(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150735
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】コンデンサの製造方法、および、化成用陰極電極
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20231005BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20231005BHJP
H01G 9/07 20060101ALI20231005BHJP
H01G 9/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H01G13/00 371F
H01G9/00 290A
H01G9/07
H01G9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059984
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 政弘
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩平
(72)【発明者】
【氏名】加藤 俊幸
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB09
5E082BC35
5E082BC36
5E082BC40
5E082FG03
5E082FG04
5E082FG27
5E082FG44
5E082GG03
5E082HH27
5E082LL23
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】電解コンデンサの製造に際し、化成処理により欠陥の少ない誘電体層を形成する。
【解決手段】弁作用金属で構成された陽極体の表面に、誘電体層が形成されたコンデンサ素子を製造する方法であって、複数の陽極体を第1方向に沿って設けられた第1の電極に電気的に接続する工程(i)と、第1の電極に接続された陽極体を化成槽内の化成液に浸漬した状態で、第1の電極と、化成槽の底面に沿って配置された板状の第2の電極との間に電流を流すことによって陽極体の表面の少なくとも一部を酸化して誘電体層を形成する工程(ii)と、を含む。第2の電極は、第1の電極に対向する対向面に、互いに隣接する2つで一対の凸部、または、1つの凹部を、複数の陽極体のそれぞれに対して有し、複数の陽極体のそれぞれは、第1方向に直交する第2方向において一対の凸部の間の位置または凹部の位置に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁作用金属で構成された陽極体の表面に、誘電体層が形成されたコンデンサ素子を製造する方法であって、
複数の前記陽極体を第1方向に沿って設けられた第1の電極に電気的に接続する工程(i)と、
前記第1の電極に接続された前記陽極体を化成槽内の化成液に浸漬した状態で、前記第1の電極と、前記化成槽の底面に沿って配置された板状の第2の電極との間に電流を流すことによって前記陽極体の表面の少なくとも一部を酸化して前記誘電体層を形成する工程(ii)と、を含み、
前記第2の電極は、前記第1の電極に対向する対向面に、互いに隣接する2つで一対の凸部、または、1つの凹部を、前記複数の陽極体のそれぞれに対して有し、
前記複数の陽極体のそれぞれは、前記第1方向に直交する第2方向において前記一対の凸部の間の位置または前記凹部の位置に配置される、コンデンサ素子の製造方法。
【請求項2】
前記対向面の前記第1方向に沿って、前記凸部が形成されている、請求項1に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項3】
前記対向面の前記第1方向に沿って、複数対の前記凸部または複数の前記凹部を有し、
複数対の前記凸部または複数の前記凹部が、前記第1方向に沿って、前記複数の陽極体のそれぞれに対応して配置される、請求項1に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項4】
前記複数の前記凹部は、前記対向面の裏面に貫通する穴形状である、請求項3に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項5】
前記対向面に、前記凸部を有し、
前記化成槽内における前記陽極体の最低位置の高さは、前記第1の電極に向かって突出する前記凸部の頂点における最大高さよりも高く、且つ前記最大高さと前記陽極体の前記最低位置の高さとの差が2mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項6】
前記対向面に、前記凸部を有し、
前記化成槽内における前記陽極体の最低位置の高さは、前記第1の電極に向かって突出する前記凸部の頂点における最大高さよりも低い、請求項1~3のいずれか1項に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項7】
前記対向面に、前記凹部を有し、
前記化成槽内における前記陽極体の最低位置の高さは、前記対向面における前記凹部の基準面の高さよりも高く、且つ前記基準面の高さと前記陽極体の前記最低位置の高さとの差が2mm以下である、請求項3または4に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項8】
前記対向面に、前記凹部を有し、
前記化成槽内における前記陽極体の最低位置の高さは、前記対向面における前記凹部の基準面の高さよりも低い、請求項3または4に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1方向に垂直な断面における前記凸部の断面形状は、三角形である、請求項1~3、5および6のいずれか1項に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1方向に垂直な断面における前記凸部の断面形状は、台形である、請求項1~3、5および6のいずれか1項に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項11】
前記第1方向に垂直な断面における前記凸部の断面形状は、長方形である、請求項1~3、5および6のいずれか1項に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項12】
前記第2の電極は、前記対向面からその反対側の面に貫通して前記化成液が循環する循環孔を有する、請求項1~11のいずれか1項に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項13】
複数の列に配置された複数の前記第1の電極に対応して、複数の前記第2の電極が形成され一体となっている、請求項1~12のいずれか1項に記載のコンデンサ素子の製造方法。
【請求項14】
弁作用金属で構成された陽極体を、前記陽極体が陽極電極に接続された状態で化成槽内の化成液に浸漬し、前記陽極体に電流を流すことによって、前記陽極体の表面の少なくとも一部を酸化させて誘電体層を形成するために前記化成槽の底面に沿って配置される板状の化成用陰極電極であって、
前記陽極電極との対向面に、互いに隣接する2つで一対の凸部を有する、化成用陰極電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンデンサの製造方法、および、化成用陰極電極に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、陽極体と陽極体の表面に形成された誘電体層とを含む。一般的に、誘電体層は、陽極体の表面を陽極酸化(化成処理)することによって形成されている。
【0003】
化成処理は、例えば特許文献1に示すように、帯状の固定板に固体電解コンデンサ素子弁金属で構成された線材を介して吊り下げ、かつ固体電解コンデンサ素子を化成槽内の化成液中に浸漬して、化成液中に配されたの陰極と固定板との間に電圧を印加することにより行われる。陰極は、通常、平板である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
陽極体のサイズが大きく、表面積の大きな多孔質体を陽極体に用いるほど、陽極の多孔質の表面に均一に誘電体層を形成するために大電流が必要となり、大面積の陰極が必要となる。平板の陰極では、陽極体の化成処理に必要な陰極の面積が不足し化成が不十分となる場合、あるいは、長時間の化成処理が必要となる場合がある。
【0006】
化成処理が不十分であると、形成される誘電体層に欠陥が生じ易く、漏れ電流が増加し易くなる。一方、化成処理を長時間行うことにより、生産性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面は、弁作用金属で構成された陽極体の表面に、誘電体層が形成されたコンデンサ素子を製造する方法であって、複数の前記陽極体を第1方向に沿って設けられた第1の電極に電気的に接続する工程(i)と、前記第1の電極に接続された前記陽極体を化成槽内の化成液に浸漬した状態で、前記第1の電極と、前記化成槽の底面に沿ってに配置された板状の第2の電極との間に電流を流すことによって前記陽極体の表面の少なくとも一部を酸化して前記誘電体層を形成する工程(ii)と、を含み、前記第2の電極は、前記第1の電極に対向する対向面に、互いにい隣接する2つで一対の凸部、または、1つの凹部を、前記複数の陽極体のそれぞれに対して有し、前記複数の陽極体のそれぞれは、前記凹部の位置または前記第1方向に直交する第2方向において隣接する2つの前記凸部の間の位置に配置される、コンデンサ素子の製造方法に関する。
【0008】
本開示の他の局面は、弁作用金属で構成された陽極体を、前記陽極体が陽極電極に接続された状態で化成槽内の化成液に浸漬し、前記陽極体に電流を流すことによって、前記陽極体の表面の少なくとも一部を酸化させて誘電体層を形成するために前記化成槽の底面に沿って配置される板状の化成用陰極電極であって、前記陽極電極との対向面に、互いに隣接する2つで一対の凸部を有する、化成用陰極電極に関する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、化成処理により欠陥の少ない誘電体層を形成でき、電解コンデンサの漏れ電流を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の製造方法の一例を説明する、化成処理時における化成槽内の状態を模式的に示す図である。
【
図2】本開示の製造方法で用いる化成用の第2の電極(陰極電極)の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】本開示の製造方法の一例を説明する、化成処理時における化成槽内の状態を模式的に示す図である。
【
図4A】第2の電極(陰極電極)の他の例を示す図である。
【
図4B】第2の電極(陰極電極)の他の例を示す図である。
【
図4C】第2の電極(陰極電極)の他の例を示す図である。
【
図4D】第2の電極(陰極電極)の他の例を示す図である。
【
図5A】第2の電極(陰極電極)の他の例を示す図である。
【
図5B】第2の電極(陰極電極)の他の例を示す図である。
【
図6】本開示の製造方法で製造されるコンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。
【
図7】本開示の製造方法で製造されるコンデンサ素子を用いた電解コンデンサの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示に係る製造方法の実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示の効果が得られる限り、他の数値や材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。
【0012】
<コンデンサ素子の製造方法>
本開示の一実施形態に係るコンデンサ素子の製造方法は、弁作用金属で構成された陽極体の表面に、誘電体層が形成されたコンデンサ素子を製造する方法であって、複数の陽極体を第1方向に沿って設けられた第1の電極(陽極電極)に電気的に接続する工程(i)と、第1の電極に接続された陽極体を化成槽内の化成液に浸漬した状態で、第1の電極と、化成槽の底面に沿って配置された板状の第2の電極(陰極電極)との間に電流を流すことによって陽極体の表面の少なくとも一部を酸化して誘電体層を形成する工程(ii)と、を含む。
【0013】
第2の電極は、全体的な形状は板状であるが、第1の電極に対向する対向面に、互いに隣接する2つで一対の凸部、または、1つの凹部を、陽極体のそれぞれに対して有する。
隣接する2つの凸部の間に形成される溝形状または凹部である穴形状により、第2の電極の表面積が増大する。これにより、化成処理時に陽極体に流れる電流密度が増加し、誘電体層の成長を速めることができる。この結果、誘電体層中の欠陥の発生が抑制され、漏れ電流が低減される。この溝形状または穴形状により陽極体を第2の電極に接触せずに近づけることができる。さらに、化成液の液面に垂直な高さ方向における陽極体の位置を凸部の頂点高さ付近または凹部における穴形状の開口付近に固定することにより、第1の電極の振動やずれなどを介して陽極体の位置が第2方向にずれた場合に、陽極体が第2の電極に接触することを防止できる。
【0014】
複数の陽極体のそれぞれは、第1方向に直交する第2方向において一対の凸部の間の位置または1つの凹部の位置に配置される。陽極体を一対の凸部に挟まれた空間に近づけて配置することで、陽極体を陰極電極に近づけて配置することができ、化成処理時に陽極体に流れる電流密度を一層増加させることができる。同様に、陽極体を凹部が形成する凹んだ空間に近づけて配置することで、陽極体を陰極電極に近づけて配置することができ、化成処理時の電流密度を一層増加させることができる。
【0015】
少なくとも一対の凸部を有する第2の電極において、一対の凸部の間には、空間が形成される。この空間は、凹部の凹んだ空間と同様に考えることができる。以下において、隣接する2つの凸部により形成される空間を隙間と称し、凹部の凹んだ空間と区別する。
【0016】
例えば、凸部は、基準面に対して第2の電極の外側(すなわち、第1の電極に近づく方向)に向かって突出する部分を含んで形成される。同様に、凹部は、例えば、基準面に対して第2の電極の内側(すなわち、第1の電極から遠ざかる方向)に向かって凹んだ部分を含んで形成され得る。凸部における基準面は、第1の電極に対向する対向面(以下、「素子対向面」とも称する。)において最も第1の電極から遠い部分(ただし、後述の循環孔の内周面を除く)であり得る。凹部における基準面は、素子対向面において最も第1の電極に近い部分(穴形状が形成される開口部分)であり得る。
【0017】
また、第2の電極に、対向面と対向面の反対側の面との間を貫通する穴を形成し、この貫通する穴と重なるように陽極体を配置してもよい。この場合、この穴は化成液を流通し循環させる機能も有する。
【0018】
また、陽極体が一対の凸部の間の位置に配置されるとは、ある第1方向の位置で、第2方向および化成液の液面に垂直な方向に平行な面における陽極体および第2の電極の断面を考えたとき、陽極体が占める第2方向の位置の範囲が、一対の凸部の一方の頂点部分と他方の頂点部分との間に制限され、いずれの頂点部分とも重ならないことを意味する。
【0019】
陽極体を凸部の位置に配置する場合、陽極体の第2の電極側の端部が凸部に近接するように配置されるため、陽極体の第2の電極側の端部における電流密度を増加させることができる一方、凸部から離れた陽極体の第1の電極側の端部における電流密度を増加させ難い。このため、陽極体の第1の電極側と第2の電極側とで化成処理時の電流密度に差が生じ、誘電体層が不均一に形成され易い。これに対し、陽極体を一対の凸部の間の位置に配置することで、陽極体の内部で化成処理時の電流密度に差が生じることを抑制しながら、電流密度を高めることができる。結果、欠陥の少ない均一な誘電体層を形成することができ、漏れ電流などの電解コンデンサの特性を高めることができる。
【0020】
一実施形態において、対向面の第1方向(すなわち、第1の電極(陽極電極)が延びる方向)に沿って、ライン状に凸部が形成されてもよい。第1方向に沿って延びる2つの凸部により、2つの凸部の間には第1方向に延びる溝が形成され得る。この場合、複数の陽極体を2つの凸部の間の溝に沿って並べて配置することで、陽極体と第2の電極との距離を近づけて配置し易くなり、化成処理時に陽極体に流れる電流密度を高め易い。
【0021】
また別の実施形態において、第2の電極は、対向面の第1方向に沿って、複数対の凸部を有していてもよい。この場合、複数対の凸部は、第1方向に沿って、複数の陽極体のそれぞれに対応して配置され得る。複数の陽極体のそれぞれは、第2方向において、対応する一対の凸部の間の位置に配置される。この場合、第2の電極の表面積を大きくし易く、化成処理時に陽極体に流れる電流密度を高め易い。第2の電極が対向面の第1方向に沿って、複数の凹部を有する場合も同様である。
第2の電極が複数対の凸部または複数の凹部を有する場合、複数の陽極体のそれぞれに対して一対の凸部または凹部が対応してもよい。また、1つの陽極体に対して、第1方向において互いに隣接する二対の凸部または2つの凹部が共有されていてもよい。
【0022】
また別の実施形態において、凹部は、対向面の裏面に貫通する穴形状であってもよい。穴形状の凹部が、第1方向に沿った陽極体毎に1列状に配置されていてもよい。第1の電極が複数列に配置されている場合、第2の電極の全体の穴形状はメッシュ状に配置されていてもよい。陽極体のそれぞれは、メッシュの開口部の位置に配置され得る。
【0023】
化成槽内における陽極体の高さ(第2の電極との距離)は、第2の電極と陽極体との接触が抑制される限りにおいて、低いほど好ましい。第2の電極が少なくとも一対の凸部を有する場合、化成槽内における陽極体の高さは、その最低位置の高さ(最低高さ)が、凸部の最大高さ(例えば凸部の頂点の高さ)より高くてもよく、低くてもよい。
【0024】
化成槽内における陽極体の最低高さが、凸部の最大高さより低い場合、陽極体の一部が2つの凸部の間の隙間内に配置され、化成処理時の電流密度を高くし易い。化成槽内における陽極体の最低高さが、凸部の最大高さより高い場合、凸部の最大高さと陽極体との最低高さとの差は、2mm以下であることが好ましい。
【0025】
同様に、第2の電極が凹部を有する場合、化成槽内における陽極体の高さは、その最低位置の高さ(最低高さ)が、凹部の基準面の高さより高くてもよく、低くてもよい。化成槽内における陽極体の最低高さが、凹部の基準面の高さより高い場合、凹部の基準面の高さと陽極体との最低高さとの差は、2mm以下であることが好ましい。
【0026】
化成槽内における高さとは、化成液の液面に垂直な方向(鉛直方向)における高さを意味する。凸部の最大高さは、凸部の表面内で、化成液の液面に最も近い箇所の高さでもある。凹部の基準面の高さとは、凹部の基準面内で、化成液の液面に最も近い箇所の高さでもある。
【0027】
化成槽内における陽極体の最高高さは、凸部の頂点における最大高さより高くてもよい。すなわち、陽極体の少なくとも一部は、2つの凸部の間の隙間内に収容されず、2つの凸部の間の隙間の上に配置されてよい。これにより、陽極体を化成液に浸漬する際に、陽極体と第2の電極との接触が抑制され、生産性が向上する。同様に、第2の電極が凹部を有する場合、化成槽内における陽極体の最高高さが、凹部の基準面の高さより高くてもよい。
【0028】
凸部または凹部の形状については、特に限定されない。一実施形態において、第1方向に垂直な断面における凸部の断面形状は、三角形、台形、または、長方形であってもよい。断面形状が三角形の場合、凸部の形状は、円錐または多角錐の形状であり得る。断面形状が台形の場合、凸部の形状は、円錐台または多角錐台の形状であり得る。断面形状が長方形の場合、凸部の形状は、円柱または多角柱の形状であり得る。凸部または凹部が、曲面を有していてもよい。
【0029】
第2の電極は、対向面からその反対側の面に貫通して化成液が流通し循環する循環孔を有していてもよい。循環孔は、凹部の穴形状に隣接する表面に形成していてもよく、穴形状の凹んだ表面上に形成されていてもよい。2つの凸部の間の溝部分に循環孔が形成されてもよい。循環孔は、化成液の液面に垂直な方向から見たとき、陽極体と重なる位置に形成されてもよく、陽極体と重ならない位置に形成されてもよい。
【0030】
以下に、化成処理工程について詳述する。
【0031】
(工程(i))
先ず、陽極体を第1の電極に電気的に接続する。例えば、陽極部が、多孔質の陽極体と、陽極体の一主面である植立面から植立した陽極ワイヤを有する構成の場合、陽極ワイヤを第1の電極と接続する。これにより、陽極ワイヤを介して、陽極体が第1の電極と電気的に接続される。陽極体および陽極ワイヤに限定はなく、公知の陽極体および陽極ワイヤを用いてもよい。あるいは、公知の方法で陽極部を作製してもよい。陽極体および陽極ワイヤの例、およびその形成方法の例については後述する。
【0032】
このとき、複数の陽極体を所定の方向(ここでは、第1方向とする)に沿って間隔をおいて並べて陽極体群とした状態で、陽極体群における陽極体のそれぞれを第1の電極に電気的に接続する。例えば、陽極部が陽極ワイヤを有する場合、複数の陽極部を第1方向に沿って間隔をおいて並べた状態で、複数の陽極体に接続された複数の陽極ワイヤのそれぞれを第1の電極に接続する。複数の陽極体は、一列に並べられてもよいし、複数の第1の電極が列状に配置される場合は、マトリクス状に並べられてもよい。複数の陽極部が配置される間隔は、全ての陽極部において同じであってもよく、ある陽極部とそれに隣接する陽極部との間隔が他と異なっていてもよい。
【0033】
第1の電極の形状は、陽極体群の配置に応じて選択される。例えば、第1の電極は、直線状の形状(例えば棒状や板状)であり、複数の陽極体が第1の電極に沿って一列に並べられる。複数の陽極体がマトリクス状に並べられている場合、第1の電極は、直線状の電極を複数列並べて構成される。第1の電極と陽極ワイヤとは、電気的に接続される。通常、陽極ワイヤは、溶接などの方法によって第1の電極に固定される。第1の電極の材質に特に限定はなく、導電性を有する金属(例えば、鉄、鉄合金、アルミニウムなど)であってもよい。複数の列に配置された複数の第1の電極に対応して、複数の第2の電極が形成され、複数の第2の電極同士が第2方向に結合されることによって全体で一体の第2の電極が形成されてもよい。
【0034】
第1の電極としては、軽量で作業性に優れることから、金属アルミニウムおよびその合金が好ましく用いられ得る。
【0035】
陽極体群に含まれる陽極体の数に限定はなく、10~200の範囲(例えば40~100の範囲)にあってもよい。隣接する陽極体の間隔も特に限定はない。当該間隔は、1~20mmの範囲(例えば2~6mmの範囲)にあってもよい。通常、当該間隔は一定であるが、間隔は一定でなくてもよい。
【0036】
(工程(ii))
次に、第1の電極に電気的に接続された陽極体を化成槽内の化成液に浸漬した状態で、第1の電極と第2の電極との間に直流電圧を印加し、電流を流す。これにより、陽極体の表面の少なくとも一部を酸化(陽極酸化)し、誘電体層を形成する。
【0037】
工程(ii)では、陽極体の表面が酸化されて誘電体層に変化する。例えば、陽極体がタンタルからなる場合には、陽極体の表面に酸化タンタル層が形成される。化成液に特に限定はなく、電解コンデンサの陽極体の化成処理に用いられている公知の化成液を用いてもよい。例えば、化成液には、酸性水溶液、中性水溶液、塩基性水溶液のいずれを用いてもよい。酸性水溶液の例には、リン酸水溶液、硝酸水溶液、酢酸水溶液、硫酸水溶液などが含まれる。化成液の他の例には、酒石酸塩の水溶液、シュウ酸塩の水溶液、四ホウ酸塩の水溶液などが含まれる。
【0038】
第2の電極は、化成槽の底面に沿って配置され、化成液に浸漬されている。第2の電極の材質には、化成時に安定な金属を用いることが好ましい。第2の電極の材質の例には、鉄合金、ニッケル、クロム、金、白金、タンタル、チタン、カーボンなどが含まれる。第2の電極は、例えば、厚みを有する板状の素材の表面を削って加工し、または、穴を空けて作成する。第2の電極の板部が金属ワイヤーを網目状に張ったようなものであると化成液の循環性がよくなるが、電流密度が低く、電流密度を高めることが困難である。
【0039】
第2の電極の第1の電極との対向面には、一対の凸部または1つの凹部が設けられている。第1の電極に電気的に接続された複数の陽極体(陽極体群)は、液面に垂直な方向から見たとき、それぞれが第2の電極の一対の凸部の位置、または1つの凹部の位置に位置するように、化成液に浸漬される。
【0040】
工程(ii)の後は、電解コンデンサに必要な部分を形成する工程を実施することによってコンデンサ素子が得られ、電解コンデンサを製造できる。それらの工程に限定はなく、公知の方法を適用してもよい。
【0041】
陽極体が焼結体である電解コンデンサの一例の製造方法では、誘電体層上に電解質層を形成し、電解質層上に陰極部を形成する。このようにしてコンデンサ素子が作製される。次に、陽極ワイヤに陽極リード端子を接続し、陰極部に陰極リード端子を接続する。そして、コンデンサ素子、陽極リード端子の一部、および陰極リード端子の一部を覆うように外装体を形成する。このようにして、電解コンデンサが得られる。
【0042】
陽極体が、金属箔の巻回体である電解コンデンサの一例の製造方法では、工程(i)において、陽極体(金属箔)とセパレータと陰極箔とを巻回した巻回体を準備する。巻回体は陽極部を含む。陽極部は、陽極体(金属箔)と、陽極体の第1の端面(巻回された陽極体の第1の端面)から突き出した陽極ワイヤとを含む。通常、陽極体(金属箔)の表面には誘電体層が形成されているが、陽極体の端面の少なくとも一部には誘電体層が形成されていない。そのため、誘電体層が形成されていない部分にも誘電体層を形成するために、上記工程(ii)によって誘電体層を形成する。誘電体層を形成した後は、巻回体の内部に電解質層を形成することによってコンデンサ素子を作製する。作製されたコンデンサ素子をケース内に封入することによって、巻回式の電解コンデンサが得られる。電解質層は、固体電解質層であってもよいし、液体成分を含む電解質層であってもよい。それらの構成要素および形成方法に特に限定はなく、公知の構成要素および形成方法を用いてもよい。
【0043】
[第1実施形態]
以下において、少なくとも一対の凸部が設けられた第2の電極を用いて、陽極体に化成処理を施し、コンデンサ素子を製造する例について、図面を参照して説明する。
【0044】
図1は、本実施形態に係るコンデンサ素子の製造方法の化成処理工程を説明する模式図であり、複数の第1の電極(陽極電極)104と第2の電極(陰極電極)105との間に直流電流を流して、化成処理が行われているときの化成槽101内の状態を模式的に示す図である。複数の第1の電極104は、化成液102の液面102aに平行な第1方向(
図1において、紙面に垂直な方向)に延びており、キャリアバーとも呼ばれる。複数の第1の電極104が、第1方向に直交する第2方向に並べて配置されている。
図1は、化成槽101の第1方向に垂直な面(第2方向および液面に垂直な方向に平行な面)における断面図を示している。
図2は、化成槽101の底面に沿って配置される第2の電極105の概略構成を示す斜視図である。
【0045】
陽極体1と陽極ワイヤ2をそれぞれ有する複数の陽極部が、所定の間隔で、一つの第1の電極104のキャリアバーに沿って等間隔に並べられ、陽極ワイヤ2を介して第1の電極104と電気的に接続されている。よって、
図1からは明らかでないが、複数の陽極部は、第1方向および第2方向に沿って、マトリクス状に配置されている。複数の陽極部における陽極体1のそれぞれは、化成液102に浸漬され、化成液102と接触している。
【0046】
第2の電極105は、第1の電極104との対向面に、複数の凸部を有する。
図2の例では、第2の電極105の対向面に、正四角錐のピラミッド形状の凸部110が、複数、第1方向および第2方向に沿って二次元的に配列している。凸部110の第1方向に垂直な断面における断面形状は、三角形である。
【0047】
第2方向に隣接する2つのピラミッド状の凸部110の間には、隙間112が形成される。凸部110が複数、二次元的に配列していることにより、隙間112も複数形成される。
図1に示すように、陽極体1のそれぞれは、液面102aに垂直な方向から見たとき、これらの隙間112のいずれか1つの内に位置するように配置される。
【0048】
図1における凸部110の突出高さHは、例えば、1~20mmの範囲である。第2方向における凸部110の間隔(換言すると、第2方向に並べて配置される複数の第2の電極105の配置間隔)は、例えば、5~20mmである。
【0049】
図1に示す例では、化成液102に浸漬されたそれぞれの陽極体1の最低高さh1は、凸部110の頂点の高さh2よりも高く(h1>h2)、その差は2mm以下である(h1-h2<2mm)。これにより、高い電流密度が得られる。
【0050】
しかしながら、
図3に示すように、化成液102に浸漬されたそれぞれの陽極体1の最低高さh1は、凸部110の頂点の高さh2よりも低く(h1<h2)てもよい。その場合、陽極体1の一部は、隣接する2つの凸部110により形成される隙間112内に収容される。この場合、より高い電流密度が得られる。
【0051】
図1および
図3のいずれの場合においても、化成液102に浸漬されたそれぞれの陽極体1の最高高さh3は、凸部110の頂点の高さh2よりも高い。つまり、陽極体1の第1の電極側の少なくとも一部は、隙間112内に収容されず、隙間112の上方にあってもよい。
【0052】
図4A~
図4D、対向面に凸部が設けられた第2の電極105の他の例を示す。
図4A~
図4Dの各図は、第1の電極104が1列のみ並んだものに対応しており、第2の電極105内で、1つの陽極体1に対向する領域の周辺を拡大して示すとともに、第1方向に垂直な面(第2方向および液面に垂直な方向に平行な面)における第2の電極105の断面を切り欠いて示す斜視図である。
【0053】
図4Aは、
図2に示す第2の電極105において、ピラミッド状の凸部110の頂点部分を切り取り、凸部110を四角錐台形状に形成した例である。この場合、凸部110の第1方向に垂直な断面における断面形状は、台形となる。
【0054】
図4Bは、第1方向に延びる複数の凸部110を配置した例である。隣接する2つの凸部110の間には、溝が形成される。複数の陽極体1は、この溝に沿うように、第1方向に配置され得る。凸部110の第1方向に垂直な断面における断面形状は、三角形である。
【0055】
図4Cは、
図4Bと同様、第1方向に延びる複数の凸部110を配置し、隣接する2つの凸部110の間に溝を形成した例である。
図4Cでは、凸部110の第1方向に垂直な断面における断面形状は、台形である。
【0056】
図4Dでは、
図4Bおよび
図4Cと同様、第1方向に延びる複数の凸部110を配置した例である。隣接する2つの凸部110の間に、溝が形成される。
図4Dでは、凸部110の第1方向に垂直な断面における断面形状は、凸部の突出方向に長い長方形である。これにより、隣接する2つの凸部110の間に、U字形状の溝が形成されている。複数の陽極体1は、この溝に沿うように配置され得る。
【0057】
図4A~
図4Dでは、第2の電極105の対向面の所定の位置に、対向面からその反対側の面に貫通して化成液が流通する循環孔113が、化成液の循環を促進させるために設けられている。化成液流通用の循環孔が設けられる位置については、特に限定されない。循環孔は、陽極体に流れる電流密度を高める点からは、陽極体と重ならない位置に配置されていることが望ましいが、陽極体と重なって配置されていてもよい。
【0058】
[第2実施形態]
凹部が設けられた第2の電極を用いて、陽極体に化成処理を施し、コンデンサ素子を製造してもよい。
図5Aおよび
図5Bに、対向面に凹部が設けられた第2の電極105の例を示す。
図5Aおよび
図5Bの各図は、第2の電極105内で、1つの陽極体1に対向する領域の周辺を拡大して示すとともに、第1方向に垂直な面(第2方向および液面に垂直な方向に平行な面)における第2の電極105の断面を切り欠いて示す斜視図である。
【0059】
図5Aは、第2の電極105の対向面に凹部114を形成した例である。
図5Aの例では、凹部114は、円形状の開口を有する穴部である。穴部の深さは特に限定されず、対向面の反対側の面まで貫通する穴であってもよい。複数の凹部114が、第1方向に沿って配置され得る。複数の陽極体1のそれぞれは、化成液の液面に垂直な方向からみて、凹部114のいずれか1つと重なる位置に配置される。
【0060】
図5Bは、
図5Aにおいて、凹部114を正方形状の開口を有する貫通する穴としたものである。正方形状の貫通した穴が第1方向に沿って配置されることにより、複数の貫通する穴が1列に配置された第2の電極105が形成されている。
【0061】
図5Bでは、凹部114を形成する貫通する穴が、化成液が流通する働きを有している。
図5Aにおいて、化成液循環用の貫通した孔(循環孔)を別に設けてもよい。化成液流通用の循環孔は、凹部114が形成されていない対向面(基準面)上に設けてもよいし、凹部114の凹んだ表面上に設けてもよい。
【0062】
<コンデンサ素子および電解コンデンサ>
本開示の製造方法で製造されるコンデンサ素子および電解コンデンサの構成および構成要素の例として、焼結式の陽極体を用いる場合の一例を以下に説明する。以下で説明する一例の電解コンデンサは、コンデンサ素子、外装体、陽極リード端子、および陰極リード端子を含む。なお、本開示の方法で製造される電解コンデンサの構成および構成要素は、以下の例に限定されない。
【0063】
図6は、本実施形態に係る製造方法により製造されるコンデンサ素子の一例を模式的に示す断面図である。
図7は、本実施形態に係る製造方法により製造されるコンデンサ素子を用いた電解コンデンサの断面模式図である。しかしながら、本発明はこれらの図面で表される構成に限定されるものではない。
【0064】
電解コンデンサ20は、陽極部6および陰極部7を有するコンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を封止する外装体11と、陽極部6と電気的に接続し、かつ、外装体11から一部が露出する陽極リード端子13と、陰極部7と電気的に接続し、かつ、外装体11から一部が露出する陰極リード端子14と、を備えている。陽極部6は、陽極体1と陽極ワイヤ2とを有する。陽極体の表面に誘電体層3が形成されている。陰極部7は、誘電体層3の少なくとも一部を覆う固体電解質層4と、固体電解質層4の表面の少なくとも一部を覆う陰極層5とを有する。
【0065】
(コンデンサ素子)
以下、コンデンサ素子10について、電解質として固体電解質層を備える場合を例に挙げて、詳細に説明する。
【0066】
(陽極部)
陽極部6は、陽極体1と、陽極体1の一面から延出して陽極リード端子13と電気的に接続する陽極ワイヤ2と、を有する。
陽極体1は、例えば、金属粒子を焼結して得られる直方体の多孔質焼結体である。上記金属粒子として、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)などの弁作用金属の粒子が用いられる。陽極体1には、1種または2種以上の金属粒子が用いられる。金属粒子は、2種以上の金属からなる合金であってもよい。例えば、弁作用金属と、ケイ素、バナジウム、ホウ素等とを含む合金を用いることができる。また、弁作用金属と窒素等の典型元素とを含む化合物を用いてもよい。弁作用金属の合金は、弁作用金属を主成分とし、例えば、弁作用金属を50原子%以上含む。
【0067】
陽極ワイヤ2は、導電性材料から構成されている。陽極ワイヤ2の材料は特に限定されず、例えば、上記弁作用金属の他、ニオブ、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。陽極体1および陽極ワイヤ2を構成する材料は、同種であってもよいし、異種であってもよい。陽極ワイヤ2は、陽極体1の一面から陽極体1の内部へ埋設された第一部分2aと、陽極体1の上記一面から延出した第二部分2bと、を有する。陽極ワイヤ2の断面形状は特に限定されず、円形、トラック形(互いに平行な直線とこれら直線の端部同士を繋ぐ2本の曲線とからなる形状)、楕円形、矩形、多角形等が挙げられる。
【0068】
陽極部6は、例えば、第一部分2aを上記第1金属の粒子の粉体中に埋め込んだ状態で直方体状に加圧成形し、焼結することにより作製される。これにより、陽極体1の一面から、陽極ワイヤ2の第二部分2bが植立するように引き出される。第二部分2bは、溶接等により、陽極リード端子13と接合されて、陽極ワイヤ2と陽極リード端子13とが電気的に接続する。溶接の方法は特に限定されず、抵抗溶接、レーザー溶接等が挙げられる。
【0069】
陽極体1の表面には、誘電体層3が形成されている。誘電体層3は、例えば、金属酸化物から構成されている。誘電体層3は、上述の化成処理工程を施すことにより、化成液中に陽極体1を浸漬して陽極体1の表面を陽極酸化することにより形成される。
【0070】
(陰極部)
陰極部7は、固体電解質層4と、固体電解質層4を覆う陰極層5とを有している。固体電解質層4は、誘電体層3の少なくとも一部を覆うように形成されている。
【0071】
固体電解質層4には、例えば、マンガン化合物や導電性高分子が用いられる。導電性高分子としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリン、ポリアセチレン、などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。また、導電性高分子は、2種以上のモノマーの共重合体でもよい。導電性に優れる点で、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールであってもよい。特に、撥水性に優れる点で、ポリピロールであってもよい。
【0072】
上記導電性高分子を含む固体電解質層4は、例えば、原料モノマーを誘電体層3上で重合することにより、形成される。あるいは、上記導電性高分子を含んだ液を誘電体層3に塗布することにより形成される。固体電解質層4は、1層または2層以上の固体電解質層から構成されている。固体電解質層4が2層以上から構成されている場合、各層に用いられる導電性高分子の組成や形成方法(重合方法)等は異なっていてもよい。
【0073】
なお、本明細書では、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどは、それぞれ、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどを基本骨格とする高分子を意味する。したがって、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフラン、ポリアニリンなどには、それぞれの誘導体も含まれ得る。例えば、ポリチオフェンには、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)などが含まれる。
【0074】
導電性高分子を形成するための重合液、導電性高分子の溶液または分散液には、導電性高分子の導電性を向上させるために、様々なドーパントを添加してもよい。ドーパントは、特に限定されないが、例えば、ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸などが挙げられる。
【0075】
導電性高分子が、粒子の状態で分散媒に分散している場合、その粒子の平均粒径D50は、例えば0.01μm以上、0.5μm以下である。粒子の平均粒径D50がこの範囲であれば、陽極体1の内部にまで粒子が侵入し易くなる。
【0076】
陰極層5は、例えば、固体電解質層4を覆うように形成されたカーボン層5aと、カーボン層5aの表面に形成された金属ペースト層5bと、を有している。カーボン層5aは、黒鉛等の導電性炭素材料と樹脂を含む。金属ペースト層5bは、例えば、金属粒子(例えば、銀)と樹脂とを含む。なお、陰極層5の構成は、この構成に限定されない。陰極層5の構成は、集電機能を有する構成であればよい。
【0077】
(陽極リード端子)
陽極リード端子13は、陽極ワイヤ2の第二部分2bを介して、陽極体1と電気的に接続している。陽極リード端子13の材質は、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば特に限定されない。陽極リード端子13は、例えば銅等の金属であってもよいし、非金属であってもよい。その形状は平板状であれば、特に限定されない。陽極リード端子13の厚み(陽極リード端子13の主面間の距離)は、低背化の観点から、25μm以上、200μm以下であってよく、25μm以上、100μm以下であってよい。
【0078】
陽極リード端子13の一端は、導電性接着材やはんだにより、陽極ワイヤ2に接合されてもよいし、抵抗溶接やレーザ溶接により、陽極ワイヤ2に接合されてもよい。陽極リード端子13の他方の端部は、外装体11の外部へと導出されて、外装体11から露出している。導電性接着材は、例えば後述する熱硬化性樹脂と炭素粒子や金属粒子との混合物である。
【0079】
(陰極リード端子)
陰極リード端子14は、接合部14aにおいて陰極部7と電気的に接続している。接合部14aは、陰極層5と陰極層5に接合された陰極リード端子14とを、陰極層5の法線方向からみたとき、陰極リード端子14の陰極層5に重複する部分である。
【0080】
陰極リード端子14は、例えば、導電性接着材8を介して、陰極層5に接合される。陰極リード端子14の一方の端部は、例えば接合部14aの一部を構成しており、外装体11の内部に配置される。陰極リード端子14の他方の端部は、外部へと導出されている。そのため、陰極リード端子14の他方の端部を含む一部は、外装体11から露出している。
【0081】
陰極リード端子14の材質も、電気化学的および化学的に安定であり、導電性を有するものであれば、特に限定されない。陰極リード端子14は、例えば銅等の金属であってもよいし、非金属であってもよい。その形状も特に限定されず、例えば、長尺かつ平板状である。陰極リード端子14の厚みは、低背化の観点から、25μm以上200μm以下であってもよく、25μm以上100μm以下であってもよい。
【0082】
(外装体)
外装体11は、陽極リード端子13と陰極リード端子14とを電気的に絶縁するために設けられており、絶縁性の材料(外装体材料)から構成されている。外装体材料は、例えば、熱硬化性樹脂を含む。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、不飽和ポリエステル等が挙げられる。
【0083】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0084】
下記の要領で陽極体の化成処理を行った。
弁作用金属としてタンタル金属粒子を用いた。タンタル金属からなる陽極ワイヤの一端がタンタル金属粒子に埋め込まれるように、タンタル金属粒子を直方体に成形し、その後、成形体を真空中で焼結した。これにより、タンタルの多孔質焼結体からなる陽極体(1.7mm×3.3mm×4.4mm)と、陽極体に一端が埋設され、残りの部分が陽極体の一面から植立した陽極ワイヤと、を含む陽極部を得た。陽極ワイヤは、1.7mm×3.3mmの面から植立する。
【0085】
55個の陽極部を一定の間隔(5mm)をおいて一列に並べ、陽極ワイヤを細長い板状の第1の電極に溶接した。次に、第1の電極に溶接した陽極体と、第2の電極とを化成液に浸漬した。化成液にはリン酸水溶液を用いた。そして、第1の電極と第2の電極との間に直流電圧(90V)を印加して化成処理を行うことによって、55個の陽極体の表面に酸化タンタル(Ta2O5)の誘電体層を形成した。
【0086】
第1の電極が1列のみ並んだものに対応した第2の電極として、下記の純銅製の陰極電極を準備し、陰極電極に対して陽極体の高さを適宜変更し、化成処理を行った。
【0087】
(実施例1)
図4Aに示す隣接する2つの凸部を有する第2の電極を準備し、陰極電極A1とした。陰極電極A1における四角錐台形状の凸部110の突出高さHは10mmとした。四角錐台は、上底面が一辺が1mmの正方形であり、下底面が一辺が5mmの正方形である。第1方向および第2方向に配列される凸部110の配置間隔は、第1の電極が延びる第1方向において10mm、第1方向に垂直な第2方向において10mmとした。第2方向において、陽極体が凸部110の間の位置に配置されるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0088】
実施例1では、化成槽内における陽極体の最低高さh1は、凸部110の頂点(四角錐台の上底面)における最大高さh2と同じ位置にあるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0089】
(実施例2~4)
図4Bに示す隣接する2つの凸部を有する第2の電極を準備し、陰極電極A2とした。陰極電極A2における凸部110の突出高さHは2mmとした。第1方向に延びる凸部110の第2方向における配置間隔は、10mmとした。第2方向において、陽極体が凸部110の間の位置に配置されるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0090】
実施例2では、陰極電極A2を用い、化成槽内における陽極体の最低高さh1は、凸部110の頂点(稜線部分)における最大高さh2と同じ位置にあるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0091】
実施例3では、陰極電極A2を用い、陽極体の最低高さh1が凸部110の最大高さh2に対して1mmだけ高い位置にあるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0092】
実施例4では、陰極電極A2において、突出高さHを5mmに変更したものを陰極電極A3として用い、他は実施例2と同様とした。
【0093】
(実施例5、6)
図4Cに示す隣接する2つの凸部を有する第2の電極を準備し、陰極電極A4とした。陰極電極A4における凸部110の突出高さHは10mmとした。凸部110の第1方向に垂直な断面形状は上底が1mm、下底が3mmの等脚台形である。第1方向に延びる凸部110の第2方向における配置間隔は、10mmとした。第2方向において、陽極体が凸部110の間の位置に配置されるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0094】
実施例5では、陰極電極A4を用い、化成槽内における陽極体の最低高さh1は、凸部110の頂点における最大高さh2と同じ位置にあるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0095】
実施例6では、陰極電極A4を用い、陽極体の最低高さh1が凸部110の最大高さh2に対して1mmだけ高い位置にあるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0096】
(実施例7)
図4Dに示す隣接する2つの凸部を有する第2の電極を準備し、陰極電極A5とした。陰極電極A5における凸部110の突出高さHは15mmとした。凸部110の第2方向における配置間隔は、10mmとした。第2方向において、陽極体が凸部110の間の位置に配置されるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0097】
実施例7では、陰極電極A5を用い、化成槽内における陽極体の最低高さh1は、凸部110の頂点における最大高さh2と同じ位置にあるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0098】
なお、陰極電極A1~A5において、凸部110を除く第2の電極の厚みは、3mmとした。
【0099】
(実施例8)
図5Aに示す円柱状の穴形状であって、凹形状を有する第2の電極を準備し、陰極電極A6とした。陰極電極A6の厚みは10mmであり、直径4mmの穴が、凹部114として配置されている。凹部114の第1方向における配置間隔は、10mmとした。第2方向において、陽極体が凹部114の位置に配置されるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0100】
実施例8では、陰極電極A6を用い、化成槽内における陽極体の最低高さh1は、凹部の基準面の高さと同じ位置にあるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0101】
(実施例9)
図5Bに示す四角柱状の穴形状であって、凹形状を有する第2の電極を準備し、陰極電極A7とした。陰極電極A7は、厚み5mmで、3mm×3mmの正方形の貫通している穴が、凹部114として配置されている。凹部の第1方向における配置間隔(中心間距離)は、10mmとした。第1方向および第2方向において、陽極体が凹部114の位置に配置されるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0102】
実施例9では、陰極電極A7を用い、化成槽内における陽極体の最低高さh1は、凹部の基準面の高さと同じ位置にあるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0103】
(比較例1)
第2の電極として、厚み3mmの平板を準備し、陰極電極B1とした。化成槽内における陽極体の最低高さh1は、陰極電極B1から1mm離れた位置にあるように、陽極体を化成液に浸漬した。
【0104】
化成処理時に、第1方向に配列した55個の陽極体のうち、略中央の30番目に位置する陽極体の電流密度を電流計により測定した。陽極体の3.3mm×4.4mmの表面上で、1.7mm×3.3mmの面に垂直な中心線に沿った電流密度の分布を求め、電流密度の平均値IAを求めた。実施例1~9および比較例1について、測定結果を表1に示す。
【0105】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本開示は、電解コンデンサの製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0107】
20:電解コンデンサ
10:コンデンサ素子
1:陽極体
2:陽極ワイヤ
2a:第一部分
2b:第二部分
3:誘電体層
4:固体電解質層
5:陰極層
5a:カーボン層
5b:金属ペースト層
6:陽極部
7:陰極部
8:導電性接着材
11:外装体
12:樹脂保護層
13:陽極リード端子
14:陰極リード端子
14a:接合部
101:化成槽
102:化成液
102a:液面
103:気泡
104:第1の電極(陽極電極)
105:第2の電極(陰極電極)
110:凸部
112:凸部により形成される隙間
113:循環孔
114:凹部