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特開2023-150722印刷装置、その制御方法、およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150722
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】印刷装置、その制御方法、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231005BHJP
   B41J 2/205 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/01 401
B41J2/205
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059960
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 広大
(72)【発明者】
【氏名】三輪 一十三
(72)【発明者】
【氏名】森川 彰太
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB45
2C056EB58
2C056EB59
2C056EC26
2C056EC69
2C056EC76
2C056EC79
2C056ED10
2C056FA10
2C057AL21
2C057AL31
2C057AM28
2C057AN01
(57)【要約】
【課題】 印刷媒体に応じて好適なハーフトーン処理により印刷することができる印刷装置、その制御方法、およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】 印刷装置1が備える制御装置30は、ハーフトーン処理(S4)と、印刷処理(S5)と、を実行し、更に、印刷処理(S5)を実行する前に、画像が印刷される印刷媒体Aの種類を示す媒体情報を取得する取得処理(S2)と、媒体情報に基づいて、ハーフトーン処理に関する複数種類の変換方法のうち、1つの変換方法を、ハーフトーン処理で使用する第1変換方法に決定する決定処理(S3)と、を実行する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに基づいてインクを吐出して複数種類の印刷媒体に画像を印刷するヘッドと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記画像データを前記ヘッドからインクを吐出させるためのデータに所定の変換方法により変換するハーフトーン処理と、
前記ハーフトーン処理が実行されたデータに基づき前記ヘッドからインクを吐出させる印刷処理と、を実行し、
更に、前記印刷処理を実行する前に、
前記画像が印刷される前記印刷媒体の種類を示す媒体情報を取得する取得処理と、
前記媒体情報に基づいて、前記ハーフトーン処理に関する複数種類の変換方法のうち、1つの変換方法を、前記ハーフトーン処理で使用する第1変換方法に決定する決定処理と、を実行する、
印刷装置。
【請求項2】
前記印刷媒体の種類と前記ハーフトーン処理の変換方法の種類とが対応付けられた対応情報が記憶された記憶装置を更に備え、
前記決定処理は、
前記媒体情報と前記対応情報とに基づいて前記第1変換方法を決定する第1決定処理を含む、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
情報を外部に出力する出力装置と、
外部からの情報の入力を受け付ける入力装置と、を更に備え、
前記決定処理は、
前記媒体情報に基づいて前記変換方法の1又は複数の種類に関する情報を前記出力装置により外部に出力する出力処理と、
出力された1又は複数の種類のうち、1つの種類の指定を前記入力装置によって受け付ける第1受付処理と、
指定された1つの種類の変換方法を前記第1変換方法に決定する第2決定処理と、を含む、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
アラームを外部に出力する出力装置と、
外部からの情報の入力を受け付ける入力装置と、を更に備え、
前記制御装置は、
複数種類の変換方法のうち1つの種類の指定を前記入力装置によって受け付ける第2受付処理と、
指定された変換方法の種類が、前記第1変換方法とは相違する場合に、前記出力装置によりアラームを外部へ出力するアラーム処理と、を実行する、
請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記ハーフトーン処理の変換方法には、2値を用いたディザ法である第1方法、2値を用いた誤差拡散法である第2方法、4値を用いたディザ法である第3方法、および、4値を用いた誤差拡散法である第4方法が含まれる、
請求項1~4の何れかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記決定処理において、前記印刷媒体が第1媒体である場合には、前記第1方法または前記第2方法を他の方法よりも優先して前記第1変換方法に決定する、
請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記決定処理において、前記印刷媒体が第2媒体である場合には、前記第3方法を他の方法よりも優先して前記第1変換方法に決定する、
請求項5または6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御装置は、前記決定処理において、前記印刷媒体が第3媒体である場合には、前記第4方法を他の方法よりも優先して前記第1変換方法に決定する、
請求項5~7の何れかに記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記画像データに基づいて、取得した前記媒体情報が示す種類の前記印刷媒体に対して前記画像を印刷した場合の評価を定量化した画像評価値を、前記ハーフトーン処理の変換方法の種類毎に算出する第1画像評価処理を実行する、
請求項1~8の何れかに記載の印刷装置。
【請求項10】
前記画像評価値に関する閾値が記憶された記憶装置を更に備え、
前記決定処理は、
前記記憶装置に記憶された前記閾値と前記画像評価値とに基づき前記第1変換方法を決定する第3決定処理を含む、
請求項9に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記記憶装置には、複数の色値について前記色値に対応するインクを吐出して前記印刷媒体に形成されるパッチ画像に関する評価を示す色別評価値が、前記印刷媒体の種類毎および前記ハーフトーン処理の変換方法の種類毎に、更に記憶されており、
前記制御装置は、
印刷する前記画像に含まれる画素色に関する前記色別評価値に基づき、前記画像評価値を、前記ハーフトーン処理の変換方法の種類毎に取得する第2画像評価処理を実行する、
請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記ヘッドを支持し、移動方向に移動するキャリッジを備え、
前記ヘッドは、前記インクを吐出させるための複数のノズルから構成されて前記移動方向と交差する方向に延びるノズル列を有し、
前記制御装置は、
前記画像データに基づいて、印刷する前記画像を前記ノズル列の長さ以下の複数の領域に分割する分割処理と、
前記領域に含まれる画素色に関する前記色別評価値に基づいて前記領域に関する評価を示す領域別評価値を、前記領域毎かつ前記ハーフトーン処理の変換方法の種類毎に定める領域別評価処理と、
前記画像データに含まれる全ての前記領域についての前記領域別評価値に基づいて前記画像評価値を取得する第3画像評価処理と、を実行する
請求項11に記載の印刷装置。
【請求項13】
前記制御装置は、
全ての前記領域についての前記領域別評価値のうち最大値または最小値を、前記画像評価値に決定する、
請求項12に記載の印刷装置。
【請求項14】
前記制御装置は、
前記画像評価値が所定の閾値以下であるハーフトーン処理の変換方法の種類が複数ある場合は、複数種類の前記変換方法のうち、前記画像評価値が最大値となるもの、または、前記画像評価値が最小値となるもの、を更に選択する、
請求項9~13の何れかに記載の印刷装置。
【請求項15】
前記評価は、前記ハーフトーン処理の実行により前記印刷媒体上に着弾したインクを見たときに粒状に見える見えやすさ、である、
請求項9~14の何れかに記載の印刷装置。
【請求項16】
画像データに基づいてインクを吐出して複数種類の印刷媒体に画像を印刷するヘッドを備える印刷装置の制御方法であって、
前記画像データを前記ヘッドからインクを吐出させるためのデータに所定の変換方法により変換するハーフトーン処理と、
前記ハーフトーン処理が実行されたデータに基づき前記ヘッドからインクを吐出させる印刷処理と、を含み、
更に、前記印刷処理の前に実行される、
前記画像が印刷される前記印刷媒体の種類を示す媒体情報を取得する取得処理と、
前記媒体情報に基づいて、前記ハーフトーン処理に関する複数種類の変換方法のうち、1つの変換方法を、前記ハーフトーン処理で使用する第1変換方法に決定する決定処理と、を含む、
印刷装置の制御方法。
【請求項17】
画像データに基づいてインクを吐出して複数種類の印刷媒体に画像を印刷するヘッドと、コンピュータと、を備える印刷装置における前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記がぞうデータを前記ヘッドからインクを吐出させるためのデータに所定の変換方法により変換するハーフトーン処理と、
前記ハーフトーン処理が実行されたデータに基づき前記ヘッドからインクを吐出させる印刷処理と、を実行させ、
更に、前記印刷処理を実行させる前に、
前記画像が印刷される前記印刷媒体の種類を示す媒体情報を取得させる取得処理と、
前記媒体情報に基づいて、前記ハーフトーン処理に関する複数種類の変換方法のうち、1つの変換方法を、前記ハーフトーン処理で使用する第1変換方法に決定する決定処理と、を実行させる、
コンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ等の印刷装置、その制御方法、およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々の種類の印刷媒体に対してインクを吐出して画像を形成する印刷装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の印刷装置は、印刷中に所定の給紙口から供給していた用紙について用紙切れが生じた場合に、用紙種別に応じて、別の給紙口から代替の用紙を供給して印刷する構成となっている。ここで、用紙種別とは、用紙の紙質の種別であって、普通紙、厚紙、再生紙、レターヘッド、色つき用紙、印刷済み用紙、高発色用紙等が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-83290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、印刷媒体が異なると、その表面形状や材質も異なるため、印刷媒体上に着弾した後のインクの形態も異なってくる。例えば、インクが滲みやすい印刷媒体に比べて滲みにくい印刷媒体では、着弾したインクの粒状感が目立ちやすい。また、複数のインク滴の着弾密度を制御することで画像の濃淡を多諧調で表現するハーフトーン処理として複数の方法が知られているが、印刷された画像における粒状感の目立ちやすさや周期的な模様の発生しやすさが、採用した方法により異なる。
【0005】
そこで本開示は、印刷媒体に応じて好適なハーフトーン処理により印刷することができる印刷装置、その制御方法、およびコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る印刷装置は、画像データに基づいてインクを吐出して複数種類の印刷媒体に画像を印刷するヘッドと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記画像データを前記ヘッドからインクを吐出させるためのデータに所定の変換方法により変換するハーフトーン処理と、前記ハーフトーン処理が実行されたデータに基づき前記ヘッドからインクを吐出させる印刷処理と、を実行し、更に、前記印刷処理を実行する前に、前記画像が印刷される前記印刷媒体の種類を示す媒体情報を取得する取得処理と、前記媒体情報に基づいて、前記ハーフトーン処理に関する複数種類の変換方法のうち、1つの変換方法を、前記ハーフトーン処理で使用する第1変換方法に決定する決定処理と、を実行する。
【0007】
本開示に係る印刷装置の制御方法は、画像データに基づいてインクを吐出して複数種類の印刷媒体に画像を印刷するヘッドを備える印刷装置の制御方法であって、前記画像データを前記ヘッドからインクを吐出させるためのデータに所定の変換方法により変換するハーフトーン処理と、前記ハーフトーン処理が実行されたデータに基づき前記ヘッドからインクを吐出させる印刷処理と、を含み、更に、前記印刷処理の前に実行される、前記画像が印刷される前記印刷媒体の種類を示す媒体情報を取得する取得処理と、前記媒体情報に基づいて、前記ハーフトーン処理に関する複数種類の変換方法のうち、1つの変換方法を、前記ハーフトーン処理で使用する第1変換方法に決定する決定処理と、を含む。
【0008】
本開示のコンピュータプログラムは、画像データに基づいてインクを吐出して複数種類の印刷媒体に画像を印刷するヘッドと、コンピュータと、を備える印刷装置における前記コンピュータに実行させるコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、前記がぞうデータを前記ヘッドからインクを吐出させるためのデータに所定の変換方法により変換するハーフトーン処理と、前記ハーフトーン処理が実行されたデータに基づき前記ヘッドからインクを吐出させる印刷処理と、を実行させ、更に、前記印刷処理を実行させる前に、前記画像が印刷される前記印刷媒体の種類を示す媒体情報を取得させる取得処理と、前記媒体情報に基づいて、前記ハーフトーン処理に関する複数種類の変換方法のうち、1つの変換方法を、前記ハーフトーン処理で使用する第1変換方法に決定する決定処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、印刷媒体に応じて好適なハーフトーン処理により印刷することができる印刷装置、その制御方法、およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示に係る印刷装置の模式図である。
図2図2は、印刷装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3図3は、制御装置が実行するハーフトーン処理に関する決定処理の第1例を含む一連の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、記憶装置に記憶されている対応情報の一例を示す図表である。
図5図5は、制御部が、媒体情報に基づいて第1変換方法を決定するときの動作を示すフローチャートである。
図6図6は、制御装置が実行するハーフトーン処理に関する決定処理の第2例を含む一連の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、制御装置が実行するハーフトーン処理に関する決定処理の第3例を含む一連の動作を示すフローチャートである。
図8図8は、制御装置により実行される変形例に係る第1変換方法の決定処理を示すフローチャートである。
図9図9は、図8の第1画像評価処理の具体例を示すフローチャートである。
図10図10は、色別評価LUTを記憶装置に記憶する処理を示すフローチャートである。
図11図11は、色別評価LUTの一例を示す図表である。
図12図12は、図9の第2画像評価処理の具体例を示すフローチャートである。
図13図13は、第2画像評価処理の具体例を説明するための模式図である。
図14図14は、第2画像評価処理の具体例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施の形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下では、全ての図面を通じて同一又は対応する要素には同一の参照符号を付することとし、重複した説明を省略する。
【0012】
<印刷装置の構成>
図1は本開示に係る印刷装置1の模式図である。印刷装置1は、画像データに基づいてヘッド10から吐出したインクにより印刷媒体A上に画像を印刷する。このような印刷装置1として、以下ではインクジェットプリンタを適用した例について説明する。
【0013】
印刷装置1は、シリアルヘッド方式であって、ヘッド10が移動しつつ複数色のインクを吐出して画像を形成する工程と印刷媒体Aを搬送する工程とが交互に行われる。なお、以下では印刷媒体Aの搬送方向を前後方向と称する。そして、この前後方向に直交する2つの方向のうちヘッド10が移動する移動方向を左右方向、残り1つの方向を上下方向と称する。ただし、印刷装置1の配置方向はこれに限定されない。
【0014】
印刷装置1が備えるヘッド10は、印刷装置1の筐体1A内に収容されており、インクを吐出させるために下方へ開口した複数のノズル11が前後方向に並んで構成されたノズル列12を有している。本開示の印刷装置1はノズル列12を複数有しており、例えばインクの色ごとに少なくとも1列のノズル列12がヘッド10には形成されている。ヘッド10には、ノズル11ごとに駆動素子13(図2参照)が設けられている。駆動素子13は、圧電素子、発熱素子、あるいは、静電式アクチュエータ等であって、駆動することにより対応するノズル11からインクを吐出する圧力をヘッド10内のインクに付与する。
【0015】
印刷装置1は、ヘッド10に対向して配置されたプラテン14を備えている。プラテン14はヘッド10の下方に所定距離を隔てて位置しており、平坦な上面により印刷媒体Aを下方から支持する。
【0016】
印刷装置1は、プラテン14上の印刷媒体Aを搬送する搬送装置15を備えている。搬送装置15は、例えば2本の搬送ローラ16および搬送モータ17(図2参照)を有している。2本の搬送ローラ16は、プラテン14を間に挟むようにして前後に離れて配置され、搬送モータ17の回転軸と減速機を介して接続されている。従って、搬送モータ17が駆動すると2本の搬送ローラ16はその軸心を中心にして回転し、プラテン14上の印刷媒体Aを前後方向へ搬送する。
【0017】
印刷装置1は、ヘッド10を左右方向へ移動させる走査装置18を備えている。走査装置18は、キャリッジ19、2本のガイドレール20、無端ベルト21、および、走査モータ22(図2参照)を有している。キャリッジ19は、ヘッド10を支持する筐体である。2本のガイドレール20は、プラテン14上を横切るように左右に延び、かつ、ヘッド10を間に挟むようにして前後に離れて配置されている。この2本のガイドレール20により、キャリッジ19は左右方向へ移動可能に支持されている。
【0018】
無端ベルト21は、一方のガイドレール20の左右両端近傍に設けられた2つのプーリー23に巻回して設けられ、かつ、所定箇所にてキャリッジ19と接続されている。走査モータ22は、左右いずれか一方のプーリー23に減速機を介して回転軸が接続されている。従って、この走査装置18は、走査モータ22が回転駆動すると、無端ベルト21が走行し、ヘッド10を支持するキャリッジ19がガイドレール20に沿って左右方向へ移動する。
【0019】
印刷装置1は、ヘッド10に供給する各色のインクを貯留する複数のタンク24を備えている。これらのタンク24は、筐体1Aに設けられた開閉可能なカバー(図示せず)を開けて筐体1A内に収容される。また、本開示の印刷装置1では、例えばシアン、イエロー、マゼンダ、およびブラックの4色のインクを使用しており、これに応じて4つのタンク24を備えている。また、各タンク24には可撓性のチューブ25の一端が接続され、他端はヘッド10のインク供給口に接続されており、各タンク24からのインクはチューブ25を通じてヘッド10へ送られる。
【0020】
図2は、印刷装置1の機能的構成を示すブロック図である。図2に示すように印刷装置1は、制御装置30、並びに、この制御装置30に接続された記憶装置31、インターフェース32、ヘッド駆動回路33、搬送駆動回路34、走査駆動回路35、出力装置36、入力装置37、およびカメラ38を備えている。
【0021】
制御装置30は、例えばコンピュータであって、MPUのようなプロセッサ、または、ASICのような集積回路などの回路を含む。記憶装置31は、制御装置30からアクセス可能なメモリであって、例えばRAMおよびROMを有している。このうちRAMには画像データ、および、制御装置30の演算時の各種データを一時的に記憶する。ROMは、各種のデータ処理を行うためのコンピュータプログラムおよびデータを記憶する。従って、制御装置30は、記憶装置31に記憶されたデータを参照しつつ、コンピュータプログラムを実行することで、印刷装置1の各部の動作を制御する。
【0022】
インターフェース32は、制御装置30を、印刷装置1の外部機器に対して接続する接続装置である。外部機器としては、他のコンピュータ、通信ネットワーク、記録媒体、ディスプレイ、および他の印刷装置などが挙げられる。印刷装置1は、このインターフェース32を介して、外部機器である例えばコンピュータから、画像データおよび印刷設定情報を取得する。この画像データとしては、印刷媒体Aに印刷される画像を示すラスタデータなどが例示される。
【0023】
ヘッド駆動回路33は、ヘッド10が有する各駆動素子13と電気的に接続され、各駆動素子13の動作を制御する。すなわち、制御装置30は、駆動素子13を駆動する制御信号をヘッド駆動回路33へ出力し、ヘッド駆動回路33は入力された制御信号に基づいて駆動信号を生成し、この駆動信号を各駆動素子13へ出力する。その結果、各駆動素子13は対応する駆動信号に基づいて駆動し、所定のタイミングで所定の吐出圧力をヘッド10内のインクに付与するよう動作する。従って、各ノズル11から吐出されるインクは、その吐出タイミング、および、吐出されるインクの大きさ(インク滴の容量)が制御可能である。
【0024】
搬送駆動回路34は、搬送装置15が有する搬送モータ17と電気的に接続されており、搬送モータ17は、搬送駆動回路34を介して制御装置30によりその動作が制御される。これにより搬送装置15は、プラテン14上の印刷媒体Aを前後方向へ間欠的または連続的に搬送できると共に、プラテン14上の所定位置に停止させて保持することができる。
【0025】
走査駆動回路35は、走査装置18が有する走査モータ22と電気的に接続されており、走査モータ22は、走査駆動回路35を介して制御装置30によりその動作が制御される。これにより走査装置18は、ヘッド10を支持するキャリッジ19を左右方向へ異なる速度で移動させることができると共に、その可動範囲内の任意の位置にキャリッジ19を停止させることができる。
【0026】
出力装置36は、例えばディスプレイおよびスピーカなど、アラームを含む各種の情報を外部へ出力する機器である。ディスプレイでは画像や文字などを表示してユーザに情報を出力でき、スピーカでは音声を発することでユーザに情報を出力することができる。入力装置37は、例えばタッチパネルや物理スイッチなど、外部からの情報の入力を受け付ける機器であり、印刷装置1の筐体1Aの上面または前面など、ユーザが操作可能な位置に設けられている。そして、ユーザによる操作を受け付けて、受け付けた操作情報を制御装置30へ出力する。カメラ38は、例えば複数のフォトダイオードを有するCMOSセンサーなどであり、筐体1A内にてプラテン14に上方から対向する位置に設けられている。そして、プラテン14上に支持された印刷媒体Aの表面を撮影し、撮影された画像は制御装置30へ出力される。
【0027】
<印刷動作>
このような印刷装置1は、制御装置30がインターフェース32を介して画像データを取得し、この画像データに基づいてハーフトーン処理および印刷処理などを実行する。このうちハーフトーン処理は、画像データを、ヘッド10からインクを吐出させるための印刷用データに変換する処理であり、特に、所定の容量のインク滴でグラデーションなどの濃淡画像を表現するようデータを変換する処理である。具体的に、ハーフトーン処理は、画像データに使用される色をシアン、イエロー、マゼンダ、およびブラックの4色に階調を減らし、また、画像データに基づき印刷される画像をドット無し、小ドット、中ドット、大ドットの4つの階調に変換する処理である。制御装置30は、ハーフトーン処理にて複数の変換方法を実行でき、例えば、2値を用いたディザ法(第1方法)、2値を用いた誤差拡散法(第2方法)、4値を用いたディザ法(第3方法)、および、4値を用いた誤差拡散法(第4方法)を実行できる。
【0028】
各方法は公知であるため、ここでは簡単にだけ説明する。2値を用いたディザ法(第1方法)とは、画像データが示す画像を小さいブロックに分割し、各ブロックの濃淡値を予め設定された1つの閾値と比較して2値化し、2値のうち一方にはインク吐出を割り当て、他方にはインク不吐出を割り当てる、データの変換方法である。例えば、2値の場合、インク吐出に割り当てられるのは大容量のインク吐出である。これに対して、4値を用いたディザ法(第3方法)は、閾値を3つ設定しておき、ブロックの濃淡値をこれらの閾値と比較することで4値化し、4値のそれぞれに対して大容量のインク吐出、中容量のインク吐出、小容量のインク吐出、および、インク不吐出を割り当てる、データの変換方法である。
【0029】
2値を用いた誤差拡散法(第2方法)は、2値を用いたディザ法と似ているが、ある1のブロックの元の濃淡値と、そのブロックのデータ変換後の濃淡値との誤差を、隣接するブロックの元の濃淡値に加算してから、当該隣接するブロックのデータ変換を行う点で異なる。また、4値を用いた誤差拡散法(第4方法)は、2値を用いた誤差拡散法と比べて閾値が3つ設定されていることで、各ブロックが4値化されるものである。
【0030】
このようなハーフトーン処理の変換方法である第1~第4方法は、以下のような特徴を有する。例えば、データを各方法によって変換して印刷用データを作成するのに要する時間は、第1方法が最も短く、第2方法、第3方法、第4方法の順に長くなる。作成される印刷データのサイズは、第1方法および第2方法がほぼ同等であって比較的小さく、第3方法および第4方法もほぼ同等であるが第1方法および第2方法よりも大きい。変換後の印刷用データを用いて印刷された画像から濃淡等の周期性が感じられる程度(周期感)は、第1方法が最も大きく、第2方法および第3方法はほぼ同等で、第4方法が最も小さくなる。印刷用データに基づく画像から粒状性が感じられる程度、換言すれば、ハーフトーン処理の実行により印刷媒体A上に着弾したインクを見たときに粒状に見える見えやすさ(粒状感)は、第1方法および第2方法がほぼ同等であって比較的大きく、第3方法および第4方法もほぼ同等であって第1方法および第2方法よりも小さい。
【0031】
制御装置30は、上記のような何れかの変換方法によりハーフトーン処理を行って作成された印刷用データにより、印刷処理を行う。例えば、制御装置30は、搬送装置15により印刷媒体Aを搬送してプラテン14上の所定位置に停止させ、次に、走査装置18によりヘッド10を左右方向へ移動させながら、ヘッド10のノズル11からインクを吐出させて印刷媒体A上に着弾させる。印刷装置1は、このような印刷媒体Aの搬送およびインクの吐出を交互に繰り返すことで、印刷媒体Aに画像データに対応する画像を印刷する。
【0032】
なお、印刷装置1が印刷可能な印刷媒体Aの種類は複数あり、例えば、布(第1媒体)、光沢紙以外の紙(非光沢紙:第2媒体)、並びに、光沢紙および樹脂フィルム(第3媒体)などである。これらも周期性および粒状感に関して以下のような特徴(性状)を有する。すなわち、周期性および粒状感の何れについても、第1媒体が最も目立ちにくく、第2媒体、第3媒体の順に目立ちやすくなる。
【0033】
<制御装置の動作>
本開示に係る印刷装置1は、ハーフトーン処理を実行するにあたり、印刷媒体Aの種類に応じた変換方法の決定を行う。すなわち、ハーフトーン処理にて実行可能なデータの変換方法は上述したように複数種類あり、種類に応じた特徴を有する。また、印刷媒体Aの種類も上述したように複数種類あり、種類に応じた特徴を有する。そこで印刷装置1は、印刷画像に対する要求に応じて、使用される印刷媒体Aの種類に応じたハーフトーン処理の変換方法(第1変換方法)を決定する「決定処理」を実行する。以下、この決定処理に関する制御装置1の動作について説明する。
【0034】
<決定処理の第1例>
図3は、制御装置30が実行するハーフトーン処理に関する決定処理の一例(第1例)を含む一連の動作を示すフローチャートである。制御装置30は、印刷ジョブを受信すると本フローチャートに沿って各処理を実行する。図3に示すように、制御装置30は、画像データを取得する処理を実行する(ステップS1)。具体的には、例えばコンピュータ等の外部機器からインターフェース32を介して画像データが入力され、これを取得する。また、制御装置30は、媒体情報を取得する処理(取得処理)を実行する(ステップS2)。
【0035】
ここで、媒体情報とは、画像が印刷される印刷媒体Aの種類を示す情報であり、本開示では上述したような第1~第3媒体の3種類を含む。なお、媒体情報の取得は、プラテン14に支持された印刷媒体Aをカメラ38で撮影した画像に基づいて取得してもよい。あるいは、制御装置30が、ステップS1において画像データと共に、印刷解像度や媒体情報などを含む印刷設定情報もインターフェース32を介して取得する場合には、この印刷設定情報から媒体情報を取得してもよい。具体的には、印刷ジョブは、ヘッダー情報と画像データとから構成され、制御装置30が、インターフェース32を介して印刷ジョブを取得する。制御装置30がヘッダー情報からさらに印刷設定情報を取得する。さらに、外部機器から入力されて取得してもよいし、ユーザによる入力装置37への入力内容に基づいて取得してもよい。
【0036】
次に、媒体情報に基づき、ハーフトーン処理で用いる変換方法を決定する決定処理を実行する(ステップS3)。すなわち、この決定処理では、ハーフトーン処理に関する複数種類の変換方法(上述した第1~第4方法を含む)のうち、1つの変換方法を、媒体情報に基づいて、ハーフトーン処理で使用する第1変換方法に決定する。
【0037】
次に制御装置30は、この決定処理で決定された第1変換方法によるハーフトーン処理を実行する(ステップS4)。すなわち、第1変換方法でのハーフトーン処理により、画像データを変換して印刷用データを作成する。そして制御装置30は、この印刷用データを用いてヘッド10のノズル11からインクを吐出して印刷媒体Aに画像を形成する印刷処理を実行する(ステップS5)。
【0038】
これにより、使用する印刷媒体Aの種類に適した種類の変換方法を用いたハーフトーン処理を実行することができる。
【0039】
ところで、上述したステップS3の決定処理の具体例(第1例)として次のような態様が例示できる。本開示の記憶装置31に、印刷媒体Aの種類とハーフトーン処理の変換方法の種類とが対応付けられた対応情報(例えば、テーブル情報)を記憶させておく。そして、決定処理では、ステップS2で取得した媒体情報と記憶装置31に記憶されている対応情報とに基づいて第1変換方法を決定する第1決定処理(ステップS3-01)を実行することとしてもよい。
【0040】
図4は、記憶装置31に記憶されている対応情報の一例を示す図表である。図4に示すように、この対応情報は、印刷媒体Aの種類に関する第1~第3媒体と、ハーフトーン処理の変換方法の種類に関する第1~第4方法との対応関係を示している。また、この対応情報は、人間の視認可能な範囲での粒状感を抑制する観点(粒状感抑制の観点)、および、その範囲を超えた過剰な粒状感の抑制はデータ変換時間の長期化やデータサイズの増大を招来することからこれを回避する観点(過剰スペック回避の観点)、の2観点から作成されている。
【0041】
具体的には、第1媒体については、第1方法および第2方法が対応し(適当であり)、第3方法および第4方法は過剰スペックである、と規定されている。第2媒体については、第1方法および第2方法は粒状感が残存するため非対応(不適)であり、第3方法が対応し(適当であり)、第4方法は過剰スペックである、と規定されている。第3媒体については、第1~第3方法は非対応(不適)であり、第4方法が対応する(適当である)、と規定されている。
【0042】
第1決定処理(ステップS3-01)では、制御装置30が媒体情報と対応情報に基づいて第1変換方法を決定する。すなわち、ステップS2で取得した媒体情報が、第1~第3媒体の何れであったかを判定し、判定した種類の媒体に対応する変換方法を第1変換方法に決定する。なお、図4の例では1の媒体の種類に対して複数種類の変換方法が対応する場合があるが、その場合は変換方法の種類ごとの他の特徴も考慮して、1の種類の変換方法を決定すればよい。例えば、図4では第1媒体に対して第1方法および第2方法が対応するが、印刷画像において周期感の抑制が要望される印刷の場合には、より周期感を抑制できる第2方法を第1変換方法に決定することができる。
【0043】
上述した対応情報に基づいて第1変換方法を決定するのに替えて、次のようなフローチャートに従って第1変換方法を決定することとしてもよい。図5は、制御装置30が、媒体情報に基づいて第1変換方法を決定するときの動作を示すフローチャートである。図5に示すように、制御装置30は、取得した媒体情報に基づいて、印刷媒体Aは第1媒体であるか否かを判断する(ステップS21)。そして、第1媒体であると判断した場合(S21:YES)は第1方法または第2方法を他の方法よりも優先して第1変換方法に決定する(S22)。例えば、制御装置30は、ハーフトーン処理の変換方法の種類に関する第1~第4方法のうち第2方法を選択するためのフラグを記憶装置31に記憶させる。
【0044】
また、制御装置30は、ステップS21で第1媒体でないと判断した場合(S21:NO)は次に印刷媒体Aは第2媒体であるか否かを判断する(ステップS23)。そして、第2媒体であると判断した場合(S23:YES)は第3方法を他の方法よりも優先して第1変換方法に決定する(ステップS24)。例えば、制御装置30は、ハーフトーン処理の変換方法の種類に関する第1~第4方法のうち第3方法を選択するためのフラグを記憶装置31に記憶させる。一方、制御装置30は、ステップS23で第2媒体でないと判断した場合(S23:NO)、つまり、第3媒体である場合は、第4方法を他の方法よりも優先して第1変換方法に決定する(ステップS25)。例えば、制御装置30は、ハーフトーン処理の変換方法の種類に関する第1~第4方法のうち第4方法を選択するためのフラグを記憶装置31に記憶させる。
【0045】
なお、図5の例でもステップS22のように、1の媒体の種類に対して複数種類の変換方法が対応する場合があるが、その場合は図4の場合と同様に、変換方法の種類ごとの他の特徴(例えば、周期感)も考慮して、1の種類の変換方法を決定すればよい。
【0046】
<決定処理の第2例>
図6は、制御装置30が実行するハーフトーン処理に関する決定処理の他の一例(第2例)を含む一連の動作を示すフローチャートである。制御装置30は、印刷ジョブを受信すると本フローチャートに沿って各処理を実行する。図6に示す動作では、図3と同様の画像データの取得(S1)、媒体状態の取得(S2)、ハーフトーン処理(S4)、および印刷処理(S5)を実行する。一方で、決定処理(S3)では、図3の第1決定処理(S3-01)とは異なる動作を実行する。従って、ここでは決定処理(S3)について詳述する。
【0047】
第2例に係る決定処理(S3)では、ステップS2で取得した媒体情報に基づいて、制御装置30が、ハーフトーン処理の変換方法の候補である1又は複数の種類に関する情報(候補情報)を、出力装置36により外部に出力する出力処理を実行する(S3-11)。この出力処理にて外部出力される候補情報は、複数種類の変換方法の中から制御装置30により選択された変換方法の種類であり、その選択方法は、例えば図4または図5を参照して説明した方法を採用することができる。
【0048】
次に制御装置30は、出力処理(S3-11)にて出力された1又は複数の種類のうち、1つの種類の指定を、入力装置37によって受け付ける第1受付処理を実行する(ステップS3-12)。すなわち、出力された候補情報を参照して、ユーザがタッチパネル等の入力装置37を操作して、1つの種類を指定することにより、制御装置30は指定された1つの種類を受け付ける。そして制御装置30は、第1受付処理(S3-12)にて受け付けた1つの種類の変換方法を、第1変換方法に決定する第2決定処理を実行する(ステップS3-13)。その後、決定された第1変換方法を用いてハーフトーン処理(S4)および印刷処理(S5)が順次実行される。
【0049】
このような第2例に係る決定処理によれば、例えば粒状感抑制の観点や過剰スペック回避の観点から制御装置30にて変換方法の種類を絞り込み、ユーザは絞り込まれた種類を参照しつつ、印刷で使用するハーフトーン処理の変換方法を決定することができる。従って、複数の変換方法の中からユーザが1つの変換方法を決定するにあたって、事前に制御装置30により候補が絞り込まれるため、ユーザが最終決定しやすくなる。
【0050】
<決定処理の第3例>
図7は、制御装置30が実行するハーフトーン処理に関する決定処理の更に他の一例(第3例)を含む一連の動作を示すフローチャートである。制御装置30は、印刷ジョブを受信すると本フローチャートに沿って各処理を実行する。図7に示す動作では、図3と同様の画像データの取得(S1)、媒体状態の取得(S2)、ハーフトーン処理(S4)、および印刷処理(S5)を実行する。一方で、決定処理(S3)では、図3の第1決定処理(S3-01)とは異なる動作を実行する。従って、ここでは決定処理(S3)について詳述する。
【0051】
第3例に係る決定処理(S3)では、ステップS2で取得した媒体情報に基づいて、制御装置30が、ハーフトーン処理の変換方法の1つを暫定的に第1変換方法に決定する暫定処理を実行する(ステップS3-21)。この暫定処理での第1変換方法の決定方法は、例えば図4または図5を参照して説明した方法を採用することができる。また、この暫定処理で決定された第1変換方法の種類に関する情報は、印刷装置1が記憶装置31などで内部的に一時記憶していればよく、出力装置36などで外部出力する必要はない。
【0052】
次に制御装置30は、複数種類の変換方法のうち1つの種類の指定を、入力装置37によって受け付ける第2受付処理を実行する(ステップS3-22)。すなわち、ステップS3-21で暫定的に決定された変換方法の種類とは無関係に、例えば印刷装置1がハーフトーン処理にて実行可能な全種類の変換方法の中から、ユーザによる1つの種類の指定を受け付ける。
【0053】
次に制御装置30は、ステップS3-21で暫定的に決定した第1変換方法と、ステップS3-22で受け付けたユーザ指定の変換方法とが、互いの種類が相違するか否かを判断する判断処理を実行する(ステップS3-23)。その結果、相違すると判断した場合(S3-23:YES)はアラーム処理を実行してユーザに通知する(ステップS3-24)。例えば、出力装置36により、ユーザ指定の変換方法が、制御装置30で事前に決定した第1変換方法と相違することを意味するアラームを、文字、光、または音声などによって出力する。
【0054】
その後、制御装置30は第1変換方法について最終的に決定する最終決定処理を実行する(ステップS3-25)。例えば、アラームを確認したユーザによる変換方法の再指定を受け付け、この再指定された変換方法を第1変換方法に決定(更新)する。例えば、制御装置30は、再指定された変換方法を記憶装置31に記憶させる。一方、ステップS3-23において、相違しないと判断した場合(S3-23:NO)は、ステップS3-25において、ユーザ指定の変換方法(つまり、暫定的に決定された第1変換方法と同じ)を、最終的な第1変換方法として決定する。例えば、制御装置30は、暫定的に決定された変換方法を記憶装置31に記憶させる。その後、決定された第1変換方法を用いてハーフトーン処理(S4)および印刷処理(S5)が順次実行される。
【0055】
なお、ステップS3-25でユーザの再指定を受け付ける場合について付言する、再指定された変換方法がステップS3-21で暫定的に決定された第1変換方法と相違する場合には、再びアラーム処理(S3-24)を実行してもよい。あるいは、再指定を受け付けた場合は、再指定された変換方法がステップS3-21で暫定的に決定された第1変換方法と相違するか否かにかかわらず、再指定された変換方法を第1変換方法として最終決定することとしてもよい。
【0056】
このような第3例に係る決定処理によれば、ハーフトーン処理の変換方法の種類に関するユーザの指定を受け付けつつ、指定された種類が、例えば粒状感抑制の観点や過剰スペック回避の観点から好ましくない場合などにはアラームを発してユーザに通知することができる。従って、ユーザは、印刷媒体Aの種類に対応する好適なハーフトーン処理の変換方法を、自由かつ容易に決定することができる。
【0057】
<変形例>
以上の実施の形態では、印刷媒体Aの媒体情報に基づいてハーフトーン処理で使用する第1変換方法を決定する例を説明したが、印刷する画像も考慮して種類を決定してもよい。この変形例では、印刷媒体Aおよび印刷する画像に基づいて第1変換方法の種類を決定する方法について説明する。このような方法は、例えば図3,6,7のフローチャート中のステップS3で示される決定処理に対して適用可能である。
【0058】
図8は、制御装置30により実行される変形例に係る第1変換方法の決定処理を示すフローチャートである。図8に示すように、制御装置30は、ステップS1で取得した画像データと、ステップS2で取得した媒体情報とに基づいて、画像を印刷した場合の評価値を算出する第1画像評価処理を実行する(ステップS10)。より具体的には、ステップS1で取得した画像データに基づいて、ステップS2で取得した媒体情報が示す種類の印刷媒体Aに対して画像を印刷した場合の評価を定量化した画像評価値を、ハーフトーン処理の変換方法の種類毎に算出する。この評価は、ここでは粒状感の見えやすさに関する評価である。
【0059】
次に制御装置30は、画像評価値に関する所定の閾値と、ステップS10で算出した変換方法毎の画像評価値とを比較して、第1変換方法を決定する第3決定処理を実行する(ステップS11)。ここで、画像評価値に関する閾値は、印刷する画像に要求される粒状感レベルを示す数値であり、例えば画像データの取得(S1)と共に取得される印刷設定情報に含まれ、記憶装置31に記憶される。従って、制御装置30は、ステップS11では記憶装置31に記憶された閾値と画像評価値とを比較する。
【0060】
<S10の詳細>
図9は、上記ステップS10の第1画像評価処理の具体例を示すフローチャートである。ここでは、印刷する画像に関する画像評価値を算出する方法について、より具体的に説明する。図9に示すように、第1画像評価処理(S10)では、印刷する画像に含まれる画素色に関する色別評価値に基づき、画像評価値を、ハーフトーン処理の変換方法の種類毎に取得する第2画像評価処理を実行する(ステップS20)。
【0061】
ここで色別評価値とは、複数の色値についてこの色値に対応するインクを吐出して印刷媒体Aに形成されるパッチ画像に関する評価を示す値であって、この評価とは、ここでは粒状感の見えやすさに関する評価である。記憶装置31には、このような色別評価値が、印刷媒体Aの種類毎およびハーフトーン処理の変換方法の種類毎に、予め記憶されている。
【0062】
色別評価値について詳述する。図10は、色別評価値に関するルックアップテーブルである色別評価LUTを記憶装置31に記憶する処理を示すフローチャートである。この記憶処理は、一例として、印刷装置1を製品として出荷する前に行われる。図10に示すように、はじめに印刷装置1により、パッチ画像が印刷される(ステップS100)。パッチ画像は、同一色で塗りつぶされた小画像であるパッチを複数の色(パッチ色)ごとに有するパターン画像であり、印刷装置1が印刷可能な全色に対応するパッチを有していてもよいが、便宜的に所定グリッド数(例えば、9グリッド)ごとの色に対応するパッチを含むパターン画像としてもよい。
【0063】
このようなパッチ画像を、印刷媒体Aの種類ごと、かつ、ハーフトーン処理の変換方法の種類ごとに、印刷する。従って、印刷媒体Aが前述の第1~第3媒体であり、ハーフトーン処理の変換方法の種類が前述の第1~第4方法である場合、12パターンの印刷結果を得る。
【0064】
次に、印刷されたパッチ画像に含まれる各パッチについて、粒状感の見えやすさを定量的に評価する(ステップS101)。粒状感の評価については、人が目視によって判断して数値を付与してもよいし、公知の粒状度に関する数値評価方法を用いて行ってもよい。公知の数値評価方法としては、例えば、平均濃度からの偏差の二乗平均平方根で表されるRMS粒状度(RMS:Root Mean Square)や、粒状性評価値(Graininess Scale)などを利用した方法が採用可能である。
【0065】
ステップS101で評価された各パッチの評価値が色別評価値である。図11に、9グリッドごとの色に対応するパッチに関する色別評価値が定められた色別評価LUTの一例を示す。図11に示すように、色別評価LUTでは、各パッチ色に対応して色別評価値が定められている。一方、パッチに関する色別評価値は、印刷媒体Aの種類やハーフトーン処理の変換方法の種類が異なれば異なりうる。従って、図11に示すような色別評価LUTは、印刷媒体Aの種類ごと、かつ、ハーフトーン処理の変換方法の種類ごとに、作成される。
【0066】
そして、このようにして作成された、印刷媒体Aの種類ごと、かつ、ハーフトーン処理の変換方法の種類ごとの色別評価LUT(すなわち、各パッチの評価値である色別評価値)が、記憶装置31に記憶される(ステップS102)。
【0067】
制御装置30は、図9の第2画像評価処理印刷(S20)では、取得した媒体情報に対応する上述した色別評価LUTを参照し、印刷する画像に含まれる画素色に関する色別評価値に基づき、画像評価値を、ハーフトーン処理の変換方法の種類毎に取得する。
【0068】
<S20の詳細>
図12は、上記ステップS20の第2画像評価処理の具体例を示すフローチャートである。ここでは、色別評価値に基づいて画像評価値を算出する方法について一例を説明する。図12に示すように、第2画像評価処理では、画像データに基づいて、印刷する画像を複数の領域に分割する分割処理を実行する(ステップS30)。各領域は、例えば、各辺がノズル列12の前後方向の長さ以下である矩形領域としてもよい。
【0069】
次に制御装置30は、領域別評価処理を実行する(ステップS31)。この領域別評価処理では、取得した媒体情報が示す1つの種類の印刷媒体Aに対応する色別評価LUTを参照し、各領域に含まれる画素色に関する色別評価値に基づいて、各領域に関する評価を示す領域別評価値を、領域毎、かつ、ハーフトーン処理の変換方法の種類ごとに定める。そして、画像データに含まれる全ての領域について領域別評価値に基づき、画像全体に関する画像評価値を取得する第3画像評価処理を実行する(ステップS32)。
【0070】
ステップS30~S32の動作について、図13図14に示す具体例を参照して更に詳述する。図13(A)は、ステップS1で取得した画像データが示す画像100の一例である。制御装置30は分割処理(S30)において、この画像100を図13(B)に示すように複数の領域101に分割する。図13(B)では、画像100に加えて、1つの領域101(101A)を拡大して示している。
【0071】
次に制御装置30は、領域別評価処理(S31)において、各領域に含まれる各画素色について、色別評価LUTを参照して色別評価値を取得する。図13(C)の例では、領域101Aに含まれる1つの画素102のRGB値[190,128,64]に対して色別評価LUTを参照して色別評価値[20]が取得されている。また、領域101Aに含まれる他の1つの画素103のRGB値[192,208,240]に対して色別評価LUTを参照して色別評価値[40]が取得されている。
【0072】
領域別評価処理(S31)では、このようにして1つの領域101について、これに含まれる全ての画素の色値に対して色別評価値を取得し、取得した全色別評価値に基づいてこの領域101の評価値である領域別評価値を定める。色別評価値から領域別評価値を取得する方法としては、例えば算術平均を用いることができる。その場合、当該領域101の全画素についての色別評価値を加算し、加算した値をこの領域101に含まれる画素数で除算することで領域別評価値を得ることができる。
【0073】
図14(A)では、領域101Aについて、領域別評価処理(S31)によって領域別評価値[30]が得られた例を示している。領域別評価処理(S31)では、同様にして全領域101について領域別評価値を取得する。図14(B)に、全領域101について取得された各領域別評価値を、対応する領域に重ねて表示した例を示す。第3画像評価処理(S32)では、この領域別評価値に基づいて画像評価値を取得する。
【0074】
第3画像評価処理(S32)の一例では、全領域101についての領域別評価値の中から最大値または最小値を抽出し、何れか一方を、この画像に関する画像評価値に決定する。図14(B)では画像100に含まれる全領域101の領域別評価値のうち、最大値[50]および最小値[10]が取得される。従って、これらのうち何れか一方を画像評価値として決定する。本変形例では評価値として、粒状感が見えやすい色に対して、より大きな数値を付与した例を示している。従ってこの場合、粒状感抑制の観点からは、全領域101の領域別評価値のうち最大値を画像評価値に決定するのが好ましい。従って、図14(B)の例では、画像評価値が[50]と定まる。
【0075】
図8の第3決定処理(S11)では、上述したようにして取得した画像評価値と、記憶装置31に記憶されている閾値とを比較して、ハーフトーン処理で使用する変換方法である第1変換方法を決定する。具体的には、上述したような画像評価値を、ハーフトーン処理の変換方法の種類ごとに取得する。例えば、各方法で印刷した場合の画像評価値が、第1方法では[80]、第2方法では[50]、第3方法では[20]、第4方法では[10]であったとする。一方、記憶装置31に記憶されている画像評価値に関する閾値が[40]であったとする。
【0076】
この場合、前述のとおり評価値は粒状感の見えやすさの指標であることから、粒状感を抑制するためには、画像評価値が閾値以下である方法が好ましく、上記の例でいえば第3方法および第4方法が好適と判断できる。従って、第3決定処理(S11)では、第3方法および第4方法の中から1つの変換方法を第1変換方法に決定する。
【0077】
なお、この例のように、画像評価値が閾値以下となる変換方法の種類が複数ある場合は、複数種類の変換方法のうち、画像評価値が最大値となるもの、または、画像評価値が最小値となるものを、第1変換方法として決定してもよい。上記の場合で言えば、画像評価値が最大値となるものは第3方法であり、第3方法を選択した場合には、粒状感を抑制しつつ、データ変換時間の短縮化およびデータサイズの抑制を図ることができる。また、画像評価値が最小値となるものは第4方法であり、第4方法を選択した場合には、粒状感を最小限に抑制することができる。
【0078】
ただし、画像評価値が閾値以下となる変換方法の種類が複数ある場合に、1つの種類を選択する方法はこれに限られない。周期感やその他の条件を考慮して1つの種類を選択することとしてもよい。
【0079】
以上に説明した変形例に係る動作によれば、印刷媒体Aの種類だけでなく、印刷しようとする画像データの内容も考慮して、これらに対応したハーフトーン処理の変換方法の種類を決定することができる。従って、要望される品質により適した印刷を実現することができる。
【0080】
なお、上述した印刷装置1は、シリアルヘッド方式であったがこれに限られない。印刷装置1は、ラインヘッド方式であってもよい。
【0081】
また、印刷装置1では、タンク24を備え、各タンク24には可撓性のチューブ25の一端が接続され、他端はヘッド10のインク供給口に接続されており、各タンク24からのインクはチューブ25を通じてヘッド10へ送られていたが、これに限られない。タンク24は、インクカートリッジであってもよい。また、タンク24は、キャリッジ19に設けられて、ヘッド10とともに移動してもよい。また、キャリッジ19はサブタンクを備え、サブタンクは各タンク24からチューブ25を通じてヘッド10へ送られるインクを中継してもよい。
【0082】
本開示の実施形態では、印刷装置1は、カラー印刷装置であったが、モノクロ印刷装置であってもよい。また、ハーフトーン処理は、画像データに使用される色をシアン、イエロー、マゼンダ、およびブラックの4色に階調を減らし、また、画像データに基づき印刷される画像をドット無し、小ドット、中ドット、大ドットの4つの階調に変換する処理であったがこれに限られない。モノクロ印刷装置の場合、ハーフトーン処理は、画像データに基づき印刷される画像をドット無し、小ドット、中ドット、大ドットの4つの階調に変換する処理でよい。
【0083】
本開示の実施形態では、2値を用いたディザ法(第1方法)とは、画像データが示す画像を小さいブロックに分割し、各ブロックの濃淡値を予め設定された1つの閾値と比較して2値化し、2値のうち一方にはインク吐出を割り当て、他方にはインク不吐出を割り当てる、データの変換方法であり、2値の場合、インク吐出を割り当てられるのは大容量のインク吐出であったが、これに限られない。2値の場合、インク吐出に割り当てられるのは中容量のインク吐出であってもよいし、小容量のインク吐出であってもよい。
【0084】
変形例における図13(C)の例では、領域101Aに含まれる1つの画素102のRGB値[190,128,64]に対して色別評価LUTを参照して色別評価値[20]が取得されており、また、領域101Aに含まれる他の1つの画素103のRGB値[192,208,240]に対して色別評価LUTを参照して色別評価値[40]が取得されていたが、これに限られない。領域101Aに含まれる1つの画素102のRGB値[190,128,64]に対して色別評価LUTを参照して色別評価値[40]、領域101Aに含まれる他の1つの画素103のRGB値[192,208,240]に対して色別評価LUTを参照して色別評価値[20]が取得されるように色別評価LUTが構成されていてもよい。つまり、図14(B)では画像100に含まれる全領域101の領域別評価値のうち、最大値[50]および最小値[10]が取得されていたが、最大値[50]および最小値[10]の関係が逆転し、最大値[50]が最小値[10]を示し、最小値[10]が最大値[50]を示すように色別評価LUTが構成されていてもよい。
【0085】
変形例では、各方法で印刷した場合の画像評価値が、第1方法では[80]、第2方法では[50]、第3方法では[20]、第4方法では[10]であったがこれに限られない。上述の色別評価LUTを用いて、各方法で印刷した場合の画像評価値が、第1方法では[10]、第2方法では[20]、第3方法では[50]、第4方法では[80]となるようにしてもよい。ただし、記憶装置31に記憶されている画像評価値に関する閾値が[40]であったとする。そして、各方法で印刷した場合の画像評価値が、第1方法では[10]、第2方法では[20]、第3方法では[50]、第4方法では[80]の場合、粒状感を抑制するためには、画像評価値が閾値以上である方法が好ましく、上記の例でいえば第3方法および第4方法が好適と判断されるようにする。
【0086】
なお、この明細書において開示する各要素の機能は、説明された機能を実行するように構成またはプログラムされた各種のプロセッサや回路を使用して実現することができる。またプロセッサは回路と見なすことができ、かつ、この明細書で開示する回路、ユニット、または手段などは、説明された機能を実行するハードウェアであるか、あるいは、当該機能を実行するようプログラムされたハードウェアである。
【0087】
上記の全実施形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組み合わせてもよい。また、上記説明から当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。そして、本発明の精神を逸脱することなく、その構造および/または機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、印刷媒体に応じて好適なハーフトーン処理により印刷することができる印刷装置、その制御方法、およびコンピュータプログラムに適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 印刷装置
10 ヘッド
11 ノズル
12 ノズル列
30 制御装置
31 記憶装置
36 出力装置
37 入力装置
A 印刷媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14