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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150843
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】改質器
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20231005BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20231005BHJP
   F02M 27/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C01B3/38
B01J35/08
F02M27/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060158
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊能 悟
(72)【発明者】
【氏名】細江 広記
(72)【発明者】
【氏名】飯室 昭宏
【テーマコード(参考)】
4G140
4G169
【Fターム(参考)】
4G140EA02
4G140EA06
4G140EB12
4G140EB24
4G140EC08
4G169AA03
4G169AA11
4G169BC31
4G169BC35
4G169BC68
4G169BC70
4G169CC17
4G169EA04X
4G169FA02
(57)【要約】
【課題】熱源を容易に確保できる改質器を提供する。
【解決手段】改質器は、内燃機関(12)と、触媒(25b)を介して内燃機関(12)の排気を排出する排気管(25a)と、を有する車両(10)に設けられる改質器において、車両(10)は、水および水素化燃料を燃料とし、排気管(25a)の外側を覆う外側管(53)を有し、触媒(25b)の周囲において排気管(25a)と外側管(53)との間に空間(S)を形成し、空間(S)には、水素化燃料を改質する改質用触媒が配置される、ことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(12)と、触媒(25b)を介して前記内燃機関(12)の排気を排出する排気管(25a)と、を有する車両(10)に設けられる改質器において、
前記車両(10)は、水および水素化燃料を燃料とし、
前記排気管(25a)の外側を覆う外側管(53)を有し、前記触媒(25b)の周囲において前記排気管(25a)と前記外側管(53)との間に空間(S)を形成し、
前記空間(S)には、前記水素化燃料を改質する改質用触媒が配置される、
ことを特徴とする改質器。
【請求項2】
前記改質用触媒は、複数の略球体状の部材である担持用部材(57)に担持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の改質器。
【請求項3】
前記空間(S)に前記水素化燃料を供給する燃料流入孔(53a)と、
前記空間(S)から改質された気体が流出する気体流出孔(53b)と、を備え、
前記燃料流入孔(53a)および前記気体流出孔(53b)は、前記触媒(25b)の一方側に偏移しており、
前記燃料流入孔(53a)から流入した前記水素化燃料は、前記一方側と反対方向の他方側に流れる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の改質器。
【請求項4】
前記空間(S)内には、複数の略球体形状の昇温部材(55)が配置される、
ことを特徴とする請求項3に記載の改質器。
【請求項5】
前記改質用触媒は、前記昇温部材(55)よりも前記一方側に設けられる、
ことを特徴とする請求項4に記載の改質器。
【請求項6】
前記触媒(25b)は、前記一方側が前記他方側よりも上方に位置するように、水平方向に対して傾斜した方向に設けられる、
ことを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の改質器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素の原燃料としてのメタノールを貯蔵するメタノールタンクと、水を貯蔵する水タンクと、メタノールと水から水素燃料を生成するメタノール改質器と、を備える車両搭載用水素利用システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-97396号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この種のシステムに用いられる改質器においては、水素を生成するために、水素の原燃料である水素化燃料及び水を蒸発させ、且つ、反応に必要な温度まで温度を上昇させる必要がある。そのため、水素化燃料及び水の温度を上昇させるための熱源を確保する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
改質器は、内燃機関と、触媒を介して前記内燃機関の排気を排出する排気管と、を有する車両に設けられる改質器において、前記車両は、水および水素化燃料を燃料とし、前記排気管の外側を覆う外側管を有し、前記触媒の周囲において前記排気管と前記外側管との間に空間を形成し、前記空間には、前記水素化燃料を改質する改質用触媒が配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
改質用触媒は、内燃機関の排気熱を利用して、水素化燃料を改質することができる。従って、容易に熱源を確保できる改質器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る鞍乗り型車両の側面図。
図2】実施の形態に係る改質器の斜視図。
図3】改質器の断面図。
図4】水および水素化燃料の供給経路を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、車体フレーム11と、車体フレーム11に支持されるパワーユニット12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える車両である。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
フロントフォーク14は、車体フレーム11の前端部に設けられるヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル21は、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
【0011】
スイングアーム16は、車体フレーム11に支持されるピボット軸22に支持される。ピボット軸22は、車幅方向に水平に延びる軸である。スイングアーム16の前端部には、ピボット軸22が挿通される。スイングアーム16は、ピボット軸22を中心に上下に揺動する。
後輪15は、スイングアーム16の後端部に設けられる車軸15aに支持される。
【0012】
パワーユニット12は、前輪13と後輪15との間に配置され、車体フレーム11に支持される。
パワーユニット12は、内燃機関である。パワーユニット12は、クランクケース23と、往復運動するピストンを収容するシリンダー部24とを備える。シリンダー部24の排気ポートには、排気装置25の排気管25aが接続される。排気管25aには、後述する改質器50が設けられる。
パワーユニット12の出力は、パワーユニット12と後輪15とを接続する駆動力伝達部材によって後輪15に伝達される。
【0013】
また、鞍乗り型車両10は、前輪13を上方から覆うフロントフェンダー26と、後輪15を上方から覆うリアフェンダー27と、乗員が足を載せるステップ28と、水素化燃料を蓄える水素化燃料タンク29aと、水を蓄える水タンク29bとを、それぞれ備える。
フロントフェンダー26は、フロントフォーク14に取り付けられる。リアフェンダー27及びステップ28は、シート17よりも下方に設けられる。
【0014】
図2は、改質器50の斜視図である。図3は、改質器50の断面図であり、前後方向および上下方向に平行な断面を、右方向から見た改質器50を示す。改質器50は、水および水素化燃料の混合物の液体を水蒸気改質によって改質することで、水素を生成する装置である。
【0015】
図2に示すように、改質器50は円柱形状であり、排気管25aの外周方向外側を取り囲むように配置される。図3に示すように、改質器50は、排気管25aにおいてキャタライザー(触媒)25bの配置された部分を、外周方向外側から取り囲む。キャタライザー25bは、パワーユニット12の排気を浄化する浄化触媒を備える装置であり、例えば、ハニカム構造のメッシュを有し、メッシュを通過する排気を浄化する。このとき、排気熱および浄化触媒の活性化により、キャタライザー25bは高温となる。
【0016】
本実施形態において、キャタライザー25bは、水平方向に対して傾斜した方向に配置される。すなわち、キャタライザー25bは、排気管25aのうち、水平方向に対して傾斜した部分の内側に配置される。図3に破線の矢印で示すように、本実施形態において、キャタライザー25bを流れる排気は、斜め上方且つ前方から斜め下方且つ後方に向けて流れる。以下では、斜め上方且つ前方を、図3に矢印で示す一方Aと定義する。また、斜め下方且つ後方を、図3に矢印で示す他方Bと定義する。すなわち、キャタライザー25bは、一方A側が他方B側よりも上方に位置するように、水平方向に対して傾斜して設けられる。なお、キャタライザー25bは、水平方向に対して90度傾斜し、水平線に対して直交する方向に沿って設けられていてもよい。
【0017】
改質器50は、断熱壁51と、外側管53と、を有する。断熱壁51は、改質器50の最も外側を覆う円筒形状のカバーである。断熱壁51は、断熱材によって形成され、改質器50の内部と外部との間における熱の伝達を阻害する。
【0018】
外側管53は、排気管25aを外周方向の外側から覆う管であり、その内径は排気管25aの外形よりも大きい。外側管53は、一方A側の端部および他方B側の端部の全周を、溶接等によって排気管25aの外側に対して固定される。これにより、キャタライザー25bの周囲において、排気管25aと外側管53との間には、閉鎖した空間Sが形成される。改質器50は、空間Sにおいて、複数の昇温部材55、および、複数の担持用部材57を保持する。
【0019】
昇温部材55は、主にアルミナなどのセラミックが略球体状に形成された部材であり、空間Sにおいて、他方B側に敷き詰められる。昇温部材55は、高温となったキャタライザー25bから排気管25aを介して伝達される熱を受けて高温となる。昇温部材55は略球体状であるため、空間Sに敷き詰められた昇温部材55同士の間には、流体が通り抜けできる程度の空隙が形成される。昇温部材55は、空隙を通り抜ける水および水素化燃料の混合物に対して熱を与えて気体に相転移させる。
【0020】
担持用部材57は、主にアルミナなどのセラミックが略球体状に形成された部材であり、水蒸気改質によって水素化燃料を改質する改質用触媒を担持する。担持用部材57が担持する改質用触媒としては、例えば、ニッケル系やルテニウム系、銅亜鉛系の触媒などが挙げられる。担持用部材57は、空間Sにおいて、一方A側に敷き詰められる。すなわち、担持用部材57および改質用触媒は、昇温部材55よりも一方A側に設けられる。担持用部材57は、昇温部材55と同様に、高温となったキャタライザー25bから排気管25aを介して伝達される熱を受けて高温となる。担持用部材57は略球体状であるため、空間Sに敷き詰められた担持用部材57同士、および、担持用部材57と昇温部材55との間には、流体が通り抜けできる程度の空隙が形成される。担持用部材57は、蒸発して空隙を通り抜ける水および水素化燃料の混合物に対して改質用触媒を接触させることにより、水素化燃料を改質して水素を生成する。
【0021】
また、外側管53には、燃料流入孔53aおよび気体流出孔53bが形成される。燃料流入孔53a、および、気体流出孔53bは、外側管53において、キャタライザー25bの一方A側に偏移して形成された孔である。後述する図4に示すように、燃料流入孔53aは、配管によって水素化燃料タンク29aおよび水タンク29bに接続される。水タンク29bに蓄えられた水と、水素化燃料タンク29aに蓄えられた水素化燃料と、の混合物は、燃料流入孔53aを介して空間Sに流入する。図3に示すように、燃料流入孔53aは、担持用部材57よりも他方B側に設けられる。
【0022】
気体流出孔53bは、外側管53において、燃料流入孔53aよりも更に一方A側に形成される。気体流出孔53bは、後述する図4に示すように、配管を介して気液分離器61に接続される。空間Sの内部において生じた水蒸気、水素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素などの気体は、気体流出孔53bを介して空間Sから流出する。
【0023】
図4は、鞍乗り型車両10における水素化燃料および水の供給経路を示す模式図である。図4に示すように、水素化燃料タンク29aは、第1ポンプ41aを介してミキサー43に対して配管接続される。また、水タンク29bは、第2ポンプ41bを介してミキサー43に対して配管接続される。第1ポンプ41aは、駆動することにより、水素化燃料タンク29aに蓄えられたエタノール等の水素化燃料をミキサー43に対して流入させるポンプである。第2ポンプ41bは、駆動することにより、水タンク29bに蓄えられた水をミキサー43に対して流入させるポンプである。
【0024】
ミキサー43は、駆動することにより、水素化燃料タンク29aから流入した水素化燃料および水タンク29bから流入した水を攪拌することで混合し、水素化燃料および水の混合物とする。ミキサー43は、第3ポンプ45を介して燃料流入孔53aに対して配管接続される。第3ポンプ45は、駆動することにより、ミキサー43において混合された水素化燃料および水の混合物を、燃料流入孔53aを介して空間Sに流入させる。上述したように、空間Sに流入した混合物は、昇温部材55によって蒸発し、担持用部材57の改質用触媒によって改質され、水蒸気、水素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素などを含む混合気体となって気体流出孔53bから流出する。
【0025】
気体流出孔53bは、気液分離器61に対して配管接続される。気液分離器61は、気体流出孔53bから流出する気体を冷却し、水蒸気を液体である水に相転移させる。これにより、空間Sによって生じた水蒸気は、水として他の気体から分離される。気液分離器61は、水タンク29bに対して配管接続されており、気液分離器61において混合気体から分離された水は、水タンク29bに戻される。
【0026】
また、気液分離器61は、第4ポンプ63およびアキュムレーター65を介し、第1インジェクター67に対して配管接続される。第4ポンプ63は、駆動することにより、気液分離器61において水蒸気を取り除かれた混合気体を、アキュムレーター65を介して第1インジェクター67に対して流入させる。アキュムレーター65は、混合気体を一時的に貯留する、または、貯留した混合気体を配管に戻すことにより、配管内の混合気体の圧力を一定に保つ。第1インジェクター67は、アキュムレーター65を介して流入した混合気体をパワーユニット12のシリンダー部24に対して噴射する。
【0027】
パワーユニット12は、第1インジェクター67により噴射された混合気体に含まれる水素を、外部から吸気した空気に含まれる酸素によって燃焼させることで、後輪15を駆動するための駆動力を発生させる。このとき燃焼した混合気体は、高温の排気となって排気ポートから排気管25aに流入する。
【0028】
また、図4に示すように、水素化燃料タンク29aは、第2インジェクター69に対して配管接続される。第2インジェクター69は、水素化燃料タンク29aから供給されるエタノール等の水素化燃料を、パワーユニット12のシリンダー部24に対して噴射する。パワーユニット12は、第2インジェクター69から噴射された水素化燃料を、外部から吸気した空気に含まれる酸素によって燃焼させることによっても、後輪15を駆動するための駆動力を発生させることができる。この場合においても、燃焼によって生じた高温の排気は、排気ポートを介して排気管25aに流入させる。
【0029】
以上のような構成の鞍乗り型車両10、および、改質器50について、以下にその動作を説明する。
【0030】
鞍乗り型車両10が十分に長い時間停止している場合、キャタライザー25bの温度が低く、改質器50の空間S内の昇温部材55および担持用部材57についても、温度が低い状態である。この状態においては、水と水素化燃料との混合物が空間Sに対して流入したとしても、水素改質によって水素を生成することができない。そのため、鞍乗り型車両10が十分に長い時間停止した状態から始動する際は、第2インジェクター69から水素化燃料をシリンダー部24に噴射し、噴射した水素化燃料を燃焼させることによってパワーユニット12を動作させる。パワーユニット12により後輪15を駆動する駆動力が発生することで、鞍乗り型車両10は始動する。
【0031】
パワーユニット12が動作することにより、高温の排気が排気管25aに流入する。これにより、排気管25aの内部に配置されたキャタライザー25bは高温となり、排気を浄化する。また、キャタライザー25bが高温となることにより、キャタライザー25bから排気管25aを介し、空間Sに敷き詰められた昇温部材55および担持用部材57に対して熱伝導される。これにより、昇温部材55および担持用部材57の温度が上昇する。このとき、昇温部材55および担持用部材57はともに球体であるため、それぞれ効果的に昇温される。
【0032】
昇温部材55および担持用部材57が十分に高温に達した後、第1ポンプ41a、第2ポンプ41b、ミキサー43、および、第3ポンプ45が駆動する。これにより、水と水素化燃料との混合物が燃料流入孔53aを介して空間Sに流入する。キャタライザー25bは、一方A側が他方B側よりも上方に位置するように、水平方向に対して傾斜して設けられるため、空間Sに流入した混合物は、重力に従って他方B側に向けて流れる。このとき、混合物は、略球体状の昇温部材55同士の間に形成される空隙を通り抜けて流れ、効率的に昇温される。また、燃料流入孔53aは、キャタライザー25bの一方A側に偏移して設けられるため、混合物は他方B側に向けて長い距離を流れて、効果的に昇温される。
【0033】
十分に昇温された混合物は、蒸発して気体となり、空間Sにおいて一方A側に流れる。このとき、気体となった混合物は、略球体状の担持用部材57同士の間に形成される空隙を通り抜けて流れる。担持用部材57は燃料流入孔53aおよび昇温部材55よりも一方A側に設けられ、担持用部材57に対して液体の混合物が直接的に接触しにくい。従って、担持用部材57は昇温部材55よりも高温を保ちやすく、担持用部材57同士の間に形成される空隙を通り抜けて流れる気体となった混合物は、担持用部材57に担持された改質用触媒により、効率的に改質される。
【0034】
改質用触媒によって改質された後の水素を含む混合気体は、空間Sから気体流出孔53bを介して流出し、気液分離器61に流入する。気液分離器61に流入した水素を含む混合気体は水蒸気を取り除かれた後、第4ポンプ63によってアキュムレーター65、および、第1インジェクター67に流入する。第1インジェクター67は、水素を含む混合気体をシリンダー部24に対して噴射する。
【0035】
パワーユニット12は、混合気体に含まれる水素を燃焼させることで、後輪15を駆動するための駆動力を発生させる。これにより、鞍乗り型車両10は継続して動作できる。また、このとき燃焼した混合気体は、高温の排気となって排気ポートから排気管25aに流入する。そのため、キャタライザー25b、昇温部材55、および、担持用部材57の温度が高温に保たれ、改質器50によって継続して水素を生成できる。
【0036】
上述したように、鞍乗り型車両10は、水素化燃料タンク29aに蓄えられた水素化燃料、および、水タンク29bに蓄えられた水をもとに水素を生成し、パワーユニット12において水素を燃焼させることで後輪15を駆動するための駆動力を得る。すなわち、鞍乗り型車両10は、水と水素化燃料とを燃料とする車両である。
【0037】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によれば、改質器50は、パワーユニット12と、キャタライザー25bを介してパワーユニット12の排気を排出する排気管25aと、を有する鞍乗り型車両10に設けられる改質器50において、鞍乗り型車両10は、水および水素化燃料を燃料とし、排気管25aの外側を覆う外側管53を有し、キャタライザー25bの周囲において排気管25aと外側管53との間に空間Sを形成し、空間Sには、水素化燃料を改質する改質用触媒が配置される。
この構成によれば、高温となるキャタライザー25bの周囲に改質用触媒を配置できるため、改質触媒を効果的に昇温でき、改質の効率が向上する。また、キャタライザー25bの周囲のスペースを利用して、コンパクトに改質用触媒を配置できる。
【0038】
また、改質用触媒は、複数の略球体状の部材である担持用部材57に担持される。
この構成によれば、水素化燃料は、略球体状の担持用部材57同士の間に形成される空隙を介して効率的に流れることができる。また、担持用部材57を略球体状とすることにより、担持用部材57および改質用触媒が昇温されやすくなる。
【0039】
また、改質器50は、空間Sに水素化燃料を供給する燃料流入孔53aと、空間Sから改質された気体が流出する気体流出孔53bと、を備え、燃料流入孔53aおよび気体流出孔53bは、キャタライザー25bの一方A側に偏移しており、燃料流入孔53aから流入した水素化燃料は、一方A側と反対方向の他方B側に流れる。
この構成によれば、空間Sに流入した水素化燃料は、キャタライザー25bに沿って長い距離を流れて吸熱および蒸発する。これにより、改質器50は水素化燃料を効率的に改質できる。
【0040】
また、改質器50において、空間S内には、複数の略球体形状の昇温部材55が配置される。
この構成によれば、水素化燃料は、略球体状の昇温部材55同士の間に形成される空隙を介して、効率的に流れることができる。また、昇温部材55を略球体状とすることにより、昇温部材55が昇温されやすくなり、水素化燃料を効率的に蒸発させることができる。
【0041】
また、改質用触媒は、昇温部材55よりも一方A側に設けられる。
この構成によれば、昇温部材55によって蒸発された後の水素化燃料が改質用触媒に接触するので、改質用触媒の温度を下げにくくなり、効率的に改質できる。また、高価な改質用触媒を担持しない昇温部材55によって水素化燃料を蒸発させることができるため、改質器50を製造する費用を低減できる。
【0042】
キャタライザー25bは、一方A側が他方B側よりも上方に位置するように、水平方向に対して傾斜した方向に設けられる。
この構成によれば、外側管53は、排気管25aにおいて傾斜した部分を覆う。従って、空間Sが傾斜し、燃料流入孔53aから流入した水素化燃料は、他方B側に流れやすくなる。
【0043】
なお、上記実施形態において、改質器50は鞍乗り型車両10に設けられると説明したが、本発明の適用はこれに限られない。例えば、改質器50は、水および水素化燃料を燃料とする、スクーターなどの鞍乗り型以外の二輪車、四輪自動車、および、三輪自動車などの車両に設けられていてもよい。また、改質器50は、水および水素化燃料を燃料とする船舶や航空機などの、車両以外の移動体に設けられていてもよい。
【0044】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0045】
(構成1)内燃機関と、触媒を介して前記内燃機関の排気を排出する排気管と、を有する車両に設けられる改質器において、前記車両は、水および水素化燃料を燃料とし、前記排気管の外側を覆う外側管を有し、前記触媒の周囲において前記排気管と前記外側管との間に空間を形成し、前記空間には、前記水素化燃料を改質する改質用触媒が配置される、ことを特徴とする改質器。
この構成によれば、高温となる触媒の周囲に改質用触媒を配置できるため、改質用触媒を効率的に昇温でき、改質の効率が向上する。また、触媒の周囲のスペースを利用して、コンパクトに改質用触媒を配置できる。
【0046】
(構成2)前記改質用触媒は、複数の略球体状の部材である担持用部材に担持される、ことを特徴とする構成1に記載の改質器。
この構成によれば、水素化燃料は、略球体状の担持用部材の間を効率的に流れることができる。また、担持用部材を球体とすることにより、担持用部材および改質用触媒を昇温しやすくなる。
【0047】
(構成3)前記空間に前記水素化燃料を供給する燃料流入孔と、前記空間から改質された気体が流出する気体流出孔と、を備え、前記燃料流入孔および前記気体流出孔は、前記触媒の一方側に偏移しており、前記燃料流入孔から流入した前記水素化燃料は、前記一方側と反対方向の他方側に流れる、ことを特徴とする構成1または2に記載の改質器。
この構成によれば、空間に流入した水素化燃料は、触媒の一方側から他方側に向けて長い距離を流れながら吸熱および蒸発する。これにより、改質器は水素化燃料を効率的に改質できる。
【0048】
(構成4)前記空間内には、複数の略球体形状の昇温部材が配置される、ことを特徴とする構成3に記載の改質器。
この構成によれば、水素化燃料は、略球体状の昇温部材同士の間を効率的に流れることができる。また、昇温部材を略球体状とすることにより、昇温部材が昇温されやすくなり、水素化燃料を蒸発させやすくなる。
【0049】
(構成5)前記改質用触媒は、前記昇温部材よりも前記一方側に設けられる、ことを特徴とする構成4に記載の改質器。
この構成によれば、昇温部材によって蒸発された後の水素化燃料が改質用触媒に接触するので、改質用触媒の温度が下がりにくくなり、効率的に改質できる。また、高価な改質用触媒を担持しない昇温部材によって水素化燃料を蒸発させることができるため、改質器の製造費用を低減できる。
【0050】
(構成6)前記触媒は、前記一方側が前記他方側よりも上方に位置するように、水平方向に対して傾斜した方向に設けられる、ことを特徴とする構成3から5のいずれかに記載の改質器。
この構成によれば、外側管は、排気管において水平方向に対して傾斜した部分に設けられる。従って、外側管と排気管との間の空間は水平方向に対して傾斜し、燃料流入孔から流入した水素化燃料は、他方側に流れやすくなる。
【符号の説明】
【0051】
10 鞍乗り型車両(車両)
12 パワーユニット(内燃機関)
25a 排気管
25b キャタライザー(触媒)
50 改質器
53 外側管
53a 燃料流入孔
53b 気体流出孔
55 昇温部材
57 担持用部材
S 空間
図1
図2
図3
図4