(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150914
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】非空気式タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 7/00 20060101AFI20231005BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231005BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20231005BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20231005BHJP
B60C 9/26 20060101ALI20231005BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60C7/00 H
B60C1/00 Z
B60C9/00 H
B60C9/00 A
B60C9/20 E
B60C9/26 C
B60C9/26 B
B60C19/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060264
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】影山 裕一
(72)【発明者】
【氏名】松田 淳
(72)【発明者】
【氏名】友井 修作
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA13
3D131AA21
3D131AA30
3D131AA32
3D131AA39
3D131BA02
3D131BA09
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB19
3D131BC31
3D131BC45
3D131BC51
3D131CC03
3D131CC04
3D131DA45
3D131DA52
3D131KA01
3D131LA24
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】加工性および高温での耐荷重性を向上すること。
【解決手段】非空気式タイヤは、外周輪3と内周輪4がスポーク5によって連結されたスポーク構造体2と、スポーク構造体2の外周輪3の外周に配置されたトレッドリング1と、を備え、スポーク構造体2は、少なくとも一部が間欠的に配置され、かつ少なくとも一部が、80℃でのせん断速度10s
-1の粘度が1mPa・s以上10
5mPa・s以下、せん断速度1s
-1の粘度が1mPa・s以上10
5mPa・s以下の液体を硬化させた高分子材料からなり、80℃におけるせん断速度1s
-1での粘度を、せん断速度10s
-1での粘度で除した値が1.0以上5.0以下であり、ビカット軟化温度が80℃以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周輪と内周輪がスポークによって連結されたスポーク構造体と、前記スポーク構造体の前記外周輪の外周に配置されたトレッドリングと、を備え、
前記スポーク構造体は、少なくとも一部が間欠的に配置され、かつ少なくとも一部が、80℃でのせん断速度10s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下、せん断速度1s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下の液体を硬化させた高分子材料からなり、80℃におけるせん断速度1s-1での粘度を、せん断速度10s-1での粘度で除した値が1.0以上5.0以下であり、ビカット軟化温度が80℃以上である、非空気式タイヤ。
【請求項2】
前記スポークは、前記外周輪と前記内周輪とを連結しタイヤ周方向に複数配置された支持体と、タイヤ周方向で隣接する前記支持体を連結する連結部と、を含み、
前記スポークは、少なくとも、前記連結部の少なくとも一部が、80℃でのせん断速度10s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下、せん断速度1s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下の液体を硬化させた高分子材料からなり、80℃におけるせん断速度1s-1での粘度を、せん断速度10s-1での粘度で除した値が1.0以上5.0以下であり、ビカット軟化温度が80℃以上である、請求項1に記載の非空気式タイヤ。
【請求項3】
前記スポークは、最大厚みと最小厚みの比Grが、1<Gr≦15である、請求項1または2に記載の非空気式タイヤ。
【請求項4】
前記高分子材料は、硬化時のゲル化時間が3分以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項5】
前記高分子材料は、少なくとも1つのウレタン結合またはウレア結合を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項6】
前記スポーク構造体は、前記高分子材料に消泡剤を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項7】
前記トレッドリングは、金属コードまたは有機繊維を埋設した高分子材料のトレッド補強層を含み、
当該トレッド補強層は、前記金属コードまたは前記有機繊維からなる補強コードのタイヤ幅方向の少なくとも一端部が折り返された折返部を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項8】
前記トレッドリングは、少なくとも一層の炭素繊維補強樹脂層を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項9】
前記炭素繊維補強樹脂層は、タイヤ周方向の引張弾性率E(MD)が1000MPa以上300GPa以下であり、タイヤ幅方向の引張弾性率E(MD)が1MPa以上250GPa以下である、請求項8に記載の非空気式タイヤ。
【請求項10】
前記外周輪は、金属コードまたは有機繊維からなる外周輪補強コードを含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項11】
前記スポークは、スポーク補強材を含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項12】
前記スポーク構造体は、少なくとも1つの部材が独立して形成されている、請求項1から11のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項13】
前記スポークの少なくとも一部に、その周囲の部分より疲労耐久性の低い構造または素材が含まれる、請求項1から12のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項14】
前記外周輪、前記内周輪、前記スポーク、前記トレッドリングの一部が、その一部が隣接する部分より電気抵抗率の低い素材が含まれる、請求項1から13のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【請求項15】
前記スポーク構造体は、複数のセグメントで構成される、請求項1から14のいずれか1項に記載の非空気式タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非空気式タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、外周輪と内周輪との間をスポークで連結した構造をもつ非空気式タイヤが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非空気式タイヤは、上述したように、外周輪と内周輪との間をスポークで連結した構造であり、部材間に隙間が生じる。このような構成の非空気式タイヤは、スポークが複雑な形状をとなるため、粘度、チクソ比が高い材料を用いた場合、型の隅々まで材料を行きわたらせることが難しく、目的の形状をとれない。一方、このような構成の非空気式タイヤは、粘度、チクソ比が低い材料を用いた場合では、硬化後の凝集力が低い傾向があり、高温での耐荷重性が低くなる問題がある。なお、チクソ比は、材料の各せん断速度での粘度の比で求められる。
【0005】
この発明は、加工性および高温での耐荷重性を向上することのできる非空気式タイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る非空気式タイヤは、外周輪と内周輪がスポークによって連結されたスポーク構造体と、前記スポーク構造体の前記外周輪の外周に配置されたトレッドリングと、を備え、前記スポーク構造体は、少なくとも一部が間欠的に配置され、かつ少なくとも一部が、80℃でのせん断速度10s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下、せん断速度1s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下の液体を硬化させた高分子材料からなり、80℃におけるせん断速度1s-1での粘度を、せん断速度10s-1での粘度で除した値が1.0以上5.0以下であり、ビカット軟化温度が80℃以上である。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、加工性および高温での耐荷重性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る非空気式タイヤの斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る非空気式タイヤの部分側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る非空気式タイヤの子午断面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る非空気式タイヤの他の例の部分側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る非空気式タイヤの他の例の部分側面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る非空気式タイヤの他の例の部分側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る非空気式タイヤの他の例の部分側面図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る非空気式タイヤの他の例の部分側面図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る非空気式タイヤの他の例の部分側面図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る非空気式タイヤの他の例の部分側面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る非空気式タイヤの他の例の部分側面図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る非空気式タイヤの他の例の斜視図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る非空気式タイヤのトレッド部の一例の模式図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る非空気式タイヤのトレッド部の一例の模式図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る非空気式タイヤのトレッド部の一例の模式図である。
【
図16】
図16は、実施形態に係る非空気式タイヤのトレッド部の一例の模式図である。
【
図17】
図17は、実施形態に係る非空気式タイヤのトレッド部の一例の模式図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る非空気式タイヤのトレッド部の一例の模式図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る非空気式タイヤの変形例の部分側面図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る非空気式タイヤの変形例の部分側面図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る非空気式タイヤの変形例の部分側面図である。
【
図22】
図22は、実施形態に係る非空気式タイヤの変形例の部分側面図である。
【
図23】
図23は、実施形態に係る非空気式タイヤの変形例の子午断面図である。
【
図24】
図24は、実施例に係る非空気式タイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図25】
図25は、実施例に係る非空気式タイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図26】
図26は、実施例に係る非空気式タイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図27】
図27は、実施例に係る非空気式タイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
以下の説明において、タイヤ径方向とは、非空気式タイヤの回転軸であるタイヤ回転軸(図示省略)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、タイヤ回転軸に直交すると共に、非空気式タイヤのタイヤ幅の中心を通る平面であり、タイヤ赤道面CLは、非空気式タイヤのタイヤ幅方向における中心位置であるタイヤ幅方向中心線と、タイヤ幅方向における位置が一致する。タイヤ幅は、タイヤ幅方向において最も外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって非空気式タイヤのタイヤ周方向に沿う線をいう。
【0011】
実施形態の非空気式タイヤは、スポーク構造体(単に構造体ともいう)2の外周にゴムまたは樹脂製のトレッドリング1が接合される。スポーク構造体2は、弾性材料で形成される。スポーク構造体2は、外周輪3と、内周輪4と、スポーク5と、の各部材を含む。
【0012】
図1から
図3に示すように、外周輪3は、タイヤ回転軸を中心とし、タイヤ幅方向に延びる筒状に形成される。内周輪4は、外周輪3と同心状に配置されるようにタイヤ回転軸を中心とし、タイヤ幅方向に延びる筒状に形成される。内周輪4は、その内側にリム(図示せず)が取り付けられ、当該リムを介して非空気式タイヤは車両に装着される。スポーク5は、外周輪3および内周輪4と同様にタイヤ幅方向に展開され、外周輪3と内周輪4との間を連結する。スポーク5は、様々な形態がある。
【0013】
図1および
図2で示すスポーク5A(5)は、支持体5AAと、連結部5ABと、の各部材を含む。支持体5AAは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。支持体5AAは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。支持体5AAは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。支持体5AAは、タイヤ周方向の一方に湾曲または屈曲して形成され、タイヤ周方向で隣接する2つが、互いの凸面同士がタイヤ周方向で対向するように配置される。連結部5ABは、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ径方向に板面を向けた板状に形成される。連結部5ABは、各端がタイヤ周方向で隣接する支持体5AAの凸面に連結される。
【0014】
図4で示すスポーク5B(5)は、第一支持体5BAaと、第二支持体5BAbと、第一連結部5BBaと、第二連結部5BBbと、の各部材を含む。第一支持体5BAaは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。第一支持体5BAaは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。第一支持体5BAaは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。第一支持体5BAaは、タイヤ周方向の一方に湾曲して形成され、タイヤ周方向で隣接する2つが、互いの凸面同士がタイヤ周方向で対向するように対をなして配置される。第二支持体5BAbは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。第二支持体5BAbは、タイヤ周方向で隣接する第一支持体5BAaの凹面側の間に配置される。第二支持体5BAbは、タイヤ幅方向から視て十字状に交差して設けられ、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。第一連結部5BBaは、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ径方向に板面を向けた板状に形成される。第一連結部5BBaは、各端がタイヤ周方向で隣接する第一支持体5BAaの凸面に連結される。第二連結部5BBbは、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ径方向に板面を向けた板状に形成される。第二連結部5BBbは、各端が第二支持体5BAbの交差部と、第一支持体5BAaの凹面に連結される。第一連結部5BBaおよび第二連結部5BBbは、タイヤ周方向で連続した円形状に配置される。
【0015】
図5で示すスポーク5C(5)は、支持体5CAと、連結部5CBと、の各部材を含む。支持体5CAは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。支持体5CAは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。支持体5CAは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。支持体5CAは、タイヤ周方向の一方に屈曲して形成され、タイヤ周方向で隣接する2つが、互いの凸面同士がタイヤ周方向で対向するように配置される。連結部5CBは、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ径方向に板面を向けた板状に形成される。連結部5CBは、各端がタイヤ周方向で隣接する支持体5CAの凸面に連結される。
【0016】
図6で示すスポーク5D(5)は、支持体5DAと、連結部5DBと、の各部材を含む。支持体5DAは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。支持体5DAは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。支持体5DAは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。支持体5DAは、タイヤ周方向の一方に湾曲して形成され、タイヤ周方向で隣接する2つが、互いの凸面同士がタイヤ周方向で対向するように配置される。連結部5DBは、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ径方向に板面を向けた板状に形成される。連結部5DBは、各端がタイヤ周方向で隣接する支持体5DAの凸面に連結される。連結部5DBは、タイヤ方向で複数(
図6では2つ)設けられる。
【0017】
図7で示すスポーク5E(5)は、支持体5EAと、連結部5EBと、補強部5ECと、の各部材を含む。支持体5EAは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。支持体5EAは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。支持体5EAは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。支持体5EAは、タイヤ周方向の一方に湾曲して形成され、タイヤ周方向で隣接する2つが、互いの凸面同士がタイヤ周方向で対向するように配置される。連結部5EBは、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ径方向に板面を向けた板状に形成される。連結部5EBは、各端がタイヤ周方向で隣接する支持体5EAの凸面に連結される。補強部5ECは、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に沿って延びる板状に形成される。補強部5ECは、一方の端が支持体5EAの凸面の端部に連結され、他方の端が外周輪3または内周輪4に連結される。従って、補強部5ECは、支持体5EAの凸面側と外周輪3との間、支持体5EAの凸面側と内周輪4との間を繋ぐように設けられる。
【0018】
図8で示すスポーク5F(5)は、支持体5FAと、連結部5FBと、の各部材を含む。支持体5FAは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。支持体5FAは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。支持体5FAは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。支持体5FAは、タイヤ周方向の一方に湾曲または屈曲して形成され、タイヤ周方向で隣接する2つが、互いの凸面同士がタイヤ周方向で対向するように配置される。連結部5FBは、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ径方向に板面を向けた板状に形成される。連結部5FBは、各端がタイヤ周方向で隣接する支持体5FAの凸面に連結される。スポーク5Fは、上述した、互いの凸面同士がタイヤ周方向で対向する2つの支持体5FAと、これら支持体5FAの凸面に連結される連結部5FBと、を1つの組とし、この組がタイヤ周方向の1周りに所定間隔で複数並ぶ1つのグループを構成し、かつこのグループがタイヤ幅方向で2つ設けられてタイヤ周方向で位相をずらして配置されている。
図8の例では、前記グループが2つだが、2つ以上設けて構成することもできる。
【0019】
図9で示すスポーク5G(5)は、支持体5GAと、第一連結部5GBaと、第二連結部5GBbと、の各部材を含む。支持体5GAは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。支持体5GAは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。支持体5GAは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。複数の支持体5GAは、タイヤ周方向の一方に屈曲して形成される。第一連結部5GBaは、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ径方向に板面を向けた板状に形成される。第一連結部5GBaは、各端がタイヤ周方向で隣接する支持体5GAの屈曲部に連結される。第二連結部5GBbは、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に沿って延びる板状に形成される。第二連結部5GBbは、第一連結部5GBaよりもタイヤ径方向外側において、各端がタイヤ周方向で隣接する支持体5GAを連結される。
【0020】
図10で示すスポーク5H(5)は、支持体5HAと、連結部5HBと、の各部材を含む。支持体5HAは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。支持体5HAは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。支持体5HAは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。複数の支持体5HAは、タイヤ周方向の一方に屈曲して形成される。連結部5HBは、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に沿って延びる板状に形成される。連結部5HBは、一端が支持体5HAの屈曲部の凸面に連結され、他端がタイヤ周方向で隣接する支持体5HAの外周輪3に連結された端部に連結される。
【0021】
図11で示すスポーク5I(5)は、支持体5IAと、連結部5IBと、の各部材を含む。支持体5IAは、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。支持体5IAは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される。支持体5IAは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。複数の支持体5IAは、タイヤ径方向の中央部がタイヤ周方向の一方に屈曲し、タイヤ径方向の両端部側がタイヤ周方向の他方に屈曲して形成される。連結部5IBは、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に沿って延びる板状に形成される。連結部5IBは、一端が支持体5IAの中央部の屈曲部の凸面に連結され、他端がタイヤ周方向で隣接する支持体5IAの端部側の屈曲部の凸面に連結される。連結部5IBは、タイヤ周方向で隣接する2つの支持体5IAの間で2つ連結される。
【0022】
図12で示すスポーク5J(5)は、タイヤ径方向に沿って延び、タイヤ周方向に板面を向けた板状に形成される。スポーク5Jは、タイヤ径方向の各端が外周輪3と内周輪4とに連結される部材である支持体ともいえる。スポーク5Jは、タイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。複数のスポーク5Jは、
図12では、タイヤ径方向に直線状に形成される。複数のスポーク5Jは、タイヤ径方向の一方に湾曲または屈曲して形成されてもよい。
【0023】
トレッドリング1は、
図3に示すように、トレッド部1Aと、トレッド補強層1Bと、を含む。
【0024】
トレッド部1Aは、ゴム材(トレッドゴム)からなる。トレッド部1Aは、非空気式タイヤのタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が非空気式タイヤの輪郭となる。トレッド部1Aは、その外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面1Aaが形成される。トレッド面1Aaは、タイヤ周方向に延在する複数(
図3では4本)の周方向主溝1Abを有する。そして、トレッド面1Aaは、これら複数の周方向主溝1Abによって、区画されてタイヤ周方向に沿って延在しタイヤ幅方向に複数(
図3では5本)並ぶ陸部1Acを有する。なお、図には明示しないが、トレッド面1Aaは、周方向主溝1Abに交差するラグ溝が設けられていてもよく、当該ラグ溝によって、陸部1Acがタイヤ周方向で分割されていてもよい。
【0025】
トレッド補強層1Bは、主にゴム、樹脂材からなる。トレッド補強層1Bは、トレッド部1Aのタイヤ径方向内側に配置され、外周輪3の外面に沿って配置される。
【0026】
上述のように構成された非空気式タイヤは、タイヤ周方向に回転して走行状態になると、外周輪3と内周輪4とにタイヤ周方向で相反する方向の力が作用し、スポーク5にタイヤ径方向の引張り抗力が発生して、外周輪3と内周輪4との相対回転を制止する剛性を生ずる。また、この走行状態から制動すると、外周輪3と内周輪4とに上記とは逆のタイヤ周方向で相反する方向の力が作用し、スポーク5にタイヤ径方向に緊張して引張り抗力を発生し、外周輪3と内周輪4との相対回転を阻止する作用を行う。すなわち、非空気式タイヤは、外周輪3と内周輪4との間の周方向の剛性が増大するため、制動時の操縦性を安定させる。さらに、非空気式タイヤは、スポーク5が支持体の間を連結部で連結された構成であるので制動時に発生する応力を、連結部と両側のそれぞれの支持体に分散させ、外周輪3や内周輪4とスポーク5との接合部分に応力集中させないため、耐久性を維持することができる。
【0027】
本実施形態の非空気式タイヤは、スポーク構造体2において、スポーク5の支持体5AA,5BAa,5BAb,5CA,5DA,5EA,5FA,5GA,5HA,5IA,5Jがタイヤ周方向に間隔をおいて複数配置される。また、スポーク構造体2は、スポーク5の支持体5AA,5BAa,5BAb,5CA,5DA,5EA,5FA,5GA,5HA,5IAと、連結部5AB,5BBa,5BBb,5CB,5DB,5EB,5FB,5GBa,5GBb,5HB,5IBとの間に隙間が生じる。また、スポーク構造体2は、スポーク5と、外周輪3や内周輪4との間に隙間が生じる。即ち、スポーク構造体2は、少なくとも一部が間欠的に配置される。また、本実施形態の非空気式タイヤは、スポーク構造体2の少なくとも一部が、80℃でのせん断速度10s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下、せん断速度1s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下の液体を硬化させた高分子材料からなり、80℃におけるせん断速度1s-1での粘度を、せん断速度10s-1での粘度で除した値(チクソ比)が1.0以上5.0以下であり、ビカット軟化温度が80℃以上である。
【0028】
粘度は、コーンプレート型粘度計(ブルックフィールド製HBDV-II+pro cp)を用いて、液体の混合終了から30秒後の80℃において、せん断速度1s-1の粘度と、せん断速度10s-1での粘度を測定することによって得られる。また、チクソ比は、これらせん断速度1s-1の粘度を、せん断速度10s-1での粘度で除して得られる。
【0029】
ビカット軟化温度は、JIS K7206に準拠し、試験荷重10N、昇温速度10℃/hで求められる。
【0030】
チクソ比が1.0以上5.0以下であり、ビカット軟化温度が80℃以上である高分子材料は、例えば、ポリウレタン3(PU3)、ポリウレタン4(PU4)、ポリウレタン5(PU5)、ポリウレタン6(PU6)などが挙げられる。
【0031】
ポリウレタン3(PU3)は、以下のように合成される。まず、ポリテトラメチレンエーテルグリコール100gと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート50g(インデックス2.0)とを、窒素雰囲気下、80℃で4時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、得られたウレタンプレポリマー100gを80℃で加温し、150℃で溶解させたトリメチレンビス(4-アミノベンゾアート)18.8gと撹拌翼で1分間撹拌する。
【0032】
ポリウレタン4(PU4)は、以下のように合成される。まず、ポリカーボネートジオール100gと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート50g(インデックス2.0)とを、窒素雰囲気下、80℃で2時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、得られたウレタンプレポリマー100gを80℃で加温し、150℃で溶解させたトリメチレンビス(4-アミノベンゾアート) 18.8gと撹拌翼で1分間撹拌する。
【0033】
ポリウレタン5(PU5)は、以下のように合成される。まず、ポリテトラメチレンエーテルグリコール100gと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート150g(インデックス6.0)とを、窒素雰囲気下、80℃で4時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、得られたウレタンプレポリマー100gを80℃で加温し、150℃で溶解させたトリメチレンビス(4-アミノベンゾアート)26.4g、ポリプロピレングリコール56.0gと撹拌翼で1分間撹拌する。
【0034】
ポリウレタン6(PU6)は、以下のように合成される。まず、ポリテトラメチレンエーテルグリコール100gと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート50g(インデックス2.0)とを、窒素雰囲気下、80℃で4時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、得られたウレタンプレポリマー100gを80℃で加温し、1,4-ブタンジオール4.8g、トリメチロールプロパン0.9gと撹拌翼で1分間撹拌する。
【0035】
この非空気式タイヤによれば、スポーク構造体2の少なくとも一部を形成する高分子材料について、粘度とチクソ比を上記範囲とすることで成型時に流動性があり加工性が優れる。しかも、この非空気式タイヤによれば、スポーク構造体2の少なくとも一部を形成する高分子材料について、ビカット軟化温度を上記範囲とすることで発熱時の耐荷重性に優れる。この結果、実施形態の非空気式タイヤは、加工性および高温での耐荷重性を向上できる。なお、粘度のより好ましい範囲は以下のとおりであり、上記効果を顕著に得られる。せん断速度10s-1の粘度が102mPa・s以上5.0×104mPa・s以下、せん断速度1s-1の粘度が103mPa・s以上105mPa・s以下。
【0036】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、スポーク5は、外周輪3と内周輪4とを連結しタイヤ周方向に複数配置された支持体5AA,5BAa,5BAb,5CA,5DA,5EA,5FA,5GA,5HA,5IAと、タイヤ周方向で隣接する支持体5AA,5BAa,5BAb,5CA,5DA,5EA,5FA,5GA,5HA,5IAを連結する連結部5AB,5BBa,5BBb,5CB,5DB,5EB,5FB,5GBa,5GBb,5HB,5IBと、を含み、スポーク5は、少なくとも、連結部5AB,5BBa,5BBb,5CB,5DB,5EB,5FB,5GBa,5GBb,5HB,5IBの少なくとも一部が、80℃でのせん断速度10s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下、せん断速度1s-1の粘度が1mPa・s以上105mPa・s以下の液体を硬化させた高分子材料からなり、80℃におけるせん断速度1s-1での粘度を、せん断速度10s-1での粘度で除した値(チクソ比)が1.0以上5.0以下であり、ビカット軟化温度が80℃以上である。
【0037】
チクソ比が1.0以上5.0以下であり、ビカット軟化温度が80℃以上である高分子材料は、例えば、ポリウレタン3(PU3)、ポリウレタン4(PU4)、ポリウレタン5(PU5)、ポリウレタン6(PU6)などが挙げられる。
【0038】
この非空気式タイヤによれば、スポーク5において、タイヤ周方向で隣接する支持体5AA,5BAa,5BAb,5CA,5DA,5EA,5FA,5GA,5HA,5IAが、連結部5AB,5BBa,5BBb,5CB,5DB,5EB,5FB,5GBa,5GBb,5HB,5IBで連結されていることで、支持体5AA,5BAa,5BAb,5CA,5DA,5EA,5FA,5GA,5HA,5IAの一部が欠損しても、荷重支持機能が低下しにくく、急激な走行不能状態に陥るのを防ぐことができる。そして、このスポーク5において、少なくとも、結部5AB,5BBa,5BBb,5CB,5DB,5EB,5FB,5GBa,5GBb,5HB,5IBの少なくとも一部を形成する高分子材料について、粘度とチクソ比を上記範囲とすることで成型時に流動性があり加工性が優れる。しかも、この非空気式タイヤによれば、スポーク構造体2の少なくとも一部を形成する高分子材料について、ビカット軟化温度を上記範囲とすることで発熱時の耐荷重性に優れる。この結果、実施形態の非空気式タイヤは、加工性および高温での耐荷重性を向上できる。
【0039】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、スポーク5は、最大厚みと最小厚みの比Grが、1<Gr≦15である。
【0040】
スポーク5の厚みTは、
図2に示すように、支持体5AA(5BAa,5BAb,5CA,5DA,5EA,5FA,5GA,5HA,5IA,5J)の場合、外周輪3や内周輪4の内表面に沿った円弧の仮想線を引き、当該仮想線の位置を含み測定する。また、スポーク5の厚みTは、
図2に示すように、連結部5AB(5BBa,5BBb,5CB,5DB,5EB,5FB,5GBa,5GBb,5HB,5IB)の場合、支持体5AA(5BAa,5BAb,5CA,5DA,5EA,5FA,5GA,5HA,5IA,5J)の板面に沿った仮想線を引き、当該仮想線の位置を含み測定する。
【0041】
この非空気式タイヤによれば、最大厚みと最小厚みの比Grを1を超え15以下とすることで、均一なGr配分に対して、Grを任意に変化させ、荷重負荷時の応力・ひずみを分散できるため、耐久性を向上できる。なお、上記効果を得る上で、1.5≦Gr≦10の範囲が好ましく、2≦Gr≦8の範囲がより好ましく、これらの範囲とすることで、重量を抑制しつつ、加工性や耐久性がバランス化できる。
【0042】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、高分子材料は、硬化時のゲル化時間が3分以上である。
【0043】
ゲル化時間は、ゲル化試験機(安田精機製作所製No.153ゲルタイムテスター)を用いて、80℃でのゲル化時間を測定することで得られる。
【0044】
この非空気式タイヤによれば、ゲル化時間を上記範囲とすることで成型時の可使時間があるため、加工性に優れる。
【0045】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、高分子材料は、少なくとも1つのウレタン結合またはウレア結合を有する。
【0046】
この非空気式タイヤによれば、材料は加工性、物性のバランスがとれたポリウレタン系材料とすることが好ましい。この結果、実施形態の非空気式タイヤは、加工性を向上できる。
【0047】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、スポーク構造体2は、高分子材料に消泡剤を含む。
【0048】
消泡剤は、例えば、ポリマー系消泡剤、ミネラルオイル系消泡剤、シリコーン系消泡剤などが挙げられる。
【0049】
この非空気式タイヤによれば、高分子材料に消泡剤を含むことで、成型品中の気泡を減らすことができる。この結果、実施形態の非空気式タイヤは、加工性を向上できる。
【0050】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、
図3に示すように、トレッドリング1は、金属コードまたは有機繊維を埋設した高分子材料のトレッド補強層1Bを含む。そして、トレッド補強層1Bは、
図13から
図18に示すように、金属コードまたは有機繊維からなる補強コード1Baのタイヤ幅方向の少なくとも一端部が折り返された折返部1Bbを有している。好ましくは、折返部1Bbは、タイヤ径方向外側に端部を向けて折り返される。と良い。トレッド補強層を成形する際、成形ドラム上に任意の長さ、かつ、少なくとも1枚のトレッド補強層を巻き付けた後、端部をタイヤ径方向外側に向かって折り返すことで、トレッド補強層の成形工程の生産効率が良くなる。タイヤ径方向内側に向かって折り返すこともできるが、この場合は、折り返し部の段差の状態や端末の周上変動の程度を、後工程で目視確認し難くなるため、成形時のエア噛みなどに起因する加硫故障を誘発する恐れがある。トレッド補強層1Bとして、一般的に空気入りタイヤに用いられる金属コードをジエン系ゴム組成物に埋設したベルト層を用いることもできる。
【0051】
トレッド補強層1Bを構成する高分子材料は、ゴムまたは樹脂が好ましい。
【0052】
トレッド補強層1Bを構成するゴムとしては、例えば、ジエン系ゴムまたは熱可塑性エラストマーが好ましい。ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリアミド系エラストマー(TPAE)、ポリエステル系エラストマー(TPC)、ポリオレフィン系エラストマー(TPO)、ポリスチレン系エラストマー(TPS)、ポリウレタン系エラストマー(TPU)などが挙げられる。また、これらのゴムは単体またはブレンドして用いてもよく、さらに充填剤、架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤などの添加剤を含む組成物であってもよい。また、例えば、トレッド補強層1Bとして、一般的に空気入りタイヤに用いられる金属コードをジエン系ゴム組成物に埋設したベルト層を用いることもできる。
【0053】
トレッド補強層1Bを構成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PEs)、ポリ塩化ビニル(PVC)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ポリウレタン(PUR)、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリアミドMXD6(MXD6)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリサルフォン(PSU)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、フッ素樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレン(PE)、ポリブテン(PB)、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリアセタール(POM)、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)、ポリエステル系エラストマー(TPC)、ポリオレフィン系エラストマー(TPO)、ポリスチレン系エラストマー(TPS)、ポリウレタン系エラストマー(TPU)などが挙げられる。また、これらの樹脂は単体またはブレンドして用いてもよく、さらに充填剤、補強材、老化防止剤、可塑剤、加工助剤などの添加剤を含む組成物であってもよい。さらにゴムと樹脂をブレンドして用いても良い。
【0054】
補強コード1Baは、タイヤ幅方向に沿って設けられタイヤ周方向に間隔を置いて配置される。補強コード1Baは、タイヤ幅方向と平行に設けられていても、タイヤ周方向に所定角度(0を越えて90度以下)で設けられていてもよい。補強コード1Baは、
図13から
図18に示すように、トレッド補強層1Bがタイヤ径方向で複数積層される場合、タイヤ周方向に対する角度が互いに異なるよう設けられていてもよい。補強コード1Baは、折返部1Bbの端部の耐久性確保のため、トレッド補強層1Bの端部からタイヤ幅方向内側に折り返された折返幅H1が、少なくとも5mm以上あることが好ましい。折返幅H1は、より好ましくは10mm以上がよい。トレッド補強層1Bは、折返部1Bbが補強コード1Baのタイヤ幅方向の両端部に設けられ、
図15および
図16に示すように、両端部の折返部1Bbがトレッド補強層1Bのタイヤ幅方向の範囲内で相互に重なってもよい。両端部の折返部1Bbが重なる場合は、端部間距離H2が少なくとも5mm以上あることが好ましい。端部間距離H2、より好ましくは10mm以上がよい。
【0055】
この非空気式タイヤによれば、トレッドリング1にトレッド補強層1Bを設け、当該トレッド補強層1Bの補強コード1Baに折返部1Bbを設けることで、トレッドリング1のタイヤ幅方向の端部を補強し、耐久性を向上できる。
【0056】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、トレッドリング1は、
図13から
図18に示すように、少なくとも一層のベルト強化層1Cを含む。
【0057】
ベルト強化層1Cは、ゴムまたは樹脂、あるいは繊維強化ゴム(FRR:Fiber Reinforced Rubber)または繊機強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastic)からなる。ベルト強化層1Cは、タイヤ径方向に0.5mm以上3.0mmの厚みを有しており、タイヤ幅方向に所定の幅を有し、タイヤ周方向に沿って配置される。ベルト強化層1Cは、トレッド補強層1Bにおいて補強コード1Baと共に積層される。ベルト強化層1Cは、
図13から
図18に示すように、補強コード1Baの折返部1Bbで囲まれるように配置される。
【0058】
この非空気式タイヤによれば、ベルト強化層1Cを含むことで、トレッド補強層1Bの強度を向上できる。ベルト強化層1Cは、その厚みが0.5mm以上であれば強度向上に寄与でき、タイヤ重量の過剰な増加を抑えるため厚みが3.0mm以下であることが好ましい。
【0059】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、トレッドリング1は、少なくとも一層の炭素繊維補強樹脂層を含む。
【0060】
炭素繊維補強樹脂層は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)からなる。炭素繊維補強樹脂層は、トレッドリング1において、タイヤ径方向に厚みを有しており、タイヤ幅方向に所定の幅を有し、タイヤ周方向に沿って配置される。炭素繊維補強樹脂層は、上述したトレッド補強層1Bとして設けられていてもよく、上述したベルト強化層1Cとして設けられていてもよい。
【0061】
この非空気式タイヤによれば、炭素繊維強化プラスチックは、単位重量あたりの強度が高いため、この炭素繊維補強樹脂層を含むことで、タイヤ重量の軽量化を図りつつ、トレッドリング1の緩衝機能を向上できる。
【0062】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、炭素繊維補強樹脂層は、タイヤ周方向の引張弾性率E(MD)が1000MPa以上300GPa以下であり、タイヤ幅方向の引張弾性率E(TD)が1MPa以上250GPa以下である。
【0063】
この非空気式タイヤによれば、炭素繊維強化プラスチックからなる炭素繊維補強樹脂層の引張弾性率E(MD)を300GPa以下とすることでタイヤ周方向の剛性過多を防ぎつつ、1000MPa以上とすることでトレッドリング1の緩衝機能を向上できる、適したたわみ量を確保できる。また、この非空気式タイヤによれば、炭素繊維強化プラスチックからなる炭素繊維補強樹脂層の引張弾性率E(TD)を250GPa以下にすることでタイヤ幅方向の剛性過多を防ぎつつ、1MPa以上とすることでタイヤ幅方向の剛性を確保し、操舵時の幅方向の接地域でのせん断変形を満足して十分な反力を得て、進路保持性を確保できる。従って、実施形態の非空気式タイヤは、炭素繊維補強樹脂層の引張弾性率E(MD)および引張弾性率E(TD)の範囲を適切に保つことで、軽量化と荷重支持機能と進路保持性をバランスできる。
【0064】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、
図3に示すように、外周輪3は、金属コードまたは有機繊維からなる外周輪補強コード6を含む。
【0065】
外周輪補強コード6は、上述したスポーク5のタイヤ周方向で隣接する支持体5AA,5BAa,5BAb,5CA,5DA,5EA,5FA,5GA,5HA,5IA5AAの少なくとも2つをタイヤ周方向で跨ぐように配置される。外周輪補強コード6は、線材を1%以上の伸張を与えた状態で外周輪3に埋設される。
【0066】
この非空気式タイヤによれば、外周輪補強コード6は、外周輪3に取り付けられたトレッドリング1において、接地面域のバックリングを抑制できる。
【0067】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、
図19に示すようにスポーク5は、スポーク補強材7を含む。なお、
図19は、
図2に示す形態の非空気式タイヤのスポーク5Aにスポーク補強材7が適用された例を示しているが、他の形態のスポーク5に適用されてもよい。
【0068】
スポーク補強材7は、金属コードまたは有機繊維から構成できる。スポーク補強材7は、スポーク5Aを構成する支持体5AAまたは連結部5ABの少なくとも一方に設けられ、これら支持体5AAまたは連結部5ABの内部に、支持体5AAや連結部5ABの延在方向や、タイヤ幅方向に沿って埋設される。
【0069】
この非空気式タイヤによれば、スポーク補強材7によって、スポーク5を補強し、耐久性を向上できる。
【0070】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、
図20に示すように、スポーク構造体2は、外周輪3、内周輪4、スポーク5の少なくとも1つの部材が独立して形成されている。
図20では、スポーク構造体2は、接着・溶着・圧着・嵌め込み・噛み合いなどの接合部8を介し、外周輪3、内周輪4、スポーク5がそれぞれ独立して形成されている形態を示している。
【0071】
この非空気式タイヤによれば、スポーク構造体2の外周輪3、内周輪4、スポーク5の少なくとも1つの部材を独立して形成することで、製造の自由度を向上できる。
【0072】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、
図21および
図22に示すように、スポーク5の少なくとも一部に、その周囲の部分より疲労耐久性の低い構造9または素材10が含まれる。なお、
図21および
図22は、
図2に示す形態の非空気式タイヤのスポーク5Aに疲労耐久性の低い構造9または素材10が適用された例を示しているが、他の形態のスポーク5に適用されてもよい。
【0073】
疲労耐久性の低い構造9は、周囲の部分と同一の素材で切り欠き(ノッチ)、溝、薄肉部などにより設けられる。また、疲労耐久性の低い素材10は、周囲の部分と異なる素材で形成される。
【0074】
この非空気式タイヤによれば、スポーク5の少なくとも一部に、その周囲の部分より疲労耐久性の低い構造9または素材10が含まれると、当該構造9または素材10が疲労劣化により損傷することで、タイヤ全体の疲労劣化の程度を判断する疲労インジケータを得ることができ、安全性を向上できる。
【0075】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、
図23に示すように、スポーク構造体2は、複数のセグメント2A,2B,2Cで構成される。
図23では、スポーク構造体2は、タイヤ幅方向で分割された複数のセグメント2A,2B,2Cで構成される例を示しているが、タイヤ周方向で分割された複数のセグメントで構成されていてもよい。セグメントは、スポーク構造体2の外周輪3、内周輪4、スポーク5の複数の部材が一体成型されたものである。
【0076】
この非空気式タイヤによれば、スポーク構造体2を複数のセグメント2A,2B,2Cで構成することで、組み立て性を向上できる。なお、各セグメント2A,2B,2Cは、互いの接合面が噛み合うように凹凸を設けてもよく、製造工程において、接合面の位置決め精度が改善し、タイヤの均一性が向上する。また、各セグメント2A,2B,2Cは、熱反応サイトと紫外線反応サイトの両方の特性を併せ持つ材料を用いることが好ましく、製造時に半製品(紫外線硬化)としての寸法精度を保ちつつ、最終組立て後(熱硬化)の、接合面の強度が確保できる。熱反応サイトと紫外線反応サイトの2つの反応特性を持つ材料を使用すると、3Dプリンターを用いて各セグメントを造形する場合においても、造形時の積層界面の破断強度や伸び、モジュラスなどの機械物性が均一化できるため、耐久性上、好ましい。
【0077】
また、実施形態の非空気式タイヤでは、外周輪、内周輪、スポーク構造体、トレッドリングのうち一部が、隣接する部分より電気抵抗率の低い素材が含まれる。
【0078】
電気抵抗率の低い素材は、周囲の部分と異なる素材であり、導電性高分子や金属などの導電性材料であってもよく、単体としては電気抵抗率の高い素材に導電性フィラーなどの導電剤を添加して導電性を付与した素材でもよい。
【0079】
この非空気式タイヤによれば、走行時の摩擦で生じる静電気の帯電を抑制でき、乗車者への感電や車載電装部品への電気的な影響を防ぐことができる。
【実施例0080】
図24から
図27は、実施例に係る非空気式タイヤの性能試験の結果を示す図表である。以下、比較例の非空気式タイヤと、実施例に係る非空気式タイヤとについて行なった性能の評価試験について説明する。
【0081】
性能評価試験は、加工性の検証を行った。当該試験は、外周輪と内周輪がスポークによって連結されたスポーク構造体と、前記スポーク構造体の前記外周輪の外周に配置されたトレッドリングと、を備え、そのタイヤ径方向寸法(外径)が490mmでタイヤ幅方向寸法(幅)が150mmの非空気式タイヤを試験タイヤとして作製した。加工性の検証は、未硬化の原料を成形型へ注型し、硬化後成形型から取り出し、成形品の状態を目視にて確認した。表面がきれいで欠けがないものを「A」、表面に少量の気泡、しわがみられるが、欠けがないものを「B」、表面に気泡、しわがみられるが、欠けがないものを「C」、欠けがあるものを「D」と判定した。AまたはBと評価したものを、加工性に優れると評価した。
【0082】
また、性能評価試験は、発熱時の耐荷重性の検証を行った、上記試験タイヤを80℃の雰囲気化でタイヤの径方向に対して、3kNの圧縮力を加え、破損するか確認した。破損がないものは「〇」、破損したものは「×」と判定した。
【0083】
比較例1の非空気式タイヤは、スポーク構造体を構成する樹脂のチクソ比が規定範囲外である。具体的に、比較例1は、スポーク構造体を構成する樹脂がポリウレタン1(PU1)からなる。ポリウレタン1(PU1)は、以下のように合成される。まず、ポリカーボネートジオール100gと、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート75g(インデックス3.0)とを、窒素雰囲気下、80℃で2時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、得られたウレタンプレポリマー100gを80℃で加温し、150℃で溶解させたトリメチレンビス(4-アミノベンゾアート)32.3gと撹拌翼で1分間撹拌する。
【0084】
比較例2の非空気式タイヤは、スポーク構造体を構成する樹脂のビカット軟化温度が規定範囲外である。具体的に、比較例2は、スポーク構造体を構成する樹脂がポリウレタン2(PU2)からなる。ポリウレタン2(PU2)、以下のように合成される。まず、ポリテトラメチレンエーテルグリコール100gと、トルエン-2,4-ジイソシアネート34.8g(インデックス2.0)を、窒素雰囲気下、80℃で8時間撹拌を行い、反応させて、ウレタンプレポリマーを合成する。次に、得られたウレタンプレポリマー100gを80℃で加温し、1,4-ブタンジオール5.3g、トリメチロールプロパン0.7gと撹拌翼で1分間撹拌する。
【0085】
一方、実施例の非空気式タイヤは、スポーク構造体を構成する樹脂のチクソ比およびビカット軟化温度が規定範囲外である。具体的に、実施例は、スポーク構造体を構成する樹脂が、ポリウレタン3(PU3)、ポリウレタン4(PU4)、ポリウレタン5(PU5)、ポリウレタン6(PU6)からなる。これらの樹脂は、上述したように合成される。
【0086】
実施例において、下記の樹脂を使用した。
・ポリカーボネートジオール:宇部興産株式会社、ETERNACOLL(登録商標) UH-100
・ポリテトラメチレンエーテルグリコール:三菱ケミカル株式会社、PTMG1000
・ポリプロピレングリコール:三洋化成工業株式会社、サンニックス(登録商標)GL-3000
・4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート:東ソー株式会社、ミリオネート(登録商標)MT
・トルエン-2,4-ジイソシアネート:三井化学ファイン株式会社、コロネート(登録商標)T100
・トリメチレンビス(4-アミノベンゾアート):クミアイ化学工業株式会社、CUA-4
・1,4-ブタンジオール:東京化成工業株式会社
・トリメチロールプロパン:東京化成工業株式会社
・消泡剤:BYK-Chemie GmbH.、BYK(登録商標)-A535
【0087】
そして、
図24から
図27の試験結果に示すように、実施例の非空気式タイヤは、比較例に対して加工性および高温での耐荷重性に優れることが分かる。