(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150830
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】嵌合具及び嵌合具付き袋体
(51)【国際特許分類】
A44B 19/16 20060101AFI20231005BHJP
B65D 33/25 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A44B19/16
B65D33/25 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060134
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000108719
【氏名又は名称】タキロンシーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】田上 直斗
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼川 新
【テーマコード(参考)】
3B098
3E064
【Fターム(参考)】
3B098AA10
3B098AB07
3B098BB02
3E064AA05
3E064BA25
3E064BA27
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA05
3E064HM01
3E064HN13
3E064HP01
3E064HP02
(57)【要約】
【課題】製袋時のしわ発生を抑制し、モノマテリアル化の要請に対応が可能な嵌合具を提供する。また、このような嵌合具を用いた嵌合具付き袋体を提供する。
【解決手段】帯状の第1基材11の表面11aに長手方向に沿って雄側嵌合部12が設けられた雄側嵌合部材10と、帯状の第2基材21の表面21aに長手方向に沿って雌側嵌合部22が設けられた雌側嵌合部材20とを備え、雄側嵌合部12と雌側嵌合部22が着脱自在に嵌合する嵌合具であって、第1基材11及び前記第2基材21はそれぞれ、メイン層と、メイン層の雄側嵌合部12及び雌側嵌合部22とは反対側に設けられたシール層と、メイン層とシール層との間に設けられた中間層と、を備え、第1基材11及び第2基材21は、いずれもエチレンを含むモノマーを重合させて得られるポリエチレン系樹脂からなり、所要の測定方法により求めた剛性が、5~30N/mmである、嵌合具1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の第1基材の表面に長手方向に沿って雄側嵌合部が設けられた雄側嵌合部材と、帯状の第2基材の表面に長手方向に沿って雌側嵌合部が設けられた雌側嵌合部材とを備え、前記雄側嵌合部と前記雌側嵌合部が着脱自在に嵌合する嵌合具であって、
前記第1基材及び前記第2基材は、それぞれ、メイン層と、前記メイン層の前記雄側嵌合部及び前記雌側嵌合部とは反対側に設けられたシール層と、前記メイン層と前記シール層との間に設けられた中間層と、を備え、
前記第1基材及び前記第2基材は、いずれもエチレンを含むモノマーを重合させて得られるポリエチレン系樹脂からなり、
以下の測定方法により求めた剛性が、5~30N/mmである、嵌合具。
[剛性]
雄側嵌合部材を長さ70mmに切り出して試験片とする。
引張試験機にて、得られた試験片の長手方向の両端を把持し、2%伸長時の引張応力を測定する。5点の試験片について引張応力を測定し、測定値の算術平均値を、求める引張応力(剛性)として採用する。剥離強度の測定は、チャック間距離50mm、試験速度1mm/分の条件にて行う。
【請求項2】
前記剛性が、7~15N/mmである、請求項1に記載の嵌合具。
【請求項3】
前記中間層を構成するポリエチレン系樹脂は、密度が930kg/m3以上である、請求項1又は2に記載の嵌合具。
【請求項4】
前記中間層を構成するポリエチレン系樹脂は、125℃以上の融点を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の嵌合具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の嵌合具と、
内容物を収容する袋本体と、を備え、
前記袋本体が、エチレンを含むモノマーを重合させて得られるポリエチレン系樹脂からなり、
前記嵌合具は、前記袋本体の内面に取り付けられている嵌合具付き袋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌合具及び嵌合具付き袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、薬品、雑貨等の様々な分野において、袋本体の開口部近傍の内面に、開口部を開閉自在に封じる嵌合具が取り付けられた嵌合具付き袋体が広く用いられている。嵌合具としては、一対の帯状の基材のそれぞれの対向面に、互いに着脱自在に嵌合する第1嵌合部と第2嵌合部が、それら基材の長手方向に沿ってそれぞれ設けられたものが挙げられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
近年、海洋プラスチック問題を始めとして、使用後のプラスチックの再利用が求められている。包装体においても、リサイクル性向上の観点から、包装体が単一素材で構成される、いわゆる「モノマテリアル化」の取り組みが進んでいる。しかしながら、ポリエチレン系樹脂から構成される嵌合具をポリエチレン系フィルムから構成される袋本体にヒートシールする際、熱収縮が起こり、袋体にしわが入りやすい問題があった。
【0004】
ヒートシール時に袋体にしわが発生する問題を解決するため、従来の嵌合具としては、一対の帯状の基材の一部に、硬度が高い樹脂を用いた層がそれぞれ設けられたものが挙げられる。具体的には、基材の表裏面にポリエチレン又はポリプロピレン樹脂からなる層を用い、表裏面層の間に当該表裏面層よりも高度が高いナイロン又はポリエステル樹脂からなる中間層を用いた嵌合具が挙げられる(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-160147号公報
【特許文献2】特開平06-122460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載されているような従来の嵌合具は、製袋時のしわ発生の抑制に効果はあるが、単一の樹脂で構成されていないため、リサイクル面、特にモノマテリアル化の要請に対応できていない。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、製袋時のしわ発生を抑制し、モノマテリアル化の要請に対応が可能な嵌合具を提供することを課題とする。また、このような嵌合具を用いた嵌合具付き袋体を提供することをあわせて課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を含む。
[1] 帯状の第1基材の表面に長手方向に沿って雄側嵌合部が設けられた雄側嵌合部材と、帯状の第2基材の表面に長手方向に沿って雌側嵌合部が設けられた雌側嵌合部材とを備え、前記雄側嵌合部と前記雌側嵌合部が着脱自在に嵌合する嵌合具であって、
前記第1基材及び前記第2基材は、それぞれ、メイン層と、前記メイン層の前記雄側嵌合部及び前記雌側嵌合部とは反対側に設けられたシール層と、前記メイン層と前記シール層との間に設けられた中間層と、を備え、
前記第1基材及び前記第2基材は、いずれもエチレンを含むモノマーを重合させて得られるポリエチレン系樹脂からなり、
以下の測定方法により求めた剛性が、5~30N/mmである、嵌合具。
[剛性]
雄側嵌合部材を長さ70mmに切り出して試験片とする。
引張試験機にて、得られた試験片の長手方向の両端を把持し、2%伸長時の引張応力を測定する。5点の試験片について引張応力を測定し、測定値の算術平均値を、求める引張応力(剛性)として採用する。剥離強度の測定は、チャック間距離50mm、試験速度1mm/分の条件にて行う。
[2] 前記剛性が、7~15N/mmである、[1]に記載の嵌合具。
[3] 前記中間層を構成するポリエチレン系樹脂は、密度が930kg/m3以上である、[1]又は[2]に記載の嵌合具。
[4] 前記中間層を構成するポリエチレン系樹脂は、125℃以上の融点を有する、[1]乃至[3]に記載の嵌合具。
[5] [1]乃至[4]のいずれかに記載の嵌合具と、
内容物を収容する袋本体と、を備え、
前記袋本体が、エチレンを含むモノマーを重合させて得られるポリエチレン系樹脂からなり、
前記嵌合具は、前記袋本体の内面に取り付けられている嵌合具付き袋体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製袋時のしわ発生を抑制し、モノマテリアル化の要請に対応が可能な嵌合具を提供できる。また、このような嵌合具を用いた嵌合具付き袋体を提供できる。
本発明の嵌合具及び嵌合具付き袋体は、ポリエチレン系樹脂から構成される(すなわち、単一樹脂である)ため、再利用時に嵌合具を袋体から分離することを必要とせず、リサイクル効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態の嵌合具を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の嵌合具付き袋体100を示す概略正面図である。
【
図4】
図4は、袋体100を開口した様子を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[嵌合具]
以下、本発明の嵌合具について、一例を示し、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、実施形態の一例の嵌合具1は、帯状の第1基材11の表面11aに長手方向に沿って雄側嵌合部12が設けられた雄側嵌合部材10と、帯状の第2基材21の表面21aに長手方向に沿って雌側嵌合部22が設けられた雌側嵌合部材20とを備えている。
【0013】
図1及び
図2に示す一例の雄側嵌合部12は、第1基材11の第2基材21との対向面である表面11aから立ち上がる幹部12aと、幹部12aの先端部に設けられ、幹部12aよりも大きい断面略半円形状の頭部12bとを備えている。雌側嵌合部22は、第2基材21の第1基材11との対向面である表面21aから断面円弧状に立ち上がる一対のアーム部22a,22bを備え、それらアーム部22a,22bの内側に凹部22cが形成されている。
雄側嵌合部12と雌側嵌合部22は、雄側嵌合部12の頭部12bが雌側嵌合部22の凹部22cに嵌まることにより、着脱自在に嵌合する。なお、雄側嵌合部12及び雌側嵌合部22の態様は、着脱自在に嵌合するものであればよく、
図1及び
図2の態様には限定されない。
【0014】
図2に示すように、第1基材11は、メイン層13と、メイン層13の雄側嵌合部12及び雌側嵌合部22とは反対側に設けられたシール層14と、メイン層13とシール層14の間に設けられた中間層15と、を備えている。
【0015】
メイン層13を形成する材料は、エチレンを含むモノマーを重合させて得られるポリエチレン系樹脂である。なお、エチレンを含むモノマーは、特に限定されるものではなく、化石燃料由来であってもよいし、バイオマス由来であってもよい。
【0016】
なお、本明細書において、「バイオマス由来」とは、化石燃料由来と区別するために用いる記載であり、「生物由来の有機性資源であって化石燃料を除いたもの」を意味する。化石燃料とは、石炭、石油及び天然ガスが該当する。
【0017】
「ポリエチレン系樹脂」とは、主成分の構成単位としてエチレン由来のポリエチレン構造を有する重合体を意味する。また、「主成分の構成単位」とは、樹脂を構成するすべての構成単位100質量%に対して50質量%超を占める構成単位を意味する。以下の説明では、メイン層13を形成するポリエチレン系樹脂のことを「ポリエチレン(A)」と略称することがある。
【0018】
(ポリエチレン(A))
ポリエチレン(A)は、エチレンに由来する構成単位に加えて、α-オレフィンに由来する構成単位をさらに有していてもよい。α-オレフィンは、バイオマス由来であってもよく、化石燃料由来であってもよい。
【0019】
α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン及び4,4-ジメチル-1-ペンテンからなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。すなわち、ポリエチレン(A)がエチレンに由来する構成単位と、α-オレフィンに由来する構成単位とを有する重合体である場合、ポリエチレン(A)は、エチレンと1種のポリオレフィンとの二元共重合体であってもよく、エチレンと2種のポリオレフィンとの三元共重合体であってもよく、エチレンと3種以上のポリオレフィンとの共重合体であってもよい。
【0020】
さらにポリエチレン(A)は、本発明の効果を損なわない範囲において、エチレン及びα-オレフィン以外の他の単量体に由来する構成単位を有してもよい。なお、ポリエチレン(A)全体における他の単量体の割合は、10%未満であることを要する。
【0021】
他の単量体としては、
酢酸ビニル等のビニルエステル;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等のメタクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;
無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸の無水物;
マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和ジカルボン酸エステル;
(メタ)アクリロニトリル、スチレン等が挙げられる。
【0022】
なお、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルを意味する。
【0023】
ポリエチレン(A)の具体例としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、極低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が挙げられる。これらの中でも、メイン層13に用いるポリエチレン(A)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
メイン層13を形成するポリエチレン(A)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0024】
(ポリエチレン(A)の物性値)
ポリエチレン(A)は、以下のような物性値を有することが好ましい。
【0025】
(メルトフローレート)
ポリエチレン(A)のメルトフローレート(MFR)は、0.5g/10分以上が好ましく、1.0g/10分以上がより好ましく、1.5g/10分以上がさらに好ましい。また、ポリエチレン(A)のMFRは、15g/10分以下が好ましく、12g/10分以下がより好ましく、10g/10分以下がさらに好ましい。
【0026】
ポリエチレン(A)のMFRの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(A)のMFRは、例えば、0.5g/10分以上15g/10分以下が好ましい。
【0027】
ポリエチレン(A)のMFRが前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。ポリエチレン(A)のMFRが前記範囲の上限値以下であれば、取り扱いが容易となる。
【0028】
なお、本実施形態において樹脂のMFRは、JIS K 7210-1に準拠して、温度:190℃、荷重:2.16kgの条件で測定される値である。
【0029】
(密度)
ポリエチレン(A)の密度は、890kg/m3以上が好ましく、905kg/m3以上がより好ましい。また、ポリエチレン(A)の密度は、960kg/m3以下が好ましく、950kg/m3以下がより好ましく、940kg/m3以下がさらに好ましく、935kg/m3以下が特に好ましい。
【0030】
ポリエチレン(A)の密度の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(A)の密度は、例えば、890kg/m3以上940kg/m3以下が好ましい。
【0031】
ポリエチレン(A)の密度が前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。ポリエチレン(A)の密度が前記範囲の上限値以下であれば、本実施形態の嵌合具が柔軟となり、使用感に優れる。
【0032】
なお、本実施形態において樹脂の密度は、JIS K7112:1999(ISO 1183:1987)に準拠して測定される値である。
【0033】
(融点)
メイン層13を形成するポリエチレン(A)の融点は、95℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。またメイン層13を形成するポリエチレン(A)の融点は、140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましい。
【0034】
ポリエチレン(A)の融点の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。メイン層13を形成するポリエチレン(A)の融点は、例えば、95℃以上140℃以下が好ましい。
【0035】
メイン層13を形成するポリエチレン(A)の融点が前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。また、メイン層13を形成するポリエチレン(A)の融点が前記範囲の上限値以下であれば、柔軟性に優れ、取り扱いが容易である。
【0036】
なお、本実施形態においてポリエチレン(A)の融点は、JIS K7121:2012(ISO 3146)に準拠して測定される値である。
【0037】
シール層14を形成する材料は、エチレンを含むモノマーを重合させて得られるポリエチレン系樹脂である。なお、エチレンを含むモノマーは、特に限定されるものではなく、化石燃料由来であってもよいし、バイオマス由来であってもよい。また、ポリエチレン系樹脂としては、上述したポリエチレン(A)を用いてもよい。これらの中でも、シール層14に用いるポリエチレン(A)としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が好ましい。
シール層14を形成するポリエチレン(A)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。また、シール層14を形成するポリエチレン(A)は、メイン層13を形成するポリエチレン(A)と同一の樹脂を用いてもよく、異なっていてもよい。
特に、シール層14を形成するポリエチレン(A)は、低温ヒートシール性に優れることから、低い融点のポリエチレン系樹脂が好ましい。具体的には融点が125℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましい。
【0038】
中間層15を形成する材料は、エチレンを含むモノマーを重合させて得られるポリエチレン系樹脂である。なお、エチレンを含むモノマーは、特に限定されるものではなく、化石燃料由来であってもよいし、バイオマス由来であってもよい。
以下の説明では、中間層15を形成するポリエチレン系樹脂のことを「ポリエチレン(B)」と略称することがある。
【0039】
(ポリエチレン(B))
ポリエチレン(B)は、エチレンに由来する構成単位に加えて、α-オレフィンに由来する構成単位をさらに有していてもよい。α-オレフィンは、バイオマス由来であってもよく、化石燃料由来であってもよい。
【0040】
α-オレフィンとしては、ポリエチレン(A)で列挙したものが挙げられる。すなわち、ポリエチレン(B)がエチレンに由来する構成単位と、α-オレフィンに由来する構成単位とを有する重合体である場合、ポリエチレン(B)は、エチレンと1種のポリオレフィンとの二元共重合体であってもよく、エチレンと2種のポリオレフィンとの三元共重合体であってもよく、エチレンと3種以上のポリオレフィンとの共重合体であってもよい。
【0041】
さらにポリエチレン(B)は、本発明の効果を損なわない範囲において、エチレン及びα-オレフィン以外の他の単量体に由来する構成単位を有してもよい。なお、ポリエチレン(B)全体における他の単量体の割合は、10%未満であることを要する。
【0042】
他の単量体としては、ポリエチレン(A)で列挙したものが挙げられる。
【0043】
ポリエチレン(B)の具体例としては、例えば、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられる。これらの中でも、中間層15に用いるポリエチレン(B)としては、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
中間層15を形成するポリエチレン(B)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0044】
(ポリエチレン(B)の物性値)
ポリエチレン(B)は、以下のような物性値を有することが好ましい。
【0045】
(メルトフローレート)
ポリエチレン(B)のメルトフローレート(MFR)は、4.0g/10分以上が好ましく、5.0g/10分以上がより好ましく、6.5g/10分以上がさらに好ましい。また、ポリエチレン(B)のMFRは、25g/10分以下が好ましく、20g/10分以下がより好ましく、15g/10分以下がさらに好ましい。
【0046】
ポリエチレン(B)のMFRの上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(B)のMFRは、例えば、6.5g/10分以上15g/10分以下が好ましい。
【0047】
ポリエチレン(B)のMFRが前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具がカールするのを抑制する。ポリエチレン(B)のMFRが前記範囲の上限値以下であれば、取り扱いが容易となる。
【0048】
(密度)
ポリエチレン(B)の密度は、ポリエチレン(B)がポリエチレンである場合、930kg/m3以上が好ましく、950kg/m3以上がより好ましい。また、ポリエチレン(B)の密度は、1000kg/m3以下が好ましく、970kg/m3以下がより好ましく、965kg/m3以下がさらに好ましい。
【0049】
ポリエチレン(B)の密度の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(B)の密度は、例えば、950kg/m3以上970kg/m3以下が好ましい。
【0050】
ポリエチレン(B)の密度が前記範囲の下限値以上であれば、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。ポリエチレン(B)の密度が前記範囲の上限値以下であれば、本実施形態の嵌合具が柔軟となり、使用感に優れる。
【0051】
(融点)
ポリエチレン(B)の融点は、120℃以上が好ましく、128℃以上がより好ましい。またポリエチレン(B)の融点は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。
【0052】
ポリエチレン(B)の融点の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(B)の融点は、例えば、128℃以上150℃以下が好ましい。
【0053】
ポリエチレン(B)の融点が前記範囲の下限値以上であれば、充分な剛性を有し、本実施形態の嵌合具を成形しやすい。また、ポリエチレン(B)の融点が前記範囲の上限値以下であれば、嵌合具が十分な柔軟性及び靭性を有する。
【0054】
(曲げ弾性率)
ポリエチレン(B)の曲げ弾性率は、950MPa以上が好ましく、1000MPa以上がより好ましい。またポリエチレン(B)の曲げ弾性率は、1500MPa以下が好ましく、1300MPa以下がより好ましい。
【0055】
ポリエチレン(B)の曲げ弾性率の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(B)の曲げ弾性率は、例えば、1000MPa以上1300MPa以下が好ましい。
【0056】
ポリエチレン(B)の曲げ弾性率が前記範囲の下限値以上であれば、嵌合具が充分な剛性を有する。また、ポリエチレン(B)の曲げ弾性率が前記範囲の上限値以下であれば、嵌合具が充分な柔軟性及び靭性を有する。
【0057】
なお、本実施形態においてポリエチレン(B)の曲げ弾性率は、JIS K 7171に準拠して測定される値である。
【0058】
(引張降伏応力)
ポリエチレン(B)の引張降伏応力は、20MPa以上が好ましく、25MPa以上がより好ましい。またポリエチレン(B)の引張降伏応力は、40MPa以下が好ましく、35MPa以下がより好ましい。
【0059】
ポリエチレン(B)の引張降伏応力の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。ポリエチレン(B)の引張降伏応力は、例えば、25MPa以上35MPa以下が好ましい。
【0060】
ポリエチレン(B)の引張降伏応力が前記範囲の下限値以上であれば、嵌合具が充分な剛性を有する。また、ポリエチレン(B)の引張降伏応力が前記範囲の上限値以下であれば、嵌合具が充分な柔軟性及び靭性を有する。
【0061】
なお、本実施形態においてポリエチレン(B)の引張降伏応力は、JIS K 7161:2014(ISO527-1)に準拠して測定される値である。
【0062】
メイン層13、シール層14及び中間層15には、必要に応じて安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、成形助剤等の公知の添加剤が含まれ得る。
【0063】
第1基材11の幅W1は、袋体に熱溶着したときに充分なシール強度が得られやすいことから、2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。第1基材11の幅W1は、柔軟性に優れ、取り扱いやすいことから、60mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましい。第1基材11の幅W1の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば2mm以上60mm以下が好ましい。
【0064】
第1基材11の厚さは、剛性と柔軟性のバランスが良好であることから、0.01mm以上が好ましく、0.12mm以上がより好ましい。第1基材11の厚さは、柔軟性に優れ、使用感に優れることから、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましい。第1基材11の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.01mm以上0.4mm以下が好ましい。
【0065】
メイン層13の厚さは、充分な剛性を有することから、0.005mm以上が好ましく、0.015mm以上がより好ましい。メイン層13の厚さは、柔軟性に優れ、取り扱いやすいことから、0.3mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。メイン層13の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.005mm以上0.3mm以下が好ましい。
【0066】
シール層14の厚さは、袋体に熱溶着したときに充分なシール強度が得られることから、0.003mm以上が好ましく、0.008mm以上がより好ましく、0.01mm以上がさらに好ましい。シール層14の厚さは、嵌合具が柔軟となり、使用感に優れることから、0.2mm以下が好ましく、0.1mm以下がより好ましく、0.08mm以下がさらに好ましい。シール層14の厚さの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば0.003mm以上0.2mm以下が好ましい。
【0067】
中間層15の厚さは、0.02mm以上が好ましく、0.03mm以上がより好ましく、0.05mm以上がさらに好ましい。また、中間層15の厚さは、0.4mm以下が好ましく、0.3mm以下がより好ましく、0.25mm以下がさらに好ましい。第1中間層16の厚さの上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0068】
中間層15の厚さが下限値以上であれば、嵌合具を袋体に熱溶着したときに、充分なシール強度が得られるため、製袋時のしわの発生を抑制できる。中間層15の厚さが上限値以下であれば、嵌合具が柔軟となり、使用感に優れ、また、良好なポイントシール性(装体のサイドシール部を形成する際に嵌合具を潰すポイントシール工程において、潰した部分にピンホールが発生することを抑制する)が得られる。
【0069】
第2基材21は、第1基材11と同様の構成であり、メイン層23と、メイン層23の雄側嵌合部12及び雌側嵌合部22とは反対側に設けられたシール層24と、メイン層23とシール層24の間に設けられた中間層25と、を備えている。
【0070】
メイン層23、シール層24及び中間層25を形成する材料としては、特に限定されず、メイン層13、シール層14及び中間層15を形成する材料として例示したものと同じものを例示でき、好ましい態様も同じである。
【0071】
メイン層23、シール層24及び中間層25には、必要に応じて安定剤、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、成形助剤等の公知の添加剤が含まれ得る。
メイン層13、シール層14及び中間層15を形成する材料と、メイン層23、シール層24及び中間層25を形成する材料とは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0072】
第2基材21の好ましい幅W2は、第1基材11の好ましい幅W1と同様である。第1基材11の幅W1と第2基材21の幅W2は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
第2基材21、メイン層23、シール層24及び中間層25の好ましい厚さは、第1基材11、メイン層13、シール層14及び中間層15の好ましい厚さと同様である。第1基材11、メイン層13、シール層14及び中間層15の厚さと、第2基材21、メイン層23、シール層24及び中間層25の厚さは、それぞれ同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
嵌合具全体におけるメイン層、シール層及び中間層の質量割合は、嵌合具の総質量に対して、メイン層が10質量%以上90質量%以下、シール層が5質量%以上30質量%以下、中間層が5質量%以上60質量%以下(合計が100質量%)であることが好ましく、メイン層が50質量%以上85質量%以下、シール層が8質量%以上20質量%以下、中間層が10質量%以上45質量%以下(合計が100質量%)であることがより好ましい。メイン層、シール層及び中間層の質量割合が前記範囲内であれば、良好な成形性を有し、熱収縮を抑制することが容易になる。
【0074】
本実施形態の嵌合具1は、以下に記載した評価方法により求めた剛性が、5N/mm以上が好ましく、6N/mm以上がより好ましく、7N/mm以上がさらに好ましい。また、上述の剛性は、30N/mm以下が好ましく、25N/mm以下がより好ましく、15N/mm以下がさらに好ましい。
嵌合具1における上述の剛性の上限値と下限値とは、任意に組み合わせることができる。嵌合具1における上述の剛性は、5N/mm以上30N/mm以下とすることができる。
嵌合具1における上述の剛性が、上記範囲内であると、嵌合具の剛性が十分となり、後述する嵌合具付き袋体に適用した際、製袋時のしわの発生を抑制できる。
【0075】
[剛性]
雄側嵌合部材を長さ70mmに切り出して試験片とする。
引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、VGS5E)にて、得られた試験片の長手方向の両端を把持し、2%伸長時の引張応力を測定する。5点の試験片について引張応力を測定し、測定値の算術平均値を、求める引張応力として採用する。剥離強度の測定は、チャック間距離50mm、試験速度1mm/分の条件にて行う。
【0076】
また、本実施形態の嵌合具1は、嵌合具全体の融点が120℃以上であり、その融解熱量を100%とした際、120℃未満の温度範囲に生じるその他のピークにおける融点熱量が20%以下であることが好ましい。
嵌合具1において、上述したその他のピークにおける融点熱量が20%以下であると、充分な剛性を有し、成形性に優れる。
【0077】
また、本実施形態の嵌合具1は、ポリエチレン(B)の密度が、ポリエチレン(A)の密度よりも大きい。具体的には、ポリエチレン(B)の密度が、ポリエチレン(A)の密度よりも、1.01倍以上大きいことが好ましく、1.05倍以上大きいことがより好ましい。
【0078】
ポリエチレン(B)の密度が、ポリエチレン(A)の密度よりも1.01倍以上大きければ、本実施形態の嵌合具1を袋体に熱溶着したときに、充分なシール強度が得られるため、製袋時のしわ発生を抑制できる。
【0079】
また、本実施形態の嵌合具1は、ポリエチレン(B)の融点が、ポリエチレン(A)の融点よりも高い。具体的には、ポリエチレン(B)の融点が、ポリエチレン(A)の融点よりも、1.01倍以上高いことが好ましく、1.07倍以上高いことがより好ましい。
【0080】
ポリエチレン(B)の融点が、ポリエチレン(A)の融点よりも1.01倍以上高ければ、本実施形態の嵌合具1が充分な剛性を有し、かつ低温シール性を有するため、製袋時のしわ発生を抑制できる。
【0081】
(製造方法)
嵌合具1の製造方法としては、ポリエチレン(A)、ポリエチレン(B)を使用する以外は特に限定されず、公知の方法を採用できる。
【0082】
例えば、1種以上のポリエチレン系樹脂を適宜必要な割合で混合し、口径が50mmφ、L/Dが30の単軸押出機を用いて150-200℃(配合する樹脂の融点より40~50℃高い温度)にて溶融混練することで、ポリエチレン(A)が得られる。
【0083】
また、1種以上のポリエチレン系樹脂を適宜必要な割合で混合し、口径が30mmφ、L/Dが30の単軸押出機を用いて150-200℃(配合する樹脂の融点より40~50℃高い温度)にて溶融混練することで、ポリエチレン(B)が得られる。
【0084】
得られたポリエチレン(A)とポリエチレン(B)とを、雄側嵌合部材、又は雌側嵌合部材の複合異形ダイに導き、共押出し成形し、水冷又は空冷にて冷却することで嵌合具を製造することができる。得られた嵌合具は、巻取機にて巻取ることができる。
【0085】
また、雄側嵌合部材10は、ポリエチレン(A)を用いてメイン層13と雄側嵌合部12とを一体的に押出成形し、得られた成形体の第1基材11の他方の面11bに、ポリエチレン(B)製のラミネートフィルムを熱ラミネートして中間層15を設けることで形成してもよい。
【0086】
また、雌側嵌合部材20は、ポリエチレン(A)を用いてメイン層23と雌側嵌合部22とを一体的に押出成形し、得られた成形体の第2基材21の他方の面21bに、ポリエチレン(B)製のラミネートフィルムを熱ラミネートして中間層25を設けることで形成してもよい。
【0087】
以上のような嵌合具1は、形成材料として、ポリエチレン系樹脂からなるポリエチレン(A)及びポリエチレン(B)を用いる。これにより、嵌合具1は、単一の樹脂(ポリエチレン系樹脂)で構成されているため、リサイクルにおいてモノマテリアル化の要請に対応できる。
【0088】
[嵌合具付き袋体]
図3は、本実施形態の嵌合具付き袋体100を示す概略正面図である。以下の説明では、嵌合具付き袋体100を、単に「袋体100」と略称することがある。
【0089】
図3に示すように、本実施形態の袋体100は、袋本体50と、袋本体50内の上部の内面に取り付けられた嵌合具1とを具備している。
【0090】
袋本体50は、正面からの視野において矩形を呈する。嵌合具1は、袋本体50の上部50a側の内面において、袋本体50の短手方向に伸びて設けられている。なお、袋本体50の形状は矩形には限定されない。
【0091】
袋本体50は、不図示の内容物を封入した状態で密封されている。袋本体50は、第1のフィルム材52と第2のフィルム材54を重ね合わせ、四方の周縁部56を全てヒートシールすることで得られる。周縁部56においては、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54と共に、嵌合具1の両端がヒートシールされている。
【0092】
第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54は、ヒートシールにより嵌合具1を溶着できるものであればよく、シーラント層のみからなる単層フィルムや、内面側からシーラント層と基材層を少なくとも有する積層フィルムを用いることができる。
【0093】
積層フィルムが有する基材層としては、ポリエチレン系樹脂が用いられ、例えばポリエチレン(A)またはポリエチレン(B)に記載の樹脂が用いられる。基材層に用いられるポリエチレン系樹脂は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0094】
積層フィルムが有するシーラント層としては、ポリエチレン系樹脂が用いられ、例えばポリエチレン(A)またはポリエチレン(B)に記載の樹脂が用いられる。
すなわち、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54は、異なるポリエチレン系樹脂の積層であっても良い。
【0095】
積層フィルムには、バリア層等の機能層を設けてもよい。
【0096】
本実施形態の嵌合具付き袋体100では、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54のシーラント層として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。これにより、嵌合具付き袋体100は、単一の樹脂(ポリエチレン系樹脂)で構成されているため、リサイクルにおいてモノマテリアル化の要請に対応できる。さらに嵌合具を低温でヒートシールすることが可能であり、しわの発生を抑制することができる。
【0097】
袋本体50は、嵌合具1よりも上部50aの側に、嵌合具1に沿って切断補助線58が設けられている。
【0098】
切断補助線58は、袋本体50の切断を補助するための加工が線状に施された部分である。切断補助線58としては、例えば、第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54における切断補助線58の部分に設けられた弱化線が挙げられる。弱化線は、フィルム材に周囲と比べて薄肉化した部分を設けることで形成することができる。その他、弱化線は、ミシン目や、列状に形成された細孔によっても形成することができる。
【0099】
また、切断補助線58は、弱化線には限定されず、ハサミやカッター等で切断する位置を示す、印刷等で形成した線であってもよい。
【0100】
周縁部56における切断補助線58の端部には、ノッチ60が形成されている。ノッチ60の形状は、特に限定されず、三角状又は半円形状の切り欠きを採用することができる。また、ノッチ60は、周縁部56に設けられた切込みであってもよい。
【0101】
図4は、袋体100を開口した様子を示す概略斜視図である。袋体100は、ノッチ60から切断補助線58に沿って袋本体50の上部を切断して除去することで、上部にヒートシールされていない端部50bを設けることができる。袋体100は、端部50bを開口して開口部62を形成することで、開封することができる。
【0102】
袋体100に形成した開口部62は、嵌合具1の雄側嵌合部材10と雌側嵌合部材20とを着脱することで、繰り返し開閉できる。
【0103】
袋体100は、嵌合具1を用いる以外は公知の方法で製造できる。
【0104】
本実施形態の袋体100は、嵌合具1を用いているため、袋本体50の内面に配置される嵌合具においてべたつきが抑制される。
【0105】
また、本実施形態の袋体100は、嵌合具1を用いているため、周縁部56において第1のフィルム材52及び第2のフィルム材54と、嵌合具1とをまとめてヒートシールした際、シール箇所にシワや穴あき等の不具合が生じにくく、良好な仕上がりとなり易い。
【0106】
以上のような構成の嵌合具1によれば、リサイクル時にモノマテリアル化の要請に対応が可能となる。
また、以上のような構成の嵌合具付き袋体100によれば、上述の嵌合具1を用いることで、製袋時のしわ発生を抑制し、モノマテリアル化の要請に対応が可能となる。
【0107】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例0108】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0109】
本実施例においては、下記表1に記載の樹脂を用いた。
【0110】
【0111】
樹脂LDPE1、2、及び樹脂LLDPE1~6は、本発明における「ポリエチレン(A)」に該当する。
また、樹脂HDPE1~6は、本発明における「ポリエチレン(B)」に該当する。
【0112】
各樹脂について、MFR、密度、融点、曲げ弾性率及び引張降伏応力は、メーカ公称値である。
MFRは、JIS K 7210-1に準拠し、荷重2.16kgで測定した値である。MFRの測定温度は、エチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂(PP1,PP2)は230℃とした。
【0113】
(実施例1~6、比較例1~4)
メイン層、シール層及び中間層それぞれについて、表1に記載の各樹脂を秤量し、下記表2に記載の割合で混合して、ポリエチレン(A)及びポリエチレン(B)を用意した。
【0114】
メイン層を形成するための樹脂材料として、メイン層の配合であるポリエチレン(A)を、口径が50mmφ、L/Dが30の単軸押出機を用いて170℃で溶融混練した。
シール層を形成するための樹脂材料として、シール層の配合であるポリエチレン(A)を、口径が30mmφ、L/Dが30の単軸押出機を用いて170℃で溶融混練した。
中間層を形成するための樹脂材料として、ポリエチレン(B)を、口径が30mmφ、L/Dが30の単軸押出機を用いて190℃にて溶融混練した。
【0115】
実施例1~6については、溶融混練した溶融樹脂を、それぞれ雄側嵌合部材、雌側嵌合部材に対応したダイ形状を有する複合異形ダイに供給して、共押出成形した。得られた成形体を、水槽にて冷却固化させた後、巻取機にて巻取り、実施例1~6の嵌合具を得た。
【0116】
得られた嵌合具の雄側嵌合部材は、雄側嵌合部とメイン層とをあわせた構成の樹脂量(樹脂量X)と、中間層の樹脂量(樹脂量Y)と、シール層の樹脂量(樹脂量Z)との比が、[樹脂量X]:[樹脂量Y]:[樹脂量Z]=60:30:10であった。雌側嵌合部材についても、雌側嵌合部とメイン層とをあわせた構成の樹脂量と、中間層の樹脂量と、シール層の樹脂量との比が雄側嵌合部材と同様であった。
【0117】
得られた嵌合具は、雄側嵌合部材、雌側嵌合部材共に、基材(第1基材、第2基材)の幅13mm、第1基材及び第2基材のそれぞれの総厚(嵌合部は含まない)が0.15mmであり、基材の厚さ55μm、中間層の厚さ65μm、及びシール層の厚さ30μmであった。
【0118】
比較例1~3については、表2に示すポリエステル(A)を、メイン層は口径が50mmφ、L/Dが30の押出機を用いて、また、シール層は口径が30mmφ、L/Dが30の押出機を用いて、150-200℃(配合する樹脂の融点より40~50℃高い温度)にて溶融混練した。雄側嵌合部材、雌側嵌合部材に対応したダイ形状を有する複合異形ダイに供給して、共押出成形した。得られた成形体を、水槽にて冷却固化させた後、巻取機にて巻取り、比較例1~3の嵌合具を得た。
【0119】
比較例4については、表2に示すポリプロピレン系樹脂(PP1,PP2)を、メイン層は口径が50mmφ、L/Dが30の押出機を用いて190℃にて溶融混練し、シール層は口径が30mmφ、L/Dが30の押出機を用いて170℃にて溶融混練した。雄側嵌合部材、雌側嵌合部材に対応したダイ形状を有する複合異形ダイに供給して、共押出成形した。得られた成形体を、水槽にて冷却固化させた後、巻取機にて巻取り、比較例4の嵌合具を得た。
【0120】
<評価方法>
得られた嵌合具については、以下の方法で評価した。
【0121】
[1.嵌合具の融点]
嵌合具10mgを採取して試料とし、アルミパンに入れてDSC(島津製作所製:DSC-60 Plus)で融点を測定した。測定は、窒素雰囲気中で行い、0-170℃の範囲で昇温速度:10℃/minで行った。
【0122】
[2.リサイクル性]
リサイクル性について、以下の基準で評価した。
(判断基準)
〇:モノマテリアル化の要請に対応できる。
×:モノマテリアル化の要請に対応できない。
【0123】
[3.しわの入りにくさ]
嵌合具を直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる単層フィルムにラミネートして嵌合具付き袋体を作成した。
製袋時のしわの入りにくさについて、以下の基準で評価した。
〇:嵌合具付き袋体にしわが入っていることが目視で確認できる。
×:嵌合具付き袋体にしわが入っていることが目視で確認できない。
【0124】
[4.剛性]
剛性は、引張応力を測定して評価した。
【0125】
雄側嵌合部材を長さ70mmに切り出して試験片とした。
引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、VGS5E)にて、得られた試験片の長手方向の両端を把持し、2%伸長時の引張応力を測定した。5点の試験片について引張応力を測定し、測定値の算術平均値を、求める引張応力として採用した。剥離強度の測定は、チャック間距離50mm、試験速度1mm/分の条件にて行った。
【0126】
各評価結果を表2に示す。
【0127】
【0128】
評価の結果、実施例1~6の嵌合具は、モノマテリアル化の要請に対応可能であり、リサイクル性に優れる。
【0129】
また、実施例1~6の嵌合具は、十分な剛性を有しており、製袋時のしわ発生を抑制できることが分かった。
【0130】
対して、比較例1~3の嵌合具は、リサイクル性に優れるものの、剛性が不足しており、嵌合具付き袋体の製造時にしわ発生を抑制できなかった。
【0131】
比較例4の嵌合具は、十分な剛性を有しており、製袋時のしわ発生を抑制できるものの、モノマテリアル化の要請に対応できず、リサイクル性に劣った。
【0132】
以上の結果より、本発明が有用であることが分かった。
1…嵌合具、10…雄側嵌合部材、11…第1基材、11a…表面、12…雄側嵌合部、13…メイン層、14…シール層、15…中間層、20…雌側嵌合部材、21…第2基材、21a…表面、22…雌側嵌合部、23…メイン層、24…シール層、25…中間層、50…袋本体、100…嵌合具付き袋体。