(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150736
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20231005BHJP
H02M 7/06 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02M7/48 M
H02M7/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022059987
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】半田 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】林 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】宮島 孝幸
【テーマコード(参考)】
5H006
5H770
【Fターム(参考)】
5H006BB05
5H006CB01
5H006DC05
5H006FA04
5H770BA01
5H770CA02
5H770DA03
5H770EA01
5H770HA03W
5H770LA03W
5H770LA07W
5H770LB07
(57)【要約】
【課題】三相交流電源から入力される三相交流に不平衡が生じたときに、三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価できるようにする。
【解決手段】電力変換装置(1)に、コンデンサ(14)の電圧を測定するコンデンサ電圧測定部(16)と、三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数が1回になるという現象の有無を、コンデンサ電圧測定部(16)によって測定された電圧に基づいて判定することにより、三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する不平衡率評価部(17)とを設ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源(2)から入力される三相交流を直流に整流して出力する整流回路(11)と、
前記整流回路(11)の2つの出力端(11a,11b)間に接続されたコンデンサ(14)と
を備えた電力変換装置において、
所定の物理量を測定する物理量測定部(16,18,20)と、
前記整流回路(11)の3本の入力線(L1~L3)のうちの少なくとも2本の入力線(L1~L3)に電流が流れることによって引き起こされる現象のうち、少なくとも前記三相交流電源(2)の半周期以上にわたって前記整流回路(11)の所定の2本の入力線にのみ電流が流れることによって引き起こされる現象の有無を、前記物理量測定部(16,18,20)によって測定された物理量に基づいて判定することにより、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する不平衡率評価部(17)とを備えたことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記現象は、少なくとも前記三相交流電源(2)の1周期以上にわたって前記整流回路(11)の所定の2本の入力線にのみ電流が流れることによって引き起こされる現象であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電力変換装置において、
前記コンデンサ(14)の容量は、前記整流回路(11)の出力電圧の脈動を許容するように設定されていることを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記物理量は、前記整流回路(11)の3本の入力線(L1~L3)のうちの1本以上の入力線(L1~L3)の電流を含むことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記物理量は、前記整流回路(11)を構成する整流素子(11D)に流れる電流及び前記整流素子(11D)に電流が流れることで前記整流素子(11D)に発生する電圧のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記物理量は、前記整流回路(11)の出力電圧及び出力電流のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電力変換装置において、
前記物理量は、前記コンデンサ(14)の電圧及び電流のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする電力変換装置 。
【請求項8】
請求項7に記載の電力変換装置において、
前記不平衡率評価部(17)は、
前記物理量測定部(16)によって測定された物理量に基づいて、所定期間中における前記コンデンサ(14)の充電及び放電の少なくとも一方の回数を算出する充放電回数算出部(17b)と、
前記充放電回数算出部(17b)によって算出された回数に基づいて、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する評価部(17c)とを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電力変換装置において、
前記所定期間は、前記三相交流電源(2)の半周期以上であることを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項7に記載の電力変換装置において、
前記不平衡率評価部(17)は、
前記物理量測定部(16)によって測定された物理量に基づいて、連続する前記コンデンサ(14)の充電期間、連続する前記コンデンサ(14)の放電期間、及び連続する1組の前記コンデンサ(14)の充放電期間のうちの少なくとも1つの長さを算出する期間算出部(17d)と、
前記期間算出部(17d)によって算出された少なくとも1つの長さに基づいて、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する評価部(17c)とを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
三相交流電源(2)から入力される三相交流を直流に整流して出力する整流回路(11)と、
前記整流回路(11)の2つの出力端(11a,11b)間に接続されたコンデンサ(14)と
を備えた電力変換装置において、
前記整流回路(11)の入力線(L1~L3)に流れる電流、前記整流回路(11)を構成する整流素子(11D)に流れる電流、前記整流素子(11D)に電流が流れることで前記整流素子(11D)に発生する電圧、前記整流回路(11)の出力電圧、前記整流回路(11)の出力電流、前記コンデンサ(14)の電圧、及び前記コンデンサ(14)の電流のうち、少なくとも一つに基づいて、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する不平衡率評価部(17)を備えたことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三相交流電源から入力される三相交流を直流に整流して出力する整流回路を備えた電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、三相交流電源から入力される三相交流を直流に整流して出力する整流回路と、前記整流回路の2つの出力端間に接続されたコンデンサと、前記コンデンサの電圧を測定する電圧検出器と、前記電圧検出器により測定された電圧に含まれるリプル成分のリプル周波数を検出する周波数検出部と、前記周波数検出部により検出されたリプル周波数が基準周波数でない場合に電源不平衡有りと判定する判定部と、電源不平衡有りと判定されている状態の継続時間が所定時間を超えた場合に、負荷への電力供給を遮断する遮断部とを備えた電力変換装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のような電力変換装置において、三相交流電源から入力される三相交流に不平衡が生じたときに、三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価したいという要請がある。
【0005】
例えば、不平衡が生じていれば、不平衡率が低くても、リプル周波数は基準周波数から外れてしまうので、特許文献1では、負荷への電力供給が遮断されてしまう。しかしながら、不平衡が生じていても、不平衡率が低ければ、負荷への電力供給を通常通り継続しても支障がない場合がある。このような場合には、負荷への電力供給を遮断するか否かを判定するために、不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価することが望まれる。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、三相交流電源から入力される三相交流に不平衡が生じたときに、三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価できるようにすること、詳しくは、不平衡率が、三相交流電源の半周期に、コンデンサへの充放電が1回しかされない高い不平衡率であるか、又はコンデンサへの充放電が2回されるような低い不平衡率であるかを判別できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、三相交流電源(2)から入力される三相交流を直流に整流して出力する整流回路(11)と、前記整流回路(11)の2つの出力端間に接続されたコンデンサ(14)とを備えた電力変換装置において、所定の物理量を測定する物理量測定部(16,18,20)と、前記整流回路(11)の3本の入力線(L1~L3)のうちの少なくとも2本の入力線(L1~L3)に電流が流れることによって引き起こされる現象のうち、少なくとも前記三相交流電源(2)の半周期以上にわたって前記整流回路(11)の所定の2本の入力線にのみ電流が流れることによって引き起こされる現象の有無を、前記物理量測定部(16,18,20)によって測定された物理量に基づいて判定することにより、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する不平衡率評価部(17)とを備えたことを特徴とする。
【0008】
第1の態様では、不平衡率評価部(17)は、前記現象が有ると判定した場合には、三相交流の不平衡率が0よりも大きい前記所定値以上であると評価する一方、前記現象が無いと判定した場合には、三相交流の不平衡率が前記所定値未満であると評価できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様において、前記現象は、少なくとも前記三相交流電源(2)の1周期以上にわたって前記整流回路(11)の所定の2本の入力線にのみ電流が流れることによって引き起こされる現象である。
【0010】
第2の態様では、不平衡が生じ、整流回路(11)の入力電圧の平均が0でない場合でも、不平衡率が所定値以上であるか否かを正しく評価しやすい。
【0011】
第3の態様は、第1又は2の態様において、前記コンデンサ(14)の容量は、前記整流回路(11)の出力電圧の脈動を許容するように設定されている。
【0012】
第3の態様では、整流回路(11)の出力電圧の脈動を許容する程度に、コンデンサ(14)の容量を小さくできる。したがって、コンデンサ(14)を小型化できる。
【0013】
第4の態様は、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、前記物理量は、前記整流回路(11)の3本の入力線(L1~L3)のうちの1本以上の入力線(L1~L3)の電流を含む。
【0014】
第5の態様は、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、前記物理量は、前記整流回路(11)を構成する整流素子(11D)に流れる電流及び前記整流素子(11D)に電流が流れることで前記整流素子(11D)に発生する電圧のうちの少なくとも1つを含む。
【0015】
第6の態様は、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、前記物理量は、前記整流回路(11)の出力電圧及び出力電流のうちの少なくとも1つを含む。
【0016】
第7の態様は、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、前記物理量は、前記コンデンサ(14)の電圧及び電流のうちの少なくとも1つを含む。
【0017】
第8の態様は、第7の態様において、前記不平衡率評価部(17)は、前記物理量測定部(16)によって測定された物理量に基づいて、所定期間中における前記コンデンサ(14)の充電及び放電の少なくとも一方の回数を算出する充放電回数算出部(17b)と、前記充放電回数算出部(17b)によって算出された回数に基づいて、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する評価部(17c)とを有する。
【0018】
第8の態様では、物理量測定部(16)に物理量としてコンデンサ(14)の電圧及び電流のうちの少なくとも1つを測定させればよいので、整流回路(11)に入力される三相の電圧又は電流を測定させる場合に比べ、物理量測定部(16)の構成を簡素化できる。
【0019】
第9の態様は、第8の態様において、前記所定期間は、前記三相交流電源(2)の半周期以上である。
【0020】
整流回路(11)に入力される三相交流に不平衡が生じている状態で、不平衡率が0よりも大きい所定値未満である場合と、欠相時等、不平衡率が前記所定値以上である場合とで、三相交流電源(2)の半周期あたりの充放電回数が異なる。第9の態様では、充放電回数算出部(17b)が、三相交流電源(2)の半周期以上の期間中におけるコンデンサ(14)の充電及び放電の少なくとも一方の回数を算出するので、不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを正確に評価できる。
【0021】
第10の態様は、第7の態様において、前記不平衡率評価部(17)は、前記物理量測定部(16)によって測定された物理量に基づいて、連続する前記コンデンサ(14)の充電期間、連続する前記コンデンサ(14)の放電期間、及び連続する1組の前記コンデンサ(14)の充放電期間のうちの少なくとも1つの長さを算出する期間算出部(17d)と、前記期間算出部(17d)によって算出された少なくとも1つの長さに基づいて、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する評価部(17c)とを有する。
【0022】
第10の態様では、物理量測定部(16)に物理量としてコンデンサ(14)の電圧及び電流のうちの少なくとも1つを測定させればよいので、整流回路(11)に入力される三相の電圧又は電流を測定させる場合に比べ、物理量測定部(16)の構成を簡素化できる。
【0023】
第11の態様は、三相交流電源(2)から入力される三相交流を直流に整流して出力する整流回路(11)と、前記整流回路(11)の2つの出力端間に接続されたコンデンサ(14)とを備えた電力変換装置において、前記整流回路(11)の入力線(L1~L3)に流れる電流、前記整流回路(11)を構成する整流素子(11D)に流れる電流、前記整流素子(11D)に電流が流れることで前記整流素子(11D)に発生する電圧、前記整流回路(11)の出力電圧、前記整流回路(11)の出力電流、前記コンデンサ(14)の電圧、及び前記コンデンサ(14)の電流のうち、少なくとも一つに基づいて、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する不平衡率評価部(17)を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る電力変換装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、電源電圧を200Vとした場合における三相交流電源から入力される三相交流に不平衡が生じてない場合、0よりも大きい所定値未満の不平衡率で不平衡が生じている場合、及び欠相が生じている場合のコンデンサの電圧と三相交流の線間電圧のタイミングチャートを上から順に示す。
【
図3】
図3は、不平衡率の評価動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0026】
《実施形態1》
図1は、本開示の実施形態1に係る電力変換装置(1)を示す。この電力変換装置(1)は、三相交流電源(2)から供給される入力交流を、所望周波数及び所望電圧を有する交流に変換して、電動機(3)に供給する。
【0027】
電力変換装置(1)は、整流回路(11)と、逆変換器(12)と、リアクトル(13)と、コンデンサ(14)と、PWM制御器(15)と、物理量測定部としてのコンデンサ電圧測定部(16)と、不平衡率評価部(17)とを備えている。
【0028】
整流回路(11)は、三相交流電源(2)から3本の入力線(L1~L3)を介して入力される三相交流を直流に整流して第1及び第2の出力端(11a,11b)に出力する。詳しくは、整流回路(11)は、全波整流回路である。整流回路(11)は、ブリッジ状に結線された6つの整流素子としてのダイオード(11D)を有している。これらのダイオード(11D)は、そのカソードを第1の出力端(11a)側に向けるとともに、そのアノードを第2の出力端(11b)側に向けている。
【0029】
逆変換器(12)は、整流回路(11)により出力される直流を三相交流にスイッチング動作により変換して電動機(3)に供給する。詳しくは、逆変換器(12)は、6つのスイッチング素子(12S)と、6つの還流ダイオード(12D)とを有している。6つのスイッチング素子(12S)は、ブリッジ結線されている。詳しく説明すると、逆変換器(12)は、その第1及び第2の入力ノード(12a,12b)間に接続された3つのスイッチングレグを備えている。スイッチングレグは、2つのスイッチング素子(12S)が互いに直列に接続されたものである。
【0030】
3つのスイッチングレグの各々において、上アームのスイッチング素子(12S)と下アームのスイッチング素子(12S)との中点が、電動機(3)の各相のコイル(u相、v相、w相のコイル)にそれぞれ接続されている。各スイッチング素子(12S)には、還流ダイオード(12D)が1つずつ逆並列に接続されている。
【0031】
リアクトル(13)の一端は、整流回路(11)の第1の出力端(11a)に接続され、リアクトル(13)の他端は、逆変換器(12)の第1の入力ノード(12a)に接続されている。
【0032】
コンデンサ(14)は、整流回路(11)の第1及び第2の出力端(11a,11b)間に接続されている。詳しくは、コンデンサ(14)は、逆変換器(12)の第1及び第2の入力ノード(12a,12b)間に接続されている。
【0033】
コンデンサ(14)の容量は、整流回路(11)の出力電圧をほとんど平滑化できないが、逆変換器(12)のスイッチング動作に起因するリプル電圧を抑制できるように設定されている。ここで抑制されるリプル電圧は、スイッチング素子(12S)におけるスイッチング周波数に応じた電圧変動である。
【0034】
要するに、コンデンサ(14)の容量は、整流回路(11)の出力電圧の脈動を許容し、スイッチング動作に起因する逆変換器(12)の第1及び第2の入力ノード(12a,12b)(直流側ノード)間の電圧変動を吸収するように設定されている。詳しくは、コンデンサ(14)の容量は、スイッチング周期間におけるコンデンサ(14)の電圧変動を、コンデンサ(14)の電圧の平均値の1/10以下に抑えるように設定されている。このように、整流回路(11)の出力電圧の脈動を許容する程度に、コンデンサ(14)の容量を小さくできるので、コンデンサ(14)を小型化できる。
【0035】
ここで、スイッチング周期は、スイッチング素子(12S)がオンオフを繰り返す周期である。本実施形態1では、PWM制御によりスイッチング素子(12S)が制御されるので、スイッチング周期は、搬送波のキャリア周期となる。
【0036】
整流回路(11)の出力電圧を平滑化するための平滑コンデンサとして、従来、電解コンデンサが用いられることがある。一方、本実施形態のコンデンサ(14)の容量値は、この平滑コンデンサの約0.01~0.1倍である。一例として、コンデンサ(14)は、フィルムコンデンサで構成される。
【0037】
したがって、コンデンサ(14)の電圧には、三相交流電源(2)から供給される入力交流の周波数に起因する脈動が発生する。三相交流電源(2)は三相電源であるため、三相交流電源(2)の周波数に起因する脈動の周波数は、三相交流電源(2)の周波数の6倍である。
【0038】
コンデンサ(14)は、三相交流電源(2)とコンデンサ(14)との間のインダクタンス成分とで、LCフィルタを構成する。前記インダクタンス成分は、リアクトル(13)を含む。
【0039】
PWM制御器(15)は、制御信号を逆変換器(12)に出力して、各スイッチング素子(12S)のスイッチング動作を制御する。PWM制御器(15)は、電動機(3)を所望の回転速度で回転させるように逆変換器(12)を制御する。詳しくは、PWM制御器(15)は、各相の変調波と所定の三角波である搬送波との比較結果に応じたスイッチング信号により、複数のスイッチング素子(12S)を制御するPWM制御を行う。詳しくは、変調波が搬送波よりも大きければ上アームのスイッチング素子(12S)をオンするとともに下アームのスイッチング素子(12S)をオフする一方、変調波が搬送波よりも小さければ上アームのスイッチング素子(12S)をオフするとともに下アームのスイッチング素子(12S)をオンする。
【0040】
コンデンサ電圧測定部(16)は、コンデンサ(14)の電圧を所定の物理量として測定する。
【0041】
不平衡率評価部(17)は、不平衡検出部(17a)、充放電回数算出部としての充電回数算出部(17b)、及び評価部(17c)を有している。不平衡率評価部(17)の機能は、マイクロコンピュータ等によって実現される。
【0042】
不平衡検出部(17a)は、コンデンサ電圧測定部(16)により測定されたコンデンサ(14)の電圧に基づいて、三相交流電源(2)から整流回路(11)に入力される三相交流に不平衡が生じているか否かを判定する。詳しくは、不平衡検出部(17a)は、コンデンサ(14)の電圧の脈動の脈動周波数が、三相交流電源(2)の周波数の6倍である場合には、前記三相交流に不平衡が生じていないと判定する。当該脈動は、三相交流電源(2)から供給される入力交流の周波数に起因する脈動である。一方、不平衡検出部(17a)は、前記脈動周波数が、三相交流電源(2)の周波数の6倍でない場合には、前記三相交流に不平衡が生じていると判定する。
【0043】
図2中、実線がコンデンサ(14)の電圧、破線が入力線(L1,L2)の線間電圧、一点鎖線が入力線(L2,L3)の線間電圧、二点鎖線が入力線(L3,L1)の線間電圧を示す。
図2の一番上のグラフに示すように、三相交流に不平衡が生じていない場合には、コンデンサ(14)の電圧の前記脈動周波数は、三相交流電源(2)の周波数の6倍となる。一方、
図2の中央及び一番下のグラフに示すように、三相交流に不平衡が生じている場合には、脈動周波数は、三相交流電源(2)の周波数の2倍となる。したがって、不平衡検出部(17a)は、コンデンサ(14)の電圧の脈動周波数が、三相交流電源(2)の周波数の6倍であるか否かを判定することによって、三相交流に不平衡が生じているか否かを判定できる。
【0044】
充電回数算出部(17b)は、コンデンサ電圧測定部(16)によって測定されたコンデンサ(14)の電圧に基づいて、三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数を算出する。充電の回数は、コンデンサ電圧測定部(16)によって測定されたコンデンサ(14)の電圧を微分し、微分結果の符号(正と負のいずれであるか)、及び当該電圧の変曲点を特定することによって算出できる。
【0045】
評価部(17c)は、前記三相交流に不平衡が生じていると不平衡検出部(17a)によって判定された場合に、充電回数算出部(17b)によって算出された回数に基づいて、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する。具体的には、評価部(17c)は、充電回数算出部(17b)によって算出された回数が2回である場合には、不平衡率が前記所定値未満であると評価する。一方、評価部(17c)は、充電回数算出部(17b)によって算出された回数が1回である場合には、不平衡率が前記所定値以上であると評価する。評価部(17c)は、不平衡率が前記所定値以上であると評価した場合には、PWM制御器(15)の制御により、逆変換器(12)のスイッチング素子(12S)のスイッチング動作を停止させる。一方、その他の場合には、評価部(17c)は、PWM制御器(15)にPWM制御を継続させる。
【0046】
図2中、符号Hは、三相交流電源(2)の半周期を示す。
図2の中央のグラフに示すように、不平衡が生じているが、不平衡率が0よりも大きい所定値未満である場合には、三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数が2回となる。一方、
図2の一番下のグラフに示すように、三相のうちの一相の欠相が生じている場合、すなわち不平衡率が前記所定値以上である場合には、三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数が1回となる。評価部(17c)は、充電回数算出部(17b)によって算出された回数が2回であるか又は1回であるかを判定することによって、不平衡率が0よりも大きい所定値未満であるか又は前記所定値以上であるかを評価できる。
【0047】
上述のように構成された電力変換装置(1)は、電動機(3)へ電力を供給する間、
図3に示す不平衡率の評価動作を所定タイミング毎に繰り返し実行する。
【0048】
当該評価動作では、まず、(S101)において、不平衡検出部(17a)が、コンデンサ電圧測定部(16)により測定されたコンデンサ(14)の電圧に基づいて、三相交流電源(2)から整流回路(11)に入力される三相交流に不平衡が生じているか否かを判定する。詳しくは、不平衡検出部(17a)は、コンデンサ(14)の電圧の脈動周波数が、三相交流電源(2)の周波数の6倍である場合には、前記三相交流に不平衡が生じていないと判定し、処理が(S102)に進む。一方、不平衡検出部(17a)は、前記脈動周波数が、三相交流電源(2)の周波数の6倍でない場合には、前記三相交流に不平衡が生じていると判定し、処理が(S103)に進む。
【0049】
(S102)では、評価部(17c)が、PWM制御器(15)にPWM制御を継続させる。
【0050】
(S103)では、評価部(17c)が、充電回数算出部(17b)によって算出された三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数に基づいて、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する。詳しくは、評価部(17c)は、充電回数算出部(17b)によって算出された回数が2回である場合には、不平衡率が前記所定値未満であると評価し、処理が(S102)に進む。一方、評価部(17c)は、充電回数算出部(17b)によって算出された回数が1回である場合には、不平衡率が前記所定値以上であると評価し、処理が(S104)に進む。
【0051】
(S104)では、評価部(17c)が、PWM制御器(15)に、逆変換器(12)のスイッチング素子(12S)のスイッチング動作を停止させる。
【0052】
このように、本実施形態1では、不平衡率評価部(17)の充電回数算出部(17b)及び評価部(17c)が、三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数が1回になるという現象の有無を、コンデンサ電圧測定部(16)によって測定されたコンデンサ(14)の電圧に基づいて判定することにより、三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する。つまり、不平衡率評価部(17)は、前記現象が有ると判定した場合には、三相交流の不平衡率が前記所定値以上であると評価する一方、前記現象が無いと判定した場合には、三相交流の不平衡率が前記所定値未満であると評価する。ここで、三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数が1回になるという現象は、整流回路(11)の3本の入力線(L1~L3)のうちの少なくとも2本の入力線(L1~L3)に電流が流れることによって引き起こされる現象のうち、三相交流電源(2)の半周期以上にわたって整流回路(11)の所定の2本の入力線(L1~L3)にのみ電流が流れることによって引き起こされる現象である。
【0053】
したがって、本実施形態1では、三相交流電源(2)の三相交流に不平衡が生じている場合でも、不平衡率が0よりも大きい所定値未満であれば、電力変換装置(1)が異常停止することなく、電力供給を継続できる。
【0054】
また、コンデンサ(14)の充電の回数の算出に、コンデンサ(14)の電圧を使用し、整流回路(11)に入力される三相の電圧又は電流を測定しなくてもよいので、電力変換装置(1)の構成を簡素化できる。
【0055】
整流回路(11)に入力される三相交流に不平衡が生じている状態で、不平衡率が0よりも大きい所定値未満である場合と、欠相時等、不平衡率が前記所定値以上である場合とで、三相交流電源(2)の半周期あたりの充放電回数が異なる。本実施形態1では、充電回数算出部(17b)が、三相交流電源(2)の半周期以上の期間中におけるコンデンサ(14)の充電の回数を算出するので、不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを正確に評価できる。
【0056】
また、本実施形態1では、コンデンサ(14)の容量を、整流回路(11)の出力電圧の脈動を許容するように小さく設定したので、電動機(3)の負荷が小さい状態においても、不平衡率が前記所定値以上であるか否かによってコンデンサ(14)の電圧の波形が顕著に変化するので、コンデンサ(14)の充電の回数が1回になるという現象の有無の判定が容易になる。
【0057】
《実施形態2》
図4は、本開示の実施形態2に係る電力変換装置(1)を示す。本実施形態2では、不平衡率評価部(17)が、充電回数算出部(17b)に代えて、期間算出部(17d)を有している。
【0058】
期間算出部(17d)は、コンデンサ電圧測定部(16)によって測定されたコンデンサ(14)の電圧に基づいて、連続する1組のコンデンサ(14)の充放電期間の長さを算出する。連続する1組の前記コンデンサ(14)の充放電期間の長さは、電圧が極大値となるタイミングの間隔である。したがって、連続する1組の前記コンデンサ(14)の充放電期間の長さは、コンデンサ電圧測定部(16)によって測定された電圧を微分し、電圧が極大値となるタイミングを特定し、当該タイミングの間隔を求めることによって算出できる。なお、連続する1組の前記コンデンサ(14)の充放電期間の長さは、電圧が極小値となるタイミングを特定し、当該タイミングの間隔を求めることによっても算出できる。
【0059】
評価部(17c)は、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かの評価を、期間算出部(17d)によって算出された期間に基づいて行う。具体的には、評価部(17c)は、期間算出部(17d)によって算出された期間が所定期間より短い場合には、不平衡率が前記所定値未満であると評価する。一方、評価部(17c)は、期間算出部(17d)によって算出された期間が所定期間以上である場合には、不平衡率が前記所定値以上であると評価する。
【0060】
図2に示すように、欠相が生じている場合に、不平衡率が0よりも大きい所定値未満の場合と比較して、連続する1組の前記コンデンサ(14)の充放電期間の長さが長くなっている。したがって、評価部(17c)は、前記三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かの評価を、期間算出部(17d)によって算出された期間が所定期間以上であるかに基づいて行える。
【0061】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0062】
《実施形態3》
図5は、本開示の実施形態3に係る電力変換装置(1)を示す。本実施形態3では、電力変換装置(1)にリアクトル(13)が設けられていない。したがって、コンデンサ電圧測定部(16)によって測定されるコンデンサ(14)の電圧は、整流回路(11)の出力電圧となる。また、電力変換装置(1)に、直流電流測定部(18)がさらに設けられている。この直流電流測定部(18)は、整流回路(11)の出力電流を所定の物理量として測定する。コンデンサ電圧測定部(16)及び直流電流測定部(18)が、物理量測定部を構成する。
【0063】
また、不平衡率評価部(17)に、電力算出部(17e)がさらに設けられている。この電力算出部(17e)は、コンデンサ電圧測定部(16)によって測定された電圧と、直流電流測定部(18)によって測定された電流とに基づいて、整流回路(11)の出力電力を算出する。
【0064】
充電回数算出部(17b)は、電力算出部(17e)によって出力された出力電力に基づいて、三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数を算出する。
【0065】
これら電力算出部(17e)と充電回数算出部(17b)とが、コンデンサ電圧測定部(16)によって測定された電圧と、直流電流測定部(18)によって測定された電流とに基づいて、三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数を算出する充放電回数算出部を構成する。
【0066】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0067】
《実施形態4》
図6は、本開示の実施形態4に係る電力変換装置(1)を示す。本実施形態4では、電力変換装置(1)が、コンデンサ電圧測定部(16)に代えて、物理量測定部(20)を備えている。この物理量測定部(20)は、整流回路(11)の3本の入力線(L1~L3)を流れる電流を測定する。
【0068】
不平衡率評価部(17)は、物理量測定部(20)によって測定された電流に基づいて、3本の入力線(L1~L3)のうちの1本の入力線(L1~L3)の電流が、所定期間以上連続して0であるか否かを判定する。詳しくは、不平衡率評価部(17)は、流れる電流が所定期間以上連続して0である入力線(L1~L3)の本数が、1本であるか、又は1本以外の本数(0本、2本、3本)であるかを判定する。所定期間は、三相交流電源(2)の半周期以上に設定される。そして、3本の入力線(L1~L3)のうちの1本の入力線(L1~L3)の電流が、所定期間以上連続して0である場合に、不平衡率が0よりも大きい所定値以上であると評価し、PWM制御器(15)に、逆変換器(12)のスイッチング素子(12S)のスイッチング動作を停止させる。一方、3本の入力線(L1~L3)すべてに、前記所定期間中に1度でも電流が流れる場合には、不平衡率が前記所定値以上であると評価し、PWM制御器(15)に、PWM制御を継続させる。不平衡率評価部(17)は、このような不平衡率の評価動作を所定タイミング毎に繰り返し実行する。
【0069】
このように、本実施形態4では、不平衡率評価部(17)が、3本の入力線(L1~L3)のうちの1本の入力線(L1~L3)の電流が、所定期間以上連続して0であるという現象の有無を、3本の入力線(L1~L3)の電流に基づいて判定することにより、三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価する。ここで、3本の入力線(L1~L3)のうちの1本の入力線(L1~L3)の電流が、所定期間以上連続して0であるという現象は、三相交流電源(2)の半周期以上にわたって整流回路(11)の所定の2本の入力線にのみ電流が流れることによって引き起こされる現象である。
【0070】
その他の構成は実施形態1と同じであるので、同じ構成箇所には同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0071】
《実施形態5》
本実施形態5では、物理量測定部(20)は、整流回路(11)の3本の入力線(L1~L3)を流れる電流に代えて、整流回路(11)を構成するダイオード(11D)に流れる電流を測定する。詳しくは、物理量測定部(20)は、整流回路(11)を構成する3つの上アームのダイオード(11D)に流れる電流をそれぞれ測定する。
【0072】
不平衡率評価部(17)は、物理量測定部(20)によって測定された電流に基づいて、3本の入力線(L1~L3)のうちの1本の入力線(L1~L3)の電流が、前記所定期間以上連続して0であるか否かを判定する。この所定期間も、三相交流電源(2)の半周期以上に設定される。
【0073】
その他の構成は実施形態4と同じであるので、その詳細な説明を省略する。
【0074】
《実施形態5の変形例》
上記実施形態5では、物理量測定部(20)が、整流回路(11)の3本の入力線(L1~L3)を流れる電流に代えて、整流回路(11)を構成する3つの上アームのダイオード(11D)に流れる電流を測定したが、当該3つの上アームのダイオード(11D)の電圧を測定してもよい。ダイオード(11D)には、当該ダイオード(11D)に電流が流れることで電圧が発生し、ダイオード(11D)の電圧には、ダイオード(11D)の導通状態が反映される。したがって、不平衡率評価部(17)が、ダイオード(11D)の電圧に基づいて、3本の入力線(L1~L3)のうちの1本の入力線(L1~L3)の電流が、前記所定期間以上連続して0であるか否かを判定してもよい。
【0075】
また、不平衡率評価部(17)が、整流回路(11)を構成する3つの上アームのダイオード(11D)の電圧及び電流に基づいて、ダイオード(11D)の消費電力を算出し、当該消費電力に基づいて、3本の入力線(L1~L3)のうちの1本の入力線(L1~L3)の電流が、前記所定期間以上連続して0であるか否かを判定してもよい。
【0076】
また、物理量測定部(20)が、整流回路(11)を構成する3つの上アームのダイオード(11D)の電流及び電圧の少なくとも一方に代えて、整流回路(11)を構成する3つの下アームのダイオード(11D)の電流及び電圧の少なくとも一方を測定してもよい。
【0077】
また、物理量測定部(20)が、整流回路(11)の1本、又は2本の入力線(L1~L3)を流れる電流と、残りの入力線(L1~L3)に対応する上アーム又は下アームのダイオード(11D)の電流又は電圧とを測定してもよい。そして、不平衡率評価部(17)が、整流回路(11)の1本、又は2本の入力線(L1~L3)を流れる電流と、残りの入力線(L1~L3)に対応する上アーム又は下アームのダイオード(11D)の電流又は電圧とに基づいて、3本の入力線(L1~L3)のうちの1本の入力線(L1~L3)の電流が、前記所定期間以上連続して0であるか否かを判定してもよい。
【0078】
なお、上記実施形態1では、不平衡率評価部(17)が、充電回数の算出を、コンデンサ(14)の電圧に基づいて行った。しかし、不平衡率評価部(17)が、充電回数の算出を、コンデンサ(14)の電流に基づいて行ってもよいし、コンデンサ(14)の電圧及び電流に基づいてコンデンサ(14)の電力を算出することにより行ってもよい。
【0079】
また、上記実施形態1,3では、充電回数算出部(17b)が、コンデンサ(14)の充電の回数を算出したが、充電の回数に代えて、放電の回数又は充放電の回数を算出してもよい。
【0080】
また、上記実施形態1,3では、充電回数算出部(17b)が、三相交流電源(2)の半周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数を算出したが、三相交流電源(2)の半周期以上の他の期間中におけるコンデンサ(14)の充電の回数を算出するようにしてもよい。例えば、三相交流電源(2)の1周期中におけるコンデンサ(14)の充電の回数を算出するようにしてもよい。
【0081】
また、上記実施形態2では、期間算出部(17d)が、連続する1組のコンデンサ(14)の充放電期間の長さを算出したが、これに代えて、連続するコンデンサ(14)の充電期間、又は連続するコンデンサ(14)の放電期間を算出してもよい。また、期間算出部(17d)が、連続する1組のコンデンサ(14)の充放電期間、連続するコンデンサ(14)の充電期間、及び連続するコンデンサ(14)の放電期間のうちの2つ以上を算出してもよい。
【0082】
また、上記実施形態3では、不平衡率評価部(17)が、充電回数の算出を、整流回路(11)の出力電圧及び出力電流の両方に基づいて行ったが、いずれか一方に基づいて行ってもよい。
【0083】
上記実施形態3では、リアクトル(13)を整流回路(11)の出力側に設けなかったが、実施形態1と同様に設けてもよい。
【0084】
また、上記実施形態3では、整流回路(11)の出力電圧とコンデンサ(14)の電圧は同じになるので、コンデンサ(14)の充電回数の算出を、整流回路(11)の出力電圧に基づいて行うようにしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態1では、リアクトル(13)を整流回路(11)の出力側に設けているが、リアクトル(13)のインダクタンス値が、整流回路(11)の出力電圧に基づくコンデンサ(14)の充電回数の算出に支障をきたさない程度の値であれば、コンデンサ(14)の充電回数の算出を、整流回路(11)の出力電圧に基づいて行うようにしてもよい。
【0086】
上記実施形態1,3では、整流回路(11)の出力電流は、コンデンサ(14)の充電電流とほぼ同じなので、整流回路(11)の出力電流に基づいてコンデンサ(14)の充電回数を算出してもよい。
【0087】
また、上記実施形態1~5では、不平衡率評価部(17)が、三相交流電源(2)の半周期にわたって整流回路(11)の所定の2本の入力線にのみ電流が流れることによって引き起こされる現象の有無を判定した。しかし、この方法では、整流回路(11)の入力電圧の平均が0でない場合(例えば、入力電圧の正の電圧の絶対値波形の最大電圧と、負の電圧の絶対値波形の最大電圧が異なる場合)に、不平衡率評価部(17)が正しい評価を行えない可能性がある。例えば、1周期中の入力電圧の絶対値波形のうち、一方の半周期の波形と他方の半周期の波形が異なり、不平衡率が低いにもかかわらず、一方の半周期には1本の入力線にも電流が流れないが、他方の半周期には所定の2本の入力線にのみ電流が流れる場合に、不平衡率評価部(17)が正しい評価を行えない可能性が高い。したがって、整流回路(11)の入力電圧の平均が0でない場合にも正しい評価を行えるように、不平衡率評価部(17)が、三相交流電源(2)の1周期以上にわたって整流回路(11)の所定の2本の入力線にのみ電流が流れることによって引き起こされる現象の有無を判定するようにしてもよい。例えば、上記実施形態4、5において、不平衡率評価部(17)が、物理量測定部(20)によって測定された電流を、三相交流電源(2)の1周期にわたって監視するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態1~5では、不平衡検出部(17a)が、コンデンサ(14)の電圧の脈動周波数に基づいて、三相交流に不平衡が生じていると判定したときに、評価部(17c)が、三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを評価するようにした。しかし、不平衡検出部(17a)を設けず、評価部(17c)が三相交流の不平衡率が0よりも大きい所定値以上であるか否かを常に評価するようにしてもよい。
【0089】
以上、実施形態及び変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態及び変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上説明したように、本開示は、三相交流電源から入力される三相交流を直流に整流して出力する整流回路を備えた電力変換装置として有用である。
【符号の説明】
【0091】
1 電力変換装置
2 三相交流電源
11 整流回路
11D ダイオード(整流素子)
11a 第1の出力端
11b 第2の出力端
14 コンデンサ
16 コンデンサ電圧測定部(物理量測定部)
17 不平衡率評価部
17b 充電回数算出部(充放電回数算出部)
17c 評価部
17d 期間算出部
18 直流電流測定部(物理量測定部)
20 物理量測定部
L1~L3 入力線