(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150868
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサおよびその製造方法並びに超音波トランスデューサ素子
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20231005BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
H04R17/00 330K
H04R17/00 330H
H04R31/00 330
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060194
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 正明
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA08
5D019BB02
5D019BB04
5D019BB13
5D019BB28
5D019HH01
(57)【要約】
【課題】実装時に共振周波数を調整することが可能な超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】超音波トランスデューサは、上面が実質的に平坦な第1基板10と、前記第1基板の下面に接合される圧電層12と、前記圧電層の前記第1基板と接合される面とは反対側の下面に設けられ、互いに電気的に分離された第1電極14aおよび第2電極14bと、を備えるチップ11と、上面が前記圧電層の下面と離間して対向し、前記上面に設けられ互いに電気的に分離された第1パッドおよび第2パッドを備える第2基板20と、前記第1パッドと前記第1電極とを電気的に接続する第1接続部26aと、前記第2パッドと前記第2電極とを電気的に接続する第2接続部26bと、を備え、前記第1接続部および前記第2接続部は、前記チップが共振するときの固定端であるである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が実質的に平坦な第1基板と、前記第1基板の下面に接合される圧電層と、前記圧電層の前記第1基板と接合される面とは反対側の下面に設けられ、互いに電気的に分離された第1電極および第2電極と、を備えるチップと、
上面が前記圧電層の下面と離間して対向し、前記上面に設けられ互いに電気的に分離された第1パッドおよび第2パッドを備える第2基板と、
前記第1パッドと前記第1電極とを電気的に接続する第1接続部と、
前記第2パッドと前記第2電極とを電気的に接続する第2接続部と、
を備え、
前記第1接続部および前記第2接続部は、前記チップが共振するときの固定端である超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記第1接続部と前記第2接続部とは第1方向に配列し、
前記第1接続部と前記第2接続部との前記第1方向における最小の間隔は、前記第1接続部と前記第2接続部との間における前記チップの前記第1方向に直交する第2方向における最大の幅より大きい請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記チップの平面形状は第1方向の最大の幅が前記第1方向に直交する第2方向の最大の幅より大きい形状であり、
前記第1接続部は、前記第1方向における前記チップの第1端部において前記第1電極と接続し、
前記第2接続部は、前記第1方向における第1端部と異なる前記チップの第2端部において前記第2電極と接続する請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1接続部は、前記第2方向に沿って複数設けられ、前記第2接続部は、前記第2方向に沿って複数設けられる請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記第1電極、前記第2電極、前記第1パッドおよび前記第2パッドの平面形状は、前記第1接続部と前記第2接続部との間の前記第1方向における間隔を、前記第1接続部および前記第2接続部の前記第1方向の幅より大きく異ならせることが可能な形状である請求項2から4のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記第2電極は、平面形状が一点を中心とする略円形状である第1部分と、前記第1電極とで前記第1部分を挟む第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続する第3部分と、を有し、
前記第1接続部は、前記一点を中心とする略円弧状の一部に沿って複数設けられ、
前記第2接続部は、前記略円弧状の別の一部に沿って複数設けられる請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記チップの平面形状は第1方向の幅が前記第1方向に直交する第2方向の幅より大きい形状であり、
前記第1接続部と前記第2接続部とは前記第2方向に配列され、前記第1方向における前記チップの第1端部において前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ接続される請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記第1方向における前記第1端部と異なる前記チップの第2端部における前記チップの前記第2方向の幅は、前記第1端部における前記チップの前記第2方向における幅より小さい請求項7に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記チップは、前記圧電層の上面に設けられ、前記第1電極と電気的に接続され、前記圧電層を挟み前記第2電極の少なくとも一部と対向する第3電極を備える請求項1、2、6および7のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記チップは、前記圧電層の端面に設けられ、前記第1電極と前記第3電極とを電気的に接続する配線を備える請求項9に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
第1基板と、前記第1基板下に設けられた圧電層と、前記圧電層の下面に設けられた第1電極および第2電極と、を備えるウエハを準備する工程と、
前記ウエハの前記第1基板を上面から薄膜化することで、前記第1基板の上面を実質的に平坦化する工程と、
前記ウエハを個片化することで、前記第1電極および前記第2電極が電気的に分離された複数のチップを形成する工程と、
第2基板の上面が前記圧電層の下面に空隙を挟み対向し、第1接続部が前記第2基板の上面に設けられた第1パッドと前記第1電極とを接続し、第2接続部が前記第2基板の上面に設けられた第2パッドと前記第2電極とを接続するように、前記第2基板上に前記複数のチップの少なくとも1つを実装する工程と、
を含む超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項12】
前記第1基板の上面を実質的に平坦化する工程は、前記第1基板の上面を研削または研磨することで前記第1基板の上面を実質的に平坦化する工程を含む請求項11に記載の超音波トランスデューサの製造方法。
【請求項13】
第1基板と、
前記第1基板の下面に接合される上部電極と、
前記上部電極の下面に接合される圧電層と、
前記圧電層の一方の第1端部における前記上部電極と接続され、前記第1端部における前記圧電層の第1端面から、前記第1端部における前記圧電層の下面にまで、設けられた上部端子と、
前記圧電層の下面に設けられ、前記上部端子と電気的に分離された下部電極と、
前記圧電層の前記第1端部と反対の第2端部における前記圧電層の下面に設けられた下部端子と、
前記圧電層の下面に設けられ、前記下部電極と前記下部端子とを電気的に接続し、前記第1端部と前記第2端部との配列方向に交差する方向において、前記下部電極の幅および前記下部端子の幅より狭い幅を有するネック電極と、
を備える超音波トランスデューサ素子。
【請求項14】
前記第1端部における前記第1基板の側面は、前記第1端部における前記圧電層の端面よりも平面視において外側に位置し、
前記第1端部における前記第1基板の側面と前記第1端部における前記圧電層の端面との間において前記第1基板の下面に設けられた前記上部電極の部分に前記上部端子は電気的に接続されている請求項13に記載の超音波トランスデューサ素子。
【請求項15】
前記第2端部において、前記第1基板、前記上部電極、前記圧電層および前記下部端子の側面は平面視において略一致する請求項13または請求項14に記載の超音波トランスデューサ素子。
【請求項16】
前記第2端部における前記第1基板の側面は、前記第2端部における前記圧電層の端面よりも平面視において外側に位置する請求項13または請求項14に記載の超音波トランスデューサ素子。
【請求項17】
請求項13に記載の超音波トランスデューサ素子と、
前記上部端子および前記下部端子に対応する領域に第1パッドおよび第2パッドが設けられた第2基板と、
前記上部端子と前記第1パッドとを接続する第1接続部と、
前記下部端子と前記第2パッドとを接続する第2接続部と、
を備える超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサおよびその製造方法並びに超音波トランスデューサ素子に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等に用いられる指紋センサや医療用エコー装置には、超音波トランスデューサが用いられている。超音波トランスデューサとして、圧電体を用いた圧電型マイクロマシン超音波トランスデューサ(pMUT:Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)が知られている。pMUTでは、基板上に圧電層が設けられ、圧電層がたわみ振動する振動領域における基板を薄くしキャビティが設けられている。pMUTを実装基板上にフリップチップ実装することが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動領域の共振周波数は基板のキャビティの大きさによって変化する。このため、pMUTを実装基板に実装するときには、共振周波数を調整することができない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、実装時に共振周波数を調整することが可能な超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上面が実質的に平坦な第1基板と、前記第1基板の下面に接合される圧電層と、前記圧電層の前記第1基板と接合される面とは反対側の下面に設けられ、互いに電気的に分離された第1電極および第2電極と、を備えるチップと、上面が前記圧電層の下面と離間して対向し、前記上面に設けられ互いに電気的に分離された第1パッドおよび第2パッドを備える第2基板と、前記第1パッドと前記第1電極とを電気的に接続する第1接続部と、前記第2パッドと前記第2電極とを電気的に接続する第2接続部と、を備え、前記第1接続部および前記第2接続部は、前記チップが共振するときの固定端である超音波トランスデューサである。
【0007】
上記構成において、前記第1接続部と前記第2接続部とは第1方向に配列し、前記第1接続部と前記第2接続部との前記第1方向における最小の間隔は、前記第1接続部と前記第2接続部との間における前記チップの前記第1方向に直交する第2方向における最大の幅より大きい構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記チップの平面形状は第1方向の最大の幅が前記第1方向に直交する第2方向の最大の幅より大きい形状であり、前記第1接続部は、前記第1方向における前記チップの第1端部において前記第1電極と接続し、前記第2接続部は、前記第1方向における第1端部と異なる前記チップの第2端部において前記第2電極と接続する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1接続部は、前記第2方向に沿って複数設けられ、前記第2接続部は、前記第2方向に沿って複数設けられる構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1電極、前記第2電極、前記第1パッドおよび前記第2パッドの平面形状は、前記第1接続部と前記第2接続部との間の前記第1方向における間隔を、前記第1接続部および前記第2接続部の前記第1方向の幅より大きく異ならせることが可能な形状である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第2電極は、平面形状が一点を中心とする略円形状である第1部分と、前記第1電極とで前記第1部分を挟む第2部分と、前記第1部分と前記第2部分とを接続する第3部分と、を有し、前記第1接続部は、前記一点を中心とする略円弧状の一部に沿って複数設けられ、前記第2接続部は、前記略円弧状の別の一部に沿って複数設けられる構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記チップの平面形状は第1方向の幅が前記第1方向に直交する第2方向の幅より大きい形状であり、前記第1接続部と前記第2接続部とは前記第2方向に配列され、前記第1方向における前記チップの第1端部において前記第1電極および前記第2電極にそれぞれ接続される構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1方向における前記第1端部と異なる前記チップの第2端部における前記チップの前記第2方向の幅は、前記第1端部における前記チップの前記第2方向における幅より小さい構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記チップは、前記圧電層の上面に設けられ、前記第1電極と電気的に接続され、前記圧電層を挟み前記第2電極の少なくとも一部と対向する第3電極を備える構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記チップは、前記圧電層の端面に設けられ、前記第1電極と前記第3電極とを電気的に接続する配線を備える構成とすることができる。
【0016】
本発明は、第1基板と、前記第1基板下に設けられた圧電層と、前記圧電層の下面に設けられた第1電極および第2電極と、を備えるウエハを準備する工程と、前記ウエハの前記第1基板を上面から薄膜化することで、前記第1基板の上面を実質的に平坦化する工程と、前記ウエハを個片化することで、前記第1電極および前記第2電極が電気的に分離された複数のチップを形成する工程と、第2基板の上面が前記圧電層の下面に空隙を挟み対向し、第1接続部が前記第2基板の上面に設けられた第1パッドと前記第1電極とを接続し、第2接続部が前記第2基板の上面に設けられた第2パッドと前記第2電極とを接続するように、前記第2基板上に前記複数のチップの少なくとも1つを実装する工程と、を含む超音波トランスデューサの製造方法である。
【0017】
上記構成において、前記第1基板の上面を実質的に平坦化する工程は、前記第1基板の上面を研削または研磨することで前記第1基板の上面を実質的に平坦化する工程を含む構成とすることができる。
【0018】
本発明は、第1基板と、前記第1基板の下面に接合される上部電極と、前記上部電極の下面に接合される圧電層と、前記圧電層の一方の第1端部における前記上部電極と接続され、前記第1端部における前記圧電層の第1端面から、前記第1端部における前記圧電層の下面にまで、設けられた上部端子と、前記圧電層の下面に設けられ、前記上部端子と電気的に分離された下部電極と、前記圧電層の前記第1端部と反対の第2端部における前記圧電層の下面に設けられた下部端子と、前記圧電層の下面に設けられ、前記下部電極と前記下部端子とを電気的に接続し、前記第1端部と前記第2端部との配列方向に交差する方向において、前記下部電極の幅および前記下部端子の幅より狭い幅を有するネック電極と、を備える超音波トランスデューサ素子である。
【0019】
上記構成において、前記第1端部における前記第1基板の側面は、前記第1端部における前記圧電層の端面よりも平面視において外側に位置し、前記第1端部における前記第1基板の側面と前記第1端部における前記圧電層の端面との間において前記第1基板の下面に設けられた前記上部電極の部分に前記上部端子は電気的に接続されている構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記第2端部において、前記第1基板、前記上部電極、前記圧電層および前記下部端子の側面は平面視において略一致する構成とすることができる。
【0021】
上記構成において、前記第2端部における前記第1基板の側面は、前記第2端部における前記圧電層の端面よりも平面視において外側に位置する構成とすることができる。
【0022】
本発明は、上記超音波トランスデューサ素子と、前記上部端子および前記下部端子に対応する領域に第1パッドおよび第2パッドが設けられた第2基板と、前記上部端子と前記第1パッドとを接続する第1接続部と、前記下部端子と前記第2パッドとを接続する第2接続部と、を備える超音波トランスデューサである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、実装時に共振周波数を調整することが可能な超音波トランスデューサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る超音波トランスデューサを示す断面図、
図1(b)および
図1(c)は、それぞれチップおよび配線基板の平面図である。
【
図2】
図2(a)から
図2(c)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの動作を説明する図である。
【
図3】
図3(a)から
図3(d)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
【
図4】
図4(a)から
図4(d)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
【
図5】
図5は、比較例1に係る超音波トランスデューサの断面図である。
【
図6】
図6(a)は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサを示す断面図、
図6(b)および
図6(c)は、それぞれチップおよび配線基板の平面図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、実施例1の変形例2における超音波トランスデューサの断面図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、実施例1の変形例2における超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
【
図9】
図9(a)は、実施例2に係る超音波トランスデューサを示す断面図、
図9(b)および
図9(c)は、それぞれチップおよび配線基板の平面図である。
【
図10】
図10(a)は、実施例2の変形例1に係る超音波トランスデューサを示す断面図、
図10(b)および
図10(c)は、それぞれチップおよび配線基板の平面図である。
【
図11】
図11(a)は、実施例3に係る超音波トランスデューサを示す断面図、
図11(b)および
図11(c)は、それぞれチップおよび配線基板の平面図である。
【
図12】
図12(a)は、実施例4に係る超音波トランスデューサを示す断面図、
図12(b)および
図12(c)は、それぞれチップおよび配線基板の平面図である。
【
図13】
図13(a)は、実施例4に係る超音波トランスデューサを示す断面図、
図13(b)および
図13(c)は、それぞれチップおよび配線基板の平面図、
図13(d)および
図13(e)はチップの別の例における平面図である。
【
図14】
図14(a)および
図14(b)は、それぞれ実施例1および3における周波数に対するインピーダンスZを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0026】
図1(a)から
図1(c)は、実施例1に係る超音波トランスデューサを示し、
図1(a)は、
図1(b)および
図1(c)のA―A線断面図である。
図1(b)は、平面図であり、チップ11を上から下面を透視したときの電極14aおよび14bを説明するものである。
図1(c)は、平面図で、超音波トランスデューサを上から見たときの配線基板20を説明するもので、チップ11を点線で示してある。なお、クロスハッチングの部分が電極14aおよび14bである。配線基板20の上面の法線方向をZ方向、接続部26bから26aの方向をX方向、Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とする。
【0027】
図1(a)から
図1(c)を用いて超音波トランスデューサ100の構成を説明する。まず、
図5において、比較例1を説明し、実施例1に到る考えを説明する。基板10は、
図3(a)から
図4(d)に述べるように、上部電極(電極14c)、圧電層12および下部電極(電極14bの部分15a)を積層していくため、熱に耐え、ウエハ13の反りやクラックを抑制するために、ある程度厚い基板、いわゆるウエハ13を用意している。ウエハ13の厚さは例えば500μmである。そして電極14aおよび14bをパターニングした後に、比較例1では、凹部31aを形成する。本装置は、超音波トランスデューサであるため、振動を容易にするため、振動領域50の基板10を薄くするためである。
【0028】
しかしながら、凹部加工は、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)法を使ったドライエッチングが一般的である。そのため、製造コストが高く、コストアップの問題が発生する。よって、
図3(a)から
図4(a)の基板10上への成膜加工が終わったのちに、
図4(b)のように、半導体加工技術、例えばグラインド技術を採用して基板10を薄く加工すれば、ドライ加工よりも大幅に安価となることに着目した。
【0029】
符号10は、第1基板であり、前述したように全域を薄く研磨している。この基板10の下面には全域に上部電極である電極14cが設けられている。なお、基板10とこの電極14cの間に絶縁層、例えばシリコン酸化膜を被膜してもよい。そして電極14cの下面に圧電層12が設けられている。
【0030】
基板10および圧電層12のX方向における中央部は振動領域50であり、振動領域50の+X側は端部54a(第1端部)である。X方向における端部54aの反対の端部は端部54b(第2端部)である。上部端子(電極14aおよび配線14d)は、端部54aにおける電極14cと接続され、端部54aにおける圧電層12の第1端面から、端部54aにおける圧電層12の下面にまで、電極材料で再配置されている。これにより、電極14aと14cは電気的に接続され、ほぼ同電位となる。
【0031】
また、圧電層12の下面には、電極14aとは、スリットで電気的に分離され、電極14aが設けられた端部54aから端部54bの方に渡る電極14bの部分15a(下部電極)と、部分15aと一体に形成され、端部54bにおける圧電層12の下面に設けられた下部端子である部分15bと、部分15aと部分15bとを電気的に接続する部分15cからなるネック電極と、を有する。Y方向(端部54aと54bとの配列方向に交差する方向)において、部分15cの幅W2は、部分15bの幅および部分15cの幅より狭い。
【0032】
このように、電極14aと部分15bは、それぞれ端部54aおよび54bに配置される。接続部26a、26bが固定端となり、固定端の内側が振動領域50となる。部分15aは振動領域50に配置される。この部分15aと部分15bは、一体で被覆されるが、振動を容易にするため、幅狭の部分15cが設けられる。
【0033】
チップ11は、基板10と、圧電層12と、電極14aと、電極14bと、電極14cとを有する超音波トランスデューサ素子である。チップ11は、
図3(a)から
図4(a)に示すように、金属層44、圧電層12および金属層45を積層するため、ハンドリングしやすいように元々は厚い基板10である。積層した後に、
図4(b)のように基板10に薄く削ってから、4側面の部分がフルカットされる。これは、圧電層12の振動を容易にするためである。
【0034】
チップ11は、直方体であり、平面視における短辺の幅Wx>長辺の幅Wyである。基板10の下面の全面に渡り電極14cが設けられている。電極14cの下面の全面に渡り圧電層12が設けられている。また、圧電層12のX方向の幅は、基板10のX方向の幅より若干小さい。これは、ダイシングブレードやレーザでフルカットする際、圧電層12の端面の配線14dを削らないためである。また、
図3(a)~
図4(d)の製造方法において明らかになるが、圧電層12は、電極14cを介し基板10に接合されている。
【0035】
圧電層12の下面に電極14aおよび14bが設けられ、電極14aと14bとは離間して、電気的に分離されている。電極14aは、圧電層12の下面における+X方向の端部54a側に設けられている。電極14aのY方向における幅は、チップ11のY方向における幅Wyとほぼ同じである。電極14bは部分15a~15cを有している。部分15aは、圧電層12の下面のX方向における中央部に設けられている。部分15bは、圧電層12の下面における-X方向の端部54aに設けられている。部分15aおよび15bのY方向における幅はチップ11のY方向における幅Wyとほぼ同じである。部分15cは、部分15aと15bを接続する配線である。部分15cのY方向の幅W2は部分15aおよび15cのY方向の幅より小さい。圧電層12は、平面形状は長方形状であり、この長方形状が有する4つの辺に相当する面がそれぞれ端面である。圧電層12の+X側の端面には配線14dが設けられており、電極14aと14cとを電気的に接続する。
【0036】
配線基板20の上面に互いに電気的に分離された電極24aおよび24bが設けられている。電極24aおよび24bは、配線基板20に設けられる配線(不図示)を通じて、発振回路や周波数カウンタ等の回路と接続されている。チップ11の電極14aと配線基板20の電極24aとは接続部26aにより電気的に接続されている。チップ11の電極14bと配線基板20の電極24bとは接続部26bにより電気的に接続されている。配線基板20の上面とチップ11の下面とは空隙30を介し対向している。接続部26aおよび26bが電極24aおよび24bと接続する箇所が振動の固定端52aおよび52bとしてそれぞれ機能する。チップ11における接続部26aと26bとの間の領域はたわみ振動する振動領域50である。振動領域50のX方向の幅は、接続部26aと26bがチップ11に接合される領域の間隔L1となる。
【0037】
基板10は、例えばシリコン基板またはSOI(Silicon on insulator)基板(すなわちシリコン基板上にシリコン酸化膜が形成された基板)、ガラスエポキシ基板等のプリント基板、ガラス基板またはサファイア基板である。基板10の厚さは例えば1μm~50μmであり、一例として10μmである。
【0038】
電極14a~14cおよび配線14dは、例えばルテニウム、モリブデン、金、チタン、白金、アルミニウム、銅、クロム、銀またはパラジウム等の金属膜またはこれらの中から複数の膜が選択された積層膜である。電極14a、14bおよび配線14dの材料は、電極14cの材料と同じでもよいし、異なっていてもよい。電極14a~14cおよび配線14dの厚さは例えば0.1μm~1μmであり、一例として0.2μmである。
【0039】
圧電層12の材料は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、KNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)、BiFeO3(鉄酸ビスマス)、BaTiO3(チタン酸バリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、LiNbO3(ニオブ酸リチウム)、LiTaO3(タンタル酸リチウム)、ZnO(酸化亜鉛)またはPVDF(ポリフッ化ビニリデン)である。圧電層12は、同じまたは異なる材料からなる分極方向を反転させた2つの圧電層を積層した構造でもよい。圧電層12の厚さは、例えば1μm~10μmであり、一例として1μmである。圧電層12の厚さは基板10より厚くてもよいが、効率的にチップ11をたわみ振動させるため、圧電層12は基板10より薄いことが好ましい。
【0040】
配線基板20は、例えばガラスエポキシ基板等のプリント基板である。電極24aおよび24bの材料は、例えば銅、金またはアルミニウムである。電極24aおよび24bの厚さは例えば0.1μm~1μmである。
【0041】
接続部26aおよび26bは、例えば半田ボール、金バンプ、銅バンプ、金属ペーストを焼結させた焼結金属層等の金属層である。接続部26aおよび26bの高さは例えば10μm~200μmであり、一例として100μmである。接続部26aおよび26bのチップ11に接合される箇所での幅W1は例えば10μm~200μmであり、一例として100μmである。接続部26aおよび26bの立体形状として円錐台状を例に図示しているが、接続部26aおよび26bの立体形状は円柱状またはボール状等任意である。
【0042】
基板10の平面形状における一辺の大きさは例えば0.5mm~10mmであり、一例として、チップ11のX方向における幅Wxは1mm、Y方向における幅Wyは0.2mmである。電極14bの部分15aのX方向における幅は、例えば0.1mm~1mmである。接続部26aと26bとの間隔L1は、例えば0.3mm~8mmであり、一例として0.8mmである
【0043】
実施例1における超音波トランスデューサの超音波の動作を説明する。
図2(a)から
図2(c)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの動作を説明する図である。
図2(a)では、基板10、圧電層12、電極14bおよび14cを図示し、その他の部位の図示を省略する。
図2(b)および
図2(c)では、基板10、圧電層12、配線基板20、接続部26aおよび26bを図示し、その他の部位の図示を省略する。
【0044】
超音波を送信する場合を例に説明する。
図2(a)に示すように、電極24aと24b(
図1(a)参照)との間に交流電圧を加えると、圧電層12を挟み電極14bと14cとの間にZ方向の電界55が加わる。電界55の向きは、交流電圧の電圧の正負の方向に応じ時間とともに交互に反転する。すなわち、電極14bにマイナスの電圧、電極14cにプラスの電圧が加わることと、電極14bにプラスの電圧、電極14cにマイナスの電圧が加わることを繰り返す。逆圧電効果により、圧電層12内の面方向に歪み56が生じる。歪み56の向きは、電界55の方向に応じ時間とともに交互に反転する。
【0045】
図2(b)に示すように、圧電層12の歪み56aが圧電層12を縮める方向の場合、基板10に加わる応力58aは引っ張る方向の応力となる。このため、チップ11は上方に膨らむようにたわむ。
図2(c)のように、圧電層12の歪み56bが圧電層12を広げる方向の場合、基板10に加わる応力58bは圧縮する方向の応力となる。このため、チップ11は下方に膨らむようにたわむ。交流電圧の電圧の方向が反転することに対応して、
図2(b)の状態および
図2(c)の状態が時間とともに交互に生じる。これにより、チップ11の厚さ方向に振動するたわみ振動が生じる。たわみ振動により、チップ11周囲の気体または液体内に、チップ11の厚さ方向に伝搬する超音波が送信される。
【0046】
超音波を受信する場合には、超音波によりチップ11がたわみ振動すると、
図2(b)および
図2(c)のように、基板10の応力が引っ張る方向の応力58aと圧縮する方向の応力58bとを繰り返す。これにより、圧電層12に縮める方向の歪み56aと広げる方向の歪み56bとが交互に生じる。
図2(a)のように、圧電効果により、圧電層12の厚さ方向に方向が交互に反転する電界55が発生する。これにより、電極14bと14cとの間に交流電圧が生じる。電極24aと24bの間の交流電圧を検出することで、超音波を検出できる。
【0047】
図2(b)および
図2(c)を用いて、圧電層12には、主に圧縮応力または引張応力が生じることを説明した。厳密にいえば、圧電層12に分布する面内方向の応力は、圧電層12の中心付近と、接続部26aおよび26bにより圧電層12が固定される接続部26aおよび26b付近では応力の向きが反転する。例えば、
図2(b)で示したように、圧電層12に電界が生じて、圧電層12に圧縮応力が生じた場合は、圧電層12のX方向における中央部では内向きの方向に応力が生じ、圧電層12が上に凸となる形で撓みが生じる。このとき、圧電層12の接続部26aおよび26b付近では、圧電層12に接続部26aおよび26bにより外向きの方向に応力が生じる。このため、接続部26aおよび26b付近では内向きの力と外向きの力が生じることとなり、応力が打ち消される。このため、圧電層12の下面の中央部付近に電極14bの部分15aを形成するが、接続部26aおよび26b付近には電極14bをできるだけ形成しないことが好ましい。しかし、部分15aと接続部26bとを電気的に接続するために電極14bの部分15bを設けることになる。
【0048】
実施例1においては、電極14bは、圧電層12の下面の中央部に形成される部分15aと、接続部26bと接続される部分15bと、その2つの部分15aと15bとを接続する部分15cと、を備える。部分15cはネック電極とも呼ぶ。ネック電極は、接続部26b付近に形成されるため、圧電層12に電界がかかることを抑制するために細長い形状をしている。これにより、部分15cにより圧電層12に応力が生じ、応力が打消されることを抑制しつつ、部分15aと部分15bの導通をとることができる。
【0049】
また、部分15cのY方向における幅W2が部分15aおよび15bのY方向の幅Wyと同じである場合、接続部26aに接続される電極14aの平面形状と、接続部26bに接続される電極14bの平面形状と、が大きく異なる、このため、圧電層12の下面における電極のバランスが大きく崩れる。これにより、振動が抑制される原因となる。そこで、部分15aと15bとの間にネックとなる部分15cを設ける。これにより、電極14aと部分15bとが対称になり、圧電層12の下面における電極のバランスがほぼ均等となる。このように、部分15cのY方向における幅W2は、部分15aおよび15bのY方向における幅Wyより狭いことが好ましい。部分15cの幅W2は、部分15aおよび15bの幅Wyの1/2以下が好ましく、1/3以下がより好ましい。部分15cと部分15aおよび15bとが接続する箇所において、部分15cのX方向に延伸する辺と部分15aおよび15bのY方向に延伸する辺とが直交している。この場合、電極14bにクラックが生じる可能性がある。電極14bに生じるクラックを抑制するため、部分15cのX方向に延伸する辺と部分15aおよび15bのY方向に延伸する辺とが交差する箇所は曲線状としてもよい。
【0050】
[実施例1の製造方法]
図3(a)から
図4(d)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図である。
図3(a)から
図3(d)と
図4(a)は、
図1(a)とは上下を反転して図示している。
図4(b)から
図4(d)は、
図1(a)と上下同じように図示している。
【0051】
図3(a)に示すように、基板10からなるウエハ13を準備する。基板10の厚さは例えば100μm~500μmである。基板10上に、例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用い全面に渡り金属層44を形成する。金属層44上に圧電層12を形成する。圧電層12は例えばスパッタリング法を用い形成する。ウエハ状の圧電層12を準備し、圧電層12を金属層44上に張り付け、その後、圧電層12の上面を研磨することで圧電層12を所望の厚さとしてもよい。
【0052】
図3(b)に示すように、圧電層12を、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を用い所望の形状にパターニングする。これにより、圧電層12は分離され、圧電層12の間に溝41が形成される。圧電層12の平面形状は、
図1(b)のような長方形状である。
【0053】
図3(c)に示すように、圧電層12の上面にマスク層42を形成する。マスク層42は、例えばフォトレジストであり、フォトリソグラフィ法を用い形成する。マスク層42は、
図1(b)において、電極14aおよび14bが形成されていない領域に形成する。
【0054】
図3(d)に示すように、圧電層12間に露出した金属層44、圧電層12およびマスク層42を覆うように金属層45を、例えばスパッタリング法または真空蒸着法を用い形成する。金属層45は、圧電層12の間の金属層44上、溝41内の圧電層12の端面、圧電層12の上面、およびマスク層42の上面に形成される。
【0055】
図4(a)に示すように、マスク層42を除去することで、マスク層42上の金属層45をリフトオフする。マスク層42がフォトレジストの場合、マスク層42の除去には有機溶剤を用いる。これにより圧電層12の上面に金属層45が除去された領域43が形成される。
【0056】
図4(b)に示すように、ウエハ13の下面を例えばダイシングテープ等の支持体(不図示)に張り付ける。その後、基板10を薄膜化する。基板10の薄膜化には、研磨法、研削法またはエッチング法を用いる。これにより、基板10は所望の厚さとなる。エッチングの際、DRIE法を用いることもできるが、この工程で、研磨法、研削法を用いれば、製造コストを低減できる。
【0057】
図4(c)に示すように、基板10、金属層44および45を切断することで、ウエハ13を複数のチップ11に個片化する。個片化には、例えばダイシングブレードを用いたダイシング法またはレーザを用いたダイシング法を用いる。ウエハ13は+Z側から切断してもよいし、-Z側から切断してもよい。このとき、圧電層12の4つの端面のうち、配線14dを形成する端面以外の圧電層12の3つの端面に形成された金属層45が除去されるように、金属層44および45を切断する。圧電層12と基板10との間の金属層44から電極14cが形成される。圧電層12の上面に、金属層45から電極14aおよび14bが形成される。圧電層12の1つの端面に、金属層45から配線14dが形成される。チップ11を支持体(不図示)から剥がす。
【0058】
図4(d)に示すように、配線基板20上に複数のチップ11を接続部26aおよび26bを用いフリップチップ実装する。チップ11と配線基板20との間は空隙30である。これにより、チップ11がたわみ振動しても、振動が配線基板20により妨げられることを抑制できる。
図4(d)では、配線基板20上に同一ウエハ13から個片化した同じ構造の複数のチップ11を実装しているが、配線基板20上に実装されるチップは異なる構造のチップでもよい。
【0059】
[比較例1]
図5は、比較例1に係る超音波トランスデューサ110の断面図である。
図5に示すように、比較例1では、基板10の上面に凸部31bと凹部31aが設けられている。実施例1との違いを説明するため、便宜的に基板10と凸部31bを分けて説明するが、一体物である。基板10は平面視で正方形状である。基板10と凸部31bの材料はシリコンである。凹部31aは、基板10の中央部に設けられ、凹部31a内は空隙30aとなっている。凸部31bは凹部31aの両側に設けられている。平面視でみると、基板10の中心部分がほぼ真円形状の凹部31aとなり、基板10上で、その凹部31aの周縁に凸部31bが形成されている。凹部31aでない部分に形成される凸部31bは、平面視で、正方形状の真ん中をほぼ真円形状でくり抜いた形となっている。凸部31bの厚みと基板10の厚みを合わせた厚さは凹部31aにおける基板10の厚さの例えば10倍であり、例えば100μm~300μmである。このため、凸部31bでは、たわみ振動はほとんど生じない。凹部31aの領域がたわみ振動する振動領域50となる。振動領域50のX方向における幅はL2である。
【0060】
比較例1では、たわみ振動の共振周波数は凹部31aのX方向における幅L2により決まる。このため、チップ11を配線基板20に実装するときに、チップ11における共振周波数は決まっており、共振周波数の調整ができない。また、凹部31aの形成には、例えば深い凹部を形成するドライエッチングであるDRIE法を用いる。DRIE法を用いると製造コストが増加する。また、DRIE法を用いて凹部31aを形成すると、幅L2の寸法精度が悪く、共振周波数がばらつきやすくなる。
【0061】
実施例1によれば、
図1(a)から
図1(c)のように、基板10(第1基板)の上面は実質的に平坦である。配線基板20(第2基板)の上面は、離間して空隙30を介し圧電層12の下面と対向している。接続部26a(第1接続部)は、電極24a(第1パッド)と電極14a(第1電極)とを電気的に接続し、接続部26b(第2接続部)は、電極24b(第2パッド)と電極14b(第2電極)とを電気的に接続する。接続部26aおよび26bは、チップ11が共振するときの固定端である。なお、チップ11が振動するときに、接続部26aおよび26bがチップ11に比べ変形しないときには、接続部26aと26bとチップ11との接合面が固定端となり、接続部26aおよび26bがチップ11と同程度に変形するときには、接続部26aと26bと配線基板20との接合面が固定端となる。
【0062】
これにより、チップ11を配線基板20に実装するときに、接続部26aと26bとの間隔L1を設定することで、チップ11の共振周波数を調整できる。また、比較例1の
図5のような凹部31aを設けなくてもよいため、製造コストを低減できる。さらに、凹部31aの幅L2のばらつきによる共振周波数のばらつきを抑制できる。さらに、基板10の上面を研磨することにより、基板10の上面の表面粗さが低減できれば、たわみ振動以外の不要な振動モードを抑制できる。このため、Q値が向上する。さらに、配線基板20上に、複数のチップ11を実装することで、設計の自由度は向上する。基板10の上面が実質的に平坦とは、基板10の上面の凹部が共振周波数にほとんど影響しない程度に基板10の上面が平坦であればよい。例えば、基板10の上面の凸部と凹部の高さの差が基板10の厚さの平均値の10%以下であればよい。基板10の上面の凸部と凹部の高さの差が基板10の厚さの平均値の5%以下であると、共振周波数への影響をさらに低減できる。実質的に平坦であるとは、断面視でみたときに、比較例1における凹部31aと凸部31bのように、基板10の上面に顕著な凹凸が存在することで、共振周波数が定まるような場合は除く。基板10の上面には、表面粗さで表されるような、微小なオーダーの凹凸があってもよい。
【0063】
図1(b)のように、接続部26aと26bはX方向(第1方向)に配列し、接続部26aと26bのX方向における間隔L1は、チップ11のY方向(第1方向に直交する第2方向)における幅Wyより大きい。これにより、
図2(a)および
図2(b)のように、チップ11のたわみ振動を大きくできる。間隔L1は幅Wyの1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましく、3倍以上がさらに好ましい。チップ11の平面形状が長方形状でない場合においては、接続部26aと26bのX方向における最小の間隔L1が、接続部26aと26bとの間におけるチップ11のY方向における最大の幅Wyより大きければよい。
【0064】
また、
図1(a)から
図1(c)のように、接続部26aは、X方向におけるチップ11の第1端部54aにおいて電極14aと接続し、接続部26bは、X方向における第2端部54bにおいて電極14bと接続する。これにより、接続部26aおよび26bがチップ11の短辺付近を固定する構造となり、
図2(a)および
図2(b)のように、チップ11のたわみ振動を大きくできる。幅Wxは幅Wyの2倍以上が好ましく、3倍以上がより好ましく、5倍以上がさらに好ましい。チップ11の平面形状が長方形状でない場合には、チップ11の平面形状は、X方向の最大の幅WxがY方向の最大の幅Wyより大きい長方形状であればよい。
【0065】
図1(a)および
図1(b)のように、チップ11の電極14c(第3電極)は、圧電層12の上面に設けられ、電極14aと電気的に接続され、圧電層12を挟み電極14bの少なくとも一部と対向する。これにより、電極14aと14bとの間に交流電圧を加えると、
図2(a)のように、圧電層12内に厚さ方向に電界55が生じ、平面方向に歪み56が生じる。これにより、
図2(a)および
図2(b)に示すように、チップ11をたわみ振動させることができる。電極14cは設けられておらず、電極14aおよび14bに交流電圧を加えることで、歪み56を生成することもできる。
【0066】
図1(a)のように、チップ11の配線14dは、圧電層12の端面に設けられ、電極14aと14cとを電気的に接続する。これにより、圧電層12を貫通する貫通電極を設けることなく、電極14aと14cとを電気的に接続できる。よって、製造コストを低減できる。
【0067】
また、実施例1の製造方法では、
図3(a)から
図4(a)のように、基板10と、基板10上に設けられた圧電層12と、電極14aおよび14bと、を備えるウエハ13を準備する。
図4(b)のように、ウエハ13の基板10の上面を薄膜化することで、基板10の上面を実質的に平坦化する。
図4(c)のように、ウエハ13を個片化することで複数のチップ11を形成する。
図4(d)のように、接続部26aおよび26bを用い配線基板20上に複数のチップ11の少なくとも1つを実装する。これにより、チップ11を配線基板20に実装するときに、接続部26aと26bとの間隔L1を設定することで、チップ11の共振周波数を調整できる。また、凹部31aを設けなくてもよいため、製造コストを低減できる。
【0068】
[実施例1の変形例1]
図6(a)は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサを示す断面図、
図6(b)および
図6(c)は、それぞれチップおよび配線基板の平面図である。
図6(b)は、上方からチップ11を透視したチップ11の下面の平面図である。
図6(b)において、電極14aおよび14bをクロスハッチングで示し、
図6(c)において、チップ11を配線基板20の上面に投影した領域を破線で示し、電極24a、24bおよびパッド25a~25dをクロスハッチングで示している。
図6(a)は、
図6(b)および
図6(c)のA-A断面図である。
【0069】
図6(a)から
図6(c)を用い実施例1の変形例1の超音波トランスデューサ101の構成を説明する。配線基板20の上面には、パッド25a~25dが設けられている。パッド25aは電極24aの-X側に設けられ、パッド25cはパッド25aの-X側に設けられている。パッド25bは電極24bの+X側に設けられ、パッド25dはパッド25bの+X側に設けられている。パッド25aと25cとのX方向における間隔、パッド25bと25dとのX方向における間隔D1は、例えば接続部26aおよび26bの幅W1と同程度であり一例として0.1mmである。
【0070】
電極24aとパッド25aとは配線27aにより電気的に接続され、パッド25aと25cとは配線27cにより電気的に接続されている。電極24bとパッド25bとは配線27bにより電気的に接続され、パッド25bと25dとは配線27dにより電気的に接続されている。電極24a、24b、パッド25a~25dおよび配線27a~27dは、同時に形成された同じ材料からなる金属層である。配線27a~27d上にはソルダレジスト等の絶縁体からなる樹脂層22が設けられている。これにより、配線基板20の上面において、パッド25a~25dの間には樹脂層22が設けられる。
【0071】
パッド25aおよび25c上には接続部26aおよび26cがそれぞれ接続可能であり、パッド25bおよび25d上には接続部26bおよび26dがそれぞれ接続可能である。接続部26aおよび26cのいずれか一方を設け、接続部26aおよび26cの他方を設けないことも可能である。接続部26bおよび26dのいずれか一方を設け、接続部26bおよび26dの他方を設けないことも可能である。
【0072】
チップ11の平面形状は長方形状であり、チップ11のX方向における幅Wxは一例として2mmであり、Y方向における幅Wyは一例として0.2mmである。電極14aにはY方向に接続部26aおよび26cが接続可能であり、電極14bの部分15bにはY方向に接続部26bおよび26dが接続可能である。
【0073】
図6(a)から
図6(c)では、実線の接続部26aおよび26bのように、接続部26aはパッド25aに接続され、接続部26bはパッド25bに接続されている。このとき、振動領域50aの固定端52aおよび52bは、パッド25aおよび25bと接合する接続部26aおよび26bである。接続部26aと26bの間隔はL1aであり、振動領域50aは接続部26aと26bとの間の領域となる。チップ11の共振周波数は間隔L1aにより定まる。
【0074】
図6(a)から
図6(c)において、破線で示された接続部26cおよび26dは、チップ11の別の実装例である。接続部26cはパッド25cに接続され、接続部26dはパッド25dに接続されている。このとき、振動領域50bの固定端52cおよび52dは、パッド25cおよび25dと接合する接続部26cおよび26dである。接続部26cと26dの間隔はL1bであり、振動領域50bは接続部26aと26bとの間の領域となる。接続部26cおよび26dを用いチップ11を実装したときの共振周波数は、接続部26aおよび26bを用いチップ11を実装したときの共振周波数に比べ高くなる。
【0075】
接続部26aおよび接続部26dを設け、接続部26bおよび26cを設けないことも可能であり、接続部26bおよび接続部26cを設け、接続部26aおよび26dを設けないことも可能である。このように、実施例1の変形例1では、4種類の接続部26a~26dの配置を用いチップ11を配線基板20上に実装することが可能である。パッド25aと25cの間隔と、パッド25bと25dの間隔と、を異ならせておけば、4種類の配置を選択することによりチップ11の共振周波数を4つの中から選択することができる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0076】
実施例1の変形例1によれば、電極14a、14b、パッド25a、25c(第1パッド)、25bおよび25d(第2パッド)の平面形状は、接続部26aまたは26cと、接続部26bまたは26dとの間のX方向における間隔L1aおよびL1bを、接続部26a~26dのX方向の幅W1より大きく異ならせることが可能である。これにより、接続部26aまたは26cと26bまたは26dのX方向の間隔L1aおよびL1bを接続部26a~26dの幅W1以上異ならせて、チップ11を配線基板20上に実装することが可能である。よって、接続部26aまたは26c、および26bまたは26dの位置により、チップ11の共振周波数を異ならせることができる。接続部26aまたは26cと、接続部26bまたは26dの間のX方向における間隔L1aおよびL1bは、接続部26a~26dのX方向の幅W1の1.5倍以上大きく異ならせることが可能であることがより好ましい。
【0077】
配線基板20の上面に、接続部26aおよび26cが接続可能な複数のパッド25aおよび25cをX方向に配置し、接続部26bおよび26dが接続可能な複数のパッド25bおよび25dをX方向に配置する。これにより、接続部26aまたは26cと、接続部26bまたは26dと、のX方向の間隔を異ならせて、チップ11を配線基板20上に実装することが可能となる。電極14aが接続可能なパッドは3個以上であり、電極14bが接続可能なパッドは3個以上でもよい。
【0078】
[実施例1の変形例2]
実施例1における
図1(a)は、理想形であり、基板10の+X側側面と再配置電極である配線14dの+X側の面が面一で形成されている。しかしこの場合、配線14dのX方向における厚み部分が電極14cとコンタクトしており、コンタクト面積が微小である。
【0079】
図7(a)および
図7(b)は、実施例1の変形例2における超音波トランスデューサの断面図である。
図7(a)の構造では、端部54aにおける基板10の側面は、端部54aにおける圧電層12の端面よりも平面視において外側(+X側)に位置する。端部54aにおける基板10の側面と端部54aにおける圧電層12の端面との間において基板10の下面に設けられた電極14cの部分に配線14dは電気的に接続されている。端部54aにおける基板10の側面と圧電層12の端面との距離L3は、X方向における配線14dの厚さより大きく、配線14dは、距離L3の範囲において電極14cと接合されている。このため、配線14dと電極14cとのコンタクト面積を確保でき、信頼性が向上する。
【0080】
このように、
図7(a)の構造では、圧電層12の端面に設けられた配線14dと電極14cとのコンタクト性が向上する。基板10を薄化し、部分15aと部分15bとの間に幅W2の小さい部分15cを設けることで、圧電層12の振動を容易として高精度となる。また、製造方法が簡便であり、安価である。このように、高性能かつ安価な超音波トランスデューサ素子および超音波トランスデューサを実現できる。
【0081】
図7(a)の構造では、端部54bにおいて、基板10、電極14b、圧電層12および部分15bの側面は平面視においてフルカットされる際の製造誤差程度に略一致する。この場合、端部54aと54bとの振動のバランスが崩れる。そこで、
図7(b)の構造では、端部54bにおける基板10の側面は、端部54bにおける圧電層12の端面よりも平面視において外側(-X側)に位置する。端部54aにおける基板10の側面と圧電層12の端面との距離L3と、端部54bにおける基板10の側面と圧電層12の端面との距離L3と、はほぼ等しい。これにより、端部54aと54bにおける振動のバランスを確保できる。
【0082】
図8(a)および
図8(b)は、実施例1の変形例2における超音波トランスデューサの製造方法を示す断面図であり、
図4(b)の圧電層12の溝41付近の拡大図である。
図8(a)のように、ダイシングブレード60を用い溝41の+X側の面に設けられた金属層45を除去するように、基板10および圧電層12をフルカット切断する。これにより、溝41の-X側には、
図7(a)のように距離L3の部分が形成される。距離L3の範囲において金属層44と45とが接触する。なお、
図8(a)では、基板10側から基板10および圧電層12を切断しているが、圧電層12側から基板10および圧電層12を切断してもよい。
【0083】
図8(b)のように、ダイシングブレード60を用い溝41の+X側の面および-X側の面に設けられた金属層45を残すように、基板10を切断する。これにより、溝41の+X側および-X側には、
図7(b)のように距離L3の部分が形成される。
図7(b)では、溝41内に絶縁層62が形成されている。これは、金属層45の剥がれを抑制するための層であり、設けられていなくてもよい。また、
図4(b)および
図8(a)に絶縁層62が設けられていてもよい。なお、溝41の-X側の金属層45をあらかじめ除去しておいてもよい。
実施例2の変形例1のように、X方向における異なる位置に接続部26aおよび26cの一方を設けることが可能であり、X方向における異なる位置に接続部26bおよび26dの一方を設けることが可能な構造においても、接続部26aおよび26cの一方をY方向に複数設け、接続部26bおよび26dの一方をY方向に複数設けてもよい。これにより、チップ11の固定する位置を異ならせることが可能であり、共振周波数を調整することが可能となる。また、チップ11を安定に固定することができる。