、シリンダブロック3と対向する平面25に開口し、バルブポートP1,P2と連通する給排ポート(第1給排ポート23、第2給排ポート24)と、を有し、バルブポートP1,P2と給排ポート(第1給排ポート23、第2給排ポート24)とを接続する流路26,27には、段部28a,28b,29a,29bが形成される。
【0072】
この構成では、第2ケース20(バルブボディ)を、カウンタバランス弁C(スプール弁)のスプールC1を収容する収容孔(第1収容孔21)及びカウンタバランス弁C(スプール弁)のバルブポートP1,P2を形成する第1中子51と、シリンダブロック3と対向する平面25に開口し、第1、第2給排ポート23,24を形成する第2中子52と、によって形成することができる。
【0073】
また、例えば、ポンプやカウンタバランス弁C(スプール弁)の大きさ(特性)を変更した場合には、第1、第2給排ポート23,24とバルブポートP1、P2の位置を変更する必要がある。このように第1、第2給排ポート23,24とバルブポートP1、P2の位置が変更されると、これらの位置関係が変化する。従来のように、二段階の工程で中子を製作している場合には、それぞれの段階の金型、つまり、二つの金型の形状を変更する必要がある。これに対し、この構成では、流路26、27に形成された段部28a,28b,29a,29bによって、第1、第2給排ポート23,24とバルブポートP1、P2との位置の変化量を吸収させることができる。これにより、第1中子51及び第2中子52のいずれかの形状を変更することで対処することができる。つまり、この構成では、ポンプやカウンタバランス弁C(スプール弁)の大きさ(特性)を変更した場合には、第1中子51及び第2中子52を成形する金型のうち、一方の金型のみの形状を変更することで対応できる。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0075】
上記実施形態では、油圧モータ100が走行用のものである場合を例に説明したが、油圧モータ100は、旋回モータやウィンチ駆動用のモータなどであってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、スプール弁として、カウンタバランス弁Cを例に説明したが、これに限らず、スプール弁は、例えば、低圧選択弁などであってもよい。
【0077】
第1、第2給排ポート23,24が、バルブポートP1,P2に対して径方向内側にオフセットしていてもよい。この場合にも、第1中子51や第2中子52を用いることで、アンダーカットが発生することがない。
【符号の説明】
【0078】
100・・・油圧モータ(液圧モータ)、1・・・ケース 、2・・・出力軸、3・・・シリンダブロック、4・・・シリンダ、5・・・ピストン、7・・・斜板、10・・・第1ケース(ハウジング)、11・・・底部、20・・・第2ケース(バルブボディ)、21・・・第1収容孔、22・・・第2収容孔、23・・・第1給排ポート、24・・・第2給排ポート、25・・・平面、26・・・流路、27・・・流路、51・・・第1中子、52・・・第2中子
図1
図2
図3
図4
図5