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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150850
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ミシン
(51)【国際特許分類】
   D05B 51/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
D05B51/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060171
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 崇行
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA02
3B150CB03
3B150CB27
3B150CE09
3B150CE23
3B150GD13
3B150GD15
3B150LA49
3B150LA52
3B150QA06
3B150QA07
(57)【要約】
【課題】上糸の状態を判断できるミシンを提供する。
【解決手段】ミシンにおいて、糸掴み装置はX方向に延伸する掴持部44を備える。掴持部44のX2方向の側の端部には、フック44Aが形成される。糸掴み装置はフック44Aにより上糸6を掴持する。糸掴み装置は第二状態においてフック44Aと圧力センサ50との間で上糸6を挟持する。圧力センサ50は検出領域54の内側にある複数の検出点Rにおける上糸6による圧力を検出する。ミシンは、各検出点Rにおける上糸6による圧力に基づき、上糸6による圧力分布を生成する。ミシンは、生成した圧力分布に基づき、上糸6の状態として、上糸6の端部6Aの位置、糸掴み装置に掴持された上糸6の長さ及び太さを判断する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上糸を挿通した縫針にて縫製するミシンにおいて、
前記上糸を掴んで、保持することが可能な糸掴み部と、
複数の所定位置のそれぞれにおいて、前記糸掴み部よって保持された前記上糸の情報を検出する検出部と、
前記検出部が検出した前記複数の所定位置における前記上糸の情報に基づき、前記上糸の状態を判断する判断部とを備えることを特徴とするミシン。
【請求項2】
前記判断部が判断した前記上糸の状態に基づき、縫製時における不良の発生を予測する不良予測部と、
前記不良予測部により前記不良が発生すると予測された場合、前記不良の発生を予測したことを報知する報知部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【請求項3】
前記検出部は、所定の時機で前記上糸の情報を検出し、
前記判断部は、前記検出部が検出する前記上糸の情報の推移に基づき、前記上糸の状態として、前記上糸と下糸との間で糸絡み不良が発生したか否かを判断する糸絡み不良判断部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
【請求項4】
前記検出部は、前記糸掴み部よって保持された前記上糸のうち、所定方向の所定間隔で前記上糸による圧力を検出し、
前記判断部は、前記検出部が検出した前記上糸の圧力の分布に基づき、前記上糸の状態を判断することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のミシン。
【請求項5】
前記検出部は、更に前記所定方向と交差する第二所定方向の第二所定間隔で前記上糸による圧力を検出することを特徴とする請求項4に記載のミシン。
【請求項6】
前記糸掴み部は、前記上糸を掴持可能な掴持部を有し、前記掴持部が前記所定方向に移動可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載のミシン。
【請求項7】
前記判断部は、前記圧力の分布に基づき、前記上糸の状態として、前記糸掴み部により保持された前記上糸の位置を判断し、
前記判断部により判断された前記上糸の位置に基づき、縫製動作を制御する位置縫製制御部を備えることを特徴とする請求項4から6の何れかに記載のミシン。
【請求項8】
前記判断部は、前記圧力の分布に基づき、前記上糸の状態として、前記糸掴み部により保持された前記上糸の長さを判断し、
前記判断部により判断された前記上糸の長さに基づき、縫製動作を制御する長さ縫製制御部を備えることを特徴とする請求項4から7の何れかに記載のミシン。
【請求項9】
前記判断部は、前記圧力の分布に基づき、前記上糸の状態として、前記糸掴み部により保持された前記上糸の太さを判断し、
前記判断部により判断された前記上糸の太さに基づき、縫製動作を制御する太さ縫製制御部を備えることを特徴とする請求項4から8の何れかに記載のミシン。
【請求項10】
前記糸掴み部は、少なくとも一部が透光性を有する透光部で形成された第一部材と、前記第一部材との間で前記上糸を挟持する第二部材とを有し、
前記検出部は、前記透光部を介して走査することで、前記第一部材と前記第二部材とで挟持された前記上糸を検出することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、正常な縫製動作のために上糸の有無を検出するミシンが公知である。特許文献1に記載のミシンの糸検出装置は圧電音叉共振子、圧電音叉共振子を発振駆動する発振回路、発振回路の出力電圧を整流し増幅する整流増幅回路を備える。圧電音叉共振子は上糸経路に上糸が掛装しているか否かに応じて、出力する振幅変化信号の大きさが変動する。振幅変化信号は整流増幅回路にて整流され、且つ増幅されて糸検出信号は出力される。糸検出装置は糸検出信号により上糸の有無を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-129881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミシンは、上糸経路における上糸の有無の情報だけでは、縫製動作を十分に制御することができない。
【0005】
本発明の目的は、上糸の状態を判断できるミシンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るミシンは、上糸を挿通した縫針にて縫製するミシンにおいて、前記上糸を掴んで、保持することが可能な糸掴み部と、複数の所定位置のそれぞれにおいて、前記糸掴み部よって保持された前記上糸の情報を検出する検出部と、前記検出部が検出した前記複数の所定位置における前記上糸の情報に基づき、前記上糸の状態を判断する判断部とを備えることを特徴とする。
【0007】
ミシンにおいて、検出部は糸掴み部よって保持された上糸の情報を複数の所定位置にて検出する。検出部が複数の所定位置にて上糸の情報を検出するので、ミシンは判断部により上糸の状態(例えば、糸掴み部により保持された上糸の位置、長さ、太さ等)を判断できる。
【0008】
上記ミシンは、前記判断部が判断した前記上糸の状態に基づき、縫製時における不良の発生を予測する不良予測部と、前記不良予測部により前記不良が発生すると予測された場合、前記不良の発生を予測したことを報知する報知部とを備えてもよい。ミシンは、判断部が判断した上糸の状態に基づき、縫製時における不良の発生を予測する。ミシンは、不良の発生を予測した場合、報知部により作業者に報知する。故に、ミシンは不良の発生を未然に防ぐことができる。
【0009】
前記検出部は、所定の時機で前記上糸の情報を検出し、前記判断部は、前記検出部が検出する前記上糸の情報の推移に基づき、前記上糸の状態として、前記上糸と下糸との間で糸絡み不良が発生したか否かを判断する糸絡み不良判断部を備えてもよい。ミシンは、検出部が検出する上糸の情報の推移に基づき、上糸と下糸との間で糸絡み不良が発生したか否かを糸絡み不良判断部により判断する。故に、ミシンは糸絡み不良による不具合を抑制できる。
【0010】
前記検出部は、前記糸掴み部よって保持された前記上糸のうち、所定方向の所定間隔で前記上糸による圧力を検出し、前記判断部は、前記検出部が検出した前記上糸の圧力の分布に基づき、前記上糸の状態を判断してもよい。検出部は、所定方向の所定間隔で上糸による圧力を検出する。ミシンは所定方向における上糸の圧力分布に基づき、上糸の状態を判断できる。
【0011】
前記検出部は、更に前記所定方向と交差する第二所定方向の第二所定間隔で前記上糸による圧力を検出してもよい。検出部は、更に第二交差方向の第二所定間隔で上糸による圧力を検出する。ミシンは所定方向及び第二所定方向における上糸の二次元の圧力分布に基づき、上糸の状態を判断できる。
【0012】
前記糸掴み部は、前記上糸を掴持可能な掴持部を有し、前記掴持部が前記所定方向に移動可能であってもよい。糸掴み部の動作方向と検出部の圧力検出の並びが揃うので、検出部は上糸の状態(例えば、位置や長さ等)を検出しやすくなる。
【0013】
前記判断部は、前記圧力の分布に基づき、前記上糸の状態として、前記糸掴み部により保持された前記上糸の位置を判断し、前記判断部により判断された前記上糸の位置に基づき、縫製動作を制御する位置縫製制御部を備えてもよい。ミシンは、糸掴み部により保持された上糸の位置に基づき、縫製動作を制御する。故に、ミシンは糸掴み部により保持された上糸の位置が適切でない場合に発生する不具合を抑制できる。
【0014】
前記判断部は、前記圧力の分布に基づき、前記上糸の状態として、前記糸掴み部により保持された前記上糸の長さを判断し、前記判断部により判断された前記上糸の長さに基づき、縫製動作を制御する長さ縫製制御部を備えてもよい。ミシンは、糸掴み部により保持された上糸の長さに基づき、縫製動作を制御する。故に、ミシンは糸掴み部により保持された上糸の長さが適切でない場合に発生する不具合を抑制できる。
【0015】
前記判断部は、前記圧力の分布に基づき、前記上糸の状態として、前記糸掴み部により保持された前記上糸の太さを判断し、前記判断部により判断された前記上糸の太さに基づき、縫製動作を制御する太さ縫製制御部を備えてもよい。ミシンは、糸掴み部により保持された上糸の太さに基づき、縫製動作を制御する。故に、ミシンは糸掴み部により保持された上糸の太さが適切でない場合に発生する不具合を抑制できる。
【0016】
前記糸掴み部は、少なくとも一部が透光性を有する透光部で形成された第一部材と、前記第一部材との間で前記上糸を挟持する第二部材とを有し、前記検出部は、前記透光部を介して走査することで、前記第一部材と前記第二部材とで挟持された前記上糸を検出してもよい。検出部は、第一部材の透光部を介して走査することで、上糸を検出する。ミシンは検出部が走査することで検出した上糸の状態を判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ミシン1の正面図。
図2】糸掴み装置30の第一状態の斜視図。
図3】糸掴み装置30の第一状態の正面図。
図4】糸掴み装置30の第二状態の斜視図。
図5】圧力センサ50による上糸6の検出を説明する図。
図6】ミシン1の電気ブロック図。
図7】縫製前処理の流れ図。
図8】縫い始め処理の流れ図。
図9】縫い始め処理の流れ図であって、図8の続き。
図10】糸掴み装置60の第二状態の斜視図。
図11】糸掴み装置60の第二状態の正面図。
図12】スキャナ70の斜視図。
図13】第二縫製前処理の流れ図。
図14】第二縫い始め処理の流れ図。
図15】第二縫い始め処理の流れ図であって、図14の続き。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第一実施形態を、図1図9を参照して説明する。以下説明は図中に矢印で示す左右、前後、上下を使用する。
【0019】
図1を参照し、ミシン1の構成を説明する。ミシン1はベッド部2、脚柱部3、アーム部4、頭部5、糸掴み装置30を備える。ベッド部2は其の上面左側に針板7を有し、内部に釜機構、下軸22(図6参照)、糸切機構18(図6参照)等を備える。被縫製物はベッド部2の上面に配置する。釜機構は針板7の下方で回転釜を有し、回転釜に下糸を巻回したボビン(図示略)を収容する。
【0020】
下軸22は左右方向に延びる。下軸22は後述の主モータ24(図6参照)と同期して回転する。釜機構は下軸22の回転で駆動し、縫針10が保持する上糸6を捕捉し、下糸と絡ませる。糸切機構18(図6参照)は固定刃、可動刃、糸切ソレノイド19(図6参照)を備える。可動刃は糸切ソレノイド19に連結する。糸切ソレノイド19が駆動することで、可動刃は固定刃に対して移動し、糸切機構18は可動刃と固定刃の協働で上糸6と下糸を切断する。脚柱部3はベッド部2右端から上方に延びる。
【0021】
アーム部4は脚柱部3の上端部から左方に延びる。アーム部4は其の前面に操作部12、糸調子部15等を備える。操作部12は表示部13と入力部14を備える。表示部13は画像を表示する。入力部14は表示部13の右方に設ける。入力部14は複数のスイッチを備え、制御部80(図6参照)に各種指示を入力可能である。糸調子部15は操作部12の左方に設ける。糸調子部15は糸切機構18による上糸6と下糸の切断時に必要な張力を上糸6に付与し、ミシン1の縫製に伴って上糸6に作用する張力を適正化する。
【0022】
アーム部4は内部に上軸21(図6参照)と主モータ24を備える。上軸21は左右方向に延び、上軸プーリ(図示略)を介して主モータ24と連結する。上軸プーリは上軸21の右端部に固定する。下軸プーリ(図示略)は下軸22の右端部に固定する。無端ベルト(図示略)は上軸プーリと下軸プーリの間に掛け渡す。主モータ24の駆動で上軸21が回転すると、無端ベルトを介して下軸22が同期して回転する。
【0023】
頭部5はアーム部4の左端部に設ける。頭部5はアーム部4の左端部から下方に突出し、針板7に上方から対向する。頭部5は下方に延びる針棒9を上下動可能に支持する。針棒9の下端部は頭部5から下方に突出する。針棒9は上下動機構を介して上軸21と連結し、上軸21の回動に伴って針板7の上方で上下動する。針棒9の下端部は縫針10を装着可能である。縫針10は目孔(図示略)に挿通した上糸6を保持する。縫針10は針棒9と共に上下動する。
【0024】
頭部5は其の前面に天秤28を備える。天秤28は糸駒(図示略)から繰り出す上糸6の経路(以下、上糸経路という。)における糸調子部15の下流側に設ける。天秤28は主モータ24の駆動に伴って上下動する。頭部5は其の左後端部に支持板8を備える。支持板8は頭部5の後面から下方に延びる。支持板8は其の前面で糸掴み装置30を支持する。
【0025】
図2図4を参照し、糸掴み装置30の構造を説明する。糸掴み装置30は、縫い始めにおいて上糸6を保持することで、上糸6の糸抜けを防止する。糸抜けの説明は後述する。縫い始めは、例えばミシン1が縫製を開始してから数十針縫う迄の期間である。糸掴み装置30は縫針10の左上方に設ける。説明の便宜上、以下、糸掴み装置30の構造の説明は図2に矢印で示すX方向、Y方向、Z方向を使用する。X方向は後述する掴持部44の延伸方向と平行な方向であり、ミシン1の左右方向に対して左斜め下に傾斜した方向である。X方向は、X1方向と、X1方向と反対のX2方向とを含む。Y方向は前後方向と平行な方向である。Y方向は、Y1方向と、Y1方向と反対のY2方向とを含む。Z方向はX方向及びY方向に直交する方向である。Z方向は、Z1方向と、Z1方向と反対のZ2方向とを含む。
【0026】
糸掴み装置30は基部33、36、37、エアシリンダ31、リミットスイッチ40、摺動部43、掴持部44、板46、圧力センサ50を備える。基部33は板状の部材であって、Z2方向に延びる。基部33の一部は、基部33のZ2方向の下端から、X2方向に屈曲して延びる。
【0027】
エアシリンダ31、リミットスイッチ40は基部33のX1方向の端部に設ける。エアシリンダ31はX方向に延びるロッド32を備える。ロッド32はエアシリンダ31の駆動により基部33に対してX方向に移動する。リミットスイッチ40はエアシリンダ31に対してZ1方向の側に設けられる。リミットスイッチ40はヘッド部41を備える。ヘッド部41がX1方向に押し込まれた状態で、リミットスイッチ40はON信号を制御部80に出力する。ヘッド部41がX1方向に押し込まれていない状態で、リミットスイッチ40はOFF信号を制御部80に出力する。
【0028】
摺動部43は基部33のZ1方向の側に設ける。摺動部43は板状の部材であって、Z2方向に延びる。摺動部43の一部は、摺動部43のZ2方向の下端から、X2方向に屈曲して延びる。摺動部43のX1方向の端部はロッド32のX2方向の端部と接続する。摺動部43はエアシリンダ31の駆動により基部33に沿ってX方向に摺動する。ロッド32がX1方向に移動すると、摺動部43はロッド32と共にX1方向に移動し、ヘッド部41をX1方向に押し込む。ロッド32がX2方向に移動すると、摺動部43はロッド32と共にX2方向に移動し、ヘッド部41のX1方向への押込を解除する。
【0029】
掴持部44は摺動部43のX2方向の端部に設ける。掴持部44は摺動部43と一体となってX方向に移動可能である。掴持部44はX方向に延びる板状を呈する。掴持部44のX2方向の端部には、フック44Aが形成される。フック44AはZ1方向の側から視て、逆J字状を呈する。フック44AのY2方向の側には開口45が形成される。掴持部44は開口45を介して上糸6をフック44Aにて掴持可能である。
【0030】
基部36は基部33のX2方向且つY2方向の端部に設ける。基部36は板状の部材であって、Z1方向に延びる。基部36の一部は、基部36のZ1方向の上端で、X2方向に屈曲して延びる直方体状を呈する。板46は基部36のX2方向の端部に設ける。板46はY1方向に延びた後、X2方向に屈曲して延びる(図10参照)。板46のZ1方向の側の面におけるX2方向の端部には、溝46A(図10参照)が形成される。溝46AはX方向に延びる。上糸6は溝46Aの内側を挿通可能である。
【0031】
基部37は基部36のX1方向且つZ1方向の端部に設ける。基部37はY1方向に延びる直方体状を呈する。基部37のY1方向の端部には、固定部38が設けられる。固定部38はZ2方向の端部に板49を固定する。板49は固定部38からX2方向に延びる。板49のX2方向の端部には、圧力センサ50が設けられる。圧力センサ50と板46とはZ方向において掴持部44を間にして対向する。圧力センサ50はX方向及びY方向に延びる直方体状を呈する。圧力センサ50には信号線59が接続される。圧力センサ50の詳細な説明は後述する。
【0032】
糸掴み装置30の動作を説明する。糸掴み装置30はエアシリンダ31の駆動により第一状態と第二状態とに切り替え可能である。図2図3に示すように、第一状態の糸掴み装置30は、摺動部43が基部33のX2方向の側の端部に位置する状態である。第一状態において、ヘッド部41は摺動部43によりX1方向に押し込まれていない。掴持部44のフック44Aは、X方向において、圧力センサ50及び板46よりもX2方向の側に位置する。図示しないが、フック44Aはミシン1において縫針10の後方に位置する。
【0033】
図4に示すように、第二状態の糸掴み装置30は、摺動部43が基部33のX方向の中央部に移動する状態である。第二状態において、ヘッド部41は摺動部43によりX1方向に押し込まれる。フック44Aは、Z方向において、圧力センサ50と板46との間に位置する。フック44Aはミシン1において縫針10の左上方に位置する(図1参照)。
【0034】
ミシン1は、糸掴み装置30により上糸6を掴持するとき、エアシリンダ31を駆動し、第二状態から第一状態に切り替える。フック44Aは、縫針10の後方に移動し、縫針10の目孔に挿通した上糸6の先端部を掴持する(図2参照)。この状態で、糸掴み装置30は、第一状態から第二状態に切り替える。フック44Aはロッド32と共にX1方向に移動する。第二状態において、フック44Aに掴持された上糸6のうちZ1方向の側に位置する上糸6は、フック44Aと圧力センサ50とで挟持される。フック44Aに掴持された上糸6のうちZ2方向の側に位置する上糸6は、溝46Aを介してX2方向に逃がされる(図10参照)。
【0035】
ミシン1の縫い始めにおいて、エアシリンダ31の駆動が停止される。ロッド32は外力によりX方向に移動可能となる。縫い始めにおいて、天秤28が上糸6を引き上げるときに上糸6に張力が付与される。フック44Aは、上糸6に付与される張力により、徐々にX2方向に移動する。フック44Aが圧力センサ50よりもX2方向の側に移動すると、上糸6はフック44Aと圧力センサ50とによる挟持が解除される。リミットスイッチ40のヘッド部41に対するX1方向への押込が解除される。上糸6がフック44Aから抜けて、縫い始めの期間が終了する。
【0036】
図5を参照し、圧力センサ50を説明する。圧力センサ50のZ2方向の側の面53には、矩形の検出領域54が設けられる。検出領域54は、第二状態の糸掴み装置30における、フック44Aと圧力センサ50とで挟持される上糸6による圧力を、複数の検出点Rで検出する。圧力センサ50は、例えば、外部より与えられる圧力に応じて変形するシリコンダイヤフラムと、そのシリコンダイヤフラムの変形を検知する圧電素子とを一つの組として、その組を二次元状に配列した構造を有する。圧力センサ50は、信号線59を介して、各検出点Rで検出された上糸6による圧力を制御部80に出力する。
【0037】
複数の検出点Rは、複数の仮想線Pと複数の仮想線Qとで規定される。仮想線Pは検出領域54の内側をX方向に延びる。仮想線Pは、例えば、X方向に配列された複数のダイヤフラムと圧電素子との組の中心を通る。複数の仮想線PはY方向に互いに等間隔(本実施形態では、0.1mm)で配列する。仮想線Qは検出領域54の内側をY方向に延びる。仮想線Qは、例えば、Y方向に配列された複数のダイヤフラムと圧電素子との組の中心を通る。複数の仮想線QはX方向に互いに等間隔(本実施形態では、0.1mm)で配列する。複数の検出点Rは、複数の仮想線Pと複数の仮想線Qとの交点である。即ち、複数の検出点Rは、検出領域54の内側でX方向及びY方向に格子状に配列する。
【0038】
制御部80による上糸6の状態の判断について説明する。本実施形態において、上糸6の状態とは、上糸6がフック44Aに掴持されているか否か、フック44Aに掴持された上糸6のX1方向の端部6Aの位置、フック44Aに掴持された上糸6の長さ、及び上糸6の太さである。制御部80は、圧力センサ50が検出する各検出点Rの上糸6による圧力に基づき、検出領域54の内側の上糸6による圧力分布を生成する。制御部80は、検出領域54の内側の上糸6による圧力分布に基づき、上糸6の状態を判断する。
【0039】
制御部80は、複数の検出点Rの少なくとも1つで上糸6による圧力が検出された場合、上糸6がフック44Aに掴持されていると判断し、複数の検出点Rの全てで上糸6による圧力が検出されない場合、上糸6がフック44Aに掴持されていないと判断する。
【0040】
制御部80は、X方向に配列する検出点Rのうち、最もX1方向の側で上糸6による圧力を検出した検出点Rの位置に基づき、上糸6の端部6Aの位置を判断する。
【0041】
制御部80は、X方向に配列する検出点Rのうち、上糸6による圧力を検出した検出点Rの数に基づき、フック44Aに掴持された上糸6の長さを判断する。
【0042】
制御部80は、Y方向に配列する検出点Rのうち、上糸6による圧力を検出した検出点Rの数に基づき、フック44Aに掴持された上糸6の太さを判断する。本実施形態における上糸6の太さは、例えば0.5mmである。
【0043】
制御部80による縫い始めにおける縫製時の不良の発生の検知、予測について説明する。制御部80は、縫い始めにおいて、判断した上糸6の状態に基づき、縫製時における不良の発生を検知する。制御部80は、縫製時における不良として、糸絡み不良の発生を検知する。糸絡み不良は、上糸6と下糸との間で糸が絡まる不良である。縫い始めにおいて、糸絡み不良が発生した場合、フック44Aに掴持されている上糸6に張力が低減し、フック44AはX2方向への推移(移動量)が低減する。
【0044】
制御部80は、フック44Aに掴持される上糸6における端部6Aの位置の推移に基づき、上糸6と下糸との間で糸絡み不良が発生したか否かを判断する。制御部80は、前回判断した端部6Aの位置をRAM83に記憶する。制御部80は、今回判断した端部6Aの位置と前回判断した端部6Aの位置との差分から、端部6Aの位置のX2方向への推移を導出する。制御部80は、導出した端部6Aの位置のX2方向への推移が所定の閾値よりも小さい場合、上糸6と下糸との間で糸絡み不良が発生したと判断する。
【0045】
制御部80は、縫い始めにおいて、判断した上糸6の状態に基づき、縫製時における不良の発生を予測する。制御部80は、縫製時における不良として、糸抜け、糸切れの発生を予測する。糸抜けは縫針10の目孔から上糸6が抜ける不良である。糸切れは縫製時に上糸6が切れる不良である。
【0046】
フック44Aが十分に上糸6を掴持していない場合、フック44Aによる上糸6の掴持が解除され、糸抜けが発生する可能性がある。制御部80は、フック44Aに掴持された上糸6の長さに基づき、糸抜けの発生を予測する。制御部80は、フック44Aに掴持された上糸6の長さが所定の閾値よりも小さい場合、フック44Aが十分に上糸6を掴持していないとして糸抜けが発生すると予測する。
【0047】
上糸6の太さが予め設定された上糸6の太さに対して小さい場合、縫製時に糸切れが発生する可能性がある。制御部80は、フック44Aに掴持された上糸6の太さに基づき、糸切れの発生を予測する。記憶装置84は縫製に用いる上糸6の太さを記憶する。制御部80は、フック44Aに掴持された上糸6の太さが記憶装置84に記憶された上糸6の太さに対して所定の閾値よりも小さい場合、糸切れが発生すると予測する。
【0048】
図6を参照し、ミシン1の電気的構成を説明する。ミシン1の制御部80はCPU81を備える。CPU81はミシン1の動作を制御する。CPU81はROM82、RAM83、記憶装置84、I/Oインターフェース(以下、I/Oという。)85と接続する。ROM82は後述の縫製前処理(図7参照)等、各種処理を実行する為のプログラム等を記憶する。RAM83は、各種値を一時的に記憶する。記憶装置84は不揮発性である。記憶装置84は、上糸6の太さ、ミシン1の各種設定等を記憶する。
【0049】
I/O85は駆動回路91~95に接続する。駆動回路91は主モータ24に接続する。駆動回路92は糸調子ソレノイド16に接続する。駆動回路93は糸切ソレノイド19に接続する。駆動回路94はエアシリンダ31に接続する。駆動回路95は表示部13に接続する。主モータ24はエンコーダ25を備える。エンコーダ25は、主モータ24の出力軸の回転位置を検出する。
【0050】
CPU81は、エンコーダ25の検出結果を取得し、駆動回路91に制御信号を送信する。CPU81は、駆動回路91に制御信号を送信することで、上軸21及び下軸22を駆動制御する。CPU81は、駆動回路92に制御信号を送信することで、糸調子部15を駆動制御する。CPU81は、駆動回路93に制御信号を送信することで、糸切機構18を駆動制御する。CPU81は、駆動回路94に制御信号を送信することで、エアシリンダ31を駆動制御する。CPU81は、駆動回路95に制御信号を送信することで、表示部13を駆動制御する。
【0051】
I/O85は入力部14、リミットスイッチ40、及び圧力センサ50に接続する。入力部14は、各種指示をCPU81に出力する。リミットスイッチ40は、ヘッド部41の状態に応じて、ON信号及びOFF信号の何れか一方を制御部80に出力する。圧力センサ50は、信号線59(図2参照)を介して、各検出点R(図5参照)で検出された上糸6による圧力を制御部80に出力する。
【0052】
図7を参照し、縫製前処理を説明する。縫製前処理はミシン1による縫製の開始前に、糸掴み装置30により上糸6を掴持する為の処理である。縫製前処理の開始時、ミシン1は縫製を停止しており、糸掴み装置30は第二状態である。
【0053】
縫製前処理において使用される変数を説明する。RAM83は変数Nを記憶する。変数Nは糸掴み装置30による上糸6の掴持を試行した回数である。縫製前処理の開始時、変数Nの値は0である。縫製前処理の開始前、作業者は縫製に用いる上糸6の太さや種類を記憶装置84に記憶する。
【0054】
作業者が入力部14を介して、縫製前処理の開始を指示すると、CPU81はROM82からプログラムを読み出して縫製前処理を開始する。縫製前処理が開始されると、CPU81は変数Nの値を1に設定し、RAM83に記憶する(S1)。
【0055】
CPU81は、エアシリンダ31を駆動し、糸掴み装置30を第二状態から第一状態に切り替えることで、糸掴み装置30による上糸6の掴持動作を開始する(S2)。S2において、フック44Aが圧力センサ50に対してX2方向に移動し、ヘッド部41に対するX1方向への押込が解除される。フック44Aは、縫針10の後方の上糸6の先端部を掴持する。
【0056】
CPU81は、エアシリンダ31を駆動し、糸掴み装置30を第一状態から第二状態に切り替えることで、糸掴み装置30による上糸6の掴持動作を終了する(S3)。S3において、フック44AがX1方向に移動し、ヘッド部41がX1方向に押し込まれる。フック44Aは、Z方向において、圧力センサ50と板46との間に位置する。上糸6の先端部はフック44Aと圧力センサ50との間で挟持される。
【0057】
CPU81は、圧力センサ50が検出する各検出点Rにおける上糸6による圧力を取得する(S4)。CPU81は、S4で取得した上糸6による圧力に基づき、検出領域54の内側における上糸6による圧力分布を生成する(S5)。
【0058】
CPU81は、S5で生成した上糸6による圧力分布が正常であるか否かを判断する(S6)。ROM82はフック44Aが正常に上糸6を掴持した場合の上糸6による圧力分布にかかる情報を糸の太さや種類別に記憶する。S6において、CPU81は、ROM82の中から縫製に用いる上糸6に対応するフック44Aが正常に上糸6を掴持した場合の圧力分布にかかる情報を読み出して、S5で生成した圧力分布と比較する。正常かどうかの判断は、S5で生成した圧力分布から、上述の通り、上糸6がフック44Aに掴持されているか否か、フック44Aに掴持された上糸6のX1方向の端部6Aの位置、フック44Aに掴持された上糸6の長さ、及び上糸6の太さを判断し、ROM82中の縫製に用いる上糸6における正常な圧力分布にかかる情報にある上糸6の端部6Aの位置、上糸6の長さ、及び上糸6の太さの値と比較して、所定範囲内、例えば±10%の範囲にあるときに正常とするものであってよい。若しくは、ROM82中に縫製に用いる上糸6における正常な圧力分布そのものを記憶させておき、対応する正常な圧力分布を読み出して、S5で生成した圧力分布と比較して、2つの圧力分布の一致度が所定の閾値、例えば90%を超える場合を正常とし、それ以下の場合には正常ではないと判断するものであってもよい。
【0059】
CPU81は、フック44Aが正常に上糸6を掴持した場合の圧力分布に対して、S5で生成した圧力分布が正常であると判断した場合(S6:YES)、RAM83にS5で生成した圧力分布を記憶する(S7)。CPU81は縫製可能通知を行う(S8)。S8において、CPU81は、表示部13を駆動し、フック44Aが正常に上糸6を掴持したとして縫製を開始できる旨を通知する。CPU81は縫製前処理を終了する。
【0060】
CPU81は、フック44Aが正常に上糸6を掴持した場合の圧力分布に対して、S5で生成した圧力分布が正常ではないと判断した場合(S6:NO)、変数Nの値が上限であるか否かを判断する(S9)。ROM82は、変数Nの上限値を記憶する。
【0061】
CPU81は、変数Nの値が上限値よりも小さく、上限ではないと判断した場合(S9:NO)、変数Nの値に1を加算し、RAM83に記憶する(S10)。CPU81は処理をS2に戻す。CPU81は、再度、糸掴み装置30による上糸6の掴持を開始する(S2)。
【0062】
CPU81は、変数Nの値が上限値と等しく、上限であると判断した場合(S9:YES)、縫製前警告を行う(S11)。S11において、CPU81は、表示部13を駆動し、フック44Aが正常に上糸6を掴持できない旨を警告する。CPU81は縫製前処理を終了する。
【0063】
図8図9を参照し、縫い始め処理を説明する。縫い始め処理では、糸掴み装置30における上糸6の状態に基づき、縫い始めにおいてミシン1による縫製が正常に行われているか否かの判断が行われる。縫い始め処理の開始前、縫製に用いる上糸6の太さは記憶装置84に記憶されている。縫い始め処理の開始時、ミシン1は縫製を停止しており、エアシリンダ31は駆動しており、且つ糸掴み装置30は第二状態である。
【0064】
縫い始め処理において使用される変数を説明する。RAM83は変数L、Mを記憶する。変数Lは糸掴み装置30における上糸6の状態が正常ではないと判断された回数である。変数Mは針棒9が上下動した回数であり、一針分の縫製を繰り返した回数である。縫い始め処理の開始時、変数L、Mの値は0である。
【0065】
作業者が入力部14を介して、縫い始め処理の開始を指示すると、CPU81はROM82からプログラムを読み出して縫い始め処理を開始する。図8に示すように、縫い始め処理が開始されると、CPU81は、記憶装置84から上糸6の太さを取得する(S21)。CPU81は、エアシリンダ31の駆動を停止する(S22)。ロッド32は外力によりX方向に移動可能となる。
【0066】
CPU81は、主モータ24、糸調子ソレノイド16を駆動し、縫製を開始する(S23)。主モータ24は縫製速度で駆動する。CPU81は変数Mの計数を開始する(S24)。以降、CPU81は、一針分の縫製を繰り返される毎に、変数Mの値に1を加算する。
【0067】
CPU81は変数Mの値が所定数に到達したか否かを判断する(S31)。ROM82は、自然数である所定数を記憶する。CPU81は、変数Mの値が所定数に到達していないと判断した場合(S31:NO)、処理をS31に戻す。
【0068】
CPU81は、変数Mの値が所定数に到達したと判断した場合(S31:YES)、圧力センサ50が検出する各検出点Rにおける上糸6による圧力を取得する(S32)。CPU81は、S32で取得した上糸6による圧力に基づき、検出領域54の内側における上糸6による圧力分布を生成する(S33)。
【0069】
CPU81は、前回圧力分布を取得する(S34)。前回圧力分布は、今回のS33を実行する前に生成した圧力分布である。RAM83は、前回圧力分布を記憶する。CPU81は、縫製の開始直後である場合、S7(図7参照)で記憶した圧力分布を前回圧力分布として取得する。詳細は後述するが、CPU81は、糸掴み装置30における上糸6の状態を判断する毎に、S33で生成された圧力分布を前回圧力分布として、RAM83に記憶する。この場合、CPU81は、次回のS34において、今回のS33で生成され、RAM83に記憶した圧力分布を取得する。
【0070】
CPU81は、糸掴み装置30に掴持された上糸6の端部6Aの位置を判断する(S35)。S35において、CPU81は、S33で生成した圧力分布に基づき、X方向に配列する検出点Rのうち、最もX1方向の側で上糸6による圧力を検出した検出点Rの位置から、端部6Aの位置を推定する。
【0071】
CPU81は、糸掴み装置30に掴持された上糸6の長さを判断する(S36)。S36において、CPU81は、S33で生成した圧力分布に基づき、X方向に配列する検出点Rのうち、上糸6による圧力を検出した検出点Rの数を計数し、フック44Aに掴持された上糸6の長さを判断する。
【0072】
CPU81は、糸掴み装置30に掴持された上糸6の太さを判断する(S37)。S37において、CPU81は、S33で生成した圧力分布に基づき、Y方向に配列する検出点Rのうち、上糸6による圧力を検出した検出点Rの数を計数し、糸掴み装置30に掴持された上糸6の太さを判断する。CPU81は処理をS31(図9参照)に移行する。
【0073】
図9に示すように、CPU81は、上糸6と下糸との間で糸絡み不良が発生したか否かを判断する(S41)。S41において、CPU81は、端部6Aの位置のX2方向への推移に基づき、糸絡み不良が発生したか否かを判断する。CPU81は、端部6Aの位置のX2方向への推移を、S35(図8参照)において判断した端部6Aの位置と、S34(図8参照)で取得した前回圧力分布における端部6Aの位置との差分から導出する。
【0074】
CPU81は、端部6Aの位置のX2方向への推移が所定の閾値よりも小さい場合、糸絡み不良が発生したと判断し(S41:YES)、処理をS46に移行する。CPU81は、端部6Aの位置のX2方向への推移が所定の閾値以上である場合、糸絡み不良が発生していないと判断し(S41:NO)、処理をS42に移行する。
【0075】
CPU81は、上糸6の糸抜けの発生を予測したか否かを判断する(S42)。ROM82は、縫製を開始してからの総針落ち数と、糸掴み装置30に掴持された上糸6の長さとの関係を記憶する。S42において、CPU81は、S36(図8参照)で判断した上糸6の長さと、ROM82が記憶する総針落ち数に基づく上糸6の長さとを比較する。
【0076】
CPU81は、S36で判断した上糸6の長さが、ROM82が記憶する総針落ち数に基づく上糸6の長さに対して所定の閾値よりも小さい場合、糸抜けの発生を予測した判断して(S42:YES)、処理をS46に移行する。
【0077】
CPU81は、S36で判断した上糸6の長さが、ROM82が記憶する総針落ち数に基づく上糸6の長さに対して所定の閾値以上である場合、糸抜けの発生を予測していないと判断する(S42:NO)。この場合、糸切れの発生を予測したか否かを判断する(S43)。S43において、CPU81は、S37(図8参照)で判断した上糸6の太さと、S22(図8参照)で取得した上糸6の太さとを比較する。
【0078】
CPU81は、S37で判断した上糸6の太さが、S22で取得した上糸6の太さに対して所定の閾値よりも小さい場合、糸切れの発生を予測したと判断して(S43:YES)、処理をS46に移行する。CPU81は、S37で判断した上糸6の太さが、S22で取得した上糸6の太さに対して所定の閾値以上である場合、糸切れの発生を予測していないと判断し(S43:NO)、処理をS52に移行する。
【0079】
CPU81は、縫製の不良として、糸絡み不良の発生を予測した場合(S41:YES)、糸抜けの発生を予測した場合(S42:NO)、又は糸切れの発生を予測と判断した場合(S43:NO)、変数Lの値に1を加算して、RAM83に記憶する(S46)。
【0080】
CPU81は、主モータ24の縫製速度を減速させる(S48)。CPU81は、縫い始め警告を行う(S49)。S49において、CPU81は、表示部13を駆動し、糸掴み装置30における上糸6の状態が正常ではなく、縫製の不良の発生を検知、予測した旨を警告する。CPU81は変数Lの値が上限であるか否かを判断する(S50)。ROM82は、変数Lの上限値を記憶する。
【0081】
CPU81は、変数Lの値が上限値よりも小さく、上限ではないと判断した場合(S50:NO)、処理をS54に移行する。CPU81は、変数Lの値が上限値と等しく、上限であると判断した場合(S50:YES)、主モータ24、糸調子ソレノイド16の駆動を停止し、S23(図8参照)で開始した縫製を終了する(S51)。CPU81は縫い始め処理を終了する。
【0082】
CPU81は、表示部13を介して縫い始め警告を行っているか否かを判断する(S52)。CPU81は、S49にて縫い始め警告を行った場合(S52:YES)、表示部13の駆動を停止し、縫い始め警告を停止する(S53)。CPU81は処理をS54に移行する。CPU81は、縫い始め警告を行っていない場合(S52:NO)、処理をS54に移行する。
【0083】
CPU81は、S33(図8参照)で生成した上糸6による圧力分布を前回圧力分布としてRAM83に記憶する(S54)。CPU81は、S33で生成した上糸6による圧力分布に基づき、上糸6がフック44Aに掴持されていないか否かを判断する(S55)。
【0084】
CPU81は、検出領域54の複数の検出点Rの少なくとも1つで上糸6による圧力が検出された場合、上糸6がフック44Aに掴持されていると判断する(S55:NO)。CPU81は、変数Mの値を0に設定して、RAM83に記憶し(S56)、処理をS31(図8参照)に戻す。CPU81は、上糸6がフック44Aに掴持されていないと判断する迄、S31~S56の処理を繰り返す。
【0085】
CPU81は、上糸6がフック44Aから抜けることにより複数の検出点Rの全てで上糸6による圧力が検出されない場合、上糸6がフック44Aに掴持されていないと判断する(S55:YES)。CPU81は縫い始め処理を終了する。
【0086】
以上の如く、第一実施形態のミシン1において、糸掴み装置30はフック44Aにより上糸6を掴持する。糸掴み装置30は第二状態においてフック44Aと圧力センサ50との間で上糸6を挟持する。圧力センサ50は検出領域54の内側にある複数の検出点Rにおける上糸6による圧力を検出する(S32)。CPU81は、各検出点Rにおける上糸6による圧力に基づき、上糸6の状態として、上糸6の端部6Aの位置(S35)、糸掴み装置30に掴持された上糸6の長さ(S36)及び太さ(S37)を判断する。圧力センサ50は上糸6による圧力を複数の検出点Rにて検出する。故に、ミシン1は糸掴み装置30に上糸6が掴持されているか否かだけでなく、糸掴み装置30に掴持された上糸6の位置、長さ、太さ等を判断できる。
【0087】
CPU81は、上糸6の状態に基づき、縫製時における不良として糸抜けの発生(S42)、及び糸切れの発生(S43)を予測する。CPU81は、縫製時における不良の発生を予測した場合、表示部13を駆動し、縫い始め警告を行う(S49)。ミシン1は、フック44Aに掴持された上糸6の長さ、太さに基づき、糸抜け、糸切れの発生を予測する。ミシン1は、表示部13を介して作業者に縫製の不良の発生を予測した旨を報知する。故に、ミシン1は不良の発生を未然に防ぐことができる。
【0088】
CPU81は、変数Mが所定数に到達する度に、今回の上糸6による圧力分布に基づき、端部6Aの位置を判断する(S35)。CPU81は、今回の上糸6による圧力分布に基づく端部6Aの位置と、前回圧力分布に基づく端部6Aの位置との差分から、端部6Aの位置の推移を導出する。CPU81は、端部6Aの位置の推移に基づき、上糸6の状態として、糸絡み不良が発生したか否かを判断する(S41)。ミシン1は、糸絡み不良の発生を検知することで、糸絡み不良による不具合を抑制できる。
【0089】
圧力センサ50は検出領域54の内側の複数の検出点Rで上糸6による圧力を検出する。複数の検出点Rは、X方向に配列する。CPU81は、圧力センサ50が検出する各検出点Rの上糸6による圧力に基づき、検出領域54の内側の上糸6による圧力分布を生成する(S33)。CPU81は、生成した圧力分布に基づき、上糸6の端部6Aの位置(S35)、及び糸掴み装置30に掴持された上糸6の長さ(S36)を判断する。このように、ミシン1は、上糸6による圧力分布から上糸6の状態を判断できる。
【0090】
圧力センサ50において、複数の検出点Rは、X方向及びY方向に格子状に配列する。CPU81は、圧力センサ50が検出する各検出点Rの上糸6による圧力に基づき、上糸6による二次元の圧力分布を生成する(S33)。CPU81は、上糸6による圧力分布に基づき、上糸6の端部6Aの位置(S35)、糸掴み装置30に掴持された上糸6の長さ(S36)及び太さ(S37)を判断する。このように、ミシン1は、上糸6による二次元の圧力分布から上糸6の状態を判断できる。
【0091】
糸掴み装置30は掴持部44のフック44Aにより上糸6を掴持する。掴持部44はエアシリンダ31の駆動により、X方向に移動可能である。また、複数の検出点Rは、X方向に配列する。掴持部44が移動する方向と、上糸6の圧力を検出する複数の検出点Rの配列とが揃うので、ミシン1は圧力センサ50により上糸6の状態を検出しやすくなる。
【0092】
CPU81は、上糸6による圧力分布に基づき、上糸6の状態として、上糸6の端部6Aの位置を判断する(S35)。CPU81は、端部6Aの位置に基づき、糸絡み不良が発生したと判断した場合(S41:YES)、主モータ24の縫製速度を減速させる(S48)。故に、ミシン1は端部6Aの位置が適切でない場合に発生する不具合を抑制できる。
【0093】
CPU81は、上糸6による圧力分布に基づき、上糸6の状態として、フック44Aに掴持された上糸6の長さを判断する(S36)。CPU81は、上糸6の長さに基づき、糸抜きの発生を予測したと判断した場合(S42:YES)、主モータ24の縫製速度を減速させる(S48)。故に、ミシン1はフック44Aに掴持された上糸6の長さが適切でない場合に発生する不具合を抑制できる。
【0094】
CPU81は、上糸6による圧力分布に基づき、上糸6の状態として、フック44Aに掴持された上糸6の太さを判断する(S37)。CPU81は、上糸6の太さに基づき、糸切れの発生を予測したと判断した場合(S43:YES)、主モータ24の縫製速度を減速させる(S48)。故に、ミシン1はフック44Aに掴持された上糸6の太さが適切でない場合に発生する不具合を抑制できる。
【0095】
本発明の第二実施形態を、図10図14を参照して説明する。図10図11では、第一実施形態のミシン1と同様の構成に同じ符号を付す。第二実施形態のミシン1は、糸掴み装置30に替わり糸掴み装置60を備える。図10図11に示すように、糸掴み装置60は、圧力センサ50に替わりスキャナ70を備える点で糸掴み装置30と異なる。
【0096】
図12に示すように、スキャナ70は、基部62、枠部64、69、走査部68、透光部材74を備える。基部62はX方向及びY方向に延びる直方体状を呈する。基部62はZ2方向の側の面に板49を固定する。枠部64は基部62のX2方向の端部且つZ1方向の側に設けられる。枠部64はX方向及びY方向に延びる板状を呈する。枠部69は基部62のX2方向の端部且つZ2方向の側に設けられる。枠部69は枠部64のZ2方向の端部に固定する。枠部69はX方向及びY方向に延びる角筒状を呈する。枠部69には、Z方向に貫通する貫通穴が形成される。走査部68は枠部64のZ2方向の端部且つ枠部69の貫通穴の内側に設けられる。透光部材74は走査部68のZ2方向の端部且つ枠部69の貫通穴の内側に設けられる。透光部材74は透光性を有する。
【0097】
第二状態の糸掴み装置60において、枠部69及び透光部材74は、フック44Aとの間で上糸6を挟持する(図10参照)。走査部68はX方向及びY方向に走査することで、透光部材74を介して上糸6の画像情報を取り込む。スキャナ70は走査部68が取り込んだ画像情報を制御部80に出力する。制御部80のCPU81は、スキャナ70が出力した画像情報を取得し、画像を生成する。CPU81は、生成した画像に基づき画像解析を行うことで、上糸6の情報として、フック44Aが上糸6を掴持しているか否か、上糸6の端部6Aの位置、フック44Aに掴持された上糸6の長さ及び太さを判断する。
【0098】
図13を参照し、第二実施形態のCPU81が実行する第二縫製前処理を説明する。図13図15では、第一実施形態と同様の処理に同じ符号を付す。第二縫製前処理は、S4~S6の処理に替えて、S64~S66の処理を実行する点で縫製前処理と異なる。以下、第二縫製前処理を縫製前処理との相違点を中心に説明する。
【0099】
糸掴み装置60による上糸6の掴持動作を終了すると(S3)、上糸6の先端部はフック44Aとスキャナ70との間で挟持される。CPU81は、走査部68を走査し、透光部材74を介して画像情報をスキャナ70に取り込む(S64)。CPU81は、スキャナ70から画像情報を取得し、画像を生成する(S65)。
【0100】
CPU81は、画像解析を行うことで、S65で生成した画像に上糸6があるか否かを判断する(S66)。CPU81は、S65で生成した画像に上糸6がある場合(S66:YES)、RAM83にS65で生成した画像を記憶する(S67)。
【0101】
図14図15を参照し、第二実施形態のCPU81が実行する第二縫い始め処理を説明する。第二縫い始め処理は、S32~S43、S54、S55の処理に替えて、S72~S83、S84、S85の処理を実行する点で縫い始め処理と異なる。以下、第二縫い始め処理を縫い始め処理との相違点を中心に説明する。
【0102】
図14に示すように、CPU81は、変数Mの値が所定数に到達したと判断した場合(S31:YES)、CPU81は、走査部68を走査し、透光部材74を介して画像情報をスキャナ70に取り込む(S72)。CPU81は、スキャナ70から画像情報を取得し、画像を生成する(S73)。CPU81は、前回画像を取得する(S74)。前回画像は、今回のS73を実行する前に生成した画像である。RAM83は、前回画像を記憶する。CPU81は、縫製の開始直後である場合、S67(図14参照)で記憶した画像を前回画像として取得する。其の後のS74の処理において、CPU81は後述するS84でRAM83に記憶される前回画像を取得する。
【0103】
CPU81は、上糸6の状態として、上糸6の端部6Aの位置(S75)、フック44Aに掴持された上糸6の長さ(S76)及び太さ(S77)を判断する。S75~S77の処理は、上糸6による圧力分布に替えて、S73で生成した画像に基づき画像解析を行うことで判断する点でS35~S37と異なる。
【0104】
図15に示すように、CPU81は、糸絡み不良が発生したか否か(S81)、糸抜けの発生を予測したか否か(S82)、糸切れの発生を予測したか否かを判断する(S83)。S81~S83の処理は、S35~S37で判断した上糸6の状態と、S34で取得した前回圧力分布に替えて、S75~S77で判断した上糸6の状態、とS74で取得した前回画像に基づき判断を行う点でS41~S43と異なる。
【0105】
CPU81は、S73(図14参照)で生成した画像を前回画像としてRAM83に記憶する(S94)。CPU81は、S73で生成した画像に基づき画像解析を行うことで、上糸6がフック44Aに掴持されていないか否かを判断する(S95)。
【0106】
以上の如く、第二実施形態のミシン1において、糸掴み装置60は第二状態においてフック44Aとスキャナ70との間で上糸6を挟持する。CPU81は、X方向及びY方向に走査部68を走査することで、透光部材74を介して上糸6の画像情報を取り込む(S72)。CPU81は、スキャナ70から画像情報を取得し、画像情報を生成する(S73)。CPU81は、生成した画像に基づき画像解析を行うことで、上糸6の端部6Aの位置(S75)、糸掴み装置30に掴持された上糸6の長さ(S76)及び太さ(S77)を判断する。このように、ミシン1は、スキャナ70において走査部68が走査することで上糸6の状態を判断できる。
【0107】
上記実施形態において、糸掴み装置30、60は本発明の糸掴み部の一例である。圧力センサ50、スキャナ70は本発明の検出部の一例である。S35~S37、S75~S77の処理を実行するCPU81は本発明の判断部の一例である。S42、S43、S82、S83の処理を実行するCPU81は本発明の不良予測部の一例である。表示部13は本発明の報知部の一例である。S41、S81の処理を実行するCPU81は本発明の糸絡み不良判断部の一例である。X方向は本発明の所定方向の一例である。Y方向は本発明の第二所定方向の一例である。S48の処理を実行するCPU81は本発明の位置縫製制御部、長さ縫製制御部、太さ縫製制御部の一例である。透光部材74は本発明の第一部材の一例である。フック44Aは本発明の第二部材の一例である。
【0108】
本発明は第一実施形態及び第二実施形態から種々変更できる。以下説明する各種変形例は、矛盾が生じない限り夫々組み合わせ可能である。例えば、糸掴み装置30、60は、針板7の下方に設けてもよい。
【0109】
糸掴み装置30、60は、圧力センサ50、スキャナ70に替えて、張力検出部を備えてもよい。張力検出部は、複数の所定位置での上糸6の張力を検出する。この場合、CPU81は、上糸6の情報として複数の所定位置での上糸6の張力を張力検出部から取得し、上糸6の状態を判断する。糸掴み装置30、60は、圧力センサ50及びスキャナ70を備えてもよい。この場合、CPU81は、圧力センサ50が出力する上糸6の圧力、及びスキャナ70が出力する画像情報を組み合わせて、上糸6の状態を判断してもよい。
【0110】
糸掴み装置30、60において、上糸6の保持の方法は、フック44Aにより掴持する方法に限定されない。例えば、糸掴み装置30、60において、フック44Aに替えて、クランプが上糸6を挟持してもよい。糸掴み装置30、60は、エアシリンダ31以外の駆動源で駆動してもよい。例えば、糸掴み装置30、60はモータの動力で駆動してもよい。
【0111】
ミシン1はスピーカを備えてもよい。この場合、CPU81は、S8、S11、S48、S49において、スピーカから音声を出力することで報知してもよい。
【0112】
第一実施形態において、圧力センサ50は、X方向及びY方向に格子状に配列する複数の検出点Rにより二次元で上糸6による圧力を検出した。これに対し、圧力センサ50は、X方向に配列する仮想線P及びY方向に配列する仮想線Qの何れかにおいて、一次元で上糸6による圧力を検出してもよい。圧力センサ50がX方向に配列する仮想線Pにて、一次元で上糸6による圧力を検出する場合、CPU81は、X方向に配列する仮想線Pのうち、最もX1方向の側で上糸6による圧力を検出した仮想線Pの位置に基づき、上糸6の端部6Aの位置を判断する。圧力センサ50がY方向に配列する仮想線Qにて、一次元で上糸6による圧力を検出する場合、CPU81は、Y方向に配列する仮想線Qのうち、上糸6による圧力を検出した仮想線Qの数に基づき、フック44Aに掴持された上糸6の太さを判断する。複数の仮想線PのX方向の間隔は適宜変更してもよい。複数の仮想線QのY方向の間隔は適宜変更してもよい。複数の仮想線PのX方向の間隔と、複数の仮想線QのY方向の間隔とは、異なっていてもよい。また、圧力センサ50により取得される圧力分布は、圧力を検出した検出点Rの位置や数だけでなく、検出点R毎に圧力の強弱も多段階に検出可能とし、圧力の強弱も含めてROM82に記憶された適正な圧力分布やRAM83に記憶される前回圧力分布と比較して縫製不良の発生の検知や予知をおこなうものであっても良い。更に、縫製に使用される上糸6の太さや種類毎に、検出点Rで検出されるべき圧力の適正値(例えば、上限、加減の閾値)が設定され、適正範囲にある圧力を検出した検出点Rのみを対象として上糸6の長さや太さ、端部位置などを検出するものであっても良い。また、適正範囲を外れた値で圧力を検出する検出点Rの数を元に縫製不良を検知したり、予知するものであったりしても良い。
【0113】
第二実施形態において、透光部材74は少なくとも一部が透光性を有していればよい。走査部68は、フック44Aがスキャナ70に対してX方向及びY方向に移動することで走査してもよい。
【0114】
縫製前処理において、CPU81は、S5で生成した上糸6の圧力分布に基づき、上糸6の状態を判断してもよい。第二縫製前処理において、CPU81は、S65で生成した画像に基づき画像解析を行うことで、上糸6の状態を判断してもよい。CPU81は、ミシン1による縫製が完了したときに、縫製前処理、第二縫製前処理を実行してもよい。
【0115】
縫い始め処理において、CPU81は、S35~S37の処理の一部を省略してもよい。CPU81はS41の処理を省略してもよい。CPU81はS42、S43の処理の一部又は全部を省略してもよい。第二縫い始め処理において、CPU81は、S75~S77の処理の一部を省略してもよい。CPU81はS81の処理を省略してもよい。CPU81はS82、S83の処理の一部又は全部を省略してもよい。
【0116】
縫い始め処理、第二縫い始め処理において、糸絡み不良が発生したと判断した場合、糸抜けの発生を予測した場合、及び糸切れの発生を予測した場合の全ての場合で、主モータ24の縫製速度を減速し、縫い始め警告を行った。これに対し、CPU81は、縫製の不良の発生を検知又は予測した場合、夫々の縫製の不良に応じた制御を行ってもよい。例えば、CPU81は、糸抜けの発生を予測した場合、糸調子ソレノイド16を制御することで、糸調子部15により作用する上糸6の張力を低減させてもよい。
【0117】
縫い始め処理、第二縫い始め処理において、CPU81は、判断した上糸6の状態に基づき、縫製条件の変更を行ってもよい。例えば、ROM82には上糸6の太さに応じて適した縫製条件が予め設定されており、CPU81は、フック44Aに掴持された上糸6の太さに基づき、ROM82から対応する縫製条件を読み込んで、主モータ24の縫製速度、糸調子部15により作用する上糸6の張力、糸切機構18の可動刃の移動量を変更してもよい。
【0118】
CPU81が図7図9図13図15の処理を実行する為の指令を含むプログラムはCPU81がプログラムを実行する迄にミシン1の記憶機器に記憶すればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は適宜変更してもよい。CPU81が実行するプログラムはケーブル又は無線通信を介して他の装置から受信し、記憶装置84等に記憶されてもよい。他の装置は、例えばPC、ネットワーク網を介してミシン1と接続するサーバを含む。
【0119】
図7図9図13図15の処理の各ステップについて、CPU81が実行する例に限定せず、他の電子機器(例えば、ASIC)が一部又は全部を実行してもよい。複数の電子機器(例えば、複数のCPU)が図7図9図13図15の処理の各ステップを分散処理してもよい。図7図9図13図15の処理の各ステップは適宜順序の変更、ステップの省略、及び追加してもよい。ミシン1上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)等がCPU81からの指令に依り図7図9図13図15の処理の一部又は全部を行ってもよい。実施形態で挙げた各種数値は単なる例示であり、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0120】
1 ミシン
30、60 糸掴み装置
44A フック
50 圧力センサ
70 スキャナ
81 CPU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15