(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150910
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】継手
(51)【国際特許分類】
F16L 5/00 20060101AFI20231005BHJP
F16L 9/127 20060101ALI20231005BHJP
F16L 9/21 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
F16L5/00 H
F16L9/127
F16L9/21
F16L5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060258
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 駿也
(72)【発明者】
【氏名】川▲高▼ 俊基
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA01
3H111BA15
3H111CA13
3H111DA11
3H111DA13
3H111DB03
3H111DB05
3H111DB11
3H111DB18
(57)【要約】
【課題】遮音カバーにおけるたわみの発生を抑える。
【解決手段】継手本体21と、継手本体21を、継手本体21の径方向の外側から覆うオレフィン樹脂製の遮音カバー22と、を備え、継手本体21と遮音カバー22との間には空間Sが設けられ、遮音カバー22は、長尺であり継手本体21に巻き付けられ、遮音カバー22の長手方向が継手本体21の周方向であるとともに、遮音カバー22の短手方向が継手本体21の軸方向であり、遮音カバー22の短手方向の線膨張係数が、遮音カバー22の長手方向の線膨張係数よりも小さい、継手。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手本体と、
前記継手本体を、前記継手本体の径方向の外側から覆うオレフィン樹脂製の遮音カバーと、を備え、
前記継手本体と前記遮音カバーとの間には空間が設けられ、
前記遮音カバーは、長尺であり前記継手本体に巻き付けられ、
前記遮音カバーの長手方向が前記継手本体の周方向であるとともに、前記遮音カバーの短手方向が前記継手本体の軸方向であり、
前記遮音カバーの短手方向の線膨張係数が、前記遮音カバーの長手方向の線膨張係数よりも小さい、継手。
【請求項2】
前記遮音カバーの短手方向の線膨張係数は、800×10-6(1/℃)以下である、請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記遮音カバーの長手方向は、前記遮音カバーの原反の押出方向である、請求項1または2に記載の継手。
【請求項4】
前記継手本体は、
前記軸方向に延びる本管と、
前記本管における前記軸方向の両端に配置された2つの受口と、を備え、
前記本管の外径は、前記2つの受口の外径よりも小さく、
前記遮音カバーにおける前記軸方向の両端は、前記2つの受口それぞれに固定され、
前記空間は、前記本管と前記遮音カバーとの間に設けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に記載の継手が知られている。この継手は、継手本体と、遮音カバーと、を備えている。遮音カバーは、継手本体に巻き付けられている。継手本体と遮音カバーとの間には、空間(空気層)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記継手では、この継手が何らかの原因によって加熱されたときに、遮音カバーにたわみが生じるおそれがある。遮音カバーが継手本体にテープで固定されている場合、遮音カバーにたわみが発生すると、このたわみを起因としてテープが剥がれるおそれがある。この場合、継手本体と遮音カバーとの間に隙間が生じ、耐火性に影響が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、遮音カバーにおけるたわみの発生を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の一態様に係る継手は、継手本体と、前記継手本体を、前記継手本体の径方向の外側から覆うオレフィン樹脂製の遮音カバーと、を備え、前記継手本体と前記遮音カバーとの間には空間が設けられ、前記遮音カバーは、長尺であり前記継手本体に巻き付けられ、前記遮音カバーの長手方向が前記継手本体の周方向であるとともに、前記遮音カバーの短手方向が前記継手本体の軸方向であり、前記遮音カバーの短手方向の線膨張係数が、前記遮音カバーの長手方向の線膨張係数よりも小さい、継手。
【0007】
遮音カバーの短手方向の線膨張係数が、遮音カバーの長手方向の線膨張係数よりも小さい。よって、遮音カバーが軸方向に膨張し難い。これにより、遮音カバーにおけるたわみを抑制することができる。
【0008】
<2>上記<1>に係る継手では、前記遮音カバーの短手方向の線膨張係数は、800×10-6(1/℃)以下である構成を採用してもよい。
【0009】
遮音カバーの短手方向の線膨張係数は、800×10-6(1/℃)以下である。これにより、遮音カバーにおけるたわみを確実に抑制することができる。
【0010】
<3>上記<1>または<2>に係る継手では、前記遮音カバーの長手方向は、前記遮音カバーの原反の押出方向である構成を採用してもよい。
【0011】
一般に、遮音カバーの原反の押出方向では、線膨張係数が大きくなる一方、遮音カバーの原反において、押出方向に直交する方向では、線膨張係数が小さくなる。
ここで、遮音カバーの長手方向が、遮音カバーの原反の押出方向である。よって、遮音カバーの短手方向が、遮音カバーの原反において、押出方向に直交する方向となる。これにより、遮音カバーの短手方向の線膨張係数が、確実に小さくなる。
【0012】
<4>上記<1>から<3>のいずれか一態様に係る継手では、前記継手本体は、前記軸方向に延びる本管と、前記本管における前記軸方向の両端に配置された2つの受口と、を備え、前記本管の外径は、前記2つの受口の外径よりも小さく、前記遮音カバーにおける前記軸方向の両端は、前記2つの受口それぞれに固定され、前記空間は、前記本管と前記遮音カバーとの間に設けられている、いずれか1項に記載の構成を採用してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遮音カバーにおけるたわみの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る継手を示す断面図であって、継手本体を側面視した状態を示す図である。
【
図2】
図1に示すII-II断面矢視に相当する横断面図である。
【
図3】
図1に示す継手を構成する遮音カバーの展開図である。
【
図4】
図1に示す継手を構成する遮音カバーの原反の斜視図である。
【
図5】検証試験における比較例の継手を構成する遮音カバーの展開図である。
【
図6】検証試験における継手の耐火性の試験方法を説明する図である。
【
図7】検証試験における実施例の継手の耐火性の試験後における状態の一例を示す図であって、
図1に示す断面図に相当する図である。
【
図8】検証試験における比較例の継手の耐火性の試験後における状態の一例を示す図であって、
図1に示す断面図に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1から
図4を参照し、本発明の一実施形態に係る配管構造10を説明する。
図1に示すように、配管構造10は、建築物1(建物)に設けられている。配管構造10は、建築物1のスラブ2(例えば、床スラブ)を上下方向Zに貫通する。スラブ2は、建築物1において階を区画する。配管構造10は、耐火性能を備えていてもよい。配管構造10は、例えば、排水管や給水管、通気管であってもよい。配管構造10は、継手20(管継手)と、管30と、を備えている。継手20が耐火継手であってもよく、管30が耐火管であってもよい。
【0016】
(継手20)
継手20としては、例えば、いわゆるソケットやチーズ、集合継手などが挙げられる。
図1および
図2に示すように、継手20は、継手本体21と、遮音カバー22と、を備えている。継手本体21は、本管23と、受口24と、を備えている。本管23の軸線Oは、上下方向Zに沿っている。受口24は、本管23の上下方向Zの両端に配置されている。継手本体21は、本管23の上下両端に受口24を1つずつ備えている。継手本体21は、2つの受口24を備えている。2つの受口24は、互いに同軸上(軸線O上)に配置されている。本管23の外径は、2つの受口24の外径よりも小さい。なお継手本体21が、1つ以上の分岐管(不図示)を更に備えていてもよい。前記分岐管は、本管23から径方向(水平方向)に延びる。
【0017】
(継手本体21)
継手本体21は、樹脂製(例えば、可塑剤を含まないポリ塩化ビニル系樹脂である硬質塩化ビニル樹脂製)であり、JIS K 6739で定められるDV継手の呼び径30~150に沿った形状、寸法とされるが、これ以上の呼び径であってもよい。特に、本発明では遮音カバー22の剛性が高く、耐火性に不利なスペーサーの使用を減らせるので、スラブ貫通孔が大きくなり耐火性に不利な中口径(呼び径65以上(受口内径76mm以上)、呼び径125以下(受口内径140mm以下))の継手で効果が顕著であり、大口径(呼び径150以上(受口内径165mm以上)、呼び径300以下(受口内径318mm以下))の継手での効果が特に顕著である。継手本体21は、樹脂組成物(A)を射出成形することによって作製される。
【0018】
[樹脂組成物(A)]
樹脂組成物(A)に含まれるポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。前記ポリ塩化ビニル系樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリ塩化ビニル系樹脂はさらに塩素化されてもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
【0019】
前記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられる。前記他のモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記塩化ビニルモノマーをグラフト共重合する重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらの重合体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ポリ塩化ビニル系樹脂は架橋されていてもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の架橋方法としては、例えば、架橋剤及び過酸化物を添加する方法、電子線を照射する方法、水架橋性材料を使用する方法等が挙げられる。
【0022】
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、400以上1000以下であることが好ましく、600以上900以下であることがより好ましい。ここで、平均重合度は、ポリ塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K-6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度である。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度が前記下限値以上であれば、機械的強度を充分に高めることができ、前記上限値以下であれば、充分な成形性を確保できる。
【0023】
樹脂組成物(A)は吸熱剤を含んでいてもよい。吸熱剤は火災などにより加熱された際に吸熱作用を有して温度上昇を抑制する化合物である。例えば、加熱された際に脱水反応等の吸熱反応が生じる化合物を吸熱剤として使用できる。
加熱された際に脱水反応が生じる化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物(カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト)やハイドロタルサルサイト等の無機水酸化物、セピオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、マイカ、石英、ゼオライト、ワラストナイト、ネフェリンサイアナイト等の吸水作用のある無機化合物が挙げられる。以下、加熱された際に脱水反応が生じる無機水酸化物や無機化合物のことを総称して「加熱脱水型化合物」と表記する。加熱脱水型化合物では、脱水反応によって生じた水の蒸発潜熱によっても温度上昇を抑制することができる。
加熱脱水型化合物のうち水酸化マグネシウムは、脱水反応が300℃以上で生じるため、吸熱剤として水酸化マグネシウムを用いた場合には、樹脂組成物(A)を成形して継手本体21を作製する際に脱水反応が生じることを抑制できる。
加熱脱水型化合物のうち水酸化アルミニウムは、脱水反応が200℃程度で生じるため、吸熱剤として水酸化アルミニウムを用いた場合には、火災の際に継手本体21に伝わった熱を早めに吸熱することができる。そのため、管30が熱膨張する前に継手本体21が変形して耐火性を損なうことをより抑制できる。
【0024】
加熱脱水型化合物のうちハイドロタルサイトは化学名をマグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレートと言い、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O等に代表される鉱物の一種であり、正に帯電した基本層[Mg1-xAlx(OH)2]x+と負に帯電した中間層[(CO3)x/2・mH2O]x-からなる層状の無機化合物である。多くの2価、3価の金属がこれと同様の層状構造をとり、これらは次のような一般式で表される。
[M2+
1-xM3+
x(OH)2]x+[An-
x/n・mH2O]x-
M2+:Mg2+, Zn2+等の2価金属イオン
M3+:Al3+, Fe3+等の3価金属イオン
An- :CO3
2-, Cl-, NO3
-等のn価アニオン
X:0<X≦0.33
ハイドロタルサイトは、分子間に有している結晶水が約180℃から脱水を開始し、その結晶水は約300℃で完全に脱離する。この状態までは合成ハイドロタルサイトは結晶構造を保持しているが、約350℃を超えると結晶構造が崩壊し始め、水と二酸化炭素を放出する。そして、合成ハイドロタルサイトは、塩化ビニル系樹脂の熱分解温度である約200℃以上300℃以下よりも60℃以上75℃以下低い温度で吸熱分解を開始するため、塩化ビニル系樹脂の熱分解をハイドロタルサイトの吸熱分解で効率的に抑制することができる。
吸熱剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物又はハイドロタルサイトの少なくとも2種を併用してもよい。
【0025】
前記加熱脱水型化合物は、通常、粒子状である。
加熱脱水型化合物の体積平均粒子径は0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、0.05μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上1μm以下がさらに好ましい。加熱脱水型化合物の体積平均粒子径をこの範囲とすることで、継手本体21に透明性を付与したり、加熱脱水型化合物の分散性を向上させることができる。体積平均粒子径は、レーザ回折散乱法粒子径分布測定装置を用いて測定した値である。
加熱脱水型化合物のBET比表面積は1m2/g以上40m2/gであることが好ましく、1m2/g以上20m2/g以下であることが好ましい。ここで、BET比表面積は、窒素吸着を利用して求めた値である。
加熱脱水型化合物の体積平均粒子径及びBET比表面積が前記範囲であれば、吸熱剤としての効果を充分に発揮でき、また、継手本体21を作製する際の樹脂組成物(A)の成形性及び継手本体21の機械的物性を充分に確保できる。
【0026】
加熱脱水型化合物は、その粒子表面がステアリン酸等の高級脂肪酸や、シランカップリング剤などの表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤により表面処理された加熱脱水型化合物は、ポリ塩化ビニル系樹脂に対する分散性が高くなり、吸熱性の効果をより発揮しやすくなる。また、加熱脱水型化合物が塩基性の場合には、ポリ塩化ビニル系樹脂をヤケにくくし、黄変を防止することができる。
加熱脱水型化合物を表面処理剤により表面処理する場合、表面処理剤の量は加熱脱水型化合物100質量部に対して0.05質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。表面処理剤の量が前記下限値以上であれば、ポリ塩化ビニル系樹脂に対する加熱脱水型化合物の分散性を充分に高くでき、前記上限値以下であれば、経済性の低下を抑制できる。
【0027】
樹脂組成物(A)における吸熱剤の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して0.01質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上2.0質量部以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物(A)における吸熱剤の含有量が前記下限値以上であれば、火災発生の際に継手本体21の変形をより抑制でき、前記上限値以下であれば、継手本体21を作製する際の成形性を充分に高くでき、また、継手本体21の機械的物性を良好にできる。
【0028】
樹脂組成物(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記吸熱剤以外の難燃剤が含まれてもよい。
他の難燃剤としては、ハイドロタルサイト、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン;三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等のモリブデン化合物;テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等の臭素系化合物;トリフェニルフォスフェート、アンモニウムポリフォスフェート等のリン系化合物;ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等のホウ酸系化合物が挙げられる。前記他の難燃剤のなかでも、ポリ塩化ビニルの燃焼抑制効果が高いことから、三酸化アンチモンが好ましい。
【0029】
また、樹脂組成物(A)には、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、熱安定剤、熱安定化助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマー等の添加剤が含まれてもよい。
後述する各添加剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
熱安定剤としては、例えば、鉛系安定剤、スズ系安定剤、Ca-Zn系安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。熱安定剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
鉛系安定剤としては、例えば、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、シリカゲル共沈ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト等のメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー等のマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等のカルボキシレート類が挙げられる。
Ca-Zn系安定剤はカルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。脂肪酸としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2-エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2-エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
これらの中でも、継手本体21を透明にする場合にはスズ系安定剤又はCa-Zn系安定剤が好ましく、スズ系安定剤としてはマレート類、カルボキシレート類等の硫黄を含まないものが硫化汚染を防止するために特に好ましく、Ca-Zn系安定剤としては成形加工時の滑性とプレートアウトのバランスからステアリン酸塩であるものが特に好ましい。
【0031】
熱安定剤の含有量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。熱安定剤の含有量が前記下限値以上であれば、成形時におけるポリ塩化ビニル系樹脂の熱安定性を向上させることができ、前記下限値以下であれば、燃焼時においてポリ塩化ビニル系樹脂を充分に炭化させることができ、充分な耐火性能を得ることができる。
【0032】
熱安定化助剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0033】
顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系顔料、クロム酸モリブデン系顔料、硫化物・セレン化物系顔料、フェロシアニン化物系顔料等の無機顔料が挙げられる。
【0034】
(遮音カバー22)
遮音カバー22は、継手本体21を、継手本体21の径方向の外側から覆う。
図1から
図3に示すように、遮音カバー22は、長尺であり継手本体21に巻き付けられている。遮音カバー22の長手方向Aが、継手本体21の周方向である。遮音カバー22の短手方向Bが、継手本体21の軸方向(上下方向Z)である。遮音カバー22の長手方向Aの両端部は、図示しない固定部材によって固定されている。遮音カバー22の長手方向Aの両端部は端部同士が重なっていてもよいが、端部同士が重なった箇所の継手20の蓄熱性が他の箇所に比べて高くなり、継手本体21が変形しやすくなるため、遮音カバー22の長手方向Aの両端部は端面が対向するようにすることが好ましい。前記固定部材としては、例えば、面ファスナーな接着剤、テープなどが挙げられる。なお、継手本体21が分岐管を備えている場合、遮音カバー22のうち、分岐管に対応する部分には、分岐管が挿入される開口が設けられていてもよい。ここで
図2では、遮音カバー22の長手方向Aの両端部が固定部材によって固定されている状態の図示を省略している。
【0035】
遮音カバー22は、樹脂製である。本実施形態では、遮音カバー22は、改質アスファルトやエラストマー、ゴム、ポリオレフィン樹脂、軟質塩化ビニル樹脂等といった弾性を備えた材料をシート状に形成したものであり、可塑剤を含まないポリオレフィン系樹脂が剛軟度の高さから好ましく、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、無機フィラーを300~600重量部含有する樹脂組成物(A)を用いることでより剛軟度を高めることができる。
【0036】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、アタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリαオレフィンが挙げられる。中でも密度が0.87~0.93g/cm3のポリエチレンが前記ポリオレフィン系樹脂として好ましい。なお、密度が0.87g/cm3未満だと、遮音カバー22の強度が十分ではなく、0.93g/cm3を超えると、遮音カバー22を偏平させたとき(管体31に軸力が加えられたとき)に座屈してしまうおそれがある。また、オレフィン系樹脂の曲げ弾性率が、100~3000kg/cm2であれば、強度、巻き加工性として十分である。
なお遮音カバー22は、前記ポリオレフィン系樹脂とは異なる材料を含有していてもよく、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、エラストマー材料等を含有していても構わない。さらに、前記ポリオレフィン系樹脂とは異なる材料であってもよく、改質アスファルトやエラストマー、ゴム、軟質塩化ビニル樹脂等といった前記ポリオレフィン系樹脂よりも剛軟度の低いものであっても、厚さや無機フィラー、不織布などの繊維シートと積層することにより所定の剛軟度を備えていればよい。
【0037】
前記無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。これらのうち、重量とコストのバランスから炭酸カルシウムを前記無機フィラーとして用いることが好ましい。なおこれらは、単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0038】
遮音カバー22は、例えば、
図4に示すような遮音カバー22の原反50から切り出される。原反50は、例えば可塑剤を含まないオレフィン樹脂を押出成形して形成されたシートを、巻き取ることで製造される。
図3に示すように、遮音カバー22の長手方向Aは、原反50の押出方向MDであってもよく、押出に直交する方向(以下、単に直交方向TDともいう)であってもよい。遮音カバー22の短手方向Bは、押出方向MDであっても直交方向TDであってもよい。本実施形態では、遮音カバー22の長手方向Aが押出方向MDであり、遮音カバー22の短手方向Bが直交方向TDである。
【0039】
一般に、この種の原反50の押出方向MDでは、線膨張係数が大きくなる一方、原反50の直交方向TDでは、線膨張係数が小さくなる。
そして本実施形態では、遮音カバー22の短手方向Bの線膨張係数が、遮音カバー22の長手方向Aの線膨張係数よりも小さい。遮音カバー22の短手方向Bの線膨張係数は、800×10-6(1/℃)以下である。
ここで遮音カバー22の線膨張係数は、以下のように測定される。
遮音カバー22をTD方向およびMD方向に平行な辺をもつ正方形に切断し、それぞれの長さLTD、LMDを測定する。次に、15℃におけるTD方向およびMD方向におけるそれぞれの長さLTD1[cm]とLMD2[cm]をマイクロスコープを用いて小数点以下10桁まで測定する。続いて25℃におけるTD方向およびMD方向におけるそれぞれの長さLTD2[cm]とLMD2[cm]をマイクロスコープを用いて小数点5桁まで測定する。得られたL2およびL1から、TD方向の線膨張係数を式(1):αTD=(LTD2-LTD1/LTD)×(1/10[℃])で求め、MD方向の線膨張係数を式(2):αMD=(LMD2-LMD1/LMD)×(1/10[℃])で求める。
【0040】
図1に示すように、遮音カバー22の上下両端は、2つの受口24それぞれに固定されている。遮音カバー22は、継手本体21にテープ25によって固定されている。テープ25は、周方向の全周にわたって設けられている。テープ25の材質は特に限定されないが、例えば、軟質塩化ビニル樹脂、ゴム系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂などの樹脂製テープ、紙や布などの繊維テープ、アルミニウムなどの金属テープなどの基材テープに粘着層を備えたものとされ、特に可塑剤を含まないオレフィン系樹脂やアクリル系樹脂などの樹脂テープや紙または布テープ、アルミニウムテープが好ましい。粘着層としては特に限定されないが、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤等が挙げられる。
【0041】
図1および
図2に示すように、継手本体21と遮音カバー22との間には空間Sが設けられている。空間Sは、本管23と遮音カバー22との間に設けられている。空間Sのうち、上下方向Z(軸方向)の少なくとも一部は、継手本体21の周方向に連続している。継手本体21が分岐管を備えていない場合、空間Sは、本管23と遮音カバー22との間の上下方向Zの全域にわたって、周方向に連続していてもよい。継手本体21が分岐管を備えている場合、空間Sは、本管23と遮音カバー22との間のうち、分岐管を上下方向Zに回避した位置(分岐管の上方または下方)において、周方向に連続していてもよい。
空間Sにはロックウールやグラスウールなど、耐火性、耐熱性を備えた繊維シートを配置してもよく、耐火性と耐熱性のあるこれらのシートを空間S全体に配置することで継手本体21が局所的に加熱されることが無いため、空間Sを設けなくても継手本体21の変形を抑えることができる。
【0042】
なお、継手20がスペーサーを備えていてもよい。スペーサーとしては、例えば、独立気泡ポリエチレン発泡体の発泡テープが挙げられる。スペーサーは、例えば、本管23の外面に配置される。継手本体21がスペーサーを備えている場合、スペーサーは、本管23の下端を回避した位置に設けられていることが好ましい。この場合、スペーサーを起因として、本管23の下端が過加熱されることが抑制される。またスペーサーは、上下方向Zよりも周方向に長い形状であることが好ましい。この場合、本管23と遮音カバー22との間の空間Sが、スペーサーを起因としては周方向に分断されにくくなる。
【0043】
前記継手20では、継手本体21のうち、少なくとも本管23に対して下方に位置する受口24(以下、単に下側の受口24もという)が、スラブ2に埋設されている。本実施形態では、下側の受口24の全体が、スラブ2に埋まっている。下側の受口24の下端は、スラブ2の下面と上下方向Zに同等の位置か、スラブ2の下面よりも上方に位置している。下側の受口24の上端は、スラブ2の上面と上下方向Zに同等の位置か、スラブ2の上面よりも下方に位置している。ただし、スラブ2の下面が下側の受口24より下方に位置していてもよく、スラブ2の上面が下側の受口24より上方に位置していてもよい。なお、継手20は、スラブ2を貫通する区画貫通部2a(貫通孔)に配置され、継手20とスラブ2との間には、モルタル3が充填されている。
【0044】
(管30)
管30は、継手20に接続されている。管30は、第1縦管31と、第2縦管32と、を備えている。第1縦管31は、継手20の上方に位置し、上側の受口24に接続される。第2縦管32は、継手20の下方に位置し、下側の受口24に接続される。継手20が分岐管を備える場合、管30は、横管を備えていてもよい。横管は、分岐管に接続される。なお、上側の受口24に第1縦管31が接続されず、上側の受口24が図示しない蓋体により閉塞されていてもよい。継手20が分岐管を備える場合、分岐管が図示しない蓋体により閉塞されていてもよい。継手20が複数の分岐管を備える場合、分岐管の一部が図示しない蓋体により閉塞され、残部に横管が接続されていてもよい。
【0045】
管30のうち、少なくとも第1縦管31および第2縦管32は、熱膨張性黒鉛を含む樹脂組成物であることが好ましい。管30は、熱可塑性樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する樹脂組成物(B)を含有する。即ち、管30は、樹脂組成物(B)を成形することによって作製され、熱可塑性樹脂と熱膨張性黒鉛とを含有する。通常、管30は、樹脂組成物(B)を押出成形することによって作製される。
管30は、管30の全体が樹脂組成物(B)からなる単層構造でもよいし、複数の層からなる複層構造でもよい。即ち、管30は、単層構造又は複層構造の管状の周壁からなる。
管30が複層構造の場合、いずれかの層が樹脂組成物(B)から形成されていればよい。例えば、管30が、表層と中間層と内層とからなる三層構造である場合には、中間層が樹脂組成物(B)から形成されたものが挙げられ、表層、中間層、内層は難燃剤を含有していてもよい。なお、表層は管状の中間層の外周面に位置し、内層は中間層の内周面に位置する。
中間層は熱膨張性黒鉛を含有するため黒色を呈する。そのため、表層と内層は黒色以外の着色剤を含有させ、中間層と区別可能にしておくことが好ましい。
本実施形態において、中間層が耐火層である。また、本実施形態において、表層及び内層が被覆層であり、内層が内側被覆層である。
【0046】
管30の大きさは、例えば、呼び径40(外径48mm)以上、呼び径300(外径318mm)以下とされる。
SDR(外径/管30の厚さ(肉厚))は、例えば、13以上35以下が好ましく、15以上33以下がより好ましく、17以上30以下がさらに好ましい。SDRが上記下限値以上であれば、熱膨張性黒鉛が管30の周方向に配向しやすくなり、圧縮強度をより高め、熱伝導率をより低められる。SDRが上記上限値以下であれば、肉厚が薄くなりすぎず、圧縮強度をより高め、耐火性をより高められる。
【0047】
複層構造の場合、中間層は、発泡層でもよいし、非発泡層でもよい。中間層を発泡層とすることで、熱伝導率をより低められる。
中間層の厚さとしては、例えば呼び径100A(外径114mm)の場合、1.8mm以上7.6mm以下であることが好ましく、2.0mm以上6.0mm以下がより好ましく、2.5mm以上5.0mm以下がさらに好ましい。また、中間層の厚さは、管30の厚さの85%以下が好ましく、70%以下がより好ましく、60%以下がより好ましい。中間層の厚さが上記範囲であれば、耐火性をより高め、圧縮強度をより高められる。
【0048】
複層構造の場合、表層及び内層は、発泡層でもよいし、非発泡層でもよい。表層及び内層を非発泡層とすることで、管30の強度をより高められる。
表層及び内層の厚さとしては、例えば呼び径100A(外径114mm)の場合、それぞれ0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.6mm以上1.5mm以下がより好ましい。被覆層の厚さが0.3mm以上であれば、管30としての機械的強度を充分に確保でき、3.0mm以下であれば、耐火性の低下を抑制できる。
【0049】
管30の圧縮率は、20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、50%以上が特に好ましい。圧縮率が上記下限値以上であれば、輸送時や配管時等に押しつぶされる力を受けても、破損しにくい。また、熱膨張性黒鉛が管30の周方向に配向しており、熱伝導率を低められる。管30の圧縮率の上限は、実質的に90%以下である。
管30の圧縮率は、JIS K 6741:2007の偏平試験によって測定される。管30から50mm以上の環状試験片を切り取り、23℃下で1時間放置し、その後2枚の平板間に挟んで管30軸に直角の方向に10mm/minの速さで管30の外径を圧縮する。3つの環状試験片について、破壊された際の径方向の圧縮の程度を測定し、その平均値を圧縮率とする。例えば、外径が2/3になった時点で管30が破壊されれば、外径の1/3の圧縮、即ち外径の33%が圧縮されたことになるので、圧縮率が33%となる。
管30の圧縮率は、熱膨張性黒鉛の量及びアスペクト比、難燃剤の種類等の組成面と、管30におけるSDR、ウェルドラインの位置、管30の層構成、各層の厚さ等の構造面の組み合わせにより調節できる。
【0050】
管30の熱伝導率は、0.3W/m・K以下が好ましく、0.28W/m・K以下がより好ましく、0.25W/m・K以下がさらに好ましい。熱伝導率が上記上限値以下であれば、管30が結露しにくい。
なお、管30の熱伝導率は、JIS A1412-2:1999に従い、23℃の条件下で、管30の3か所の厚さ方向について測定した値である。
また、管30の熱抵抗値(厚さを熱伝導率で除した値)は、0.03m2K/W以上が好ましく、0.04m2K/W以上がより好ましい。
【0051】
[樹脂組成物(B)]
樹脂組成物(B)に含まれる熱可塑性樹脂としては、結晶性樹脂、非晶性樹脂が挙げられる。結晶性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。非晶性樹脂としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。接着剤による接合が可能なことから、熱可塑性樹脂としては、非晶性樹脂が好ましい。加えて、難燃性の観点から、熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル系樹脂がより好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体;塩化ビニルモノマーと、塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとの共重合体;ポリ塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニルモノマーをグラフト共重合したグラフト共重合体等が挙げられる。前記ポリ塩化ビニル系樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリ塩化ビニル系樹脂はさらに塩素化されてもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の塩素化方法としては、例えば、熱塩素化方法、光塩素化方法等が挙げられる。
【0052】
前記塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する他のモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられる。前記他のモノマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記塩化ビニルモノマーをグラフト共重合する重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。これらの重合体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0054】
前記ポリ塩化ビニル系樹脂は架橋されていてもよい。ポリ塩化ビニル系樹脂の架橋方法としては、例えば、架橋剤及び過酸化物を添加する方法、電子線を照射する方法、水架橋性材料を使用する方法等が挙げられる。
【0055】
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、400以上1600以下であることが好ましく、600以上1400以下であることがより好ましい。ここで、平均重合度は、ポリ塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のTHFを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K-6721:1999「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度である。
ポリ塩化ビニル系樹脂の平均重合度が前記下限値以上であれば、機械的強度を充分に高めることができ、前記上限値以下であれば、充分な成形性を確保できる。
【0056】
また、樹脂組成物(B)には、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤、加工助剤、衝撃改質剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、熱安定剤、熱安定化助剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、可塑剤、熱可塑性エラストマー等の添加剤が含まれてもよい。
後述する各添加剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤が挙げられる。
内部滑剤としては、例えば、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ化大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、ビスアミド等が挙げられる。
外部滑剤としては、例えば、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、モンタン酸ワックス等が挙げられる。
【0058】
加工助剤としては、例えば、質量平均分子量10万以上200万以下のアルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体が挙げられる。前記アルキルアクリレート-アルキルメタクリレート共重合体としては、例えば、n-ブチルアクリレート-メチルメタクリレート共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート-メチルメタクリレート-ブチルメタクリレート共重合体等が挙げられる。
【0059】
衝撃改質剤としては、例えば、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム等が挙げられる。
耐熱向上剤としては、例えばα-メチルスチレン系樹脂、N-フェニルマレイミド系樹脂等が挙げられる。
【0060】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0061】
熱安定剤としては、例えば、鉛系安定剤、スズ系安定剤、Ca-Zn系安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。熱安定剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
鉛系安定剤としては、例えば、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、シリカゲル共沈ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト等のメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー等のマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等のカルボキシレート類が挙げられる。
Ca-Zn系安定剤はカルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。脂肪酸としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2-エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2-エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
これらの中でも、スズ系安定剤又はCa-Zn系安定剤が好ましく、スズ系安定剤としてはマレート類、カルボキシレート類等の硫黄を含まないものが硫化汚染を防止するために特に好ましく、Ca-Zn系安定剤としては成形加工時の滑性とプレートアウトのバランスからステアリン酸塩であるものが特に好ましい。
【0062】
熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。熱安定剤の含有量が前記下限値以上であれば、成形時における熱可塑性樹脂の熱安定性を向上させることができ、前記上限値以下であれば、燃焼時において熱可塑性樹脂を充分に炭化させることができ、充分な耐火性能を得ることができる。
【0063】
熱安定化助剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、ゼオライト等が挙げられる。
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0064】
顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、スレン系顔料、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系顔料、クロム酸モリブデン系顔料、硫化物・セレン化物系顔料、フェロシアニン化物系顔料等の無機顔料が挙げられる。
【0065】
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート等が挙げられる。ただし、可塑剤は成形品の耐熱性及び耐火性を低下させる傾向があるため、可塑剤の使用量は少ないことが好ましい。
【0066】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体(EVACO)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体や塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体等の塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0067】
樹脂組成物(B)に含まれる熱膨張性黒鉛の熱膨張開始温度は、200℃以上285℃以下が好ましく、210℃以上285℃以下がより好ましく、240℃以上285℃以下がさらに好ましい。管30は、例えば、樹脂組成物を金型で押し出して、管状に成形することができる。この際、樹脂組成物は、金型内で周方向に回り込むように流れる。このため、樹脂組成物が回り込んで、樹脂組成物同士が突き当たる位置には、管30の管30軸方向に延びるウェルドラインが形成される。熱膨張開始温度が上記下限値以上であれば、管30の製造時に、金型で押し出す際の温度を高くできるため、ウェルドラインで密着して圧縮強度をより高められる。加えて、熱膨張開始温度が上記下限値以上であれば、管30の製造時において、熱膨張性黒鉛の膨張によるガス発生を抑制して、ウェルドラインで良好に密着して、圧縮強度をより高められる。
なお、熱膨張性黒鉛の熱膨張開始温度は、熱膨張性黒鉛を150℃から5℃/分の昇温速度で昇温させたときに、昇温開始前の体積の1.1倍以上に膨張したときの温度のことである。熱膨張性黒鉛の体積を計測する温度の間隔は特に制限されず、例えば、5℃温度上昇する毎に体積を計測すればよい。
前記下限値以上の熱膨張開始温度は、樹脂組成物(B)を成形して管30を作製する際の成形温度よりも充分に高くなる。そのため、熱膨張性黒鉛の熱膨張開始温度が前記下限値以上であることにより、樹脂組成物(B)を成形する際に熱膨張性黒鉛が膨張することを防止できる。
【0068】
熱膨張性黒鉛は、鱗片状の黒鉛であり、偏平な平板状である。熱膨張性黒鉛が鱗片状であることで、加熱により充分に膨張できる。なお、鱗片状とは、薄片又は平板状であり、例えば、後述するアスペクト比が5以上である。
【0069】
また、熱膨張性黒鉛は、1000℃における膨張度が180cm3/g以上であることが好ましく、185cm3/g以上であることがより好ましい。ここで、熱膨張性黒鉛の1000℃における膨張度は、熱膨張性黒鉛を1000℃で10秒間保持した後の、単位質量(g)あたりの体積(cm3)のことである。
熱膨張性黒鉛の膨張度が前記下限値以上であれば、充分に膨張するから、火災の際に区画貫通部2aをより確実に閉塞できる。
熱膨張性黒鉛は1000℃における膨張度は、熱膨張性黒鉛の製造が容易になる点から、240cm3/g以下であることが好ましい。
【0070】
上記のような熱膨張性黒鉛は、グラファイトの粉末を無機酸と酸化剤とで処理することで得られる。この処理によって、グラファイトの層間に無機酸を挿入した結晶化合物を得ることができる。グラファイトの層間に無機酸を挿入した結晶化合物は熱膨張性を有する。
前記グラファイトとしては、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等が挙げられる。
前記無機酸としては、例えば、濃硫酸、硝酸、セレン酸等が挙げられる。
前記酸化剤としては、例えば、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。
グラファイト粉末を前記無機酸と前記酸化剤とで処理した後には、酸性度を低下させるために中和処理を施してもよい。
【0071】
熱膨張性黒鉛のpHは、2以上10以下が好ましく、2.5以上8以下がより好ましい。樹脂組成物(B)が、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の水酸化物イオンを有する吸熱剤を難燃剤として含有する場合、難燃剤の水酸化物イオンは、酸性物質と中和して水(中和水)を生じる。吸熱反応である水酸化物イオンの縮合反応に用いられる水酸化物イオンが成形時の中和反応により減少するため、火災時の吸熱量が低下する。加えて、中和水の気化により気泡を生じる場合がある。このため、熱膨張性黒鉛のpHが上記下限値以上とすることで、難燃剤との中和を抑制できる。熱膨張性黒鉛のpHが上記上限値以下であれば、熱膨張性黒鉛が中和されにくくなって、より良好に膨張する。
熱膨張性黒鉛のpHの調整方法としては特に限定されない。例えば、熱膨張性黒鉛を製造する際に、グラファイトの粉末を無機酸と酸化剤とで処理した後、水洗と乾燥とを繰り返して、熱膨張性黒鉛のpHを調整する方法が挙げられる。
熱膨張性黒鉛のpHは、以下の方法で測定される値である。
ビーカー中に、採取した5gの熱膨張性黒鉛とイオン交換水25mlとを入れて、黒鉛混合液を調製する。調製した黒鉛混合液を30秒間撹拌し、20分間放置した後、pH測定器(堀場製作所製「pH/ION METER F-23」)によって黒鉛混合液のpHを測定する。
【0072】
熱膨張性黒鉛の平均粒子径は10μm以上1000μm以下であることが好ましく、100μm以上700μm以下であることがより好ましい。また、平均厚さが100μm以下であることが好ましい。
熱膨張性黒鉛の平均粒子径は、JIS Z8801-1の試験用篩により熱膨張性黒鉛を篩分けて求められる、体積基準の累積粒度分布における50%粒子径である。
【0073】
熱膨張性黒鉛の平均アスペクト比は、5以上40以下であり、10以上35以下が好ましく、20以上35以下がより好ましい。即ち、熱膨張性黒鉛は、平板状の薄片である。アスペクト比が上記下限値以上あれば、膨張度が低くなりやすい。アスペクト比が上記上限値以下であれば、熱伝導率をより低められる。加えて、アスペクト比が上記上限値以下であれば、管30を多層構造とする場合に熱膨張性黒鉛を含む層と含まない層との線膨張係数の差を小さくすることができ、管30内部の洗浄や高温排水の熱による収縮差等の影響により中間層と表層が剥離したり、成形後の表層と中間層の収縮の差が大きくなり管30が反るといった成形上の不具合を抑制できる。
平板状の薄片である熱膨張性黒鉛は、管30の周方向に沿って配向する。ウェルドラインの位置では、熱膨張性黒鉛は、管30の径方向に配向しやすくなる。このため、ウェルドラインの位置では、熱膨張性黒鉛の平面同士が対向して、亀裂を生じやすくなる。アスペクト比が上記上限値以下であれば、ウェルドラインの位置で対抗する熱膨張性黒鉛の面積が小さくなり、圧縮強度を高められる。
【0074】
なお、管30を構成する硬質ポリ塩化ビニル樹脂の線膨張係数はJIS K 7197:2012で規定される熱機械分析法(TMA法)により測定された値で7.0×10-5/℃であるが、本実施の形態の管30は4.5×10-5/℃以上7.0×10-5/℃未満であり、5.0×10-5/℃以上7.0×10-5/℃未満が好ましく、5.5×10-5/℃以上6.8×10-5/℃未満がより好ましい。また、表層及び内層と中間層との線膨張係数の差は2.5×10-5/℃以下であり、2.0×10-5/℃以下が好ましく、1.0×10-5/℃以下がより好ましい。
【0075】
さらに、管30の表層及び内層と中間層との融着強度は、1.5MPa以上が好ましく、2.0MPa以上がより好ましい。融着強度が高いほど、管30の圧縮強度を高めやすい。表層及び内層と中間層との融着強度は、熱膨張性黒鉛のアスペクト比、熱膨張性黒鉛の量、後述する製造方法におけるサイジング装置内の真空度の組み合わせにより、調節できる。
【0076】
平均アスペクト比は、厚さに対する平面視最長部長さの割合である。本発明に使用する熱膨張性黒鉛は概ね平板状をしているため、厚さ方向を鉛直方向とし、径方向を水平方向と見なした場合、水平方向の最大寸法を鉛直方向の厚さで除した値をアスペクト比とする。
【0077】
そして、充分大きな数、即ち少なくとも10個以上の黒鉛片につきアスペクト比を測定し、その平均値を平均アスペクト比とする。より具体的には、FE-SEMを用いて熱膨張性黒鉛を観察し、その画像を画像処理ソフトウェア(アドビシステムズインコーポレーテッド社製「Photoshop(登録商標)」)に読み込み、測長ツールにて最大寸法及び厚さを測長する。最大寸法については、樹脂組成物に添加する前の黒鉛粒子を測定する場合には、黒鉛粒子に外接する四角形の最大辺とする。樹脂組成物に添加した後の黒鉛粒子の最大寸法を測定する場合には、管30を切断して断面を観察して長辺を最大寸法とするか、管30から黒鉛粒子を抽出し、抽出された黒鉛粒子に外接する四角形の最大辺とする。なお、FE-SEM画像中のスケールバーを同様にして測長することで具体的な寸法を測定することができる。
【0078】
熱膨張性黒鉛の水平方向における最大寸法及び薄片化黒鉛の厚さは、例えば電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて測定することができる。
【0079】
樹脂組成物(B)における熱膨張性黒鉛の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して3.0質量部以上20.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以上18.0質量部以下がより好ましく、4.0質量部以上15.0質量部以下がさらに好ましく、4.0質量部以上10.0質量部未満が特に好ましい。樹脂組成物(B)における熱膨張性黒鉛の含有量が前記下限値以上であれば、火災発生の際に管30(特に第2縦管32)を充分に膨張させることができ、区画貫通部2aにおける耐火性をより向上させることができる。一方、樹脂組成物(B)における熱膨張性黒鉛の含有量が前記上限値以下であれば、管30が過度に膨張することによって管30が壊れて耐火性が低下することを防止できる。加えて、樹脂組成物(B)における熱膨張性黒鉛の含有量が上記上限値以下であれば、管30の熱伝導率を低くし、耐圧強度及び圧縮強度をより高められる。
【0080】
また、樹脂組成物(B)は、熱膨張性黒鉛に加えて、難燃剤を含有することが好ましい。樹脂組成物(B)における難燃剤は、加熱された際に吸熱作用を有して温度上昇を抑制する化合物や、加熱により融解して酸素の供給や燃焼性ガスの発生を抑える化合物である。例えば、加熱された際に脱水反応等の吸熱反応が生じる化合物を難燃剤として吸熱剤を使用できる。
吸熱剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物(カオリナイト、ハロイサイト、ディッカイト)やハイドロタルサルサイト等の無機水酸化物、セピオライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、マイカ、石英、ゼオライト、ワラストナイト、ネフェリンサイアナイト等の吸水作用のある無機化合物が挙げられる。以下、加熱された際に脱水反応が生じる無機水酸化物や無機化合物のことを総称して「加熱脱水型化合物」と表記する。加熱脱水型化合物では、脱水反応によって生じた水の蒸発潜熱によっても温度上昇を抑制することができる。
加熱脱水型化合物のうち水酸化マグネシウムは、脱水反応が300℃以上で生じるため、難燃剤として水酸化マグネシウムを用いた場合には、樹脂組成物(B)を成形して管30を作製する際に脱水反応が生じることを抑制できる。
加熱脱水型化合物のうち水酸化アルミニウムは、脱水反応が200℃程度で生じるため、難燃剤として水酸化アルミニウムを用いた場合には、火災の際に管30に伝わった熱を早めに吸熱することができる。
【0081】
加熱脱水型化合物のうちハイドロタルサイトは化学名をマグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレートと言い、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O等に代表される鉱物の一種であり、正に帯電した基本層[Mg1-xAlx(OH)2]x+と負に帯電した中間層[(CO3)x/2・mH2O]x-からなる層状の無機化合物である。多くの2価、3価の金属がこれと同様の層状構造をとり、これらは次のような一般式で表される。
[M2+
1-xM3+
x(OH)2]x+[An-
x/n・mH2O]x-
M2+:Mg2+, Zn2+等の2価金属イオン
M3+:Al3+, Fe3+等の3価金属イオン
An- :CO3
2-, Cl-, NO3
-等のn価アニオン
X:0<X≦0.33
ハイドロタルサイトは、分子間に有している結晶水が約180℃から脱水を開始し、その結晶水は約300℃で完全に脱離する。この状態までは合成ハイドロタルサイトは結晶構造を保持しているが、約350℃を超えると結晶構造が崩壊し始め、水と二酸化炭素を放出する。そして、合成ハイドロタルサイトは、塩化ビニル系樹脂の熱分解温度である約200℃以上300℃以下よりも60℃以上75℃以下低い温度で吸熱分解を開始するため、塩化ビニル系樹脂の熱分解をハイドロタルサイトの吸熱分解で効率的に抑制することができる。
難燃剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、カオリン系鉱物又はハイドロタルサイトの少なくとも2種を併用してもよい。
【0082】
前記加熱脱水型化合物は、通常、粒子状である。
加熱脱水型化合物の体積平均粒子径は0.01μm以上20μm以下であることが好ましく、0.05μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.05μm以上1μm以下がさらに好ましい。加熱脱水型化合物の体積平均粒子径をこの範囲とすることで、管30に透明性を付与したり、加熱脱水型化合物の分散性を向上させることができる。体積平均粒子径は、レーザ回折散乱法粒子径分布測定装置を用いて測定した値である。
加熱脱水型化合物のBET比表面積は1m2/g以上40m2/g以下であることが好ましく、1m2/g以上20m2/g以下であることが好ましい。ここで、BET比表面積は、窒素吸着を利用して求めた値である。
加熱脱水型化合物の体積平均粒子径及びBET比表面積が前記範囲であれば、難燃剤としての効果を充分に発揮でき、また、管30を作製する際の樹脂組成物(B)の成形性及び管30の機械的物性を充分に確保できる。
【0083】
加熱脱水型化合物は、その粒子表面がステアリン酸等の高級脂肪酸や、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤により表面処理された加熱脱水型化合物は、熱可塑性樹脂に対する分散性が高くなり、吸熱性の効果をより発揮しやすくなる。また、加熱脱水型化合物が塩基性の場合には、熱可塑性樹脂をヤケにくくし、黄変を防止することができる。
加熱脱水型化合物を表面処理剤により表面処理する場合、表面処理剤の量は加熱脱水型化合物100質量部に対して0.05質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。表面処理剤の量が前記下限値以上であれば、熱可塑性樹脂に対する加熱脱水型化合物の分散性を充分に高くでき、前記上限値以下であれば、経済性の低下を抑制できる。
【0084】
吸熱剤以外の難燃剤としては、ハイドロタルサイト、酸化アンチモン、モリブデン化合物、臭素系化合物、リン系化合物、ホウ酸系化合物が挙げられる。
酸化アンチモンとしては、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙げられる。
モリブデン化合物としては、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、アンモニウムモリブデート等が挙げられる。
臭素性化合物としては、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン、テトラブロムエタン等が挙げられる。
リン系化合物としては、赤リン、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
ホウ酸系化合物としては、ホウ酸カルシウム、ホウ酸亜鉛等が挙げられる。
難燃剤の中でも、ポリ塩化ビニル樹脂の燃焼抑制効果が高いことから、リン化合物、三酸化アンチモンが好ましい。
これらの難燃剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0085】
樹脂組成物(B)における難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の加熱脱水型化合物や、モリブデン化合物、臭素系化合物、リン系化合物、ホウ酸系化合物が好ましい。これらの難燃剤が含まれる場合には、管30の耐火性能をより向上させることができる。
樹脂組成物(B)中の難燃剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.05質量部以上10質量部以下が好ましく、1質量部以上5質量部以下より好ましい。
また、難燃剤の含有量は、熱可塑性樹脂に含まれる熱膨張性黒鉛100質量部に対して、13質量部以上215質量部以下が好ましく、13質量部以上190質量部以下がより好ましく、17質量部以上130質量部以下がさらに好ましく、40質量部以上120質量部以下が最も好ましい。
難燃剤の含有量が前記下限値以上であれば、耐火性をより高められ、前記上限値以下であれば、管30の機械的強度を充分に高くできる。
特に、難燃剤の一部又は全部がリン系化合物である場合、機械的強度が低下しやすいため、リン系化合物の含有量は、熱可塑性樹脂に含まれる熱膨張性黒鉛100質量部に対して、1質量部以上200質量部未満が好ましく、13質量部以上150質量部以下がより好ましい。
【0086】
難燃剤の体積平均粒子径は、0.2μm以上100μm以下が好ましく、0.4μm以上50μm以下がより好ましい。難燃剤の体積平均粒子径は、光散乱粒度計(光散乱粒度計DLS-7000:大塚電子(株)製)にて測定した値である。
樹脂組成物(B)が難燃剤を含有する場合、熱膨張性黒鉛の平均粒子径αと難燃剤の体積平均粒子径βとの比(β/α比)は、0.0015以上0.0065以下が好ましく、0.002以上0.006以下がより好ましい。難燃剤は、熱膨張性黒鉛同士における熱的な橋渡しをする。β/α比が上記範囲内であれば、上記の熱的な橋渡しを防ぎ、熱伝導率をより低められる。
【0087】
樹脂組成物(B)は、熱安定剤を含有してもよい。熱安定剤としては、例えば、鉛系安定剤、スズ系安定剤、Ca-Zn系安定剤、高級脂肪酸金属塩等が挙げられる。熱安定剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
鉛系安定剤としては、例えば、鉛白、塩基性亜硫酸鉛、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、三塩基性マレイン酸鉛、シリカゲル共沈ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
スズ系安定剤としては、例えば、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジメチル錫メルカプト等のメルカプチド類;ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー等のマレート類;ジブチル錫メルカプトジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等のカルボキシレート類が挙げられる。
Ca-Zn系安定剤はカルシウムの脂肪酸塩と亜鉛の脂肪酸塩の混合物である。脂肪酸としては、ベヘニン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リシノール酸、安息香酸等が挙げられ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2-エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2-エチルヘキソイン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられる。
【0089】
熱安定剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.3質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。熱安定剤の含有量が前記下限値以上であれば、成形時における熱可塑性樹脂の熱安定性を向上させることができ、前記下限値以下であれば、燃焼時において熱可塑性樹脂を充分に炭化させることができ、充分な耐火性能を得ることができる。
【0090】
樹脂組成物(B)には、熱膨張性黒鉛に加えて、無機充填剤が含まれることが好ましい。
無機充填剤としては、前記難燃剤以外の無機化合物、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、リン酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。前記無機充填剤のうち、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化鉄等の塩基性無機充填剤が好ましい。
前記無機充填剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記無機充填剤の含有量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.3質量部以上50.0質量部以下であることが好ましく、1.0質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。無機充填剤の含有量が前記下限値以上であれば、耐火性をより高めることができ、前記上限値以下であれば、管30の機械的強度を充分に高いものにすることができる。
特に、熱膨張性黒鉛としてpHが1.5以上4.0以下に調整されたものを用いる場合には、樹脂組成物(B)には、前記塩基性無機充填剤が、熱可塑性樹脂100質量部に対して0.3質量部以上5.0質量部以下の割合で含まれることが好ましい。塩基性無機充填剤の含有割合が前記下限値以上であれば、樹脂組成物(B)を成形して管30を作製する熱安定性が高くなり、成形時の炭化物発生を防止でき、前記上限値以下であれば、火災発生時の熱可塑性樹脂を充分に炭化させることができ、耐火性をより向上させることができる。
【0092】
以上説明したように、本実施形態に係る継手20によれば、遮音カバー22の短手方向Bの線膨張係数が、遮音カバー22の長手方向Aの線膨張係数よりも小さい。よって、遮音カバー22が軸方向に膨張し難い。これにより、遮音カバー22におけるたわみを抑制することができる。
【0093】
遮音カバー22の短手方向Bの線膨張係数は、800×10-6(1/℃)以下である。これにより、遮音カバー22におけるたわみを確実に抑制することができる。
【0094】
一般に、遮音カバー22の原反50の押出方向MDでは、線膨張係数が大きくなる一方、遮音カバー22の原反50の直交方向TDでは、線膨張係数が小さくなる。
ここで、遮音カバー22の長手方向Aが、遮音カバー22の原反50の押出方向MDである。よって、遮音カバー22の短手方向Bが、遮音カバー22の原反50の直交方向TDとなる。これにより、遮音カバー22の短手方向Bの線膨張係数が、確実に小さくなる。
【0095】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0096】
継手本体21や遮音カバー22、管30の材質は、上記実施形態に示した材料に限られない。
空間Sが、周方向に連続した環状でなくてもよい。
【0097】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0098】
次の、上記実施形態の作用効果を検証する検証試験を以下に示す。
本検証試験では、実施例1~4、および、比較例1の合計5種類の継手20を準備した。実施例1~4、比較例1の外形状は、
図1および
図2に基づいて説明した前記実施形態に係る継手20と同様である。
実施例1~4では、
図3に示すように、遮音カバー22の長手方向Aは、原反50の押出方向MDである。一方、比較例1では、
図5に示すように、遮音カバー22Aの長手方向Aは、原反50の直交方向TDである。
各実施例、および、比較例に係る継手20の遮音カバー22の構成と、耐火性の評価の結果は、以下の表1の通りである。
【0099】
【0100】
なお上記表における線膨張係数(TD)は、遮音カバー22の原反50の直交方向TD(Transvers Direction)の線膨張係数である。線膨張係数(TD)は、実施例1~4については、遮音カバー22の短手方向Bの線膨張係数(遮音カバー22の上下方向Zの線膨張係数)である。線膨張係数(TD)は、比較例1については、遮音カバー22の長手方向Aの線膨張係数(遮音カバー22の周方向の線膨張係数)である。
また上記表における線膨張係数(MD)は、遮音カバー22の原反50の押出方向MD(Machine Direction)の線膨張係数である。線膨張係数(MD)は、実施例1~4については、遮音カバー22の長手方向Aの線膨張係数(遮音カバー22の周方向の線膨張係数)である。線膨張係数(MD)は、比較例1については、遮音カバー22の短手方向Bの線膨張係数(遮音カバー22の上下方向Zの線膨張係数)である。
【0101】
耐火性評価には、
図6に示す耐火試験炉100を用いた。耐火試験炉100は、上方以外は密閉された加熱室110と、加熱室110の上に設置された試験用の床スラブ120と、加熱室110内に設けられて火炎を生じさせるバーナー130と、加熱室110内の温度を測定する熱電対140とを備える。床スラブ120としては、直径260mmの区画貫通部120aが形成された100mm厚さのPC(プレキャストコンクリート)パネルを用いた。熱電対140は、加熱室110内の第2縦管32の下端付近の温度を測定できるように配置した。また、継手20と区画貫通部120aの内側面との間にはモルタル3を充填して区画貫通部120aを密閉した。
この耐火試験炉100に、上記実施形態と同様の配置で配管構造10を設置した。
そして、耐火試験(平成12年6月1日に施行された改正建築基準法の耐火性能試験の評価方法,ISO834-1に従う)をおこなった。この耐火試験では、加熱開始後、継手20と区画貫通部120aとの隙間から煙が出るまでの時間(発煙時間)を測定した。消防法の令8区画の判定基準に従い、発煙時間が120分以上の場合を耐火性有りとして表3の評価を「○」とし、120分未満の場合を耐火性無しとして表3の評価を「×」とした。
【0102】
上記の結果から、実施例1~4の配管構造10では、加熱開始から120分を超えても、管継手20と区画貫通部120aとの間から煙が流出することがなく、耐火性を有していたことが確認される(状態については
図7の実施例に係る継手20の断面図参照)。一方、比較例1の配管構造10では、加熱開始から120分以内に発煙が確認された(状態については
図8の比較例に係る継手20Aの断面図参照)。