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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150717
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20231005BHJP
   H04W 84/02 20090101ALI20231005BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
H04W52/02 110
H04W84/02
H04W72/04 131
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059952
(22)【出願日】2022-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
(72)【発明者】
【氏名】松村 武
(72)【発明者】
【氏名】沢田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】伊深 和雄
(72)【発明者】
【氏名】國立 忠秀
(72)【発明者】
【氏名】松井 研輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 拓人
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA14
5K067AA43
5K067CC22
5K067EE16
5K067EE22
(57)【要約】
【課題】ノード間において消費電力を平滑化し、低遅延動作を実現する。
【解決手段】CS2を根として2以上に亘り配置されたノード3間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行うネットワークにおける無線通信システムにおいて、各ノード3は、連続する間欠待受周期において、データフレームを送受信可能なアクティブ期間と、動作を休止するスリープ期間とがそれぞれ割り当てられ、ノード3には、互いに時系列的に異なるアクティブ期間とスリープ期間とがそれぞれ割り当てられることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行うネットワークにおける無線通信システムにおいて、
上記各ノードは、連続する間欠待受周期において、上記データフレームを送受信可能なアクティブ期間と、動作を休止するスリープ期間とがそれぞれ割り当てられ、
上記ノードには、互いに時系列的に異なる上記アクティブ期間と上記スリープ期間とがそれぞれ割り当てられること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
少なくとも一のノードにおいて少なくとも上記スリープ期間が割り当てられている場合には、他の1以上のノードは、当該スリープ期間に相当する時間に上記アクティブ期間が割り当てられること
を特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
上記間欠待受周期では、全てのノードが同時に動作を休止する全スリープ期間と、1以上のノードによるアクティブ期間とが割り当てられ、上記間欠待受周期における全スリープ期間の割合は、予め設定された最大許容全スリープ期間の割合以下とされていること
を特徴とする請求項2記載の無線通信システム。
【請求項4】
上記収集制御局は、予め決定された上記アクティブ期間と上記スリープ期間とが割り当てれた一のノードと上記アクティブ期間のみが割り当てられた他のノードの数、又はその割合に応じて、新たに検出した複数のノードを上記一のノード又は上記他のノードに割り当てること
を特徴とする請求項3記載の無線通信システム。
【請求項5】
上記間欠待受周期毎に割り当てを行う際に、一のノードにおいて上記スリープ期間の割合を増加させた場合には他の1以上のノードにおいてスリープ期間の割合を減少させ、一のノードにおいて上記スリープ期間の割合を減少させた場合には、他の1以上のノードにおいてスリープ期間の割合を増加させること
を特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項6】
上記他のノードが複数存在する場合には、上記スリープ期間の割合を減少させ、又はスリープ期間の割合を増加させる何れか1つの他のノードが互いに等確率で選択されること
を特徴とする請求項5記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行うネットワークにおける無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤレスネットワークにおいて、小型で安価であり、かつ省電力の無線通信を行うことのできる、IEEE802.15.4gの規格に準拠する通信デバイスが用いられている(例えば、非特許文献1参照。)。このIEEE802.15.4gの規格に準拠するネットワークでは、収集制御局であるCS(Collection station)と、1つ以上のノードとにより構成された各種トポロジが採用されている。
【0003】
中でもこのIEEE802.15.4規格では、図8に示すような省電力型のスーパーフレーム構造が提案されている。このスーパーフレーム構造では、時分割多元接続(TDMA: Time Division Multiple Access)制御の下で、スーパーフレームが周期的なビーコン信号によって規定される。このビーコン信号の間隔(間欠待受周期)においては、送受信するデータフレームの信号を待ち受けるアクティブ期間(AP:Active Period)と、電源を落とし、送受信や待受けの動作を行わないスリープ期間(SP:Sleep Period)に分割することができる。アクティブ期間APにおいて各ノードは、実質的な通信期間として運用することができる。一方で、スリープ期間SPにおいて各ノードは、スリープ状態に移行することが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-167636号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE802.15.4g , “Part 15.4: Low-Rate Wireless Personal Area Networks (LR-WPANs), Amendment 3: Physical Layer (PHY) Specifications for Low-Data-Rate, Wireless, Smart Metering Utility Networks”,2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなIEEE802.15.4規格では、各ノードは互いに独立して動作し、特にノード間において連携を取ることは行わない。特にノード間の距離が互いに近接している場合には、ネットワーク全体としては、何れかのノードがアクティブ期間APであればデータフレームの待受けや送受信を問題なく実現することができる。そして他のノードはその間スリープ状態に移行することで、ネットワーク全体としては消費電力の低減することが可能となる。
【0007】
しかしながら、ある特定のノードについてアクティブ期間APの頻度が極度に高く、他のノードがスリープ期間SPを継続する状態であれば、ノード間における消費電力につきアンバランスな状態となる。その結果、そのアクティブ期間APの頻度が極度に高いノードについては電力の消耗が早くなり、ネットワークの効率的な運用に支障が生じる。またノード間における消費電力の極端なアンバランスさにより、データフレームの送受信や待受けにつき通信遅延を低減する、いわゆる低遅延動作を実現する上で支障が生じる場合が出てくる。
【0008】
従って、ネットワーク全体としては期待される通信機能は満足しつつ、ノード間において消費電力を平滑化し、低遅延動作を実現する必要があるが、従来においてこれらの条件を満足することができる技術は提案されていないのが現状であった。
【0009】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、IEEE802.15.4規格のワイヤレスネットワークにおいて期待される通信機能は満足しつつ、ノード間において消費電力を平滑化し、低遅延動作を実現することが可能な無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行う上で、連続する間欠待受周期において、上記データフレームを送受信可能なアクティブ期間と、動作を休止するスリープ期間とをそれぞれ割り当て、更に各ノードには、互いに時系列的に異なるアクティブ期間とスリープ期間とをそれぞれ割り当てることで上述した課題を解決することとした。
【0011】
第1発明に係る無線通信システムは、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行うネットワークにおける無線通信システムにおいて、上記各ノードは、連続する間欠待受周期において、上記データフレームを送受信可能なアクティブ期間と、動作を休止するスリープ期間とがそれぞれ割り当てられ、上記ノードには、互いに時系列的に異なる上記アクティブ期間と上記スリープ期間とがそれぞれ割り当てられることを特徴とする。
【0012】
第2発明に係る無線通信システムは、第1発明において、少なくとも一のノードにおいて少なくとも上記スリープ期間が割り当てられている場合には、他の1以上のノードは、当該スリープ期間に相当する時間に上記アクティブ期間が割り当てられることを特徴とする。
【0013】
第3発明に係る無線通信システムは、第2発明において、上記間欠待受周期では、全てのノードが同時に動作を休止する全スリープ期間と、1以上のノードによるアクティブ期間とが割り当てられ、上記間欠待受周期における全スリープ期間の割合は、予め設定された最大許容全スリープ期間の割合以下とされていることを特徴とする。
【0014】
第4発明に係る無線通信システムは、第3発明において、上記収集制御局は、予め決定された上記アクティブ期間と上記スリープ期間とが割り当てれた一のノードと上記アクティブ期間のみが割り当てられた他のノードの数、又はその割合に応じて、新たに検出した複数のノードを上記一のノード又は上記他のノードに割り当てることを特徴とする。
【0015】
第5発明に係る無線通信システムは、第1発明において、上記間欠待受周期毎に割り当てを行う際に、一のノードにおいて上記スリープ期間の割合を増加させた場合には他の1以上のノードにおいてスリープ期間の割合を減少させ、一のノードにおいて上記スリープ期間の割合を減少させた場合には、他の1以上のノードにおいてスリープ期間の割合を増加させることを特徴とする。
【0016】
第6発明に係る無線通信システムは、第5発明において、上記他のノードが複数存在する場合には、上記スリープ期間の割合を減少させ、又はスリープ期間の割合を増加させる何れか1つの他のノードが互いに等確率で選択されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述した構成からなる本発明によれば、IEEE802.15.4規格のワイヤレスネットワークにおいて期待される通信機能は満足しつつ、ノード間において消費電力を平滑化し、低遅延動作を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明を適用した無線通信システムにおいてツリー型のトポロジを採用した例を示す図である。
図2図2は、本発明を適用した無線通信システムにおいてスター型のトポロジを採用した例を示す図である。
図3図3は、データフレームを送受する際にノード毎に設定されるスーパーフレーム構造を示す図である。
図4図4は、ノードにおける各間欠待受周期に割り当てられたアクティブ期間とスリープ期間の例を示す図である。
図5図5は、ノードの時系列的に連続する間欠待受周期にアクティブ期間AP、スリープ期間SPを割り当てた例を示す図である。
図6図6は、本発明を適用した無線通信システムの他の実施の形態について説明するための図である。
図7図7は、本発明を適用した無線通信システムにおいて全スリープ期間を設ける例を示す図である。
図8図8は、従来技術について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した無線通信システムについて図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0020】
図1は、本発明を適用した無線通信システム1は、無線ノードとして、収集制御局(Collection Station:以下CSという。)2を根としたノード3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、3-6、3-7とを備え、各ノード3をツリー型に配置したいわゆるツリー型のトポロジが採用されている。この無線通信システム1では、より下位のノード3が、より上位のノード3やCS2に向けて上りデータ通信を行う。また無線通信システム1では、より上位のノード3やCS2が、より下位のノード3に向けて下りデータ通信する。
【0021】
CS2は、最上位のマスターデバイスであり、各ノード3-1~3-7から上りデータ通信により送信されてくるデータフレームを収集する。また、CS2は、この無線通信システム1全体を制御するための中央制御部としての役割も担い、ある特定のノード3に対して制御系のデータフレームを下りデータ通信する。
【0022】
ノード3は、データの発信や中継等を始めとしたデータの送受信を行うことが可能なデバイスの総称であり、例えばIEEE802.15.4の規格に準拠する通信デバイスである。ノード3は、所定のデータをセンシングしてこれを無線により送信するセンサとして具現化されるほか、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、ノート型のパーソナルコンピュータ(PC)等のような無線通信が可能な端末装置として具現化されてもよい。またこのノード3はアクチュエータのような工作機械の制御系を含むものでもよい。かかる場合には、例えばバルブを停止する制御を行ったり、ロボットの制御を行ったり、ガスを停止するための制御を行うことを可能とするデバイスとして具現化される。ノード3が制御系を含むアクチュエータ等として具現化されるものであれば、CS2から他のノード3を介して下りデータ通信されてくる制御用のデータに基づき、各種制御動作を実行していくこととなる。
【0023】
図2は、本発明を適用した無線通信システム1においてスター型のトポロジを採用した例を示している。スター型のトポロジでは、一のCS2と、このCS2との間でデータフレームを直接送受信する複数のノード3―1~3-5とを備えている。CS2とノード3―1~3-5との間には、マスターデバイスとスレーブデバイスの関係が構築されている。
【0024】
本発明を適用した無線通信システム1では、ツリー型のトポロジ、スター型のトポロジの何れを採用するものであってもよい。
【0025】
本発明を適用した無線通信システム1において、データフレームを送受する際にノード3毎に設定されるスーパーフレーム構造を図3に示す。このスーパーフレーム構造では、時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)制御の下で、スーパーフレームが周期的なビーコン信号によって規定される。このビーコン信号の間隔を間欠待受周期という。スーパーフレームには、送受信するデータフレームを待ち受けるアクティブ期間(AP:Active Period)と、スリープ期間(SP:Sleep Period)とが含まれる。
【0026】
ちなみにスーパーフレームの間欠待受周期は、必ずしもビーコン信号によって規定される場合に限定されるものではない。つまり、スーパーフレームにおける間欠待受周期の開始時点、終了時点においてビーコン信号が送受信されることは必須とならない。ビーコン信号の間隔内において、複数のスーパーフレームが含まれる場合もある。また各スーパーフレームの間欠待受周期は、例えばビーコン信号間の最小の間隔となるように設定されていてもよい。かかる場合には、そのビーコン信号間の最小の間隔となるように間欠待受周期が設定されたスーパーフレームが、その後に送受信されるビーコン信号の間隔に依存することなく連続することになる。
【0027】
スーパーフレームの間欠待受周期の長さ、スーパーフレームの開始時点(開始時刻)、終了時点(終了時刻)は、変更自在とされている。このようなスーパーフレームの間欠待受周期の調整は、ビーコン信号の間隔を調整することにより行われるようにしてもよい。
【0028】
アクティブ期間APは、スーパーフレームの開始時点から開始し、所定の時間に亘り送受信するデータフレームを間欠待受周期において待ち受ける。このアクティブ期間APでは、データフレームのヘッダに記述される情報を少なくとも読み取る。アクティブ期間APにより読み取ったデータフレームのヘッダの情報から、データフレーム全体を受信する必要があるか否かの判別を行うことができる。
【0029】
アクティブ期間APは、図3(a)に示すように、送受信するデータフレームより短期間となる場合があり、データフレームの終了時点は、アクティブ期間内に収まる場合に限定されるものではなく、アクティブ期間APを超えた時点になる場合もある。アクティブ期間APは、データフレームのヘッダに記述されている情報のみを読み取ればよいことから、データフレーム長にかかわらずヘッダの情報を読み取り可能な程度まで短縮化されていてもよい。すなわち、アクティブ期間APは、各ノードによるデータフレームのヘッダの部分のみを待受けることができれば、いくらデータフレーム長が長いものであっても、そのアクティブ期間APを短くしてスリープ状態に移行することができる。このため、IEEE802.15.4規格においては、スリープ状態を通常よりも長くすることができることから、消費電力の低減を図ることが可能となる。但し、このアクティブ期間APは、少なくとも送信されてくるデータフレームのヘッダについては着実に受信する必要があるため、スリープ状態に移行することなく常に待受け状態となることが求められる。
【0030】
このアクティブ期間APの長さは、各ノード3においてそれぞれ自在に設定することができる。アクティブ期間APは、最短で0であってもよい。即ち、一のスーパーフレームの開始時点から終了時点までアクティブ期間AP自体が皆無であり、全てスリープ期間SPで構成してもよい。またこのアクティブ期間APは、最長でスーパーフレームの開始時点からスーパーフレームの終了時点まで延長させることが可能となる。即ち、一のスーパーフレームの全てがアクティブ期間APで構成されるものであってもよい。
【0031】
スーパーフレームにおいて、アクティブ期間APの終了時点からスーパーフレームの終了時点までがスリープ期間SPとなる。上述したようにアクティブ期間APの長さは可変自在に構成されていることから、スリープ期間SPもそのアクティブ期間APの長さに応じて可変自在となる。スリープ期間SPにおいて、ノード3は、スリープ状態、即ち電源を落とし、データフレームの送受信やその待受けの動作を行わない期間に移行する。スーパーフレームでは、アクティブ期間APのみならず、このスリープ状態に移行するスリープ期間SPを設けておくことにより、ノード3における電力消費量を低減させることが可能となる。ちなみにスリープ期間SPはアクティブ期間APの終了時点からスーパーフレームの終了時点までとなる。
【0032】
またスーパーフレームにおいて、図3(b)に示すように、データフレームの送受信の時間帯がアクティブ期間APを超える場合で、かつデータフレームの送受信が必要である旨を判断した場合には、実際の通信において当該データフレームの終了時点以降までアクティブ期間APを延長するようにしてもよい。実際の通信において、データフレームの送受信時とアクティブ期間APが時系列的に重なるように制御されることで、常時待受起動状態にあるが、データフレームの送受信終了後は、遅滞なくスリープ期間SPに移行しても特段問題は生じない。
【0033】
本発明を適用した無線通信システム1では、このようなアクティブ期間APとスリープ期間SPとが、各ノード3に対してそれぞれ設定される。このとき、各ノード3には、互いに時系列的に異なるアクティブ期間APとスリープ期間SPとがそれぞれ割り当てられる。ここでいう時系列的に異なるアクティブ期間APとスリープ期間SPとは、アクティブ期間AP、又はスリープ期間SPが、各ノード間3で時系列的に重複する時間帯が含まれるものであってもよい。換言すればノード3間においてアクティブ期間APとスリープ期間SPの時系列的なパターンにおいて一時点のみでも差異があればよい。
【0034】
図4は、CS2に対して直接データフレームの通信を行うノード3-1~3-3における各間欠待受周期に割り当てられたアクティブ期間APとスリープ期間SPの例を示している。この図4における各ノード3-1~3-3について示される時系列的に変化するグラフの縦軸は消費電力を意味する。即ち、アクティブ期間APであれば消費電力が多くなり、スリープ期間SPであれば消費電力が少なくなる。ノード3-1~ノード3-3においてそれぞれ割り当てられているアクティブ期間APとスリープ期間SPは、連続する間欠待受周期で見た場合、換言すれば一のスーパーフレーム単位ではなく複数の連続するスーパーフレーム群で見た場合には、時系列的に互いに異なるものであることが分かる。
【0035】
このようにして複数のノード3間において、互いに時系列的に異なるアクティブ期間APとスリープ期間SPとがそれぞれ割り当てることにより、ある特定のノード3についてアクティブ期間APの頻度が極度に高く、他のノード3がスリープ期間SPを継続する状態に陥るのを防止することができる。その結果、複数のノード3間において消費電力につきバランスを取ることができ、あるノード3のみ電力の消耗が極度に早くなり、ネットワークの効率的な運用に支障が生じことを防止することができる。
【0036】
なお、ノード3-1~ノード3-3が互いに近接している場合には、最低1つのノードのみがアクティブ期間APであれば、データフレームの送受信や待受けが可能であることから、図4に示すように、各間欠待受周期T1~T3において最低1つのノード3が全てアクティブ期間であれば、他のノード3はアクティブ期間APを短縮化してスリープ期間SPを延長するようにしてもよいし、或いは間欠待受周期T1~T3全てをスリープ期間SPとするようにしてもよい。換言すれば少なくとも一のノード3においてアクティブ期間APとスリープ期間SPとが割り当てられている場合、或いは少なくとも一のノード3が全てスリープ期間が割り当てられている場合には、他のノード3は、連続する間欠待受周期T1~T3全てにおいてアクティブ期間APのみが割り当てられることとなる。
【0037】
以下、一つの間欠待受周期においてアクティブ期間APのみが割り当てられている状態を完全アクティブ状態といい、また一つの間欠待受周期においてアクティブ期間APとスリープ期間SPとが割り当てられている場合、或いは全てスリープ期間SPが割り当てられている場合をスリープ混在状態という。
【0038】
図4の例の場合、間欠待受周期T1においてはノード3-2が間欠待受周期全てにおいてアクティブ期間APのみが割り当てられていることから完全アクティブ状態となっており、残りのノード3-1、3-3は、アクティブ期間APとスリープ期間SPとが割り当てられている状態であることからスリープ混在状態となっている。間欠待受周期T2においてはノード3-1が完全アクティブ状態となっており、残りのノード3-2、3-3は、スリープ混在状態となる。間欠待受周期T3においてはノード3-3が完全アクティブ状態となり、残りのノード3-1、3-3は、スリープ混在状態となる。
【0039】
これにより、ネットワーク全体としてはノード3のスリープ期間SPの割合を上昇させることで、電力の消費量をより低減させることができ、しかも各間欠待受周期において最低1つのノード3が完全アクティブ状態とされていることで、データフレームの送受信や待受けを漏らすことなく実現することができ、通信遅延を低減する、いわゆる低遅延動作を実現することが可能となる。
【0040】
なお本発明は、このような各間欠待受周期において、完全アクティブ状態とする一のノード3と、スリープ混在状態とする他のノード3を割り当てるようにしてもよい。この割り当ては、間欠待受周期単位で行うようにしてもよいし、複数の間欠待受周期単位でおこなうようにしてもよい。この割り当て自体はCS2が行う。かかる場合において、完全アクティブ状態とする一のノード3と、スリープ混在状態とする他のノードのそれぞれの数、又はその割合は予め決定されているものとする。CS2はその予め決定された完全アクティブ状態のノード3とスリープ混在状態のノード3のそれぞれの数又はその割合に応じて、各ノード3につき、間欠待受周期単位で完全アクティブ状態又は、スリープ混在状態を割り当てる。
【0041】
この割り当てを行う過程で、CS2は、自身に従属するノード3を検知し、及びその数をカウントする。ノード3によっては、移動した結果、CS2に対する無線通信範囲外になるものもあれば、逆に新たにCS2に対する無線通信範囲内に入るものもある。このようにCS2に従属するノード3及びその数は、時系列的に刻々と変化するため、上述した割り当てを行う都度、自身に従属する全てのノード3を検知し、及びその数をカウントする。
【0042】
ここで完全アクティブ状態のノード3の割合が、全体の1/5であり、スリープ混在状態のノード3の割合が全体の4/5である旨が予め決まっている場合、新たに検知した自身に従属する全てのノード3につきそれぞれ完全アクティブ状態のノード3、スリープ混在状態のノード3を割り当てる。新たに検知したノード3の数が10個ある場合、その予め決定された割合に準じて、完全アクティブ状態のノード3に2個、スリープ混在状態のノードに8個をそれぞれ割り当てることになる。いかなるノード3に完全アクティブ状態を割り当て、いかなるノード3にスリープ混在状態を割り当てるかは、いかなるルールに基づくものであってもよいし、ランダムに決定するようにしてもよい。完全アクティブ状態とスリープ混在状態が割合ではなく、それぞれの数として特定されている場合も同様に、それに準じて割り当てを行うことになる。
【0043】
このように、ノード3が移動する結果、CS2に従属するノード3やその数が時系列的に変化する場合であっても、同様に全てアクティブ期間とする完全アクティブ状態と、アクティブ期間APとスリープ期間SPとが割り当てられ、又は全てスリープ期間SPが割り当てられるスリープ混在状態を割り当てることが可能となる。
【0044】
なお、本発明は、完全アクティブ状態、又はスリープ混在状態を割り当てる場合、以下に説明する規則に基づいて行うようにしてもよい。
【0045】
図5は、ノード3-1~3-3の時系列的に連続する間欠待受周期にアクティブ期間AP、スリープ期間SPを割り当てた例を示している。この例においては、最初の間欠待受周期T1においてノード3-2のみ完全アクティブ状態とし、他のノード3-1、3-3については、スリープ混在状態が割り当てられる。この間欠待受周期T1では、完全アクティブ状態のノード3-2を通じてデータフレームの送受信や待受けを漏れなく行うことができ、他のノード3-1、3-3を休止させることで、低遅延動作と省電力化を両立することができる。
【0046】
この間欠待受周期T1を終了させた後、次の間欠待受周期T2ではノード3―2以外の他のノード3-1、3-3の何れか1つについて、完全アクティブ状態を割り当てる。この完全アクティブ状態とする一のノードを、ノード3-1、3-3から選択する際には、ランダムに選択する。換言すれば、このノード3-1、3-3について互いに等確率からなる確率分布の下でランダムに選択される。ノード3-1、3-3につき互いに50%ずつの等確率となるように確率分布が設定され、その確率分布の下でランダムに選択される。このランダムな選択は、CS2による制御の下で行われる。
【0047】
間欠待受周期T2では、ノード3-3が選択された場合、これを完全アクティブ状態とし、残りのノード3-1、3-2は、スリープ混在状態として構成する。
【0048】
同様に間欠待受周期T2を終了させた後、次の間欠待受周期T3ではノード3―3以外の他のノード3-1、3-2の何れか1つについて、完全アクティブ状態とする。この完全アクティブ状態とする一のノードを、ノード3-1、3-2から選択する際も同様に、等確率の確率分布の下でランダムに選択される。
【0049】
間欠待受周期T3では、ノード3-2が選択された場合、これを完全アクティブ状態とし、残りのノード3-1、3-3は、スリープ混在状態として構成する。
【0050】
このような処理動作を各間欠待受周期T4以降も同様に実行する。図5に示すように短期的にみれば、ノード3-1~ノード3―3間において完全アクティブ状態が選択される比率について偏りが出る可能性がある。一方で、間欠待受周期Tについて無限回数に亘りこの処理動作を実行した場合、図5に示すようにノード3-1~ノード3-3間において完全アクティブ状態が選択される比率についてほぼ等しくなってくる。その理由として、完全アクティブ状態の選択について等確率の確率分布の下でランダムに選択していることから、この処理動作を無限回数繰り返せば理論的には、完全アクティブ状態が選択される比率がほぼ等しくなるように収束することになる。
【0051】
これにより、ネットワーク全体における低遅延動作と省電力化を両立できることは上述と同様であるが、更にノード3-1~3―3間における消費電力につきバランスを保ちつつ互いに平滑化することができる。
【0052】
なお、上述した例ではノード3-1~3-3の3個からなる例について説明をしたが、これに限定されるものではなく、ノード3の数が4以上の場合も同様であり、次の間欠待受周期Tにおいて完全アクティブ状態のノード3を選択する場合には、等確率の確率分布の下でランダムに選択することになる。
【0053】
また、完全アクティブ状態は、1個のノード3で構成される場合に限定されるものではなく、複数のノード3を選択するものであってもよい。かかる場合において、他のノード3も必ず複数個割り当てるようにする。
【0054】
更に、本実施の形態においては、図5に示されるノード3-1~ノード3-3における完全アクティブ状態が選択される比率についてばらつきが発生する場合には、これを解消するように制御するようにしてもよい。仮に、ノード3-3がノード3-1、3-2よりも完全アクティブ状態が選択される比率が低い場合、このノード3-3について完全アクティブ状態が選択される確率を高くした確率分布の下でランダムに選択するようにしてもよい。即ち、完全アクティブ状態のノード3として実際に選択された比率を結果に基づき、そのばらつきを解消するべく、当該比率が低いノード3ほど、選択される確率を高くした確率分布を再設定し、ランダムに選択するようにしてもよい。
【0055】
これにより、ノード3間の消費電力につき更なるバランスを保ちつつ互いに平滑化することができる。
【0056】
このとき、完全アクティブ状態とスリープ混在状態をノード3間において上述した方法に基づいて選択する以外に、間欠待受周期毎に割り当てを行う際に、一のノード3においてスリープ期間SPの割合を増加させた場合には、他のノード3においてスリープ期間SPの割合を減少させるものであれば、本発明に含まれる。逆に一のノード3においてスリープ期間SPの割合を減少させた場合には、他のノード3においてスリープ期間SPの割合を増加させるものも同様に、本発明に含まれる。
【0057】
例えば図5に示すように、間欠待受周期T1から間欠待受周期T2に移行する過程においてノード3-2は、スリープ期間SPの割合が増加する。かかる場合、間欠待受周期T1から間欠待受周期T2に移行する過程において、他のノード3であるノード3-3において、スリープ期間SPを減少させることで、アクティブ期間APを増加させる。他のノード3が2以上ある場合、このスリープ期間SPを減少させるノード3を選択する場合には、等確率の確率分布の下でランダムに選択するようにしてもよい。逆に一のノード3においてスリープ期間SPの割合を減少させた場合には、他のノード3においてスリープ期間SPの割合を増加させる場合も同様に、他のノード3が2以上ある場合、このスリープ期間SPの割合を増加させるノード3を選択する場合には、等確率の確率分布の下でランダムに選択するようにしてもよい。
【0058】
また、本発明においては、少なくとも一のノード3において少なくともスリープ期間が割り当てられている場合には、他のノード3は、当該スリープ期間に相当する時間にアクティブ期間が割り当てられるものであればいかなるものであってもよい。
【0059】
例えば図6に示すように、間欠待受周期T1において、ノード3-1にスリープ期間SPが含まれている。かかる場合には、そのスリープ期間に相当する時間において、ノード3-2においてアクティブ期間APが割り当てられている。このように、一のノード3-1においてスリープ期間SPが含まれている場合、そのスリープ期間SPに相当する時間を、他のノード3-2により全てアクティブ期間APに割り当てることで、データフレームの送受信や待受けを漏れなく行うことができる。
【0060】
これ以外に、例えば、間欠待受周期T2において、ノード3-2においてスリープ期間SPが含まれている場合、そのスリープ期間SPに相当する時間を、ノード3-1とノード3-2によりそれぞれ分担してアクティブ区間APを埋め合わせるようにしてもよい。スリープ期間SPに相当する時間にアクティブ期間が割り当てられるノード3は2以上で構成されるものであってもよい。
【0061】
更に図7に示すように、間欠待受周期T2において、全てのノード3-1~3-3が一斉に休止する全スリープ期間を設けるようにしてもよい。この間欠待受周期T2において、全スリープ期間以外の期間は、アクティブ期間APとなる。このアクティブ期間APは、図7に示す例において、ノード3-1~ノード3-3において分散して割り当てられている。全スリープ期間以外において割り当てられるアクティブ期間APは、1以上のノードに割り当てられていればよい。間欠待受周期における全スリープ期間の割合は、予め設定された最大許容全スリープ期間の割合以下とされている。この最大許容全スリープ期間は、間欠待受周期の0~1/2の長さの範囲内において予め設定される。その理由として、全スリープ期間があまりに長すぎると、データフレームの送受信や待受けを漏れなく行うことが困難となるためである。最大許容全スリープ期間が0ということは、全スリープ期間が0であり、換言すれば、その間欠待受周期の各タイミングは、何れか1以上のノード3-1~ノード3―3が必ずアクティブ期間となっていることを意味する。
【符号の説明】
【0062】
1 無線通信システム
2 CS
3 ノード
図1
図2
図3
図4
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図6
図7
図8