IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧 ▶ エナジーサポート株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-マイクログリッドシステム 図1
  • 特開-マイクログリッドシステム 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150834
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】マイクログリッドシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20231005BHJP
   H02J 3/16 20060101ALI20231005BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H02J3/46
H02J3/16
H02J3/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060141
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良幸
(72)【発明者】
【氏名】疋嶋 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】豊田 靖臣
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA04
5G066DA06
5G066FB01
5G066FB11
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】投資コストの抑制されたマイクログリッドシステムを提供する。
【解決手段】マイクログリッドシステム100は、高圧配電線3に接続されているとともに有効電力を供給する蓄電池装置(有効電力供給装置)40と、高圧配電線3に接続されているとともに無効電力を供給する無効電力補償装置30を備えている。蓄電池装置40と無効電力補償装置30を併用することにより、マイクログリッドシステム100の構築コストを低減する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統内に形成されているマイクログリッドシステムであって、
高圧配電系に接続されているとともに有効電力を供給する有効電力供給装置と、
高圧配電系に接続されているとともに無効電力を供給する無効電力補償装置と、
を備えたマイクログリッドシステム。
【請求項2】
さらに、高圧配電系に高圧進相コンデンサが接続されている請求項1に記載のマイクログリッドシステム。
【請求項3】
有効電力供給装置が蓄電池装置である請求項1または2に記載のマイクログリッドシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、マイクログリッドシステムに関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、発電装置と蓄電池装置を備えたマイクログリッドシステムが開示されている。特許文献1のマイクログリッドシステムは、発電装置として、熱機関発電装置と自然エネルギー発電装置を備えている。特許文献1では、熱機関発電装置と自然エネルギー発電装置の動作タイミングを制御し、熱機関発電装置を一定電力で発電させ、熱機関発電装置の燃費効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-015793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような発電装置、蓄電池装置を備えたマイクログリッドシステムでは、需要家に確実に電力を供給するため、発電装置、蓄電池装置等を、通常必要な容量よりも大きく設計することが必要である。特に、モータ等の動力負荷の始動時は、定格電量の数倍の電流が配電系統に流れることがある。このような場合に備え、発電装置、蓄電池装置等の容量について余裕をもって設計することが必要となり、通常必要な容量よりも大容量の装置を選定することが必要となる。その結果、大型装置を選定することが必要となり、設備設置スペースを確保する費用、設備費用、マイクログリッドシステム構築のための投資コストが増大する。本明細書は、投資コストの抑制されたマイクログリッドシステムを実現するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示するマイクログリッドシステムは、配電系統内に形成されている。このマイクログリッドシステムは、高圧配電系に接続されているとともに有効電力を供給する有効電力供給装置と、高圧配電系に接続されているとともに無効電力を供給する無効電力補償装置を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施例のマイクログリッドシステムを示す。
図2】第2実施例のマイクログリッドシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で開示するマイクログリッドシステムは、発電所からの電力が供給される配電系統内に形成されている。マイクログリッドシステムは、開閉器によって、発電所からの配電線に接続・分離することができる。そのため、マイクログリッドシステムが発電所からの配電線に接続されている間、マイクログリッド内の需要家は、発電所からの電力を利用することができる。マイクログリッドシステムが発電所からの配電線から分離されると、マイクログリッド内の需要家は、マイクログリッド内で発電した電力を利用することができる。
【0008】
マイクログリッドシステムは、有効電力供給装置と、無効電力補償装置を備えている。有効電力供給装置は、マイクログリッド内の高圧配電系に接続されている。すなわち、有効電力供給装置は、発電所からの配電線に接続・分離する開閉器より下流に設けられている。有効電力供給装置の一例として、発電装置、蓄電池装置が挙げられる。また、無効電力補償装置も、マイクログリッド内の高圧配電系に接続されている。無効電力補償装置の一例として、SVC、SVG、TSC、TCR等が挙げられる。
【0009】
無効電力補償装置は、高圧配電系の電圧が所定範囲外になったときに、高圧配電系に無効電力を供給し、高圧配電系の電圧を所定範囲内に回復することができる。例えば、モータ等の動力負荷の始動時は、一時的に高圧配電系に大電流が流れ、高圧配電系の電圧が所定範囲外に低下することがある。このような場合に、無効電力補償装置から高圧配電系に無効電力を供給することにより、高圧配電系の電圧を所定範囲内に維持することができる。また、マイクログリッドシステムは、マイクログリッド内の高圧配電系に接続されている高圧進相コンデンサを備えていてもよい。高圧進相コンデンサも、高圧配電系に電圧を供給し、高圧配電系の電圧を所定範囲内に維持することができる。高圧進相コンデンサを用いることにより、さらに容量の小さな(小型の)無効電力補償装置を用いることができる。
【0010】
上記したように、マイクログリッド内に無効電力補償装置を配置することによって、高圧配電系の電圧を所定範囲内に維持することができる。典型的に、モータ等の動力負荷の始動時は、通常運転のときよりも高圧配電系統に大電流(通常時の数倍)が流れる。そのため、動力負荷の始動時は、高圧配電系の電圧が低下しやすい。従来、マイクログリッドを設計する際は、動力負荷の始動時に安定して電力を供給するため、大容量の有効電力供給装置(発電装置等)を採用している。しかしながら、大容量の有効電力供給装置は、通常運転時は過剰性能であるといえる。上記マイクログリッドシステムは、有効電力供給装置と無効電力補償装置を併用することにより、動力負荷の通常運転時に合わせた有効電力供給装置を選択することができる。そのため、上記マイクログリッドシステムは、小容量(小型)の有効電力供給装置を使用することができる。その結果、マイクログリッドシステムを構築するための設置スペース費用、設備費用を低減することができる。
【実施例0011】
(第1実施例)
図1を参照し、マイクログリッドシステム100について説明する。マイクログリッドシステム100は、発電所2から電力が供給される高圧配電線3に接続されている蓄電池装置40と、無効電力補償装置30を備えている。蓄電池装置40は、有効電力供給装置の一例である。高圧配電線3には、電力の供給をオン・オフする自動開閉器5,7が設けられている。蓄電池装置40と無効電力補償装置30は、自動開閉器5,7間で高圧配電線3に接続されている。そのため、自動開閉器5,7間にマイクログリッド10が形成されている。マイクログリッド10内の需要家は、自動開閉器5,7が開放(電力供給オフ)されても、蓄電池装置40からの電力供給により、電気機器を使用することができる。マイクログリッド10内において、低圧配電線12a,14a及び16aが高圧配電線3に接続されており、需要家は、低圧配電線12a,14a及び16aより電力供給を受ける。
【0012】
高圧配電線3は、3本の高圧配線(3相の配線)4,6,8を有している。低圧配電線12a,14a及び16aは、第1配線(第1相)4,第2配線(第2相)6及び第3配線(第3相)8のうちの2相に接続されている。低圧配電線12a,14a及び16aは、接続している高圧配線に応じて、3グループに区別することができる。具体的には、第1グループ16の低圧配線(第1低圧配電線16a)は、第1配線4及び第2配線6に接続されている。第2グループ14の低圧配線(第2低圧配電線14a)は、第2配線6及び第3配線8に接続されている。第3グループ12の低圧配線(第3低圧配電線12a)は、第1配線4及び第3配線8に接続されている。
【0013】
高圧配電線3と各低圧配電線12a,14a及び16aの間には、それぞれ区分開閉器(PAS)20が設けられている。区分開閉器20は、需要家25内で電気事故が発生した際、高圧配電線3と各低圧配電線12a,14a及び16aの電路を開放する。区分開閉器20と需要家25の間に、受電盤22が設けられている。典型的に、受電盤22は、需要家25の敷地内に配置されている。受電盤22は、ヒューズ付開閉器(LBS)23と、変圧器(ポールトランス)Trを備えている。ヒューズ付開閉器23は、需要家25で用いられる負荷24において電気事故が発生したときに、自動開放し、波及事故を防ぐ。変圧器Trは、高圧配電線3を低圧に変換して、低圧配電線12a,14a及び16aに供給する。
【0014】
マイクログリッドシステム100では、通常は、需要家25は、発電所2から供給される電力を利用する。発電所2から電力供給が行われている間、蓄電池装置40に電力が充電される。災害、電気事故等が発生すると、自動開閉器5,7が開放され、マイクログリッド10内には発電所2からの電力供給が停止する。自動開閉器5,7が開放されると、蓄電池装置40より各需要家25への電力供給が開始される。その後、発電所2からの電力供給が再開すると、自動開閉器5,7が投入され、蓄電池装置40からの電力供給が停止する。
【0015】
蓄電池装置40から高圧配電線3に電力が供給されている間、無効電力補償装置30は、高圧配電線3の電圧を監視する。無効電力補償装置30は、高圧配電線3の電圧が所定範囲外になると、高圧配電線3に無効電力を供給し、高圧配電線3の電圧を所定範囲内に回復する。無効電力補償装置30は、高圧配電線3の電圧が所定範囲外になると、即座に電圧を所定範囲内に回復させることができる。
【0016】
蓄電池装置40の容量は、各需要家25が通常使用する電力に応じて選定される。そのため、蓄電池装置40から電力供給が行われている間、通常は、高圧配電線3の電圧は所定範囲内に維持される。しかしながら、例えばモータ等の負荷24が高圧配電線3に直入接続されてる場合、負荷24の始動時は、高圧配電線3に定格電流の数倍の電流が流れる。そのため、負荷24の始動時に、高圧配電線3の電圧が所定範囲より低下することがある。このような場合に、無効電力補償装置30から高圧配電線3に無効電力が供給され、高圧配電線3の電圧が所定範囲内に回復する。
【0017】
上述したように、蓄電池装置40に代えて、負荷24の始動時にも対応し得る大容量(通常使用する電力より過剰)の蓄電池装置40を配置すると、マイクログリッドシステム100の構築コストが増大する。そのため、蓄電池装置40と無効電力補償装置30を併用することにより、マイクログリッドシステム100の構築コストを低減することができる。
【0018】
(第2実施例)
図2を参照し、マイクログリッドシステム100aについて説明する。マイクログリッドシステム100aは、マイクログリッドシステム100の変形例であり、マイクログリッド10a内の構造が、マイクログリッドシステム100のマイクログリッド10と異なる。以下の説明では、マイクログリッドシステム100aについて、マイクログリッドシステム100と共通する特徴は、マイクログリッドシステム100に付した参照番号と同じ参照番号を付すことにより説明を省略することがある。
【0019】
高圧配電線3に、蓄電池装置40と、高圧進相コンデンサ42と、無効電力補償装置30aを備えている。無効電力補償装置30aは、無効電力補償装置30より小型であり、容量が小さい。すなわち、無効電力補償装置30aは、無効電力補償装置30よりも低コストである。マイクログリッドシステム100aでは、高圧配電線3の電圧が所定範囲外になると、高圧進相コンデンサ42と無効電力補償装置30aが、高圧配電線3に無効電力を供給する。高圧進相コンデンサ42は、無効電力補償装置30と無効電力補償装置30aの容量の差分の無効電力を高圧配電線3に供給する。例えば、無効電力補償装置30と無効電力補償装置30aの容量差が100kvarの場合、高圧進相コンデンサ42として、容量100kvarのものを用いる。高圧進相コンデンサ42を用いることにより、マイクログリッドシステム100aの構築コストをさらに低減することができる。
【0020】
(他の変形例)
上記実施例では、有効電力供給装置として蓄電池装置を用いる例について説明したが、蓄電池装置に代えて、あるいは、蓄電池装置に加えて、化石燃料を用いる発電装置(発電機)を用いてもよい。また、マイクログリッド内の高圧配電線に、自然エネルギー発電装置(太陽光発電装置、風力発電装置等)が接続されていてもよい。
【0021】
上記第2実施例において、高圧進相コンデンサを削除し、無効電力補償装置を力率一定で制御してもよい。この場合、無効電力補償装置は、力率計算結果に対し、高圧進相コンデンサの容量分だけ高圧配電線に遅相無効電力を供給してよい。
【0022】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0023】
3:高圧配電線
30:無効電力補償装置
40:有効電力供給装置
100:マイクログリッドシステム
図1
図2