(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150803
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電力増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 1/52 20060101AFI20231005BHJP
H03F 3/21 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H03F1/52
H03F3/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060093
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(72)【発明者】
【氏名】本多 悠里
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA41
5J500AC57
5J500AF10
5J500AH02
5J500AH19
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH33
5J500AK12
5J500AK18
5J500AK29
5J500PF02
5J500PF06
(57)【要約】
【課題】増幅器の破壊を抑制することが可能な電力増幅回路を提供する。
【解決手段】電力増幅回路は、電圧供給源から供給される第1電圧によって動作し、第1信号を増幅して増幅信号を出力する第1増幅器と、バイアス制御電流が供給されるベース又はゲートと、第1抵抗素子を通じて前記第1増幅器にバイアスを供給するエミッタ又はソースと、を有するバイアス用トランジスタと、前記増幅信号と前記第1電圧に基づく第2信号とに基づいて前記バイアス制御電流の一部を接地に流す保護回路と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧供給源から供給される第1電圧によって動作し、第1信号を増幅して増幅信号を出力する第1増幅器と、
バイアス制御電流が供給されるベース又はゲートと、第1抵抗素子を通じて前記第1増幅器にバイアスを供給するエミッタ又はソースと、を有するバイアス用トランジスタと、
前記増幅信号と前記第1電圧に基づく第2信号とに基づいて前記バイアス制御電流の一部を接地に流す保護回路と、を備える、
電力増幅回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力増幅回路であって、
前記保護回路は、
第1キャパシタを通じて前記接地に接続されたベース又はゲートと、第2キャパシタを通じて前記増幅信号が入力されるエミッタ又はソースと、を有する第1トランジスタと、
前記バイアス用トランジスタの前記ベース又は前記ゲートに接続されたコレクタ又はドレインと、前記第1トランジスタの前記エミッタ又は前記ソースに接続されたベース又はゲートと、前記接地に接続されたエミッタ又はソースと、を有する第2トランジスタと、を含む、
電力増幅回路。
【請求項3】
負荷に電力を供給する第1増幅器と、
バイアス制御電流が供給されるベース又はゲートと、第1抵抗素子を通じて前記第1増幅器にバイアスを供給するエミッタ又はソースと、を有するバイアス用トランジスタと、
前記負荷の変化に基づく第3信号に基づいて前記バイアス制御電流の一部を接地に流す保護回路と、を備える、
電力増幅回路。
【請求項4】
請求項3に記載の電力増幅回路であって、
前記第1増幅器は、電圧供給源から供給される第1電圧によって動作し、
前記保護回路は、前記第1電圧に基づく第2信号にさらに基づいて前記一部を前記接地に流す、
電力増幅回路。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の電力増幅回路であって、
前記保護回路は、
第1キャパシタを通じて前記接地に接続されたベース又はゲートと、第2キャパシタを通じて前記第3信号が入力されるエミッタ又はソースと、を有する第1トランジスタと、
前記バイアス用トランジスタの前記ベース又は前記ゲートに接続されたコレクタ又はドレインと、前記第1トランジスタの前記エミッタ又は前記ソースに接続されたベース又はゲートと、前記接地に接続されたエミッタ又はソースと、を有する第2トランジスタと、を含む、
電力増幅回路。
【請求項6】
請求項2又は5に記載の電力増幅回路であって、
前記第1増幅器は、電圧供給源から供給される第1電圧によって動作し、
前記保護回路における前記第1トランジスタの前記ベース又は前記ゲートは、前記電圧供給源に接続される、
電力増幅回路。
【請求項7】
請求項6に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
前記保護回路における前記第1トランジスタの前記ベース又は前記ゲートと前記電圧供給源との間に接続され、前記第1電圧をシフトさせる電圧シフト回路をさらに備える、
電力増幅回路。
【請求項8】
請求項7に記載の電力増幅回路であって、
前記電圧シフト回路は、
1つ以上の第1ダイオードを含む、
電力増幅回路。
【請求項9】
請求項2又は5に記載の電力増幅回路であって、
前記保護回路における前記第1トランジスタの前記ベース又は前記ゲートは、前記バイアス用トランジスタの前記ベース又は前記ゲートに接続される、
電力増幅回路。
【請求項10】
請求項9に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
前記保護回路における前記第1トランジスタの前記ベース又は前記ゲートと、前記バイアス用トランジスタの前記ベース又は前記ゲートとの間に接続された第2抵抗素子をさらに備える、
電力増幅回路。
【請求項11】
請求項2又は5に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
前記第1増幅器の後段に設けられた第2増幅器と、
制御電流源から供給される電流によって制御され、前記第2増幅器にバイアスを供給するバイアス供給回路と、をさらに備え、
前記保護回路における前記第1トランジスタの前記ベース又は前記ゲートは、前記制御電流源に接続される、
電力増幅回路。
【請求項12】
請求項3から5のいずれか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
第2増幅器及び第3増幅器を含み、前記第1増幅器の後段に設けられた第1差動対と、
前記第1増幅器と前記第1差動対との間に設けられた第1バランと、をさらに備え、
前記第1バランは、
前記第1増幅器の出力端子に接続された第1端と、低インピーダンスノードに接続された第2端と、を有する第1インダクタと、
前記第2増幅器の入力端子に接続された第1端と、前記第3信号を出力する第2端と、を有し、前記第1インダクタと電磁界的に結合する第2インダクタと、
前記第2インダクタの前記第2端に接続された第1端と、前記第3増幅器の入力端子に接続された第2端と、を有し、前記第1インダクタと電磁界的に結合する第3インダクタと、を含む、
電力増幅回路。
【請求項13】
請求項3から5のいずれか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
第2増幅器及び第3増幅器を含み、前記第1増幅器の後段に設けられた第1差動対と、
前記第1差動対の後段に設けられた第2バランと、をさらに備え、
前記第2バランは、
前記電力増幅回路の出力端子に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する第4インダクタと、
前記第2増幅器の出力端子に接続された第1端と、前記第3信号を出力する第2端と、を有し、前記第4インダクタと電磁界的に結合する第5インダクタと、
前記第5インダクタの前記第2端に接続された第1端と、前記第3増幅器の出力端子に接続された第2端と、を有し、前記第4インダクタと電磁界的に結合する第6インダクタと、を含む、
電力増幅回路。
【請求項14】
請求項3から5のいずれか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
前記第1増幅器と第2差動対を形成する第4増幅器と、
前記第2差動対の前段に設けられた第3バランと、をさらに備え、
前記第3バランは、
前記電力増幅回路の入力端子に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する第7インダクタと、
前記第1増幅器の入力端子に接続された第1端と、前記第3信号を出力する第2端と、を有し、前記第7インダクタと電磁界的に結合する第8インダクタと、
前記第8インダクタの前記第2端に接続された第1端と、前記第4増幅器の入力端子に接続された第2端と、を有し、前記第7インダクタと電磁界的に結合する第9インダクタと、を含む、
電力増幅回路。
【請求項15】
請求項3から5のいずれか一項に記載の電力増幅回路であって、
前記電力増幅回路は、
第2増幅器及び第3増幅器を含み、前記第1増幅器の後段に設けられた第1差動対と、
前記第2増幅器の出力端子と接地との間に設けられ、1つ以上の第2ダイオードを含む第1クランプ回路と、
前記第3増幅器の出力端子と接地との間に設けられ、1つ以上の第3ダイオードを含む第2クランプ回路と、をさらに備え、
前記第3信号は、前記第2ダイオードのカソード及び前記第3ダイオードのカソードから出力される、
電力増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライバアンプとパワーアンプとを備える構成において、ドライバアンプから出力される信号の電圧に応じてドライバアンプのバイアスを制御する無線機がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の無線機では、ドライバアンプからパワーアンプへの入力電力のモニタ値、或いは、パワーアンプの出力電力のモニタ値に基づいてパワーアンプのゲイン変動の有無が判定される。具体的には、パワーアンプへの入力電力のモニタ値に基づいてパワーアンプのゲイン変動が有ることが判定された場合、ドライバアンプのバイアス電圧を制御するドライバ制御部に、パワーアンプの出力電力のモニタ値を出力してドライバアンプのバイアス電圧の制御を実行する。一方、パワーアンプへの入力電力のモニタ値に基づいてパワーアンプのゲイン変動が無いと判定された場合には、パワーアンプの出力電力のモニタ値に基づいて、パワーアンプのゲイン変動の有無が判定される。パワーアンプのゲイン変動が有ることが判定された場合には、パワーアンプのバイアス電圧が制御される。
【0005】
しかしながら、例えば、ドライバアンプの駆動電圧が変動したときに、ドライバアンプの出力電力も変動する。特許文献1に記載の無線機では、ドライバアンプの出力電力が過大になった場合、ドライバアンプ又はパワーアンプが破壊されることがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、増幅器の破壊を抑制することが可能な電力増幅回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電力増幅回路は、電圧供給源から供給される第1電圧によって動作し、第1信号を増幅して増幅信号を出力する第1増幅器と、バイアス制御電流が供給されるベース又はゲートと、第1抵抗素子を通じて前記第1増幅器にバイアスを供給するエミッタ又はソースと、を有するバイアス用トランジスタと、前記増幅信号と前記第1電圧に基づく第2信号とに基づいて前記バイアス制御電流の一部を接地に流す保護回路と、を備える。
【0008】
また、本発明の他の一側面に係る電力増幅回路は、負荷に電力を供給する第1増幅器と、バイアス制御電流が供給されるベース又はゲートと、第1抵抗素子を通じて前記第1増幅器にバイアスを供給するエミッタ又はソースと、を有するバイアス用トランジスタと、前記負荷の変化に基づく第3信号に基づいて前記バイアス制御電流の一部を接地に流す保護回路と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、増幅器の破壊を抑制することが可能な電力増幅回路を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、電力増幅回路101の回路図である。
【
図2】
図2は、電圧レベルシフト回路301の一例である電圧レベルシフト回路301aの回路図である。
【
図3】
図3は、電圧レベルシフト回路301の一例である電圧レベルシフト回路301bの回路図である。
【
図4】
図4は、電圧レベルシフト回路301の一例である電圧レベルシフト回路301cの回路図である。
【
図5】
図5は、増幅信号RF1のRF振幅が小さい場合におけるトランジスタ251のベース電圧Vb251及びエミッタ電圧Ve251の時間変化の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、増幅信号RF1のRF振幅が大きい場合におけるトランジスタ251のベース電圧Vb251及びエミッタ電圧Ve251の時間変化の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、電力増幅回路102の回路図である。
【
図8】
図8は、出力端子32から後段の回路をみたときの反射係数Γの絶対値に対するノードN4における電圧の振幅変化A1の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、出力端子32から後段の回路をみたときの反射係数Γの絶対値に対するドライバ段増幅器50の出力電力変化P1の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を極力省略する。
【0012】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る電力増幅回路101について説明する。
図1は、電力増幅回路101の回路図である。
図1に示すように、電力増幅回路101は、入力端子31に供給される入力信号RFin(第1信号)を増幅して、出力信号RFoutを出力端子32から出力する2段の増幅回路である。入力信号RFinは、例えばRF(Radio Frequency)信号である。出力端子32の後段には、アンテナ等の負荷(図示しない)が接続される。
【0013】
電力増幅回路101は、入力整合回路20と、段間整合回路21と、インダクタ26と、ドライバ段増幅器50と、パワー段増幅器52と、ドライバ段バイアス供給回路151と、抵抗素子156と、パワー段バイアス供給回路161と、保護回路201と、キャパシタ211(第2キャパシタ)と、抵抗素子212と、電圧レベルシフト回路301(電圧シフト回路)と、を備える。
【0014】
ドライバ段増幅器50は、入力端子50aと、出力端子50bと、増幅トランジスタ50c(第1増幅器)と、キャパシタ50dと、抵抗素子50e(第1抵抗素子)と、を含む。パワー段増幅器52は、入力端子52aと、出力端子52bと、増幅トランジスタ52c(第2増幅器)と、キャパシタ52dと、抵抗素子52e及び52fと、を含む。ドライバ段バイアス供給回路151は、バイアス用トランジスタ152と、参照電圧生成回路154と、を含む。保護回路201は、トランジスタ251(第1トランジスタ)及び252(第2トランジスタ)と、キャパシタ253(第1キャパシタ)と、抵抗素子254及び255と、を含む。
【0015】
本実施形態においては、増幅トランジスタ50c及び52c、バイアス用トランジスタ152並びにトランジスタ251及び252などのトランジスタは、例えばヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT:Heterojunction Bipolar Transistor)等のバイポーラトランジスタによって構成される。なお、当該トランジスタは、電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal-oxide-semiconductor Field-Effect Transistor)等の他のトランジスタによって構成されていてもよい。その場合、ベース、コレクタ、及びエミッタを、それぞれ、ゲート、ドレイン、及びソースに読み替えればよい。
【0016】
ドライバ段増幅器50は、入力整合回路20を通じて入力端子31から入力端子50aに供給される入力信号RFinを増幅し、増幅信号RF1を出力端子50bから出力する。
【0017】
詳細には、電源電圧供給端子175(電圧供給源及び低インピーダンスノード)は、ドライバ段増幅器50における増幅トランジスタ50cを動作させるための電源電圧VCC1(第1電圧)を供給する。出力端子50bは、インダクタ26を通じて電源電圧供給端子175に接続される。例えば、電力増幅回路101においてエンベロープトラッキング(Envelope tracking)の制御が行われる場合、電源電圧VCC1は変化する。
【0018】
増幅トランジスタ50cは、出力端子50bに接続されたコレクタと、キャパシタ50dを通じて入力端子50aに接続されたベースと、接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0019】
ドライバ段バイアス供給回路151は、抵抗素子50eを通じて増幅トランジスタ50cのベースにバイアスを供給する。詳細には、ドライバ段バイアス供給回路151は、バイアス用トランジスタ152と、参照電圧生成回路154と、を含む。
【0020】
バイアス用トランジスタ152は、バッテリー電圧供給端子172に接続されたコレクタと、ノードN2に接続されたベースと、抵抗素子50eを通じて増幅トランジスタ50cのベースに接続されたエミッタと、を有する。
【0021】
抵抗素子156は、電流供給端子171に接続された第1端と、ノードN1に接続された第2端と、を有する。参照電圧生成回路154は、ノードN1を通じてノードN2に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。参照電圧生成回路154は、例えば、直列接続された複数のダイオードを含む。電流供給端子171から供給される電流が当該複数のダイオードに流れることによって、接地に対して略一定の参照電圧がノードN1に生成される。この参照電圧によってバイアス用トランジスタ152がオン状態となり、ノードN1からバイアス用トランジスタ152のベースと保護回路201とに向けてバイアス制御電流Ibが流れる。
【0022】
段間整合回路21は、ドライバ段増幅器50における出力端子50bに接続された第1端と、パワー段増幅器52における入力端子52aに接続された第2端と、を有する。段間整合回路21は、ドライバ段増幅器50とパワー段増幅器52との間のインピーダンスを整合する。
【0023】
パワー段バイアス供給回路161は、バッテリー電圧供給端子172から供給される電圧によって動作する。パワー段バイアス供給回路161は、制御信号供給端子173(制御電流源)から入力される制御電流によって制御される。パワー段バイアス供給回路161は、パワー段増幅器52に供給するバイアス電圧を生成し、生成したバイアス電圧を出力端子161aから出力する。
【0024】
パワー段増幅器52は、段間整合回路21の第2端から入力端子52aに供給される増幅信号RF1を増幅し、出力信号RFoutを出力端子52bから出力する。
【0025】
詳細には、パワー段増幅器52におけるキャパシタ52dは、入力端子52aを通じて段間整合回路21の第2端に接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0026】
増幅トランジスタ52cは、出力端子52bを通じて出力端子32に接続されたコレクタと、抵抗素子52fを通じてキャパシタ52dの第2端に接続されたベースと、接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0027】
抵抗素子52eは、パワー段バイアス供給回路161の出力端子161aに接続された第1端と、キャパシタ52dの第2端に接続された第2端と、を有する。
【0028】
電圧レベルシフト回路301は、電源電圧供給端子175と、保護回路201におけるトランジスタ251のベースとの間に接続される。電圧レベルシフト回路301は、電源電圧供給端子175から供給される電源電圧VCC1をシフトさせてトランジスタ251のベースに供給する。
【0029】
図2は、電圧レベルシフト回路301の一例である電圧レベルシフト回路301aの回路図である。
図2に示すように、電圧レベルシフト回路301aは、N(Nは1以上の整数)個のトランジスタ302(第1ダイオード)を含む。
【0030】
Nが1の場合、トランジスタ302は、電源電圧供給端子175に接続されたコレクタと、コレクタに接続されたベースと、トランジスタ251のベースに接続されたエミッタと、を有する。この場合、電源電圧VCC1からトランジスタ302のベースエミッタ間の電圧(或いは、オン電圧)Vbesを差し引いた電圧が、後述のベース電圧Vb251として、トランジスタ251のベースに供給される。以下、トランジスタのコレクタと当該トランジスタのベースとの接続を、第1ダイオード接続と称することがある。
【0031】
Nが2以上の場合、N個の第1ダイオード接続されたトランジスタ302が、エミッタがトランジスタ251のベース側になるように直列に接続される。この場合、電源電圧VCC1から、電圧VbesにNを乗じた電圧を差し引いた電圧が、後述のベース電圧Vb251として、トランジスタ251のベースに供給される。
【0032】
図3は、電圧レベルシフト回路301の一例である電圧レベルシフト回路301bの回路図である。
図3に示すように、電圧レベルシフト回路301bは、N個のトランジスタ302を含む。
【0033】
Nが1の場合、トランジスタ302は、トランジスタ251のベースに接続されたコレクタと、ベースと、ベース及び電源電圧供給端子175に接続されたエミッタと、を有する。この場合、電源電圧VCC1からトランジスタ302のコレクタベース間の電圧Vcbを差し引いた電圧が、後述のベース電圧Vb251として、トランジスタ251のベースに供給される。以下、トランジスタのエミッタと当該トランジスタのベースとの接続を、第2ダイオード接続と称することがある。
【0034】
Nが2以上の場合、N個の第2ダイオード接続されたトランジスタ302が、コレクタがトランジスタ251のベース側になるように直列に接続される。この場合、電源電圧VCC1から、電圧VcbにNを乗じた電圧を差し引いた電圧が、後述のベース電圧Vb251として、トランジスタ251のベースに供給される。
【0035】
図4は、電圧レベルシフト回路301の一例である電圧レベルシフト回路301cの回路図である。
図4に示すように、電圧レベルシフト回路301cは、N個のダイオード303(第1ダイオード)を含む。
【0036】
Nが1の場合、ダイオード303は、トランジスタ251のベースに接続されたカソードと、電源電圧供給端子175に接続されたアノードと、を有する。この場合、電源電圧VCC1からダイオード303の順方向電圧を差し引いた電圧が、後述のベース電圧Vb251として、トランジスタ251のベースに供給される。
【0037】
Nが2以上の場合、N個のダイオード303が、カソードがトランジスタ251のベース側になるように直列に接続される。この場合、電源電圧VCC1から、順方向電圧にNを乗じた電圧を差し引いた電圧が、後述のベース電圧Vb251として、トランジスタ251のベースに供給される。以下、電圧レベルシフト回路301によってシフトする電圧を、シフト電圧Vsftと称することがある。
【0038】
図1に示すように、保護回路201は、増幅信号RF1と電源電圧VCC1に基づく第2信号とに基づいてバイアス制御電流Ibの一部を接地に流す。具体的には、第2信号は、トランジスタ251のベースに供給されるベース電圧Vb251である。保護回路201は、ベース電圧Vb251が、トランジスタ251のベースエミッタ間の電圧(或いは、オン電圧)Vbeの2倍の電圧、或いは、トランジスタ251及びトランジスタ252がともにオンする電圧である2Vbeより大きくなった場合において、増幅信号RF1の振幅が所定値より大きくなったとき、バイアス制御電流Ibの一部を保護電流Ipとして接地に流すことによってドライバ段増幅器50及びパワー段増幅器52を保護する。
【0039】
詳細には、保護回路201におけるトランジスタ251は、ノードN2に接続されたコレクタと、電圧レベルシフト回路301の第2端に接続されたベースと、エミッタと、を有する。
【0040】
抵抗素子212は、トランジスタ251のエミッタに接続された第1端と、第2端と、を有する。キャパシタ211は、抵抗素子212の第2端に接続された第1端と、パワー段増幅器52の入力端子52aに接続された第2端と、を有する。キャパシタ211は、直流を遮断するために設けられる。
【0041】
キャパシタ253は、トランジスタ251のベースに接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。
【0042】
トランジスタ252は、ノードN2に接続されたコレクタと、抵抗素子255を通じてトランジスタ251のエミッタに接続されたベースと、抵抗素子254を通じて接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0043】
以下、保護回路201の動作について説明する。保護回路201は、通常動作時には動作しないことが好ましい。例えば、トランジスタ251及び252のオン電圧(具体的には、トランジスタ251及び252のベースエミッタ間の電圧)がVbeとすると、2Vbe+Vsftを、通常動作時における電源電圧VCC1の上限電圧よりも大きく設定しておくことで、通常動作時における電源電圧VCC1は、2Vbe+Vsft以下となる。これにより、通常動作時におけるトランジスタ251及び252をオフ状態に維持することができるので、保護回路201を動作させないようにすることができる。この場合、保護回路201は、ノードN2から接地へ保護電流Ipを流さないので、バイアス制御電流Ibは維持され、ドライバ段増幅器50は通常動作する。
【0044】
電力増幅回路101では、VCC1>2Vbe+Vsftとなると、トランジスタ251及び252をオフ状態からオン状態に遷移させて、保護回路201を動作状態にすることができる。
【0045】
図5は、増幅信号RF1のRF振幅が小さい場合におけるトランジスタ251のベース電圧Vb251及びエミッタ電圧Ve251の時間変化の一例を示す図である。なお、
図5おいて、横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示す。
【0046】
図5に示すように、トランジスタ251のベースは、キャパシタ253を通じて接地されているので、トランジスタ251のベース電圧Vb251は、時間変化せず、略一定である。
【0047】
トランジスタ251のエミッタには、キャパシタ211及び抵抗素子212を通じて増幅信号RF1のRF振幅が入力される。RF振幅が小さい場合におけるトランジスタ251のエミッタ電圧Ve251の時間平均は、平均電圧Va1となる。
【0048】
図6は、増幅信号RF1のRF振幅が大きい場合におけるトランジスタ251のベース電圧Vb251及びエミッタ電圧Ve251の時間変化の一例を示す図である。なお、
図6の見方は、
図5と同様である。
【0049】
図6に示すように、トランジスタ251のエミッタ電圧Ve251は、ベース電圧Vb251からVbeを差し引いた電圧Vcより下がらないので、増幅信号RF1のRF振幅が大きい場合、エミッタ電圧Ve251の時間変化の波形は、電圧Vcより低い電圧部分が欠けた形状となる。このため、増幅信号RF1のRF振幅が大きい場合におけるエミッタ電圧Ve251の平均電圧Va2は、
図5に示す平均電圧Va1より大きくなる。
【0050】
つまり、増幅信号RF1のRF振幅が大きくなると、トランジスタ252のベース電圧が上昇し、トランジスタ252のコレクタ電流が大きくなる。これにより、バイアス制御電流Ibの一部を保護電流Ipとして接地に流すことができるので、ドライバ段増幅器50の出力パワーレベルを下げることができる。したがって、電源電圧VCC1が、2Vbe+Vsftより大きい場合において、増幅信号RF1のRF振幅が大きくなるとき、バイアス制御電流Ibの一部を保護回路201によって保護電流Ipとして接地に流すことができるので、ドライバ段増幅器50及びパワー段増幅器52が破壊される可能性を低減することができる。
【0051】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る電力増幅回路102について説明する。第2実施形態以降では第1実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0052】
図7は、電力増幅回路102の回路図である。
図7に示すように、第2実施形態に係る電力増幅回路102は、パワー段がパワー段差動対55(第1差動対)となっている点で第1実施形態に係る電力増幅回路101と異なる。
【0053】
電力増幅回路102は、
図1に示す電力増幅回路101と比べて、段間整合回路21及びインダクタ26の代わりにバラン41(第1バラン)を備え、バラン42(第2バラン)と、パワー段増幅器53と、キャパシタ72及び73と、パワー段バイアス供給回路162と、をさらに備える。
【0054】
パワー段増幅器53は、入力端子53aと、出力端子53bと、増幅トランジスタ53c(第3増幅器)と、キャパシタ53dと、抵抗素子53e及び53fと、を含む。
【0055】
バラン41は、インダクタ41a(第1インダクタ)、41b(第2インダクタ)及び41c(第3インダクタ)を含む。バラン42は、インダクタ42a(第4インダクタ)、42b(第5インダクタ)及び42c(第6インダクタ)を含む。
【0056】
パワー段増幅器53及びパワー段バイアス供給回路162の構成は、パワー段増幅器52及びパワー段バイアス供給回路161とそれぞれ同様である。
【0057】
バラン41は、ドライバ段増幅器50から出力されるシングルエンド信号すなわち増幅信号RF1を、差動信号である増幅信号RFp2及びRFm2に変換する。バラン41及びキャパシタ72は、ドライバ段増幅器50とパワー段差動対55との間のインピーダンスを整合する。
【0058】
詳細には、バラン41におけるインダクタ41aは、ドライバ段増幅器50における出力端子50bに接続された第1端と、電源電圧供給端子175に接続された第2端と、を有する。
【0059】
インダクタ41bは、パワー段増幅器52の入力端子52aに接続された第1端と、ノードN4となっている第2端と、を有し、インダクタ41aと電磁界的に結合する。保護回路201におけるトランジスタ251のエミッタは、抵抗素子212及びキャパシタ211を通じてノードN4に接続される。
【0060】
インダクタ41cは、インダクタ41bの第2端すなわちノードN4に接続された第1端と、パワー段増幅器53の入力端子53aに接続された第2端と、を有し、インダクタ41aと電磁界的に結合する。インダクタ41cは、インダクタ41bのインダクタンスと略同じインダクタンスを有する。
【0061】
つまり、インダクタ41aは、1次側インダクタである。インダクタ41b及び41cは、2次側インダクタである。そして、ノードN4は、2次側インダクタの中点となっている。
【0062】
なお、ここでいう「中点」は、2次側インダクタの一端から中点までの距離が2次側インダクタの他端から中点までの距離と等しい点に限らない。「中点」は、2次側インダクタの一端から中点までの距離と2次側インダクタの他端から中点までの距離とが異なるような点であってもよい。すなわち、インダクタ41cは、インダクタ41bのインダクタンスと異なるインダクタンスを有してもよい。
【0063】
キャパシタ72は、パワー段増幅器52の入力端子52aに接続された第1端と、パワー段増幅器53の入力端子53aに接続された第2端と、を有する。
【0064】
パワー段差動対55は、パワー段増幅器52及び53を含む。パワー段増幅器52は、増幅信号RFp2を増幅して増幅信号RFp3を出力する。パワー段増幅器53は、増幅信号RFm2を増幅して増幅信号RFm3を出力する。
【0065】
パワー段増幅器53におけるキャパシタ53dは、入力端子53aに接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0066】
増幅トランジスタ53cは、出力端子53bに接続されたコレクタと、抵抗素子53fを通じてキャパシタ53dの第2端に接続されたベースと、接地に接続されたエミッタと、を有する。抵抗素子53eは、パワー段バイアス供給回路162の出力端子162aに接続された第1端と、キャパシタ53dの第2端に接続された第2端と、を有する。
【0067】
バラン42は、パワー段増幅器52及び53からそれぞれ出力される増幅信号RFp3及びRFm3を、シングルエンド信号である出力信号RFoutに変換する。バラン42及びキャパシタ73は、パワー段差動対55と出力端子32の後段の回路すなわち負荷との間のインピーダンスを整合する。
【0068】
詳細には、キャパシタ73は、パワー段増幅器52の出力端子52bに接続された第1端と、パワー段増幅器53の出力端子53bに接続された第2端と、を有する。
【0069】
バラン42におけるインダクタ42bは、パワー段増幅器52の出力端子52bに接続された第1端と、ノードN5となっている第2端と、を有する。ノードN5には、電源電圧供給端子176からパワー段増幅器52及び53の電源電圧が供給される。
【0070】
インダクタ42cは、インダクタ42bの第2端すなわちノードN5に接続された第1端と、パワー段増幅器53の出力端子53bに接続された第2端と、を有する。インダクタ42cは、インダクタ42bのインダクタンスと略同じインダクタンスを有する。
【0071】
インダクタ42aは、出力端子32に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有し、インダクタ42b及び42cと電磁界的に結合する。
【0072】
つまり、インダクタ42b及び42cは、1次側インダクタである。インダクタ42aは、2次側インダクタである。そして、ノードN5は、1次側インダクタの中点となっている。
【0073】
なお、ここでいう「中点」は、2次側インダクタの一端から中点までの距離が2次側インダクタの他端から中点までの距離と等しい点に限らない。「中点」は、2次側インダクタの一端から中点までの距離と2次側インダクタの他端から中点までの距離とが異なるような点であってもよい。すなわち、インダクタ42cは、インダクタ42bのインダクタンスと異なるインダクタンスを有してもよい。
【0074】
以下、電力増幅回路102の動作について説明する。
図8は、出力端子32から後段の回路すなわち負荷をみたときの反射係数Γの絶対値に対するノードN4における電圧の振幅変化A1の一例を示す図である。なお、
図8において、横軸は反射係数Γの絶対値を示し、縦軸はバラン41のノードN4における電圧の振幅を示す。
【0075】
図8に示すように、例えば、出力端子32に接続された負荷のインピーダンスが50オームのとき、反射係数Γの絶対値がゼロとなる。一方、負荷のインピーダンスが50オームからずれると、反射係数Γの絶対値は、大きくなる。
【0076】
一般的に、差動アンプのバランは、負荷のインピーダンスが50オームのときに対称となるように設計される。バラン41が対称に動作する場合、ノードN4では、差動信号が互いに打ち消し合う。すなわち、反射係数Γの絶対値がゼロのとき、ノードN4における電圧振幅は、ゼロである。
【0077】
負荷のインピーダンスが50オームからずれたとき、バランは非対称となる。バラン41が非対称に動作する場合、ノードN4では、差動信号同士の打ち消しが不完全となる。この場合、振幅変化A1に示すように、反射係数Γの絶対値に応じて、ノードN4における電圧振幅が大きくなる。つまり、ノードN4からRF信号RFu1(第3信号)が出力されるので、保護回路201が動作する。
【0078】
図9は、出力端子32から後段の回路すなわち負荷をみたときの反射係数Γの絶対値に対するドライバ段増幅器50の出力電力変化P1の一例を示す図である。なお、
図9において、横軸は反射係数Γの絶対値を示し、縦軸はドライバ段増幅器50から出力される電力を示す。
【0079】
図9に示すように、負荷のインピーダンスが50オームからずれ、電源電圧VCC1が、2Vbe+Vsftより大きくなり、かつ、増幅信号RF1のRF振幅が大きくなったとき、保護回路201が動作する。保護回路201が動作すると、出力電力変化P1に示すように、ドライバ段増幅器50の出力電力が低減される。この結果、ドライバ段増幅器50並びにパワー段増幅器52及び53が保護される。
【0080】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る電力増幅回路103について説明する。
図10は、電力増幅回路103の回路図である。
図10に示すように、第3実施形態に係る電力増幅回路103は、電源電圧VCC1のレベルに関わらず、保護回路が動作する点で第2実施形態に係る電力増幅回路102と異なる。
【0081】
電力増幅回路103は、
図7に示す電力増幅回路102と比べて、保護回路201の代わりに保護回路202を備える。保護回路202は、
図7に示す保護回路201と比べて、抵抗素子256(第2抵抗素子)及び257をさらに含む。
【0082】
抵抗素子256は、ノードN2に接続された第1端と、第2端と、を有する。抵抗素子257は、ノードN2に接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0083】
トランジスタ251は、抵抗素子257の第2端に接続されたコレクタと、抵抗素子256の第2端及びキャパシタ253の第1端に接続されたベースと、抵抗素子212及びキャパシタ211を通じてバラン41におけるノードN4に接続されたエミッタと、を有する。
【0084】
トランジスタ252は、抵抗素子257の第2端に接続されたコレクタと、抵抗素子255を通じてトランジスタ251のエミッタに接続されたベースと、抵抗素子254を通じて接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0085】
図7に示す電力増幅回路102では、電源電圧VCC1が、2Vbe+Vsftより大きくなると、保護回路201がオフ状態からオン状態へ遷移し、急激に電流が流れることがある。このとき、増幅器の特性劣化が大きくなる可能性がある。
【0086】
これに対して、
図10に示す電力増幅回路103では、トランジスタ251のベースには、抵抗素子156及び256を通じて電流供給端子171から常にバイアス電流が供給されるので、保護回路202は、常にオン状態となっている。
【0087】
これにより、保護回路202において急激に電流が流れることを抑制することができるので、増幅器の特性劣化を抑制することができる。
【0088】
したがって、電力増幅回路103では、電源電圧VCC1のレベルに関わらず、負荷のインピーダンスが50オームからずれ、かつ、増幅信号RF1のRF振幅が大きくなったとき、保護回路202が動作する。
【0089】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る電力増幅回路104について説明する。
図11は、電力増幅回路104の回路図である。
図11に示すように、第4実施形態に係る電力増幅回路104は、保護回路におけるトランジスタ251のバイアスが制御信号供給端子173から供給される点で第3実施形態に係る電力増幅回路103と異なる。
【0090】
電力増幅回路104は、
図10に示す電力増幅回路103と比べて、保護回路202の代わりに保護回路203を備える。保護回路203は、
図10に示す保護回路202と比べて、抵抗素子255、256及び257を含まない。
【0091】
トランジスタ251は、第1ダイオード接続されており、制御信号供給端子173及びキャパシタ253の第1端に接続されたコレクタ及びベースと、抵抗素子212及びキャパシタ211を通じてバラン41におけるノードN4に接続されたエミッタと、を有する。
【0092】
トランジスタ252は、ノードN2に接続されたコレクタと、トランジスタ251のエミッタに接続されたベースと、抵抗素子254を通じて接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0093】
図10に示す電力増幅回路103では、バイアス用トランジスタ152並びにトランジスタ251及び252が電流供給端子171からバイアスされる構成となっている。このため、ドライバ段増幅器50のベースバイアスを高くするために電流供給端子171から供給される電流を大きくすると、トランジスタ251及び252のコレクタ電流も増えてしまい、保護回路202の動作とドライバ段増幅器50のバイアスとを独立に調整することが困難であった。
【0094】
これに対して、
図11に示す電力増幅回路104では、バイアス用トランジスタ152にバイアスを供給する電流供給端子171と、トランジスタ251及び252にバイアスを供給する制御信号供給端子173とを別系統にすることで、保護回路203の動作とドライバ段増幅器50のバイアスとを独立に調整することができる。
【0095】
なお、トランジスタ251のコレクタは、電流供給端子171及び制御信号供給端子173とは別の新たな制御端子に接続される構成であってもよい。このような構成により、保護回路203の動作とパワー段増幅器52のバイアスとを独立に調整することができる。しかしながら、新たな制御端子を設けることでチップサイズが大きくなることがあるため、
図11に示すように、トランジスタ251のコレクタが制御信号供給端子173に接続される構成では、チップサイズを小さくすることができるので、好ましい。
【0096】
[第5実施形態]
第5実施形態に係る電力増幅回路105について説明する。
図12は、電力増幅回路105の回路図である。
図12に示すように、第5実施形態に係る電力増幅回路105は、トランジスタ251及び252のコレクタ電流がともに電流供給端子171から供給される点で第4実施形態に係る電力増幅回路104と異なる。
【0097】
電力増幅回路105は、
図11に示す電力増幅回路104と比べて、保護回路203の代わりに保護回路204を備える。保護回路204は、
図11に示す保護回路203と比べて、抵抗素子256及び257をさらに含む。
【0098】
抵抗素子256は、制御信号供給端子173に接続された第1端と、第2端と、を有する。抵抗素子257は、ノードN2に接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0099】
トランジスタ251は、抵抗素子257の第2端に接続されたコレクタと、抵抗素子256の第2端及びキャパシタ253の第1端に接続されたベースと、抵抗素子212及びキャパシタ211を通じてバラン41におけるノードN4に接続されたエミッタと、を有する。
【0100】
トランジスタ252は、抵抗素子257の第2端に接続されたコレクタと、トランジスタ251のエミッタに接続されたベースと、抵抗素子254を通じて接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0101】
[第6実施形態]
第6実施形態に係る電力増幅回路106について説明する。
図13は、電力増幅回路106の回路図である。
図13に示すように、第6実施形態に係る電力増幅回路106は、トランジスタ251のエミッタが抵抗素子212及びキャパシタ211を通じてバラン42におけるノードN5に接続される点で第4実施形態に係る電力増幅回路104と異なる。
【0102】
例えば、出力端子32に接続された負荷のインピーダンスが50オームのとき、バラン42が対称に動作する。このとき、ノードN5では、差動信号が互いに打ち消し合うので、ノードN5における電圧振幅は、ゼロである。
【0103】
負荷のインピーダンスが50オームからずれたとき、バラン42が非対称に動作する。このとき、ノードN5では、差動信号同士の打ち消しが不完全となり、反射係数Γの絶対値に応じて、ノードN5における電圧振幅が大きくなる。つまり、ノードN5からRF信号RFu2(第3信号)が出力されるので、保護回路203が動作する。
【0104】
[第7実施形態]
第7実施形態に係る電力増幅回路107について説明する。
図14は、電力増幅回路107の回路図である。
図14に示すように、第7実施形態に係る電力増幅回路107は、ドライバ段も差動対となっている点で第4実施形態に係る電力増幅回路104と異なる。
【0105】
電力増幅回路107は、
図11に示す電力増幅回路104と比べて、入力整合回路20及びドライバ段バイアス供給回路151の代わりにバラン40(第3バラン)及びドライバ段バイアス供給回路155を備え、ドライバ段増幅器51をさらに備える。
【0106】
バラン40は、インダクタ40a(第7インダクタ)、40b(第8インダクタ)及び40c(第9インダクタ)を含む。ドライバ段増幅器51は、入力端子51aと、出力端子51bと、増幅トランジスタ51c(第4増幅器)と、キャパシタ51dと、抵抗素子51eと、を含む。
【0107】
ドライバ段バイアス供給回路155は、
図11に示すドライバ段バイアス供給回路151と比べて、バイアス用トランジスタ153をさらに含む。ドライバ段増幅器51の構成は、ドライバ段増幅器50と同様である。
【0108】
バラン40は、入力端子31から供給されるシングルエンド信号すなわち入力信号RFinを、差動信号である信号RFpin及びRFminに変換する。バラン40は、入力端子31の前段の回路とドライバ段増幅器50及び51との間のインピーダンスを整合する。
【0109】
詳細には、バラン40におけるインダクタ40aは、入力端子31に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。インダクタ40bは、ドライバ段増幅器50の入力端子50aに接続された第1端と、ノードN3となっている第2端と、を有し、インダクタ40aと電磁界的に結合する。保護回路203におけるトランジスタ251のエミッタは、抵抗素子212及びキャパシタ211を通じてノードN3に接続される。
【0110】
インダクタ40cは、インダクタ40bの第2端すなわちノードN3に接続された第1端と、ドライバ段増幅器51の入力端子51aに接続された第2端と、を有し、インダクタ40aと電磁界的に結合する。インダクタ40cは、インダクタ40bのインダクタンスと略同じインダクタンスを有する。
【0111】
つまり、インダクタ40aは、1次側インダクタである。インダクタ40b及び40cは、2次側インダクタである。そして、ノードN3は、2次側インダクタの中点となっている。
【0112】
なお、ここでいう「中点」は、2次側インダクタの一端から中点までの距離が2次側インダクタの他端から中点までの距離と等しい点に限らない。「中点」は、2次側インダクタの一端から中点までの距離と2次側インダクタの他端から中点までの距離とが異なるような点であってもよい。すなわち、インダクタ40cは、インダクタ40bのインダクタンスと異なるインダクタンスを有してもよい。
【0113】
ドライバ段差動対54(第2差動対)は、ドライバ段増幅器50及び51を含む。ドライバ段増幅器50は、信号RFpinを増幅して増幅信号RFp1を出力する。ドライバ段増幅器51は、信号RFminを増幅して増幅信号RFm1を出力する。
【0114】
ドライバ段増幅器51におけるキャパシタ51dは、入力端子51aに接続された第1端と、第2端と、を有する。
【0115】
増幅トランジスタ51cは、出力端子51bに接続されたコレクタと、キャパシタ51dの第2端に接続されたベースと、接地に接続されたエミッタと、を有する。抵抗素子51eは、第1端と、キャパシタ51dの第2端に接続された第2端と、を有する。
【0116】
ドライバ段バイアス供給回路155におけるバイアス用トランジスタ153は、バッテリー電圧供給端子172に接続されたコレクタと、ノードN2に接続されたベースと、ドライバ段増幅器51における抵抗素子51eの第1端に接続されたエミッタと、を有する。
【0117】
バラン41及びキャパシタ72は、ドライバ段差動対54とパワー段差動対55との間のインピーダンスを整合する。
【0118】
詳細には、バラン41におけるインダクタ41bは、ドライバ段増幅器50の出力端子50bに接続された第1端と、ノードN4となっている第2端と、を有する。ノードN4には、電源電圧供給端子175からドライバ段増幅器50及び51の電源電圧が供給される。
【0119】
インダクタ41cは、インダクタ41bの第2端すなわちノードN4に接続された第1端と、ドライバ段増幅器51の出力端子51bに接続された第2端と、を有する。
【0120】
インダクタ41aは、パワー段増幅器52の入力端子52aに接続された第1端と、パワー段増幅器53の入力端子53aに接続された第2端と、を有し、インダクタ41b及び41cと電磁界的に結合する。
【0121】
つまり、インダクタ41b及び41cは、1次側インダクタである。インダクタ41aは、2次側インダクタである。そして、ノードN4は、1次側インダクタの中点となっている。
【0122】
例えば、出力端子32に接続された負荷のインピーダンスが50オームのとき、バラン40が対称に動作する。このとき、ノードN3では、差動信号が互いに打ち消し合うので、ノードN3における電圧振幅は、ゼロである。
【0123】
負荷のインピーダンスが50オームからずれたとき、バラン40が非対称に動作する。このとき、ノードN3では、差動信号同士の打ち消しが不完全となり、反射係数Γの絶対値に応じて、ノードN3における電圧振幅が大きくなる。つまり、ノードN3からRF信号RFu3(第3信号)が出力されるので、保護回路203が動作する。
【0124】
[第8実施形態]
第8実施形態に係る電力増幅回路108について説明する。
図15は、電力増幅回路108の回路図である。
図15に示すように、第8実施形態に係る電力増幅回路108は、クランプ回路を備える点で第6実施形態に係る電力増幅回路106と異なる。
【0125】
電力増幅回路108は、
図13に示す電力増幅回路106と比べて、クランプ回路81(第1クランプ回路)及び82(第2クランプ回路)をさらに備える。クランプ回路81は、M(Mは1以上の整数)個のダイオード81a(第2ダイオード)を含む。クランプ回路82は、M個のダイオード82a(第3ダイオード)を含む。
【0126】
Mが1の場合、クランプ回路81におけるダイオード81aは、パワー段増幅器52の出力端子52bに接続されたアノードと、接地に接続されたカソードと、を有する。クランプ回路81において、ダイオード81aと接地との間にノードN6が設けられる。
【0127】
クランプ回路82におけるダイオード82aは、パワー段増幅器53の出力端子53bに接続されたアノードと、接地に接続されたカソードと、を有する。クランプ回路82において、ダイオード82aと接地との間にノードN7が設けられる。
【0128】
Mが2以上の場合、クランプ回路81におけるM個のダイオード81aは、パワー段増幅器52の出力端子52bと接地との間において、アノードがパワー段増幅器52の出力端子52b側になるように直列に接続される。
【0129】
クランプ回路81において、パワー段増幅器52の出力端子52b側から数えて、K(1以上(M-1)以下の整数)番目のダイオード81aと(K+1)番目のダイオード81aとの間にノードN6が設けられる。
【0130】
クランプ回路82におけるM個のダイオード82aは、パワー段増幅器53の出力端子53bと接地との間において、アノードがパワー段増幅器53の出力端子53b側になるように直列に接続される。
【0131】
クランプ回路82において、パワー段増幅器53の出力端子53b側から数えて、K番目のダイオード82aと(K+1)番目のダイオード82aとの間にノードN7が設けられる。
【0132】
トランジスタ251のエミッタは、抵抗素子212及びキャパシタ211を通じてノードN6及びN7に接続される。
【0133】
例えば、出力端子32に接続された負荷のインピーダンスが50オームのとき、バラン42が対称に動作する。バラン42が対称に動作していても、増幅信号RFp3及びRFm3の振幅が大きいとき、ノードN6及びN7では、電圧振幅が発生する。つまり、ノードN6及びN7からRF信号RFu4(第3信号)が出力されるので、保護回路203が動作する。
【0134】
負荷のインピーダンスが50オームからずれたとき、バラン42が非対称に動作する。バラン42が非対称に動作するとき、ノードN6及びN7では、電圧振幅が発生する。つまり、ノードN6及びN7からRF信号RFu4が出力されるので、保護回路203が動作する。
【0135】
また、パワー段差動対55並びにクランプ回路81及び82が半導体基板に形成され、かつ、バラン42がモジュール基板に形成されることが多い。このため、
図13に示す電力増幅回路106では、モジュール基板におけるノードN5から半導体基板におけるトランジスタ251のエミッタへの配線が簡易ではない。
【0136】
これに対して、電力増幅回路108では、半導体基板内において、ノードN6及びN7からトランジスタ251のエミッタへの配線を簡易に形成することができる。
【0137】
なお、保護回路201~204では、抵抗素子254が設けられる構成について説明したが、これに限定するものではない。抵抗素子254が設けられず、トランジスタ252のエミッタが接地に直接接続される構成であってもよい。
【0138】
また、保護回路201及び202では、抵抗素子255が設けられる構成について説明したが、これに限定するものではない。抵抗素子255が設けられず、トランジスタ252のベースがトランジスタ251のエミッタに直接接続される構成であってもよい。
【0139】
また、保護回路202及び204では、抵抗素子257が設けられる構成について説明したが、これに限定するものではない。抵抗素子257が設けられず、トランジスタ251のコレクタ及びトランジスタ252のコレクタベースがバイアス用トランジスタ152のベースに直接接続される構成であってもよい。
【0140】
また、電力増幅回路103、104及び105では、バラン41におけるインダクタ41aの第2端が電源電圧供給端子175に接続される構成について説明したが、これに限定するものではない。インダクタ41aの第2端は、低インピーダンスに見えるノードであれば、接地等に接続される構成であってもよい。
【0141】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。電力増幅回路101及び102では、増幅トランジスタ50cは、電源電圧供給端子175から供給される電源電圧VCC1によって動作し、入力信号RFinを増幅して増幅信号RF1を出力する。バイアス用トランジスタ152は、バイアス制御電流Ibが供給されるベースと、抵抗素子50eを通じて増幅トランジスタ50cにバイアスを供給するエミッタと、を有する。保護回路201は、増幅信号RF1と電源電圧VCC1に基づくベース電圧Vb251とに基づいてバイアス制御電流Ibの一部である保護電流Ipを接地に流す。
【0142】
このような構成により、電源電圧VCC1が変動して高くなり、かつ、増幅信号RF1の出力電力が大きくなったときに、バイアス制御電流Ibの一部を保護電流Ipとして接地に流すことができるので、バイアス用トランジスタ152のベースに供給される電流を小さくすることができる。これにより、増幅トランジスタ50cに供給されるバイアスを小さくすることができるので、増幅トランジスタ50cの出力電力を小さくし、増幅トランジスタ50c及び増幅トランジスタ50cの後段に接続された増幅器の出力電力が過大になることを抑制することができる。したがって、増幅器の破壊を抑制することができる。
【0143】
また、電力増幅回路101及び102における保護回路201では、トランジスタ251は、キャパシタ253を通じて接地に接続されたベースと、キャパシタ211を通じて増幅信号RF1が入力されるエミッタと、を有する。トランジスタ252は、バイアス用トランジスタ152のベースに接続されたコレクタと、トランジスタ251のエミッタに接続されたベースと、接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0144】
このような構成により、キャパシタ253によってトランジスタ251のベースの電圧を略一定に保つことができる。トランジスタ251のエミッタの平均電圧は、増幅信号RF1の振幅の大きさに応じて大きくなる。増幅信号RF1の振幅が大きくなったとき、トランジスタ251のエミッタの平均電圧が高くなり、トランジスタ252をオン状態にすることができるので、トランジスタ252のコレクタから接地に保護電流Ipを流すことができる。つまり、増幅信号RF1の出力電力が大きくなったときにトランジスタ252をオン状態にし、バイアス用トランジスタ152のベースに供給されるバイアス制御電流Ibの一部を保護電流Ipとして接地に流す回路を実現することができる。
【0145】
また、電力増幅回路102~108では、増幅トランジスタ50cは、負荷に電力を供給する。バイアス用トランジスタ152は、バイアス制御電流Ibが供給されるベースと、抵抗素子50eを通じて増幅トランジスタ50cにバイアスを供給するエミッタと、を有する。保護回路201~204は、負荷の変化に基づくRF信号RFu1、RFu2、RFu3又はRFu4に基づいてバイアス制御電流Ibの一部である保護電流Ipを接地に流す。
【0146】
例えば、差動対が負荷に電力を供給する場合において、負荷が変動したとき、差動信号のバランスが崩れ、差動対を構成する一方の増幅器の出力電力が過大になることがある。上記の構成により、負荷が変動し、差動対を構成する一方の増幅器の出力電力が過大になったときに、バイアス制御電流Ibの一部を保護電流Ipとして接地に流すことができるので、バイアス用トランジスタ152のベースに供給される電流を小さくすることができる。これにより、増幅トランジスタ50cに供給されるバイアスを小さくすることができるので、増幅トランジスタ50cの出力電力を小さくし、増幅トランジスタ50c及び増幅トランジスタ50cの後段に接続された差動対の出力電力が過大になることを抑制することができる。したがって、増幅器の破壊を抑制することができる。
【0147】
また、電力増幅回路102では、増幅トランジスタ50cは、電源電圧供給端子175から供給される電源電圧VCC1によって動作する。保護回路201は、電源電圧VCC1に基づくベース電圧Vb251にさらに基づいて保護電流Ipを接地に流す。
【0148】
このような構成により、電源電圧VCC1が変動して高くなり、かつ、増幅信号RF1の出力電力が大きくなったときに、バイアス制御電流Ibの一部を保護電流Ipとして接地に流すことができるので、バイアス用トランジスタ152のベースに供給される電流を小さくすることができる。これにより、増幅トランジスタ50cに供給されるバイアスを小さくすることができるので、増幅トランジスタ50cの出力電力を小さくし、増幅トランジスタ50c及び増幅トランジスタ50cの後段に接続された差動対の出力電力が過大になることを抑制することができる。したがって、増幅器の破壊を抑制することができる。
【0149】
また、電力増幅回路102~108における保護回路201~204では、トランジスタ251は、キャパシタ253を通じて接地に接続されたベースと、キャパシタ211を通じてRF信号RFu1、RFu2、RFu3又はRFu4が入力されるエミッタと、を有する。トランジスタ252は、バイアス用トランジスタ152のベースに接続されたコレクタと、トランジスタ251のエミッタに接続されたベースと、接地に接続されたエミッタと、を有する。
【0150】
このような構成により、キャパシタ253によってトランジスタ251のベースの電圧を略一定に保つことができる。トランジスタ251のエミッタの平均電圧は、RF信号RFu1、RFu2、RFu3又はRFu4の振幅の大きさに応じて大きくなる。負荷のインピーダンスが変化し、RF信号RFu1、RFu2、RFu3又はRFu4の振幅が大きくなったとき、トランジスタ251のエミッタの平均電圧が高くなり、トランジスタ252をオン状態にすることができるので、トランジスタ252のコレクタから接地に保護電流Ipを流すことができる。つまり、負荷のインピーダンスが変化したときにトランジスタ252をオン状態にし、バイアス用トランジスタ152のベースに供給されるバイアス制御電流Ibの一部を保護電流Ipとして接地に流す回路を実現することができる。
【0151】
また、電力増幅回路101及び102では、増幅トランジスタ50cは、電源電圧供給端子175から供給される電源電圧VCC1によって動作する。保護回路201におけるトランジスタ251のベースは、電源電圧供給端子175に接続される。
【0152】
このような構成により、電源電圧VCC1に応じてトランジスタ251をオン状態又はオフ状態にすることができる。したがって、増幅トランジスタ50cに供給される電源電圧VCC1が大きくなったときに、保護回路201を動作させ、また、電源電圧VCC1が小さくなったときに、保護回路201を停止させることができる。
【0153】
また、電力増幅回路101及び102では、電圧レベルシフト回路301は、保護回路201におけるトランジスタ251のベースと電源電圧供給端子175との間に接続され、電源電圧VCC1をシフトさせる。
【0154】
このような構成により、電源電圧VCC1が、トランジスタ251のベースエミッタ間の電圧Vbeと、トランジスタ252のベースエミッタ間の電圧Vbeと、電圧レベルシフト回路301のシフト電圧Vsftとの和より大きくなったときに保護回路201を動作させることができる。したがって、シフト電圧Vsftを適宜設定することにより、保護回路201の動作開始電圧を調整することができる。
【0155】
また、電力増幅回路101及び102では、電圧レベルシフト回路301は、1つ以上の第1ダイオードを含む。
【0156】
このような構成により、第1ダイオードの個数を適宜設定する簡易な方法で、シフト電圧Vsftを調整することができる。
【0157】
また、電力増幅回路103における保護回路202では、トランジスタ251のベースは、バイアス用トランジスタ152のベースに接続される。
【0158】
このような構成により、電源電圧VCC1に関わらず保護回路202を動作させることができるので、保護回路202において急激に電流が流れることを抑制することができる。これにより、増幅器の特性劣化を抑制することができる。
【0159】
また、電力増幅回路103では、抵抗素子256は、トランジスタ251のベースと、バイアス用トランジスタ152のベースとの間に接続される。
【0160】
このような構成により、抵抗素子256の抵抗値を適宜設定する簡易な方法で、トランジスタ251のベースに供給される電圧を調整することができる。
【0161】
また、電力増幅回路104~108では、増幅トランジスタ52cは、増幅トランジスタ50cの後段に設けられる。パワー段バイアス供給回路161は、制御信号供給端子173から供給される電流によって制御され、増幅トランジスタ52cにバイアスを供給する。そして、トランジスタ251のベースは、制御信号供給端子173に接続される。
【0162】
例えば、トランジスタ251のバイアスが電流供給端子171から供給される場合、増幅トランジスタ50cのベースバイアスを高くするために電流供給端子171から供給される電流を大きくすると、トランジスタ251及び252のコレクタ電流も増えてしまう。このため、保護回路の動作と増幅トランジスタ50cのバイアスとを独立に調整することが困難であった。上記の構成により、バイアス用トランジスタ152にバイアスを供給する電流供給端子171と、トランジスタ251及び252にバイアスを供給する制御信号供給端子173とを別系統にすることで、保護回路の動作と増幅トランジスタ50cのバイアスとを独立に調整することができる。
【0163】
また、電力増幅回路102~105では、パワー段差動対55は、増幅トランジスタ52c及び53cを含み、増幅トランジスタ50cの後段に設けられる。バラン41は、増幅トランジスタ50cとパワー段差動対55との間に設けられる。バラン41では、インダクタ41aは、ドライバ段増幅器50の出力端子50bに接続された第1端と、電源電圧供給端子175に接続された第2端と、を有する。インダクタ41bは、パワー段増幅器52の入力端子52aに接続された第1端と、RF信号RFu1を出力する第2端と、を有し、インダクタ41aと電磁界的に結合する。インダクタ41cは、インダクタ41bの第2端に接続された第1端と、パワー段増幅器53の入力端子53aに接続された第2端と、を有し、インダクタ41aと電磁界的に結合する。
【0164】
一般的に、負荷のインピーダンスが例えば50オームのとき、バラン41が対称に動作し、インダクタ41bの第2端すなわちインダクタ41cの第1端では、差動信号が互いに打ち消し合う。このため、RF信号RFu1の電圧振幅は、ゼロである。一方、負荷のインピーダンスが50オームからずれたとき、バラン41が非対称に動作し、インダクタ41bの第2端では、差動信号同士の打ち消しが不完全となる。この場合、RF信号RFu1の電圧振幅が大きくなる。つまり、インダクタ41bの第2端から出力されるRF信号RFu1の振幅が大きくなるので、保護回路を動作させることができる。
【0165】
また、電力増幅回路106では、パワー段差動対55は、増幅トランジスタ52c及び53cを含み、増幅トランジスタ50cの後段に設けられる。バラン42は、パワー段差動対55の後段に設けられる。バラン42では、インダクタ42aは、出力端子32に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。インダクタ42bは、パワー段増幅器52の出力端子52bに接続された第1端と、RF信号RFu2を出力する第2端と、を有し、インダクタ42aと電磁界的に結合する。インダクタ42cは、インダクタ42bの第2端に接続された第1端と、パワー段増幅器53の出力端子53bに接続された第2端と、を有し、インダクタ42aと電磁界的に結合する。
【0166】
一般的に、負荷のインピーダンスが例えば50オームのとき、バラン42が対称に動作し、インダクタ42bの第2端すなわちインダクタ42cの第1端では、差動信号が互いに打ち消し合う。このため、RF信号RFu2の電圧振幅は、ゼロである。一方、負荷のインピーダンスが50オームからずれたとき、バラン42が非対称に動作し、インダクタ42bの第2端では、差動信号同士の打ち消しが不完全となる。この場合、RF信号RFu2の電圧振幅が大きくなる。つまり、インダクタ42bの第2端から出力されるRF信号RFu2の振幅が大きくなるので、保護回路を動作させることができる。
【0167】
また、電力増幅回路107では、増幅トランジスタ51cは、増幅トランジスタ50cとドライバ段差動対54を形成する。バラン40は、ドライバ段差動対54の前段に設けられる。バラン40では、インダクタ40aは、入力端子31に接続された第1端と、接地に接続された第2端と、を有する。インダクタ40bは、ドライバ段増幅器50の入力端子50aに接続された第1端と、RF信号RFu3を出力する第2端と、を有し、インダクタ40aと電磁界的に結合する。インダクタ40cは、インダクタ40bの第2端に接続された第1端と、ドライバ段増幅器51の入力端子51aに接続された第2端と、を有し、インダクタ40aと電磁界的に結合する。
【0168】
一般的に、負荷のインピーダンスが例えば50オームのとき、バラン40が対称に動作し、インダクタ40bの第2端すなわちインダクタ40cの第1端では、差動信号が互いに打ち消し合う。このため、RF信号RFu3の電圧振幅は、ゼロである。一方、負荷のインピーダンスが50オームからずれたとき、バラン40が非対称に動作し、インダクタ40bの第2端では、差動信号同士の打ち消しが不完全となる。この場合、RF信号RFu3の電圧振幅が大きくなる。つまり、インダクタ40bの第2端から出力されるRF信号RFu3の振幅が大きくなるので、保護回路を動作させることができる。
【0169】
また、電力増幅回路108では、パワー段差動対55は、増幅トランジスタ52c及び53cを含み、増幅トランジスタ50cの後段に設けられる。クランプ回路81は、パワー段増幅器52の出力端子52bと接地との間に設けられ、1つ以上のダイオード81aを含む。クランプ回路82は、パワー段増幅器53の出力端子53bと接地との間に設けられ、1つ以上のダイオード82aを含む。RF信号RFu4は、ダイオード81aのカソード及びダイオード82aのカソードから出力される。
【0170】
例えば、負荷のインピーダンスが50オームのとき、増幅トランジスタ52c及び53cからそれぞれ出力される増幅信号RFp3及びRFm3のバランスは保たれているが、増幅信号RFp3及びRFm3の振幅が大きいとき、ダイオード81aのカソード及びダイオード82aのカソードでは、電圧振幅が発生する。つまり、ダイオード81aのカソード及びダイオード82aのカソードから出力されるRF信号RFu4の振幅が大きくなるので、保護回路を動作させることができる。また、負荷のインピーダンスが50オームからずれたとき、増幅信号RFp3及びRFm3のバランスが崩れ、ダイオード81aのカソード及びダイオード82aのカソードでは、電圧振幅が発生する。つまり、ダイオード81aのカソード及びダイオード82aのカソードから出力されるRF信号RFu4の振幅が大きくなるので、保護回路を動作させることができる。
【0171】
なお、以上説明した各実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。即ち、各実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、各実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0172】
20…入力整合回路
21…段間整合回路
31…入力端子
32…出力端子
40…バラン
40a、40b、40c…インダクタ
41…バラン
41a、41b、41c…インダクタ
42…バラン
42a、42b、42c…インダクタ
50、51…ドライバ段増幅器
52、53…パワー段増幅器
54…ドライバ段差動対
55…パワー段差動対
81、82…クランプ回路
101、102、103、104、105、106、107、108…電力増幅回路
151…ドライバ段バイアス供給回路
152、153…バイアス用トランジスタ
154…参照電圧生成回路
155…ドライバ段バイアス供給回路
161、162…パワー段バイアス供給回路
171…電流供給端子
172…バッテリー電圧供給端子
173174…制御信号供給端子
175、176…電源電圧供給端子
201、202、203、204…保護回路
301、301a、301b、301c…電圧レベルシフト回路