(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150713
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】医療用逆流防止弁
(51)【国際特許分類】
A61M 39/24 20060101AFI20231005BHJP
A61M 39/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61M39/24
A61M39/02 114
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059947
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】坂口 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】有川 清貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】山澤 博史
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066JJ03
4C066JJ10
4C066QQ94
(57)【要約】
【課題】より確実に、流体の流動方向を一方向に規制することが可能な医療用逆流防止弁を提供する。
【解決手段】医療用逆流防止弁100は、それぞれ弾性変形可能であるとともに弁体15を構成する第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32を含む中空形状部10を有し、第1嘴状部分31の先端部である第1先端部33は一方向に凸の湾曲形状に形成されており、第2嘴状部分32の先端部である第2先端部34は、第1先端部33に沿う湾曲形状に形成されているとともに、弁体15の閉塞時には第1先端部33の湾曲形状に嵌まり込んで第1先端部33と密着し、弁体15の開放時には、第1先端部33から第2先端部34が離間する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ弾性変形可能であるとともに弁体を構成する第1嘴状部分及び第2嘴状部分を含む中空形状部を有する医療用逆流防止弁であって、
前記第1嘴状部分の先端部である第1先端部は一方向に凸の湾曲形状に形成されており、
前記第2嘴状部分の先端部である第2先端部は、前記第1先端部に沿う湾曲形状に形成されているとともに、前記弁体の閉塞時には前記第1先端部の前記湾曲形状に嵌まり込んで前記第1先端部と密着し、
前記弁体の開放時には、前記第1先端部から前記第2先端部が離間する医療用逆流防止弁。
【請求項2】
前記第1嘴状部分は半筒状に形成されており、
前記第1先端部は円弧状であり、
前記第2嘴状部分は、前記第1嘴状部分の内周に沿って配置されており、
前記第2先端部は、前記第1先端部よりも曲率半径が小さい円弧状であり、
前記弁体の閉塞時には、前記第2先端部の円弧形状は、前記一方向に凸であり、
前記弁体の開放時には、前記第2先端部の少なくとも一部分は、前記一方向に対する反対方向に凸に反転する請求項1に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項3】
前記第1先端部の一端部と前記第2先端部の一端部とは相互に繋がっており、
前記第1先端部の他端部と前記第2先端部の他端部とは相互に繋がっている請求項1又は2に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項4】
前記第2嘴状部分の肉厚は、前記第1嘴状部分の肉厚よりも小さい請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項5】
前記第2嘴状部分の肉厚は、前記第1嘴状部分の肉厚よりも大きい請求項1から3のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項6】
前記中空形状部が設けられている円環状の基部と、
前記第2嘴状部分から前記一方向に対する反対方向に向けて起立している起立部と、
を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項7】
前記起立部は前記基部に固定されている請求項6に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項8】
前記第1先端部及び前記第2先端部の一端部と、前記第1先端部及び前記第2先端部の他端部と、を相互に連結している連結部を備える請求項1から7のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用逆流防止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用逆流防止弁は、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1の医療用逆流防止弁(同文献には、弁部材と記載)は、それぞれ弾性変形可能な一対の嘴状部分を含む中空形状部と、閉状態と開状態とに開閉する弁口と、を備え、一対の嘴状部分の各々が弾性変形することによって、弁口が開状態となり、一対の嘴状部分の各々が弾性復元することによって、弁口が閉状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1の医療用逆流防止弁は、流体の流動方向をより確実に一方向に規制する観点から、なお改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、流体の流動方向をより確実に一方向に規制することが可能な構造の医療用逆流防止弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、それぞれ弾性変形可能であるとともに弁体を構成する第1嘴状部分及び第2嘴状部分を含む中空形状部を有する医療用逆流防止弁であって、
前記第1嘴状部分の先端部である第1先端部は一方向に凸の湾曲形状に形成されており、
前記第2嘴状部分の先端部である第2先端部は、前記第1先端部に沿う湾曲形状に形成されているとともに、前記弁体の閉塞時には前記第1先端部の前記湾曲形状に嵌まり込んで前記第1先端部と密着し、
前記弁体の開放時には、前記第1先端部から前記第2先端部が離間する医療用逆流防止弁が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流体の流動方向をより確実に一方向に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る医療用逆流防止弁の底面側から視た斜視図である。
【
図2】実施形態に係る医療用逆流防止弁の底面図である。
【
図4】実施形態に係る医療用逆流防止弁が医療用流体流通管に圧入された状態を示す縦断面図である。
【
図5】実施形態に係る医療用逆流防止弁の平面図であり、弁口が開口している状態を示す。
【
図6】実施形態の変形例1に係る医療用逆流防止弁の斜視図である。
【
図7】実施形態の変形例1に係る医療用逆流防止弁の底面図である。
【
図9】実施形態の変形例2に係る医療用逆流防止弁の斜視図である。
【
図10】実施形態の変形例2に係る医療用逆流防止弁の底面図である。
【
図11】
図10に示すA-A線に沿った断面図である。状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、
図1から
図5を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
また、本発明の医療用逆流防止弁100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、以下の説明では、
図3及び
図4における下方向が下方、上方向が上方であるものとする。また、医療用逆流防止弁100の軸方向を単に軸方向と称し、医療用逆流防止弁100の径方向を単に径方向と称する場合がある。更に、医療用逆流防止弁100の周方向を単に周方向と称する場合がある。また、医療用逆流防止弁100の径方向を水平方向と称する場合がある。
【0010】
図1から
図3に示すように、本実施形態に係る医療用逆流防止弁100は、それぞれ弾性変形可能であるとともに弁体15を構成する第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32を含む中空形状部10を有する。
第1嘴状部分31の先端部である第1先端部33は一方向に凸の湾曲形状に形成されており、第2嘴状部分32の先端部である第2先端部34は、第1先端部33に沿う湾曲形状に形成されているとともに、弁体15の閉塞時には第1先端部33の湾曲形状に嵌まり込んで第1先端部33と密着し、弁体15の開放時には、第1先端部33から第2先端部34が離間する。
【0011】
医療用逆流防止弁100は、一方向(以下、第1流動方向)へ流体の流動を許容する一方で、当該一方向に対する反対方向(以下、第2流動方向)への流体の流動を規制する。
本実施形態の場合、一例として、
図4における下方が第1流動方向であり、
図4における上方が第2流動方向である。
そして、主として第2嘴状部分32が弾性変形することによって、弁体15は開放状態となり、第1流動方向へ流体の流動が許容される。この状態から、主として第2嘴状部分32が弾性復元することによって、弁体15が閉塞状態となり、第2流動方向への流体の流動が規制される。
【0012】
本実施形態によれば、医療用逆流防止弁100は、一方向に凸の湾曲形状に形成されている第1先端部33と、第1先端部33に沿う湾曲形状に形成されている第2先端部34と、を備えている。
これにより、第1流動方向へ流体の流動を許容する際には、第2先端部34が第1先端部33から離間する方向に弾性変形することにより弁体15が開放され、第1流動方向へ流体の流動が終了すると、第2嘴状部分32は速やかに弾性復元し、第1先端部33の湾曲形状に嵌まり込んで第1先端部33と密着するようにできる。よって、より確実に、流体の流動方向を一方向に規制することができる。
【0013】
図4に示すように、医療用逆流防止弁100は、例えば、医療用流体流通管200に装着されている。
医療用流体流通管200は、円管状の流通管本体210と、医療用逆流防止弁100と、を備え、医療用逆流防止弁100は、流通管本体210の一端部に装着されて、流体の流動方向を一方向に規制している。
より詳細には、医療用逆流防止弁100は、例えば、流体が流通管本体210の上端側から下端側に向かう方向(第1流動方向)への流体の流動を許容する。一方、医療用逆流防止弁100は、例えば、流通管本体210の下端側から上端側に向かう方向(第2流動方向)への流体の流動(すなわち逆流)を規制する。
本実施形態の場合、一例として、医療用流体流通管200は、胃瘻カテーテルである。
胃瘻カテーテルは、流通管本体210の下端部が胃内に配置された状態で、不図示のバンパが拡張されることにより、当該バンパが胃壁に対して係止され、胃瘻カテーテルが留置される。この状態において、胃瘻カテーテルは、胃内と生体の外部とを相互に連通しており、流通管本体210の内腔を介して、栄養剤などの液体が胃内に注入される。
ここで、通常状態においては、医療用逆流防止弁100は、流通管本体210の上端側開口211aを閉塞している。これにより、第2流動方向への流体の流動が規制されるので、胃の内容物が胃内から体外へ逆流してしまうことを規制できる。
一方、胃瘻カテーテルを介して胃内に栄養剤等を注入する際には、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性変形することによって、流通管本体210の内腔と体外とを相互に連通させる。これにより、第1流動方向への流体の流動が許容されるので、体外から胃内に栄養剤が通ることが許容される。そして、胃内への栄養剤等の注入が終了すると、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性復元することによって、医療用逆流防止弁100は、流通管本体210の上端側開口211aを再び閉塞する。
【0014】
図4に示すように、流通管本体210は、上下方向を軸方向とする円筒状に形成されている。流通管本体210の上端部の内径は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。流通管本体210の上端部には、医療用逆流防止弁100が装着されている。
流通管本体210の上端側開口211aの周囲縁部には、環状リブ223が形成されている。環状リブ223は、上端側開口211aの周囲縁部に沿って周回状に形成されている。環状リブ223の上端は、例えば、上方を向いた平坦面となっている。
また、医療用流体流通管200は、例えば、医療用逆流防止弁100の上端部に挿入されて当該医療用逆流防止弁100を上方の外部空間から閉塞することが可能な栓部材(不図示)を備えている。
【0015】
図1から
図4に示すように、医療用逆流防止弁100は、例えば、上述の中空形状部10に加えて、円環状の基部41と、基部41の外周縁から下方に突出していて中空形状部10の上端部の周囲を囲んでいる環状壁部43と、基部41の内周縁から上方に向けて起立している第2環状壁部47と、を有する。
基部41は、例えば、平面視円環状の平板状に形成されており、その板面は上下方向を向いている。
基部41の外径は、例えば、流通管本体210の上端の外径よりも大きい寸法に設定されている。基部41は、流通管本体210の上端に対して装着される。
環状壁部43は、例えば、平面視円環状に形成されている。環状壁部43の内径及び外径の各々は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。
中空形状部10の外周面と環状壁部43の内周面との間隙(基部41の下面側に形成されている間隙)は、上述の流通管本体210の環状リブ223が嵌入する環状溝44を構成している。
また、中空形状部10は、例えば、流通管本体210の上端部に圧入される圧入部42を有する。圧入部42は、平面視円環状に形成されている。
基部41、中空形状部10及び第2環状壁部47は、互いに同軸に配置されており、これらの内腔が医療用逆流防止弁100の内腔を構成している。すなわち、基部41、中空形状部10及び第2環状壁部47の軸方向が、医療用逆流防止弁100の軸方向である。流体が第1流動方向に流動する際には、当該液体は、医療用逆流防止弁100の上端側の開口(第2環状壁部47の上端側の開口)から流入し、後述する弁口45から排出される。
圧入部42の外径は、例えば、流通管本体210の上端部の内径と略同等に設定されている。また、圧入部42の内径は、例えば、基部41の内径と略同等に設定されている。
【0016】
第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々は、例えば、圧入部42の内周縁から下方に向けて突出している。
本実施形態の場合、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々の先端部(第1先端部33及び第2先端部34)の合わせ目が弁口45を構成している。
本実施形態の場合、第1嘴状部分31は半筒状に形成されており、第1先端部33は円弧状であり、第2嘴状部分32は、第1嘴状部分31の内周に沿って配置されている。第2先端部34は、第1先端部33よりも曲率半径が小さい円弧状である。
第1先端部33は、例えば、中空形状部10の軸心に対して直交する第1径方向(例えば、
図2に示すX方向)における一方に凸の円弧状に形成されている。したがって、第2先端部34は、例えば、第1径方向における一方に凸の円弧状に形成されており、第1先端部33よりも曲率半径が小さい。
第1嘴状部分31の内径及び外径の各々は、例えば、下方に向けて徐々に縮径している。
同様に、第2嘴状部分32の内周及び外周の各々の延在方向における寸法は、下方に向けて徐々に縮小している。また、第2嘴状部分32の内周及び外周の各々は、下方に向けて徐々に第1嘴状部分31の内周に近づく方向(本実施形態の場合、第1径方向における一方)への突出量が増加している。すなわち、第1嘴状部分31と第2嘴状部分32とによって構成される弁体15の内腔は、先端側に向けて徐々に先細りした形状となっている。これにより、流体が第1流動方向に流動する際には、当該流体の圧力によって、弁口45を応答性よく開放できる。
第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々は、第1径方向に沿った断面(
図3参照)において、中空形状部10の軸心と第1径方向の双方に対して直交する第2径方向(例えば、
図2に示すY方向)における外側(中空形状部10の軸心側とは反対側)から内側(中空形状部10の軸心側)に向けて下り傾斜しており、その先端の一部分において相互に繋がって合わせ目(弁口45)を形成している。
より詳細には、第1嘴状部分31の傾斜角度は、例えば、第2嘴状部分32の傾斜角度よりも小さい。
本実施形態の場合、第1先端部33の一端部33aと第2先端部34の一端部34aとは相互に繋がっており、第1先端部33の他端部33bと第2先端部34の他端部34bとは相互に繋がっている。
このような構成によれば、第1流動方向への流体の流動が終了すると、第2先端部34が第1先端部33の湾曲形状に嵌まり込んで第1先端部33と密着した形状に速やかに弾性復元力するようにできる。
一方、第1先端部33及び第2先端部34の各々の延在方向における中間部においては互いに非接合となっており、この非接合となっている部分が弁口45を構成している。
第1嘴状部分31の先端部(第1先端部33)の先端面(下端面)は、例えば、平坦に形成されており水平に配置されている。同様に、第2嘴状部分32の先端部(第2先端部34)の先端面(下端面)は、例えば、平坦に形成されており水平に配置されている。
平面視において、第1先端部33及び第2先端部34の各々は、第1径方向に凸の略U字形状に形成されている。
【0017】
本実施形態の場合、
図4に示すように、中空形状部10の圧入部42が、流通管本体210の上端部の内腔に圧入されている。
環状溝44には、流通管本体210の環状リブ223が圧入されている。より詳細には、環状リブ223の内周面は、圧入部42の外周面に対して面接触しており、環状リブ223の外周面は、環状壁部43の内周面に対して面接触している。
このような構成によれば、流体(例えば、栄養剤や胃の内容物)が、流通管本体210の内周面210aと医療用逆流防止弁100の外周面との間の間隙を介して、流通管本体210の上端側開口211aに向けて逆流してしまうことを抑制できる。
また、本実施形態の場合、環状リブ223の上端面と環状溝44の下面との間には僅かな間隙が形成されており、当該間隙には、不図示の接着剤が周回状に充填されている。これにより、環状溝44と環状リブ223とが液密(気密)に接合されている。
このような構成によれば、流体(例えば、栄養剤や胃の内容物)が、環状溝44と環状リブ223との間隙を介して、流通管本体210の外部空間に漏出してしまうことを抑制できる。
また、
図1及び
図2に示すように、環状壁部43には、例えば、環状溝44と当該環状壁部43の外周囲の空間とを相互に連通させる切欠形状部46が形成されている。
これにより、接着剤が充填された環状溝44に対して環状リブ223を圧入する際に、当該接着剤が、接着剤が環状溝44内に行き渡った後に切欠形状部46から溢れるようにできる。よって、接着剤が環状溝44内に周回状に充填されたことを容易に視認できるので、環状溝44と環状リブ223との液密(気密)性をより確実に確保することができる。
【0018】
本実施形態の場合、上述のように、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性変形することによって、弁体15が開放され、第1流動方向へ流体の流動が許容される。この状態から、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性復元することによって、弁体15が閉塞され、第2流動方向への流体の流動が規制される。
より詳細には、流体が第1流動方向に流動する際には、当該流体に押圧されて、
図5に示すように、第2嘴状部分32の第2先端部34は、第1嘴状部分31の第1先端部33から離間した形状に弾性変形する。更に詳細には、第2嘴状部分32の第2先端部34は、第1径方向における他方(第1嘴状部分31の突出方向に対する反対方向)に向けて凸の弧状に弾性変形する一方で、第1嘴状部分31の第1先端部33は、第1径方向における他方に向けて凸の弧状形状を維持する。これにより、弁口45が開口状態となり(弁体15が開放され)、第1流動方向への流体の流動が許容される。そして、流体の流動が終了すると、第2先端部34は、第1先端部33の湾曲形状に嵌まり込んで第1先端部33と密着する。更に詳細には、第2先端部34は、第1径方向における一方に凸の円弧形状に弾性復元する。これにより、弁口45が閉口状態となり(弁体15が閉塞され)、第2流動方向への流体の流動(すなわち流体の逆流)が規制される。
【0019】
このように、本実施形態の場合、弁体15の閉塞時には、第2先端部34の円弧形状は、一方向に凸であり、弁体15の開放時には、第2先端部34の少なくとも一部分は、一方向に対する反対方向に凸に反転する。
このような構成によれば、第2先端部34の十分な弾性復元力を確保できるので、第1流動方向への流体の流動が終了すると、第2先端部34が速やかに弾性復元し、弁体15が閉塞されるようにできる。
また、弁口45の開口幅(第1径方向における第1先端部33と第2先端部34との最大離間距離)を十分に確保することができるので、弁体15の開放時には、流体が第1流動方向にスムーズに流動するようにできる。
【0020】
ここで、第2嘴状部分32の肉厚は、例えば、第1嘴状部分31の肉厚よりも小さくてもよい。
この場合、第2先端部34が弾性変形しやすくなるので、弁体15の開放時には、第1先端部33から第2先端部34がスムーズに離間するようにできる。
また、第2嘴状部分32の肉厚は、第1嘴状部分31の肉厚よりも大きくてもよい。
この場合、第2先端部34の弾性復元力を十分に確保できるので、弁体15の閉塞時には、第1先端部33が、スムーズに第1先端部33の湾曲形状に嵌まり込んで第1先端部33と密着するようにできる。
ただし、本発明において、第2嘴状部分32の肉厚は、例えば、第1嘴状部分31の肉厚と同等となっていてもよい。
【0021】
流通管本体210は、例えば、樹脂材料によって一体成形されている。樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はシリコンゴムその他のゴム材料等であることが挙げられる。
【0022】
医療用逆流防止弁100は、例えば、弾性材料によって一体成形されている。弾性材料は、特に限定されないが、例えば、シリコンゴムやエラストマー等であることが挙げられる。
【0023】
<変形例1>
次に、
図6から
図8を用いて実施形態の変形例1を説明する。
図6から
図8に示すように、本変形例の場合、医療用逆流防止弁100は、例えば、第2嘴状部分32から上記一方向に対する反対方向(本実施形態の場合、
図7における左方)に向けて起立している起立部51を備える。
このような構成によれば、第2嘴状部分32を起立部51によって補強することができる。よって、起立部51の弾性復元力によって、第2先端部34が弾性復元する動作を補助できるので、弁体15がより確実且つ速やかに開放状態から閉塞状態に切り替わるようにできる。
【0024】
起立部51は、一例として、基部41に固定されている。
より詳細には、起立部51は、例えば、側面視において(例えば、第2径方向に視たときに)、略直角三角形に形成されている。起立部51の斜辺(略直角三角形の斜辺)は、第2嘴状部分32の内周面に沿って、第1径方向における一方から他方に向けて下り傾斜している。起立部51の下端は、基部41に固定されている。
これにより、第2嘴状部分32の先端と基端との間の部分を起立部51によって十分に補強することができる。
なお、起立部51は、中空形状部10と一体成形されていてもよいし、当該中空形状部10とは別体に成形された起立部51が接着固定されていてもよい。
【0025】
<変形例2>
次に、
図9から
図11を用いて実施形態の変形例2を説明する。
【0026】
図9から
図11に示すように、本変形例の場合、医療用逆流防止弁100は、例えば、第1先端部33及び第2先端部34の一端部33a、34aと、第1先端部33及び第2先端部34の他端部33b、34bと、を相互に連結している連結部61を備える。
このような構成によれば、弁体15の閉塞時には、第2先端部34が、より確実に第1先端部33の湾曲形状に嵌まり込んで第1先端部33と密着することが期待できる。
【0027】
図10に示すように、連結部61は、例えば、第2先端部34の一端部34bの内周面から第2先端部34の他端部33bの内周面との間に直線状の梁状に架設されている。
【0028】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0029】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)それぞれ弾性変形可能であるとともに弁体を構成する第1嘴状部分及び第2嘴状部分を含む中空形状部を有する医療用逆流防止弁であって、
前記第1嘴状部分の先端部である第1先端部は一方向に凸の湾曲形状に形成されており、
前記第2嘴状部分の先端部である第2先端部は、前記第1先端部に沿う湾曲形状に形成されているとともに、前記弁体の閉塞時には前記第1先端部の前記湾曲形状に嵌まり込んで前記第1先端部と密着し、
前記弁体の開放時には、前記第1先端部から前記第2先端部が離間する医療用逆流防止弁。
(2)前記第1嘴状部分は半筒状に形成されており、
前記第1先端部は円弧状であり、
前記第2嘴状部分は、前記第1嘴状部分の内周に沿って配置されており、
前記第2先端部は、前記第1先端部よりも曲率半径が小さい円弧状であり、
前記弁体の閉塞時には、前記第2先端部の円弧形状は、前記一方向に凸であり、
前記弁体の開放時には、前記第2先端部の少なくとも一部分は、前記一方向に対する反対方向に凸に反転する(1)に記載の医療用逆流防止弁。
(3)前記第1先端部の一端部と前記第2先端部の一端部とは相互に繋がっており、
前記第1先端部の他端部と前記第2先端部の他端部とは相互に繋がっている(1)又は(2)に記載の医療用逆流防止弁。
(4)前記第2嘴状部分の肉厚は、前記第1嘴状部分の肉厚よりも小さい(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
(5)前記第2嘴状部分の肉厚は、前記第1嘴状部分の肉厚よりも大きい(1)から(3)のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
(6)前記中空形状部が設けられている円環状の基部と、
前記第2嘴状部分から前記一方向に対する反対方向に向けて起立している起立部と、
を備える(1)から(5)のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
(7)前記起立部は前記基部に固定されている(6)に記載の医療用逆流防止弁。
(8)前記第1先端部及び前記第2先端部の一端部と、前記第1先端部及び前記第2先端部の他端部と、を相互に連結している連結部を備える(1)から(7)のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
【符号の説明】
【0030】
10 中空形状部
15 弁体
31 第1嘴状部分
32 第2嘴状部分
33 第1先端部
33a 一端部
33b 他端部
34 第2先端部
34a 一端部
34b 他端部
41 基部
42 圧入部
43 環状壁部
44 環状溝
45 弁口
46 切欠形状部
47 第2環状壁部
51 起立部
61 連結部
100 医療用逆流防止弁
200 医療用流体流通管(胃瘻カテーテル)
210 流通管本体
210a 内周面
211a 上端側開口
223 環状リブ