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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150869
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】多剤式酸化染毛剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20231005BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231005BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/92
A61K8/36
A61K8/34
A61Q5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060195
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 紘之
(72)【発明者】
【氏名】林 未恭
(72)【発明者】
【氏名】古市 紘未
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA122
4C083AB082
4C083AB352
4C083AB412
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC181
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC252
4C083AC472
4C083AC542
4C083AC552
4C083AC692
4C083AC782
4C083AC852
4C083AC892
4C083AC902
4C083AD132
4C083AD642
4C083BB04
4C083BB05
4C083BB11
4C083BB21
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE07
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】酸化染毛剤用組成物の調製容易性と、混合物におけるチキソトロピー性の発現と、を両立可能な多剤式酸化染毛剤を提供する。
【解決手段】多剤式酸化染毛剤は、酸化染毛剤用組成物を含む複数の剤から成り、少なくとも(C)油性成分を含有する。酸化染毛剤用組成物は、(A)式(i)で表されるノニオン性エーテルを含有する。酸化染毛剤用組成物における(C)成分の含有量が、15重量%以下である。
R-(O-Alk)n-OR’ (i)
(式(i)中、Rは、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC10~C30炭化水素基であり、R’は、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC10~C30炭化水素基、又は、この炭化水素基においてエーテル官能基に対するベータ位がヒドロキシ基で置換された基であり、Alkは、直鎖又は分岐のC1~C6アルキレン基であり、nは、1~100の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染毛剤用組成物を含む複数の剤から成り、少なくとも(C)油性成分を含有する多剤式酸化染毛剤であって、
前記酸化染毛剤用組成物は、(A)式(i)で表されるノニオン性エーテルを含有し、
前記酸化染毛剤用組成物における前記(C)成分の含有量が、15重量%以下である、多剤式酸化染毛剤。
R-(O-Alk)n-OR’ (i)
(式(i)中、
Rは、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC10~C30炭化水素基であり、
R’は、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC10~C30炭化水素基、又は、この炭化水素基においてエーテル官能基に対するベータ位がヒドロキシ基で置換された基であり、
Alkは、直鎖又は分岐のC1~C6アルキレン基であり、
nは、1~100の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の多剤式酸化染毛剤であって、
前記複数の剤を混合した混合物における前記(A)成分の含有量が、0.05重量%以上5重量%以下である、多剤式酸化染毛剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の多剤式酸化染毛剤であって、
(D)前記(A)成分以外のノニオン性界面活性剤を更に含有し、
前記複数の剤を混合した混合物における前記(D)成分の含有量が、15重量%以下である、多剤式酸化染毛剤。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の多剤式酸化染毛剤であって、
(E)アニオン性界面活性剤を更に含有する、多剤式酸化染毛剤。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の多剤式酸化染毛剤であって、
前記酸化染毛剤用組成物は、(B)酸化染料と、(D)前記(A)成分以外のノニオン性界面活性剤と、を更に含有し、
前記酸化染毛剤用組成物における前記(D)成分の含有量が、15重量%以上である、多剤式酸化染毛剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多剤式酸化染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪を染色する染毛剤として、多剤式酸化染毛剤が知られている。多剤式酸化染毛剤は、複数の剤から成る。多剤式酸化染毛剤は、複数の剤の混合物が毛髪に塗布され、酸化染料の酸化重合による発色が行われることにより、毛髪を染色する。
【0003】
このような多剤式酸化染毛剤に関する技術として、例えば特許文献1には、多剤式酸化染毛剤にノニオン性エーテルを含有することにより、複数の剤を混合するときの混合性の向上と、毛髪に塗布された混合物の垂れ落ち抑制と、を両立する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-518242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に記載の技術による混合性の向上と垂れ落ち抑制との両立は、ノニオン性エーテルと乳化粒子との分子間相互作用によるチキソトロピー性の発現によって実現されると考えられる。チキソトロピー性が発現していると、混合操作により粘度が低下する一方、混合操作から時間が経過すると粘度が元に戻るためである。
【0006】
しかしながら、本発明者の詳細な検討の結果、複数の剤のうちの1つである酸化染毛剤用組成物において、チキソトロピー性の発現に必要な乳化粒子量を達成しようとすると、酸化染毛剤用組成物の粘度が高くなりやすいことが判明した。酸化染毛剤用組成物の粘度が高い場合、調製機への負荷等の観点から酸化染毛剤用組成物の調製が困難になりやすい。
【0007】
本開示の一局面は、酸化染毛剤用組成物の調製容易性と、混合物におけるチキソトロピー性の発現と、を両立可能な多剤式酸化染毛剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、酸化染毛剤用組成物を含む複数の剤から成り、少なくとも(C)油性成分を含有する多剤式酸化染毛剤である。酸化染毛剤用組成物は、(A)式(i)で表されるノニオン性エーテルを含有する。また、酸化染毛剤用組成物における(C)成分の含有量が、15重量%以下である。
【0009】
R-(O-Alk)n-OR’ (i)
(式(i)中、Rは、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC10~C30炭化水素基であり、R’は、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC10~C30炭化水素基、又は、この炭化水素基においてエーテル官能基に対するベータ位がヒドロキシ基で置換された基であり、Alkは、直鎖又は分岐のC1~C6アルキレン基であり、nは、1~100の整数である。)
【0010】
本開示の一態様では、複数の剤を混合した混合物における(A)成分の含有量が、0.05重量%以上5重量%以下であってもよい。
【0011】
本開示の一態様では、(D)(A)成分以外のノニオン性界面活性剤を更に含有してもよい。また、複数の剤を混合した混合物における(D)成分の含有量が、15重量%以下であってもよい。
【0012】
本開示の一態様では、(E)アニオン性界面活性剤を更に含有してもよい。
本開示の一態様では、酸化染毛剤用組成物は、(B)酸化染料と、(D)(A)成分以外のノニオン性界面活性剤と、を更に含有してもよい。また、酸化染毛剤用組成物における(D)成分の含有量が、15重量%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、酸化染毛剤用組成物の調製容易性と、混合物におけるチキソトロピー性の発現と、を両立可能な多剤式酸化染毛剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について説明する。
[多剤式酸化染毛剤]
多剤式酸化染毛剤は、酸化染料の酸化重合による発色によって毛髪を染色する染毛剤である。多剤式酸化染毛剤は、酸化染毛剤用組成物を含む複数の剤から成る。多剤式酸化染毛剤は、例えば、酸化染料及びアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤と、により構成される2剤式であってもよい。また例えば、多剤式酸化染毛剤は、第1剤及び第2剤に加えて更に他の剤を含んで構成される3剤式以上であってもよい。以下では、主に2剤式を例に挙げて説明する。
【0015】
多剤式酸化染毛剤は、少なくとも(C)油性成分を含有する。多剤式酸化染毛剤は、(D)後述する(A)成分以外のノニオン性界面活性剤を更に含有してもよい。多剤式酸化染毛剤は、(E)アニオン性界面活性剤を更に含有してもよい。(C)成分、(D)成分及び(E)成分については、後に詳述する。なお、多剤式酸化染毛剤が特定の成分を含有することとは、多剤式酸化染毛剤を構成する複数の剤のうちの少なくとも1つが当該特定の成分を含有することを意味する。
【0016】
[酸化染毛剤用組成物]
酸化染毛剤用組成物は、多剤式酸化染毛剤を構成する複数の剤のうちの1つである。酸化染毛剤用組成物は、後述する(A)成分であるノニオン性エーテルを含有する。例えば多剤式酸化染毛剤が2剤式である場合、第1剤が酸化染毛剤用組成物に該当する。すなわち、第1剤は、(A)成分を含有する。また、酸化染毛剤用組成物における(C)成分の含有量は、15重量%以下である。
【0017】
酸化染毛剤用組成物は、(B)酸化染料を更に含有してもよいし、(D)成分を更に含有してもよい。酸化染毛剤用組成物が(D)成分を含有する場合、酸化染毛剤用組成物における(D)成分の含有量は、例えば、15重量%以上である。
【0018】
酸化染毛剤用組成物の形態(剤形)は特に限定されず、例えば、溶液状、乳液状、クリーム状、ジェル状等であってもよい。多剤式酸化染毛剤が2剤式である場合における好適な実施形態では、酸化染毛剤用組成物(第1剤)は、粘度が10000mPa・s以上100000mPa・s以下(より好ましくは10000mPa・s以上50000mPa・s以下、更に好ましくは10000mPa・s以上25000mPa・s以下)のジェル状に調製される。粘度は、東機産業株式会社製のBL型粘度計VISCOMETERを用い、4号ロータで25℃、12rpm、1分間の測定条件で求める。以下同様である。
【0019】
酸化染毛剤用組成物のpHは特に限定されないが、酸化染毛剤用組成物が第1剤である場合、酸化染毛剤用組成物のpHは、一般的に、7以上13以下に調製される。
【0020】
なお、多剤式酸化染毛剤が2剤式である場合、第2剤の形態及びpHも特に限定されない。ただし、好適な実施形態では、第2剤は、粘度が1000mPa・s以上10000mPs・s以下(好ましくは2500mPa・s以上5500mPs・s以下)に調製される。また、第2剤のpHは、一般的に、2以上6以下に調製される。
【0021】
[混合物]
多剤式酸化染毛剤は、多剤式酸化染毛剤を構成する複数の剤を混合した混合物(以下、単に混合物という。)の状態において、染毛の機能を発揮する。混合物が毛髪に塗布されると、アルカリ剤の作用で膨潤した毛髪内に酸化染料が浸透する。そして、酸化剤の作用で、毛髪に含まれるメラニン色素の分解及び酸化染料の酸化重合による発色が行われる。その結果、毛髪が染色される。
【0022】
複数の剤の混合比率は、混合物中の各成分の濃度、混合性、適用方法等を考慮して適宜設定される。多剤式酸化染毛剤が2剤式である場合、第1剤と第2剤との混合比率(第1剤:第2剤の重量比)は、1:0.2~5であることが好ましく、より好ましくは1:0.5~2である。
【0023】
前述したように、酸化染毛剤用組成物は、(A)成分を含有する。混合物における(A)成分の含有量は、例えば、0.05重量%以上5重量%以下である。また、多剤式酸化染毛剤を構成する少なくとも1つの剤は、(C)成分を含有する。これらにより、混合物において、乳化粒子と(A)成分との分子間相互作用によるチキソトロピー性を発現させることができる。混合物においてチキソトロピー性が発現していると、混合操作により混合物の粘度が低下する。
【0024】
以下の説明では、所定の時間以上静置され、粘度が略一定の値に達した状態における混合物の粘度を、混合物の静止時粘度という。混合操作を行った直後の混合物の粘度を、混合物の混合時粘度という。また、混合物における静止時粘度に対する混合時粘度の低下率を、混合物の粘度低下率という。
【0025】
混合物の静止時粘度及び混合時粘度は、特に限定されない。ただし、混合物の毛髪からの垂れ落ちにくさの観点から、混合物の静止時粘度は、6000mPa・s以上であることが好ましく、より好ましくは8000mPa・s以上、更に好ましくは10000mPa・s以上である。また、混合物の混合しやすさの観点から、混合物の混合時粘度は、8000mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは6000mPa・s以下、更に好ましくは5000mPa・s以下である。
【0026】
混合物の粘度低下率も、特に限定されない。ただし、複数の剤の混合性と混合物の毛髪からの垂れ落ちにくさとを両立しやすいことから、混合物の粘度低下率は、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、更に好ましくは30%以上である。
【0027】
多剤式酸化染毛剤が(D)成分を含有する場合、混合物における(D)成分の含有量は、例えば、15重量%以下である。
【0028】
[(A)成分]
(A)式(i)で表されるノニオン性エーテルは、前述したようにチキソトロピー性の発現に寄与する。
【0029】
R-(O-Alk)n-OR’ (i)
(式(i)中、Rは、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC10~C30炭化水素基である。R’は、直鎖又は分岐の飽和又は不飽和のC10~C30炭化水素基、又は、この炭化水素基においてエーテル官能基に対するベータ位がヒドロキシ基で置換された基である。Alkは、直鎖又は分岐のC1~C6アルキレン基である。nは、1~100の整数である。)
【0030】
式(i)中のRは、好ましくは直鎖のC12~C20炭化水素基、より好ましくは直鎖のC14~C18炭化水素基である。式(i)中のRは、アルキル基が好ましい。式(i)中のR’は、好ましくは直鎖のC12~C20炭化水素基、又は、この炭化水素基においてエーテル官能基に対するベータ位がヒドロキシ基で置換された基である。より好ましくは、式(i)中のR’は、直鎖のC14~C18炭化水素基、又は、この炭化水素基においてエーテル官能基に対するベータ位がヒドロキシ基で置換された基である。式(i)中のR’は、アルキル基、あるいはエーテル官能基に対するベータ位がヒドロキシ基で置換されたアルキル基が好ましい。式(i)中のAlkは、好ましくは直鎖のC1~C6アルキレン基、より好ましくはエチレン基(-CH2CH2-)である。式(i)中のnは、好ましくは20以上の整数、より好ましくは40以上80以下の整数である。
【0031】
(A)成分の具体例としては、POEセチルステアリルジエーテル、POEセトステアリルヒドロキシミリスチレンエーテル等が挙げられる。なお、成分名中におけるPOEは、ポリオキシエチレン鎖を表す。以下同様である。
【0032】
(A)成分は、酸化染毛剤用組成物に含有される。(A)成分は、他の剤に更に含有されてもよい。
【0033】
混合物における(A)成分の含有量は、0.001重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.025重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上である。混合物における(A)成分の含有量が0.001重量%以上である場合、混合物においてチキソトロピー性が発現しやすい。混合物においてチキソトロピー性が発現していると、応力を加えることにより粘度が低下する。このため、混合物を混合しやすく毛髪に延ばしやすい。また、混合物においてチキソトロピー性が発現していると、毛髪への塗布後(つまり、応力が加えられなくなった後)には粘度が上昇する。このため、毛髪から混合物が垂れ落ちにくい。混合物における(A)成分の含有量が0.025重量%以上である場合には、混合物においてチキソトロピー性が一層発現しやすく、当該含有量が0.05重量%以上である場合には、混合物においてチキソトロピー性が特に発現しやすい。
【0034】
また、混合物における(A)成分の含有量は、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは7.5重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。混合物における(A)成分の含有量が10重量%以下である場合、混合物の混合時粘度が高くなりにくい。このため、混合物の混合しやすさが向上する。混合物における(A)成分の含有量が7.5重量%以下である場合には、混合物の混合時粘度が一層高くなりにくく、当該含有量が5重量%以下である場合には、混合物の混合時粘度が特に高くなりにくい。
【0035】
[(B)成分]
(B)酸化染料は、例えば、自身の酸化により発色する染料中間体と、染料中間体と反応することにより発色するカプラーと、により構成される。(B)成分は、例えば、酸化染毛剤用組成物に含有される。
【0036】
染料中間体の具体例としては、p-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン(p-トルイレンジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾール、及びこれらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これら染料中間体のうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。
【0037】
カプラーの具体例としては、レゾルシン、m-アミノフェノール、α-ナフトール、5-アミノ-o-クレゾール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノール、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾール、カテコール、フロログルシン、没食子酸、ハイドロキノン、タンニン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。塩の具体例としては、塩酸塩、硫酸塩が挙げられる。これらカプラーのうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。
【0038】
[(C)成分]
混合物においてチキソトロピー性を発現する乳化粒子量を達成するために、多剤式酸化染毛剤には(C)油性成分が含有される。(C)成分は、例えば、酸化染毛剤用組成物に含有される。(C)成分は、他の剤に更に含有されてもよい。(C)成分は、毛髪へのうるおい感の付与等にも寄与する。
【0039】
(C)成分の具体例としては、油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン等が挙げられる。
【0040】
油脂として、例えば、シア脂、ツバキ油、アルガニアスピノサ核油、オリーブ油、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、カカオ脂、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油、杏仁油、パーシック油、桃仁油、パーム油、卵黄油等が挙げられる。なかでも、シア脂、ツバキ油が好ましく用いられる。
【0041】
ロウとして、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。なかでも、ラノリンが好ましく用いられる。
【0042】
炭化水素として、例えば、流動パラフィン、パラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタルワックス、ワセリン、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン等が挙げられる。
【0043】
高級脂肪酸として、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。なかでも、オレイン酸、ステアリン酸が好ましく用いられる。特に好ましくは、オレイン酸が用いられる。
【0044】
高級アルコールとして、例えば、セチルアルコール(セタノール)、2-ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。なかでも、セタノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましく用いられる。特に好ましくは、セタノール、ステアリルアルコールが用いられる。
【0045】
アルキルグリセリルエーテルとして、例えば、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0046】
エステルとして、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸エチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10~30の炭素数を有する脂肪酸から成るコレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ-2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸イソステアリル、コハク酸ジオクチル、コハク酸ジエトキシエチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0047】
シリコーンとして、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、650~10000の平均重合度を有する高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0048】
これら(C)成分のうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。混合物においてチキソトロピー性をより発現しやすくするため、高級アルコールが好ましく用いられる。(C)成分の1種として高級アルコールが用いられる場合、混合物における全ての(C)成分に対する高級アルコールHAの重量比HA/(C)は、0.5以上であることが好ましい。
【0049】
酸化染毛剤用組成物における(C)成分の含有量は、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは7.5重量%以下である。酸化染毛剤用組成物における(C)成分の含有量が15重量%以下である場合、酸化染毛剤用組成物中の乳化粒子量を少なく抑えることができる。このため、粘度が高くなりにくく調製しやすい酸化染毛剤用組成物を得ることができる。酸化染毛剤用組成物における(C)成分の含有量が10重量%以下である場合には、酸化染毛剤用組成物中の乳化粒子量を一層少なく抑えられる。酸化染毛剤用組成物における(C)成分の含有量が7.5重量%以下である場合には、酸化染毛剤用組成物中の乳化粒子量を特に少なく抑えられる。
【0050】
混合物における(C)成分の含有量は、0.5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは3重量%以上である。混合物における(C)成分の含有量が0.5重量%以上である場合、混合物において乳化粒子が安定的に形成されやすい。このため、混合物においてチキソトロピー性がより発現しやすい。混合物の製剤安定性も高くなりやすい。混合物における(C)成分の含有量が1重量%以上である場合には、混合物において乳化粒子が一層安定的に形成されやすく、当該含有量が3重量%以上である場合には、混合物において乳化粒子が特に安定的に形成されやすい。
【0051】
また、混合物における(C)成分の含有量は、10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは6.5重量%以下である。混合物における(C)成分の含有量が10重量%以下である場合、混合物の混合時粘度が高くなりにくい。このため、混合しやすく毛髪に延ばしやすい混合物を得ることができる。混合物における(C)成分の含有量が8重量%以下である場合には、混合物の混合時粘度が一層高くなりにくく、当該含有量が6.5重量%以下である場合には、混合物の混合時粘度が特に高くなりにくい。
【0052】
[(D)成分]
多剤式酸化染毛剤には、(D)(A)成分以外のノニオン性界面活性剤が含有されてもよい。(D)成分は、例えば、酸化染毛剤用組成物に含有される。(D)成分は、他の剤に更に含有されてもよい。
【0053】
(D)成分の具体例としては、(A)成分以外のエーテル型ノニオン性界面活性剤、エステル型ノニオン性界面活性剤、アルキルグリコシド等が挙げられる。
【0054】
(A)成分以外のエーテル型ノニオン性界面活性剤として、例えば、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル、POEトリデシルエーテル、POEイソステアリルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEオクチルフェニルエーテル、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEステアリルエーテル、POEセチルエーテル、POEアルキル(12~14)エーテル等が挙げられる。多剤式酸化染毛剤の調製容易性の観点から、POEオクチルデシルエーテル、POEトリデシルエーテル、POEアルキル(12~14)エーテルが好ましく用いられる。これら好適なエーテル型ノニオン性界面活性剤を複数組み合わせて含有することが、多剤式酸化染毛剤の調製容易性の観点から一層好ましい。
【0055】
エステル型ノニオン性界面活性剤として、例えば、モノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0056】
アルキルグリコシドとして、例えば、アルキル(C8~C16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。
【0057】
これら(D)成分のうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。混合物においてチキソトロピー性をより発現しやすくするため、多剤式酸化染毛剤には2種以上の(D)成分が含有されることが好ましい。
【0058】
また、製剤安定性を高められることから、(D)成分として、(A)成分以外のエーテル型ノニオン性界面活性剤、特に先に例示列挙したようなPOE鎖を有するエーテルが好ましく用いられる。なかでも、好適な実施形態の第1剤のように、ジェル状の製剤には、分岐のPOE鎖を有するエーテルが好ましく用いられる。特に好ましくは、POEオクチルドデシルエーテル、POEヘキシルデシルエーテル等が用いられる。
【0059】
酸化染毛剤用組成物が(D)成分を含有する場合、酸化染毛剤用組成物における(D)成分の含有量は、7.5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上、更に好ましくは15重量%以上である。あるいは、酸化染毛剤用組成物における(D)成分に対する(C)成分の重量比(C)/(D)が、1以下であることが好ましく、より好ましくは0.75以下、更に好ましくは0.5以下である。酸化染毛剤用組成物において、(D)成分の含有量が7.5重量%以上、あるいは(C)/(D)比が1以下である場合、酸化染毛剤用組成物中の乳化粒子量をより少なく抑えることができる。このため、より調製しやすく且つ製剤安定性の高い酸化染毛剤用組成物を得ることができる。酸化染毛剤用組成物において、(D)成分の含有量が10重量%以上、あるいは(C)/(D)比が0.75以下である場合には、酸化染毛剤用組成物中の乳化粒子量を一層少なく抑えられる。酸化染毛剤用組成物において、(D)成分の含有量が15重量%以上、あるいは(C)/(D)比が0.5以下である場合には、酸化染毛剤用組成物中の乳化粒子量を特に少なく抑えられる。
【0060】
酸化染毛剤用組成物が(D)成分と共に(B)成分である酸化染料を含有する場合、上記のようにして製剤安定性を高めることにより、酸化染料の析出を抑制することができる。このため、多剤式酸化染毛剤の使用時における染毛力を向上させることもできる。
【0061】
また、(D)成分の含有量が7.5重量%以上であるか(C)/(D)比が1以下である酸化染毛剤用組成物を用いた場合、混合物の混合時粘度が高くなりにくい。このため、混合しやすく毛髪に延ばしやすい混合物を得ることができる。(D)成分の含有量が10重量%以上であるか(C)/(D)比が0.75以下である酸化染毛剤用組成物を用いた場合には、混合物の混合時粘度が一層高くなりにくい。(D)成分の含有量が15重量%以上であるか(C)/(D)比が0.5以下である酸化染毛剤用組成物を用いた場合には、混合物の混合時粘度が特に高くなりにくい。
【0062】
酸化染毛剤用組成物が(D)成分を含有する場合、酸化染毛剤用組成物における(D)成分の含有量は、45重量%以下であることが好ましく、より好ましくは30重量%以下である。あるいは、酸化染毛剤用組成物における(C)/(D)比が、0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上である。(D)成分の含有量が45重量%以下であるか(C)/(D)比が0.1以上である酸化染毛剤用組成物を用いた場合、混合物の静止時粘度が低くなりにくい。このため、毛髪から垂れ落ちにくい混合物を得ることができる。(D)成分の含有量が30重量%以下であるか(C)/(D)比が0.2以上である酸化染毛剤用組成物を用いた場合には、混合物の静止時粘度が一層低くなりにくい。
【0063】
多剤式酸化染毛剤が(D)成分を含有する場合、混合物における(D)成分の含有量は、6.5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは8重量%以上、更に好ましくは10重量%以上である。あるいは、混合物における(C)/(D)比が、1.5以下であることが好ましく、より好ましくは1以下、更に好ましくは0.75以下である。混合物において、(D)成分の含有量が6.5重量%以上、あるいは(C)/(D)比が1.5以下である場合、混合物における乳化状態が安定しやすくなる。このため、混合物の製剤安定性が高くなりやすい。加えて、混合物におけるチキソトロピー性も発現しやすい。また、混合物において、(D)成分の含有量が6.5重量%以上、あるいは(C)/(D)比が1.5以下である場合、混合物の混合時粘度が高くなりにくい。このため、混合しやすく毛髪に延ばしやすい混合物を得ることができる。混合物において、(D)成分の含有量が8重量%以上、あるいは(C)/(D)比が1以下である場合には、混合物における乳化状態が一層安定しやすく、混合物の混合時粘度が一層高くなりにくい。混合物において、(D)成分の含有量が10重量%以下、あるいは(C)/(D)比が0.75以下である場合には、混合物における乳化状態が特に安定しやすく、混合物の混合時粘度が特に高くなりにくい。
【0064】
多剤式酸化染毛剤が(D)成分を含有する場合、混合物における(D)成分の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは15重量%以下である。あるいは、混合物における(C)/(D)比が、0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.4以上である。混合物において、(D)成分の含有量が20重量%以下、あるいは(C)/(D)比が0.3以上である場合、混合物の静止時粘度が低くなりにくい。このため、毛髪から垂れ落ちにくい混合物を得ることができる。混合物において、(D)成分の含有量が15重量%以下、あるいは(C)/(D)比が0.4以上である場合には、混合物の混合時粘度が一層低くなりにくい。
【0065】
[(E)成分]
多剤式酸化染毛剤には、(E)アニオン性界面活性剤が含有されてもよい。例えば、(E)成分は、酸化染毛剤用組成物に含有されてもよいし、他の剤に更に含有されてもよい。
【0066】
(E)成分の具体例としては、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N-アルキロイルメチルタウリン塩、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これら(E)成分のアニオン基の対イオンの具体例として、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0067】
より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩として、例えば、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩として、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体として、例えば、POEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。リン酸エステル型界面活性剤の具体例として、POEオレイルエーテルリン酸等が挙げられる。
【0068】
これら(E)成分のうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。多剤式酸化染毛剤が(E)成分を含有することにより、混合物においてチキソトロピー性をより発現することができる。混合物においてチキソトロピー性をより発現しやすくするため、(E)成分としては、リン酸基を有するアニオン、硫酸塩が付加されたアニオンが好ましく用いられる。特に好ましくは、POEオレイルエーテルリン酸等が用いられる。
【0069】
[カチオン性界面活性剤]
多剤式酸化染毛剤には、カチオン性界面活性剤が含有されてもよい。例えば、カチオン性界面活性剤は、酸化染毛剤用組成物に含有されてもよいし、他の剤に更に含有されてもよい。
【0070】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム(セトリモニウムクロリド)、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(ステアルトリモニウムクロリド)、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアルミニウム(ベヘントリモニウムクロリド)、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム(ジステアリルジモニウムクロリド)、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、塩化メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。
【0071】
これらカチオン性界面活性剤のうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。
【0072】
[カチオン化ポリマー]
多剤式酸化染毛剤には、カチオン化ポリマーが含有されてもよい。例えば、カチオン化ポリマーは、酸化染毛剤用組成物に含有されてもよいし、他の剤に更に含有されてもよい。
【0073】
カチオン化ポリマーの具体例としては、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化デンプン等のカチオン化多糖類や、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体(ポリクオタニウム-6、例えばマーコート100;Nalco社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7、例えばマーコート550;Nalco社)、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。好ましくはカチオン化多糖類、より好ましくはカチオン化セルロースが用いられる。カチオン化セルロースとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース、塩化O-〔2-ヒドロキシ-3-(ラウリルジメチルアンモニオ)プロピル〕ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。混合物におけるチキソトロピー性の発現の観点から、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドが特に好ましく用いられる。これらカチオン化ポリマーのうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。
【0074】
多剤式酸化染毛剤にカチオン化ポリマーが含有される場合、混合物におけるチキソトロピー性の発現の観点から、多剤式酸化染毛剤におけるカチオン化ポリマーの含有量は、0.005重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.025重量%以上、更に好ましくは0.05重量%以上である。また、同じ観点から、多剤式酸化染毛剤におけるカチオン化ポリマーの含有量は、0.5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3重量%以下、更に好ましくは0.25重量%以下である。
【0075】
混合物においてチキソトロピー性をより発現しやすくするため、混合物中に、ノニオン性物質、アニオン性物質、カチオン性物質がそれぞれ1種以上含有されていることが好ましい。
【0076】
[アルカリ剤]
例えば、多剤式酸化染毛剤が2剤式である場合、第1剤(酸化染毛剤用組成物)には、アルカリ剤が含有される。
【0077】
アルカリ剤の具体例としては、アンモニア、アルカノールアミン、炭酸塩、炭酸水素塩、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。
【0078】
アルカノールアミンとして、例えば、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン等が挙げられる。炭酸塩として、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸グアニジン等が挙げられる。炭酸水素塩として、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素グアニジン等が挙げられる。ケイ酸塩として、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。メタケイ酸塩として、例えば、メタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。硫酸塩として、例えば、硫酸アンモニウム等が挙げられる。塩化物として、例えば、塩化アンモニウム等が挙げられる。リン酸塩として、例えば、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられる。有機アミンとして、例えば、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、グアニジン、1-アミノ-2-プロパノール等が挙げられる。塩基性アミノ酸として、例えば、アルギニン、リジン等が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0079】
これらのアルカリ剤のうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。
【0080】
[酸化剤]
酸化剤は、酸化作用によりメラニンを分解する。また、酸化剤は、(B)成分である酸化染料を酸化重合させることにより発色させる。例えば、多剤式酸化染毛剤が2剤式である場合、酸化剤は、第2剤に含有される。
【0081】
酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物、過酢酸及びその塩、過ギン酸及びその塩、過マンガン酸塩、臭素酸塩等が挙げられる。
これらの酸化剤のうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。
【0082】
[他の成分]
多剤式酸化染毛剤には、必要に応じて他の成分が含有されてもよい。他の成分としては、例えば、溶剤、カチオン化ポリマー以外の水溶性ポリマー、糖、防腐剤、酸化防止剤、キレート化剤、安定剤、アミノ酸、無機塩、直接染料、pH調整剤、育毛成分、植物抽出物、生薬抽出物、尿素、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0083】
溶剤の具体例としては、精製水等の水、エタノール、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。カチオン化ポリマー以外の水溶性ポリマーの具体例としては、デンプンやグアーガム等の天然高分子、メチルセルロースやエチルセルロース等の半合成高分子、トリイソステアリン酸PEG-120メチルグルコースやポリビニルカプロラクタム等の合成高分子、ベントナイトやケイ酸アルミニウムマグネシウム等の無機物系高分子等が挙げられる。糖の具体例としては、ソルビトール、マルトース、グリコシルトレハロース、N-アセチルグルコサミン等が挙げられる。防腐剤の具体例としては、フェノキシエタノール、パラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、アスコルビン酸、無水亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。キレート化剤の具体例としては、ジエチレントリアミン五酢酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、及びこれらの塩等が挙げられる。安定剤の具体例としては、フェナセチン、8-ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられる。アミノ酸の具体例としては、トレオニン、テアニン、タウリン等が挙げられる。無機塩の具体例としては、塩化ナトリウム等が挙げられる。
これら成分のうち、1種のみが含有されてもよいし、2種以上が含有されてもよい。
【実施例0084】
1.多剤式酸化染毛剤の調製方法
(1)第1剤(酸化染毛剤用組成物)の調製方法
表1及び表2に示す実施例1~23及び比較例1,2について、以下の方法により第1剤(酸化染毛剤用組成物)を調製した。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は重量%である。
【0085】
まず、表1及び表2に示す成分比にて、第1剤を構成する全ての成分を、200mL容、内径が約6cmの円筒形容器(例えばビーカー)に収容した。続いて、日本ケミカルズ株式会社製の市販乳化試験器ET-3A型の回転軸に取り付けた撹拌羽を、その回転中心が円筒形容器の中心線と一致するように、且つ、その下端部が円筒形容器の底部との間に僅かなクリアランスを残すように、円筒形容器内部に位置決めした。撹拌羽は、回転中心となる支軸の下端から漢字の「山」の時を構成する形態で対の羽部を延設したものを用いた。撹拌羽の回転半径は円筒形容器の半径より僅かに(数mm程度)小さく、対の羽部の上下方向の幅は円筒形容器に収容した第1剤の液面に達する幅である。このように撹拌羽を位置決めした後、25℃の雰囲気中、撹拌羽を40rpmの回転速度で3分間回転させた。
【0086】
なお、後述するように、比較例1については、上記の撹拌条件では第1剤を撹拌できなかった。このため、後述する調製容易性以外の評価には、より強い撹拌条件で撹拌して調製した第1剤を用いた。
【0087】
(2)第2剤の調製方法
実施例1~23及び比較例1,2について、表1及び表2に示す成分比にて常法に従い第2剤を調製した。
【0088】
2.多剤式酸化染毛剤の評価方法
実施例1~23及び比較例1,2について、以下の方法により各種評価を行った。
【0089】
(1)第1剤(酸化染毛剤用組成物)の調製容易性
上記1.(1)の撹拌条件にて、第1剤を撹拌可能であるかどうかを評価した。撹拌可能である場合には「○」、撹拌不可である場合には「×」の評価を下した。
【0090】
(2)第1剤の製剤安定性
調製した第1剤を24mL容のガラスビンに20g入れ、60℃の恒温槽にて1週間保存した。その後、各剤の水相と油相との分離状態を専門のパネリスト5名が目視で観察し、製剤としての安定性がよいかどうかを以下の基準により採点した。
【0091】
5点:全く分離していない。
4点:ほとんど分離していない。
3点:あまり分離していない。
2点:少し分離している。
1点:大きく分離している。
【0092】
5名の専門のパネリストの採点結果について平均点を算出した。平均点4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、1.6点未満を「不良:1」とする評価を下した。
【0093】
(3)混合物の粘度
調製した第1剤及び第2剤を1:1の重量比で混合した混合物について、東機産業株式会社製のBL型粘度計VISCOMETERを用いて粘度測定を行った。調製した第1剤及び第2剤を1:1の重量比で容器に入れ、撹拌棒で100rpm、1分間撹拌した直後の混合物の粘度測定値を「混合時粘度」とした。また、この撹拌操作により得られた混合物を静置し、静置開始から5分以上経過した後の当該混合物の粘度測定値を「静止時粘度」とした。測定条件は、4号ロータで25℃、12rpm、1分間とした。そして、静止時粘度に対する混合時粘度の変化率「{(静止時粘度-混合時粘度)/静止時粘度}×100」を、「粘度低下率」として算出した。
【0094】
得られた静止時粘度について、混合物の毛髪からの垂れ落ちにくさの観点から、10000mPa・s以上15000mPa・s以下を「優れる:5」、8000mPa・s以上10000mPa・s未満を「良好:4」、6000mPa・s以上8000mPa・s未満を「可:3」、5000mPa・s以上6000mPa・s未満を「やや不良:2」、5000mPa・s未満を「不良:1」とする評価を下した。
【0095】
得られた混合時粘度について、混合物の毛髪への延ばしやすさの観点から、5000mPa・s以下を「優れる:5」、5000mPa・s超え6000mPa・s以下を「良好:4」、6000mPa・s超え8000mPa・s以下を「可:3」、8000mPa・s超え10000mPa・s以下を「やや不良:2」、10000mPa・s超え15000mPa・s以下を「不良:1」とする評価を下した。
【0096】
得られた粘度低下率について、混合物におけるチキソトロピー性の発現しやすさの観点から、30%以上低下を「優れる:5」、20%以上30%未満低下を「良好:4」、10%以上20%未満低下を「可:3」、0%超10%未満低下を「やや不良:2」、0%低下(つまり低下せず)を「不良:1」とする評価を下した。
【0097】
(4)第1剤と第2剤との混合性
着色された第1剤と着色されていない第2剤とを1:1の重量比で染毛カップに入れ、ホーユー株式会社製、商品名ビゲンクリームトーンに付属の刷毛を用いて、略同じ速さで15回、略直径5cmの円を描くようにかき混ぜた。このかき混ぜ操作後の第1剤及び第2剤の混合状態を専門のパネリスト5名が目視で観察し、区別できない程に均一に混合されたかどうかを以下の基準により採点した。
【0098】
5点:全く区別できない。
4点:ほとんど区別できない。
3点:区別できるものの色差が目立たない。
2点:明瞭に区別できる。
1点:非常に明瞭に区別できる。
【0099】
5名の専門のパネリストの採点結果について平均点を算出した。平均点4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、1.6点未満を「不良:1」とする評価を下した。
【0100】
(5)混合物の延ばしやすさ
調製した第1剤及び第2剤を1:1の重量比で混合した混合物について、ウィッグへ塗布したときの混合物の延ばしやすさ(塗布性)を専門のパネリスト5名が採点した。採点基準は、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階とし、5名の専門のパネリストの採点結果について平均点を算出した。平均点4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、1.6点未満を「不良:1」とする評価を下した。
【0101】
(6)混合物の垂れ落ち抑制効果
上記で調製した第1剤及び第2剤を1:1の重量比で混合した混合物について、ウィッグの根元に塗布してから15分間放置したときの垂れ落ちの少なさを専門のパネリスト5名が採点した。採点基準は、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階とし、5名の専門のパネリストの採点結果について平均点を算出した。平均点4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、1.6点未満を「不良:1」とする評価を下した。
【0102】
3.評価結果
上記2.(1)~(6)の各評価結果を、表1及び表2の下部に示した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
4.考察
比較例1に示すように、第1剤における(C)成分の含有量が15重量%を超えると、上記1.(1)の撹拌条件では第1剤の撹拌を行うことができなかった。第1剤における(C)成分の含有量が多いことにより、第1剤中の乳化粒子量が多くなり、第1剤の粘度が高くなったためと考えられる。また、比較例1は、第1剤の製剤安定性が低かった。第1剤における(C)成分の含有量が多いことにより、乳化バランスが悪かったと考えられる。
【0106】
これに対して、実施例1~23は、第1剤における(C)成分の含有量が15重量%以下であるところ、いずれも、上記1.(1)の撹拌条件で第1剤の撹拌を行うことができ、比較例1と比較して調製容易性が良好であった。また、実施例1~23は、いずれも、混合物において静止時粘度に対して混合時粘度が低下し、チキソトロピー性が発現していた。
【0107】
なお、比較例2は、第1剤における(C)成分の含有量は15重量%以下であるものの、実施例1~23とは異なり(A)成分を含有していない。比較例2は、混合物において粘度低下率が低く、チキソトロピー性が発現していなかった。
【0108】
実施例1と実施例2,9~11とを比較すると、第1剤における(A)成分又は(C)成分の種類を変更しても、実施例1と同じ評価結果が得られることがわかった。
【0109】
実施例1,3~8を比較すると、混合物における(A)成分の含有量が0.05重量%以上5重量%以下で、粘度低下率がより大きく、チキソトロピー性がより発現していた。官能試験では、第1剤と第2剤との混合性及び混合物の延ばしやすさが良好であり、且つ、混合物の垂れ落ち抑制効果が高いという評価であった。
【0110】
なお、混合物における(A)成分の含有量が0.025重量%である実施例3は、実施例1,4~7と比較すると、混合物の延ばしやすさ及び垂れ落ち抑制効果の評価では劣るものの、第1剤と第2剤との混合性の評価は良好であった。また、混合物における(A)成分の含有量が7.5重量%である実施例8は、実施例1,4~7と比較すると、第1剤と第2剤との混合性の評価では劣るものの、混合物の延ばしやすさ及び垂れ落ち抑制効果の評価は良好であった。
【0111】
実施例1,12,13を比較すると、第1剤における(C)成分の含有量が12重量%以下、好ましくは10重量%以下で、第1剤の製剤安定性がより向上した。
【0112】
実施例1,14~18を比較すると、第1剤における(D)成分の含有量が15重量%以上で、製剤安定性がより向上した。第1剤は(B)成分である酸化染料を含有することから、第1剤の製剤安定性の向上により酸化染料の析出が抑制され、染毛力の向上に繋がると考えられる。
【0113】
また、実施例1,14~18に示すように、混合物における(D)成分の含有量が15重量%以下で、チキソトロピー性が発現し、第1剤と第2剤との混合性及び混合物の延ばしやすさの良好さと、混合物の垂れ落ち抑制効果の高さと、を両立することができた。特に、混合物における(D)成分の含有量が6.5重量%以上、より好ましくは10重量%以上で、チキソトロピー性がより発現した。第1剤と第2剤との混合性及び混合物の延ばしやすさの良好さがより向上し、且つ、混合物の垂れ落ち抑制効果の高さもより向上した。
【0114】
実施例1,19~22を比較すると、混合物が(E)成分を含有することにより、第1剤と第2剤との混合性及び混合物の延ばしやすさの良好さと、混合物の垂れ落ち抑制効果の高さと、のバランスがより向上した。実施例1,22,23を比較すると、カチオン性界面活性剤の1種である塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを含有する場合よりも(E)成分を含有する場合の方が、上記のバランスの向上がみられた。
【0115】
なお、実施例1~23及び比較例1,2ではアルカリ剤としてイソプロパノールアミンを用いたが、アルカリ剤としてモノエタノールアミンを用いた場合でも評価結果は変わらなかった。