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  • 特開-受信機、通知方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150813
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】受信機、通知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/06 20060101AFI20231005BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H04B1/06 Z
H04B1/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060104
(22)【出願日】2022-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目2テラヘルツ帯を適用した端末拡張のための信号処理技術 副題:Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大詩
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 浩輔
【テーマコード(参考)】
5K060
5K061
【Fターム(参考)】
5K060HH06
5K060KK06
5K061AA02
5K061AA10
(57)【要約】
【課題】中継器の存在下において受信機の歪み補償機能の態様に応じた適応的な処理を行うことのできる受信機を提供する。
【解決手段】中継器20によって無線信号を中継されて送信機と通信する受信機30であって、当該受信機30が非線形歪み補償機能を有する場合に、当該有する旨の前記中継器20または前記送信機10への通知処理を実行するS2ことにより、前記中継器20に備わる増幅器についてS3、線形領域を超えた非線形領域での動作を可能とさせる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中継器によって無線信号を中継されて送信機と通信する受信機であって、
当該受信機が非線形歪み補償機能を有する場合に、当該有する旨の前記中継器または前記送信機への通知処理を実行することにより、前記中継器に備わる増幅器について線形領域を超えた非線形領域での動作を可能とさせることを特徴とする受信機。
【請求項2】
前記通知処理を、前記中継器または前記送信機が前記受信機に対して接続状態にあるか、前記中継器または前記送信機が接続の待機状態にあるかを管理する無線リソース制御(RRC)の設定の際に実行することを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記通知処理を、前記受信機から前記中継器または前記送信機へと送信するダウンリンク制御情報(DCI)内に、前記受信機が非線形歪み補償機能を有する旨の情報を含めることによって実行することを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項4】
前記通知処理を、メディアアクセス制御の制御要素(MAC-CE)の制御信号内に、前記受信機が非線形歪み補償機能を有する旨の情報を含めることによって実行することを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項5】
前記中継器は、電力制御機能を有しており、
前記通知処理は、前記中継器に向けて実行されることで、当該通知を受信した前記中継器において、前記電力制御機能により、増幅器の最大入力電圧を上げた設定に切り替えることにより、増幅器について線形領域を超えた非線形領域での動作を可能とさせることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の受信機。
【請求項6】
前記中継器は、電力制御機能を有しておらず、
前記通知処理は、前記送信機に向けて実行されることで、当該通知を受信した前記送信機において、出力電圧を上げるように制御することで、当該送信機から送信された無線信号を中継する前記中継器において、増幅器について線形領域を超えた非線形領域での動作を可能とさせることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の受信機。
【請求項7】
前記通知処理は、前記中継器に対して実行されるものであり、
前記通知処理を、前記受信機から前記中継器へと特定レベルの無線信号を送信することで、前記中継器において当該特定レベルに対応する所定レベルの無線信号が受信されたと判定された場合に、前記中継器において当該受信機が非線形歪み補償機能を有する旨の通知を受けたものと判断させることによって実行することを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項8】
前記中継器に備わる増幅器は線形領域で動作するように予め設定しておき、
前記受信機が非線形歪み補償機能を有さない場合には前記通知処理をスキップすることによって、前記中継器に備わる増幅器が線形領域で動作する設定を継続させることを特徴とする請求項1に記載の受信機。
【請求項9】
中継器によって無線信号を中継されて送信機と通信する受信機が実行する通知方法であって、
当該受信機が非線形歪み補償機能を有する場合に、当該有する旨の前記中継器または前記送信機への通知処理を実行することにより、前記中継器に備わる増幅器について線形領域を超えた非線形領域での動作を可能とさせることを特徴とする通知方法。
【請求項10】
中継器によって無線信号を中継されて送信機と通信する受信機としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
当該受信機が非線形歪み補償機能を有する場合に、当該有する旨の前記中継器または前記送信機への通知処理を実行することにより、前記中継器に備わる増幅器について線形領域を超えた非線形領域での動作を可能とさせることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継器が存在する状況での受信機における非線形歪み補償機能の有無に対応した処理を行う受信機、通知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
5G(第5世代移動通信システム)などの通信において利用される電力増幅器の非線形歪み補償を受信側で行うことに関して、特許文献1や非特許文献1の従来技術が存在する。特許文献1や非特許文献1では、パイロット信号を利用し、送信機の電力増幅器で発生する歪みを受信機側で補償を行う。
【0003】
ここで、送信機と受信機との間に中継器が介在する場合に、中継器で発生する歪みに関しても同様に、歪み補償を受信機において行うことが考えられる。
【0004】
なお、中継器とは、無線周波数リピータ(RFリピータ)と呼ばれる無線中継装置であり、基地局としての受信機のエリアカバレッジの拡大や、エリアカバレッジ内のデッドスポットに位置するユーザ端末としての送信機の通信環境の改善に寄与するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2021-507605号公報
【特許文献2】特願2021-143374号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K. Mei, J. Liu, X. Zhang, K. Cao, N. Rajatheva, and J. Wei, 'A Low Complexity Learning-Based Channel Estimation for OFDM Systems With Online Training', IEEE Transactions on Communications, vol. 69, no. 10, pp. 6722-6733, Oct. 2021
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、複数の受信機において歪み補償の有無(歪み補償を行うか否かの設定)が様々に存在しうる状況に対して、個別状況に適応的に対応させることで中継器を効率的に活用することが考慮されていなかった。
【0008】
図1は、歪み補償の有無による様々な状況を模式的に示す図であり、ケースC1~C3の3通りの場合分けを示す。ケースC1では、送信機からの無線信号を、線形領域で動作するように設定されている中継器で増幅したうえで、歪み補償を行わないように設定されている受信機において受信する。ケースC1では中継器での増幅結果として歪みは発生しないため、受信機で歪み補償を行わなくとも特に問題はないが、線形領域で動作させることから中継器の電力効率が下がるという問題がある。
【0009】
ケースC2では、送信機からの無線信号を、線形領域を超えて歪みが発生する飽和領域付近で動作するように設定されている中継器で増幅したうえで、歪み補償を行わないように設定されている受信機において受信する。ケースC2では中継器での増幅結果として歪みは発生するため、受信機で歪み補償を行っており、ケースC1と比べて動作領域が増え、中継器の電力効率が上がるという利点がある。
【0010】
ケースC3は、ケースC2と同様に、送信機からの無線信号を、線形領域を超えて歪みが発生する飽和領域付近で動作するように設定されている中継器で増幅するが、ケースC2とは異なり、受信機は歪み補償を行わないように設定されている。ケースC3の場合、ケースC2と同様に中継器の電力効率は上がるという利点はあるが、受信機において歪み補償を行わないため、変調精度が低下し、明確に性能が劣化するという問題がある。
【0011】
以上の図1の例に示される通り、中継器に関しては飽和領域付近で動作させた方が電力効率は上がるものの、受信機に関しては歪み補償を行う機能に対応しているものと非対応のものとが混在して存在し、非対応の場合はケースC3のように性能劣化につながってしまう。従来技術ではこのような様々な設定状況(中継器の動作領域を飽和領域付近まで増やすかの設定と、受信機の歪み補償の有無の設定)に対して適応的に対処することができなかった。
【0012】
上記従来技術の課題に鑑み、本発明は、中継器の存在下において受信機の歪み補償機能の態様に応じた適応的な処理を行うことのできる受信機、通知方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明は、中継器によって無線信号を中継されて送信機と通信する受信機であって、当該受信機が非線形歪み補償機能を有する場合に、当該有する旨の前記中継器または前記送信機への通知処理を実行することにより、前記中継器に備わる増幅器について線形領域を超えた非線形領域での動作を可能とさせることを特徴とする。また、本発明は、前記受信機が前記通知処理を実行する通知方法であることや、コンピュータを前記受信機として機能させるプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受信機が非線形歪み補償機能を有する場合には、その旨を中継器または送信機へと通知することで、中継器に備わる増幅器について線形領域を超えた非線形領域での動作を可能とさせるので、中継器の電力効率と、受信機の変調精度と、の両方を確保した適応的な対処を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】歪み補償の有無による様々な状況を模式的に示す図である。
図2】一実施形態に係る通信システムの構成及び当該構成において実施される手順を示す図である。
図3図2の手順の変形例としての一実施形態を示す図である。
図4】無線通信機能を有するコンピュータ構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2は、一実施形態に係る通信システム100の構成及び当該構成において実施される手順であるステップS1~S3を示す図である。通信システム100は、例えば5Gにおけるセルラ通信システム(移動通信ネットワーク)の一部分であり、スマートフォン等の移動体通信装置であるユーザ端末としての送信機10と、無線周波数リピータとしての中継器20と、基地局装置としての受信機30と、を備える。中継器20はドローンや中継車に搭載されることで移動可能なものであってもよい。中継器20は、IAB(Integrated access and backhaul、無線アクセスネットワークと無線バックホールを統合したもの)のようなデータ信号までの復号機能を持つものではなく、レピータのような復号機能をもたないAF(Amplifier and Forward)中継をするものであってよく、あるいは、制御信号のみを復号する機能をもつNetwork-controlled repeaterであってもよい。
【0017】
これら送信機10、中継器20及び受信機30のそれぞれは複数存在しうるが、図2では、当該複数存在しうるものの中から、相互に無線通信可能な状態にある任意の1台がそれぞれ示され、このような状態にある送信機10、中継器20及び受信機30の間で実行される手順としてステップS1~S3が示されている。以下、各ステップS1~S3を説明する。なお、図2に示す手順の変形例として図3の手順も可能であり、図2のステップS1を省略したうえで、ステップS2,S3をそれぞれ図3のステップS20,S30に変更することで、図3の手順が実現される。以下、この対応関係を前提として、図2の手順を説明しながら、適宜、その変形例としての図3の手順についても説明する。図2の手順では通知を中継器20に対して行うことにより、図3の手順では通知を送信機10に対して行うことにより、直接あるいは間接に、中継器20の動作を制御することができる。
【0018】
ステップS1では、事前設定として、中継器20の増幅器を線形領域で動作するように設定する。この事前設定は、線形領域で動作させる旨の制御信号を送信機10から中継器20へと無線送信して設定するようにしてもよいし、中継器20自身における設定として、その他の制御信号を受信しない限り、線形領域で動作するように設定しておいてもよい。なお、このステップS1は、後述する第1手法が適用され、中継器20が電力制御機能を有していることを前提とする。図2の手順の変形例である図3の手順では、後述する第2手法が適用され、中継器20が電力制御機能を有していない前提であるため、このステップS1は省略される。
【0019】
ステップS2では、受信機30が、自身が歪み補償機能を持つ機器である場合に、その旨(受信機30が歪み補償機能を有する旨)を中継器20へと無線信号により通知する。変形例としてのステップS20では、受信機30が、自身が歪み補償機能を持つ機器である場合に、同内容(受信機30が歪み補償機能を有する旨)を送信機10へと通知する。送信機10に通知する場合、中継器20で中継して通知すればよい。ステップS2,S20での通知の詳細については第1~第4実施形態として後述する。
【0020】
なお、コンピュータを含んで構成される受信機30は、自身の機種情報を固定的な情報として有しており、当該機種情報に歪み補償機能の有無の情報を予め含めておくことができるため、受信機30において自身が歪み補償機能を有するか否かを自動判断し、有する判断の場合にステップS2,S20の通知処理を行うことができる。
【0021】
ステップS3では、ステップS2での受信機30からの歪み補償機能有りとの通知を受けた中継器20が、この受信機30に対する設定として、増幅器における最大入力電力を事前に設定された歪補償用の値(ステップS1において線形領域で動作するように設定されていた際の最大入力電力よりも大きい所定値)に切り替えることで、増幅器を飽和領域付近(線形領域を超えた非線形領域)で動作させるようにする。
【0022】
一方で、変形例としてのステップS30では、ステップS20で受信機30から送信器10に信号送信(受信機30が歪み補償機能を有する旨の情報を含む)を行っているため、中継器20側で入力電力を制限するのではなく、送信機10側で送る信号の電力をコントロールするように、送信機10で制御を行う。すなわち、送信機10では、自身の送信信号が中継器20で中継されたうえで受信機30において受信された際に、歪み補償が行われることを前提として、中継器20の増幅器が非線形領域でも動作可能なように送信機10における出力電力を制御する。
【0023】
ここで具体的に、中継器20の電力増幅器への入力は以下の2つの手法のいずれかで制御でき、図2の手順では第1手法を採用し、変形例としての図3の手順では第2手法を採用している。
(第1手法)中継器20は電力制御機能を有しており、AGC(自動利得制御)などで中継器20自身の内部処理で電力を制御する。
(第2手法)中継器20は電力制御機能を有しておらず、ユーザ端末としての送信機10の出力電力を制御することにより、中継器20に届いた電波の電力が増幅器の線形領域に収まるようにするか、あるいは、増幅器の非線形領域まで含めて動作させるようにするといった、中継器20の挙動の変化を可能とする。
【0024】
図2の手順においてステップS2で受信機30から中継器20に通知を行う場合は、上記の第1手法が適用される。一方、図3の手順においてステップS20で受信機30から送信機10に通知を行う場合は、上記の第2手法が適用され、送信機10の出力電力をより大きな範囲となるように制御することで、この送信機10からの無線信号を受信して中継する中継器20の増幅器が結果的に、非線形領域でも動作するように制御を行う。
【0025】
このように、図2または図3の手順によれば、ステップS2やS20で受信機30が歪み補償機能を有する場合に、その旨を中継器20や送信機10へと通知し、ステップS3やS30において線形領域を超えて中継器20の増幅器を動作させるようにするので、前述の図1のケースC2等が個別の中継器20と受信機30の組み合わせに対して適応的に実現される。これにより、中継器20の増幅器の最大入力レベルを上げることが可能となり、中継器20の電力効率を向上させ、それにより基地局30と中継器20の間のカバレッジを延伸できる。
【0026】
なお、図2の手順を用いる場合において、ステップS2において、受信機30が、自身が歪み補償機能を持たない機器である場合には前述の通知を行わないため、ステップS3の実行はスキップされることにより、中継器20はステップS1で設定した通りの線形領域で増幅器を動作させることとなる。これにより、前述の図1のケースC1が個別の中継器20等と受信機30の組み合わせに対して適応的に実現される。変形例としての図3の手順を用いる場合においても同様に、ステップS20において、受信機30が、自身が歪み補償機能を持たない機器である場合には前述の通知を行わないため、ステップS30の実行はスキップされることにより、中継器20は線形領域で増幅器が動作することとなる。
【0027】
以下、ステップS2やS20における、受信機30において自身が歪み補償機能を持つ旨を通知する第1~第4実施形態を説明する。
【0028】
第1実施形態では、受信機30の歪み補償機能の有無は変わらないので、(すなわち、個別の受信機30のそれぞれについて、歪み補償機能があるかないかはその個別機種に応じて決まっているので、)中継器20または送信機10にRRC(無線リソース制御)コンフィグで設定することができる。なお、中継器20には制御信号について復号等の処理が可能なもの(Network-controlled repeater)を用いることで、復号機能を有するユーザ端末としての送信機10と同様の処理により、RRCコンフィグで設定できる。
【0029】
RRCコンフィグでは、中継器20または送信機10が受信機30に接続状態にあるか、接続せずに待機状態にあるかを管理することができるので、接続状態に遷移する際に、受信機30から中継器20または送信機10へと向けて、受信機30の歪み補償有無についての情報を通知するようにすればよい。
【0030】
なお、歪み補償機能の有無に関して、デフォルトではオフとし(すなわち、ステップS1の設定により中継器20は受信機30が歪み補償機能がないものとして増幅器を線形領域で動作するように設定させ)、ステップS2にてRRCコンフィグで歪み補償機能がある旨の設定通知を受けた場合に、ステップS3において中継器20は最大入力レベル(電圧)を上げるように設定することができる。
【0031】
第2実施形態では、受信機30から中継器20または送信機10へとPDCCH(物理ダウンリンク制御チャネル)で歪み補償機能がある旨を通知することができる。既知のように、PDCCHは5Gにおける受信機30(基地局)と送信機10(端末)間または受信機30と中継器20間の通信を行うチャネルであり、下りリンクL1/L2制御信号の伝送用に用いられる。
【0032】
具体的に例えば、本出願人による前掲の特許文献2において定義されるDCI(ダウンリンク制御情報)フォーマットに、歪み補償機能の有無の情報を追加するようにしてもよい。特許文献2では、動的にビーム制御可能な中継器20(無線リピータ)に対して、この中継器20が形成すべきビームパターンの指示を含むDCIを受信機30(基地局)から送信することで、中継器20が送信機10(ユーザ端末)と受信機30との間の中継を行う際に最適なビームパターンを中継器20に通知するようにしており、このDCIに追加情報として、受信機30の歪み補償機能の有無の情報を付加するようにすればよい。例えば、特許文献2のDCIフォーマットの一例として、フォーマットタイプ、宛先、ビーム指示、スロットタイミングを含むものがあるが、これにさらに、歪み補償機能の有無の情報を追加するようにしてよい。
【0033】
第3実施形態では、受信機30から中継器20または送信機10へとMAC-CE(メディアアクセス制御の制御要素)で歪み補償機能がある旨を通知することができる。既知のように、MAC-CEはMAC(メディアアクセス制御)レイヤの制御を行うための制御信号として規定されており、第2実施形態と同様に第3実施形態でも、この制御信号内に受信機30の歪み補償機能の有無の情報を付加するようにすればよい。
【0034】
第4実施形態では、中継器20が電力レベル検出機能を有するものとし、受信機30は歪み補償機能を有する場合に、予め設定された特定レベルの無線信号を中継器20へと送品し、中継器20において電力レベル検出機能により、受信機30から受信した無線信号に特定レベルに対応する所定レベル(距離による減衰等を考慮してこの所定レベルを特定レベルに対応するものとして予め記憶しておくことができる)が存在すると判定された場合に、中継器20において受信機30が歪み補償機能を有する旨の通知を受け取ったものとして判断することができる。ここで、電力レベル検出は、一定期間でのレベル平均を行って判断したり、特定の期間でのレベル平均や移動平均(一秒ごとに三秒前の平均をとるなどの処理)により判断すればよい。
【0035】
なお、以上の第1~第4実施形態のうち、第1~第3実施形態は、中継器20がスマートリピータ機能を有する、すなわち、受信した無線信号(制御情報等)を復調する機能を有することが前提であり、受信機30から受信した無線信号を中継器20において復調することで、受信機30が歪み補償機能を有する旨の情報を得ることができる。第4実施形態は、中継器20における復調機能は必要としない。
【0036】
図4は、無線通信機能を有するコンピュータ装置200の構成の例を示す図であり、無線通信システム100内の送信機10、中継器20及び受信機30の各々は、コンピュータ装置200の全部または一部の構成を有するものとして実現することができる。
【0037】
コンピュータ装置200は、CPU(及びGPU)等で構成されるプロセッサ201と、プロセッサ201にワークエリアを提供する一時記憶装置としてのメモリ202と、二次記憶装置としてのストレージ203と、変復調回路204と、アンテナ205と、増幅器206と、これらの間でデジタルデータを相互に通信可能なように接続するバスBSと、を備える。
【0038】
プロセッサ201は、ストレージ203に記憶されメモリ202に読み込まれた所定のプログラムを実行することによって、以上説明してきた各実施形態における送信機10、中継器20及び受信機30の各々の処理(デジタル処理に関するもの)を実行するものである。すなわち、受信機30ではステップS2の、自身が非線形歪み補償機能を有すると判断した場合に、中継器20へ当該機能を有する旨を通知する処理や、非線形歪み補償処理などを、プロセッサ201が所定プログラムとして実行する。また、中継器20ではステップS1の、予め線形領域で増幅器206を動作させるよう設定する処理と、受信機30からの通知を受けてステップS3で増幅器206を非線形領域も含めて動作させるようにする処理などを、プロセッサ201が所定プログラムとして実行する。
【0039】
アンテナ205は、複数アンテナを含んで構成され、用いるアンテナを切り替えられることで複数のビームパターンを構成可能なものであってもよい。変復調回路204は、アンテナ205から送受信する無線信号の変復調を行う。
【0040】
増幅器206は、本実施形態ではコンピュータ装置200で中継器20を実現する場合に備わる構成であり、アンテナ205から受信する無線信号を入力信号としてこれを増幅した出力信号をアンテナ205から送信させることで、無線信号の増幅を行う。増幅器206は、プロセッサ201からの指示をバスBSを介して受け付けることで、線形領域で動作するか、非線形領域も含めて動作するかの設定を切り替え可能に構成されている。
【0041】
本実施形態の通信システム100によれば、中継器20の電力効率を向上させ、それにより基地局30と中継器20の間のカバレッジを延伸できるので、情報通信技術のインフラ整備に寄与することができる。これにより、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0042】
100…通信システム、10…送信機(ユーザ端末)、20…中継器(無線リピータ)、30…受信機(基地局装置)
図1
図2
図3
図4