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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150745
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】樹の剪定方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 17/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A01G17/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060000
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】522130885
【氏名又は名称】株式会社BLUE LAKE Project
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 理
(72)【発明者】
【氏名】中村 健二
(72)【発明者】
【氏名】夏目 記正
(57)【要約】
【課題】果実の収穫効率を高めるみかんの圃場及びみかんの樹の剪定方法を提供する。
【解決手段】青みかんを収穫するための複数の樹を備える圃場であって、前記複数の樹は、樹間が2m以内となるよう密植され、前記青みかんの収穫時の前記複数の樹の各々は、樹高が1.8m以下である、圃場である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青みかんを収穫するための複数の樹を備える圃場であって、
前記複数の樹は、樹間が2m以内となるよう密植され、
前記青みかんの収穫時の前記複数の樹の各々は、樹高が1.8m以下である、
圃場。
【請求項2】
前記複数の樹の各々の枝が絡まる程度に前記複数の樹が密植される、
請求項1に記載の圃場。
【請求項3】
前記複数の樹の各々の樹形は、方形である、
請求項1又は2に記載の圃場。
【請求項4】
前記複数の樹が一列に整列するよう密植される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の圃場。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の前記複数の樹となるように、
前記青みかんの収穫後に、前記複数の樹の各々の枝の剪定をする、
樹の剪定方法。
【請求項6】
動力により剪定刃を駆動する剪定工具を使用して、複数の前記枝を一括して剪定する、
請求項5に記載の樹の剪定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場及び樹の剪定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、柑橘類の果実を樹上で完熟させることで、果実の糖度を増加させる柑橘類の栽培方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-284831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熟した果実を収穫するためのみかんの圃場では、熟すために必要な養分や日光を個々の樹に行き渡らせるために、樹間が所定距離以上となるよう樹を定植させている。また、当該圃場では、必要な日光を果実にまんべんなく照射するために、樹高が所定高さ以上となるよう樹を管理している。
【0005】
したがって、熟した果実を収穫するためのみかんの圃場では、樹々を密植させることが困難であり、また、作業者が立った状態で手を伸ばして届く高さ以上の位置に果実が成るため、果実を収穫するために脚立等を使用する必要があり、果実の収穫効率が低かった。
【0006】
本発明の幾つかの実施形態は、果実の収穫効率を高めるみかんの圃場及びみかんの樹の剪定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態は、青みかんを収穫するための複数の樹を備える圃場であって、前記複数の樹は、樹間が2m以内となるよう密植され、前記青みかんの収穫時の前記複数の樹の各々は、樹高が1.8m以下である、圃場である。
【0008】
本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の幾つかの実施形態によれば、果実の収穫効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の圃場1の平面図である。
図2】第1実施形態の圃場1における樹2の側面図である。
図3】比較例の圃場11の平面図である。
図4】比較例の圃場11における樹12の側面図である。
図5】比較例の圃場11及び第1実施形態の圃場1における、1年間の作業等の一例を示す説明図である。
図6】第1実施形態の圃場1において、苗木6が定植された様子を示す説明図であり、図6Aは圃場1の平面図であり、図6Bは、圃場1における苗木6の側面図である。
図7】第1実施形態の圃場1において、樹2が密植された様子を示す説明図であり、図7Aは圃場1の平面図であり、図7Bは、圃場1における樹2の側面図である。
図8】第1実施形態の圃場1において、樹2を剪定する様子を示す説明図であり、図8Aは、樹2の枝4を剪定する様子を示す図であり、図8Bは、剪定作業後に所定期間経過した樹2の樹形を示す図である。
図9】結果した樹の様子を示す説明図であり、図9Aは、比較例の圃場11における樹12の図であり、図9Bは、第1実施形態の圃場1における樹2の図である。
図10】第1実施形態の圃場1において使用される剪定工具の例を示す斜視図であり、図10Aは、剪定工具7の斜視図であり、図10Bは、剪定工具8の斜視図である。
図11】第2実施形態の圃場21において、苗木6が定植される前の様子を示す説明図であり、図11Aは圃場21の平面図であり、図11Bは、圃場21における樹12の側面図である。
図12】第2実施形態の圃場21において、苗木6が定植された後の様子を示す説明図であり、図12Aは圃場21の平面図であり、図12Bは、圃場21における苗木6及び樹12の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
青みかんを収穫するための複数の樹を備える圃場であって、前記複数の樹は、樹間が2m以内となるよう密植され、前記青みかんの収穫時の前記複数の樹の各々は、樹高が1.8m以下である、圃場が明らかとなる。このような圃場によれば、果実の収穫効率を高めることができる。
【0013】
前記複数の樹の各々の枝が絡まる程度に前記複数の樹が密植されることが望ましい。これにより、果実の収穫効率を高めることができる。
【0014】
前記複数の樹の各々の樹形は、方形であることが望ましい。これにより、果実の収穫効率をさらに高めることができる。
【0015】
前記複数の樹が一列に整列するよう密植されることが望ましい。これにより、果実の収穫効率を高めることができる。
【0016】
上述したいずれかの前記複数の樹となるように、前記青みかんの収穫後に、前記複数の樹の各々の枝の剪定をすることが望ましい。これにより、果実の収穫効率を高める圃場を作ることができる。
【0017】
動力により剪定刃を駆動する剪定工具を使用して、複数の前記枝を一括して剪定することが望ましい。これにより、これにより、枝の剪定の際の作業効率を高めることができる。
【0018】
===第1実施形態===
<青みかん専用の圃場1>
図1は、第1実施形態の圃場1の平面図である。
【0019】
圃場1は、柑橘類の果実を収穫するための圃場である。本実施形態では、圃場1は、温州みかんの果実を収穫するための圃場である。但し、圃場1は、夏みかん、文旦、レモン等、温州みかん以外の柑橘類の果実を収穫するための圃場であっても良い。なお、以下の説明では、「温州みかん」を、単に「みかん」と呼ぶことがある。
【0020】
特に、本実施形態の圃場1は、みかんの果実のうち、青みかんを収穫するための圃場である。ここで、「青みかん」とは、みかんの果実のうち、熟す前の若い果実であり、果実の皮が未だ緑色の果実である。青みかんは、酸味が強いため生食には適さないが、香りが良いためジュース等の加工食品に使用されることが多い。また、青みかんは、ヘスペリジンやナリルチン等のフラボノイドを多く含有することが近年知られており、サプリメント等の健康食品に使用されることもある。
【0021】
なお、熟した果実を収穫するためのみかんの圃場では、熟す前の若い果実(すなわち、青みかん)のうちに間引きをする。以下の説明では、このような果実の間引きを、「摘果」と呼ぶことがある。もし、摘果をしなければ、熟すために必要な養分を果実同士で奪い合うことで、果実が小さくなったり、果実の糖度が低下してしまったりするおそれがある。すなわち、熟した果実を収穫するためのみかんの圃場では、摘果をしなければ、果実の品質が低下してしまうおそれがある。
【0022】
上述したように、従来、青みかんは、摘果の対象であった。したがって、摘果された青みかんは、農業産廃品に過ぎなかった。なお、上述した加工食品や健康食品に使用される青みかんは、農業産廃品となるべき青みかんを、製品に転用したものであった。
【0023】
本実施形態の圃場1では、従来、摘果の対象でしかなかった青みかんが、最終生産物として収穫される。そして、本実施形態の圃場1では、青みかんの収穫後、圃場1としての年間の管理を終える。つまり、本実施形態の圃場1は、青みかん用の圃場である。そして、本実施形態の圃場1に植えられるみかんの樹は、青みかんを収穫するための樹である。なお、本明細書では、最終生産物として青みかんを得ることを「収穫する」と呼び、従来の、熟した果実を収穫するためのみかんの圃場における「摘果する」場合と区別している。
【0024】
また、以下の説明では、熟す前の果実である青みかんに対し、熟した果実であるみかんを、「赤みかん」と呼んで区別する。後述する図5にも示されるが、みかんの樹では、発芽し、開花・結果した後に、生理的落花を経て、果実の肥大・成熟期に移行する。この肥大・成熟期に、果実が徐々に熟していく。このため、生育時期により「青みかん」及び「赤みかん」を区別すると、肥大・成熟期に移行する前の果実を「青みかん」と呼び、肥大・成熟期に移行した後の果実を「赤みかん」と呼ぶ。しかし、この区別は厳密なものではなく、本実施形態の圃場1は、所望の品質の青みかんを収穫するための圃場であって良い。
【0025】
なお、「青みかん用の圃場」とは、圃場の全ての樹が、青みかんを収穫するための樹である必要はなく、一部、赤みかんを収穫するための樹が含まれていても良い。また、青みかんを収穫するための樹であっても、樹の全ての果実が青みかんの状態で収穫される必要はなく、一部、赤みかんの状態で収穫されても良い。つまり、「青みかんを収穫するための樹」とは、後述の通り、少なくとも青みかんを収穫するための目的の樹であれば良く、少なくとも樹間や樹高が青みかん用に整えられるものであれば良い。
【0026】
本実施形態の圃場1は、図1に示されるように、青みかんを収穫するための複数の樹2を有する。また、複数の樹2は、隣り合う樹2同士の樹間が2m以内となるよう植えられている。ここで、「樹間」は、樹2の中心間の距離である。
【0027】
以下の説明では、樹2同士の樹間が所定距離以内となるよう近づけて樹2を植えることを「密植する」と言う。すなわち、複数の樹2は、隣り合う樹2同士の樹間が2m以内となるよう密植されている。但し、圃場1内には、図1に示されるように、後述する剪定・整枝、施肥、収穫等の作業を行うための作業道が設けられており、隣り合う樹2同士の樹間が作業道を介して2mより大きくなることがある。
【0028】
本実施形態の圃場1では、図1に示されるように、複数の樹2が一列に整列し、畝や、茶畑のごとき形状となる。したがって、本実施形態の圃場1では、複数の樹2が一列に整列するよう密植される。
【0029】
本実施形態では、上述したように圃場1の複数の樹2を密植させることで、例えば、果実3を収穫する際に作業者の移動距離が少なくなる。したがって、本実施形態の圃場1では、果実3の収穫効率を高めることができる。
【0030】
図2は、第1実施形態の圃場1における樹2の側面図である。なお、図2には、本実施形態の圃場1における2つの樹2が示されており、図2中の左側の樹2は、一列に整列した樹2の断面が示されている。
【0031】
本実施形態の圃場1では、樹2は、図2に示される側面視において、青みかんの収穫時の樹高が1.8m以下、好ましくは1.5m以下である。ここで、「樹高」は、樹2の最も高い点の、地面からの高さである。
【0032】
青みかんの収穫時の樹2の樹高を1.8m以下とすることにより、樹2に成る果実3は、作業者5が立った状態で手を伸ばして届く高さ以下に位置することになる。したがって、作業者5は、果実3を収穫するために脚立等を必要とせずに、手の届く範囲で果実3を収穫することができる。つまり、本実施形態の圃場1では、果実3の収穫効率を高めることができる。但し、樹2の体力を維持するために、樹2は、1m以上であることが望ましい。
【0033】
また、本実施形態の圃場1では、図2に示される側面視において、樹2の樹形は、方形である。ここで、「方形」は、長方形や正方形のような、四隅の角が直角となる四角形の総称である。但し、厳密な方形に限られず、角が丸くても良いし、四角形の辺の一部に凹み(凹部)や出っ張り(凸部)を有していても良い。
【0034】
本実施形態の圃場1では、樹2の樹形が方形であることにより、円錐形の樹(例えば、後述する図4に示される樹12)と比べると、樹2の上部においても多くの果実3を成らせることができる。つまり、本実施形態の圃場1では、果実3の収穫効率をさらに高めることができる。
【0035】
<比較例の圃場11>
図3は、比較例の圃場11の平面図である。また、図4は、比較例の圃場11における樹12の側面図である。
【0036】
以下では、本実施形態の青みかん用の圃場である圃場1及び樹2の特徴について、比較例との比較を用いて説明する。比較例の圃場11は、熟した果実を収穫するためのみかんの圃場である。すなわち、比較例の圃場11は、赤みかんを収穫するための圃場である。圃場11は、図3に示されるように、赤みかんを収穫するための複数の樹12を有する。
【0037】
また、複数の樹12は、隣り合う樹12同士の樹間が4.0~4.5mとなるよう植えられている。つまり、比較例における隣り合う樹12同士の樹間は、本実施形態における隣り合う樹2同士の樹間よりも大きい。これは、隣り合う樹12同士の樹間を小さくすると、赤みかんが熟すために必要な圃場11の土の養分や日光を、個々の樹12に十分に行き渡らせることができなくなるからである。赤みかんが熟すために必要な養分や日光を個々の樹に行き渡らせることができないと、例えば、果実13の糖度が低下してしまう。
【0038】
本実施形態の圃場1は、上述したように、青みかん用の圃場である。このため、比較例の圃場11と比べると、果実3の糖度を考慮する必要性は高くない。したがって、本実施形態の圃場1では、図1に示されるように、複数の樹2を密植させることができる。本実施形態の圃場1における樹2の植栽本数は、比較例の圃場11における樹12植栽本数の略2倍である。
【0039】
以上より、発明者は、従来、摘果の対象でしかなかった青みかんを、最終生産物として収穫する、ということに着目し、このような青みかんを収穫するための樹を密植させる、という着想をさらに得た。これにより、青みかん用の圃場である本実施形態の圃場1により、果実3の収穫効率を高める、という効果が得られる。
【0040】
また、比較例の圃場11では、樹12は、図4に示される側面視において、赤みかんの収穫時の樹高が2.0m~2.5mである。したがって、樹12に成る果実13は、作業者5が立った状態で手を伸ばして届く高さよりも高い位置に成ることがある。このため、作業者5は、樹12の上部の果実13を収穫するために脚立等を使用する必要がある。つまり、本実施形態の樹2と比べると、比較例の樹12における果実13の収穫効率は低下する。逆に言うと、本実施形態の圃場1では、青みかんの収穫時の樹2の樹高が1.8m以下と低く抑えられていることにより、果実3の収穫効率を高めることができる。
【0041】
さらに、比較例の圃場11では、樹12の樹形は、図4に示される側面視において、円錐形である。したがって、樹12に成る果実13は、樹12の上部にいくほど少なくなる。一方、本実施形態の圃場1では、樹2の樹形が方形であることにより、樹2の上部においても多くの果実3を成らせることができるので、果実3の収穫効率をさらに高めることができる。
【0042】
<1年間の作業>
図5は、比較例の圃場11及び第1実施形態の圃場1における、1年間の作業等の一例を示す説明図である。
【0043】
以下では、本実施形態の青みかん用の圃場である圃場1における1年間の作業について、上述した比較例の圃場11における1年間の作業との違いを説明する。なお、図5に示される1年間の作業スケジュールは、成木において毎年繰り返される作業が示されており、苗木を定植し、成木となるまでの生長過程における作業は含まれていない。
【0044】
まず、比較例の圃場11では、例年2月~4月にかけて、発芽の前に枝の剪定・整枝作業を行う。ここで、「剪定・整枝作業」とは、余分な枝を取って樹形を整える作業であり、みかんの結果を安定化させる目的で行われる。以下の説明では、剪定・整枝を、単に「剪定」と呼ぶことがある。
【0045】
なお、比較例の圃場11における樹12では、4月頃に発芽し、5月、6月にかけて開花・結果するが、この開花・結果する枝は、直前に剪定・整枝が行われた枝ではなく、前年に剪定・整枝が行われた枝である。すなわち、剪定・整枝された枝では、越冬した後の翌春に開花・結果する。
【0046】
また、比較例の圃場11では、7月~9月に青みかんの摘果を行うことで、果実肥大・成熟を促し、10月~12月にかけて赤みかんの収穫を行う。なお、上述したように、比較例の圃場11における摘果作業は、果実が小さくなったり、果実の糖度が低下したりすることを抑制するために行われる間引きであり、果実を全て収穫するものではない。
【0047】
これに対し、本実施形態の圃場1では、青みかんの状態で、摘果ではなく果実を全て収穫する。この果実の収穫作業は、7月中に行われる。これは、青みかんに含有されるヘスペリジンは、梅雨明けである7月上旬~中旬を境に低下するためである。つまり、7月中に青みかんである果実を収穫することで、ヘスペリジン含有量の多い果実を収穫することができる。
【0048】
なお、樹に成った青みかんは、梅雨明けである7月上旬~中旬以降、果実に含まれる果汁が多くなる。このため、例えば、果汁に含まれるクエン酸の抽出用に青みかんを収穫したいような場合、8月に果実を収穫することもできる。このように、本実施形態の圃場1では、青みかんの用途毎に収穫時期を変更することができる。本実施形態の圃場1における果実の収穫作業は、生理的落花が始まる5月中旬から、8月中に行われれば良い。
【0049】
本実施形態の圃場1では、果実の収穫後、枝の剪定・整枝作業が行われる。ここで、剪定・整枝作業は、収穫作業の後に間をおかずに行われる。例えば、7月末までに果実を収穫した場合、8月中に剪定・整枝作業が行われる。剪定・整枝が行われた枝は、越冬した後の翌春に発芽し、再び開花・結果する。本実施形態の圃場1では、後述するように毎年結果させるために、冬が到来するできるだけ前に剪定・整枝作業が行われる。
【0050】
上述したように、比較例の圃場11においては、2月~4月にかけて剪定・整枝した枝は、越冬した後の翌春に開花・結果する。つまり、一つの枝に着目すると、毎年結果せず、隔年で結果する。これに対し、本実施形態の圃場1では、8月中に剪定・整枝した枝は、越冬した後の翌春に開花・結果する。その年に青みかんとして収穫した後すぐに剪定・整枝をするため、一つの枝に着目すると、毎年結果する。したがって、本実施形態の圃場1は、比較例の圃場11と比べると、果実の収穫量を多く見込むことができる。
【0051】
<苗木6の定植作業>
図6は、第1実施形態の圃場1において、苗木6が定植された様子を示す説明図である。なお、図6Aは圃場1の平面図であり、図6Bは、圃場1における苗木6の側面図である。また、図7は、第1実施形態の圃場1において、樹2が密植された様子を示す説明図である。なお、図7Aは圃場1の平面図であり、図7Bは、圃場1における樹2の側面図である。
【0052】
上述では、成木において毎年繰り返される作業を説明したが、以下では、苗木を定植し、成木となるまでの生長過程における作業について説明する。つまり、本実施形態の圃場1において、樹2が密植される手順について説明する。
【0053】
まず、図6Aに示されるように、圃場1において、苗木6が定植される。ここで、苗木6は、隣り合う苗木6同士の樹間が2m以内となるように定植される。
【0054】
圃場1に定植された苗木6は、所定程度の高さになるまで4~5年間成長させる。そうすると、図7Bに示されるように、枝4同士が絡まる程度にまで、樹2が密植される。また、複数の樹2が一列に整列し、図7Aに示される平面視において、畝や、茶畑のごとき形状となる。
【0055】
<樹2の枝4の剪定・整枝作業>
図8は、第1実施形態の圃場1において、樹2を剪定する様子を示す説明図である。なお、図8Aは、樹2の枝4を剪定する様子を示す図であり、図8Bは、剪定作業後に所定期間経過した樹2の樹形を示す図である。
【0056】
以下では、本実施形態の樹2の樹形となるように行われる枝4の剪定・整枝作業の内容について説明する。上述したように、剪定・整枝作業は、余分な枝を取って樹形を整えることで、みかんの結果を安定化させる。具体的には、樹2の樹形が図2に示される方形となるような剪定の方法について説明する。
【0057】
みかんの樹の枝は、縦に延びる枝である立枝と、横に延びる枝である横枝とを有する。また、みかんの樹では、横枝を剪定することで、剪定された枝の先端が将来的に立枝として伸びる性質を有する。つまり、図8Aに示されるように、横枝である枝4を剪定することで、将来的に立枝である枝4Aとなるように成長させることができる。つまり、枝4は、剪定された後、上に伸びていく。本実施形態の圃場1では、この性質を生かし、横枝を集中的に剪定することで、図8Bに示されるように、角型の樹形を有する樹2を生成することができる。
【0058】
なお、枝4の先端から3分の1程度までは芽が出る力が弱い。このため、剪定作業においては、枝4の先端から3分の1から半分くらいまでを剪定することが望ましい。
【0059】
上述したように、本実施形態の圃場1では、樹2は、青みかんの収穫時の樹高が1.8m以下、好ましくは1.5m以下である。このため、樹2の枝4の剪定・整枝作業では、適宜樹2の高さを抑えるための剪定も行われる。
【0060】
また、本実施形態の圃場1では、剪定によって、樹2の側面も揃えられている。樹2の樹形が方形であり、図8Bに示されるように、樹2の側面が平面状になるように整えられている。
【0061】
<樹2の結果の様子>
図9は、結果した樹の様子を示す説明図である。なお、図9Aは、比較例の圃場11における樹12の図であり、図9Bは、第1実施形態の圃場1における樹2の図である。
【0062】
上述したように、比較例の圃場11では、樹12の樹形は円錐形であり、樹12の枝14は、立枝と横枝とが樹12全体に一様に存在する。このため、枝14に成る果実13は、図9Aに示されるように、樹12全体に一様に成る。これにより、果実13に日光がまんべんなく照射され、果実13の色が濃くなり、糖度も高くなる。
【0063】
しかし、本実施形態の圃場1では、比較例の圃場11と比べると、果実3の色や糖度を考慮する必要性は高くない。したがって、本実施形態の圃場1では、枝4が上に伸びていくよう剪定されることで、果実3は枝4の先端、つまり樹2の上部に集約的に成る。これにより、樹2の外側の面積あたりの果実3の収穫量が高くなり、果実3を効率よく収穫することができる。
【0064】
また、樹2の側面にも、図9Bに示されるように、果実3Aが多数成っている。つまり、本実施形態の圃場1では、剪定によって整えられた樹2の側面に、多数の果実3Aが並ぶように成っている。なお、比較例の圃場11では、便宜上のため樹12が円錐形に描かれているものの、実際の樹12の側面は平面状に揃えられているわけではないため、果実13の収穫作業に手間がかかってしまう。したがって、本実施形態の圃場1では、果実3Aの収穫が容易である。
【0065】
<剪定工具>
図10は、樹の枝を剪定する剪定工具の例を示す斜視図である。なお、図10Aは、剪定工具7の斜視図であり、図10Bは、剪定工具8の斜視図である。
【0066】
本実施形態の圃場1において、樹2の枝4を選定する剪定工具として、例えば、不図示の鋸等を使用することができる。しかし、電動の剪定刃を有する剪定工具を使用して、樹2の複数の枝4を一括して剪定することもできる。例えば、不図示のチェーンソーを使用して、樹2の複数の枝4を一括して剪定することができる。これにより、枝4の剪定の際の作業効率を高めることができる。
【0067】
図10A及び図10Bに示される剪定工具は、上述した電動の剪定刃を有する剪定工具である。
【0068】
図10Aに示される剪定工具7は、2人で剪定作業をする場合に使用される剪定工具である。剪定工具7は、電動の剪定刃9と、把持部10A及び把持部10Bとを有する。
【0069】
剪定工具7では、2人の作業者のうち、一方の作業者が把持部10Aを把持し、他方の作業者が把持部10Bを把持する。そして、剪定刃9が複数の枝を一括して剪定するように、2人の作業者が同一方向に移動することで剪定作業を行う。これにより、枝の剪定の際の作業効率を高めることができる。
【0070】
図10Bに示される剪定工具8は、作業者による操作を必要としない自走式の剪定工具である。剪定工具8は、電動の剪定刃9と、自走部10Cを有している。自走部10Cは、例えば、車輪やキャタピラーである。そして、剪定刃9が複数の枝を一括して剪定するように、剪定工具8が自走することで剪定作業を行う。これによっても、枝の剪定の際の作業効率をさらに高めることができる。
【0071】
なお、剪定工具7及び剪定工具8では、電動の剪定刃9であったが、例えば、ガソリンエンジン等により駆動しても良い。したがって、本実施形態の圃場1では、動力により剪定刃を駆動する剪定工具を使用して、樹2の複数の枝4を一括して剪定することができる。
【0072】
===第2実施形態===
図11は、第2実施形態の圃場21において、苗木6が定植される前の様子を示す説明図である。なお、図11Aは圃場21の平面図であり、図11Bは、圃場21における樹12の側面図である。また、図12は、第2実施形態の圃場21において、苗木6が定植された後の様子を示す説明図である。なお、図12Aは圃場21の平面図であり、図12Bは、圃場21における苗木6及び樹12の側面図である。
【0073】
上述した第1実施形態の圃場1では、全ての樹2が、図6に示されるように、苗木6から定植されていた。しかし、第2実施形態の圃場21のように、既存の赤みかん用の圃場を転用して、青みかん用の圃場に転用しても良い。
【0074】
図11A及び図11Bに示される圃場21は、赤みかん用の樹が植えられている。すなわち、上述の比較例の圃場11と同様の圃場である。すなわち、複数の樹12が、図11Aに示されるように、隣り合う樹12同士の樹間が4.0~4.5mとなるよう植えられている。また、樹12は、図11Bに示される側面視において、赤みかんの収穫時の樹高が2.0m~2.5mである。
【0075】
本実施形態の圃場21では、図12A及び図12Bに示されるように、樹12の間に、苗木6が定植される。圃場21に定植された苗木6は、所定程度の高さになるまで4~5年間成長させる。また、樹12は、上述した図2に示される樹2の樹高や樹形となるように、剪定・整枝がなされる。また、樹2と樹12との枝同士が絡まる程度にまで、密植される。
【0076】
これにより、実施形態の圃場21では、例えば後継者不足などにより存続が困難となった赤みかんの圃場を有効利用すべく、青みかん用の圃場に転用することができる。そして、青みかん用の圃場である本実施形態の圃場21では、果実3の収穫効率を高めることができる。
【0077】
===その他===
前述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更・改良され得ると共に、本発明には、その等価物が含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1,11,21 圃場
2,12 樹
3,3A,13 果実
4、4A,14 枝
5 作業者
6 苗木
7,8 剪定工具
9 剪定刃
10A,10B 把持部
10C 自走部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-02-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青みかんを収穫するための複数の樹を備える圃場であって、
前記複数の樹は、一列に整列し、整列した前記複数の樹の樹間が2m以内であって、前記複数の樹の各々の枝が絡まる程度になるよう密植され、
前記青みかんの収穫時の前記複数の樹の各々は、樹高が1.8m以下であり、
前記複数の樹の密植された側面が平面状になるように揃えられている、
圃場。
【請求項2】
前記複数の樹の密植された樹形は、方形である、
請求項1に記載の圃場。
【請求項3】
前記複数の樹の各々の横枝が剪定され、剪定された前記横枝の先端から立枝が伸びることで前記樹形が方形となる、
請求項2に記載の圃場。
【請求項4】
青みかんを収穫するための複数の樹を備える圃場における、前記樹の剪定方法であって、
前記複数の樹は、一列に整列し、整列した前記複数の樹の樹間が2m以内であって、前記複数の樹の各々の枝が絡まる程度になるよう密植されており、
前記青みかんの収穫時の前記複数の樹の各々の樹高が1.8m以下となるよう剪定すること、
前記複数の樹の密植された側面が平面状に揃えられるよう剪定すること、
を行う樹の剪定方法。
【請求項5】
前記複数の樹の密植された樹形が方形となるよう、前記複数の樹の各々の横枝を剪定する、
請求項4に記載の樹の剪定方法。
【請求項6】
前記青みかんの収穫後に、越冬した後の翌春に開花・結果するような所定の時期に前記青みかんの収穫後の枝を剪定する、
請求項4又は5に記載の樹の剪定方法。
【請求項7】
前記所定の時期は、8月中である、
請求項6に記載の樹の剪定方法。
【請求項8】
動力により剪定刃を駆動する剪定工具を使用して、複数の枝を一括して剪定する、
請求項4から7のいずれか一項に記載の樹の剪定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態は、青みかんを収穫するための複数の樹を備える圃場であって、前記複数の樹は、一列に整列し、整列した前記複数の樹の樹間が2m以内であって、前記複数の樹の各々の枝が絡まる程度になるよう密植され、前記青みかんの収穫時の前記複数の樹の各々は、樹高が1.8m以下であり、前記複数の樹の密植された側面が平面状になるように揃えられている、圃場である。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
青みかんを収穫するための複数の樹を備える圃場における、前記樹の剪定方法であって、
前記複数の樹は、一列に整列し、整列した前記複数の樹の樹間が2m以内であって、前記複数の樹の各々の枝が絡まる程度になるよう密植されており、
前記青みかんの収穫時の前記複数の樹の各々の樹高が1.8m以下となるよう剪定すること、
前記青みかんの収穫後に、越冬した後の翌春に開花・結果するような所定の時期に、前記青みかんの収穫後の枝を、前記複数の樹の密植された側面が平面状に揃えられるよう剪定すること、
を行う樹の剪定方法。
【請求項2】
前記複数の樹の密植された樹形が方形となるよう、前記複数の樹の各々の横枝を剪定する、
請求項に記載の樹の剪定方法。
【請求項3】
前記所定の時期は、8月中である、
請求項1又は2に記載の樹の剪定方法。
【請求項4】
動力により剪定刃を駆動する剪定工具を使用して、複数の枝を一括して剪定する、
請求項からのいずれか一項に記載の樹の剪定方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、樹の剪定方法に関する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態は、青みかんを収穫するための複数の樹を備える圃場における、前記樹の剪定方法であって、前記複数の樹は、一列に整列し、整列した前記複数の樹の樹間が2m以内であって、前記複数の樹の各々の枝が絡まる程度になるよう密植されており、前記青みかんの収穫時の前記複数の樹の各々の樹高が1.8m以下となるよう剪定すること、前記青みかんの収穫後に、越冬した後の翌春に開花・結果するような所定の時期に、前記青みかんの収穫後の枝を、前記複数の樹の密植された側面が平面状に揃えられるよう剪定すること、を行う樹の剪定方法である。