(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150728
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】積層型蓄電素子用の電極及び積層型蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 4/02 20060101AFI20231005BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20231005BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20231005BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20231005BHJP
H01G 11/70 20130101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M4/02 Z
H01M50/531
H01M4/13
H01G11/06
H01G11/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059970
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】松山 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】大串 将巧
(72)【発明者】
【氏名】富樫 英世
(72)【発明者】
【氏名】山崎 健
【テーマコード(参考)】
5E078
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB02
5E078AB06
5E078FA03
5E078FA24
5H043AA02
5H043BA19
5H043CA08
5H043CA13
5H043EA07
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA20
5H050HA12
(57)【要約】 (修正有)
【課題】タブ部の耐久性に優れる積層型蓄電素子用の電極を提供する。
【解決手段】電極10は、圧延金属箔からなる矩形状の電極基材12と、上記電極基材12と一体に形成され、上記電極基材12の短辺から突出するタブ部11とを備え、上記タブ部11の突出方向が、上記圧延金属箔の圧延方向に沿っている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延金属箔からなる矩形状の電極基材と、
上記電極基材と一体に形成され、上記電極基材の短辺から突出するタブ部と
を備え、
上記タブ部の突出方向が、上記圧延金属箔の圧延方向に沿っている積層型蓄電素子用の電極。
【請求項2】
請求項1に記載の電極を備える積層型蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型蓄電素子用の電極及び積層型蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、エネルギー密度の高さから、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車等に多用されている。また、非水電解液二次電池以外の蓄電素子として、リチウムイオンキャパシタや電気二重層キャパシタ等のキャパシタ、非水電解液以外の電解質が用いられた蓄電素子等も広く普及している。
【0003】
通常、蓄電素子の正極板は、例えば、アルミニウム箔からなる矩形状の芯体の両面に活物質合材層が形成された本体部を有する。正極板には、延出した芯体である正極タブが形成され、正極タブは正極集電体を介して、正極端子に電気的に接続される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような蓄電素子の電極のタブは電流経路となることから、耐久性が求められる。
【0006】
本発明の目的は、タブの耐久性に優れる電極、及びこのような電極を備える積層型蓄電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る積層型蓄電素子用の電極は、圧延金属箔からなる矩形状の電極基材と、上記電極基材と一体に形成され、上記電極基材の短辺から突出するタブ部とを備え、上記タブ部の突出方向が、上記圧延金属箔の圧延方向に沿っている。
【0008】
本発明の他の一側面に係る積層型蓄電素子は、本発明の一側面に係る積層型蓄電素子用の電極を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、タブ部の耐久性に優れる積層型蓄電素子用の電極、及びこのような電極を備える積層型蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、積層型蓄電素子用の電極の一実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、電極基材及びタブ部の一実施形態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、積層型蓄電素子の一実施形態を示す模式的分解斜視図である。
【
図4】
図4は、蓄電素子を複数個集合して構成した蓄電装置の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
初めに、本明細書によって開示される積層型蓄電素子用の電極及び積層型蓄電素子の概要について説明する。
【0012】
本発明の一側面に係る積層型蓄電素子用の電極は、圧延金属箔からなる矩形状の電極基材と、上記電極基材と一体に形成され、上記電極基材の短辺から突出するタブ部とを備え、上記タブ部の突出方向が、上記圧延金属箔の圧延方向に沿っている。
【0013】
本発明の一側面に係る積層型蓄電素子用の電極は、タブ部の耐久性に優れる。この理由としては、以下の理由が考えられる。当該積層型蓄電素子用の電極のタブ部は、上記電極基材と一体に形成され、上記電極基材の短辺から突出し、上記タブ部の突出方向が、上記圧延金属箔の圧延方向に沿っている。圧延金属箔は、圧延方向が高い強度を有するため、上記タブ部は高い強度が要求される突出方向の強度が優れる。従って、当該積層型蓄電素子用の電極は、タブ部の耐久性に優れる。また、上記タブ部が上記電極基材の短辺から突出することで、電池容器内の正極タブ部及び負極タブ部によって形成される集電スペースを小さくできるためエネルギー密度を上げることができる。さらに、圧延金属箔の圧延方向がタブ部の突出方向、すなわち電極基材の長辺方向に沿っていることにより電極基材のたわみ量が小さくなり、製造工程における積層時等での取り扱いが容易となる。
【0014】
上記「圧延金属箔の圧延方向」とは、圧延金属箔の圧延工程において、一対のロール間に金属箔を通過させて圧延する際に金属箔が延びる方向を意味する。上記圧延方向は、タブ部を縦断面及び横断面に沿って切断し、その切断面の金属顕微鏡による観察画像において、結晶粒子径が大きい方向をいう。
【0015】
本発明の他の一側面に係る積層型蓄電素子は、本発明の一側面に係る積層型蓄電素子用の電極を備える積層型蓄電素子である。当該積層型蓄電素子は、電極のタブ部の耐久性に優れる。
【0016】
本発明の一実施形態に係る積層型蓄電素子用の電極の構成、積層型蓄電素子の構成、蓄電装置の構成、及び積層型蓄電素子の製造方法、並びにその他の実施形態について詳述する。なお、各実施形態に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称は、背景技術に用いられる各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0017】
<電極>
本発明の一実施形態に係る積層型蓄電素子用の電極は、平板状の正極と平板状の負極とが積層された積層型電極体を備える積層型蓄電素子に正極又は負極として用いられる。当該電極は、電極基材及び上記タブ部を備える。また、当該電極は、電極基材に直接又は中間層を介して配される活物質層を有する。当該電極は、正極であってもよく、負極であってもよく、正極及び負極の双方であってもよい。
【0018】
図1は、積層型蓄電素子用の電極の一実施形態を示す概略図である。
図2は、電極基材及びタブ部の一実施形態を示す概略図である。
図1に示すように、電極10は、圧延金属箔からなる矩形状(長方形状)の電極基材12と、タブ部11とを有している。また、電極10は、電極基材12の表面の一部に積層される活物質層13を有している。活物質層13は、電極基材12の片面又は両面に形成される。タブ部11では、活物質層13が形成されておらず、圧延金属箔が露出している。なお、電極10は、電極基材12の表面の全面に活物質層13が形成されており、タブ部11のみで圧延金属箔が露出していてもよい。
【0019】
電極基材12及びタブ部11は、圧延金属箔から形成されている。
図2に示すように、タブ部11は、例えば矩形状である。タブ部11は、電極基材12と一体に形成され、電極基材12の短辺18の一方側から突出している。電極基材12及びタブ部11を構成する圧延金属箔の圧延方向Rは、タブ部11の突出方向(電極基材12の長辺方向)に沿っている。
【0020】
電極基材12及びタブ部11の平均厚さは、2μm以上50μm以下が好ましく、3μm以上40μm以下がより好ましく、4μm以上30μm以下がさらに好ましく、5μm以上25μm以下が特に好ましい。電極基材12及びタブ部11の平均厚さを上記の範囲とすることで、電極基材及びタブ部の強度を高めつつ、当該積層型蓄電素子の体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
【0021】
タブ部11の突出方向(電極基材12の長辺方向)における平均長さの下限としては、5mmが好ましく、8mmがより好ましい。一方、タブ部11の上記平均長さの上限としては、35mmが好ましく、30mmがより好ましい。上記平均長さが上記下限以上であることで、良好な集電ができる。一方、上記平均長さが上記上限以下であることで、タブ部11の強度を良好な範囲とすることができる。
【0022】
タブ部11の突出方向と直交する方向(電極基材12の短辺方向)における平均幅の下限としては、10mmが好ましく、15mmがより好ましい。一方、タブ部11の上記平均幅の上限としては、60mmが好ましく、50mmがより好ましい。上記平均幅が上記下限以上であることで、タブ部11の強度を良好な範囲とすることができる。一方、上記平均幅が上記上限以下であることで、他の部品との接触を抑制できる。
【0023】
タブ部11の上記突出方向と直交する方向における平均幅に対する上記突出方向における平均長さの比の下限としては、0.08が好ましく、0.16がより好ましい。一方、タブ部11の上記平均幅に対する上記平均長さの比の上限としては、3.5が好ましく、2.0がより好ましい。上記タブ部11の平均幅に対する平均長さの比が上記下限以上であることで、良好に集電することができる。一方、タブ部11の上記平均幅に対する上記平均長さの比が上記上限以下であることで、タブ部11の強度を良好な範囲にすることができる。
【0024】
電極基材12の短辺18の長さに対する電極基材12の長辺の長さとの比としては、1.0超3.6以下が好ましく、1.5以上3.0以下がより好ましい。
【0025】
電極基材12は、導電性を有する。「導電性」を有するか否かは、JIS-H-0505(1975年)に準拠して測定される体積抵抗率が10-2Ω・cmを閾値として判定する。
【0026】
当該電極10が正極である場合の電極基材(正極基材)に用いる圧延金属箔の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属又はこれらの合金が用いられる。これらの中でも、耐電位性、導電性の高さ、及びコストの観点からアルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。従って、正極基材としては圧延アルミニウム箔又は圧延アルミニウム合金箔が好ましい。アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H-4000(2014年)又はJIS-H-4160(2006年)に規定されるA1085、A3003、A1N30等が例示できる。
【0027】
当該電極10が負極である場合の電極基材(負極基材)に用いる圧延金属箔の材質としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼、アルミニウム等の金属又はこれらの合金等が用いられる。これらの中でも銅又は銅合金が好ましい。従って、負極基材としては圧延銅箔又は圧延銅合金箔が好ましい。
【0028】
中間層は、電極基材と活物質層との間に配される層である。中間層は、炭素粒子等の導電剤を含むことで電極基材と活物質層との接触抵抗を低減する。中間層の構成は特に限定されず、例えば、バインダ及び導電剤を含む。
【0029】
活物質層13は、活物質を含む。活物質層は、必要に応じて、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。
【0030】
当該電極10が正極である場合の正極活物質としては、公知の正極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。正極活物質としては、例えば、α-NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物、ポリアニオン化合物、カルコゲン化合物、硫黄等が挙げられる。α-NaFeO2型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、例えば、Li[LixNi(1-x)]O2(0≦x<0.5)、Li[LixNiγCo(1-x-γ)]O2(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LixCo(1-x)]O2(0≦x<0.5)、Li[LixNiγMn(1-x-γ)]O2(0≦x<0.5、0<γ<1)、Li[LixNiγMnβCo(1-x-γ-β)]O2(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)、Li[LixNiγCoβAl(1-x-γ-β)]O2(0≦x<0.5、0<γ、0<β、0.5<γ+β<1)等が挙げられる。スピネル型結晶構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物として、LixMn2O4、LixNiγMn(2-γ)O4等が挙げられる。ポリアニオン化合物として、LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCoPO4、Li3V2(PO4)3、Li2MnSiO4、Li2CoPO4F等が挙げられる。カルコゲン化合物として、二硫化チタン、二硫化モリブデン、二酸化モリブデン等が挙げられる。これらの材料中の原子又はポリアニオンは、他の元素からなる原子又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。これらの材料は表面が他の材料で被覆されていてもよい。正極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
正極活物質は、通常、粒子(粉体)である。正極活物質の平均粒径は、例えば、0.1μm以上20μm以下とすることが好ましい。正極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、正極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。正極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、正極活物質層の電子伝導性が向上する。なお、正極活物質と他の材料との複合体を用いる場合、該複合体の平均粒径を正極活物質の平均粒径とする。「平均粒径」とは、JIS-Z-8825(2013年)に準拠し、粒子を溶媒で希釈した希釈液に対しレーザ回折・散乱法により測定した粒径分布に基づき、JIS-Z-8819-2(2001年)に準拠し計算される体積基準積算分布が50%となる値を意味する。
【0032】
粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法として、例えば、乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェットミル、旋回気流型ジェットミル又は篩等を用いる方法が挙げられる。粉砕時には水、あるいはヘキサン等の非水溶媒を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、篩や風力分級機等が、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
【0033】
正極活物質層における正極活物質の含有量は、50質量%以上99質量%以下が好ましく、70質量%以上98質量%以下がより好ましく、80質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。正極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、正極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
【0034】
当該電極10が負極である場合の負極活物質としては、公知の負極活物質の中から適宜選択できる。リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、通常、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材料が用いられる。負極活物質としては、例えば、金属Li;Si、Sn等の金属又は半金属;Si酸化物、Ti酸化物、Sn酸化物等の金属酸化物又は半金属酸化物;Li4Ti5O12、LiTiO2、TiNb2O7等のチタン含有酸化物;ポリリン酸化合物;炭化ケイ素;黒鉛(グラファイト)、非黒鉛質炭素(易黒鉛化性炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材料等が挙げられる。これらの材料の中でも、黒鉛及び非黒鉛質炭素が好ましい。負極活物質層においては、これら材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
「黒鉛」とは、充放電前又は放電された状態において、エックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.33nm以上0.34nm未満の炭素材料をいう。黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。安定した物性の材料を入手できるという観点で、人造黒鉛が好ましい。
【0036】
「非黒鉛質炭素」とは、充放電前又は放電された状態においてエックス線回折法により決定される(002)面の平均格子面間隔(d002)が0.34nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。非黒鉛質炭素としては、難黒鉛化性炭素や、易黒鉛化性炭素が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、例えば、樹脂由来の材料、石油ピッチまたは石油ピッチ由来の材料、石油コークスまたは石油コークス由来の材料、植物由来の材料、アルコール由来の材料等が挙げられる。
【0037】
ここで、黒鉛等の炭素材料の「放電された状態」とは、負極活物質である炭素材料から、充放電に伴い吸蔵放出可能なリチウム等のイオンが十分に放出されるように放電された状態を意味する。例えば、負極活物質として炭素材料を含む負極を作用極として、金属リチウム(Li)を対極として用いた半電池において、開回路電圧が0.7V以上である状態である。
【0038】
「難黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.36nm以上0.42nm以下の炭素材料をいう。
【0039】
「易黒鉛化性炭素」とは、上記d002が0.34nm以上0.36nm未満の炭素材料をいう。
【0040】
負極活物質は、通常、粒子(粉体)である。負極活物質の平均粒径は、例えば、1nm以上100μm以下とすることができる。負極活物質が炭素材料、チタン含有酸化物又はポリリン酸化合物である場合、その平均粒径は、1μm以上100μm以下であってもよい。負極活物質が、Si、Sn、Si酸化物、又は、Sn酸化物等である場合、その平均粒径は、1nm以上1μm以下であってもよい。負極活物質の平均粒径を上記下限以上とすることで、負極活物質の製造又は取り扱いが容易になる。負極活物質の平均粒径を上記上限以下とすることで、活物質層の電子伝導性が向上する。粉体を所定の粒径で得るためには粉砕機や分級機等が用いられる。粉砕方法及び分級方法は、例えば、上記正極で例示した方法から選択できる。負極活物質が金属Li等の金属である場合、負極活物質は、箔状であってもよい。
【0041】
負極活物質層における負極活物質の含有量は、60質量%以上99質量%以下が好ましく、90質量%以上98質量%以下がより好ましい。負極活物質の含有量を上記の範囲とすることで、負極活物質層の高エネルギー密度化と製造性を両立できる。
【0042】
導電剤は、導電性を有する材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、例えば、炭素質材料、金属、導電性セラミックス等が挙げられる。炭素質材料としては、黒鉛、非黒鉛質炭素、グラフェン系炭素等が挙げられる。非黒鉛質炭素としては、カーボンナノファイバー、ピッチ系炭素繊維、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。グラフェン系炭素としては、グラフェン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン等が挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。導電剤としては、これらの材料の1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの材料を複合化して用いてもよい。例えば、カーボンブラックとCNTとを複合化した材料を用いてもよい。これらの中でも、電子伝導性及び塗工性の観点よりカーボンブラックが好ましく、中でもアセチレンブラックが好ましい。
【0043】
活物質層13における導電剤の含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。導電剤の含有量を上記の範囲とすることで、積層型蓄電素子のエネルギー密度を高めることができる。
【0044】
バインダとしては、例えば、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリル、ポリイミド等の熱可塑性樹脂;エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のエラストマー;多糖類高分子等が挙げられる。
【0045】
活物質層13におけるバインダの含有量は、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上9質量%以下がより好ましい。バインダの含有量を上記の範囲とすることで、活物質を安定して保持することができる。
【0046】
増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。増粘剤がリチウム等と反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させてもよい。
【0047】
フィラーは、特に限定されない。フィラーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の無機酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、炭酸カルシウム等の炭酸塩、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫酸バリウム等の難溶性のイオン結晶、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物、タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。
【0048】
活物質層13は、B、N、P、F、Cl、Br、I等の典型非金属元素、Li、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Ge、Sn、Sr、Ba等の典型金属元素、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo、Zr、Ta、Hf、Nb、W等の遷移金属元素を活物質、導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー以外の成分として含有してもよい。
【0049】
電極の作製方法としては、例えば、圧延金属箔の表面の一部に直接又は中間層を介して電極合剤ペースト(正極合剤ペースト又は負極合剤ペースト)を塗布し、乾燥させた後に、必要に応じてロールプレス等を行い、活物質層(正極活物質層又は負極活物質層)を形成する。そして、圧延金属箔の圧延方向が、タブ部の突出方向かつ電極基材の長辺方向に沿うように圧延金属箔及び活物質層を電極基材及びタブ部の形状に切り出すことにより電極を形成してもよい。また、圧延金属箔の圧延方向がタブ部の突出方向かつ電極基材の長辺方向に沿うように圧延金属箔から一括して切り出すことにより電極基材及びタブ部を形成した後、切り出された電極基材の表面の一部又は全面に直接又は中間層を介して電極合剤ペーストを塗布し、乾燥させて活物質層を形成してもよい。乾燥後、必要に応じてロールプレス等を行ってもよい。上記電極合剤ペーストには、活物質、導電剤、バインダ及び必要に応じて他の任意成分が含まれる。電極合剤ペーストには、通常さらに分散媒が含まれる。
【0050】
<積層型蓄電素子の構成>
本発明の一実施形態に係る積層型蓄電素子は、上記正極、上記負極及びセパレータを有する電極体と、電解質と、上記電極体及び電解質を収容する容器とを備える。上記正極、上記負極の少なくとも一方又はこれらの組み合わせが本発明の一実施形態に係る積層型蓄電素子用の電極である。上記電極体は、複数の正極及び複数の負極がセパレータを介して重ねられた積層型である。電解質は、正極、負極及びセパレータに含まれた状態で存在する。積層型蓄電素子の一例として、非水電解質二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)について説明する。
【0051】
本実施形態の積層型蓄電素子の形状については特に限定されるものではなく、例えば、角型電池、扁平型電池等が挙げられる。
【0052】
図3に角型電池の一例としての積層型蓄電素子1を示す。なお、同図は、容器内部を透視した図としている。積層型蓄電素子1は、容器3と、容器3の細長い矩形状の開口部を閉鎖可能である細長い矩形板状の蓋体6と、容器3の中に収容される電極体2と、蓋体6に設けられる正極端子4及び負極端子5とを備えている。正極端子4は、正極リード41を介して電極体2の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子5は、負極リード51を介して電極体2の負極に電気的に接続された電極端子である。
【0053】
積層型蓄電素子1では、電極基材12の長辺方向(
図2に示す電極基材12の圧延方向R)が鉛直方向に沿うように電極体2が配置されている。電極体2は、複数の正極及び複数の負極が交互に積層され、それぞれの間に、複数のセパレータが配置されることにより構成される。正極には、正極基材と一体に形成され、正極基材の短辺から突出している正極タブ部42が形成されている。負極には、負極基材と一体に形成され、負極基材の短辺から突出している負極タブ部52が形成されている。正極リード41は、電極体2の上方の正極タブ部42側に配置され、正極端子4と正極タブ部42とが正極リード41を介して電気的に接続される。負極リード51は、電極体2の上方の負極タブ部52側に配置され、負極端子5と負極タブ部52とが負極リード51を介して電気的に接続される。具体的には、正極リード41は、電極体2の正極タブ部42に溶接などによって接合されることで、電極体2の正極と接続される。また、負極リード51は、電極体2の負極タブ部52に溶接などによって接合されることで、電極体2の負極と接続される。
【0054】
正極タブ部42及び負極タブ部52は、電極基材12の長辺方向(長辺が延びる方向)に沿って鉛直上方へ突出している。正極基材及び正極タブ部42又は負極基材及び負極タブ部52を構成する圧延金属箔の圧延方向Rは、正極タブ部42及び負極タブ部52の突出方向(電極基材12の長辺方向)に、すなわち積層型蓄電素子1の鉛直方向に沿っている。
【0055】
(正極及び負極)
正極及び負極の少なくとも一方は、上記した本発明の一実施形態に係る積層型蓄電素子用の電極である。正極及び負極のいずれか一方が、上記した本発明の一実施形態に係る積層型蓄電素子用の電極以外の電極である場合、このような電極としては、従来公知の電極を用いることができる。従来公知の電極の構成としては、「圧延金属箔からなる矩形状の電極基材と、上記電極基材と一体に形成され、上記電極基材の短辺から突出するタブ部とを備え、上記タブ部の突出方向が、上記圧延金属箔の圧延方向に沿っていること」を満たさないこと以外は上記した本発明の一実施形態に係る積層型蓄電素子用の電極と同様の構成を挙げることができる。
【0056】
(セパレータ)
セパレータは、公知のセパレータの中から適宜選択できる。セパレータとして、例えば、基材層のみからなるセパレータ、基材層の一方の面又は双方の面に耐熱粒子とバインダとを含む耐熱層が形成されたセパレータ等を使用することができる。セパレータの基材層の形状としては、例えば、織布、不織布、多孔質樹脂フィルム等が挙げられる。これらの形状の中でも、強度の観点から多孔質樹脂フィルムが好ましく、非水電解質の保液性の観点から不織布が好ましい。セパレータの基材層の材料としては、シャットダウン機能の観点から例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく、耐酸化分解性の観点から例えばポリイミドやアラミド等が好ましい。セパレータの基材層として、これらの樹脂を複合した材料を用いてもよい。
【0057】
耐熱層に含まれる耐熱粒子は、1気圧の空気雰囲気下で室温から500℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものが好ましく、室温から800℃まで昇温したときの質量減少が5%以下であるものがさらに好ましい。質量減少が所定以下である材料として無機化合物が挙げられる。無機化合物として、例えば、酸化鉄、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、アルミノケイ酸塩等の酸化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;硫酸バリウム等の硫酸塩;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、チタン酸バリウム等の難溶性のイオン結晶;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶;タルク、モンモリロナイト、ベーマイト、ゼオライト、アパタイト、カオリン、ムライト、スピネル、オリビン、セリサイト、ベントナイト、マイカ等の鉱物資源由来物質又はこれらの人造物等が挙げられる。無機化合物として、これらの物質の単体又は複合体を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機化合物の中でも、積層型蓄電素子の安全性の観点から、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又はアルミノケイ酸塩が好ましい。
【0058】
セパレータの空孔率は、強度の観点から80体積%以下が好ましく、放電性能の観点から20体積%以上が好ましい。ここで、「空孔率」とは、体積基準の値であり、水銀ポロシメータでの測定値を意味する。
【0059】
セパレータとして、ポリマーと非水電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。ポリマーとして、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリメチルメタアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。ポリマーゲルを用いると、漏液を抑制する効果がある。セパレータとして、上述したような多孔質樹脂フィルム又は不織布等とポリマーゲルを併用してもよい。
【0060】
(非水電解質)
非水電解質としては、公知の非水電解質の中から適宜選択できる。非水電解質には、非水電解液を用いてもよい。非水電解液は、非水溶媒と、この非水溶媒に溶解されている電解質塩とを含む。
【0061】
非水溶媒としては、公知の非水溶媒の中から適宜選択できる。非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、カルボン酸エステル、リン酸エステル、スルホン酸エステル、エーテル、アミド、ニトリル等が挙げられる。非水溶媒として、これらの化合物に含まれる水素原子の一部がハロゲンに置換されたものを用いてもよい。
【0062】
環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、スチレンカーボネート、1-フェニルビニレンカーボネート、1,2-ジフェニルビニレンカーボネート等が挙げられる。これらの中でもECが好ましい。
【0063】
鎖状カーボネートとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジフェニルカーボネート、トリフルオロエチルメチルカーボネート、ビス(トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。これらの中でもEMCが好ましい。
【0064】
非水溶媒として、環状カーボネート又は鎖状カーボネートを用いることが好ましく、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用することがより好ましい。環状カーボネートを用いることで、電解質塩の解離を促進して非水電解液のイオン伝導度を向上させることができる。鎖状カーボネートを用いることで、非水電解液の粘度を低く抑えることができる。環状カーボネートと鎖状カーボネートとを併用する場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの体積比率(環状カーボネート:鎖状カーボネート)としては、例えば、5:95から50:50の範囲とすることが好ましい。
【0065】
電解質塩としては、公知の電解質塩から適宜選択できる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、オニウム塩等が挙げられる。これらの中でもリチウム塩が好ましい。
【0066】
リチウム塩としては、LiPF6、LiPO2F2、LiBF4、LiClO4、LiN(SO2F)2等の無機リチウム塩、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホスフェート(LiFOP)等のシュウ酸リチウム塩、LiSO3CF3、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C4F9)、LiC(SO2CF3)3、LiC(SO2C2F5)3等のハロゲン化炭化水素基を有するリチウム塩等が挙げられる。これらの中でも、無機リチウム塩が好ましく、LiPF6がより好ましい。
【0067】
非水電解液における電解質塩の含有量は、20℃1気圧下において、0.1mol/dm3以上2.5mol/dm3以下であると好ましく、0.3mol/dm3以上2.0mol/dm3以下であるとより好ましく、0.5mol/dm3以上1.7mol/dm3以下であるとさらに好ましく、0.7mol/dm3以上1.5mol/dm3以下であると特に好ましい。電解質塩の含有量を上記の範囲とすることで、非水電解液のイオン伝導度を高めることができる。
【0068】
非水電解液は、非水溶媒及び電解質塩以外に、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、リチウムビス(オキサレート)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロオキサレートボレート(LiFOB)、リチウムビス(オキサレート)ジフルオロホスフェート(LiFOP)等のシュウ酸塩;リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のイミド塩;ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t-ブチルベンゼン、t-アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の芳香族化合物;2-フルオロビフェニル、o-シクロヘキシルフルオロベンゼン、p-シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分ハロゲン化物;2,4-ジフルオロアニソール、2,5-ジフルオロアニソール、2,6-ジフルオロアニソール、3,5-ジフルオロアニソール等のハロゲン化アニソール化合物;ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物;亜硫酸エチレン、亜硫酸プロピレン、亜硫酸ジメチル、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、トルエンスルホン酸メチル、硫酸ジメチル、硫酸エチレン、スルホラン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン)、4-メチルスルホニルオキシメチル-2,2-ジオキソ-1,3,2-ジオキサチオラン、チオアニソール、ジフェニルジスルフィド、ジピリジニウムジスルフィド、1,3-プロペンスルトン、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、1,4-ブテンスルトン、パーフルオロオクタン、ホウ酸トリストリメチルシリル、リン酸トリストリメチルシリル、チタン酸テトラキストリメチルシリル、モノフルオロリン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム等が挙げられる。これら添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0069】
非水電解液に含まれる添加剤の含有量は、非水電解液全体の質量に対して0.01質量%以上10質量%以下であると好ましく、0.1質量%以上7質量%以下であるとより好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であるとさらに好ましく、0.3質量%以上3質量%以下であると特に好ましい。添加剤の含有量を上記の範囲とすることで、高温保存後の容量維持性能又はサイクル性能を向上させたり、安全性をより向上させたりすることができる。
【0070】
非水電解質には、固体電解質を用いてもよく、非水電解液と固体電解質とを併用してもよい。
【0071】
固体電解質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオン伝導性を有し、常温(例えば15℃から25℃)において固体である任意の材料から選択できる。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、及び酸窒化物固体電解質、ポリマー固体電解質、ゲルポリマー電解質等が挙げられる。
【0072】
硫化物固体電解質としては、リチウムイオン二次電池の場合、例えば、Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2S5、Li10Ge-P2S12等が挙げられる。
【0073】
<蓄電装置の構成>
本実施形態の積層型蓄電素子は、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の自動車用電源、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器用電源、又は電力貯蔵用電源等に、複数の積層型蓄電素子を集合して構成した蓄電ユニット(バッテリーモジュール)を備える蓄電装置として搭載することができる。この場合、蓄電装置に含まれる少なくとも一つの積層型蓄電素子に対して、本発明の技術が適用されていればよい。
【0074】
図4に、電気的に接続された二以上の積層型蓄電素子1が集合した蓄電ユニット20をさらに集合した蓄電装置30の一例を示す。蓄電装置30は、二以上の積層型蓄電素子1を電気的に接続するバスバー(図示せず)、二以上の蓄電ユニット20を電気的に接続するバスバー(図示せず)等を備えていてもよい。蓄電ユニット20又は蓄電装置30は、一以上の積層型蓄電素子1の状態を監視する状態監視装置(図示せず)を備えていてもよい。
【0075】
<積層型蓄電素子の製造方法>
本実施形態の積層型蓄電素子の製造方法は、公知の方法から適宜選択できる。当該製造方法は、例えば、電極体を準備することと、電解質を準備することと、電極体及び電解質を容器に収容することと、を備える。電極体を準備することは、少なくとも一方が上記電極基材及び上記タブ部を備える正極及び負極を準備することと、セパレータを介して正極及び負極を重ねることにより電極体を形成することとを備える。
【0076】
電解質を容器に収容することは、公知の方法から適宜選択できる。例えば、電解質に非水電解液を用いる場合、容器に形成された注入口から非水電解液を注入した後、注入口を封止すればよい。
<その他の実施形態>
尚、本発明の積層型蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成又は周知技術に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。また、ある実施形態の構成に対して周知技術を付加することができる。
【0077】
上記実施形態では、積層型蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、積層型蓄電素子の種類、形状、寸法、容量等は任意である。本発明は、種々の二次電池、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオンキャパシタ等のキャパシタにも適用できる。
【0078】
上記実施形態では、正極及び負極がセパレータを介して積層された電極体について説明したが、電極体は、セパレータを備えなくてもよい。例えば、正極又は負極の活物質層上に導電性を有さない層が形成された状態で、正極及び負極が直接接してもよい。また、本発明の積層型蓄電素子は、電解質が非水電解質以外の電解質(水を溶媒として含む電解質)である積層型蓄電素子にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、パーソナルコンピュータ、通信端末等の電子機器、自動車などの電源として使用される積層型蓄電素子、及びこれに備わる電極などに適用できる。
【符号の説明】
【0080】
1 積層型蓄電素子
2 電極体
3 容器
4 正極端子
5 負極端子
6 蓋体
10 電極
11 タブ部
12 電極基材
13 活物質層
18 電極基材の短辺
20 蓄電ユニット
30 蓄電装置
41 正極リード
42 正極タブ部
51 負極リード
52 負極タブ部
R 圧延金属箔の圧延方向