(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150810
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】飲料容器用蓋及び飲料容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/36 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B65D47/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060100
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】太田 登茂樹
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AA34
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CB01
3E084CC03
3E084CC07
3E084DA01
3E084DB13
3E084DC03
3E084DC07
3E084FA09
3E084FC03
3E084GA08
3E084GB06
3E084GB12
3E084KB01
3E084LA06
3E084LB02
3E084LB09
3E084LD01
(57)【要約】
【課題】飲料容器用蓋に設けられた切込み等を指で押し込んだ際に指が液面に触れてしまうのを防止することができる飲料容器用蓋を提供する。
【解決手段】飲料容器2の開口部3を覆う覆板部4と、覆板部4の外周縁に設けられ、飲料容器2の開口部3を覆板部4が覆うようにした際に当該飲料容器2の開口部3の縁部に係合可能な側周部5と、を備える飲料容器用蓋1であって、覆板部4の周縁側に設けられ、飲口110を形成するための飲口110の周縁側の形状である、切込線部又は覆板部4の一般部より強度の低い低強度部からなる飲口形成用線部11と、飲口形成用線部11で囲まれた飲口形成用部位20の内部に形成され、膨出した形状である、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなるフック用線部12とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料容器の開口部を覆う覆板部と、当該覆板部の外周縁に設けられ、前記飲料容器の前記開口部を前記覆板部が覆うようにした際に当該飲料容器の前記開口部の縁部に係合可能な側周部と、を備える飲料容器用蓋であって、
前記覆板部の周縁側に設けられ、飲口を形成するための当該飲口の前記周縁側の形状である、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる飲口形成用線部と、
前記飲口形成用線部で囲まれた飲口形成用部位の内部に形成され、膨出した形状である、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなるフック用線部とを備えること
を特徴とする飲料容器用蓋。
【請求項2】
前記フック用線部で囲まれた指挿入部位が上から押し込まれた際、当該指挿入部位と前記飲口形成用部位との間における山折りによる折り畳みを容易とするための前記覆板部の一般部より強度の低い折畳用低強度部と、
前記覆板部の前記飲口形成用部位における前記飲口形成用線部の内側端部間に、持ち上がった前記飲口形成用部位の谷折りを容易とするための当該覆板部の一般部より強度の低い谷折用低強度部とを備えること
を特徴とする請求項1記載の飲料容器用蓋。
【請求項3】
前記フック用線部は、飲口形成用線部を構成する飲口の前記周縁側に向けて外側に膨出した形状からなること
を特徴とする請求項1又は2記載の飲料容器用蓋。
【請求項4】
前記飲口形成用部位の内部において前記飲口形成用線部と前記フック用線部との間に形成されるフックにより、谷折用低強度部を支点として当該飲口形成用部位が回動自在とされていること
を特徴とする請求項3記載の飲料容器用蓋。
【請求項5】
前記谷折用低強度部と、前記覆板部の中央に向けて膨出した形状である、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる保持機構用線部とにより囲まれた保持機構を更に備え、
前記保持機構は、前記飲口形成用部位の回動に応じて、前記谷折用低強度部の延長線上にある繋部を支点として回動自在とされていること
を特徴とする請求項4記載の飲料容器用蓋。
【請求項6】
前記覆板部の谷折用低強度部に対して略平行となるように延長され、前記谷折用低強度部から折り返された前記飲口形成用部位又は前記指挿入部位が挿入可能な挿入用切込み線が設けられていること
を特徴とする請求項3記載の飲料容器用蓋。
【請求項7】
前記覆板部の谷折用低強度部に対して略平行となるように延長され、前記谷折用低強度部から折り返された前記飲口形成用部位に設けられた係止部、又は前記谷折用低強度部から折り返された前記指挿入部位に設けられた係止部が係止可能な切込み線が設けられていること
を特徴とする請求項3記載の飲料容器用蓋。
【請求項8】
前記フック用線部は、前記谷折用低強度部に向けて膨出した形状からなること
を特徴とする請求項2記載の飲料容器用蓋。
【請求項9】
前記飲口形成用部位の内部において前記飲口形成用線部と前記折畳用低強度部との間に形成される把持部により、谷折用低強度部を支点として当該飲口形成用部位が回動自在とされていること
を特徴とする請求項8記載の飲料容器用蓋。
【請求項10】
前記覆板部の谷折用低強度部に対して略平行となるように延長され、前記谷折用低強度部から折り返された前記飲口形成用部位又は前記指挿入部位が挿入可能な切込み線が設けられていること
を特徴とする請求項8記載の飲料容器用蓋。
【請求項11】
前記覆板部の谷折用低強度部に対して略平行となるように延長され、前記谷折用低強度部から折り返された前記飲口形成用部位に設けられた係止部、又は前記谷折用低強度部から折り返された前記指挿入部位に設けられた係止部が係止可能な切込み線が設けられていること
を特徴とする請求項8記載の飲料容器用蓋。
【請求項12】
請求項1~11のうち何れか1項に記載の飲料容器用蓋を備えていること
を特徴とする飲料容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料容器の開口部を覆う飲料容器用及びこの飲料容器用蓋を備えた飲料容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファーストフード店やコンビニエンスストアなどの多くの飲料の販売店では、プラスチック(合成樹脂)製や紙製のコップ等の飲料容器の開口部を、飲料容器用蓋で覆い、持ち運びの際に、その内部に収容されたジュースやコーヒーなどの飲料が開口部からこぼれ難いようにして販売している。
【0003】
飲料容器の内部に収容された飲料を飲むには、単純に飲料容器用蓋を外して開口部から飲んでもよいが、飲料容器用蓋を外した際に、その内側に付着した飲料が飛び散り、飲む人の衣服等を汚してしまうおそれがある。
【0004】
そのため、飲料容器用蓋に、ストローの差込部を設け、付属のストローを差し込むことにより、飲料容器内部の飲料を飲み易くすることが多くなされている(特許文献1等参照)。
【0005】
しかしながら、昨今、プラスチックゴミによる海洋汚染問題等を発端に、脱プラスチックの世界的な流れが大きくなり、その一環として、プラスチックからなるストローを無くそうという流れも大きくなっている。
【0006】
このような状況の下、市場では、ストローを無くし、飲料容器用蓋を外さなくても、飲料が飲み易い飲口を形成することができる飲料容器用蓋が求められている。近年において、飲料容器用蓋に設けられた切込み等を指で押し込むことで飲口を形成するものも既に提案されているが、飲料容器内の液面が蓋底に近い場合、押し込んだ指が液面に触れてしまう問題点もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上述した背景を鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、ストローを無くし、飲料容器用蓋を外さなくても、飲料が飲み易い飲口を形成する上で、飲料容器用蓋に設けられた切込み等を指で押し込んだ際に指が液面に触れてしまうのを防止することができる飲料容器用蓋及びこの飲料容器用蓋を備えた飲料容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明に係る飲料容器用蓋は、飲料容器の開口部を覆う覆板部と、当該覆板部の外周縁に設けられ、前記飲料容器の前記開口部を前記覆板部が覆うようにした際に当該飲料容器の前記開口部の縁部に係合可能な側周部と、を備える飲料容器用蓋であって、前記覆板部の周縁側に設けられ、飲口を形成するための当該飲口の前記周縁側の形状である、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる飲口形成用線部と、前記飲口形成用線部で囲まれた飲口形成用部位の内部に形成され、膨出した形状である、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなるフック用線部とを備えることを特徴とする。
【0010】
第2発明に係る飲料容器用蓋は、第1発明において、前記フック用線部で囲まれた指挿入部位が上から押し込まれた際、当該指挿入部位と前記飲口形成用部位との間における山折りによる折り畳みを容易とするための前記覆板部の一般部より強度の低い折畳用低強度部と、前記覆板部の前記飲口形成用部位における前記飲口形成用線部の内側端部間に、持ち上がった前記飲口形成用部位の谷折りを容易とするための当該覆板部の一般部より強度の低い谷折用低強度部とを備えることを特徴とする。
【0011】
第3発明に係る飲料容器用蓋は、第1発明又は第2発明において、前記フック用線部は、飲口形成用線部を構成する飲口の前記周縁側に向けて外側に膨出した形状からなることを特徴とする。
【0012】
第4発明に係る飲料容器用蓋は、第3発明において、前記飲口形成用部位の内部において前記飲口形成用線部と前記フック用線部との間に形成されるフックにより、谷折用低強度部を支点として当該飲口形成用部位が回動自在とされていることを特徴とする。
【0013】
第5発明に係る飲料容器用蓋は、第4発明において、前記谷折用低強度部と、前記覆板部の中央に向けて膨出した形状である、切込線部又は当該覆板部の一般部より強度の低い低強度部からなる保持機構用線部とにより囲まれた保持機構を更に備え、前記保持機構は、前記飲口形成用部位の回動に応じて、前記谷折用低強度部の延長線上にある繋部を支点として回動自在とされていることを特徴とする。
【0014】
第6発明に係る飲料容器用蓋は、第3発明において、前記覆板部の谷折用低強度部に対して略平行となるように延長され、前記谷折用低強度部から折り返された前記飲口形成用部位又は前記指挿入部位が挿入可能な挿入用切込み線が設けられていることを特徴とする。
【0015】
第7発明に係る飲料容器用蓋は、第3発明において、前記覆板部の谷折用低強度部に対して略平行となるように延長され、前記谷折用低強度部から折り返された前記飲口形成用部位に設けられた係止部、又は前記谷折用低強度部から折り返された前記指挿入部位に設けられた係止部が係止可能な切込み線が設けられていることを特徴とする。
【0016】
第8発明に係る飲料容器用蓋は、第2発明において、前記フック用線部は、前記谷折用低強度部に向けて膨出した形状からなることを特徴とする。
【0017】
第9発明に係る飲料容器用蓋は、第8発明において、前記飲口形成用部位の内部において前記飲口形成用線部と前記折畳用低強度部との間に形成される把持部により、谷折用低強度部を支点として当該飲口形成用部位が回動自在とされていることを特徴とする。
【0018】
第10発明に係る飲料容器用蓋は、第8発明において、前記覆板部の谷折用低強度部に対して略平行となるように延長され、前記谷折用低強度部から折り返された前記飲口形成用部位又は前記指挿入部位が挿入可能な切込み線が設けられていることを特徴とする。
【0019】
第11発明に係る飲料容器用蓋は、第8発明において、前記覆板部の谷折用低強度部に対して略平行となるように延長され、前記谷折用低強度部から折り返された前記飲口形成用部位に設けられた係止部、又は前記谷折用低強度部から折り返された前記指挿入部位に設けられた係止部が係止可能な切込み線が設けられていることを特徴とする。
【0020】
第12発明に係る飲料容器は、第1発明~第11発明の何れかの飲料容器用蓋を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
上述した構成からなる本発明によれば、ストローを無くし、飲料容器用蓋を外さなくても、飲料が飲み易い飲口を形成する上で、飲料容器用蓋に設けられた切込み等を指で押し込んだ際に指が液面に触れてしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る飲料容器の分解斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、覆板部の平面図であり、
図2(b)は、その詳細な形状を示す拡大平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋の飲口形成方法を段階的に示す説明図である。
【
図4】
図4(a)は、指挿入部位を挿入用切込み線に向けて実際に押し込んだ形態を示す図であり、
図4(b)は、フックを挿入用切込み線に向けて実際に押し込んだ形態を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、指挿入部位の周縁に設けられた係止部を挿入用切込み線に係止する形態を示す図であり、
図5(b)は、フックに設けられた係止部を挿入用切込み線に係止する形態を示す図である。
【
図6】
図6は、覆板部において、挿入用切込み線の代替として、保持機構用線部を設けた例を示す図である。
【
図7】
図7は、保持機構が形成されている場合における飲口の形成動作を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、保持機構が形成されている場合における飲口の形成動作を示す断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋の他の例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す飲料容器用蓋の他の例における飲口の形成動作を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、
図9に示す飲料容器用蓋の他の例において、指挿入部位を折畳用低強度部を支点として折り曲げて挿入用切込み線に挿入する動作を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、
図9に示す飲料容器用蓋の他の例において、指挿入部位を折畳用低強度部を支点として折り曲げて挿入用切込み線に挿入する動作を示す断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋において、挿入用切込み線を省略した形態を示す図である。
【
図14】
図14は、
図13に示す飲料容器用蓋の形態における飲口の形成動作を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、
図13に示す飲料容器用蓋の形態における飲口の形成動作を示す断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋において、挿入用切込み線の端部において変形用切込線を設けた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を適用して例示した実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
先ず、
図1を用いて、本発明の実施形態に係る飲料容器2について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る飲料容器2の分解斜視図である。
【0025】
本発明の実施形態に係る飲料容器2は、
図1に示すように、紙製であり、その上部に縁部3aを有する開口部3を備え、その内部にジュースやコーヒーなどの飲料6を収容して販売するのに多く用いられる有底円筒状の紙コップである。
【0026】
なお、飲料容器2は、紙製に限定されず、プラスチック製などの他の材料で製造されていてもよい。また、飲料容器2をプラスチック製とする場合は、環境にやさしい生分解性プラスチックなどを用いてもよい。
【0027】
そして、飲料容器2は、飲料容器用蓋1で開口部3が塞がれることによって飲料6の販売目的に使用される。
【0028】
飲料容器用蓋1は、紙製であり、飲料容器2の開口部3を覆う円盤状の覆板部4と、覆板部4の外周縁に設けられ、飲料容器2の開口部3を覆板部4が覆うようにした際に飲料容器2の開口部3の縁部3aに係合可能な側周部5と、を備えている。
【0029】
なお、飲料容器用蓋1も、紙製に限定されず、プラスチック製などの他の材料で製造されていてもよい。また、飲料容器用蓋1をプラスチック製とする場合は、環境にやさしい生分解性プラスチックなどを用いてもよい。
【0030】
図2(a)は、覆板部4の平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の破線で囲まれた部分についてその詳細な形状を示す拡大平面図である。覆板部4には、その周縁側に、飲口を形成するための当該飲口の周縁側の形状である切込線部からなる飲口形成用線部11が設けられている。なお、この飲口形成用線部11は、切込線部の代わりに、ミシン目を設けたり、ハーフカット等により厚みを小さくしたりする等して、覆板部4の一般部より強度の低い低強度部を設けて実施してもよい。
【0031】
飲口形成用線部11で囲まれた領域が飲口形成用部位20となる。この飲口形成用部位20の内部には、フック用線部12が形成される。
【0032】
フック用線部12は、平面視で略コ字状に形成されてなる切込線部からなる。フック用線部12は、略コ字状の角部が丸みを帯びた形状とされていてもよいし、これに限らず飲口形成用線部11を構成する飲口の周縁側に向けて外側に膨出した形状で構成されていればいかなるものであってもよい。ここでいう膨出した形状とは、フック用線部12の一端と他端から、飲口形成用線部11に向けて凸状に膨れるような形状であればいかなるものも含まれる。このフック用線部12は、切込線部の代わりに、ミシン目を設けたり、ハーフカット等により厚みを小さくしたりする等して、覆板部4の一般部より強度の低い低強度部を設けて実施してもよい。
【0033】
このようなフック用線部12で囲まれた領域が指挿入部位30となる。指挿入部位30は、飲口形成用部位20に完全に含まれる形態となる。飲口形成用部位20と指挿入部位30との境界は、上述したフック用線部12と、後述する折畳用低強度部14により区切られることとなる。また飲口形成用部位20は、このフック用線部12と、飲口形成用線部11との間に形成されるフック35を含む。
【0034】
折畳用低強度部14は、フック用線部12の内側端部間に設けられている。折畳用低強度部14は、指挿入部位30が上から押し込まれた際、指挿入部位30と飲口形成用部位20との間における山折りによる折り畳みを容易とするための覆板部4の一般部より強度の低い低強度部である。
【0035】
具体的には、折畳用低強度部14は、ミシン目を設けて形成されている。なお、この折畳用低強度部14は、厚みを小さくしたりするなどして覆板部4の一般部より強度の低い低強度部を設けて実施することもできる。折畳用低強度部14の両端部と、フック用線部12の両端部の間は互いに離間しているが、これに限定されるものではなく、折畳用低強度部14の端部とフック用線部12の端部同士が近接し、又は繋がるものであってもよい。なお、折畳用低強度部14の構成は必須ではなく、省略してもよい。
【0036】
また覆板部4の飲口形成用部位20における飲口形成用線部11の内側端部間において、上述した折畳用低強度部14に対して覆板部4の中央側に離間させた位置において、谷折用低強度部15が設けられている。谷折用低強度部15は、折畳用低強度部14と略平行方向となる方向に延長されており、覆板部4の一般部より強度が低くなるように形成されている。この谷折用低強度部15は、持ち上がった飲口形成用部位20の谷折りを容易とするために設けられたものである。谷折用低強度部15は、ミシン目を設けて形成されている。なお、谷折用低強度部15は、厚みを小さくしたりするなどして覆板部4の一般部より強度の低い低強度部を設けて実施することもできる。谷折用低強度部15の構成は必須ではなく、省略してもよい。
【0037】
飲口形成用部位20は、飲口形成用線部11に加え、この谷折用低強度部15で囲まれた領域となる。
【0038】
谷折用低強度部15に対して覆板部4の中央側に離間した位置において、当該谷折用低強度部15と略平行となるように延長された挿入用切込み線17が更に設けられている。挿入用切込み線17は、谷折用低強度部15から折り返された飲口形成用部位20又は指挿入部位30が挿入可能となるように形成されている。挿入用切込み線17の構成は必須ではなく、省略してもよい。
【0039】
次に本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋の飲口形成方法について説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る飲料容器用蓋の飲口形成方法を段階的に示す説明図である。
【0040】
図3(a)に示すように、指先Fで指挿入部位30を押圧する。指挿入部位30は、上述したように、切込線等からなるフック用線部12と、折畳用低強度部14により囲まれている。このような指挿入部位30に対して指先Fによる押圧力が加わると、折畳用低強度部14を支点として指挿入部位30が下側に向けて押し込まれる。折畳用低強度部14は、山折りにより折り畳まれることになるが、上述したように折畳用低強度部14を覆板部4の一般部より強度の低い低強度部で構成していることで、それを容易に実現することができる。
【0041】
なお、この指挿入部位30は、飲口形成用部位20の全体と比較して面積が小さいことから、これを指先Fで押し込んでも、その押し込み量はそれほど大きくはならない。即ち、指挿入部位30を押し込んでも、その膨出された先端はそれほど深く押し込まれないことから、飲料容器2に収容されている飲料6の液面に接触するのを防止することができる。その結果、この指挿入部位30を押圧する指先Fも、飲料容器2に収容されている飲料6に触れてしまうのを防止することができる。
【0042】
次に
図3(b)に示すように、押し込んだ指先Fにより、フック35を引っかける。指挿入部位30が下側に押し込む過程で指先Fをフック35の下に押し込んでいることから、当該フック35を指先Fにより容易に引っかけることが可能となる。次に指先Fに引っかけたフック35を押し上げる。フック35にこの押し上げ力が負荷された場合、折畳用低強度部14の延長線上に位置するフック35の基端部が支点となって回動し、
図3(b)に示すようにこれを略鉛直方向へと押し上げることができる。また、フック35の略鉛直方向の押し上げに応じて、下側に押し込まれていた指挿入部位30も上側へと引き上げられる。
【0043】
次に
図3(c)に示すように指先Fによりフック35を更に持ち上げる力を加える。その結果、飲口形成用部位20は、これに含まれる指挿入部位30も含めて、谷折用低強度部15を支点として、上側へと立ち上がる。即ち、フック35により、谷折用低強度部15を支点として当該飲口形成用部位20が回動自在となるように構成することで、飲口形成用部位20が上側へと立ち上げられることにより、飲口110を形成することができる。なお、谷折用低強度部15は、谷折りにより折り畳まれることになるが、上述したように谷折用低強度部15を覆板部4の一般部より強度の低い低強度部で構成していることで、それを容易に実現することができる。
【0044】
このとき、
図3(c)に示すように、更にフック35を挿入用切込み線17に向けて押し込むことにより、これを挿入用切込み線17へと挿入することが可能となる。或いは、
図3(d)に示すように、フック35の代わりに、指挿入部位30を挿入用切込み線17に向けて押し込むことにより、これを挿入用切込み線17へと挿入することが可能となる。
【0045】
以上説明した本発明によれば、上記した構成なので、ストローを無くし、飲料容器用蓋1を飲料容器2から外さなくても、飲料6が飲み易い飲口110を形成することができる。
【0046】
そのうえ、本発明では、飲料容器用蓋1と、飲料容器2と、が、ともに紙製なので、使用する接着剤などを除き、略完全に脱プラスチックとすることができる。
【0047】
また、本発明を適用した飲口形成方法によれば、上記した簡単な手順で、指先Fを飲料6の液面に接触させることなく、飲料容器用蓋1の飲口110を容易に形成することができる。
【0048】
図4(a)は、指挿入部位30を挿入用切込み線17に向けて実際に押し込んだ形態を示している。
図4(b)は、フック35を挿入用切込み線17に向けて実際に押し込んだ形態を示している。
【0049】
挿入用切込み線17を予め形成しておくことにより、フック35又は指挿入部位30を挿入することができる。これにより、立ち上げた飲口形成用部位20自体を固定することができ、飲口110を介して飲料6を飲む消費者が、煩わしさを感じるのを防ぐことができる。また、挿入していない指挿入部位30又はフック35を持って、飲口形成用部位20を蓋の周縁部側へ回転するだけで、挿入用切込み線17に挿入されたフック35又は指挿入部位30を挿入用切込み線17から簡単に引き抜くことができるので、飲口110を再び閉めたり開けたりすることもできる。
【0050】
なお、フック35又は指挿入部位30を挿入用切込み線17に挿入することにより固定する場合に加え、
図5(a)に示すように、指挿入部位30の周縁に設けられた係止部36をこの挿入用切込み線17に係止することで固定するようにしてもよい。また、
図5(b)に示すように、飲口形成用部位20(フック35)に設けられた係止部37を挿入用切込み線17に係止することで固定するようにしてもよい。ちなみに
図5(b)は、飲口形成用部位20におけるフック35について係止部37を設け、これを挿入用切込み線17に係止する例を示している。
【0051】
図6は、覆板部4において、挿入用切込み線17の代替として、保持機構用線部18を設けた例を示している。保持機構用線部18は、覆板部4の中央に向けて膨出した形状とされている。即ち、保持機構用線部18は、谷折用低強度部15に平行な切込線と、当該切込線の両端部が覆板部4の外側に向けて延長された切込線で構成された、平面視で略コ字状の形態とされている。保持機構用線部18は、切込線の代替として、ミシン目で構成してもよいし、或いはハーフカット等により厚みを小さくしたりするなどして覆板部4の一般部より強度の低い低強度部を設けて実施することもできる。
【0052】
この保持機構用線部18は、
図6に示すような平面視で略コ字状の形態に限定されるものではなく、略コ字状の角部が丸みを帯びた形状とされていてもよいし、これに限らず覆板部4の中央に向けて膨出した形状で構成されていればいかなるものであってもよい。
【0053】
上述の如き構成からなる保持機構用線部18と、谷折用低強度部15とにより囲まれた保持機構50を形成することができる。
【0054】
図7は、このような保持機構50が形成されている場合における飲口の形成動作を示している。
図7(a)に示すように、フック35を略鉛直方向へと押し上げるところまでは、上述と同様である。次に
図7(b)に示すように、フック35を更に持ち上げる力を加える。その結果、飲口形成用部位20は、これに含まれる指挿入部位30も含めて、谷折用低強度部15の延長線上にある繋部60を支点として、上側へと立ち上がる。これら飲口形成用部位20を更に覆板部4の中央に向けて押し倒すことにより、保持機構50が繋部60を支点として覆板部4の下側へと回動することとなる。即ち、保持機構50は、飲口形成用部位20の回動に応じて、繋部60を支点として回動自在とされている。
【0055】
次に
図7(c)に示すように、飲口形成用部位20を下側に押し込む力を加えた場合には、折畳用低強度部14が山折りで折り曲げられることになる。
図7(d)に示すように、更にこの飲口形成用部位20を下側に押し込み係止させる。
図8は、この係止させている状態を示す断面図である。飲口形成用部位20を下側に押し込むと、折畳用低強度部14を支点として押し戻そうとする力が作用し、係止させる。さらに強固に係止する場合は、指挿入部位30の先端を覆板部4の裏面まで押し込むことで、指挿入部位30が下側から上側に向けて付勢された状態で保持機構用線部18の周縁に係止することができる。
【0056】
本発明を適用した飲料容器用蓋1は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
図9に示すような、フック用線部12´を有する飲料容器用蓋1´で構成してもよい。以下、この飲料容器用蓋1´において、上述した飲料容器用蓋1と同一の構成要素、部材については、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。
【0057】
フック用線部12´は、平面視で中央側(谷折用低強度部15)に向けて膨出した形状からなる切込線部からなる。フック用線部12´は、切込線部の代わりに、ミシン目を設けたり、ハーフカット等により厚みを小さくしたりする等して、覆板部4の一般部より強度の低い低強度部を設けて実施してもよいことは勿論である。
【0058】
折畳用低強度部14´は、フック用線部12´の内側端部間に設けられ、覆板部4の一般部より強度の低い低強度部で構成されている。折畳用低強度部14´と飲口形成用線部11との間には把持部42が形成される。
【0059】
飲料容器用蓋1´において指挿入部位30は、このような構成からなるフック用線部12´、折畳用低強度部14´により囲まれる領域となる。
【0060】
次に飲料容器用蓋1´の飲口形成方法について説明する。
図10(a)に示すように、指先Fで指挿入部位30を押圧する。指挿入部位30は、上述したように、切込線等からなるフック用線部12´と、折畳用低強度部14´により囲まれている。このような指挿入部位30に対して指先Fによる押圧力が加わると、折畳用低強度部14´を支点として指挿入部位30が下側に向けて押し込まれる。この指挿入部位30は、飲口形成用部位20の全体と比較して面積が小さいことから、これを指先Fで押し込んでも、その膨出された先端はそれほど深く押し込まれないことから、飲料容器2に収容されている飲料6の液面に接触するのを防止することができる点は、上述した飲料容器用蓋1と同様である。その結果、この指挿入部位30を押圧する指先Fも、飲料容器2に収容されている飲料6に触れてしまうのを防止することができる。
【0061】
次に
図10(b)に示すように、押し込んだ指先Fにより、把持部42を把持する。このとき、
図10(a)に示すように、フック用線部12の中心側と谷折用低強度部15の間にある引掛部70を指先Fにより引っ掛けて持ち上げ、把持部42を把持することも可能である。指挿入部位30が下側に押し込む過程で指先Fを把持部42の下に押し込んでいることから、当該把持部42を指先Fにより容易に把持することが可能となる。次に指先Fにて把持した把持部42を押し上げる。把持部42にこの押し上げ力が負荷された場合、飲口形成用部位20自体が谷折用低強度部15を支点として回動し、
図10(b)に示すようにこれを略鉛直方向へと押し上げることができる。
【0062】
次に
図10(c)に示すように把持部42を含む飲口形成用部位20全体を谷折用低強度部15を支点とし、挿入用切込み線17に向けて押し倒す。このとき、
図10(d)に示す拡大図に示すように、指挿入部位30の周縁に設けられた係止部36を挿入用切込み線17に係止することで固定するようにしてもよい。
【0063】
このように、フック用線部12´を有する飲料容器用蓋1´においても同様に、飲料6の液面に指先Fが触れることなく、飲口110を形成することができ、しかも立ち上げた飲口形成用部位20自体を固定することができ、飲口110を介して飲料6を飲む消費者が、煩わしさを感じるのを防止することができる。
【0064】
図11は、飲料容器用蓋1´の飲口形成方法の他の例を示している。
図11(a)に示すように、指挿入部位30を押圧して押し込み、
図11(b)に示すように、把持部42に押し上げることで、飲口形成用部位20自体を谷折用低強度部15を支点として回動させる点は同様である。その後、
図11(c)、
図12に示す側断面図に示すように、指挿入部位30を折畳用低強度部14´を支点として折り曲げ、これを挿入用切込み線17に挿入する。この折畳用低強度部14´を挿入用切込み線17に挿入することにより、
図11(d)に示すように、飲口形成用部位20を覆板部4に近接させた状態で固定することができる。
【0065】
図13は、飲料容器用蓋1´において、挿入用切込み線17を省略した形態を示している。飲料容器用蓋1´は、挿入用切込み線17を省略しても、以下に説明する方法により、飲口形成用部位20を固定することができる。
【0066】
かかる場合には、
図14(a)に示すように指先Fで指挿入部位30を押圧して押し込むところは、上述と同様である。次に、
図14(b)に示すように飲口形成用部位20における山折部48を山折りに折り曲げる。この山折部48は、飲口形成用線部11と、フック用線部12との間に設けられており、例えばミシン目、又は厚みを小さくしたりするなどして覆板部4の一般部より強度の低い低強度部を設けたもので構成されていてもよい。このような山折部48を予め形成しておくことにより、山折部48における山折りを容易に実現することができる。但し、このような山折部48を設けるのは必須ではなく、省略してもよい。かかる場合には、山折部48に相当する箇所近傍を消費者自らが山折りにより折り曲げることとなる。
【0067】
次に
図14(c)に示すように把持部42を下側へと押し込む。このような押し込み動作を行うことで、山折部48の折り曲げ量を多くすることで、
図15の側断面図に示すように、その折り曲げ角θをより狭小化させることができる。また、把持部42を下側へと押し込むことで、指挿入部位30を覆板部4の裏側に押し込むことができる。
【0068】
山折部48の折り曲げ角θが非常に狭小化されているため、折り曲げ角θが広がる方向(
図15中に示す矢印方向)へ戻り力が作用することとなる。また、指挿入部位30が元に戻ろうとする力も作用することとなる。この2つの戻り力によって指挿入部位30の端部が、覆板部4の裏側を付勢する状態を保持することができる。その結果、指挿入部位30を含む飲口形成用部位20自体を固定することができる。
【0069】
図16の例では、挿入用切込み線17の端部において変形用切込線19を設けた例を示している。この変形用切込線19の延長方向は、挿入用切込み線17の延長方向と略垂直となるように構成される。このような変形用切込線19を設けておくことにより、挿入用切込み線17をより簡単に開くことができ、上述した指挿入部位30等の挿入容易性を高めることができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0071】
1 飲料容器用蓋
2 飲料容器
3 開口部
4 覆板部
5 側周部
6 飲料
11 飲口形成用線部
12 フック用線部
14 折畳用低強度部
15 谷折用低強度部
17 挿入用切込み線
18 保持機構用線部
19 変形用切込線
20 飲口形成用部位
30 指挿入部位
35 フック
36、37 係止部
42 把持部
48 山折部
50 保持機構
60 繋部
70 引掛部
110 飲口