IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラドキュメントソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-インクジェット記録装置 図1
  • 特開-インクジェット記録装置 図2
  • 特開-インクジェット記録装置 図3
  • 特開-インクジェット記録装置 図4
  • 特開-インクジェット記録装置 図5
  • 特開-インクジェット記録装置 図6
  • 特開-インクジェット記録装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150726
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/17 20060101AFI20231005BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/01 403
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059968
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】為国 雄介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA05
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC21
2C056EC42
2C056EC46
2C056ED01
2C056FA04
2C056FA13
(57)【要約】
【課題】簡便な構成及び制御によって、インクの滲みの発生を抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェット記録装置は、記録ヘッド52と、ヘッド駆動部と、制御部と、を備える。記録ヘッド52は、用紙にインクを吐出する複数のインク吐出ノズル521を有する。ヘッド駆動部は、インクを吐出するノズル孔521hの液面Lsを振動させてインク滴を発生させる。制御部は、インク吐出ノズル521からのインク吐出開始時に、インク吐出を行わずにノズル孔521hの液面Lsを振動させる吐出前振動を実行した後に、インク吐出を実行するようにヘッド駆動部を制御するとともに、複数のインク吐出ノズル521それぞれからのインクの吐出量に基づき、インク吐出ノズル521における吐出前振動の振幅または振動回数を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出する複数のノズルを有する記録ヘッドと、
前記ノズルの前記インクを吐出するノズル孔の液面を振動させてインク滴を発生させるヘッド駆動部と、
前記ヘッド駆動部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記ノズルからのインク吐出開始時に、インク吐出を行わずに前記液面を振動させる吐出前振動を実行した後に、インク吐出を実行するように前記ヘッド駆動部を制御するとともに、複数の前記ノズルそれぞれからの前記インクの吐出量に基づき、前記ノズルにおける前記吐出前振動の振幅または振動回数を制御することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記インクの前記吐出量が多いほど、前記吐出前振動の振幅または振動回数を増加させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
複数の前記ノズルは、複数の異なる色の前記インクを吐出する前記ノズルを含み、
前記制御部は、複数色の前記インクが同じ位置に吐出される場合に、単色の前記インクが吐出される場合と比較して、前記吐出前振動の振幅または振動回数を増加させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記インク滴によって形成される画素が複数集まって構成される画像の記録開始時に、前記ノズルにおける前記吐出前振動を実行することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ノズルから連続して前記インクが吐出される連続吐出時において、1回の吐出毎に、前記ノズルにおける前記吐出前振動を実行することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドは、
複数の前記ノズルに個別に連通し、内部に前記インクを収容可能な複数の加圧室と、
複数の前記加圧室に個別に隣接して設けられ、前記加圧室内の前記インクを加圧して前記ノズルから吐出させる複数の振動素子と、
を備え、
前記ヘッド駆動部は、前記インク滴の吐出条件に応じて予め定められた前記振動素子の駆動電圧及び駆動波形を含む駆動信号によって前記振動素子の振動を制御し、前記ノズルから前記インクを吐出させることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、用紙等の記録媒体にインクを吐出して画像を記録する。インクジェット記録装置では、画像品質を好適に維持するために、記録媒体上で隣接する画素として吐出されたインク同士が繋がるインクの滲みを抑制する必要がある。
【0003】
特許文献1で開示された従来の画像形成装置は、インクの凝集性を有する処理液を記録媒体上に予め付与し、当該処理液を付与した記録媒体にインクを吐出して画像を記録する。さらに、この画像形成装置は、インクが付着した記録媒体を加熱して乾燥させる際、記録媒体が加熱部の所定位置を通過するまでの時間を定めている。これにより、記録媒体に付着したインクが流動する前に乾燥させることができ、滲みの発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-82731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、記録媒体の処理液が必要であるとともに、インクを吐出する記録部から記録媒体を乾燥させる加熱部までの距離や、記録媒体の搬送速度等を所定値に定めなければならず、装置のコストアップ及び大型化、構造上の制限、制御の複雑化等に課題があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡便な構成及び制御によって、インクの滲みの発生を抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のインクジェット記録装置は、記録ヘッドと、ヘッド駆動部と、制御部と、を備える。前記記録ヘッドは、記録媒体にインクを吐出する複数のノズルを有する。前記ヘッド駆動部は、前記ノズルの前記インクを吐出するノズル孔の液面を振動させてインク滴を発生させる。前記制御部は、前記ヘッド駆動部の動作を制御する。前記制御部は、前記ノズルからのインク吐出開始時に、インク吐出を行わずに前記液面を振動させる吐出前振動を実行した後に、インク吐出を実行するように前記ヘッド駆動部を制御するとともに、複数の前記ノズルそれぞれからの前記インクの吐出量に基づき、前記ノズルにおける前記吐出前振動の振幅または振動回数を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、記録媒体に画像を記録するためのインク吐出の前に、インク吐出を行わずにノズル孔の液面を振動させることで、ノズル孔におけるインクの乾燥増粘を加速することができる。インクを意図的に増粘させることで、インクの滲みの発生を抑制できる。さらに、インクの吐出量が異なる場合でも、安定的にノズル孔におけるインクの乾燥増粘を促進できる。すなわち、簡便な構成及び制御によって、インクの滲みの発生を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のインクジェット記録装置の概略断面正面図である。
図2図1のインクジェット記録装置の記録部周辺の平面図である。
図3図1のインクジェット記録装置の概略構成を示すブロック図である。
図4図2の記録部の記録ヘッドの部分拡大垂直断面図である。
図5】記録ヘッドの駆動波形(振幅大)を示すグラフである。
図6】記録ヘッドの駆動波形(振幅小)を示すグラフである。
図7】単色及び混色の場合の圧電素子の振動回数を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。なお、本発明は以下の内容に限定されるものではない。
【0011】
図1は、実施形態のインクジェット記録装置1の概略断面正面図である。図2は、図1のインクジェット記録装置1の記録部5周辺の平面図である。図3は、図1のインクジェット記録装置1の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置1は、例えばインクジェット記録式のプリンターである。インクジェット記録装置1は、図1図2及び図3に示すように、装置本体2と、用紙供給部3と、用紙搬送部4と、記録部5と、乾燥部6と、制御部7と、を備える。
【0012】
用紙供給部3は、例えば装置本体2の下部に配置される。用紙供給部3は、複数枚の用紙(記録媒体)Sを収容し、記録時に用紙Sを1枚ずつ分離して送り出す。
【0013】
用紙搬送部4は、用紙供給部3の用紙搬送方向下流側に配置され、用紙供給部3から送り出された用紙Sを搬送する。用紙搬送部4は、用紙Sを記録部5及び乾燥部6へと搬送し、さらに記録後、乾燥後の用紙Sを用紙排出部21に排出する。用紙搬送部4は、反転搬送部4rを有する。両面記録が行われる場合、用紙搬送部4は、第1面の記録、乾燥後の用紙Sを反転搬送部4rに振り分け、さらに搬送方向を切り替えて表裏を反転させた用紙Sを再度、記録部5及び乾燥部6へと搬送する。
【0014】
用紙搬送部4は、第1ベルト搬送部41及び第2ベルト搬送部42を含む。第1ベルト搬送部41は、無端状に形成された第1搬送ベルト411を有する。第2ベルト搬送部42は、無端状に形成された第2搬送ベルト421を有する。第1ベルト搬送部41及び第2ベルト搬送部42は、第1搬送ベルト411及び第2搬送ベルト421それぞれの上側の外面(上面)に用紙Sを吸着保持して搬送する。第1ベルト搬送部41は、記録部5の下方に配置されて用紙Sを搬送する。第2ベルト搬送部42は、第1ベルト搬送部41に対して用紙搬送方向の下流側に位置し、乾燥部6に配置されて用紙Sを搬送する。
【0015】
記録部5は、用紙供給部3の用紙搬送方向下流側に位置し、第1ベルト搬送部41と対向配置される。記録部5は、第1搬送ベルト411の上面に吸着保持されて搬送される用紙Sに対向し、所定の間隔を空けて第1搬送ベルト411の上方に配置される。すなわち、記録部5は、用紙搬送部4によって搬送される用紙Sと対向する。
【0016】
記録部5は、図2に示すように、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色それぞれに対応したヘッドユニット51B、51C、51M、51Yを保持する。ヘッドユニット51B、51C、51M、51Yは、長手方向が用紙搬送方向Dcと直交する用紙幅方向Dwと平行になるように用紙搬送方向Dcに沿って並置される。なお、4つのヘッドユニット51B、51C、51M、51Yは基本的な構成が同じであるので、以下の説明では、特に限定する必要がある場合を除き、各色を表す「B」、「C」、「M」、「Y」の識別記号は省略することがある。
【0017】
各色のヘッドユニット51それぞれは、ライン型インクジェット方式の記録ヘッド52を有する。記録ヘッド52は、各色のヘッドユニット51それぞれにおいて、用紙幅方向Dwに沿って複数(例えば3つ(52a、52b、52c))が千鳥状に配列される。
【0018】
記録ヘッド52は、その底部に複数のインク吐出ノズル521を有する。複数のインク吐出ノズル521は、用紙幅方向Dwに沿って並べて配置され、用紙S上の記録領域の全域にわたってインクを吐出することができる。すなわち、記録ヘッド52は、用紙Sにインクを吐出する複数のインク吐出ノズル521を有する。記録部5は、第1搬送ベルト411によって搬送される用紙Sに向かって4色のヘッドユニット51B、51C、51M、51Yそれぞれの記録ヘッド52から順次インクを吐出し、フルカラー画像またはモノクロ画像を用紙Sに記録する。
【0019】
乾燥部6は、記録部5に対して用紙搬送方向の下流側に配置され、第2ベルト搬送部42が設けられる。記録部5でインク画像が記録された用紙Sは、乾燥部6において第2搬送ベルト421に吸着保持されて搬送される間に、インクが乾燥される。
【0020】
制御部7は、CPU、その他の電子回路及び電子部品を含む(いずれも不図示)。CPUは、記憶部8に記憶された制御用のプログラムやデータに基づき、インクジェット記録装置1に設けられた各構成要素の動作を制御してインクジェット記録装置1の機能に係る処理を行う。用紙供給部3、用紙搬送部4、記録部5及び乾燥部6それぞれは、制御部7から個別に指令を受け、連動して用紙Sへの記録を行う。
【0021】
記憶部8は、例えばプログラムROM(Read Only Memory)、データROMなどといった不揮発性の記憶装置と、RAM(Random Access Memory)のような揮発性の記憶装置との組み合わせで構成される。
【0022】
続いて、記録部5の記録ヘッド52の構成について、図4を用いて説明する。図4は、図2の記録部5の記録ヘッド52の部分拡大垂直断面図である。なお、各色の3つの記録ヘッド52a、52b、52cは同一形状、同一構成であるので、以下の説明において、識別記号(a、b、c)の記載を省略する。
【0023】
記録ヘッド52は、下面にインクの吐出面52Fを有する。吐出面52Fは、第1搬送ベルト411上を搬送される用紙Sの表面(上面)に対向する。吐出面52Fは、用紙Sにインクを吐出する複数のインク吐出ノズル521のノズル孔521hが開口する。複数のノズル孔521hは、吐出面52Fの用紙幅方向Dw(図2参照)において、用紙S上の記録領域の全域にわたって配置される。また、吐出面52Fには、撥水膜(不図示)が形成されている。
【0024】
また、記録ヘッド52は、共通流路522と、複数の加圧室523と、振動板524と、共通電極525と、複数の圧電素子(振動素子)526と、複数の個別電極527と、を備える。
【0025】
共通流路522は、記録ヘッド52の内部に配置される。共通流路522は、ヘッドユニット51の外部のインクタンク(不図示)に接続される。4色(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー)の記録ヘッド52それぞれには、インクタンクに貯留される4色のインクが個別に供給される。
【0026】
複数の加圧室523は、共通流路522に隣接し、供給口522hを介して共通流路522に連通する。加圧室523には、供給口522hを通って、共通流路522からインクが供給される。インク吐出ノズル521は、本実施形態において加圧室523の下側で連通し、下端の吐出面52Fにおいてノズル孔521hが開口する。複数の加圧室523は、複数のインク吐出ノズル521に個別に対応して設けられる。すなわち、複数の加圧室523は、内部にインクを収納可能であり、複数のインク吐出ノズル521に個別に連通している。
【0027】
振動板524は、加圧室523を隔てて吐出面52Fと反対側の壁部に位置する。すなわち、振動板524は、本実施形態において加圧室523の上側に位置する。振動板524は、複数の加圧室523にわたって連続して配置される。共通電極525は、振動板524の表面に、複数の加圧室523にわたって連続して積層されている。
【0028】
複数の圧電素子526は、共通電極525の表面に配置される。複数の圧電素子526は、複数の加圧室523に個別に隣接して設けられる。複数の個別電極527は、複数の圧電素子526それぞれの表面に、複数の加圧室523に個別に対応して設けられる。すなわち、複数の個別電極527は、複数の圧電素子526それぞれを挟んで共通電極525と対向配置される。複数の圧電素子526それぞれは、隣接する加圧室523内のインクを加圧してインク吐出ノズル521から吐出させる。
【0029】
また、記録部5は、ヘッド駆動部53を備える。ヘッド駆動部53は、制御部7からの制御信号に基づいて記録ヘッド52を駆動する。ヘッド駆動部53は、外部コンピューターから受信した画像データに応じて、第1搬送ベルト411によって搬送される用紙Sに向かってインク吐出ノズル521からインクを吐出させる。これにより、第1搬送ベルト411上の用紙Sには、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色のインクが重ね合わされたカラー画像、或いはモノクロ画像が形成される。
【0030】
詳細に言えば、ヘッド駆動部53は、複数の個別電極527それぞれに対し、所定の駆動波形、駆動電圧を有する駆動信号を印加する。これにより、複数の圧電素子526それぞれは、個別に駆動する。圧電素子526で発生する力は振動板524に加えられ、振動板524の変形によって加圧室523が圧縮される。そして、加圧室523内のインクに圧力が加わり、インク吐出ノズル521内に進入したインクが、インク滴となってノズル孔521hから吐出される。このようにして、ヘッド駆動部53は、インクを吐出するノズル孔521hの液面Lsを振動させてインク滴を発生させる。
【0031】
なお、圧電素子526の駆動波形は、吐出されたインク滴によって記録される画像の画素(ドット)の階調値に応じて予め準備されている。また、インク滴が吐出されない期間も、インク吐出ノズル521内にはインクが入っており、大気圧及びインクの表面張力の作用により、ノズル孔521hではインクの液面Lsが形成されている。圧電素子526は、他の振動素子に代えても良い。
【0032】
そして、制御部7は、インク吐出ノズル521からのインク吐出開始時に、インク吐出を行わずにノズル孔521hの液面Lsを振動させる吐出前振動を実行した後に、インク吐出を実行するようにヘッド駆動部53を制御する。このとき、制御部7は、複数のインク吐出ノズル521それぞれからのインクの吐出量に基づき、インク吐出ノズル521における吐出前振動の振幅または振動回数を制御する。
【0033】
上記の構成によれば、用紙Sに画像を記録するためのインク吐出の前に、インク吐出を行わずにノズル孔521hの液面Lsを振動させることで、ノズル孔521hにおけるインクの乾燥増粘を加速することができる。インクを意図的に増粘させることで、インクの滲みの発生を抑制できる。さらに、インクの吐出量が異なる場合でも、安定的にノズル孔521hにおけるインクの乾燥増粘を促進できる。すなわち、簡便な構成及び制御によって、インクの滲みの発生を抑制することが可能になる。
【0034】
図5及び図6は、記録ヘッド52の駆動波形(振幅大、振幅小)を示すグラフである。詳細に言えば、図5及び図6は圧電素子526の駆動波形を示しており、図の横軸は時間であり、図の縦軸は個別電極527に印加される駆動電圧である。
【0035】
インク吐出ノズル521からのインクの吐出量が多い場合、図5に示すように、制御部7は、インク吐出ノズル521における吐出前振動の振幅を大きくする。インク吐出ノズル521からのインクの吐出量が少ない場合、図6に示すように、制御部7は、インク吐出ノズル521における吐出前振動の振幅を小さくする。なお、インクの吐出量が多い場合または少ない場合に、吐出前振動の振動回数を多くまたは少なくしても良い。
【0036】
そして、制御部7は、インクの吐出量が多いほど、インク吐出ノズル521における吐出前振動の振幅または振動回数を増加させる。この構成によれば、インクの吐出量が多い場合に、ノズル孔521hにおけるインクの乾燥増粘を早めることができる。すなわち、インクの吐出量が多くなっても、インクの滲みの発生を抑制することが可能になる。
【0037】
図7は、単色及び混色の場合の圧電素子526の振動回数を示す説明図である。図7において、用紙Sには、それぞれ同じ形状且つ同じサイズの、シアン単色で描かれた矩形のシアン画像Pcと、イエロー単色で描かれた矩形のイエロー画像Pyと、シアンとイエローとを混色して描かれた矩形のグリーン画像Pgと、が記録されている。なお、グリーン画像Pgは、同じ形状且つ同じサイズのシアン画像Pcとイエロー画像Pyとを同じ位置に重ねて記録されるが、説明の便宜上、図7では僅かにずらして描画している。また、3つの画像は、インク滴によって形成される複数の画素を、矩形領域に集合させて記録している。
【0038】
図7において、用紙Sの上側には、シアン画像Pc、グリーン画像Pg、及びイエロー画像Pyそれぞれを用紙Sに記録するためのインク吐出の前に実行される吐出前振動の、圧電素子526の振動回数を示している。本実施形態において、制御部7は、図7に示すように単色のシアン画像Pc及びイエロー画像Pyと比較して、混色のグリーン画像Pgの吐出前振動において、圧電素子526の振動回数を概ね2倍に増加させる。
【0039】
言い換えれば、制御部7は、複数色のインクが同じ位置に吐出される場合に、単色のインクが吐出される場合と比較して、吐出前振動の振幅または振動回数を増加させる。複数色のインクが同じ位置に吐出されて重なる場合、インクの滲みが発生し易くなる虞がある。しかしながら、本実施形態の構成によれば、ノズル孔521hにおけるインクの乾燥増粘を加速させて、インクの滲みを抑制できる。
【0040】
そして、制御部7は、インク滴によって形成される画素が複数集まって構成されるシアン画像Pc、グリーン画像Pg、及びイエロー画像Pyそれぞれの記録開始時に、インク吐出ノズル521における吐出前振動を実行する。この構成によれば、画像を記録する度に、ノズル孔521hにおけるインクの乾燥増粘を加速することができる。これにより、画像において、インクの滲みの発生を抑制することが可能になる。
【0041】
また、制御部7は、インク吐出ノズル521から連続してインクが吐出される連続吐出時において、1回の吐出毎に、インク吐出ノズル521における吐出前振動を実行することにしても良い。例えば、図7に示すシアン画像Pc、グリーン画像Pg、及びイエロー画像Pyを記録する際、各色の複数のインク吐出ノズル521それぞれから連続してインクが吐出され、矩形の画像が個別に形成される。このとき、制御部7は、複数のインク吐出ノズル521それぞれにおいて、1回の吐出毎に、吐出前振動を実行する。
【0042】
上記の構成によれば、連続吐出時において、1回の吐出毎に、ノズル孔521hにおけるインクの乾燥増粘を加速することができる。これにより、画像において、より一層効果的にインクの滲みの発生を抑制することが可能になる。
【0043】
また、記録ヘッド52は、上記構成の複数の加圧室523及び複数の圧電素子526を備える。そして、ヘッド駆動部53は、インク滴の吐出条件に応じて予め定められた圧電素子526の駆動電圧及び駆動波形を含む駆動信号によって圧電素子526の振動を制御し、インク吐出ノズル521からインクを吐出させる。
【0044】
上記の構成によれば、複数の加圧室523及び複数の圧電素子526を備える記録ヘッド52において、簡便な構成及び制御によって、ノズル孔521hにおけるインクの乾燥増粘を加速することができる。したがって、記録ヘッド52を用いた画像の記録において、インクの滲みの発生を抑制することが可能である。
【0045】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、インクジェット記録装置において利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 インクジェット記録装置
5 記録部
7 制御部
8 記憶部
52、52a、52b、52c 記録ヘッド
52F 吐出面
53 ヘッド駆動部
521 インク吐出ノズル
521h ノズル孔
523 加圧室
526 圧電素子(振動素子)
Ls 液面
S 用紙(記録媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7