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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150782
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】工作機械システム
(51)【国際特許分類】
   B23B 13/12 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B23B13/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060051
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敏之
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FC04
3C045FC06
3C045FC14
3C045FC34
(57)【要約】
【課題】ワークの位置を検出するための新たな構成を追加することなく、ワーク加工中に精度の高いワークの残材長の算出結果を得る技術を提供する。
【解決手段】本発明の工作機械システムは、長尺材料の工作機械と給材機とを有し、工作機械は、長尺材料を把持するチャックと、長尺材料を加工する加工部と、長尺材料の搬送部と、搬送部および加工部の動作を制御する加工制御部と、を有し、給材機は、長尺材料の後端を保持する保持部と、保持部の動作を制御する供給制御部と、を有し、搬送部は、長尺材料を搬送する送り動作と、チャックの把持位置を変更する掴み直し動作とを行い、供給制御部は、長尺材料が所定の長さになったことを通知する信号を出力し、加工制御部は、信号を出力した時点の長尺材料の材料長と、信号を出力してからチャックが最前進位置に到達するまでの間にチャックが進んだ距離と、に基づいて長尺材料の残材長を取得する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺材料を把持して回転する主軸を備えた工作機械と前記長尺材料を前記工作機械に供給する給材機とを有する工作機械システムであって、
前記工作機械は、
前記長尺材料を把持して前記主軸内に回転自在に設置されるチャックと、
前記長尺材料の先端を加工して、前記長尺材料から複数の製品を切り出す加工部と、
前記主軸を移動させる搬送部と、
前記搬送部および前記加工部の動作を制御する加工制御部と、を有し、
前記給材機は、
前記搬送部による前記長尺材料の搬送において、前記長尺材料の後端を保持するとともに、前記チャックとともに前記送り方向に移動する保持部と、
前記保持部の動作を制御する供給制御部と、を有し、
前記搬送部は、前記長尺材料の長手方向に沿った送り方向における所定区間を、前記長尺材料を前記チャックが把持して前記送り方向に移動して前記長尺材料を前記送り方向に搬送する送り動作と、前記加工部が前記所定区間の前記製品を切り出した位置である最前進位置から前記送り方向と逆方向に移動して前記長尺材料を前記チャックが把持する把持位置を変更する掴み直し動作とを行い、
前記供給制御部は、前記保持部が所定の送り位置に到達したときに前記長尺材料が所定の長さになったことを通知する信号を出力し、
前記加工制御部は、前記供給制御部が前記信号を出力した時点の前記長尺材料の材料長と、前記供給制御部が前記信号を出力した第1のタイミングから、前記チャックが前記最前進位置に到達した第2のタイミングまでの間に、前記チャックが送り方向に進んだ距離と、に基づいて前記長尺材料の残材長を取得する
ことを特徴とする工作機械システム。
【請求項2】
前記搬送部による前記長尺材料の搬送における前記長尺材料の送り速度が、所定の送り速度であり、
前記加工制御部は、前記所定の送り速度を用いて前記チャックが送り方向に進んだ前記距離を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の工作機械システム。
【請求項3】
前記加工制御部はさらに、前記第1のタイミングから前記加工制御部に前記信号が入力された第3のタイミングまでの間に前記チャックが送り方向に進んだ距離を用いて、前記長尺材料の前記残材長を補正する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の工作機械システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを加工する工作機械システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動旋盤装置等の工作機械では、長尺の棒材から、加工後の突っ切り加工を繰り返すことにより、製品としての加工済みワークを複数切り出し、残材として排出される。この残材は別の製品として加工することができる。そのため棒材の残材長を算出することが求められる。工作機械と棒材の給材機とを有する従来の工作機械システムでは、ワークの切り出しを繰り返すうちに短くなる棒材の端部を光センサなどで検出して残材長を算出する技術が採用されていた(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平01-002802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、棒材の残材長を算出するために光センサなどの追加の構成要素が必要となるため、工作機械システムの設備コストが増加する懸念がある。そこで、本発明は、棒材の残材長を検出するための構成を別途追加することなく、精度の高い材料の残材長の算出を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の工作機械システムは、長尺材料を把持して回転する主軸を備えた工作機械と前記長尺材料を前記工作機械に供給する給材機とを有する工作機械システムであって、前記工作機械は、前記長尺材料を把持して前記主軸内に回転自在に設置されるチャックと、前記長尺材料の先端を加工して、前記長尺材料から複数の製品を切り出す加工部と、前記主軸を移動させる搬送部と、前記搬送部および前記加工部の動作を制御する加工制御部と、を有し、前記給材機は、前記搬送部による前記長尺材料の搬送において、前記長尺材料の後端を保持するとともに、前記チャックとともに前記送り方向に移動する保持部と、前記保持部の動作を制御する供給制御部と、を有し、前記搬送部は、前記長尺材料の長手方向に沿った送り方向における所定区間を、前記長尺材料を前記チャックが把持して前記送り方向に移動して前記長尺材料を前記送り方向に搬送する送り動作と、前記加工部が前記所定区間の前記製品を切り出した位置である最前進位置から前記送り方向と逆方向に移動して前記長尺材料を前記チャックが把持する把持位置を変更する掴み直し動作とを行い、前記供給制御部は、前記保持部が所定の送り位置に到達したときに前記長尺材料が所定の長さになったことを通知する信号を出力し、前記加工制御部は、前記供給制御部が前記信号を出力した時点の前記長尺材料の材料長と、前記供給制御部が前記信号を出力した第1のタイミングから、前記チャックが前記最前進位置に到達した第2のタイミングまでの間に、前記チャックが送り方向に進んだ距離と、に基づいて前記長尺材料の残材長を取得することを特徴とする。
【0006】
また、上記の工作機械システムにおいて、前記搬送部による前記長尺材料の搬送における前記長尺材料の送り速度が、所定の送り速度であり、前記加工制御部は、前記所定の送り速度を用いて前記チャックが送り方向に進んだ前記距離を取得することを特徴とする。また、上記の工作機械システムにおいて、前記加工制御部はさらに、前記第1のタイミングから前記加工制御部に前記信号が入力された第3のタイミングまでの間に前記チャック
が送り方向に進んだ距離を用いて、前記長尺材料の前記残材長を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の工作機械システムによれば、棒材の残材長を検出するための構成を別途追加することなく、精度の高い棒材の残材長の算出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る工作機械システムの模式図である。
図2】一実施形態に係る工作機械システムの概略構成を示す図である。
図3】一実施形態に係る工作機械システムの給材機構の模式図である。
図4】一実施形態に係るワークと給材機構の各部の位置関係を例示する図である。
図5】一実施形態に係る工作機械システムにおける材欠信号の遅延とワークの移動距離との関係を例示するグラフである。
図6】一実施形態に係る工作機械システムが実行する処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態を説明する。ただし、以下で説明する実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲をそれらの構成に限定するものではない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、製造条件、構成部品の機能、材質、形状、その相対配置などは、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、繰り返しの説明を省略する。
【0010】
(実施形態)
図1は、本発明の実施形態に係る工作機械システム1の構成を概略的に示す模式図である。図1に示す工作機械システム1は、いわゆる自動旋盤装置であり、被加工物として例えば長尺棒材であるワークWを回転させ、これに切削工具(加工工具)をあてがうことで、切削加工(旋削加工)を施す。
【0011】
図1に示すように、工作機械システム1は、加工機10と給材機20とを備える。加工機10は、長尺材料を把持して回転する主軸を備えた工作機械である。具体的には、加工機10は、基台2上に互いに対向配置された第1の主軸機構(正面主軸機構)100及び第2の主軸機構(背面主軸機構)200と、刃物台300と、第1の主軸機構100と第2の主軸機構200と刃物台300の動作を制御する加工制御部11と、を備える。また、給材機20は、ワークWの後端を保持するフィンガー22と、フィンガー22をZ軸方向に駆動する駆動ロッド25と、フィンガー22の先端があらかじめ設定された材欠信号出力位置(詳細は後述する)に到達したか否かを検出するための検出センサ23を備える。さらに、給材機20は、フィンガー22、検出センサ23、駆動ロッド25、その他給材機20各部の動作を制御する供給制御部21を備える。フィンガー22は、加工機10の搬送部13によるワークWの搬送において、ワークWの後端を保持するとともに、チャック105とともに送り方向に移動する保持部である。ここで、ワークWの送り方向とは、ワークWを刃物台300側に搬送する方向であり、図1においてZ軸の正方向である。また、加工機10の加工制御部11と給材機20の供給制御部21とは、信号線400によって接続されて互いに通信を行う。検出センサ23は、一例として、フィンガー22の先端の表面にシボ加工を施して反射率が異なる領域を設け、反射率の変化を基に当該領域を検出する光学センサが挙げられる。この代わりに、検出センサ23は、フィンガー22の先端に設けられてフィンガー22と一体的に移動するドグによってオン作動する近接スイッチなどにより構成された機械式のセンサであってもよい。また、検出センサ23の代
わりに、駆動ロッド25を駆動するサーボモータに設けられたエンコーダを用いてもよい。この場合、エンコーダの出力を基に駆動ロッド25ひいてはフィンガー22の位置を特定することができる。
【0012】
次に、加工機10の構成について説明する。第1の主軸機構100は、第1の主軸(正面主軸)101を有し、第2の主軸機構200は、第2の主軸(背面主軸)201を有し、これら二つの主軸は、それぞれの軸線が互いに略同心や平行となるように配置される。その軸線方向をZ軸方向とし、軸線方向と直交する方向のうち、鉛直方向と平行な方向をX軸方向、水平方向と平行な方向をY軸方向とする。図1は、Y軸方向に工作機械システム1の加工機10の構成を見た概略図である。
【0013】
第1の主軸機構100は、第1の主軸101を回転可能に支持する第1の主軸台102と、第1の主軸台102を基台2上でZ軸方向に移動させるための第1の駆動機構103と、を備える。同様に、第2の主軸機構200は、第2の主軸201を回転可能に支持する第2の主軸台202と、第2の主軸台202を基台2上でZ軸方向に移動させるための第2の駆動機構203と、ワークWを把持可能なチャック204と、を備える。駆動機構としては、例えば、駆動源としてのモータ、ボールねじ、ガイドレール等により構成されたボールねじ駆動機構を採用してよい。また、第1の主軸台102、第2の主軸台202を、Z軸方向だけでなく、Y軸方向やX軸方向に移動させる駆動機構を備えてもよい。
【0014】
第1の主軸台102は、例えば、不図示のビルトインモータを備えており、その回転駆動力により、第1の主軸101を回転駆動することができるように構成されている。同様に、第2の主軸台202も、不図示の駆動源から提供される回転駆動力により、第2の主軸201を回転駆動することができるように構成されている。なお、動力源構成としては、ビルトインモータに限定されるものではなく、外部の動力源から回転駆動力を伝達して回転させるような構成であってもよい。
【0015】
第1の主軸101は、ワークWを保持または把持するためのワーク保持穴を備えた中空構造を有している。また、第1の主軸101に挿通された長尺棒材であるワークWは、第1主軸101に設けられたチャック105によって、送り方向の先端側が把持され、後端が回転自在にフィンガー22によって支持される。第1の主軸101の先端には、ワーク径に対して拡張した内径を有する空間にチャック105が開閉可能に設けられている。チャック105は、チャックスリーブ106の内側に収容されている。これにより、ワークWは第1の主軸101の回転によって回転可能に把持された状態(第1の主軸101におけるワークWの軸心が定まり、かつ軸方向の移動が規制された状態)となる。ワーク保持穴は、軸線方向に第2の主軸側に向かって開口しており、ワークWのうち開口から露出した部分は、ガイドブッシュ104によってさらに回転自在に支持されている。ガイドブッシュ104は、基台2に設置されたガイドブッシュ支持台107に装着され、第1の主軸101と同軸に配置されている。ワークWにおいてガイドブッシュ104に支持された部分よりも先端側が、刃物台300に支持された切削工具301により旋削加工が施される部分となる。
【0016】
フィンガー22は、ワークWの送り方向と逆方向に凹んだ凹部を有し、かかる凹部にワークWの後端側が所定の長さ挿入されることで、ワークWの後端側を支持する。すなわち、加工時において、ワークWの長手方向に沿った送り方向における長さのうち、フィンガー22の凹部に挿入される部分の長さは、既知となる。
【0017】
また、チャック105は、後方から不図示のチャックスリーブがテーパ面を介して軸線方向にチャック105と接合する構成となっている。チャックスリーブは、不図示の油圧やエア等で駆動する流体シリンダから付与される力を受けて軸線方向に移動しようとする
ことで、チャック105に対し、軸心に向かう方向の分力を含む力を作用させ、チャック105に設けられたスリットが閉じるような締め付け力をチャック105に発生させる。これにより、ワークWがチャック105によって把持される。
【0018】
ワークWは、第1の主軸機構100の後方から第1の主軸台102に挿入され、第1の主軸101、チャック105、ガイドブッシュ104をそれぞれ通って、ワークW先端が刃物台300側に露出させられる。そして、刃物台300に近いワークWの先端側を支持するチャック105を含む第1の主軸101を支持する第1の主軸台102と、反対側の後端側を支持するフィンガー22とを、互いに同期させて送り方向に移動させることで、ワークWが刃物台300の切削工具301によって加工される領域に向けて送り方向に搬送される。
【0019】
本実施形態において、フィンガー22は、1つのワークWを使い切る1回の片道のストロークで移動する。一方、チャック105を含む第1の主軸101を支持する第1の主軸台102は、ワークWの先端側の加工サイトに近い領域を、フィンガー22のストロークよりも短いストロークで移動し、ストローク限界まで到達すると、チャック105によるワークWの把持位置をワークWの後端側に戻すように、送り方向とは逆方向に引き返して、チャック105の把持位置を改める掴み直し動作を行う。この掴み直し動作はフィンガー22の前進を止めた状態で行う。このチャック105を含む第1の主軸101の1ストロークの長さは、ワークWから1つの加工済みワークW1(図4)を加工・切り出す際に必要となる移動範囲に対応した長さである。
【0020】
刃物台300は、目的とする加工の種類に応じて選択可能に用意された複数の切削工具301を備えている。刃物台300は、不図示の駆動機構により、ワークWに対してX軸方向に進退移動可能に構成されており、選択された一の切削工具を回転するワークWにあてがうことで所望の切削加工(旋削加工)をワークWに対して施す。ワークWに対して切削工具301の切り込み量を変化させたり、切削工具301の種類を変更したり、第1の主軸台102を軸線方向に段階的に送ることにより、例えば、径寸法を段階的に変化させた外形形状の加工済みワークとして、刃物台300によって加工済みワークが切り出される。刃物台300が、本発明における搬送部により搬送されるワークWの先端を加工して、ワークWから複数の部品を切り出す加工部に対応する。
【0021】
第2の主軸201側の構成は、第1の主軸101側の構成と同様、ワークWを把持して回転させることが可能な構成となっている。すなわち、基本的な構成は、従来既知の背面主軸構成と同様である。
【0022】
加工制御部11は、例えばCPU(中央演算処理装置)等のプロセッサとメモリとを有するコンピュータで構成され、各主軸機構100、200や刃物台300などの加工機10を構成する各部の各種動作を制御する。また、給材機20の供給制御部21も、例えばCPU等のプロセッサとメモリとを有するコンピュータで構成され、フィンガー22や検出センサ23などの給材機20を構成する各部の各種動作を制御する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る工作機械システム1の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、工作機械システム1は、加工機10と給材機20とを備える。加工機10は、加工制御部11、第1の主軸機構100、第2の主軸機構200、加工部13、表示部16を有する。また、第1の主軸機構100は、ワークWを搬送するための搬送部12を有し、搬送部12は、チャック105を有する主軸101を備える。加工部13は、ワークWを加工するための刃物台300を備える。なお、図2では、第2の主軸機構200を制御する構成については図示を省略している。
【0024】
加工制御部11は、信号入力部14と残材長算出部15を有する。搬送部12は、チャック105を含む第1の主軸101の第1の主軸台102による搬送や第1の主軸101の回転を制御したり、チャック105によるワークWの掴み直しの往復動作を実行したりするためのサーボ機構を有する。加工部13は、刃物台300の動作を制御する。加工制御部11によって搬送部12と加工部13のそれぞれの動作が連動して制御されることで、所定の加工動作が実行される。
【0025】
また、加工制御部11は、以下に説明する処理によって得られるワークWの残材長に関する情報を表示部16に表示する。なお、加工制御部11は、さらに加工機10内の他の部分を制御するよう構成されていてもよい。
【0026】
また、給材機20は、供給制御部21とフィンガー22と検出センサ23と駆動ロッド25とを有する。供給制御部21は、検出センサ23や駆動ロッド25の動作を制御する。
【0027】
ワークWの送り方向の搬送は、加工機10の加工制御部11と、給材機20の供給制御部24と、が同期して動作することで行われる。すなわち、加工制御部11の制御によって搬送部12がチャック105を含む第1の主軸101を支持する第1の主軸台102を送り方向に移動させるとともに、これと同期して供給制御部24が駆動ロッド25を駆動してフィンガー22を送り方向に移動させることで、ワークWが送り方向に搬送される。また、加工制御部11は、チャック105がワークWを掴み直してから第1の主軸台102の移動によりワークWが搬送方向に搬送されるのに合わせて加工部13による刃物台300の動作を制御する。
【0028】
また、供給制御部21は信号出力部24を有する。供給制御部21は、ワークWの加工時に、フィンガー22が後述する材欠信号を発出させる信号出力位置に到達したことを検出センサ23によって検出したときに、そのことを通知する信号を信号出力部24から出力する。信号出力部24から出力された信号は、信号線400を経由して加工機10の信号入力部14に入力される。
【0029】
図3に、本実施形態に係る工作機械システム1の一部の構成を模式的に示す。また、図3には、チャック105の移動範囲と、信号出力部24からワークWの材欠信号が出力されるときにフィンガー22の先端が到達する送り位置を示す。図3において、位置P1は、フィンガー22の先端の到達によって、ワークWの材欠信号が出力される信号出力位置である。位置P2は、チャック105の往復動作における最後進位置(開始点位置とも称する)であり、位置P3は、チャック105の往復動作における最前進位置である。チャック105の往復動作においてチャック105の先端105aの位置が位置P2と位置P3との間を往復する。
【0030】
ワークWの先端が切削工具301によって加工され、加工が進むことでワークWの長さが短くなっていくので、チャック105とフィンガー22のワークWの保持位置は送り方向に前進する。そして、ワークWから最後の加工済みワークW1が製作される際に、フィンガー22の先端が所定の送り位置である信号出力位置P1に到達し、ワークWの長さが所定の長さまで短くなったことを通知する材欠信号が信号出力部24から出力される。図3には、信号出力部24から材欠信号が出力されるタイミングにおける各部の位置を示す。図3に示すように、チャック105は、信号出力部24から材欠信号が出力された後、ワークWの送り動作において、チャック105の先端面105aがワークWの送り方向(Z軸方向)に沿ってワークWの後端側の開始点位置P2からワークWの先端側の最前進位置P3まで移動する。このように、信号出力位置P1は、最後の加工済みワークW1を加工する途中で材欠信号が発出されるように、所定のマージンをもって設定され、加工開始
前にワークWを第1主軸101、フィンガー22等に組み付ける際に設定される。
【0031】
図4A図4Eに、本実施形態に係る工作機械システム1において材欠信号が出力されるタイミングと、工作機械システム1の各部の位置とワークWの残材長との関係を模式的に示す。図4A図4Eは、ワークWから最後の加工済みワークが切り出される工程を示している。図4Aは、フィンガー22の先端が送り位置P1を通過する前の状態であり、チャック105が開始点位置P2に位置している。ワークWは、第1の主軸101の回転によって回転させられながら、チャック105を含む第1の主軸101とフィンガー22の送り方向の移動によって刃物台300側に送られ、最後の加工済みワークW1の加工が開始される。
【0032】
図4Bは、図4Aの状態から刃物台300の切削工具301によりワークWが加工されるとともにチャック105を含む第1の主軸101およびフィンガー22の移動によりワークWが送り方向に前進して、フィンガー22の先端が送り位置P1に到達した状態である。このフィンガー22の先端が送り位置P1に到達したときのチャック105の先端の位置P4からチャック105の最前進位置P3までの距離L1が、最後の加工済みワークの製作を完了するのに要するワークWの残りの長さである残加工長である。また、フィンガー22の先端が送り位置P1に到達して信号出力部12が材欠信号を出力した時点のワークWの後端位置P5からワークWの非加工部の先端位置P6までの材料長L2は、信号発生位置P1とフィンガー22に挿入されるワークWの長さがあらかじめわかっていることから、既知の長さである。また、本実施形態では、サーボ機構が加工制御部11の制御に従ってチャック105を駆動するため、加工機10の加工制御部11は、チャック105の制御内容に基づいて、チャック105の先端の位置P4を特定することができる。なお、信号出力部24が材欠信号を出力したタイミングが、本発明の第1のタイミングに対応する。
【0033】
図4Cは、給材機20の信号出力部24が出力した材欠信号が信号線400を経由して加工機10の信号入力部24に入力された時点における状態を示す。本実施形態では、信号出力部24から出力された材欠信号が信号入力部24に入力されるまでの間にワークWの加工が進み、チャック105の先端の位置は、上記の位置P4からΔLだけ進んだ位置になり、ワークWの長さも図4Bの時点からΔLだけ短くなっている。
【0034】
図4Dは、図4Cの状態から刃物台300の切削工具301によりワークWがさらに加工が進み、加工済みワークW1(ワークWのうち加工が施された部分)の製作が、ワークWから分離させる突っ切り加工を残して完了した状態を示している。図4Eは、加工済みワークW1が、突っ切り加工によってワークW(残材)から切り離された状態を示している。図4Dに示す時点においては、チャック105は最前進位置P3に位置している。なお、信号出力部24が材欠信号を出力した後にチャック105が最前進位置P3に到達したタイミングが、本発明の第2のタイミングに対応する。このときのワークWの後端位置P7から非加工部の先端位置P6までの長さL3が、ワークWの残材長である。したがって、本実施形態では、材料長L2と、第1のタイミングから第2のタイミングまでの間にチャック105が送り方向に進んだ距離である残加工長L1とに基づいて、ワークWの残材長L3が算出され、L1、L2、L3の間には、以下の式(1)の関係がある。
L3=L2-L1・・・(1)
【0035】
図5は、本実施形態に係る工作機械システム1において、給材機20の信号出力部24から出力された材欠信号が信号線400を経由して加工機11の信号入力部14に入力されるまでの時間とワークWの移動距離との関係を例示するグラフである。本実施形態では、一例として、工作機械システム1の加工機10によってワークWが刃物台300側に一定速度で送られるものとし、時間とワークWの移動距離との関係が図5では直線lで示さ
れる。
【0036】
このとき、図5のグラフに示すように、時間t1において信号出力部24から材欠信号が出力されたとする。この場合、材欠信号は信号線400を伝搬するため、時間t1から材欠信号が信号線400を伝搬する時間経過した時間t2に、材欠信号が加工機10の信号入力部14に入力される。また、図4Cに示したように、ワークWの加工中に材欠信号が出力されるため、時間t1から時間t2までの経過時間Δtの間に、チャック105とフィンガー22とによってワークWは移動距離ΔLだけ刃物台300側に送られる。したがって、信号出力部24から出力された材欠信号が信号入力部14に入力されるまでに、ワークW(残材となる非加工部)はΔLだけ短くなっている。
【0037】
そこで、本実施形態に係る工作機械システム1では、本実施形態の特徴的構成として、加工機10の加工制御部11の残材長算出部15が、移動距離ΔLを用いて、ワークWの残材長を算出することが、本実施形態に係る工作機械システム1の特徴である。なお、時間t1が、上述したように、本発明の第1のタイミングに対応し、時間t2が、材欠信号が信号入力部14に入力される本発明の第3のタイミングに対応する。また、残材長の算出処理の詳細については、後述する。
【0038】
図6のフローチャートを参照して、本実施形態における工作機械システム1の加工機10の加工制御部11が実行する処理について説明する。工作機械システム1において、ワークW先端が刃物台300側に露出するようにワークWの位置が設定され、検出センサ23によるフィンガー22先端の検出位置(信号発信位置)が設定されるなど、ワークWを加工するための各部の設定が完了した後に、加工制御部11は、図6のフローチャートの処理を開始する。ステップS101において、加工制御部11は、給材機20の供給制御部21に、給材機20の各部を制御してワークWの搬送を開始する指示を出力するとともに、搬送部12と加工部13のそれぞれの動作が連動するよう制御してワークWの加工を行う。
【0039】
次に、ステップS102において、加工制御部11は、信号入力部14が給材機20の信号出力部24から加工中のワークWの材欠信号を受信したか否かを判定する。信号入力部14が材欠信号を受信した場合は(S102:YES)、加工制御部11は、処理をS103に進める。一方、信号入力部14が材欠信号を受信していない場合は(S102:NO)、加工制御部11は、S102の処理を繰り返す。すなわち、加工制御部11は、信号入力部14が材欠信号を受信するまでは、ワークWの加工と切り出しを繰り返し行い、信号入力部14が材欠信号を受信すると、最後のワークWの加工と切り出しを行いつつ、以下に説明するワークWの残材長の算出処理を実行する。
【0040】
ステップS103において、加工制御部11は、現在加工中のワークWの残材長を算出する。具体的には、加工制御部11の残材長算出部15が、加工制御部11によるチャック105、刃物台300などの各部の制御に基づいて、信号出力部24が材欠信号を発信した時点における、チャック105の先端の位置(信号発信位置)を特定する。残材長算出部15は、チャック105の先端がこの特定した位置から最前進位置P3に到達するまでの間に、加工によって短くなるワークWの残加工長を算出する。そして、残材長算出部15は、フィンガー22が材欠信号の出力位置P1に到達した時点におけるワークWの長さである材料長から、算出した残加工長を除算する。
【0041】
さらに、残材長算出部15は、上記により除算して得られる長さを、給材機20の信号出力部24が材欠信号を出力してから加工機10の信号入力部14が材欠信号を受信するまでの間にワークWが刃物台300側に送られる移動距離(図5に示すΔL)を用いて補正する。具体的には、残材長算出部15は、上記により材料長から残加工長を除算して得
られる長さから当該移動距離をさらに除算し、この結果得られる長さをワークWの残材長として得る。そして、ステップS104において、加工制御部11は、ステップS103において算出したワークWの残材長を表示部16に表示し、工作機械システム1のユーザにワークWの残材長を通知する。加工制御部11は、ステップS104において、表示部16に残材長を表示した後、本フローチャートの処理を終了する。なお、加工制御部11は算出したワークWの残材長を、給材機20の図示しない表示部に表示するよう供給制御部21に指示したり、工作機械システム1の図示しない記憶部に記憶したりしてもよい。
【0042】
以上、本実施形態によれば、材欠信号が出力される時点における工作機械システム1の各部の位置を検出するセンサなどの部品を新たに追加することなく、材欠信号を出力する構成を用いて、精度の高いワークWの残材長の算出結果が得られる工作機械を実現することができる。また、本実施形態の工作機械システム1では、残材長を算出する上で必要な各部の位置を特定するのに、ワークWの加工を中断する必要がない。したがって、本実施形態の工作機械システム1によれば、ワークWの加工制御を行いながら残材長の算出結果が得られるため、ワークWの加工の生産効率の維持も期待できる。
【0043】
なお、本実施形態で示した工作機械システム1の構成は、あくまで一例であり、本実施形態と同様の効果が得られる範囲において、本実施例とは異なる構成を採用してもよい。例えば、上記の工作機械システム1において、加工制御部11が、ラダープログラムを用いて、信号入力部14が材欠信号を受信したときのチャック105の座標位置を特定する場合、残算長算出部15が、ラダープログラム実行時のスキャンタイミングに起因する遅延時間を用いて、チャック105の移動距離(残材長)L1を補正してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…工作機械システム、10…加工機、11…加工制御部、12…搬送部、13…加工部、14…信号入力部、15…残材長取得部、20…給材機、21…供給制御部、22…フィンガー、24…信号出力部、105…チャック、300…刃物台、W…ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6