(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150723
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ダイス及びシート成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/31 20190101AFI20231005BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20231005BHJP
B29C 48/495 20190101ALI20231005BHJP
【FI】
B29C48/31
B29C48/21
B29C48/495
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059962
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 裕海
(72)【発明者】
【氏名】水沼 巧治
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AG01
4F207AG03
4F207AJ08
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB26
4F207KK64
4F207KL84
4F207KL96
4F207KM15
(57)【要約】
【課題】多列のシート状成形品の形状の制御を容易に行う。
【解決手段】ダイス100は、供給される第一樹脂材料及び第二樹脂材料を第一樹脂材料の幅方向の両側に第二樹脂材料が並ぶようにして合流させ、合流した合流樹脂材料を吐出口45からシート状に吐出する本体部10と、本体部10に取り付けられ、合流樹脂材料において少なくとも幅方向の一方側にある第二樹脂材料の温度を調整する温度調整部50と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される第一樹脂材料及び第二樹脂材料を前記第一樹脂材料の幅方向の両側に前記第二樹脂材料が並ぶようにして合流させ、合流した合流樹脂材料を吐出口からシート状に吐出する本体部と、
前記本体部に取り付けられ、前記合流樹脂材料の幅方向の両側にある前記第二樹脂材料の温度を調整する温度調整部と、を備える、
ダイス。
【請求項2】
請求項1に記載のダイスであって、
前記本体部は、
前記第一樹脂材料を導く第一通路と、
前記第二樹脂材料を導く第二通路と、
前記第一通路と前記第二通路とが合流し、前記合流樹脂材料を前記吐出口へ導く合流通路と、を有し、
前記温度調整部は、前記合流通路に隣接した位置に設けられ、前記合流通路内の前記合流樹脂材料における前記第二樹脂材料の温度を調整する、
ダイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のダイスであって、
前記本体部は、
前記第一樹脂材料及び前記第二樹脂材料をそれぞれ個別に導くジャンクションブロックと、
前記ジャンクションブロックから導かれる前記第一樹脂材料と前記第二樹脂材料とを合流させるフィードブロックと、
前記吐出口が形成され前記フィードブロックから導かれる前記合流樹脂材料を前記吐出口を通じて吐出するTダイと、を有する、
ダイス。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のダイスであって、
前記吐出口の幅方向における前記温度調整部の寸法は、前記吐出口から吐出される前記第二樹脂材料の幅方向の寸法と同等である、
ダイス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のダイスであって、
前記本体部は、前記幅方向に延び前記温度調整部を収容する収容穴を有し、
前記温度調整部は、前記本体部の前記収容穴に着脱自在に取り付けられる、
ダイス。
【請求項6】
前記第一樹脂材料を吐出する第一押出機と、
前記第二樹脂材料を吐出する第二押出機と、
前記第一押出機及び前記第二押出機に接続され前記第一樹脂材料及び前記第二樹脂材料を合流させて吐出する、請求項1から5のいずれか一つに記載のダイスと、を有する、
シート成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂材料をシート状に吐出するダイス及びシート成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の溶融樹脂と第2の溶融樹脂とをリップ隙間から吐出して多列のシート状の樹脂成形品を成形するシート成形用ダイスが開示されている。このシート成形用ダイスでは、第1の溶融樹脂をリップ隙間の上流のリップ部に流すための第1の流路と、第2の溶融樹脂をリップ部に流すために設けられた、経路の途中で分岐した第2の流路と、が設けられる。また、このダイスでは、分岐した第2の流路における第2の溶融樹脂の流量を調整するために、分岐した第2の流路の途中の温度を局所的に調整する温度調整手段が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように、異なる樹脂材料がシートの幅方向に並ぶ多列のシート状成形品の成形では、樹脂材料の供給量を調整することで、成形品の幅方向の寸法を制御する。しかしながら、樹脂材料の粘度が変化すると、樹脂材料の供給量の変化に対するシート状成形品の幅寸法の変化の程度が異なるため、シート状成形品の幅方向の寸法を望む大きさに制御することは難しい。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、多列のシート状成形品の成形においてシート形状の制御を容易に行うことができるダイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、ダイスは、供給される第一樹脂材料及び第二樹脂材料を第一樹脂材料の幅方向の両側に第二樹脂材料が並ぶようにして合流させ、合流した合流樹脂材料を吐出口からシート状に吐出する本体部と、ダイスに取り付けられ、合流樹脂材料において少なくとも幅方向の一方側にある第二樹脂材料の温度を調整する温度調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
この態様によれば、吐出口へと導かれる合流樹脂材料における第二樹脂材料の温度を調整することで第二樹脂材料の粘度を制御できる。吐出口へと導かれる第二樹脂材料の粘度が制御されることによって、吐出口へと向かう第二樹脂材料の幅寸法の制御が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るシート成形装置の概略を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るシート成形装置の概略を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るダイスの断面図であり、
図1におけるIII-III線断面図である。
【
図4】
図3におけるIV-IV線断面図であり、Tダイのみを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態の変形例に係るダイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るダイス100及びこれを備えるシート成形装置101について説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更しており、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、複数の同一の構成については、その一部にのみ符号を付し、その他については符号を省略することがある。
【0010】
図1及び
図2に示すように、シート成形装置101は、シート成形用のダイス100と、加熱溶融された第一樹脂材料をダイス100に供給する第一押出機102と、第一樹脂材料とは異なる第二樹脂材料をダイス100に供給する第二押出機103と、を備える。第一押出機102及び第二押出機103は、例えば、それぞれ単軸の押出機である。なお、第一押出機102及び第二押出機103は、二軸の押出機でもよい。ダイス100は、第一配管102aを通じて第一押出機102に接続され、第二配管103aを通じて第二押出機103に接続される。
【0011】
シート成形装置101は、第一樹脂材料及び第二樹脂材料をダイス100から冷却ロールR(
図2参照)に向けて吐出して、多列のシート状の成形品を成形する。第一樹脂材及び第二樹脂材料は、たとえば熱可塑性樹脂であり、温度によって流動特性が変化するものである。第二樹脂材料は、第一樹脂材料の幅方向の両端部に設けられる。
【0012】
第二樹脂材料は、例えば、延伸フィルムを製造する過程において、幅方向の延伸の際にクリップによって把持するために形成される部位である。第二樹脂材料を耐久性が比較的高い材料とすることで、シート成形品を幅方向へ安定して延伸することができる。また、無延伸フィルムでは、幅方向の端部は、幅方向の中央部と比較して厚さの精度が確保しにくいことから、製品とする際にはトリミングされる。トリミングされる幅方向の端部の材料をリサイクル材等の安価な材料で構成した第二樹脂材料によって形成することで、シート成形品(フィルム製品)の製造コストを低減することができる。
【0013】
図3に示すように、ダイス100は、第一樹脂材料及び第二樹脂材料が供給され吐出口45を通じてシート状に吐出する本体部10と、本体部10に取り付けられる温度調整部50と、を備える。
【0014】
本体部10は、第一樹脂材料及び第二樹脂材料を個別に(独立して)導くジャンクションブロック20と、第一樹脂材料及び第二樹脂材料を合流させるフィードブロック30と、合流した第一樹脂材料及び第二樹脂材料(以下、「合流樹脂材料」と称する。)を吐出口45を通じて吐出するTダイ40と、を有する。フィードブロック30の一端面にジャンクションブロック20が取り付けられ、フィードブロック30の他端面にTダイ40が取り付けられる。本体部10は、図示しない加熱装置によって、全体が所定の温度となるように温度制御されている。
【0015】
ジャンクションブロック20には、第一押出機102から吐出される第一樹脂材料を導く第一配管102aと、第二押出機103から吐出される第二樹脂材料を導く第二配管103aと、が接続される(
図1参照)。
図3に示すように、ジャンクションブロック20には、第一配管102aから第一樹脂材料が導かれる第一JB通路21と、第二配管103aから第二樹脂材料が導かれる第二JB通路22と、が形成される。
【0016】
第一JB通路21は、フィードブロック30が取り付けられるジャンクションブロック20の取付面20aに開口する。第二JB通路22は、第二配管103aに接続される上流通路23と、上流通路23から2つに分岐する一対の下流通路24,25と、を有する。一対の下流通路24,25は、それぞれジャンクションブロック20の取付面20aに開口する。また、ジャンクションブロック20の取付面20aに対する第二JB通路22の一対の下流通路24,25の開口の間には、第一JB通路21の開口が位置する。つまり、ジャンクションブロック20の取付面20aに対する第一JB通路21の開口と一対の下流通路24,25の開口とは、直線上に位置する。
【0017】
フィードブロック30には、ジャンクションブロック20の第一JB通路21から第一樹脂材料が導かれる第一FB通路31と、ジャンクションブロック20の第二JB通路22から第二樹脂材料が導かれる一対の第二FB通路32,33と、第一FB通路31と第二FB通路32,33とが合流するFB合流通路34と、が形成される。
【0018】
第一FB通路31は、ジャンクションブロック20が取り付けられるフィードブロック30の取付面30aに開口し、ジャンクションブロック20の第一JB通路21に連通する。
【0019】
一方の第二FB通路32は、ジャンクションブロック20の第二JB通路22の一方の下流通路24に連通し、他方の第二FB通路33は、第二JB通路22の他方の下流通路25に連通する。
【0020】
FB合流通路34には、第一FB通路31と、一対の第二FB通路32,33と、が接続される。これにより、FB合流通路34において、第一樹脂材料と第二樹脂材料とが合流する。具体的には、第一樹脂材料の幅方向(
図3中左右方向)の両側に第二樹脂材料がそれぞれ並ぶようにして合流する。
図3では、合流した第一樹脂材料と第二樹脂材料との境界を二点鎖線にて模式的に示している。
【0021】
FB合流通路34は、Tダイ40が取り付けられるフィードブロック30の取付面30bに開口する。
【0022】
Tダイ40には、フィードブロック30のFB合流通路34から合流樹脂材料が導かれる供給通路41と、供給通路41によって導かれた合流樹脂材料を吐出する吐出口45と、が形成される。供給通路41は、フィードブロック30が取り付けられるTダイ40の取付面40aに開口し、フィードブロック30のFB合流通路34に連通する。また、供給通路41は、取付面40aとは反対側の別の端面40bに開口し、当該開口が吐出口45として構成される。
【0023】
供給通路41は、取付面40aに開口する上流側の上流部42と、吐出口45に接続される下流部44と、上流部42と下流部44とを接続する接続部43と、を有する。上流部42は、フィードブロック30のFB合流通路34と同一の幅で合流樹脂を下流へと導く。下流部44は、吐出口45と同一の幅で合流樹脂を吐出口45へと導く。接続部43は、幅を徐々に拡大させながら上流部42と下流部44とを接続する。
【0024】
また、供給通路41の接続部43は、
図4に示すように、シートの厚さ方向(
図3中紙面垂直方向)の寸法が、下流部44へ向けて徐々に大きくなるように形成される。また、下流部44は、接続部43に接続される上流側が相対的に厚さ方向の寸法が大きく、下流側の吐出口45付近では、厚さ方向の寸法は小さくなる。
【0025】
以上のように、ジャンクションブロック20の第一JB通路21と、フィードブロック30の第一FB通路31と、によって、第一樹脂材料を導く「第一通路」が構成される。ジャンクションブロック20の第二JB通路22と、フィードブロック30の第二JB通路22と、によって、第二樹脂材料を導く「第二通路」が構成される。フィードブロック30のFB合流通路34と、Tダイ40の供給通路41と、によって、合流樹脂材料を吐出口45に導く「合流通路」が構成される。
【0026】
第一通路によって導かれる第一樹脂材料と第二通路によって導かれる第二樹脂材は、合流通路で合流し、Tダイ40の供給通路41の接続部43によって幅方向の寸法を徐々に拡大させながら、吐出口45を通じて多列のシート状に吐出される。
【0027】
図5に示すように、Tダイ40の吐出口45は、一方向(図中左右方向)に延びる矩形状に形成される。吐出口45が延びる長手方向が、シートの幅方向である。吐出口45を通じて合流樹脂が吐出されることで、第一樹脂材料の幅方向の両側に第二樹脂材料が並ぶ多列のシート状成形品が成形される。
【0028】
本実施形態では、
図3に示すように、温度調整部50は、合流樹脂材料の第二樹脂材料を加熱するようにTダイ40に取り付けられる。温度調整部50は、第一樹脂材料の幅方向の両側の第二樹脂材料を加熱するように、2つ設けられる。幅方向の両側の2つの温度調整部50は、互いに同様の構成であるため、以下では、一方の温度調整部50に関する構成を例に説明する。
【0029】
温度調整部50は、
図5に示すように、Tダイ40の供給通路41を通過する合流樹脂材料の厚さ方向の両側に設けられる第一ヒータ51及び第二ヒータ52と、吐出口45に対して幅方向の外側に設けられる第三ヒータ53と、を有する。なお、
図3及び
図4では、第一ヒータ51及び第二ヒータ52が設けられる位置を破線にて模式的に示している。
【0030】
Tダイ40には、幅方向に延びる一対の収容穴46,47と、幅方向の一方側(図中右側)の側面40cに開口する収容溝48と、が形成される。一対の収容穴46,47は、供給通路41を厚さ方向に挟むようにして設けられ、それぞれTダイ40の側面40cに開口している。つまり、第一ヒータ51及び第二ヒータ52は、供給通路41に対して厚さ方向に隣接して設けられ、第三ヒータ53は、供給通路に対して幅方向に隣接して設けられる。このように、温度調整部50は、合流通路の一部であるTダイ40の供給通路41に対して隣接する位置に設けられている。
【0031】
一対の収容穴46,47は、幅方向において、Tダイ40の側面40cから第一樹脂材料に達する位置まで延びるように形成される。つまり、収容穴46,47は、幅方向において、少なくとも想定される第二樹脂材料の幅方向の寸法よりも大きな寸法に形成される。
【0032】
第一ヒータ51及び第二ヒータ52は、それぞれ一対の収容穴46,47に着脱自在に取り付けられる。第一ヒータ51及び第二ヒータ52の全長(シートの幅方向における寸法)は、それぞれ第二樹脂材料の幅方向の寸法と同等に構成される。これにより、第一ヒータ51及び第二ヒータ52によって、第二樹脂材料を幅方向全体にわたって温度調整することができる。第三ヒータ53は、収容溝48に着脱自在に取り付けられる。
【0033】
第一ヒータ51、第二ヒータ52、及び第三ヒータ53は、それぞれ着脱自在にTダイ40に取り付けられるため、例えば、全長が異なるヒータに交換する、収容穴46,47又は収容溝48内での取付位置を変更する、といった調整が可能である。これにより、第一ヒータ51、第二ヒータ52、及び第三ヒータ53による加熱範囲を調整することができる。
【0034】
なお、第一ヒータ51及び第二ヒータ52の全長が第二樹脂材料の幅方向の寸法と同等であるとは、一致する場合のみを意味するものではなく、わずかに大きい、又は、わずかに小さい場合も含む意味である。つまり、本明細書において「同等」とは、完全一致に限定されず、同様の効果を奏する限り、異なる場合も含む意味である。
【0035】
第一ヒータ51、第二ヒータ52、及び第三ヒータ53は、例えば、制御装置(図示省略)から供給される電流によって発熱する電熱ヒータである。第一ヒータ51、第二ヒータ52、及び第三ヒータ53の作動は、制御装置によって制御される。ヒータの構成は、これに限定されず、任意の構成とすることができる。
【0036】
ここで、吐出口45から吐出される合流樹脂材料における第一樹脂材料と第二樹脂材料の幅方向の寸法は、第一押出機102及び第二押出機103の吐出量、各樹脂材料の温度や粘度などによって定まる。通常、シート成形装置101によるシート成形の開始時には、Tダイ40から吐出されるシート形状、具体的には、第二樹脂材料の幅方向の寸法が所望のものとなるように、第一押出機102及び第二押出機103の吐出量が調整される。
【0037】
しかしながら、樹脂材料の粘度が変化すると、樹脂材料の吐出量の変化に対するシート状成形品の幅寸法の変化の程度が異なることになるため、シート状成形品の幅方向の寸法を望む大きさに制御することが難しくなる。具体的には、第一樹脂材料及び第二樹脂材料は、それぞれ下流に導かれるにつれて温度が低下し、これに伴い粘度も高くなる。第二樹脂材料の粘度が高くなると、供給通路の内壁(Tダイ)との間の摩擦が大きくなる。このため、例えば、第二樹脂材量の供給量を減らしたとしても、第二樹脂材料がTダイの壁面に沿って幅方向に移動しにくくなり、その結果、厚さだけが減少するおそれがある。
【0038】
このような第二樹脂材料の温度低下による粘度上昇を抑制するには、吐出口まで導かれても所定の温度が保たれるように第二押出機から供給される第二樹脂材料の温度を高くすることも考えられる。しかしながら、供給される第二樹脂材料の温度を高くすると、樹脂の焼けが発生するおそれがある。第二樹脂材料に焼けが生じると、シート成形品を延伸するためにクリップする際の強度が低下するおそれがある。
【0039】
これに対し、本実施形態では、ダイス100は、供給通路41を通過する合流樹脂材料の第二樹脂材料を加熱する温度調整部50を備える。温度調整部50により供給通路41内の第二樹脂材料が加熱されるため、第二樹脂材料の粘度を低下させることができる。このため、第二押出機103から供給される第二樹脂材料の供給量を変化させると、吐出口45から吐出される多列のシート成形品の第二樹脂材料の幅方向の寸法を変化させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、温度が低下した吐出口45付近の第二樹脂材料の温度を温度調整部50により上げる構成であるため、第二押出機103から供給される第二樹脂材料の温度を上昇させる場合と比較して、第二樹脂材料の最高温度を高くする必要はない。このため、樹脂の焼けの発生のおそれが低く、熱履歴も少ないため第二樹脂材料の劣化を抑えることができる。
【0041】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0042】
ダイス100は、供給される第一樹脂材料及び第二樹脂材料を第一樹脂材料の幅方向の両側に第二樹脂材料が並ぶようにして合流させ、合流した合流樹脂材料を吐出口45からシート状に吐出する本体部10と、本体部10に取り付けられ、合流樹脂材料の幅方向の両側にある第二樹脂材料の温度を調整する温度調整部50と、を備える。
【0043】
シート成形装置101は、第一樹脂材料を吐出する第一押出機102と、第二樹脂材料を吐出する第二押出機103と、第一押出機102及び第二押出機103に接続され第一樹脂材料及び第二樹脂材料を合流させて吐出する、上記実施形態に記載のダイス100と、を有する。
【0044】
また、ダイス100では、本体部10は、第一樹脂材料を導く第一通路と、第二樹脂材料を導く第二通路と、第一通路と第二通路とが合流し、合流樹脂材料を吐出口45へ導く合流通路と、を有し、温度調整部50は、合流通路に隣接した位置に設けられ、合流通路内の合流樹脂材料における第二樹脂材料の温度を調整する。
【0045】
また、ダイス100では、本体部10は、第一樹脂材料及び第二樹脂材料をそれぞれ個別に導くジャンクションブロック20と、ジャンクションブロック20から導かれる第一樹脂材料と記第二樹脂材料とを合流させるフィードブロック30と、吐出口45が形成されフィードブロック30から導かれる合流樹脂材料を吐出口45を通じて吐出するTダイ40と、を有する。
【0046】
これらの構成では、吐出口45へと導かれる合流樹脂材料における第二樹脂材料の温度を調整することで第二樹脂材料の粘度を制御できる。吐出口45へと導かれる第二樹脂材料の粘度が制御されることによって、吐出口45へと向かう第二樹脂材料の幅寸法の制御が容易となる。
【0047】
また、ダイス100では、吐出口45の幅方向における温度調整部50の寸法は、吐出口45から吐出される第二樹脂材料の幅方向の寸法と同等である。
【0048】
この構成では、第二樹脂材料をその幅方向の全体にわたって温度調整できるため、第二樹脂材料の粘度をより精度よく制御することができる。
【0049】
また、ダイス100では、本体部10は、幅方向に延び温度調整部50を収容する収容穴46,47を有し、温度調整部50は、本体部10の収容穴46,47に着脱自在に取り付けられる。
【0050】
この構成では、温度調整部50が収容穴46,47に着脱自在に取り付けられて交換可能であるため、温度調整部50を交換することで温度調整する幅方向の範囲(温度調整幅)を容易に調整できる。このため、第二樹脂材料の種々の幅方向の寸法に対応して、第二樹脂材料の粘度を制御することができる。
【0051】
次に、本実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0052】
上記実施形態では、本体部10は、別部材として形成されるジャンクションブロック20、フィードブロック30、及びTダイ40が連結されることで構成される。これに対し、本体部10は、1、2、又は4以上の部材によって構成されてもよい。
【0053】
例えば、
図6に示す変形例では、本体部110は、第一押出機102及び第二押出機103が接続される接続ブロック130と、接続ブロック130に取り付けられるTダイ40と、を有する。接続ブロック130には、第一樹脂材料が導かれる第一通路としての第一接続通路131と、第二樹脂材料が導かれる第二通路としての一対の第二接続通路132,133と、第一接続通路131及び第二接続通路132,133を合流させる第三接続通路134と、が形成される。第三接続通路134は、Tダイ40の供給通路41に連通する。接続ブロック130の第三接続通路134とTダイ40の供給通路41とによって合流通路が構成される。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0054】
上記実施形態では、第三ヒータ53は、Tダイ40の側面に開口する収容溝48に取り付けられる。これに対し、Tダイ40の側面に収容溝48を形成せず、第三ヒータ53は、Tダイ40の側面に単に貼り付けられるように構成してもよい。また、Tダイ40の側面には開口せずに端面40bに開口し幅方向及び厚さ方向に垂直方向(
図5中紙面垂直方向)に延びる収容穴を形成し、当該収容穴に第三ヒータ53を着脱自在に取り付けてもよい。このような場合には、第三ヒータ53は、例えばカートリッジヒータを用いてもよい。
【0055】
また、第三ヒータ53は、必須の構成ではなく、温度調整部50は、第三ヒータ53を有していなくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、温度調整部50は、第二樹脂材料を加熱する構成である。これに対し、温度調整部50は、第二樹脂材料を冷却する構成でもよい。この場合、例えば、温度調整部50は、内部に冷却水が循環する冷却パイプを有して、第二樹脂材料を冷却するように構成される。また、温度調整部50は、第二樹脂材料を加熱及び冷却可能に構成されてもよい。なお、フィルム製品となる第一樹脂材料に対しては、加熱又は冷却を行うと温度ムラが生じて厚さの精度が確保しにくくなるおそれがあるため、温度調整を行わないことが望ましい。
【0057】
また、上記実施形態では、シート成形品の第一樹脂材料は、1層のみであったが、これに代えて、厚さ方向に複数の樹脂材料が積層された多層樹脂材料としてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、単一の第二押出機103から供給された第二樹脂材料は、ジャンクションブロック20内で2つに分岐して、シート成形品の幅方向両側に導かれる。これに対し、2つの第二押出機103を用いて、シート成形品の幅方向の両側に第二樹脂材料を導いてもよい。
【0059】
また、温度調整部50は、吐出口45により近い位置に設けられることが好ましいが、合流通路に導かれる合流樹脂材料の第二樹脂材料の温度を調整可能であれば、任意の位置に設けることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0061】
100 ダイス
101 シート成形装置
10,110 本体部
20 ジャンクションブロック
21 第一JB通路(第一通路)
22 第二JB通路(第二通路)
30 フィードブロック
31 第一FB通路(第一通路)
32 第二FB通路(第二通路)
33 第二FB通路(第二通路)
34 FB合流通路(合流通路)
40 Tダイ
41 供給通路(合流通路)
45 吐出口
46 収容穴
50 温度調整部
131 第一接続通路(第一通路)
132 第二接続通路(第二通路)
134 第三接続通路(合流通路)