IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川澄化学工業株式会社の特許一覧 ▶ 住友ベークライト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-医療用逆流防止弁 図1
  • 特開-医療用逆流防止弁 図2
  • 特開-医療用逆流防止弁 図3
  • 特開-医療用逆流防止弁 図4
  • 特開-医療用逆流防止弁 図5
  • 特開-医療用逆流防止弁 図6
  • 特開-医療用逆流防止弁 図7
  • 特開-医療用逆流防止弁 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150714
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】医療用逆流防止弁
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/24 20060101AFI20231005BHJP
   A61M 39/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61M39/24
A61M39/02 114
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059948
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】坂口 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】有川 清貴
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 稔
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和樹
(72)【発明者】
【氏名】山澤 博史
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066JJ03
4C066JJ10
4C066QQ94
(57)【要約】
【課題】流体の流動方向をより確実に一方向に規制することが可能な医療用逆流防止弁を提供する。
【解決手段】医療用逆流防止弁100は、それぞれ弾性変形可能な第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32を含む中空形状部10を有し、中空形状部10の材料よりも高弾性の材料によりそれぞれ構成されている第1補剛部及び第2補剛部を備え、第1補剛部は、第1嘴状部分31の先端部である第1先端部33に沿って当該第1先端部33に設けられており、第2補剛部は、第2嘴状部分32の先端部である第2先端部34に沿って当該第2先端部34に設けられている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ弾性変形可能な第1嘴状部分及び第2嘴状部分を含む中空形状部を有する医療用逆流防止弁であって、
前記中空形状部の材料よりも高弾性の材料によりそれぞれ構成されている第1補剛部及び第2補剛部を備え、
前記第1補剛部は、前記第1嘴状部分の先端部である第1先端部に沿って当該第1先端部に設けられており、
前記第2補剛部は、前記第2嘴状部分の先端部である第2先端部に沿って当該第2先端部に設けられている医療用逆流防止弁。
【請求項2】
前記第1補剛部は第1ワイヤ部であり、
前記第2補剛部は第2ワイヤ部である請求項1に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項3】
前記第1ワイヤ部と前記第2ワイヤ部とを含む環状の形状に形成されているワイヤ部材を備える請求項2に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項4】
前記ワイヤ部材は、相互に固定されている第1部材及び第2部材を有し、
前記第1部材は、前記第1先端部に沿って配置されている第1延在部と、前記第2先端部に沿って配置されている第2延在部と、前記第1延在部の一端と前記第2延在部の一端とを相互に連結している第1連結部と、を有し、
前記第2部材は、前記第1先端部に沿って配置されている第3延在部と、前記第2先端部に沿って配置されている第4延在部と、前記第3延在部の一端と前記第4延在部の一端とを相互に連結している第2連結部と、を有し、
前記第1延在部の前記一端及び前記第2延在部の前記一端は、前記第1先端部及び前記第2先端部の一端側に位置しており、前記第3延在部の前記一端及び前記第4延在部の前記一端は、前記第1先端部及び前記第2先端部の他端側に位置しており、
前記第1延在部及び前記第3延在部によって前記第1ワイヤ部が構成されており、
前記第2延在部及び前記第4延在部によって前記第2ワイヤ部が構成されている請求項3に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項5】
前記中空形状部は、前記第1ワイヤ部及び前記第2ワイヤ部が配設されている配設溝を有し、
前記配設溝に対して前記第1ワイヤ部及び前記第2ワイヤ部が接着固定されている請求項2から4のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
【請求項6】
前記第1ワイヤ部及び前記第2ワイヤ部は超弾性合金により構成されている請求項2から5のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用逆流防止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用逆流防止弁は、例えば、特許文献1に記載のものがある。特許文献1の医療用逆流防止弁(同文献には、弁部材と記載)は、それぞれ弾性変形可能な一対の嘴状部分を含む中空形状部と、閉状態と開状態とに開閉する弁口と、を備え、一対の嘴状部分の各々が弾性変形することによって、弁口が開状態となり、一対の嘴状部分の各々が弾性復元することによって、弁口が閉状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-516076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の検討によれば、特許文献1の医療用逆流防止弁は、流体の流動方向をより確実に一方向に規制する観点から、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、流体の流動方向をより確実に一方向に規制することが可能な構造の医療用逆流防止弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、それぞれ弾性変形可能な第1嘴状部分及び第2嘴状部分を含む中空形状部を有する医療用逆流防止弁であって、
前記中空形状部の材料よりも高弾性の材料によりそれぞれ構成されている第1補剛部及び第2補剛部を備え、
前記第1補剛部は、前記第1嘴状部分の先端部である第1先端部に沿って当該第1先端部に設けられており、
前記第2補剛部は、前記第2嘴状部分の先端部である第2先端部に沿って当該第2先端部に設けられている医療用逆流防止弁が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流体の流動方向をより確実に一方向に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る医療用逆流防止弁の底面側から視た斜視図である。
図2】実施形態に係る医療用逆流防止弁の底面図である。
図3図2に示すA-A線に沿った断面図である。
図4】実施形態に係る医療用逆流防止弁が医療用流体流通管に圧入された状態を示す縦断面図である。
図5】実施形態に係る医療用逆流防止弁の底面図であり、弁口が開口している状態を示す。
図6】実施形態の変形例に係る医療用逆流防止弁の底面図である。
図7】実施形態の変形例に係る医療用逆流防止弁の底面図であり、弁口が開口している状態を示す。
図8図8(a)は実施形態の変形例におけるワイヤ部材の分解斜視図であり、図8(b)は実施形態の変形例におけるワイヤ部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図1から図5を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
また、本発明の医療用逆流防止弁100の各種の構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
また、以下の説明では、図3及び図4における下方向が下方、上方向が上方であるものとする。また、医療用逆流防止弁100の軸方向を単に軸方向と称し、医療用逆流防止弁100の径方向を単に径方向と称する場合がある。更に、医療用逆流防止弁100の周方向を単に周方向と称する場合がある。また、医療用逆流防止弁100の径方向を水平方向と称する場合がある。
【0010】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る医療用逆流防止弁100は、それぞれ弾性変形可能な第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32を含む中空形状部10を有する。
また、医療用逆流防止弁100は、中空形状部10の材料よりも高弾性の材料によりそれぞれ構成されている第1補剛部(本実施形態の場合、後述する第1ワイヤ部71)及び第2補剛部(本実施形態の場合、後述する第2ワイヤ部73)を備えている。
第1補剛部は、第1嘴状部分31の先端部である第1先端部33に沿って当該第1先端部33に設けられており、第2補剛部は、第2嘴状部分32の先端部である第2先端部34に沿って当該第2先端部34に設けられている。
【0011】
医療用逆流防止弁100は、一方向(以下、第1流動方向)へ流体の流動を許容する一方で、当該一方向に対する反対方向(以下、第2流動方向)への流体の流動を規制する。
より詳細には、医療用逆流防止弁100は、閉状態と開状態とに開閉する弁口45(詳細後述)を備えている。
そして、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性変形することによって、弁口45が開状態となり、第1流動方向へ流体の流動が許容される。この状態から、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性復元することによって、弁口45が閉状態となり、第2流動方向への流体の流動が規制される。
【0012】
本実施形態によれば、医療用逆流防止弁100は、第1先端部33に沿って当該第1先端部33に設けられている第1補剛部と、第2先端部34に沿って当該第2先端部34に設けられている第2補剛部と、を備えている。そして、第1補剛部及び第2補剛部の各々は、中空形状部10の材料よりも高弾性の材料によりそれぞれ構成されている。
これにより、第1補剛部及び第2補剛部の各々の弾性復元力によって、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性復元する動作を良好に補助することができる。よって、流体の流動方向をより確実に一方向に規制することができる。
【0013】
図4に示すように、医療用逆流防止弁100は、例えば、医療用流体流通管200に装着されている。
医療用流体流通管200は、円管状の流通管本体210と、医療用逆流防止弁100と、を備え、医療用逆流防止弁100は、流通管本体210の一端部に装着されて、流体の流動方向を一方向に規制している。
より詳細には、医療用逆流防止弁100は、例えば、流体が流通管本体210の上端側から下端側に向かう方向(第1流動方向)への流体の流動を許容する。一方、医療用逆流防止弁100は、例えば、流通管本体210の下端側から上端側に向かう方向(第2流動方向)への流体の流動(すなわち逆流)を規制する。
本実施形態の場合、一例として、医療用流体流通管200は、胃瘻カテーテルである。
胃瘻カテーテルは、流通管本体210の下端部が胃内に配置された状態で、不図示のバンパが拡張されることにより、当該バンパが胃壁に対して係止され、胃瘻カテーテルが留置される。この状態において、胃瘻カテーテルは、胃内と生体の外部とを相互に連通しており、流通管本体210の内腔を介して、栄養剤などの液体が胃内に注入される。
より詳細には、胃瘻カテーテルを介して胃内に栄養剤等を注入する際には、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性変形することによって、流通管本体210の内腔と体外とを相互に連通させる。これにより、第1流動方向への流体の流動が許容されるので、体外から胃内に栄養剤が通ることが許容される。そして、胃内への栄養剤等の注入が終了すると、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性復元することによって、医療用逆流防止弁100は、流通管本体210の上端開口211aを閉塞する。これにより、第2流動方向への流体の流動が規制されるので、胃の内容物や栄養剤等が胃内から体外へ逆流してしまうことを規制できる。
【0014】
図4に示すように、流通管本体210は、上下方向を軸方向とする円筒状に形成されている。流通管本体210の上端部の内径及び外径の各々は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。流通管本体210の上端部には、医療用逆流防止弁100が装着されている。
流通管本体210の上端開口211aの周囲縁部には、環状リブ223が形成されている。環状リブ223は、上端開口211aの周囲縁部に沿って周回状に形成されている。環状リブ223の上端は、例えば、上方を向いた平坦面となっている。
また、医療用流体流通管200は、例えば、医療用逆流防止弁100の上端部に挿入されて当該医療用逆流防止弁100を上方の外部空間から閉塞することが可能な栓部材(不図示)を備えている。
【0015】
図1から図4に示すように、医療用逆流防止弁100は、例えば、上述の中空形状部10に加えて、円環状の基部41と、基部41の外周縁から下方に突出していて中空形状部10の上端部の周囲を囲んでいる環状壁部43と、基部41の内周縁から上方に向けて起立している第2環状壁部47と、を有する。
基部41は、例えば、平面視円環状の平板状に形成されており、その板面は上下方向を向いている。
基部41の外径は、例えば、流通管本体210の上端の外径よりも大きい寸法に設定されている。基部41は、流通管本体210の上端に対して装着される。
環状壁部43は、例えば、平面視円環状に形成されている。環状壁部43の内径及び外径の各々は、例えば、軸方向における位置にかかわらず略一定となっている。
中空形状部10の外周面と環状壁部43の内周面との間隙(基部41の下面側に形成されている間隙)は、上述の流通管本体210の環状リブ223が嵌入する環状溝44を構成している。
また、中空形状部10は、例えば、流通管本体210の上端部に圧入される圧入部55aを有する。圧入部55aは、平面視円環状に形成されている。
基部41、中空形状部10及び第2環状壁部47は、互いに同軸に配置されており、これらの内腔が医療用逆流防止弁100の内腔を構成している。すなわち、基部41、中空形状部10及び第2環状壁部47の軸方向が、医療用逆流防止弁100の軸方向である。流体が第1流動方向に流動する際には、当該液体は、医療用逆流防止弁100の上端側の開口(第2環状壁部47の上端側の開口)から流入し、後述する弁口45から排出される。
圧入部55aの外径は、例えば、流通管本体210の上端部の内径と略同等に設定されている。また、圧入部55aの内径は、例えば、基部41の内径と略同等に設定されている。
【0016】
第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々は、例えば、圧入部55aの内周縁から下方に向けて突出している。
本実施形態の場合、第1先端部33及び第2先端部34の合わせ目が弁口45を構成している。第1先端部33及び第2先端部34の各々は、中空形状部10の軸心に対して直交する第1径方向(例えば、図2に示すX方向)に沿ってそれぞれ延在しているとともに相互に密着又は近接している。
より詳細には、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々の平面形状は、それぞれ径方向外側に向けて凸の半月状の形状である。
第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32において、弧状の上縁部31a、32aと、対応する先端部(第1先端部33及び第2先端部34)と、を接続している中間部31b、32bは、例えば、平板状であることが挙げられる。ただし、中間部31b、32bは、湾曲した形状であってもよい。
また、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32において、平板状に形成されている中間部31b、32b以外の部分31c、32cは、径方向外側に向けて凸に湾曲した形状となっており、弧状の上縁部31a、32aから先端部(第1先端部33及び第2先端部34)の両端部まで延出している。
中間部31b、32bの各々は、例えば、中空形状部10の軸心と第1径方向の双方に対して直交する第2径方向(例えば、図2に示すY方向)に沿った断面(図3)において、当該第2径方向における外側(中空形状部10の軸心側とは反対側)から内側(中空形状部10の軸心側)に向けて下り傾斜している。そして、第1先端部33及び第2先端部34の各々は、その先端の一部分において相互に繋がって合わせ目(弁口45)を形成している。平面視において、第1先端部33及び第2先端部34の各々は、第1径方向に延在している。第1先端部33及び第2先端部34は、第1径方向における一端部33a、34aと他端部33b、34bとにおいて相互に繋がっている。一方、第1径方向における中間部においては互いに非接合となっており、この非接合となっている部分が弁口45を構成している。
第1先端部33の先端面(下端面)は、例えば、平坦に形成されており水平に配置されている。同様に、第2先端部34の先端面(下端面)は、例えば、平坦に形成されており水平に配置されている。
【0017】
本実施形態の場合、図4に示すように、中空形状部10の圧入部55aが、流通管本体210の上端部の内腔に圧入されている。
環状溝44には、流通管本体210の環状リブ223が圧入されている。より詳細には、環状リブ223の内周面は、圧入部55aの外周面に対して面接触しており、環状リブ223の外周面は、環状壁部43の内周面に対して面接触している。
このような構成によれば、流体(例えば、栄養剤や胃の内容物)が、流通管本体210の内周面210aと医療用逆流防止弁100の外周面との間の間隙を介して、流通管本体210の上端開口211aに向けて逆流してしまうことを抑制できる。
また、本実施形態の場合、環状リブ223の上端面と環状溝44の下面との間には僅かな間隙が形成されており、当該間隙には、不図示の接着剤が周回状に充填されている。これにより、環状溝44と環状リブ223とが液密(気密)に接合されている。
このような構成によれば、流体(例えば、栄養剤や胃の内容物)が、環状溝44と環状リブ223との間隙を介して、流通管本体210の外部空間に漏出してしまうことを抑制できる。
また、図1及び図2に示すように、環状壁部43には、例えば、環状溝44と当該環状壁部43の外周囲の空間とを相互に連通させる切欠形状部46が形成されている。
これにより、接着剤が充填された環状溝44に対して環状リブ223を圧入する際に、当該接着剤が、接着剤が環状溝44内に行き渡った後に切欠形状部46から溢れるようにできる。よって、接着剤が環状溝44内に周回状に充填されたことを容易に視認できるので、環状溝44と環状リブ223との液密(気密)性をより確実に確保することがきる。
【0018】
本実施形態の場合、上述のように、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性変形することによって、弁口45が開状態となり、第1流動方向へ流体の流動が許容される。この状態から、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性復元することによって、弁口45が閉状態となり、第2流動方向への流体の流動が規制される。
より詳細には、流体が第1流動方向に流動する際には、当該流体に押圧されて、図5に示すように、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々の先端部(第1先端部33及び第2先端部34)は、第2径方向において互いに離間した形状に弾性変形する。より詳細には、第1先端部33は、第2径方向における第2先端部34側とは反対側(例えば、図2における上方)に向けて凸の弧状に弾性変形し、第2先端部34は、第2径方向における第1先端部33側とは反対側(例えば、図2における下方)に向けて凸の弧状に弾性変形する。これにより、弁口45が開口状態となり、第1流動方向への流体の流動が許容される。そして、流体の流動が終了すると、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々の先端部33、34は、第2径方向において互いに密着した形状に弾性復元する。より詳細には、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々の先端部33、34は、第1径方向に沿って直線状に延在した形状に弾性復元する。これにより、弁口45が閉口状態となり、第2流動方向への流体の流動(すなわち流体の逆流)が規制される。
【0019】
ここで、本実施形態の場合、第1補剛部は第1ワイヤ部71であり、第2補剛部は第2ワイヤ部73である。
第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々は、第1径方向(すなわち先端部33、34の各々の長手方向)に沿って延在している。
より詳細には、第1ワイヤ部71は、例えば、第1径方向における第1先端部33の一端から他端に亘って直線状に延在している。同様に、第2ワイヤ部72は、例えば、第1径方向における第2先端部34の一端から他端に亘って直線状に延在している。
第1ワイヤ部71と第2ワイヤ部73とは、弁口45を間に挟んで互いに平行に配置されている。
流体が第1流動方向に流動する際には、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々は、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32に追従して弾性変形する。より詳細には、第1ワイヤ部71は、第2径方向における第2先端部34側とは反対側(例えば、図5における上方)に向けて凸の弧状に弾性変形し、第2ワイヤ部72は、第2径方向における第1先端部33側とは反対側(例えば、図2における下方)に向けて凸の弧状に弾性変形する。そして、流体の流動が終了すると、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々は、第2径方向において互いに平行に延在した形状に弾性復元する。
このような構成によれば、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々の弾性復元力によって、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性復元する動作を良好に補助することができる。よって、流体の流動方向をより確実に一方向に規制することができる。
【0020】
第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73は、例えば、超弾性合金により構成されている。
これにより、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々の弾性復元力を十分に確保することができるので、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性復元する動作をより良好に補助することができる。
本実施形態の場合、一例として、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々は、二チノール(ニッケルチタン形状記憶合金)によって構成されている。
【0021】
また、図3に示すように、中空形状部10は、例えば、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73が配設されている配設溝17を有し、配設溝17に対して第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73が接着固定されている。なお、図1及び図2においては、配設溝17の図示を省略している。
このような構成によれば、第1先端部33に対して第1ワイヤ部71を良好に固定することができる。同様に、第2先端部34に対して第2ワイヤ部73を良好に固定することができる。
より詳細には、図3に示すように、配設溝17は、第1先端部33の先端面(下端面)に形成されている第1配設溝17aと、第2先端部34の先端面(下端面)に形成されている第2配設溝17bと、にそれぞれ形成されている。
第1配設溝17a及び第2配設溝17bの各々は、第2径方向において上方に向けて徐々に狭まっている。
第1配設溝17aは、第1先端部33の先端面から上方に向けて窪んでいる。第2径方向に沿った断面(図3)において、第1配設溝17aは、略V字を上下反転した形状に形成されている。第1ワイヤ部71は、例えば、第1配設溝17aの上端部内に配置されている。図3に示すように、第1先端部33の先端面において、第1配設溝17aの形成領域を基準として、第2径方向における内側(中空形状部10の軸心側)の面は、第2径方向における外側(中空形状部10の軸心側とは反対側)の面よりも下方に配置されている。
第2配設溝17bは、例えば、中空形状部10の軸心を基準として第1配設溝17aと対称形状に形成されている。したがって、第2ワイヤ部73は、例えば、第2配設溝17bの上端部内に配置されている。また、第2先端部34の先端面において、第2配設溝17bの形成領域を基準として、第2径方向における内側(中空形状部10の軸心側)の面は、第2径方向における外側(中空形状部10の軸心側とは反対側)の面よりも下方に配置されている。
第1配設溝17a及び第2配設溝17bの開口は、例えば、接着剤76によって封止されている。これにより、ワイヤ部材70を配設溝17に対して良好に固定することができる。
なお、接着剤76は、第1配設溝17a及び第2配設溝17bの開口の全体を覆っていることが好ましい。ただし、第1配設溝17a及び第2配設溝17bの開口の一部分が、接着剤76から露出していてもよい。
また、本発明において、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々は、対応する先端部に埋設されていてもよい。
【0022】
流通管本体210は、例えば、樹脂材料によって一体成形されている。樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はシリコンゴムその他のゴム材料等であることが挙げられる。
【0023】
医療用逆流防止弁100は、例えば、弾性材料によって一体成形されている。弾性材料は、特に限定されないが、例えば、シリコンゴムやエラストマー等であることが挙げられる。
【0024】
<変形例>
次に、図6から図8(b)を用いて実施形態の変形例を説明する。
本変形例の場合、ワイヤ部材70は、第1ワイヤ部71と第2ワイヤ部73とを含む環状の形状に形成されている点において、上記の実施形態に係る医療用逆流防止弁100と相違しており、その他の点においては上記の実施形態に係る医療用逆流防止弁100と同様に構成されている。
このような構成によれば、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々が、より確実に、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々に追従して弾性変形するようにできる。よって、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々の弾性復元力によって、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々が弾性復元する動作をより確実に補助することができる。
より詳細には、第2径方向において、第1ワイヤ部71と第2ワイヤ部72の一端どうしの距離と他端どうしの距離とは維持しつつ、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部72の各々の中間部が互いに離間した形状に弾性変形するようにできる。つまり、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部72が、第1嘴状部分31及び第2嘴状部分32の各々の弾性変形に追従して弾性変形するようにできるので、当該第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部72の各々の十分な弾性復元力をより確実に蓄えることができる。
【0025】
より詳細には、ワイヤ部材70は、例えば、相互に固定されている第1部材81及び第2部材86を有する。
図6に示すように、第1部材81は、例えば、第1先端部33に沿って配置されている第1延在部82と、第2先端部34に沿って配置されている第2延在部83と、第1延在部82の一端と第2延在部83の一端とを相互に連結している第1連結部84と、を有する。
同様に、第2部材86は、例えば、第1先端部33に沿って配置されている第3延在部87と、第2先端部34に沿って配置されている第4延在部88と、第3延在部87の一端と第4延在部88の一端とを相互に連結している第2連結部89と、を有する。
第1延在部82の一端及び第2延在部83の一端は、第1先端部33及び第2先端部34の一端側(一端部33a、34a側)に位置しており、第3延在部87の一端及び第4延在部88の一端は、第1先端部33及び第2先端部34の他端側(他端部33b、34b側)に位置している。
第1延在部82及び第3延在部87によって第1ワイヤ部71が構成されており、第2延在部83及び第4延在部88によって第2ワイヤ部73が構成されている。
このような構成によれば、ワイヤ部材70を容易に環状形状とすることができる。
また、第1ワイヤ部71は、第1延在部82及び第3延在部87の各々の弾性復元力を有し、第2ワイヤ部73は、第2延在部83及び第4延在部88の各々の弾性復元力を有する。よって、第1ワイヤ部71及び第2ワイヤ部73の各々の弾性復元力を十分に確保することができる。
【0026】
本変形例の場合、図6及び図8(a)に示すように、第1部材81は、例えば、第1径方向における一方に向けて開放している略コの字(U字)形状に形成されており、第2部材86は、例えば、第1径方向における他方に向けて開放している略コの字(U字)形状に形成されている。そして、それぞれコの字(U字)形状に形成された第1部材81及び第2部材86が互いに組み合わされることによって、ワイヤ部材70は、平面視において、第1径方向に長尺な略矩形環状に形成されている。ワイヤ部材70は、例えば、弁口45の外周囲を囲む位置に配置されている。
より詳細には、第1延在部82は、第1径方向に沿って直線状に延在している。第1連結部84は、第1延在部82の長手方向における一端から第2径方向における他方に向けて直線状に延在している。第2延在部83は、第1連結部84の長手方向における他端から、第1径方向における他方に向けて直線状に延在している。
第1延在部82は、第1先端部33の先端面上に沿って配置されており、第2延在部83は、第2先端部34の先端面上に沿って配置されている。第1連結部84は、第1先端部33の一端部33aの先端面と第2先端部34の一端部34aの先端面とに沿って配置されている。
第3延在部87は、第1径方向に沿って直線状に延在している。第2連結部89は、第3延在部87の長手方向における他端から第2径方向における他方に向けて直線状に延在している。第4延在部88は、第2連結部89の長手方向における他端から、第1径方向における一方に向けて直線状に延在している。
第3延在部87は、第1先端部33の先端面上に沿って配置されており、第4延在部88は、第2先端部34の先端面上に沿って配置されている。第2連結部89は、第1先端部33の他端部33bの先端面と第2先端部34の他端部34bの先端面とに沿って配置されている。
【0027】
また、本変形例の場合、第1部材81及び第2部材86の各々は、平面視略矩形環状となるように互いに組み合わされて配置されている。
なお、一例として、第1部材81と第2部材86とは、互いに上下に重なり合っているとともに、互いに不図示の接着剤によって接合されている。
より詳細には、図8(a)及び図8(b)に示すように、例えば、第1延在部82と第3延在部87とは互いに上下に重なり合って配置されており、第2延在部83と第4延在部88とは互いに上下に重なり合って配置されているとともに、互いに不図示の接着剤によって接合されている。ただし、本発明はこの例に限らず、例えば、第2径方向において、第1延在部82と第3延在部87とは互いに並列に配置されており、第2延在部83と第4延在部88とは互いに並列に配置されていてもよい。この場合、第1延在部82と第3延在部87とは互いに近接又は密着していることが好ましい。第2延在部83と第4延在部88とは互いに近接又は密着していることが好ましい。
【0028】
図7に示すように、流体が第1流動方向に流動する際には、第1延在部82及び第3延在部87(第1ワイヤ部71)の各々は、第2径方向における第2先端部34側とは反対側(例えば、図7における上方)に向けて凸の弧状に弾性変形し、第2延在部83及び第4延在部88(第2ワイヤ部72)の各々は、第2径方向における第1先端部33側とは反対側(例えば、図7における下方)に向けて凸の弧状に弾性変形する。一方、第1連結部84及び第2連結部89の各々は、第2径方向に沿って直線状に延在した形状を維持する、もしくは第1径方向における内側(中空形状部10の軸心側)に向けて凸の弧状に弾性変形する。
ここで、本変形例の場合、第1延在部82の一端と第3延在部87の一端とがそれぞれ第1連結部84によって保持されており、第1延在部82の他端と第3延在部87の他端とがそれぞれ第2連結部89によって保持されている。このため、第1延在部82及び第3延在部87(第1ワイヤ部71)が、第2径方向における一方に向けて凸の弧状により確実に弾性変形するようにできる。
同様に、第2延在部83の一端と第4延在部88の一端とがそれぞれ第2連結部89によって保持されており、第2延在部83の他端と第4延在部88の他端とがそれぞれ第2連結部89によって保持されている。このため、第2延在部83及び第4延在部88(第2ワイヤ部72)が、第2径方向における他方に向けて凸の弧状により確実に弾性変形するようにできる。
【0029】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0030】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)それぞれ弾性変形可能な第1嘴状部分及び第2嘴状部分を含む中空形状部を有する医療用逆流防止弁であって、
前記中空形状部の材料よりも高弾性の材料によりそれぞれ構成されている第1補剛部及び第2補剛部を備え、
前記第1補剛部は、前記第1嘴状部分の先端部である第1先端部に沿って当該第1先端部に設けられており、
前記第2補剛部は、前記第2嘴状部分の先端部である第2先端部に沿って当該第2先端部に設けられている医療用逆流防止弁。
(2)前記第1補剛部は第1ワイヤ部であり、
前記第2補剛部は第2ワイヤ部である請求項1に記載の医療用逆流防止弁。
(3)前記第1ワイヤ部と前記第2ワイヤ部とを含む環状の形状に形成されているワイヤ部材を備える(2)に記載の医療用逆流防止弁。
(4)前記ワイヤ部材は、相互に固定されている第1部材及び第2部材を有し、
前記第1部材は、前記第1先端部に沿って配置されている第1延在部と、前記第2先端部に沿って配置されている第2延在部と、前記第1延在部の一端と前記第2延在部の一端とを相互に連結している第1連結部と、を有し、
前記第2部材は、前記第1先端部に沿って配置されている第3延在部と、前記第2先端部に沿って配置されている第4延在部と、前記第3延在部の一端と前記第4延在部の一端とを相互に連結している第2連結部と、を有し、
前記第1延在部の前記一端及び前記第2延在部の前記一端は、前記第1先端部及び前記第2先端部の一端側に位置しており、前記第3延在部の前記一端及び前記第4延在部の前記一端は、前記第1先端部及び前記第2先端部の他端側に位置しており、
前記第1延在部及び前記第3延在部によって前記第1ワイヤ部が構成されており、
前記第2延在部及び前記第4延在部によって前記第2ワイヤ部が構成されている(3)に記載の医療用逆流防止弁。
(5)前記中空形状部は、前記第1ワイヤ部及び前記第2ワイヤ部が配設されている配設溝を有し、
前記配設溝に対して前記第1ワイヤ部及び前記第2ワイヤ部が接着固定されている(2)から(4)のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
(6)前記第1ワイヤ部及び前記第2ワイヤ部は超弾性合金により構成されている(2)から(5)のいずれか一項に記載の医療用逆流防止弁。
【符号の説明】
【0031】
10 中空形状部
17 配設溝
17a 第1配設溝
17b 第2配設溝
31 第1嘴状部分
31a 上縁部
31b 中間部
31c 中間部以外の部分
32 第2嘴状部分
32a 上縁部
32b 中間部
32c 中間部以外の部分
33 第1先端部
33a 一端部
33b 他端部
34 第2先端部
34a 一端部
34b 他端部
41 基部
43 環状壁部
44 環状溝
45 弁口
46 切欠形状部
47 第2環状壁部
55a 圧入部
70 ワイヤ部材
71 第1ワイヤ部(第1補剛部)
73 第2ワイヤ部(第2補剛部)
76 接着剤
81 第1部材
82 第1延在部
83 第2延在部
84 第1連結部
86 第2部材
87 第3延在部
88 第4延在部
89 第2連結部
100 医療用逆流防止弁
200 医療用流体流通管(胃瘻カテーテル)
210 流通管本体
210a 内周面
211a 開口
223 環状リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8