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特開2023-150787駆動制御装置、車載電源システム、および車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150787
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】駆動制御装置、車載電源システム、および車両
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20231005BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02M1/08 A
B60R16/02 645A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060063
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公信
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740AA08
5H740BA12
5H740BB01
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740KK01
5H740MM01
(57)【要約】
【課題】電源経路を遮断する遮断機能の自己診断を効果的に実行することが可能となる駆動制御装置を提供する。
【解決手段】駆動制御装置(6)は、ゲート制御電圧を、前記遮断用トランジスタ(5)がオフ状態のオフ電圧レベルと前記遮断用トランジスタの閾値電圧との間に設定される基準電圧と比較するように構成される比較回路(67)と、前記遮断用トランジスタのゲートから電荷を放電するように構成されるディスチャージ部(64)と、前記オフ電圧レベルから前記閾値電圧へ近づくように変化する前記ゲート制御電圧が前記基準電圧に到達したことを前記比較回路の出力に基づき検知すると、前記ディスチャージ部に前記ゲートの放電を指令し、前記オフ電圧レベルへ近づくような前記ゲート制御電圧の変化を前記比較回路の出力に基づき確認するように構成される制御部(65)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電源回路と第2電源回路との間を接続可能に配置される遮断用トランジスタを駆動するための駆動制御装置であって、
前記遮断用トランジスタのゲートに印加するゲート制御電圧を生成することで前記遮断用トランジスタを駆動するように構成される電圧生成回路と、
前記ゲート制御電圧を、前記遮断用トランジスタがオフ状態のオフ電圧レベルと前記遮断用トランジスタの閾値電圧との間に設定される基準電圧と比較するように構成される比較回路と、
前記遮断用トランジスタのゲートから電荷を放電するように構成されるディスチャージ部と、
前記オフ電圧レベルから前記閾値電圧へ近づくように変化する前記ゲート制御電圧が前記基準電圧に到達したことを前記比較回路の出力に基づき検知すると、前記ディスチャージ部に前記ゲートの放電を指令し、前記オフ電圧レベルへ近づくような前記ゲート制御電圧の変化を前記比較回路の出力に基づき確認するように構成される制御部と、
を備える、駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記オフ電圧レベルから前記閾値電圧へ近づくように変化する前記ゲート制御電圧が前記基準電圧に到達しなかった場合、あるいは、前記オフ電圧レベルへ近づくような前記ゲート制御電圧の変化を確認できなかった場合、異常が発生したと判定するように構成される、請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記基準電圧は、使用が想定される複数種類の前記遮断用トランジスタの閾値電圧のうち最も前記オフ電圧レベルに近い値よりも、前記オフ電圧レベルに近い値に設定される、請求項1または請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記比較回路は、前記オフ電圧レベルから前記閾値電圧へ近づくように変化する前記ゲート制御電圧が前記基準電圧に到達したことを検知すると、前記基準電圧を変化させるように構成されるヒステリシスコンパレータである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記オフ電圧レベルへ近づくような前記ゲート制御電圧の変化を確認できた場合、前記比較回路を無効とするように構成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項6】
前記遮断用トランジスタは、NMOSトランジスタにより構成され、
前記基準電圧は、前記閾値電圧よりも低く設定され、
前記制御部は、立ち上がる前記ゲート制御電圧が前記基準電圧に到達したことを前記比較回路の出力に基づき検知すると、前記ディスチャージ部に前記ゲートの放電を指令し、前記ゲート制御電圧の低下を前記比較回路の出力に基づき確認するように構成される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の駆動制御装置と、
前記第1電源回路と、
前記第2電源回路と、
前記遮断用NMOSトランジスタと、
を備える、車載電源システム。
【請求項8】
請求項7に記載の車載電源システムと、
前記第1電源回路にバッテリ電圧を供給するように構成されるバッテリと、
前記第2電源回路から出力される出力電圧が供給されるように構成される車載機器と、
を備える、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特に車載用電源装置として、入力電圧を所定の出力電圧に降圧するプライマリ電源回路と、プライマリ電源回路から上記出力電圧を供給されるセカンダリ電源回路と、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-202714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記プライマリ電源回路と上記セカンダリ電源回路との間の電源経路を異常時に遮断するための遮断機能が備えられる場合がある。特に車載用途においては、安全にかかわる機能に、正常に動作していることを確認するBIST(Built-In Self Test)と呼ばれる自己診断機能が必要である。上記遮断機能の場合は、正常に遮断できることを確認する必要がある。
【0005】
本開示は、電源経路を遮断する遮断機能の自己診断を効果的に実行することが可能となる駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
例えば、本開示に係る駆動制御装置は、第1電源回路と第2電源回路との間を接続可能に配置される遮断用トランジスタを駆動するための駆動制御装置であって、
前記遮断用トランジスタのゲートに印加するゲート制御電圧を生成することで前記遮断用トランジスタを駆動するように構成される電圧生成回路と、
前記ゲート制御電圧を、前記遮断用トランジスタがオフ状態のオフ電圧レベルと前記遮断用トランジスタの閾値電圧との間に設定される基準電圧と比較するように構成される比較回路と、
前記遮断用トランジスタのゲートから電荷を放電するように構成されるディスチャージ部と、
前記オフ電圧レベルから前記閾値電圧へ近づくように変化する前記ゲート制御電圧が前記基準電圧に到達したことを前記比較回路の出力に基づき検知すると、前記ディスチャージ部に前記ゲートの放電を指令し、前記オフ電圧レベルへ近づくような前記ゲート制御電圧の変化を前記比較回路の出力に基づき確認するように構成される制御部と、を備える構成としている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電源経路を遮断する遮断機能の自己診断を効果的に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、車載電源システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、ゲート制御電圧の起動時の波形例を示す図である。
図3図3は、例示的な実施形態に係る駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、遮断機能に関するBIST機能の処理を示すフローチャートである。
図5図5は、遮断機能に関するBIST機能の動作を示す波形例の図である。
図6図6は、車両の一構成例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本開示の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
<1.車載電源システムの構成>
図1は、車載電源システム10の構成を示すブロック図である。図1に示すバッテリ1、車載電源システム10、および車載機器4は、車両に搭載される。なお、本開示の電源システムは、車載用途に限ることはない。
【0011】
車載電源システム10は、プライマリ電源回路2と、セカンダリ電源回路3と、遮断用NMOSトランジスタ5と、駆動制御装置6と、を備える。
【0012】
プライマリ電源回路2の入力端は、バッテリ1の出力端に接続される。バッテリ1の出力端から出力されるバッテリ電圧Vbtは、プライマリ電源回路2の入力端に入力される。バッテリ電圧Vbtは、例えば12Vである。プライマリ電源回路2は、バッテリ電圧Vbtを降圧して、プライマリ電源回路2の出力端から出力電圧Vo1を出力する。プライマリ電源回路2は、例えばスイッチング電源回路により構成される。出力電圧Vo1は、例えば5Vである。
【0013】
プライマリ電源回路2の出力端は、後述する遮断用NMOSトランジスタ5を介してセカンダリ電源回路3の入力端に接続される。プライマリ電源回路2から出力された出力電圧Vo1は、遮断用NMOSトランジスタ5を介して入力電圧Vin2としてセカンダリ電源回路3の入力端に入力される。セカンダリ電源回路3は、入力電圧Vin2を降圧して、セカンダリ電源回路3の出力端から出力電圧Vo2を出力する。セカンダリ電源回路3は、例えばLDO(Low Dropout)により構成される。出力電圧Vo2は、例えば1.2Vである。
【0014】
IC(Integrated Circuit)4は、車載機器40に含まれる。IC4には、セカンダリ電源回路3から出力電圧Vo2が供給される。
【0015】
セカンダリ電源回路3は耐圧が低いため、プライマリ電源回路2により低圧の出力電圧Vo1に変換している。しかしながら、プライマリ電源回路2に異常が発生し、バッテリ電圧Vbtがセカンダリ電源回路3に印加されてしまった場合、セカンダリ電源回路3およびその後段のIC4に悪影響が及ぶ可能性がある。
【0016】
そこで車載電源システム10では、遮断用NMOSトランジスタ5および駆動制御装置6を設けている。遮断用NMOSトランジスタ5は、Nチャネル型MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)により構成される。遮断用NMOSトランジスタ5は、プライマリ電源回路2の出力端とセカンダリ電源回路3の入力端との間に接続される。なお、遮断用トランジスタとしては、NMOSトランジスタに限らず、例えばPMOSトランジスタ(Pチャネル型MOSFET)を用いてもよい。
【0017】
駆動制御装置6は、遮断用NMOSトランジスタ5のゲートを駆動制御するように構成される。駆動制御装置6は、ゲート制御電圧Vgcを遮断用NMOSトランジスタ5のゲートに印加することで当該ゲートを駆動する。これにより、駆動制御装置6は、遮断用NMOSトランジスタ5のオン状態/オフ状態を制御することができる。
【0018】
遮断用NMOSトランジスタはNチャネル型MOSFETにより構成されるため、ゲート制御電圧Vgcは、プライマリ電源回路2から出力される出力電圧Vo1よりも高い電圧にする必要がある。そのため、駆動制御装置6には、出力電圧Vo1を昇圧してゲート制御電圧Vgcに変換する昇圧回路(図1で不図示)が備えられる。
【0019】
駆動制御装置6は、セカンダリ電源回路3の入力端に入力される入力電圧Vin2の異常を検出すると、遮断用NMOSトランジスタ5をオン状態からオフ状態へ切り替えることで、プライマリ電源回路2とセカンダリ電源回路3の間の電源経路を遮断する。これにより、セカンダリ電源回路3およびIC4を保護することができる。
【0020】
<2.遮断機能に対するBIST機能における課題>
駆動制御装置6は、起動時に遮断用NMOSトランジスタ5のゲートを駆動するためのゲート制御電圧Vgcを0Vから立ち上げる。図2には、ゲート制御電圧Vgcの起動時の波形例を示す。ゲート制御電圧Vgcが立ち上がって遮断用NMOSトランジスタ5の閾値電圧Vthを上回ると、遮断用NMOSトランジスタ5がターンオンされる(オフ状態からオン状態への切替え)。
【0021】
BIST機能は、一般的には起動前に実行されるため、遮断用NMOSトランジスタ5による遮断機能に関するBIST機能をゲート制御電圧Vgcが立ち上がる前の起動前の状態で実行することが考えられる(例えば図2におけるタイミングBist1で実行)。しかしながら、起動前は遮断している状態であるため、状態の変化がなく、遮断機能が正常に動作しているかを判定することができない。
【0022】
そこで、遮断機能に関するBIST機能を起動後に実行することが考えられる(例えば図2におけるタイミングBist2で実行)。しかしながら、起動後の状態では遮断用NMOSトランジスタ5がオン状態であり、セカンダリ電源回路3にプライマリ電源回路2から入力電圧Vin2が印加されている。従って、BIST機能により遮断用NMOSトランジスタ5がターンオフ(オン状態からオフ状態への切替え)されると、異常処理される可能性がある。例えばSoC(システムオンチップ)などのシステムではオフシーケンスにより電源回路が順番にオフされるが、遮断用NMOSトランジスタ5のターンオフにより、正常なデータ処理が行われる前に電源が遮断されることになる。
【0023】
以上から、周辺回路に影響がない範囲で遮断機能が正常であることを確認できることが課題となる。具体的には、IC4が電源電圧が入力されたと認識しない範囲でBISTを行うことができればよい。IC4には動作限界電圧以下で誤動作しないように低電圧検出回路(UVLO)が設けられており、入力される電源電圧が上記動作限界電圧よりも十分に低い電圧であれば、電源電圧が入力されたとは認識されない。以下に説明する実施形態は、このような課題を解決すべく実施される。
【0024】
<3.駆動制御装置の構成>
図3は、例示的な実施形態に係る駆動制御装置6の構成を示すブロック図である。図3に示す駆動制御装置6は、昇圧回路61と、帰還抵抗62と、コンパレータ63と、ディスチャージ部64と、制御部65と、過電圧検出部66と、BISTコンパレータ67と、を有する。
【0025】
昇圧回路61は、プライマリ電源回路2(図1)から出力される出力電圧Vo1を昇圧してゲート制御電圧Vgcに変換し、遮断用NMOSトランジスタ5のゲートに印加する。昇圧回路61は、例えばチャージポンプにより構成される。
【0026】
帰還抵抗62は、昇圧回路61から出力されるゲート制御電圧Vgcを分圧する抵抗である。コンパレータ63は、帰還抵抗62による分圧後の電圧を所定の基準電圧と比較し、比較結果を昇圧回路61に出力する。昇圧回路61は、上記分圧後の電圧が上記基準電圧を上回ると、停止される。これにより、ゲート制御電圧Vgcが安定的に制御される。
【0027】
ディスチャージ部64は、遮断用NMOSトランジスタ5のゲートから電荷を放電させる回路である。制御部65は、駆動制御装置6の各部を制御するように構成される。過電圧検出部66は、入力電圧Vin2の過電圧を検出するように構成される。過電圧検出部66により入力電圧Vin2の過電圧が検出されると、制御部65は、ディスチャージ部64に指令して遮断用NMOSトランジスタ5のゲートから電荷を放電させる。これにより、遮断用NMOSトランジスタ5をターンオフし、電源経路を遮断できる。
【0028】
BISTコンパレータ67は、後述するように、遮断機能に関するBIST機能の実行時に用いられるコンパレータである。
【0029】
<4.BIST機能>
このような構成の駆動制御装置6による遮断機能に関するBIST機能の動作について、図4および図5を参照して説明する。図4は、遮断機能に関するBIST機能の処理を示すフローチャートである。図5は、遮断機能に関するBIST機能の動作を示す波形例である。ただし、図5において、上段から順に、ゲート制御電圧Vgc、BISTイネーブル信号BIST_EN、BISTコンパレータ67から出力されるコンパレータ出力BIST_OUT、ディスチャージイネーブル信号DIS_ENを示す。
【0030】
図5に示すタイミングt1において、BIST機能がイネーブル(BIST_EN=L→H)となり、制御部65は、BIST機能を開始する(図4のBIST START)。そして、制御部65により、BISTコンパレータ67がイネーブルとなる(図4のステップS1)。BISTコンパレータ67は、ゲート制御電圧VgcをBIST用の基準電圧REF_bistと比較して比較結果としてコンパレータ出力BIST_OUTを出力するように構成される(図3)。BISTコンパレータ67がイネーブルになると、起動前はゲート制御電圧Vgc=0Vであり、Vgc<REF_bistであるので、コンパレータ出力BIST_OUTは、ローレベルとなる。なお、BISTコンパレータ67がディセーブルの場合、コンパレータ出力BIST_OUT=ハイレベルである。
【0031】
その後、タイミングt2で制御部65は、ディスチャージ部64にディスチャージON(放電機能のオン)からディスチャージOFF(放電機能のオフ)への切替えを指令する(図4のステップS2)。なお、図5において、ディスチャージイネーブル信号DIS_EN=LはディスチャージONを示し、ディスチャージイネーブル信号DIS_EN=HはディスチャージOFFを示す。これにより、昇圧回路61による遮断用NMOSトランジスタ5のゲートの充電が開始され、ゲート制御電圧Vgcは0Vから立上りを開始する。
【0032】
ステップS2の後、制御部65は、BISTコンパレータ67から出力されるコンパレータ出力BIST_OUTを監視し、ゲート制御電圧Vgcが基準電圧REF_bistに到達するかを確認する(図4のステップS3)。なお、ゲート制御電圧Vgcが基準電圧REF_bistに到達するかは、ステップS2から所定の経過時間が経過する前に到達するかを確認すればよい。
【0033】
図5に示すように、ゲート制御電圧Vgcが基準電圧REF_bistに到達した場合(タイミングt3)(ステップS3のYes)、コンパレータ出力BIST_OUTがローレベルからハイレベルへ切り替わる。すると、制御部65は、ディスチャージ部64にディスチャージOFFからディスチャージONへの切替えを指令する(タイミングt4、図4のステップS4)。
【0034】
基準電圧REF_bistは、遮断用NMOSトランジスタ5の閾値電圧Vthよりも低く設定される。すなわち、基準電圧REF_bistは、遮断用MOSトランジスタ5がオフ状態のオフ電圧レベル(=0V)と遮断用MOSトランジスタ5の閾値電圧Vthとの間に設定される。これにより、ゲート制御電圧Vgcが基準電圧REF_bistに到達しても、遮断用NMOSトランジスタ5はターンオンしない。なお、遮断用MOSトランジスタ5がPMOSトランジスタで構成される場合は、基準電圧REF_bistは、遮断用MOSトランジスタ5がオフ状態のオフ電圧レベル(=Vo1)と遮断用MOSトランジスタ5の閾値電圧Vthとの間に設定される。
【0035】
ステップS4でディスチャージONへ切り替えられると、遮断用NMOSトランジスタ5のゲートの放電が開始され、ゲート制御電圧Vgcは低下を開始する。BISTコンパレータ67は、ヒステリシスコンパレータであり、タイミングt3で基準電圧がREF_bistより低いREF_bist’に切り替わる。なお、BISTコンパレータ67は、ヒステリシスを有さなくてもよい。
【0036】
ステップS4の後、制御部65は、BISTコンパレータ67から出力されるコンパレータ出力BIST_OUTを監視し、ゲート制御電圧Vgcが基準電圧REF_bist’以下になるかを確認する(図4のステップS5)。なお、ゲート制御電圧Vgcが基準電圧REF_bist’以下になるかは、ステップS4から所定の経過時間が経過する前に基準電圧REF_bist’以下になるかを確認すればよい。
【0037】
図5に示すように、ゲート制御電圧Vgcが基準電圧REF_bist’以下になった場合(タイミングt5)(ステップS5のYes)、コンパレータ出力BIST_OUTがハイレベルからローレベルへ切り替わる。この場合、制御部65は、遮断機能は正常に動作していると判定する。
【0038】
そして、BIST機能がディセーブルとなり、BIST機能が終了する(タイミングt6)(BIST_EN=H→L)。このとき、制御部65は、ディスチャージ部64にディスチャージONからディスチャージOFFへの切替えを指令する。これにより、遮断用NMOSトランジスタ5のゲートの充電が開始され、ゲート制御電圧Vgcが立上りを開始する(通常動作の起動)。また、制御部65によりBISTコンパレータ67がディセーブルとされ、コンパレータ出力BIST_OUT=ハイレベルとなる。これにより、通常時に使用しないBISTコンパレータ67は無効とし、消費電力を削減できる。
【0039】
このように、本実施形態では、起動前に遮断用NMOSトランジスタ5がターンオンしない程度にゲート制御電圧Vgcを上昇させ、ゲート制御電圧Vgcが上昇したかを確認する。確認できた場合、ディスチャージ部64によりゲート制御電圧Vgcを低下させ、遮断動作を確認する。遮断動作が動作していることを確認できれば、遮断機能は正常であると判定される。これにより、周辺回路に影響を及ぼさない範囲で遮断機能が正常であることを確認できる。
【0040】
一方、上記ステップS3でゲート制御電圧Vgcが基準電圧REF_bistに到達しなかった場合(ステップS3のNo)、あるいは、上記ステップS5で、ゲート制御電圧Vgcが基準電圧REF_bist’以下にならなかった場合は(ステップS5のNo)、制御部65は、異常が発生していると判定する。
【0041】
なお、基準電圧REF_bistは、使用が想定される複数種類の遮断用NMOSトランジスタ5の閾値電圧Vthのうち最低のVthよりも低く設定してもよい。これにより、1つの基準電圧REF_bistで、複数種類の遮断用NMOSトランジスタ5に対応することができる。
【0042】
<5.車両への適用>
図6は、先述したバッテリ1、車載電源システム10、および車載機器40を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。図6においては、車載機器40の一例として、車両Xに搭載される車載機器X11~X17を示している。
【0043】
車載機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル
制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、及び、オートクルーズ制御など)を行
うエンジンコントロールユニットである。
【0044】
車載機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime ru
nning lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0045】
車載機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコン
トロールユニットである。
【0046】
車載機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]
制御、EPS[electric power Steering]制御、電子サスペンション制御など)を行う
ボディコントロールユニットである。
【0047】
車載機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコン
トロールユニットである。
【0048】
車載機器X16は、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、電動サンルーフ、
電動シート、及び、エアコンなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷
段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0049】
車載機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、
及び、ETC[Electronic Toll Collection System]など、ユーザの任意で車両Xに装
着される電子機器である。
【0050】
<6.その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0051】
<7.付記>
上記のように例えば、本開示の一態様に係る駆動制御装置(6)は、第1電源回路(2)と第2電源回路(3)との間を接続可能に配置される遮断用トランジスタ(5)を駆動するための駆動制御装置であって、
前記遮断用トランジスタのゲートに印加するゲート制御電圧(Vgc)を生成することで前記遮断用トランジスタを駆動するように構成される電圧生成回路(61)と、
前記ゲート制御電圧を、前記遮断用トランジスタがオフ状態のオフ電圧レベルと前記遮断用トランジスタの閾値電圧(Vth)との間に設定される基準電圧(REF_bist)と比較するように構成される比較回路(67)と、
前記遮断用トランジスタのゲートから電荷を放電するように構成されるディスチャージ部(64)と、
前記オフ電圧レベルから前記閾値電圧へ近づくように変化する前記ゲート制御電圧が前記基準電圧に到達したことを前記比較回路の出力に基づき検知すると、前記ディスチャージ部に前記ゲートの放電を指令し、前記オフ電圧レベルへ近づくような前記ゲート制御電圧の変化を前記比較回路の出力に基づき確認するように構成される制御部(65)と、を備える構成としている(第1の構成)。
【0052】
また、上記第1の構成において、前記制御部(65)は、前記オフ電圧レベルから前記閾値電圧(Vth)へ近づくように変化する前記ゲート制御電圧(Vgc)が前記基準電圧(REF_bist)に到達しなかった場合、あるいは、前記オフ電圧レベルへ近づくような前記ゲート制御電圧の変化を確認できなかった場合、異常が発生したと判定するように構成されることとしてもよい(第2の構成)。
【0053】
また、上記第1または第2の構成において、前記基準電圧(REF_bist)は、使用が想定される複数種類の前記遮断用トランジスタ(5)の閾値電圧(Vth)のうち最も前記オフ電圧レベルに近い値よりも、前記オフ電圧レベルに近い値に設定される構成としてもよい(第3の構成)。
【0054】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記比較回路(67)は、前記オフ電圧レベルから前記閾値電圧(Vth)へ近づくように変化する前記ゲート制御電圧(Vgc)が前記基準電圧(REF_bist)に到達したことを検知すると、前記基準電圧を変化させるように構成されるヒステリシスコンパレータである構成としてもよい(第4の構成)。
【0055】
また、上記第1から第4のいずれかの構成において、前記制御部(65)は、前記オフ電圧レベルへ近づくような前記ゲート制御電圧(Vgc)の変化を確認できた場合、前記比較回路(67)を無効とするように構成されることとしてもよい(第5の構成)。
【0056】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記遮断用トランジスタ(5)は、NMOSトランジスタにより構成され、
前記基準電圧(REF_bist)は、前記閾値電圧(Vth)よりも低く設定され、
前記制御部(65)は、立ち上がる前記ゲート制御電圧(Vgc)が前記基準電圧に到達したことを前記比較回路(67)の出力に基づき検知すると、前記ディスチャージ部(64)に前記ゲートの放電を指令し、前記ゲート制御電圧の低下を前記比較回路の出力に基づき確認するように構成されることとしてもよい(第6の構成)。
【0057】
また、本開示の一態様に係る車載電源システム(10)は、上記第1から第6のいずれかの構成の駆動制御装置(6)と、前記第1電源回路(2)と、前記第2電源回路(3)と、前記遮断用NMOSトランジスタ(5)と、を備える(第7の構成)。
【0058】
また、本開示の一態様に係る車両(X)は、上記第7の構成の車載電源システム(10)と、前記第1電源回路(2)にバッテリ電圧(Vbt)を供給するように構成されるバッテリ(1)と、前記第2電源回路(3)から出力される出力電圧(Vo2)が供給されるように構成される車載機器(40)と、を備える。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示は、例えば、車載用の電源システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 バッテリ
2 プライマリ電源回路
3 セカンダリ電源回路
4 車載機器
5 遮断用NMOSトランジスタ
6 駆動制御装置
10 車載電源システム
40 車載機器
61 昇圧回路
62 帰還抵抗
63 コンパレータ
64 ディスチャージ部
65 制御部
66 過電圧検出部
67 BISTコンパレータ
X 車両
X11~X17 車載機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6