(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150716
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/04 20060101AFI20231005BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01F41/04 A
H01F27/29 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059951
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】風間 拓人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍司
(72)【発明者】
【氏名】遠田 一重
(72)【発明者】
【氏名】小池 信太朗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真史
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062FG04
5E062FG11
5E070AA01
5E070EA01
5E070EB04
(57)【要約】
【課題】電子部品の小型化及び電子部品の特性の確保が実現され得ると共に、端子電極と導電ワイヤとの電気的な接続の信頼性が確保され得る電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】電子部品は、成形物を準備する工程と、成形物にプラズマを照射する工程と、端子電極を樹脂成形部の外表面上に形成する工程と、を有している。成形物において、樹脂成形部の内部に、導電ワイヤが配置されている。樹脂成形部は、樹脂によって成形されている。プラズマは、導電ワイヤの端部に向けて成形物に照射される。端子電極は、導電ワイヤの端部に接している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂によって成形された樹脂成形部の内部に導電ワイヤが配置された成形物を準備する工程と、
前記導電ワイヤの端部に向けて前記成形物にプラズマを照射する工程と、
前記導電ワイヤの前記端部に接している端子電極を前記樹脂成形部の外表面上に形成する工程と、を有している、電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記導電ワイヤは、導体と、前記導体の側面を覆っている絶縁被膜とを含んでおり、
前記プラズマを照射する工程において、前記端部において前記導体の側面を覆っている前記絶縁被膜が前記プラズマの照射によって除去される、請求項1に記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記プラズマは、水蒸気プラズマである、請求項1又は2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記導電ワイヤは、前記成形物の内部においてコイルを形成している、請求項1から3のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記端部の断面積は、7.85×10-11m2以上1×10-8m2以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記導電ワイヤと前記端子電極とが接合する接合面の面積は、前記端部の断面積より大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項7】
前記プラズマを照射する工程において、前記端部の位置に対応する位置に配置された開口を有するマスクが位置決めされ、前記開口を通った前記プラズマが前記成形物に照射される、請求項1から6のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項8】
前記端子電極を形成する工程において、前記端子電極は、スパッタリングによって形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項9】
前記端子電極を形成する工程において、前記端子電極は、無電解めっき処理を行った後に電解めっき処理を行うことによって形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
素体の内部に導電ワイヤを備えている電子部品が知られている(たとえば、特許文献1)。たとえば、素体の外表面には、端子電極が配置されている。端子電極は、導電ワイヤに接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子部品の小型化及び電子部品の特性の確保のため、導電ワイヤをさらに細くすることが検討されている。このため、導電ワイヤが比較的細い場合にも、端子電極と導電ワイヤとの接触不良の発生を抑制し、端子電極と導電ワイヤとの電気的な接続の信頼性を確保することが求められている。
【0005】
端子電極と導電ワイヤの先端面との連結部分において、一般的に、導電ワイヤの先端面は機械加工又はレーザー加工によって形成されている。しかし、導電ワイヤが比較的細い場合には、機械加工では、導電ワイヤの先端面が素体に埋没してしまうなどの問題によって、導電ワイヤの先端面を素体から露出させる加工が困難である。レーザー加工では、急激な温度上昇によって、素体及び導電ワイヤにダメージが生じるおそれがある。
【0006】
本開示の一つの態様は、電子部品の小型化及び電子部品の特性の確保が実現され得ると共に、端子電極と導電ワイヤとの電気的な接続の信頼性が確保され得る電子部品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一つの態様における電子部品の製造方法は、成形物を準備する工程と、成形物にプラズマを照射する工程と、端子電極を樹脂成形部の外表面上に形成する工程と、を有している。成形物において、樹脂成形部の内部に、導電ワイヤが配置されている。樹脂成形部は、樹脂によって成形されている。プラズマは、導電ワイヤの端部に向けて成形物に照射される。端子電極は、導電ワイヤの端部に接している。
【0008】
この電子部品の製造方法において、導電ワイヤの端部に向けて成形物にプラズマが照射される。この場合、導電ワイヤへのダメージが抑制されながら、導電ワイヤの端部が樹脂成形部から露出され得る。プラズマの照射によって、樹脂成形部が導電ワイヤから選択的に除去され得る。この結果、電子部品の小型化及び電子部品の特性の確保が実現され得ると共に、端子電極と導電ワイヤとの電気的な接続の信頼性の確保とが両立され得る。
【0009】
上記一つの態様において、導電ワイヤは、導体と、導体を覆っている絶縁被膜とを含んでいてもよい。上記プラズマを照射する工程において、上記端部において導体の側面を覆っている絶縁被膜がプラズマの照射によって除去される。この場合、プラズマの照射によって、絶縁被膜が導電ワイヤから選択的に除去され得る。
【0010】
上記一つの態様において、プラズマは、水蒸気プラズマであってもよい。この場合、導電ワイヤの端部を樹脂成形部から露出させる速度が向上する。端部における導体の表面において、酸化物が還元される。導電ワイヤの表面において酸化膜の形成が抑制され得る。したがって、製造スループットが向上すると共に、端子電極と導電ワイヤとの電気的な接続の信頼性がさらに向上し得る。
【0011】
上記一つの態様において、導電ワイヤは、素体の内部においてコイルを形成していてもよい。この場合、コイルのインダクタンスに関する電子部品の特性が確保され得ると共に、端子電極と導電ワイヤとの電気的な接続の信頼性が確保され得る。
【0012】
上記一つの態様において、上記端部の断面積は、7.85×10-11m2以上1×10-8m2以下であってもよい。このような構成であっても、プラズマの照射によって、導電ワイヤの端部が樹脂成形部から容易に露出され得る。電子部品の小型化が図られると共に、電子部品の特性も確保され得る。たとえば、導電ワイヤがコイルを形成する場合、コイルにおいて所望のインダクタンスが確保され得る。
【0013】
上記一つの態様において、導電ワイヤと端子電極とが接合する接合面の面積は、端部の断面積より大きくてもよい。この場合、導電ワイヤと端子電極との電気的な接続の信頼性がさらに向上し得る。
【0014】
上記一つの態様のうちプラズマを照射する工程において、開口を有するマスクが位置決めされ、上記開口を通ったプラズマが成形物に照射されてもよい。上記開口は、上記端部の位置に対応する位置に配置されていてもよい。この場合、成形物へのプラズマの照射位置が高度に調整され得る。このため、成形物において、プラズマの照射によって除去される部分が選択的に調整され得る。したがって、成形物の構成に対して、汎用性が向上する。
【0015】
上記一つの態様のうち端子電極を形成する工程において、端子電極は、スパッタリングによって形成されてもよい。この場合、端子電極を構成する金属が原子レベルで緻密に上記端部の表面に成膜され得る。上記端部の表面が空気に触れることが抑制されるため、上記端部の表面における酸化膜の形成も抑制され得る。したがって、導電ワイヤと端子電極との電気的な接続の信頼性がさらに向上し得る。
【0016】
上記一つの態様のうち端子電極を形成する工程において、端子電極は、無電解めっき処理を行った後に電解めっき処理を行うことによって形成されてもよい。この場合、無電解めっき処理によって電解めっき処理よりも緻密に上記端部の表面に金属が成膜された後に、無電解めっき処理によって形成された膜を電解めっき処理によって厚くすることができる。端子電極の形成の速度も向上され得る。したがって、製造スループットが向上されると共に、導電ワイヤと端子電極との電気的な接続の信頼性が確保され得る。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一つの態様は、電子部品の小型化及び電子部品の特性の確保が実現され得ると共に、端子電極と導電ワイヤとの電気的な接続の信頼性が確保され得る電子部品の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態における電子部品の斜視図である。
【
図3】(a)及び(b)は、導電ワイヤの端部の拡大図である。
【
図4】(a)及び(b)は、導電ワイヤの端部の形状を説明するための図である。
【
図5】(a)及び(b)は、導電ワイヤの端部の形状を説明するための図である。
【
図6】本実施形態における電子部品の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】コイルが設けられている巻芯の拡大図である。
【
図10】樹脂成形後の成形物のX-X線における端面を示す図である。
【
図11】(a)から(c)は、電子部品の製造方法の一部を示す図である。
【
図12】加工面が形成された成形物を示す図である。
【
図13】プラズマ処理におけるマスクを説明するための図である。
【
図14】端子電極が形成された成形物を示す図である。
【
図15】ダイシングされたチップ部品を示す図である。
【
図16】(a)及び(b)は、電子部品の評価結果を示す図である。
【
図18】(a)及び(b)は、本実施形態の変形例における電子部品の製造方法を説明するための図である。
【
図19】(a)及び(b)は、本実施形態の変形例における電子部品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。また、本開示の図面に表された各種要素の形状等は、実際の各種要素の形状等とは必ずしも一致しない。説明のために改変している場合があるためである。本開示において、「直交」、「垂直」、「平行」、「平面」、「同一」、及び、「等しい」は、それぞれ、「実質的に直交な構成」、「実質的に垂直な構成」、「実質的に平行な構成」、「実質的な平面」、「実質的に同一な構成」、及び「実質的に等しい」を意味しており、所定の誤差の範囲でずれた構成も含んでいる。所定の誤差の範囲は、たとえば、製造公差の範囲、又は、製造公差以上の範囲を含んでいる。
【0020】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態の一例における電子部品の概要を説明する。
図1は、本実施形態における電子部品の斜視図である。
図2は、電子部品の内部を示す斜視図である。本実施形態で示す一例において、電子部品1は、コイルを形成するコイル部品である。
【0021】
電子部品1は、素体2と、一対の端子電極6,7と、導電ワイヤ9と、を備えている。導電ワイヤ9の少なくとも一部は、素体2の内部に配置されている。
【0022】
素体2は、外表面10を有している。素体2は、その外表面10として、一対の端面10aと、一対の側面10bと、一対の側面10cとを有している。一対の端面10aは、長手方向D1において互いに対向している。一対の側面10bは、高さ方向D2において互いに対向している。一対の側面10cは、幅方向D3において互いに対向している。一対の端面10a及び一対の側面10bは、幅方向D3に沿っている。素体2の外表面10は、少なくとも1つの平面を含んでいる。たとえば、一対の端面10a、一対の側面10b、及び、一対の側面10cのそれぞれは、平面である。
【0023】
本実施形態で示す一例において、素体2は、長手方向D1の長さに比して高さ方向D2の長さが小さく、かつ、高さ方向D2の長さに比して幅方向D3の長さが小さい直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、たとえば、樹脂によって形成されている。本実施形態の変形例として、素体2は、長手方向D1の長さに比して高さ方向D2の長さが小さく、かつ、高さ方向D2の長さに比して幅方向D3の長さが小さい直方体形状を呈していてもよい。
【0024】
一対の端子電極6,7は、同一平面に配置されている。たとえば、一対の端子電極6,7は、同一の側面10bに配置されている。端子電極6は、主面6aを有している。端子電極7は、主面7aを有している。主面6a及び主面7aは、同一の側面10bに接している。一対の端子電極6,7は、たとえば、長手方向D1において素体2の側面10bの両端に配置されている。一対の端子電極6,7は、互いに離間しており、長手方向D1に配列されている。各端子電極6,7は、たとえば、平面視で矩形状を呈している。
【0025】
各端子電極6,7は、既知の技術によって形成される。たとえば、各端子電極6,7は、スパッタリングによって形成される。本実施形態の変形例として、各端子電極6,7が、めっき処理によって形成されていてもよい。めっき処理は、無電解めっき処理であってもよいし、電解めっき処理であってもよい。無電解めっき処理の後に、電解めっき処理が行われてもよい。本実施形態の変形例として、各端子電極6,7は、たとえば、樹脂電極を含んでいる。各端子電極6,7は、たとえば、樹脂電極のみから成っていてもよい。本実施形態の変形例として、各端子電極6,7は、電極ペーストが素体2に付与された後に乾燥されることによって形成されてもよい。電極ペーストは、たとえば、銀ペーストである。本実施形態の変形例として、各端子電極6,7は、はんだであってもよい。各端子電極6,7は、上述した各種技術の組み合わせによって形成されてもよい。上述した各種技術によって形成された端子電極6,7に対して、更にめっき処理が施されていてもよい。
【0026】
導電ワイヤ9は、本体部11と一対の端部12,13とを含んでいる。本体部11は、素体2の内部に位置している。一対の端部12,13は、それぞれ、本体部11に連結されている。一対の端部12,13の少なくとも一部は、それぞれ、素体2から露出している。換言すれば、一対の端部12,13の少なくとも一部は、素体2の外部に位置している。さらに換言すれば、導電ワイヤ9のうち一対の端部12,13以外の部分は、素体2に覆われている。本開示において、「接続」は、物理的に接続されている状態の意味、及び、物理的に離間しているが電気的に接続されている状態の意味を含んでいる。「物理的に接続されている」は、互いに分離した別体の部材が接している状態の意味、及び、一体になっている状態の意味を含んでいる。「電気的に接続されている」は、電気的に導通していることを意味する。「連結」は、同一材料又は異なる材料によって一体になっていることを意味する。換言すれば、「連結」は、連続的に形成されていることを意味する。
【0027】
一対の端部12,13は、互いに離間している。一対の端部12,13は、それぞれ、互いに異なる端子電極6,7に連結されている。たとえば、端部12は、端子電極6に連結されている。端部13は、端子電極7に連結されている。各端部12,13は、導電ワイヤ9の一対の先端を形成している。一対の端部12,13は、同一の側面10bにおいて素体2から露出している。たとえば、端部12は、端子電極6の主面6aに連結されている。端部13は、端子電極7の主面7aに連結されている。
【0028】
本実施形態で示す一例において、本体部11は、コイル15を含んでいる。換言すれば、導電ワイヤ9は、素体2の内部においてコイル15を形成している。コイル15は、たとえば、幅方向D3に沿っているコイル軸を形成している。換言すれば、コイル15のコイル軸は、幅方向D3に延在している。
【0029】
次に、
図1から
図3を参照して、電子部品1の詳細な構成について説明する。素体2は、コア部31と樹脂成形部32とを含んでいる。
図2において、樹脂成形部32は、二点鎖線によって示されている。コア部31と樹脂成形部32とは、たとえば、同一材料で一体に成形されている。本実施形態の変形例として、コア部31と樹脂成形部32とは、同一材料又は異なる材料によって別体で成形されていてもよい。コア部31と樹脂成形部32とが別体で成形される場合においても、コア部31と樹脂成形部32とは、コア部31と樹脂成形部32との境界が視認できないように形成されていてもよい。
【0030】
コア部31は、導電ワイヤ9の本体部11が巻かれる巻芯に相当する。コア部31は、たとえば、幅方向D3に延在している。樹脂成形部32は、導電ワイヤ9の本体部11を覆っている。樹脂成形部32は、コア部31の少なくとも一部を覆っている。本開示において、「覆う」とは、覆う対象物を目視できないように囲うことを意味する。「覆う」は、対象物と直接的に接している場合だけでなく、対象物と離間している場合も含んでいる。たとえば、樹脂成形部32は、他の部材の上から対象物を覆っていてもよく、対象物と樹脂成形部32とが接していない部分を有していてもよい。たとえば、コア部31は、コア部31に巻かれた導電ワイヤ9の上から樹脂成形部32に覆われ、コア部31と樹脂成形部32とが直接的に接していない部分を有していてもよい。本実施形態に示す一例において、樹脂成形部32は、導電ワイヤ9に接するように形成されている。
【0031】
コア部31及び樹脂成形部32は、たとえば樹脂のみから形成されていてもよい。コア部31及び樹脂成形部32の材料は、たとえば、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも一方を含んでいる。コア部31及び樹脂成形部32の材料は、熱硬化性樹脂として、たとえば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいる。ポリイミド樹脂は、たとえば、ビスマレイミド樹脂である。コア部31及び樹脂成形部32の材料は、熱可塑性樹脂として、たとえば、結晶性ポリスチレン、フッ素樹脂、液晶ポリマー及びポリフェニレンサルファイド(PPS)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいる。フッ素樹脂は、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂である。
【0032】
本実施形態で示す一例において、樹脂成形部32は、一対の端面10aと、一対の側面10bと、一対の側面10cとを形成している。樹脂成形部32によって、素体2の外表面10の全体が形成されている。本実施形態の変形例において、コア部31は、樹脂成形部32から露出していてもよい。この場合、素体2の外表面10は、樹脂成形部32とコア部31によって形成される。たとえば、コア部31は、一対の側面10cの少なくとも一部を形成していてもよい。
【0033】
コア部31は、コイル15の内部に位置している。コア部31は、コイル15のコイル軸に沿って延在している。コア部31は、コイル15に接している。本実施形態で示す一例において、コア部31は、軸部41と、一対の側端部42とを含んでいる。軸部41と一対の側端部42とは、たとえば、同一材料によって互いに一体に形成されている。本実施形態の変形例として、軸部41と一対の側端部42とは、互いに異なる材料によって形成されていてもよい。軸部41は、柱形状を呈している。軸部41は、たとえば、幅方向D3に延在している。各側端部42は、板形状を呈している。一対の側端部42は、幅方向D3において互いに対向している。一対の側端部42は、軸部41によって接続されている。
【0034】
本実施形態で示す一例において、たとえば、軸部41には、導電ワイヤ9が巻き付けられている。軸部41は、樹脂成形部32に覆われている。軸部41は、導電ワイヤ9の上から樹脂成形部32に覆われ、樹脂成形部32と軸部41とが直接的に接していない部分があってもよい。一対の側端部42の少なくとも一部は、樹脂成形部32から露出している。各側端部42は、素体2の側面10cを形成している。各側端部42は、一対の端面10aの一部と一対の側面10bの一部とを形成している。
【0035】
本実施形態で示す一例において、導電ワイヤ9のコイル15は、軸部41に設けられている。コイル15は、軸部41に巻き付けられている。コイル15は、軸部41に対して軸部41の周方向に巻き付けられている。コイル15は、軸部41を軸として、軸部41にらせん状に巻き付けられている。コイル15のコイル軸は、軸部41の延在方向に沿っている。コイル15のコイル軸は、コイル15の形成の際に導電ワイヤ9が巻かれる回転軸に相当する。
【0036】
導電ワイヤ9は、たとえば、導体21と、絶縁被膜22とを含んでいる。導体21は、導電ワイヤ9の芯線に相当する。絶縁被膜22は、導体21の側面を覆っている。導電ワイヤ9において、各端部12,13における導体21の少なくとも一部は、絶縁被膜22から露出している。各端部12,13の導体21が、それぞれ端子電極6,7に連結されている。
【0037】
導体21の材料は、たとえば、無酸素銅、タフピッチ銅、りん脱酸銅、及び、銅銀合金からなる群より選択された少なくとも1種を含んでいる。絶縁被膜22の材料は、たとえば、ポリウレタン、ポリビニルホルマール、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、及び、ポリイミドからなる群より選択された少なくとも1種を含んでいる。
【0038】
本実施形態で示す一例において、
図3(a)に示されているように、各端部12,13は、素体2の外表面10から突出していると共に素体2の外部において外表面10と交差する方向に延在している。
図3(a)は、本実施形態で示す一例における端部12の拡大図である。
図3(a)は、例示的に端部12の構成を示しているが、端部13も同様の構成を有している。たとえば、各端部12,13は、素体2の1つの側面10bから突出していると共に、当該側面10bと交差する方向に延在している。たとえば、各端部12,13の全体が、素体2から露出している。各端部12,13は、側面10bと直交する方向に延在している。
【0039】
端部12は、先端面52aと側面52bとを含んでいる。端部13は、先端面53aと側面53bとを含んでいる。先端面52a,53aと側面52b,53bとは、導体21によって形成されている。各端部12,13において、導体21の側面52b,53bは、絶縁被膜22から露出している。本実施形態に示す一例において、各端部12,13は、絶縁被膜22を含んでいる。換言すれば、導体21のうち絶縁被膜22によって覆われている部分も、素体2から露出している。先端面52a,53a及び側面52b,53bは、導体21のうち素体2から露出する露出面に相当する。
【0040】
本実施形態の変形例として、各端部12,13は、絶縁被膜22を含んでいなくてもよい。この変形例において、各端部12,13の全体が、絶縁被膜22から露出している。換言すれば、各端部12,13の全体が素体2から露出しており、各端部12,13が導体21のみから構成されていてもよい。
【0041】
先端面52a,53aは、たとえば、それぞれ端部12,13の延在方向に交差している。たとえば、先端面52a,53aは、側面10bに沿っている。側面52b,53bは、それぞれ端部12,13の延在方向に沿っている。たとえば、側面52b,53bは、素体2の側面10bに交差している。
【0042】
たとえば、先端面52a,53aは、
図4(a)に示されているように、それぞれ端部12,13の延在方向から見て、円形形状を呈している。たとえば、導電ワイヤ9の断面も、円形形状を呈している。導電ワイヤ9の径は、たとえば、10μm以上100μm以下である。たとえば、導電ワイヤ9の導体21の径は、10μm以上100μm以下である。たとえば、各端部12,13は、円柱形状を呈している。
【0043】
本実施形態の変形例として、先端面52a,53aは、
図4(b)、
図5(a)、及び、
図5(b)に示されているように、それぞれ端部12,13の延在方向から見て、多角形形状を呈していてもよい。たとえば、導電ワイヤ9の断面も、多角形形状を呈していてもよい。たとえば、
図4(b)及び
図5(b)に示されているように、先端面52a,53aは、それぞれ端部12,13の延在方向から見て、矩形形状を呈していてもよい。
図4(b)、
図5(a)、及び、
図5(b)に示されているように、各端部12,13は、それぞれ、多角柱形状を呈していてもよい。
【0044】
図4(b)において、先端面52a,53aは、それぞれ端部12,13の延在方向から見て、正方形形状を呈している。たとえば、導電ワイヤ9の断面も正方形形状を呈している。
図5(b)において、先端面52a,53aは、それぞれ端部12,13の延在方向から見て、長方形状を呈している。たとえば、導電ワイヤ9の断面も長方形形状を呈している。
図5(a)において、先端面52a,53aは、それぞれ端部12,13の延在方向から見て、五角形形状を呈している。たとえば、導電ワイヤ9の断面も五角形形状を呈している。たとえば、導電ワイヤ9の断面が正方形形状である場合、導電ワイヤ9の断面の1辺は、たとえば、10μm以上100μm以下である。たとえば、導電ワイヤ9の導体21の断面の1辺は、10μm以上100μm以下である。
【0045】
高さ方向D2から見て、端部12,13とは、一対の側面10cに交差する方向に沿って配列されている。たとえば、高さ方向D2から見て、端部12は一対の側面10cのうち一方に寄っており、端部13は一対の側面10cのうち他方に寄っている。高さ方向D2から見て、端部12は一対の端面10aのうち一方に寄っており、端部13は一対の端面10aのうち他方に寄っている。
【0046】
端部12,13の先端面52a,53aの面積は、たとえば、各端部12,13の断面積と等しい。各端部12,13の断面積は、たとえば、7.85×10-11m2以上1×10-8m2以下である。たとえば、各端部12,13の導体21の断面積は、7.85×10-11m2以上1×10-8m2以下である。各端部12,13が外表面10から突出している部分の長さhは、たとえば、2μm以上である。端部12,13の延在方向において、側面52b,53bの長さは、たとえば、2μm以上である。本開示において、「断面積」とは、断面の面積である。本開示において、「断面」とは、対象部分が延在する方向と直交する方向における断面を意味する。
【0047】
各端部12,13が外表面10から突出している部分の長さhは、4.5μm以上であってもよい。この場合、導電ワイヤと端子電極との接合面積がさらに確保され易く、電気的な接続の信頼性がさらに向上し得る。
【0048】
各端部12,13が外表面10から突出している部分の長さhは、たとえば、1mm以下である。この場合、導電ワイヤと端子電極との接合面積を確保し、かつ電子部品を小型化し得る。
【0049】
本実施形態の変形例として、
図3(b)に示されているように、各端部12,13は、素体2の外表面10から突出していなくてもよい。
図3(b)は、本変形例における端部12の拡大図である。
図3(b)は、例示的に本変形例における端部12の構成を示しているが、端部13も同様の構成を有している。端部12の拡大図である。この場合、各端部12,13は、素体2の内部において外表面10と交差する方向に延在している。本変形例において、各端部12,13は、素体2の内部において、側面10bと直交する方向に延在している。
【0050】
図3(b)に示されている変形例において、先端面52a,53aは、外表面10の側面10bと面一に形成されている。この場合、端部12,13は、先端面52a,53aを含んでいるが、側面52b,53bを含んでいない。
【0051】
本実施形態のさらなる変形例として、各端部12,13は、素体2の1つの側面10bから露出していると共に、当該側面10bに沿って延在していてもよい。この場合、各端部12,13の導体21は、側面10bに沿って延在する露出面を含んでいる。当該露出面の面積は、導電ワイヤ9の断面積よりも大きい。この場合においても、各端部12,13は、外表面10の側面10bから突出していてもよし、外表面10の側面10bと面一に形成されていてもよいし、外表面10の側面10bに対して陥没していてもよい。
【0052】
一対の端子電極6,7は、それぞれ、導電ワイヤ9の端部12,13に接続されている。一対の端子電極6,7は、端部12,13を介してコイル15に電気的に接続されている。端子電極6は、端部12を覆っていると共に端部12に接している。端子電極6は、先端面52aと側面52bとにおいて端部12に接合されている。端子電極7は、端部13を覆っていると共に端部13に接している。端子電極7は、先端面53aと側面53bとにおいて端部13に接合されている。
【0053】
次に、
図6から
図15を参照して、上述した実施形態における電子部品の製造方法の一例について説明する。
図6は、電子部品1の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図7から
図15は、電子部品1の製造方法の一例における工程の一部を示す図である。
図6から
図15において、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交している。
【0054】
まず、コイル15を形成する(工程S1)。
図7は、コイル15が設けられている巻芯60を示している。巻芯60は、たとえば、X軸方向に延在している。以下の製造方法の説明において、X軸方向は、巻芯60の軸方向に相当する。複数の巻芯60は、チャック65によって、同一の向きでY軸方向に配列される。巻芯60は、柱形状を呈している。巻芯60は、たとえば、樹脂を含んでいる。
【0055】
巻芯60は、たとえば、粉末射出成形によって成形される。巻芯60の材料は、たとえば、低誘電材料である。低誘電材料としては、たとえば、誘電率が4.0以下の材料である。巻芯60の材料は、たとえば、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも一方を含んでいる。巻芯60の材料は、熱硬化性樹脂として、たとえば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、及び、不飽和ポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいる。ポリイミド樹脂は、たとえば、ビスマレイミド樹脂である。巻芯60の材料は、熱可塑性樹脂として、たとえば、結晶性ポリスチレン、フッ素樹脂、液晶ポリマー及びPPSからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいる。フッ素樹脂は、たとえば、PTFE樹脂である。
【0056】
巻芯60は、複数のガイド部61と複数の軸部62とを含んでいる。ガイド部61と軸部62とは、互いに連結されている。各巻芯60において、複数のガイド部61と複数の軸部62とが交互に位置している。たとえば、導電ワイヤ64は、スピンドル巻き工法によって、巻芯60に巻かれる。各軸部62への導電ワイヤ64の巻き付けによって、複数のコイル15が形成される。導電ワイヤ64において導体の断面積は、7.85×10-11m2以上1×10-8m2以下である。
【0057】
ガイド部61は、コイル15を形成する導電ワイヤ64が延在する方向を案内する。導電ワイヤ64の一部が、電子部品1の導電ワイヤ9に相当する。巻芯60は、X軸方向に複数の軸部62を含んでいる。本実施形態で示す一例において、1つの巻芯60が、X軸方向に配列された5つの軸部62を含んでいる。各軸部62は、柱形状を呈しており、X軸方向に延在している。各軸部62は、上述した電子部品1の軸部41に相当する。
【0058】
図8は、コイル15が形成された後の巻芯60の拡大図である。たとえば、導電ワイヤ64は、コイル15の両端にそれぞれ接続されている接続部71a,71bを含んでいる。接続部71a,71b、隣り合うコイル15又は導電ワイヤ64の端部に接続されている。接続部71aはコイル15の一端に連結されており、接続部71bはコイル15の他端に連結されている。工程S1によって、接続部71a,71bは、コイル15から軸部62の径方向に延在するように形成される。本実施形態に示す一例において、接続部71a,71bは、コイル15から同一方向に延在している。接続部71a,71bは、Z軸方向に延在している。接続部71aは、ガイド部61に沿って、軸部62からガイド部61の段差部61c上に案内される。
【0059】
次に、導電ワイヤが樹脂によって封止された成形物76を形成する(工程S2)。工程S2において、たとえば、導電ワイヤ64の少なくとも一部と巻芯60の少なくとも一部とが、樹脂によって覆われる。これによって、樹脂によって成形された樹脂成形部75が巻芯60に設けられ、成形物76が形成される。成形物76は、樹脂成形部75と導電ワイヤ64とを含んでいる。成形物76において、樹脂成形部75の内部に導電ワイヤ64が配置されている。工程S2は、成形物76を準備する工程に相当する。
【0060】
成形物76の内部において、導電ワイヤ64はコイル15を形成している。工程S2において形成される成形物76において、樹脂成形部75は、コイル15を覆っている。樹脂成形部75の一部は、電子部品1の樹脂成形部32に相当する。成形物76は、複数のコイル15と複数の樹脂成形部32とを含んでいる。
図9は、樹脂成形によって形成された複数の成形物76が配列された状態を示している。
図10は、
図8のX-X線における成形物76の端面を示している。
図10において、工程S2において、成形された樹脂成形部75は、
図10において、ドットのハッチングによって示されている。
【0061】
工程S2における樹脂成形部75の形成において、たとえば、導電ワイヤ64が巻き付けられた巻芯60が金型に配置され、この金型へ液状の熱硬化性樹脂が充填される。たとえば、樹脂が充填された金型は、オーブンへ投入される。金型に充填された樹脂は、オーブンによって加熱した状態において乾燥され、その後さらなる加熱によって硬化される。この結果、樹脂成形部75が形成される。
【0062】
たとえば、工程S2において、ガイド部61の一部、コイル15、軸部62が、樹脂成形部75によって覆われる。たとえば、工程S2において、導電ワイヤ64が巻き付けられた巻芯60は、ガイド部61の縁γ1に沿って樹脂成形される。工程S2の樹脂成形直後の段階において、成形面76aが形成される。成形面76aにおいて、ガイド部61の一部が樹脂成形部75から露出している。
図10に示されているように、縁γ1は、成形面76aに沿って延在しており、成形面76aと重なっている。
【0063】
次に、成形物76における不要部位80を除去する(工程S3)。
図11(a)及び
図12は、不要部位80が除去された成形物76を示している。たとえば、
図9に示されるように複数の成形物76が整列された後に、複数の成形物76から不要部位80が除去される。たとえば、複数の成形物76は同一の向きで配列される。たとえば、複数の成形物76は、複数の成形物76の成形面76aが面一になるように配列される。不要部位80は、一片又は一塊である。複数の成形物76において、不要部位80が並行して除去される。
【0064】
不要部位80の除去によって、各成形物76に加工面78が形成される。不要部位80の除去によって、導電ワイヤ64が複数に分離される。不要部位80の除去によって、接続部71a,71bの一部が除去される。加工面78は、接続部71a,71bの延在方向に直交している。加工面78の形成によって、分離された複数の導電ワイヤ64の各々に、一対の端部66,67が形成される。加工面78は、たとえば、樹脂成形部75と樹脂成形部75から露出した一対の端部66,67とによって構成されている。一対の端部66,67は、たとえば、加工面78から突出していると共に加工面78と交差する方向に延在している。たとえば、一対の端部66,67は、加工面78からZ軸方向に突出している。たとえば、各導電ワイヤ64の一部は、導電ワイヤ9に相当する。一対の端部66,67の少なくとも一部は、導電ワイヤ9の一対の端部12,13に相当する。
【0065】
加工面78において、複数の導電ワイヤ64の端部66がX軸方向に配列されている。加工面78において、複数の導電ワイヤ64の端部67がX軸方向に配列されている。複数の端部66が配列されている列と、複数の端部67が配列されている列とは、Y軸方向に平行に並んでいる。
【0066】
たとえば、成形物76の研磨によって成形物76の表面が削られ、不要部位80が除去される。加工面78は、成形物76の研磨による研磨面である。たとえば、成形物76のうち導電ワイヤ64が樹脂成形部75に覆われている部分が研磨される。この研磨により、導電ワイヤ64が切断され、加工面78が形成される。
【0067】
たとえば、この研磨により、成形物76は、軸部62の径方向と対向する方向に削られる。たとえば、研磨により、ガイド部61は、
図10における縁γ1から縁γ2まで矢印α方向に削られる。これによって、加工面78が形成される。矢印αは、Z軸方向に沿っている。縁γ2は、段差部61cに沿っている。
【0068】
たとえば、成形物76は、研磨機85によって研磨される。研磨機85は、たとえば、平面研磨機である。研磨機85は、回転面85aを有している。研磨機85は、回転面85aを対象物に当接させることによって研磨を行う。たとえば、工程S3において、成形物76の成形面76aに回転面85aを当接させ、加工面78が形成される。たとえば、配列された複数の成形物76の不要部位80が並行して削られる。換言すれば、工程S3において整列された複数の成形物76が一度に研磨される。加工面78は、たとえば、巻芯60の延在方向に沿った平面である。
【0069】
次に、プラズマ処理が実行される(工程S4)。たとえば、不要部位80が除去された成形物76のプラズマ処理によって、
図11(b)に示されているように、導電ワイヤ9の端部12,13が形成される。たとえば、加工面78へのプラズマの照射によって、導電ワイヤ9の端部12,13が形成される。たとえば、導電ワイヤ64の一対の端部66,67に向けてプラズマが照射され、端部12,13が形成される。
【0070】
プラズマの照射によって、樹脂成形部75の一部、及び、導電ワイヤ64に形成されている絶縁被膜22の一部が除去され、外表面10が形成され、かつ、端部12,13が形成される。たとえば、プラズマの照射によって、端部12,13において導体21の側面52b,53bを覆っている絶縁被膜22が除去される。工程S4において、成形物76の外表面が外表面10に相当する。形成された端部12,13は、外表面10から突出していると共に外表面10と交差する方向に延在している。たとえば、端部66が外表面10から突出している場合、端部12が外表面10から突出している部分の長さhは、端部66が外表面10から突出している部分の長さよりも大きい。たとえば、端部67が外表面10から突出している場合、端部13が外表面10から突出している部分の長さhは、端部67が外表面10から突出している部分の長さよりも大きい。
【0071】
本実施形態の変形例として、
図3(b)に示されているように、工程S4において形成された各端部12,13は、樹脂成形部75の外表面10から突出していなくてもよい。この変形例において、先端面52a,53aは、外表面10の側面10bと面一に形成される。この場合、工程S4において形成された端部12,13は、先端面52a,53aを含んでいるが、側面52b,53bを含んでいない。
【0072】
工程S4によって形成される端部12,13において、断面積は、7.85×10
-11m
2以上1×10
-8m
2以下である。
図3に示されているように、工程S4によって形成される端部12,13において、端部12,13が外表面10から突出している部分の長さhは、2μm以上である。
【0073】
プラズマの照射には、たとえば、
図13に示されているマスク86及び治具87が用いられる。マスク86は、成形物76におけるプラズマの被照射領域を画定する。マスク86は、複数の開口89を有している。治具87は、工程S3によって形成された複数の成形物76を位置決めする。治具87には、加工面78がマスク86に対して対向するように配置される。複数の開口89は、端部66,67の位置に対応する位置に配置されている。
【0074】
たとえば、工程S3によって形成された成形物76が一対の電極の間に配置される。たとえば、成形物76は、一対の電極の一方の側に配置される。治具87が、一対の電極の一方の側に配置されている。治具87は、加工面78が一対の電極の他方と対向するように配置されている。一方の電極の他方と成形物76との間には、マスク86が配置される。
【0075】
たとえば、マスク86は、治具87に固定される。複数の開口89は、マスク86が治具87に固定された状態において、Z軸方向から見て各開口89と端部66,67とが重なるように配置されている。換言すれば、マスク86は、各開口89を通った成形物76のプラズマが端部66,67に照射されるように位置決めされる。工程S4において実行されるプラズマ処理は、たとえば、水蒸気プラズマ処理である。この場合、水蒸気プラズマが、成形物76に向けて照射される。
【0076】
次に、端子電極91が形成される(工程S5)。
図14に示されているように、工程S4によって形成された成形物76に複数の端子電極91が形成される。複数の端子電極91は、互いに離間している。複数の端子電極91は、外表面10上に形成される。複数の端子電極91は、互いに平行にX軸方向に延在している。複数の端子電極91は、Y軸方向において配列されている。各端子電極91は、端部12,13を覆っていると共に端部12,13に接する。各端子電極91は、端部12,13の先端面52aと側面52bとに接する。導電ワイヤ64と端子電極91とが接合する接合面の面積は、端部12,13の断面積より大きくてもよい。
【0077】
たとえば、複数の端子電極91は、スパッタリングによって形成される。たとえば、工程S4において端部12,13が形成された成形物76にマスクが被せられ、各端子電極91が成膜される。マスクは、たとえば、各端子電極91を形成する領域に設けられた開口を有している。端子電極91の一部は、電子部品1の端子電極6,7に相当する。工程S4におけるプラズマ処理によって導電ワイヤ9の端部12,13が空気に触れずに形成された後に、工程S4において形成された端部12,13の表面を空気に触れさせずに、工程S5におけるスパッタリングが行われてもよい。
【0078】
本実施形態の変形例として、複数の端子電極91は、めっき処理によって形成されてもよい。たとえば、複数の端子電極91は、無電解めっき処理を行った後に電解めっき処理を行うことによって形成されてもよい。上記無電解めっき処理は、端部12,13の表面の酸処理を含んでいてもよい。
【0079】
本実施形態の別の変形例として、各端子電極91は、電極ペーストが素体2に付与された後に乾燥されることによって形成されてもよい。電極ペーストは、たとえば、スクリーン印刷法によって素体2に付与される。電極ペーストは、たとえば、銀ペーストである。各端子電極91は、はんだ付けによって形成されてもよい。上記工程によって端子電極91が形成された後に、端子電極91に対して更にめっき処理が施されてもよい。
【0080】
次に、ダイシングを行う(工程S6)。
図15は、ダイシングされた複数のチップ部品93を示している。工程S6において、複数の端子電極91が形成された成形物76が切断され、複数のチップ部品93が形成される。ダイシングによるY軸方向の切断によって、各コイル15が樹脂成形部75と共に互いに切り離される。Y軸方向の切断において、ガイド部61の一部、及び、各端子電極91の一部が除去される。たとえば、成形物76と端子電極91とが共に切断され、端子電極6,7が形成された複数のチップ部品93が形成される。
【0081】
本実施形態において、各チップ部品93が軸部62に連結されている段差部61cを含むように、ガイド部61が切断される。この段差部61cは、コア部31の側端部42に相当する。本実施形態の変形例において、各チップ部品93においてガイド部61の全体が除去されるようにダイシングが行われてもよい。各チップ部品93における一対の端子電極6,7にめっきが施されてもよい。このめっき処理は、電解めっきであってもよし、無電解めっきであってもよい。
【0082】
以上のように、たとえば上記工程S1から工程S6によって、電子部品1が形成される。電子部品1の製造方法は、上記工程S1から工程S6の一部が省略されてもよいし、上記工程S1から工程S6の一部が異なる工程に置き換わってもよいし、工程の順序は上記説明における順序に限定されない。複数の端子電極91は、スパッタリング以外の手法によって形成されてもよい。たとえば、複数の端子電極91が、めっきによって形成されていてもよい。複数の端子電極91は、電極ペーストが素体2に付与された後に乾燥されることによって形成されてもよい。電極ペーストは、たとえば、スクリーン印刷法によって素体2に付与される。端子電極91は、たとえば、はんだであってもよい。
【0083】
次に、本実施形態及び変形例における電子部品1及び電子部品1の製造方法による作用効果について説明する。
【0084】
上述した工程S3において研磨機85によって加工面78が形成され、端子電極91が加工面78上に形成される場合、導電ワイヤ64の端部12,13が樹脂成形部75に埋没してしまうおそれがある。研磨機85などの機械加工によれば、樹脂成形部75の樹脂が引き延ばされ、導電ワイヤ64の導体21の凹凸に残留し得る。このため、機械加工では、導電ワイヤ64の先端面を樹脂成形部75から露出させる加工が困難であった。機械加工では、導電ワイヤ64における絶縁被膜22も除去され難かった。レーザー加工では、急激な温度上昇によって、樹脂成形部75及び導電ワイヤ64にダメージが生じるおそれがある。
【0085】
導電ワイヤ64を覆う樹脂成形部75及び導電ワイヤ64の絶縁被膜22が除去されたとしても、酸化膜が形成されれば特性が低下する。プラズマの照射によって端部12,13が形成されれば、酸化膜が除去されると共に酸化膜の形成も抑制され得る。
【0086】
電子部品1の製造方法において、導電ワイヤ64の端部12,13に向けて成形物76にプラズマが照射される。この場合、導電ワイヤ64へのダメージが抑制されながら、導電ワイヤ64の端部12,13が樹脂成形部75から露出され得る。プラズマの照射によって、樹脂成形部75が導電ワイヤ64上から選択的に除去され得る。導電ワイヤ64の断面積が比較的小さい場合、すなわち導電ワイヤ64が比較的細い場合にも、樹脂成形部75から適切に露出した端部12,13が形成され得る。この結果、電子部品1の小型化及び電子部品の特性の確保が実現され得ると共に、端子電極6,7と導電ワイヤ64との電気的な接続の信頼性の確保とが両立され得る。
【0087】
上述した製造方法において、プラズマは、水蒸気プラズマであってもよい。水蒸気プラズマでは、有機物の洗浄が水素プラズマよりも五倍速い。このため、水素プラズマ処理などの他のプラズマ処理が用いられる場合よりも、導電ワイヤ9の端部12,13を形成する工程の処理速度が向上する。端部12,13における導体21の表面において、酸化物が還元される。導体21の表面において、酸化膜の形成も抑制され得る。導体21は、表面改質され、親水化される。導体21の親水性が向上すれば、端子電極6,7の密着性が向上し得る。たとえば、端子電極6,7がめっき又は銀ペーストによって形成される場合、端子電極6,7の密着性が向上し得る。したがって、製造スループットが向上すると共に、端子電極と導電ワイヤとの電気的な接続の信頼性がさらに向上し得る。
【0088】
端部66,67の断面積は、7.85×10-11m2以上1×10-8m2以下であってもよい。このような構成であっても、プラズマの照射によって、導電ワイヤ64の端部12,13が樹脂成形部75から容易に露出され得る。電子部品1の小型化が図られると共に、電子部品1の特性も確保され得る。たとえば、導電ワイヤ9がコイルを形成する場合、コイル15において所望のインダクタンスが確保され得る。
【0089】
導電ワイヤ64と端子電極6,7とが接合する接合面の面積は、端部12,13の断面積より大きくてもよい。この場合、導電ワイヤ64と端子電極6,7との電気的な接続の信頼性がさらに向上し得る。
【0090】
上述した製造方法におけるプラズマを照射する工程において、開口89を有するマスク86が位置決めされ、開口89を通ったプラズマが成形物76に照射される。上記開口89は、端部12,13の位置に対応する位置に配置されている。この場合、成形物76へのプラズマの照射位置が高度に調整され得る。このため、成形物76において、プラズマの照射によって除去される部分が選択的に調整され得る。したがって、成形物76の構成に対して、汎用性が向上している。
【0091】
端子電極91を形成する工程において、端子電極は、スパッタリングによって形成されてもよい。この場合、端子電極91を構成する金属が原子レベルで緻密に上記端部12,13の表面に成膜され得る。端部12,13の表面が空気に触れることが抑制されるため、端部12,13の表面における酸化膜の形成も抑制され得る。したがって、端子電極6,7と導電ワイヤ9との電気的な接続の信頼性がさらに向上し得る。プラズマ処理によって導電ワイヤ9の端部12,13が空気に触れずに形成された後に、形成された端部12,13の表面が空気に触れることなく端子電極91が形成され得る。この場合、端部12,13の表面における酸化膜の形成がさらに抑制され得る。
【0092】
端子電極91を形成する工程において、端子電極91は、無電解めっき処理を行った後に電解めっき処理を行うことによって形成されてもよい。この場合、無電解めっき処理によって電解めっき処理よりも緻密に端部12,13の表面に金属が成膜された後に、無電解めっき処理によって形成された膜を電解めっき処理によって厚くすることができる。端子電極91の形成の速度もさらに向上され得る。したがって、製造スループットが向上されると共に、導電ワイヤ9と端子電極6,7との電気的な接続の信頼性が確保され得る。無電解めっき処理は、端部12,13の表面の酸処理を含んでいてもよい。
【0093】
本実施形態において示した例において、電子部品1において、導電ワイヤ9の端部12,13は、外表面10から突出していると共に外表面10と交差する方向に延在している。端子電極6は、端部12を覆っていると共に端部12に接している。端子電極7は、端部13を覆っていると共に端部13に接している。この場合、導電ワイヤ9と端子電極6との接合面積が確保され得る。このため、導電ワイヤ9の先端面52a,53aの面積が拡大されずとも、導電ワイヤ9の端部12,13が外表面10から突出していない場合に比べて、端子電極6,7と導電ワイヤ9との接続は強固になる。端子電極6,7と導電ワイヤ9との接合強度が確保され得る。したがって、特性の低下が回避されながら、端子電極6,7と導電ワイヤ9との電気的な接続の信頼性が確保され得る。電子部品1の導電ワイヤ9は、素体2の内部においてコイル15を形成している。したがって、コイル15のインダクタンスの低下が抑制されながら、端子電極6,7と導電ワイヤ9との電気的な接続の信頼性が確保され得る。
【0094】
電子部品1において端部12,13が外表面10から突出している部分の長さhは、2μm以上であってもよい。この場合、導電ワイヤ9と端子電極6,7との接合面積がさらに確保され易く、電気的な接続の信頼性がさらに向上し得る。
【0095】
電子部品1において、導電ワイヤ9は、導体21と、導体21の側面を覆っている絶縁被膜22とを含んでいる。端部12,13における導体21の側面52b,53bは、絶縁被膜22から露出している。この場合、隣接する導電ワイヤ9の間において絶縁性が確保されながら、端子電極6,7と導電ワイヤ9との電気的な接続の信頼性が確保され得る。
【0096】
ここで、上記効果を説明すべく、
図16(a)、
図16(b)、及び、
図17を用いて、本開示の実施例及び比較例を説明する。なお、本開示は、以下の実施例に限定されるものではない。ここでは、電子部品1と同様の構成を備える電子部品と、比較例としての電子部品とを作製し、電気抵抗値とQ値に関する特性とを確認した。
【0097】
実験例2~6の電子部品は、上述した工程S1から工程S6によって製造された。実験例1の電子部品は、工程S4が省略され、上述した工程S1から工程S3の後に工程S5及工程S6を実行することによって製造された。
【0098】
実験例1~6において、導電ワイヤ64の断面は、円形形状を呈しており、導電ワイヤ64の外径は34μmであり、導電ワイヤ64の導体の径は25μmである。工程S3において、300gの荷重によって100rpmの速度で平面研磨が行われた。この平面研磨には、水道水を研削液として用いた。工程S5における端子電極91の形成において、スパッタリングによって、チタンが0.05μmの厚みで成膜された後に、銅が5μmの厚みで成膜された。
【0099】
実験例2~5の電子部品は、工程S4において、水蒸気プラズマ処理によって端部12,13が形成された。この水蒸気プラズマ処理は、出力800W、流量20sccm、圧力10Paの条件下で行われた。実験例2~5の電子部品のそれぞれにおいて水蒸気プラズマ処理が実行された処理時間は、互いに異なっていた。実験例2における処理時間は、5分であった。実験例3における処理時間は、10分であった。実験例4における処理時間は、20分であった。実験例5における処理時間は、30分であった。
【0100】
実験例6の電子部品は、工程S4において、酸素プラズマ処理によって端部12,13が形成された。この酸素プラズマ処理は、出力500W、流量20sccm、圧力10Paの条件下で行われた。実験例6において、酸素プラズマ処理が実行された処理時間は、30分であった。
【0101】
実験例7の電子部品は、外表面から突出している端部12,13が形成されていない点を除き、実験例1~6の電子部品と同様の構成を有していた。実験例7の電子部品は外表面から突出している部分を含んでおらず、導電ワイヤの端部が外表面から突出している部分の長さは0μmであった。
【0102】
実験例1~7において、一対の端子電極間の電気抵抗値を測定した。各端子電極は、外表面上に配置されていると共に導電ワイヤに接続されていた。一対の端子電極は、それぞれ導電ワイヤの互いに異なる端部に接続されていた。
【0103】
測定の結果、
図16(a)における表に示されているように、実験例1における電気抵抗値は8.084Ωであり、実験例7における電気抵抗値は454.3Ωであったのに対し、実験例2~6における電気抵抗値は0.141~2.047Ωであった。このように、実験例2~6における電気抵抗値は、実験例1,7における電気抵抗値に対して大幅に低減されることが確認された。したがって、プラズマ処理が行われる場合、プラズマ処理を行わない場合に比べて、電気抵抗値が大幅に低減されることが確認された。また、プラズマ処理が行われ、導電ワイヤが外表面から突出している部分を含んでいる場合、導電ワイヤが外表面から突出している部分を含んでいない場合に比べて、電気抵抗値が大幅に低減されることが確認された。換言すれば、端部12,13を備えている場合、端部12,13を備えていない場合に比べて、電気抵抗値が大幅に低減されることが確認された。
【0104】
さらに、上記測定結果に基づいて“A”,“B”,“C”,“D”,“E”の五段階で評価を行った。測定された電気抵抗値をRとした場合、R<0.15が“A”に相当し、0.15≦R≦0.6が“B”に相当し、0.6<R<5が“C”に相当し、5≦R<100が“D”に相当し、100<Rが“E”に相当する。評価が“A”の場合は、Q値は60を超える。評価が“B”の場合は、Q値は30以上60以下となる。評価が“C”の場合は、Q値は30未満となる。Q値は高い程、特性が良いと言える。
【0105】
評価の結果、
図16(a)における表に示されているように、実験例7における評価は“E”であった。実験例1における評価は、“D”であった。実験例2における評価は、“B”であった。実験例3における評価は、“B”であった。実験例4における評価は、“A”であった。実験例5における評価は、“A”であった。
図16(b)は、端部が外表面から突出している部分の長さhと、電気抵抗値との関係を示すグラフである。
【0106】
実験例1~5のように、端部が外表面から突出している部分の長さが2μm以上であれば、実験例7の電子部品よりも良好な特性が得られることが確認された。さらに、実験例4,5のように、端部が外表面から突出している部分の長さが4.75μm以上であれば、評価は“A”であり、さらに良好な特性が得られることが確認された。
【0107】
さらに、
図17における表に示されているように、実験例6における評価は、“C”であった。実験例1と実験例5と実験例6との比較結果から、プラズマ処理が行われる場合、プラズマ処理を行わない場合よりも良好な特性が得られることが確認された。さらに、水蒸気プラズマ処理が行われる場合、酸素プラズマ処理が行われる場合よりも良好な特性が得られることが確認された。
【0108】
以上、本開示の実施形態及び変形例について説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0109】
たとえば、上述した実施形態及び変形例において、電子部品1がコイル部品であり、端子電極6,7がそれぞれコイル15の両端に接続されている場合について説明した。しかし、電子部品1は、コイル以外の回路要素を含んでいてもよい。この場合、コイル15の端部が他の回路要素に接続されていてもよい。したがって、端部12と端部13とは、同一のコイルの端部に接続されていなくてもよい。導電ワイヤ9は、コイル15を形成するものでなく電子部品内部の回路素子に接続されるリード線であってもよい。
【0110】
上述した実施形態及び変形例において、電子部品1は、コイル15の内部に配置されたコア部31を含んでいる。しかし、電子部品1は、コア部31を含んでいなくてもよい。コイル15の内部は、空洞であってもよい。
【0111】
上述した実施形態及び変形例において、コア部31は、長手方向D1よりも短い幅方向D3に延在している。しかし、コア部31は、高さ方向D2及び幅方向D3よりも長い長手方向D1に延在していてもよい。
【0112】
上述した実施形態及び変形例における電子部品1の製造方法において、導電ワイヤが樹脂によって封止された成形物76は、コイル15が設けられた巻芯60を用いて形成される。しかし、成形物76は、巻芯60を用いたものに限定されない。たとえば、成形物76は、いわゆる空芯コイルを用いて形成されてもよい。
【0113】
この場合、導電ワイヤが樹脂によって封止された成形物76は、空芯コイルを配置した金型への樹脂の充填によって形成されてもよい。
図18(a)から
図19(b)を用いて、空芯コイルが用いられる場合について説明する。
図18(a)及び
図18(b)は、金型と金型内に配置されたコイルの拡大図とを示している。
図19(a)及び
図19(b)は、成形物と成形物内に配置されたコイルの拡大図とを示している。
【0114】
まず、
図18(a)に示されるように、複数の空芯コイル15Aが金型95に配列される。各空芯コイル15Aは、導電ワイヤに相当する。次に、
図18(b)に示されるように、金型95へ樹脂が充填される。この結果、
図19(a)に示されるように、複数の空芯コイル15Aが樹脂によって封止された成形物76が形成される。この場合も、成形物76は、成形面76aを含んでいる。
【0115】
空芯コイル15Aを含む成形物76において、空芯コイル15Aは、空芯コイル15Aの両端にそれぞれ接続部71a,71bを含んでいる。接続部71a,71bは、空芯コイル15Aのコイル軸の径方向に延在するように形成される。接続部71a,71bは、同一方向に延在する。この場合も、
図19(b)に示されているように、不要部位の除去によって、接続部71a,71bの延在方向と直交する加工面78が形成される。たとえば、平面研磨によって加工面78が形成される。
【0116】
上述した実施形態及び変形例において、1つの巻芯60に複数のコイル15が形成される。しかし、1つの巻芯60に1つのみのコイル15が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0117】
1…電子部品、91…端子電極、64…導電ワイヤ、66,67…端部、15…コイル、21…導体、22…絶縁被膜、75…樹脂成形部、76…成形物、86…マスク、89…開口。