(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150730
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
F01P 11/14 20060101AFI20231005BHJP
F01P 11/10 20060101ALI20231005BHJP
E02F 9/00 20060101ALI20231005BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20231005BHJP
B60R 1/24 20220101ALI20231005BHJP
B60R 1/25 20220101ALI20231005BHJP
【FI】
F01P11/14 B
F01P11/10 K
E02F9/00 M
B60K11/04 F
B60R1/24
B60R1/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059976
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 祐司
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3D038AA04
3D038AB09
3D038AC03
3D038AC11
3D038AC14
(57)【要約】
【課題】熱交換器に堆積した塵埃を、適切なタイミングで排出することができる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、内部空間を外部に連通させる第1通気口及び第2通気口が形成された建屋と、前記内部空間に収容されて、第1通気口から第2通気口に向かう冷却風を生起させる正回転、及び第2通気口から第1通気口に向かう冷却風を生起させる逆回転が可能な冷却ファンと、冷却ファンと対向して配置された熱交換器と、建屋の周囲のうち、第1通気口が形成された建屋の側壁に対面する位置にいる人を検知するセンサと、センサの検知結果に基づいて、冷却ファンの回転を制御するコントローラとを備え、コントローラは、センサで人が検知されないことに応じて、冷却ファンを逆回転させ、冷却ファンを逆回転させている期間にセンサで人が検知されたことに応じて、冷却ファンの逆回転速度を制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を外部に連通させる第1通気口及び第2通気口が形成された建屋と、
前記内部空間に収容されて、前記第1通気口から前記第2通気口に向かう冷却風を生起させる正回転、及び前記第2通気口から前記第1通気口に向かう冷却風を生起させる逆回転が可能な冷却ファンと、
前記冷却ファンと対向して配置された熱交換器と、
前記建屋の周囲のうち、前記第1通気口が形成された前記建屋の側壁に対面する位置にいる人を検知するセンサと、
前記センサの検知結果に基づいて、前記冷却ファンの回転を制御するコントローラとを備える作業機械において、
前記コントローラは、
前記センサで人が検知されないことに応じて、前記冷却ファンを逆回転させ、
前記冷却ファンを逆回転させている期間に前記センサで人が検知されたことに応じて、前記冷却ファンの逆回転速度を制御することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記冷却ファンを逆回転させている期間に前記センサで人が検知されたとき、前記冷却ファンの逆回転速度を遅くする制御を行うことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記冷却ファンを逆回転させている期間に前記センサで人が検知されたとき、前記冷却ファンの逆回転を停止する制御を行うことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項3に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記センサで人が検知されないことに応じて、前記冷却ファンを逆回転させると共に、前記冷却ファンが逆回転している逆回転時間の計測を開始し、
前記冷却ファンを逆回転させている期間に前記センサで人が検知されたことに応じて、前記冷却ファンの逆回転を停止すると共に、前記逆回転時間の計測を中断し、
前記冷却ファンの逆回転を停止している期間に前記センサで人が検知されなくなったことに応じて、前記冷却ファンの逆回転及び前記逆回転時間の計測を再開し、
前記逆回転時間が予め定められた閾値に達したことに応じて、前記冷却ファンを正回転させることを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項3に記載の作業機械において、
前記コントローラは、前記冷却ファンの逆回転を停止している期間に、前記冷却ファンを正回転させることを特徴とする作業機械。
【請求項6】
請求項3に記載の作業機械において、
前記冷却ファンを強制的に逆回転させることを指示する強制逆回転操作部を備え、
前記コントローラは、前記冷却ファンの逆回転を停止している期間に前記強制逆回転操作部が操作されたことに応じて、前記センサの検知結果に拘わらず、前記冷却ファンの逆回転を再開することを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファンの正回転及び逆回転が可能な作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械は、土砂の掘削作業で使用される他に、例えば、輸送船内での木材チップや石炭などの収集、金属スクラップの解体及び廃棄、産業廃棄物の分別など、塵埃が飛散する環境下で使用される場合もある。このように、外気に多量の塵埃が含まれる環境下で使用される作業機械は、熱交換器に塵埃が堆積して目詰まりを起こしやすく、熱交換器の熱交換効率が悪化する可能性がある。
【0003】
そこで、熱交換器の熱交換効率の悪化を防止するために、熱交換器に堆積した塵埃を冷却ファンの逆回転によって吹き飛ばして除去する機能を有する作業機械が存在する。例えば、特許文献1に記載の作業機械は、冷却ファンの正回転が所定の時間に達したことに応じて、自動的に逆回転するようにプログラムされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の作業機械では、コントローラが冷却ファンを自動的に逆回転させるので、作業者が周囲で作業をしている状況で、建屋カバーから塵埃や熱風が排出される可能性がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱交換器に堆積した塵埃を、適切なタイミングで排出することができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、内部空間を外部に連通させる第1通気口及び第2通気口が形成された建屋と、前記内部空間に収容されて、前記第1通気口から前記第2通気口に向かう冷却風を生起させる正回転、及び前記第2通気口から前記第1通気口に向かう冷却風を生起させる逆回転が可能な冷却ファンと、前記冷却ファンと対向して配置された熱交換器と、前記建屋の周囲のうち、前記第1通気口が形成された前記建屋の側壁に対面する位置にいる人を検知するセンサと、前記センサの検知結果に基づいて、前記冷却ファンの回転を制御するコントローラとを備える作業機械において、前記コントローラは、前記センサで人が検知されないことに応じて、前記冷却ファンを逆回転させ、前記冷却ファンを逆回転させている期間に前記センサで人が検知されたことに応じて、前記冷却ファンの逆回転速度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱交換器に堆積した塵埃を、適切なタイミングで排出することができる作業機械を得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る作業機械の代表例である油圧ショベルの側面図である。
【
図3】エンジン建屋を後方から見た断面図であって、冷却ファン12を正回転させたときの冷却風の流れを示している。
【
図4】エンジン建屋を後方から見た断面図であって、冷却ファン12を逆回転させたときの冷却風の流れを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る作業機械の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る作業機械の代表例である油圧ショベル1の側面図である。なお、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2に支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、機体の一例である。下部走行体2は、左右一対のクローラを備える。そして、走行モータ(図示省略)の回転が伝達されて左右一対のクローラが回転すると、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラに代えて、装輪式であってもよい。
【0012】
上部旋回体3は、下部走行体2に旋回可能に支持されている。上部旋回体3は、旋回モータ(図示省略)の駆動力が伝達されて、下部走行体2に対して旋回する。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム5と、旋回フレーム5の前端中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機4と、旋回フレーム5の前方左側に配置されたキャブ(運転席)7と、旋回フレーム5の後端に配置されたカウンタウェイト6とを主に備える。
【0013】
フロント作業機4は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム4aと、ブーム4aの先端に回動可能に支持されたアーム4bと、アーム4bの先端に回動可能に支持されたバケット4cと、ブーム4a、アーム4b、及びバケット4cを駆動させる油圧シリンダ4d、4e、4fとを含む。カウンタウェイト6は、フロント作業機4との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0014】
キャブ7には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する内部空間が形成されている。キャブ7の内部空間には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータが操作する操作装置が配置されている。そして、キャブ7に搭乗したオペレータが操作装置を操作することによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機4が動作する。
【0015】
操作装置は、強制逆回転ボタン8(
図2及び
図5参照)を含む。強制逆回転ボタン8は、後述するカメラ16Lによる人の検知結果に拘わらず、冷却ファン12を逆回転させる指示を受け付ける強制逆回転操作部の一例である。強制逆回転ボタン8は、キャブ7に搭乗したオペレータに操作(押下)されたことに応じて、後述するコントローラ30(
図5参照)に強制逆回転信号を出力する。なお、強制逆回転操作部は、ボタンの形態に限定されず、スイッチ、タッチパネルが重畳されたモニタ9に表示されたアイコンなどでもよい。
【0016】
また、キャブ7には、モニタ9(
図2及び
図5参照)が設置されている。モニタ9は、キャブ7に搭乗したオペレータに情報を報知する報知装置の一例である。モニタ9には、後述する俯瞰画像や各種メッセージなどが表示される。なお、報知装置の具体例は、モニタ9に限定されず、LEDランプ、スピーカ、またはこれらの組み合わせでもよい。
【0017】
また、上部旋回体3は、エンジン建屋10(建屋)を支持している。エンジン建屋10は、フロント作業機4及びキャブ7より後方で、カウンタウェイト6より前方において、旋回フレーム5に支持されている。エンジン建屋10は、油圧ショベル1を動作させるための構成部品を収容する内部空間を有する。
【0018】
図2は、上部旋回体3の平面図である。
図3は、エンジン建屋10を後方から見た断面図であって、冷却ファン12を正回転させたときの冷却風の流れを示している。
図4は、エンジン建屋10を後方から見た断面図であって、冷却ファン12を逆回転させたときの冷却風の流れを示している。
図2~
図4に示すように、エンジン建屋10の内部空間には、油圧ショベル1を動作させるための構成部品として、エンジン11、冷却ファン12、及び熱交換器13等が収容される。
【0019】
エンジン11は、冷却ファン12及び熱交換器13より右方に配置されている。エンジン11は、化石燃料と空気とを混合して燃焼させることによって、油圧ショベル1を動作させるための駆動力を発生させる。一方、エンジン11は、化石燃料を燃焼させることによって熱を発生させる。その結果、エンジン建屋10の内部空間が高温になる。
【0020】
冷却ファン12は、エンジン11より左方で、熱交換器13より右方に配置されている。冷却ファン12は、油圧モータや電動モータなどの駆動源(図示省略)によって駆動されることで、エンジン建屋10内に冷却風を生起させる。冷却ファン12は、コントローラ30の制御に従って、正回転及び逆回転が可能に構成されている。
【0021】
熱交換器13は、エンジン11及び冷却ファン12より左方に配置されている。熱交換器13は、エンジン11を冷却した冷却液を、正回転する冷却ファン12によって生起された冷却風と熱交換させ、再びエンジン11に供給するラジエータを含む。また、熱交換器13は、過給機(ターボチャージャ)で圧縮された空気を冷却するインタークーラ、作動油タンクに貯留された作動油を冷却する作動油クーラ等を含んでもよい。
【0022】
図3及び
図4に示すように、エンジン建屋10には、第1通気口14及び第2通気口15(以下、これらを総称して、「通気口14、15」と表記することがある。)が形成されている。通気口14、15は、エンジン建屋10の内部空間を油圧ショベル1の外部に連通させる開口である。通気口14、15は、エンジン建屋10の内部空間を画定する外壁を厚み方向に貫通している。
【0023】
第1通気口14は、エンジン建屋10の内部空間の左側面を画定する左側壁に形成されている。第2通気口15は、第1通気口14より右方に形成されている。本実施形態に係る第2通気口15は、エンジン建屋10の内部空間の天面を画定する天壁と、エンジン建屋10の内部空間の底面を画定する底壁とに形成されている。但し、通気口14、15の位置は、
図3及び
図4の例に限定されない。他の例として、第2通気口15は、エンジン建屋10の内部空間の右側面を画定する右側壁に形成されていてもよい。
【0024】
そして、エンジン11は、冷却ファン12より第2通気口15側に配置されている。また、熱交換器13は、冷却ファン12より第1通気口14側に配置されている。さらに、熱交換器13の左面(第1通気口14に対面する面)には、塵埃を捕集するネットが取り付けられていてもよい。なお、このような通気口14、15との位置関係を満たしていれば、エンジン11、冷却ファン12、熱交換器13の具体的な配置は、
図2~
図4の例に限定されない。
【0025】
図3に示すように、正回転する冷却ファン12は、第1通気口14から第2通気口15に向かう冷却風を生起させる。すなわち、冷却ファン12を正回転させると、塵埃を含んだ外気が第1通気口14を通じてエンジン建屋10の内部空間に流入し、熱交換器13、冷却ファン12、エンジン11を通過して、第2通気口15を通じてエンジン建屋10の内部空間から排出される。このとき、
図3にドットハッチングで示すように、外気に含まれる塵埃は、熱交換器13の左面に堆積する。そして、熱交換器13の左面に堆積する塵埃の量が多くなると、熱交換効率が低下する。
【0026】
図4に示すように、逆回転する冷却ファン12は、第2通気口15から第1通気口14に向かう冷却風を生起させる。すなわち、冷却ファン12を逆回転させると、外気が第2通気口15を通じてエンジン建屋10の内部空間に流入し、エンジン11、冷却ファン12、熱交換器13を通過して、第1通気口14を通じてエンジン建屋10の内部空間から排出される。このとき、
図4にドットハッチングで示すように、熱交換器13の左面に堆積した塵埃は、逆回転する冷却ファン12によって生起させた冷却風によって吹き飛ばされる。一方、エンジン11の熱を受けて高温になった冷却風が第1通気口14から排出される。
【0027】
さらに、
図2に示すように、油圧ショベル1は、カメラ16L、16R、16Bを備える。カメラ16L、16R、16Bは、上部旋回体3(より詳細には、エンジン建屋10またはカウンタウェイト6)の外壁に取り付けられている。また、カメラ16L、16R、16Bは、上部旋回体3の周囲を撮影するために、それぞれ異なる向きを向いて取り付けられている。
【0028】
より詳細には、カメラ16Lは、エンジン建屋10の左側壁に取り付けられて、上部旋回体3の左方を撮影する。カメラ16Rは、エンジン建屋10の右側壁に取り付けられて、上部旋回体3の右方を撮影する。カメラ16Bは、カウンタウェイト6に取り付けられて、上部旋回体3の後方を撮影する。そして、カメラ16L、16R、16Bは、撮影した映像を示す映像信号をコントローラ30に出力する。
【0029】
図5は、油圧ショベル1の制御ブロック図である。
図5に示すように、油圧ショベル1は、CPU31(Central Processing Unit)と、メモリ32とを有するコントローラ30を備える。メモリ32は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、またはこれらの組み合わせで構成される。コントローラ30は、メモリ32に格納されたプログラムコードをCPU31が読み出して実行することによって、後述する処理を実現する。
【0030】
但し、コントローラ30の具体的な構成はこれに限定されず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などのハードウェアによって実現されてもよい。
【0031】
コントローラ30は、油圧ショベル1全体の動作を制御する。コントローラ30は、強制逆回転ボタン8から出力される強制逆回転信号と、カメラ16L、16R、16Bから出力される映像信号とに基づいて、モニタ9に情報を表示し、エンジン11の駆動を制御し、冷却ファン12の回転を制御する。
【0032】
まず、コントローラ30は、カメラ16L、16R、16Bそれぞれから出力される映像信号に基づいて、上部旋回体3を上方から俯瞰した俯瞰画像を生成する。そして、コントローラ30は、生成した俯瞰画像をモニタ9に表示する。また、コントローラ30は、キャブ7に搭乗したオペレータによってキースイッチ(図示省略)が操作されたことに応じて、エンジン11を始動または停止させる。
【0033】
また、コントローラ30は、カメラ16Lから出力される映像信号に基づいて、第1通気口14に対面する位置(すなわち、エンジン建屋10の左方)に、人がいるか否かを判定する。より詳細には、コントローラ30は、既知の人抽出手法を用いて、カメラ16Lによって撮影された映像から人を抽出する。そして、コントローラ30は、カメラ16Lによって撮影された映像から人を抽出した(すなわち、カメラ16Lで人が検知された)か否かに応じて、冷却ファン12の回転を制御する。さらに、コントローラ30は、強制逆回転ボタン8から強制逆回転信号が出力されたことに応じて、カメラ16Lによる人の検知結果に拘わらず、冷却ファン12を逆回転させる。
【0034】
すなわち、カメラ16Lは、エンジン建屋10の周囲のうち、第1通気口14が形成されたエンジン建屋10の左側壁に対面する位置にいる人を検知するためのセンサの一例である。なお、本実施形態では、俯瞰画像を生成するためのカメラ16L、16R、16Bの1つを、人を検知するためのセンサとして流用する例を説明した。しかしながら、人を検知するためのセンサの具体例はカメラ16Lに限定されず、人及び物を区別することができるセンサ(例えば、LiDARなど)であればよい。
【0035】
図6は、逆回転制御処理のフローチャートである。逆回転制御処理は、熱交換器13の左面に堆積した塵埃を吹き飛ばすために、冷却ファン12を逆回転させる処理である。なお、本実施形態では、逆回転制御処理の開始時点において、エンジン11が駆動し、冷却ファン12が正回転し、下部走行体2、上部旋回体3、及びフロント作業機4が停止しているものとする。
【0036】
まずステップS11として、コントローラ30は、予め定められた逆回転条件が成立するまで、ステップS12以降の処理の実行を待機する(S11:No)。逆回転条件とは、熱交換器13に堆積した塵埃を吹き飛ばすために、冷却ファン12の逆回転を開始するタイミングを特定するための条件である。
【0037】
一例として、逆回転条件は、直近に逆回転制御処理が終了してからの経過時間が閾値に達したことでもよい。他の例として、逆回転条件は、直近に逆回転制御処理が終了してから冷却ファン12を正回転させている経過時間が閾値に達したことでもよい。経過時間は、例えば、コントローラ30に搭載されたシステムクロックによって計測することができる。また、逆回転条件には、前述した経過時間が閾値に達したことに加えて、エンジン11が駆動していること、油圧ショベル1が停止していること等が含まれていてもよい。
【0038】
ステップS11で逆回転条件が成立した場合(S11:Yes)、次のステップS12で、コントローラ30は、カメラ16Lによって人が検知されたか否かを判定する。そして、ステップS12でカメラ16Lによって人が検知された場合(S12:Yes)、コントローラ30は、ステップS13以降の処理の実行を待機する。また、コントローラ30は、カメラ16Lによって人が検知されなくなるまで、カメラ16Lによって人が検知されたか否かの判定を、所定の時間間隔で繰り返し実行する。
【0039】
ステップS12で、カメラ16Lによって人が検知されない場合(S12:No)、次のステップS13で、コントローラ30は、冷却ファン12を逆回転させると共に、予め定められた時間(例えば、30秒)にセットされたタイマを開始する。「タイマを開始する」とは、冷却ファン12が逆回転している逆回転時間の計測を開始することの一例である。
【0040】
次のステップS14及びステップS15で、コントローラ30は、冷却ファン12の逆回転を継続しながら、カメラ16Lによって人が検知されるか否か(S14)と、タイマがタイムアウトしたか否か(S15)とを、所定の時間間隔で繰り返し判定する。カメラ16Lによって人が検知されず(S14:No)、且つタイマがタイムアウトしていない期間(S15:No)は、冷却ファン12が逆回転している期間の一例である。
【0041】
そして、コントローラ30は、カメラ16Lによって人が検知されないままタイマがタイムアウトしたら(S15:Yes)、次のステップS16で冷却ファン12を正回転させて、逆回転制御処理を終了する。「タイマがタイムアウトした」とは、逆回転時間が予め定められた閾値(例えば、30秒)に達したことの一例である。
【0042】
一方、コントローラ30は、タイマがタイムアウトする前にカメラ16Lによって人が検知された場合(S14:Yes)、次のステップS17で冷却ファン12を停止させると共に、タイマを停止させる。「タイマを停止させる」とは、逆回転時間の計測を中断することの一例である。また、コントローラ30は、冷却ファン12の逆回転を中断したことを示すメッセージを、モニタ9に表示する。
【0043】
次のステップS18及びステップS19で、コントローラ30は、冷却ファン12を停止した状態で、カメラ16Lによって人が検知されているか否か(S18)と、強制逆回転ボタン8が押下されたか否か(S19)とを、所定の時間間隔で繰り返し判定する。カメラ16Lによって人が検知されており(S18:Yes)、且つ強制逆回転ボタン8が押下されていない期間(S19:No)は、冷却ファン12が停止している期間の一例である。
【0044】
コントローラ30は、カメラ16Lによって人が検知されなくなったとき(S18:No)、冷却ファン12の逆回転を再開すると共に、ステップS17で停止したタイマを再開する(S13)。「タイマを再開する」とは、ステップS17で中断した逆回転時間の計測を再開することの一例である。そして、コントローラ30は、ステップS14以降の処理を実行する。
【0045】
一方、コントローラ30は、カメラ16Lによって人が検知されている状態で、強制逆回転ボタン8が押下されたとき(S19:Yes)、ステップS19の次のステップS20で、冷却ファン12の逆回転を再開すると共に、ステップS17で停止したタイマを再開する。次のステップS21で、コントローラ30は、カメラ16Lによる人の検知をせずに、タイマがタイムアウトするまで(S21:No)、冷却ファン12の逆回転を継続する。そして、コントローラ30は、タイマがタイムアウトしたとき(S21:Yes)、ステップS16の冷却ファン12を正回転させる処理を行い、逆回転制御処理を終了する。
【0046】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0047】
上記の実施形態によれば、カメラ16Lによって人が検知されている状態で(S12:Yes/S14:Yes/S18:Yes)、冷却ファン12を逆回転させないので、第1通気口14から排出された熱風が作業員にかかるのを防止できる。その結果、熱交換器13に堆積した塵埃を、適切なタイミングで排出することができる。
【0048】
また、上記の実施形態によれば、冷却ファン12を逆回転している期間にカメラ16Lによって人が検知された場合にタイマを停止し(S14:Yes→S17)、カメラ16Lによって人が検知されなくなった場合にタイマを再開する(S18:No→S13)。これにより、人が検知される度にタイマをリセットするのと比較して、逆回転時間を平準化することができる。
【0049】
また、上記の実施形態によれば、強制逆回転ボタン8を押下することによって、カメラ16Lによる人の検知結果に拘わらず、冷却ファン12の逆回転を継続することができる。これにより、カメラ16Lの誤検知(例えば、木や壁などの障害物を人だと判定すること)によって、冷却ファン12の逆回転が中断されるのを防止できる。
【0050】
なお、上記の実施形態では、ステップS17において、冷却ファン12を文字通り「停止」させる例を説明した。しかしながら、ステップS17における制御方法は、前述の例に限定されない。
【0051】
他の例として、コントローラ30は、ステップS17において、冷却ファン12を正回転させてもよい。すなわち、コントローラ30は、ステップS17~S19の期間において、冷却ファン12の逆回転を停止していれば、冷却ファン12を正回転させてもよい。これにより、冷却ファン12の逆回転を停止している期間に、熱交換器13に冷却風を供給することができるので、オーバーヒートを防止できる。
【0052】
さらに他の例として、コントローラ30は、ステップS17において、冷却ファン12の逆回転速度を遅くしてもよい。すなわち、コントローラ30は、ステップS13~S15、S20~S21の期間に冷却ファン12を第1速度で逆回転させ、ステップS17~S19の期間に冷却ファン12を第1速度より遅い第2速度で逆回転させてもよい。この場合のタイマは、冷却ファン12が第1速度で逆回転している逆回転時間を計測するものであればよい。つまり、上述の実施形態は第2速度が0(ゼロ)である場合を説明している。作業機械と人との距離によっては冷却ファンを完全に停止させなくても熱風が人に及ばない場合もあり得るので、このような制御方法とすることで熱交換器の熱交換効率の悪化の防止と作業機械の周囲の人の安全とが同時に達成できる。
【0053】
さらに、上述した実施形態では、作業機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、ダンプトラック、油圧クレーン等の他の作業機械にも広く適用することができる。
【0054】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 フロント作業機
4a ブーム
4b アーム
4c バケット
4d,4e,4f 油圧シリンダ
5 旋回フレーム
6 カウンタウェイト
7 キャブ
8 強制逆回転ボタン(強制逆回転操作部)
9 モニタ
10 エンジン建屋(建屋)
11 エンジン
12 冷却ファン
13 熱交換器
14 第1通気口
15 第2通気口
16B,16L,16R カメラ(人を検知するためのセンサ)
30 コントローラ
31 CPU
32 メモリ