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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150720
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20231005BHJP
   H04W 40/02 20090101ALI20231005BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20231005BHJP
   H04W 48/10 20090101ALI20231005BHJP
   H04W 72/1273 20230101ALI20231005BHJP
   H04W 72/1268 20230101ALI20231005BHJP
【FI】
H04W52/02 110
H04W40/02
H04W72/04 131
H04W48/10
H04W72/12 130
H04W72/12 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059958
(22)【出願日】2022-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】児島 史秀
(72)【発明者】
【氏名】松村 武
(72)【発明者】
【氏名】沢田 浩和
(72)【発明者】
【氏名】伊深 和雄
(72)【発明者】
【氏名】國立 忠秀
(72)【発明者】
【氏名】松井 研輔
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 拓人
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA14
5K067AA43
5K067CC14
5K067CC22
5K067DD11
(57)【要約】
【課題】期待される通信機能は満足しつつ、電力消費量の低減を図り、低遅延動作を実現する。
【解決手段】CS2を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行うネットワークにおける無線通信システムにおいて、各ノード3は、連続する間欠待受周期において、データフレームを送受信可能とすると共に、時系列的に前期と後期に分割されたアクティブ期間と、動作を休止するスリープ期間とがそれぞれ割り当てられ、CS2は、検出したノードの数に応じて、上記アクティブ期間の前期及び後期に対して、ノード3からCS2への上りデータ通信とCS2からノード3への下りデータ通信を各々割り当てる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行うネットワークにおける無線通信システムにおいて、
上記各ノードは、連続する間欠待受周期において、上記データフレームを送受信可能とすると共に、時系列的に前期と後期に分割されたアクティブ期間と、動作を休止するスリープ期間とがそれぞれ割り当てられ、
上記収集制御局は、検出したノードの数に応じて、上記アクティブ期間の前期に対して、ノードから収集制御局への上りデータ通信と収集制御局からノードへの下りデータ通信の一方を割り当てると共に、上記アクティブ期間の後期に対して、上記上りデータ通信と上記下りデータ通信の他方を割り当てること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
上記収集制御局は、検出したノードの数に応じて、上記前期と上記後期の時系列的な割合を調整すること
を特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
上記収集制御局は、自らが上記各ノードに対してブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合には、
上記前期に対して上りデータ通信を、上記後期に対して下りデータ通信を割り当てると共に、自らが上記各ノードに対してユニキャストにより下りデータ通信を行う場合よりも上記前期の時系列的な割合を増加させるように調整し、
又は上記前期に対して下りデータ通信を、上記後期に対して上りデータ通信を割り当てると共に、自らが上記各ノードに対してユニキャストにより下りデータ通信を行う場合よりも上記後期の時系列的な割合を増加させるように調整すること
を特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【請求項4】
上記収集制御局は、自らが上記各ノードに対してブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合には、
上記前期に対して上りデータ通信を、上記後期に対して下りデータ通信を割り当てると共に、上記下りデータ通信のデータフレームの終点が次の間欠待受周期における前期の始点よりも前になるように調整し、
又は上記前期に対して下りデータ通信を、上記後期に対して上りデータ通信を割り当てると共に、上記上りデータ通信のデータフレームの終点が次の間欠待受周期における前期の始点よりも前になるように調整すること
を特徴とする請求項1又は2記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行うネットワークにおける無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ワイヤレスネットワークにおいて、小型で安価であり、かつ省電力の無線通信を行うことのできる、IEEE802.15.4gの規格に準拠する通信デバイスが用いられている(例えば、非特許文献1参照。)。このIEEE802.15.4gの規格に準拠するネットワークでは、収集制御局であるCS(Collection station)と、1つ以上のノードとにより構成された各種トポロジが採用されている。
【0003】
中でもこのIEEE802.15.4規格では、図7に示すような省電力型のスーパーフレーム構造が提案されている。このスーパーフレーム構造では、時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)制御の下で、スーパーフレームが周期的なビーコン信号によって規定される。このビーコン信号の間隔(間欠待受周期)においては、送受信するデータフレームの信号を待ち受けるアクティブ期間(AP:Active Period)と、電源を落とし、送受信や待受けの動作を行わないスリープ期間(SP:Sleep Period)に分割することができる。アクティブ期間APにおいて各ノードは、実質的な通信期間として運用することができる。一方で、スリープ期間SPにおいて各ノードは、スリープ状態に移行することが可能となる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-167636号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE802.15.4g , “Part 15.4: Low-Rate Wireless Personal Area Networks (LR-WPANs), Amendment 3: Physical Layer (PHY) Specifications for Low-Data-Rate, Wireless, Smart Metering Utility Networks”,2012年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、CSからノードへの下りデータ通信は、ブロードキャストにより、一括してデータフレームを配信する場合が多い。ブロードキャストによるデータフレームの配信の場合には、個々のノードに対してユニキャストで配信する場合と比較して短時間で一括して行うことができる。一方で、ノードからCSへの上りデータ通信は、ブロードキャストによりデータフレームを送る場合は殆ど無く、個々のノードが単独でデータフレームをCSへ送信するユニキャストが大部分である。かかる場合において同じ時間帯に複数のノードがCSに対して上りデータ通信を開始した場合、一のノードによる上りデータ通信が終了するまで他のノードは待機する必要がある。その結果、全てのノードの上りデータ通信が完了するまでに相当の時間を要することになる。特にノードの数が増加する場合、この上りデータ通信の通信時間と、下りデータ通信の通信時間の格差は大きくなる。
【0007】
これに対して、上述した従来の省電力型のスーパーフレーム構造によれば、ノードからCSへの上りデータ通信、CSからノードへの下りデータ通信について特段の区別をすることなく、アクティブ期間APにおいて待受けを行い、データフレームの送受信を行っている。
【0008】
このため、ブロードキャストによる下りデータ通信のみならず、ユニキャストが殆どである上りデータ通信についても漏れなく待受けやデータフレームの送受信が完了するまでアクティブ期間APを延長する必要がある。その結果、スリープ期間SPは短くなるのが必然であり、ネットワーク全体としての電力消費量の低減を図ることが困難である。
【0009】
一方で、アクティブ期間APを短くし、スリープ期間SPを長くし過ぎると、確かに電力消費量は低減できるものの、データフレームの送受信や待受けにつき通信遅延を低減する、いわゆる低遅延動作を実現する上で支障が生じる場合が出てくる。
【0010】
従って、ネットワーク全体としては期待される通信機能は満足しつつ、電力消費量の低減を図り、低遅延動作を実現する必要があるが、従来においてこれらの条件を満足することができる技術は提案されていないのが現状であった。
【0011】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、IEEE802.15.4規格のワイヤレスネットワークにおいて期待される通信機能は満足しつつ、電力消費量の低減を図り、低遅延動作を実現することが可能な無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行う上で、連続する間欠待受周期においてデータフレームを送受信可能とすると共に、時系列的に前期と後期に分割されたアクティブ期間と、動作を休止するスリープ期間とを各ノードに割り当て、検出したノードの数に応じて、アクティブ期間の前期及び後期に対して、ノードから収集制御局への上りデータ通信と収集制御局からノードへの下りデータ通信を各々割り当てることで、上述した課題の解決を図ることとした。
【0013】
第1発明に係る無線通信システムは、収集制御局を根として2以上に亘り配置されたノード間のデータフレームの送受信を時分割多元接続(TDMA)に基づいて行うネットワークにおける無線通信システムにおいて、上記各ノードは、連続する間欠待受周期において、上記データフレームを送受信可能とすると共に、時系列的に前期と後期に分割されたアクティブ期間と、動作を休止するスリープ期間とがそれぞれ割り当てられ、上記収集制御局は、検出したノードの数に応じて、上記アクティブ期間の前期に対して、ノードから収集制御局への上りデータ通信と収集制御局からノードへの下りデータ通信の一方を割り当てると共に、上記アクティブ期間の後期に対して、上記上りデータ通信と上記下りデータ通信の他方を割り当てることを特徴とする。
【0014】
第2発明に係る無線通信システムは、第1発明において、上記収集制御局は、検出したノードの数に応じて、上記前期と上記後期の時系列的な割合を調整することを特徴とする。
【0015】
第3発明に係る無線通信システムは、第1発明又は第2発明において、上記収集制御局は、自らが上記各ノードに対してブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合には、上記前期に対して上りデータ通信を、上記後期に対して下りデータ通信を割り当てると共に、自らが上記各ノードに対してユニキャストにより下りデータ通信を行う場合よりも上記前期の時系列的な割合を増加させるように調整し、又は上記前期に対して下りデータ通信を、上記後期に対して上りデータ通信を割り当てると共に、自らが上記各ノードに対してユニキャストにより下りデータ通信を行う場合よりも上記後期の時系列的な割合を増加させるように調整することを特徴とする。
【0016】
第4発明に係る無線通信システムは、第1発明又は第2発明において、上記収集制御局は、自らが上記各ノードに対してブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合には、上記前期に対して上りデータ通信を、上記後期に対して下りデータ通信を割り当てると共に、上記下りデータ通信のデータフレームの終点が次の間欠待受周期における前期の始点よりも前になるように調整し、又は上記前期に対して下りデータ通信を、上記後期に対して上りデータ通信を割り当てると共に、上記上りデータ通信のデータフレームの終点が次の間欠待受周期における前期の始点よりも前になるように調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上述した構成からなる本発明によれば、IEEE802.15.4規格のワイヤレスネットワークにおいて期待される通信機能は満足しつつ、電力消費量の低減を図り、低遅延動作を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明を適用した無線通信システムにおいてツリー型のトポロジを採用した例を示す図である。
図2図2は、本発明を適用した無線通信システムにおいてスター型のトポロジを採用した例を示す図である。
図3図3は、データフレームを送受する際にノード毎に設定されるスーパーフレーム構造を示す図である。
図4図4は、アクティブ期間を時系列的に前期と後期に分割する例について説明するための図である。
図5図5は、前期アクティブ期間の時系列的割合を後期アクティブ期間よりも、より増加させるように調整する例を示す図である。
図6図6は、後期アクティブ期間を下りデータ通信のデータフレーム長よりも短くなるように調整する例を示す図である。
図7図7は、従来技術について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した無線通信システムについて図面を参照しながら詳細に説明をする。
【0020】
図1は、本発明を適用した無線通信システム1は、無線ノードとして、収集制御局(Collection Station:以下CSという。)2を根としたノード3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、3-6、3-7とを備え、各ノード3をツリー型に配置したいわゆるツリー型のトポロジが採用されている。この無線通信システム1では、より下位のノード3が、より上位のノード3やCS2に向けて上りデータ通信を行う。また無線通信システム1では、より上位のノード3やCS2が、より下位のノード3に向けて下りデータ通信する。
【0021】
CS2は、最上位のマスターデバイスであり、各ノード3-1~3-7から上りデータ通信により送信されてくるデータフレームを収集する。また、CS2は、この無線通信システム1全体を制御するための中央制御部としての役割も担い、ある特定のノード3に対して制御系のデータフレームを下りデータ通信する。
【0022】
ノード3は、データの発信や中継等を始めとしたデータの送受信を行うことが可能なデバイスの総称であり、例えばIEEE802.15.4の規格に準拠する通信デバイスである。ノード3は、所定のデータをセンシングしてこれを無線により送信するセンサとして具現化されるほか、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、ノート型のパーソナルコンピュータ(PC)等のような無線通信が可能な端末装置として具現化されてもよい。またこのノード3はアクチュエータのような工作機械の制御系を含むものでもよい。かかる場合には、例えばバルブを停止する制御を行ったり、ロボットの制御を行ったり、ガスを停止するための制御を行うことを可能とするデバイスとして具現化される。ノード3が制御系を含むアクチュエータ等として具現化されるものであれば、CS2から他のノード3を介して下りデータ通信されてくる制御用のデータに基づき、各種制御動作を実行していくこととなる。
【0023】
図2は、本発明を適用した無線通信システム1においてスター型のトポロジを採用した例を示している。スター型のトポロジでは、一のCS2と、このCS2との間でデータフレームを直接送受信する複数のノード3―1~3-5とを備えている。CS2とノード3―1~3-5との間には、マスターデバイスとスレーブデバイスの関係が構築されている。
【0024】
本発明を適用した無線通信システム1では、ツリー型のトポロジ、スター型のトポロジの何れを採用するものであってもよい。
【0025】
本発明を適用した無線通信システム1において、データフレームを送受する際にノード3毎に設定されるスーパーフレーム構造を図3に示す。このスーパーフレーム構造では、時分割多元接続(TDMA:Time Division Multiple Access)制御の下で、スーパーフレームが周期的なビーコン信号によって規定される。このビーコン信号の間隔を間欠待受周期という。スーパーフレームには、送受信するデータフレームを待ち受けるアクティブ期間(AP:Active Period)と、スリープ期間(SP:Sleep Period)とが含まれる。
【0026】
ちなみにスーパーフレームの間欠待受周期は、必ずしもビーコン信号によって規定される場合に限定されるものではない。つまり、スーパーフレームにおける間欠待受周期の開始時点、終了時点においてビーコン信号が送受信されることは必須とならない。ビーコン信号の間隔内において、複数のスーパーフレームが含まれる場合もある。また各スーパーフレームの間欠待受周期は、例えばビーコン信号間の最小の間隔となるように設定されていてもよい。かかる場合には、そのビーコン信号間の最小の間隔となるように間欠待受周期が設定されたスーパーフレームが、その後に送受信されるビーコン信号の間隔に依存することなく連続することになる。
【0027】
スーパーフレームの間欠待受周期の長さ、スーパーフレームの開始時点(開始時刻)、終了時点(終了時刻)は、変更自在とされている。このようなスーパーフレームの間欠待受周期の調整は、ビーコン信号の間隔を調整することにより行われるようにしてもよい。
【0028】
アクティブ期間APは、スーパーフレームの開始時点から開始し、所定の時間に亘り送受信するデータフレームを間欠待受周期において待ち受ける。このアクティブ期間APでは、データフレームのヘッダに記述される情報を少なくとも読み取る。アクティブ期間APにより読み取ったデータフレームのヘッダの情報から、データフレーム全体を受信する必要があるか否かの判別を行うことができる。
【0029】
アクティブ期間APは、図3(a)に示すように、送受信するデータフレームより短期間となる場合があり、データフレームの終了時点は、アクティブ期間内に収まる場合に限定されるものではなく、アクティブ期間APを超えた時点になる場合もある。アクティブ期間APは、データフレームのヘッダに記述されている情報のみを読み取ればよいことから、データフレーム長にかかわらずヘッダの情報を読み取り可能な程度まで短縮化されていてもよい。すなわち、アクティブ期間APは、各ノードによるデータフレームのヘッダの部分のみを待受けることができれば、いくらデータフレーム長が長いものであっても、そのアクティブ期間APを短くしてスリープ状態に移行することができる。このため、IEEE802.15.4規格においては、スリープ状態を通常よりも長くすることができることから、消費電力の低減を図ることが可能となる。但し、このアクティブ期間APは、少なくとも送信されてくるデータフレームのヘッダについては着実に受信する必要があるため、スリープ状態に移行することなく常に待受け状態となることが求められる。
【0030】
このアクティブ期間APの長さは、各ノード3においてそれぞれ自在に設定することができる。アクティブ期間APは、最短で0であってもよい。即ち、一のスーパーフレームの開始時点から終了時点までアクティブ期間AP自体が皆無であり、全てスリープ期間SPで構成してもよい。またこのアクティブ期間APは、最長でスーパーフレームの開始時点からスーパーフレームの終了時点まで延長させることが可能となる。即ち、一のスーパーフレームの全てがアクティブ期間APで構成されるものであってもよい。
【0031】
スーパーフレームにおいて、アクティブ期間APの終了時点からスーパーフレームの終了時点までがスリープ期間SPとなる。上述したようにアクティブ期間APの長さは可変自在に構成されていることから、スリープ期間SPもそのアクティブ期間APの長さに応じて可変自在となる。スリープ期間SPにおいて、ノード3は、スリープ状態、即ち電源を落とし、データフレームの送受信やその待受けの動作を行わない期間に移行する。スーパーフレームでは、アクティブ期間APのみならず、このスリープ状態に移行するスリープ期間SPを設けておくことにより、ノード3における電力消費量を低減させることが可能となる。ちなみにスリープ期間SPはアクティブ期間APの終了時点からスーパーフレームの終了時点までとなる。
【0032】
またスーパーフレームにおいて、図3(b)に示すように、データフレームの送受信の時間帯がアクティブ期間APを超える場合で、かつデータフレームの送受信が必要である旨を判断した場合には、実際の通信において当該データフレームの終了時点以降までアクティブ期間APを延長するようにしてもよい。実際の通信において、データフレームの送受信時とアクティブ期間APが時系列的に重なるように制御されることで、常時待受起動状態にあるが、データフレームの送受信終了後は、遅滞なくスリープ期間SPに移行しても特段問題は生じない。
【0033】
本発明を適用した無線通信システム1では、このようなアクティブ期間APとスリープ期間SPとが、ノード3に対してそれぞれ設定される。このとき、各ノード3に割り当てられるアクティブ期間APは、図4に示すように、時系列的に前期と後期に分割されている。以下、前期のアクティブ期間APを前期アクティブ期間AP1といい、後期のアクティブ期間を後期アクティブ期間AP2という。
【0034】
この前期アクティブ期間AP1と後期アクティブ期間AP2は、それぞれ上りデータ通信、下りデータ通信の何れか一方がそれぞれ割り当てられる。即ち、図4(a)に示すように、前期アクティブ期間AP1に対して上りデータ通信が割り当てられる場合には、後期アクティブ期間AP2には下りデータ通信が割り当てられる。図4(b)に示すように、前期アクティブ期間AP1に対して下りデータ通信が割り当てられる場合には、後期アクティブ期間AP2には上りデータ通信が割り当てられる。換言すれば、前期アクティブ期間AP1に、上りデータ通信と下りデータ通信の一方を割り当てると共に、後期アクティブ期間AP2に対して、上りデータ通信と下りデータ通信の他方を割り当てる。
【0035】
これに加えて、前期アクティブ期間AP1と後期アクティブ期間AP2とは互いに時系列的な割合を調整可能に構成されている。即ちアクティブ期間AP全体の時間長が一定であると仮定した場合、この前期アクティブ期間APIの割合を自在に決定することで、残りのアクティブ期間APとなる後期アクティブ期間AP2も自在に決定することができる。なお、本発明においては、前期アクティブ期間AP1と後期アクティブ期間AP2の時系列的な割合の調整は必須ではなく、省略するようにしてもよいことは勿論である。
【0036】
ちなみに、アクティブ期間AP全体も自在に設定することができるため、先ずアクティブ期間APを決定し、その内訳としての前期アクティブ期間AP1と、後期アクティブ期間AP2の互いの時系列的な割合を自在に設定することができる。
【0037】
即ち、本発明を適用した無線通信システム1では、前期アクティブ期間AP1と、後期アクティブ期間AP2に対してそれぞれ上りデータ通信、下りデータ通信の何れかを割り当てることができ、しかもその割り当てられた前期アクティブ期間AP1と、後期アクティブ期間AP2の時系列的な割合を自在に調整することができる。この前期アクティブ期間AP1と、後期アクティブ期間AP2の割り当てと調整は、CS2側にて行う。
【0038】
このとき、前期アクティブ期間AP1と、後期アクティブ期間AP2に対してそれぞれ上りデータ通信、下りデータ通信の割り当てと、時系列的な割合の調整を、検出したノード3の数に応じて実行するようにしてもよい。
【0039】
この割り当てと調整を行う過程で、CS2は、自身に従属するノード3を検知し、及びその数をカウントする。ノード3によっては、移動した結果、CS2に対する無線通信範囲外になるものもあれば、逆に新たにCS2に対する無線通信範囲内に入るものもある。このようにCS2に従属するノード3及びその数は、時系列的に刻々と変化するため、上述した割り当てと調整を行う都度、自身に従属する全てのノード3を検知し、及びその数をカウントする。
【0040】
そして、検出したノードの数に応じて、前期アクティブ期間AP1と、後期アクティブ期間AP2に対してそれぞれ上りデータ通信、下りデータ通信の割り当てと、時系列的な割合の調整を行う。このようなアクティブ期間AP1、AP2の割り当てと調整は、各間欠待受周期毎に行うようにしてもよいし、複数の間欠待受周期単位で一括して行うようにしてもよい。
【0041】
特にCS2からノード3への下りデータ通信は、ブロードキャストにより、一括してデータフレームを配信する場合が多い。ブロードキャストによるデータフレームの配信の場合には、個々のノード3に対してユニキャストで配信する場合と比較して短時間で一括して行うことができる。一方で、ノード3からCS2への上りデータ通信は、ブロードキャストによりデータフレームを送る場合は殆ど無く、個々のノードが単独でデータフレームをCS2へ送信するユニキャストが大部分である。
【0042】
かかる場合において同じ時間帯に複数のノード3がCS2に対して上りデータ通信を開始した場合、一のノード3による上りデータ通信が終了するまで他のノード3は待機する必要がある。その結果、全てのノード3の上りデータ通信が完了するまでに相当の時間を要することになる。特にノード3の数が増加する場合、この上りデータ通信の通信時間と、下りデータ通信の通信時間の格差は大きくなる。
【0043】
このため、図5に示すように、CS2に従属するノード3の数が多くなるにつれて、前期アクティブ期間AP1に対して上りデータ通信を、後期アクティブ期間AP2に対して下りデータ通信を割り当てると共に、前期アクティブ期間AP1の時系列的割合を後期アクティブ期間AP2よりも、より増加させるように調整するようにしてもよい。ここで前期アクティブ期間AP1の時系列的割合を後期アクティブ期間AP2よりも、より増加させるという意味は、以前の前期アクティブ期間AP1の時系列的な割合を増加させるように調整するものであればいかなる形態も含まれる。かかる場合において、前期アクティブ期間AP1の絶対的な長さが後期アクティブ期間AP2のそれよりも長くするということは必須ではなく、逆に前期アクティブ期間AP1の時系列的割合そのものが、後期アクティブ期間AP2よりも短いものであっても、その時系列的な割合が以前よりも増加するものであればよい。勿論、その前期アクティブ期間AP1の時系列的な割合を増加させる結果、前期アクティブ期間AP1の絶対的な長さが後期アクティブ期間AP2のそれよりも長くなることが多くなることは必然的であり、その結果、以下に説明する作用効果を得ることができる。
【0044】
前期アクティブ期間AP1に対して、先ず上りデータ通信を割り当て、その時系列的割合を増加させることで、ユニキャストによるデータフレームの送信が中心となり、各ノード3によるデータフレームの送信が終了するまでに相当の時間を要する上りデータ通信に対してより多くのアクティブ期間APを割り当てることができる。前期アクティブ期間AP1の時系列的な割合が長くなれば、各ノード3からCS2に対して各々行われる上りデータ通信をこの前期アクティブ期間AP1を通じて時系列的カバーすることが可能となる。特にこのノード3の数が増加するにつれて、全てのノード3による上りデータ通信が終了するまでの時間が増加することから、これに応じて前期アクティブ期間AP1の時系列的割合をより増加させることでカバーすることが可能となる。
【0045】
このようにして前期アクティブ期間AP1の時系列的な割合を増加させることにより、後期アクティブ期間AP2の時系列的な割合が減少することになる。しかし、後期アクティブ期間AP2の時系列的な割合が減少したとしても、CS2からノード3への下りデータ通信は、短時間でブロードキャストにより一括してデータフレームを配信する場合が多いことから、後期アクティブ期間AP2内で十分カバーすることができる。しかも、図3(a)に示すように、下りデータ通信のデータフレームの先頭のみが少なくとも後期アクティブ期間AP2に含まれていればよいことから、下りデータ通信が割り当てられる後期アクティブ期間AP2がより短くなっても遅滞なく通信を行うことができる。
【0046】
このとき、CS2は、自らが各ノード3に対してブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合には、前期アクティブ期間AP1に対して上りデータ通信を、後期アクティブ期間AP2に対して下りデータ通信を割り当てると共に、自らが各ノード3に対してユニキャストにより下りデータ通信を行う場合よりも前期の時系列的な割合を増加させるように調整してもよい。かかる場合には、CS2自体がノード3に対して行う下りデータ通信を、ブロードキャストにより行うか、ユニキャストにより行うかを判別する。そして、ブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合には、ユニキャストにより下りデータ通信を行う場合よりも前期アクティブ期間AP1の時系列的な割合を増加させ、後期アクティブ期間AP2の時間的割合を減少させる。ブロードキャストによる下りデータ通信の時間は、ユニキャストの場合と比較して極めて短時間で実現できるため、前期アクティブ期間AP1の時系列的な割合を増加させることで上りデータ通信のためにアクティブ期間APを有効活用させることができる。一方で、ユニキャストにより下りデータ通信を行う場合には、その分通信時間が増加するため、前期アクティブ期間AP1の時系列的な割合を減少させ、後期アクティブ期間AP2の時間的割合を増加させることで対応する。
【0047】
但し、CS2は、自らが各ノード3に対してブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合において上述したように、前期アクティブ期間AP1に対して上りデータ通信を、後期アクティブ期間AP2に対して下りデータ通信を割り当てる場合に限定されるものではない。逆に前期アクティブ期間AP1に対して下りデータ通信を、後期アクティブ期間AP2に対して上りデータ通信を割り当てると共に、CS2自らが各ノード3に対してユニキャストにより下りデータ通信を行う場合よりも後期アクティブ期間AP2の時系列的な割合を増加させるように調整しても上述と同様の効果を得ることができる。
【0048】
なお、上述した実施の形態においては、CS2に従属するノード3の数が多くなるにつれて、前期アクティブ期間AP1に対して上りデータ通信を、後期アクティブ期間AP2に対して下りデータ通信を割り当てることを前提としているが、ノード3の数の大小に限らず、一律に前期アクティブ期間AP1に対して上りデータ通信を、後期アクティブ期間AP2に対して下りデータ通信を割り当てるようにしてもよい。
【0049】
なお、CS2は、全てブロードキャストを通じて下りデータ通信を行う場合に限らず、ユニキャストを通じて下りデータ通信を行う場合もある。このため、CS2自身が下りデータ通信を行う上で、ブロードキャスト又はユニキャストの何れで通信するかが既知である場合には、それに基づいて前期アクティブ期間AP1、後期アクティブ期間AP2への割り当てと調整を行うようにしてもよい。かかる場合には、CS2は、自らが各ノード3に対してブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合には、前期アクティブ期間AP1に対して上りデータ通信を、後期アクティブ期間AP2に対して下りデータ通信を割り当てると共に、前期アクティブ期間AP1の時系列的な割合を後期アクティブ期間AP2よりもより増加させるように調整するようにしてもよい。これにより、CS2は、自らが各ノード3に対してブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合は通信時間が相当短縮されることから、下りデータ通信を後期アクティブ期間AP2に割り当てるとともに、後期アクティブ期間AP2の時系列的割合を減少させる。そして、その後期アクティブ期間AP2を短縮化した分、上りデータ通信が割り当てられる前期アクティブ期間AP1を長くすることが可能となる。
【0050】
このとき、図6に示すように、後期アクティブ期間AP2を下りデータ通信のデータフレーム長よりも短くなるように調整するようにしてもよい。その結果、後期アクティブ期間AP2の終点を下りデータ通信のデータフレームの終点よりも前になるように調整することができる。上述したように、下りデータ通信のデータフレームの先頭のみが少なくとも後期アクティブ期間AP2に含まれていればよいことから、下りデータ通信が割り当てられる後期アクティブ期間AP2がより短くなっても遅滞なく通信を行うことができる。下りデータ通信のデータフレーム長よりも短くなるように調整することで、その分、前期アクティブ期間AP1を長くすることができ、上りデータ通信により多くの時間を割り当てることができる。
【0051】
かかる場合には、言い換えれば、下りデータ通信のデータフレームの終点が、次の間欠待受周期における前期アクティブ期間AP1の始点よりも前になるように調整できていればよい。仮に下りデータ通信のデータフレームの終点が、後期アクティブ期間AP2の終点よりも後になったとしても、次の間欠待受周期における前期アクティブ期間AP1の始点よりも前に位置していればよい。また、ブロードキャストにより下りデータ通信を行う場合において、前期アクティブ期間AP1に対して下りデータ通信を、後期アクティブ期間AP2に対して上りデータ通信を割り当てるようにしてもよい。かかる場合には、後期アクティブ期間AP2の終点を上りデータ通信のデータフレームの終点よりも前になるように調整するようにしてもよい。
【0052】
かかる場合には、言い換えれば、上りデータ通信のデータフレームの終点が、次の間欠待受周期における前期アクティブ期間AP1の始点よりも前になるように調整できていればよい。仮に上りデータ通信のデータフレームの終点が、後期アクティブ期間AP2の終点よりも後になったとしても、次の間欠待受周期における前期アクティブ期間AP1の始点よりも前に位置していればよい。
【0053】
また、CS2は、自らが各ノード3に対してブロードキャストすることなくユニキャストで下りデータ通信を行う場合には、下りデータ通信が割り当てられる前期アクティブ期間AP1、後期アクティブ期間AP2の割合を時系列的により増加させるように調整するようにしてもよい。ユニキャストによる下りデータ通信は、ブロードキャストによる下りデータ通信と比較してその分通信時間が長くなることから、当該下りデータ通信が割り当てられる前期アクティブ期間AP1、後期アクティブ期間AP2の割合を時系列的により増加させることで対応することが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 無線通信システム
2 CS
3 ノード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7