(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150939
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】絞り位置確認治具および絞り位置調整方法
(51)【国際特許分類】
B66B 9/04 20060101AFI20231005BHJP
G01B 5/24 20060101ALI20231005BHJP
B66B 5/00 20060101ALI20231005BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B66B9/04 A
G01B5/24
B66B5/00 D
B66B5/02 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060297
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二ノ宮 一宣
【テーマコード(参考)】
2F062
3F301
3F304
【Fターム(参考)】
2F062AA81
2F062FF17
2F062GG29
2F062LL03
3F301BA01
3F301CA12
3F304AA05
3F304BA06
(57)【要約】
【課題】調整絞り体の回転量を定量的に確認できる絞り位置確認治具および絞り位置調整方法を提供する。
【解決手段】位置調整方法は、回転位置を示す目盛りを有するゲージ体を、油圧エレベーターの流量制御バルブの設定流量を調整する調整絞り体の周りに取り付ける第1取付工程と、調整絞り体を回転させるレンチに指示体を取り付ける第2取付工程と、指示体がゲージ体に向かって延びるようにレンチを絞り体に取り付けるレンチ取付工程と、第1取付工程と第2取付工程とレンチ取付工程との後に行われ、目盛りの基準位置を指示体の端部が指し示すようゲージ体の位置を調整する調整工程と、調整工程の後に行われ、指示体が調整絞り体の回転軸を中心にして調整絞り体と同期して移動するようレンチを回転させる回転工程と、を備えた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧エレベーターの流量制御バルブの調整絞り体を調整する際に前記調整絞り体の回転位置を確認する絞り位置確認治具であって、
前記回転位置を示す目盛りを有し、前記目盛りが前記調整絞り体の回転軸を囲うよう前記流量制御バルブに取り付けられるゲージ体と、
前記調整絞り体に取り付けられたレンチから前記流量制御バルブに取り付けられた前記ゲージ体へ向かって延びる指示体と、
を備え、
前記指示体は、前記レンチによって前記調整絞り体が回転される際に前記調整絞り体の回転軸を中心にして前記調整絞り体と同期して回転するように、前記レンチに取り付けられる絞り位置確認治具。
【請求項2】
前記指示体は、長手方向が前記調整絞り体の回転軸と平行になるように前記レンチに取り付けられる請求項1に記載の絞り位置確認治具。
【請求項3】
前記指示体の材質は、軟質塩化ビニルである請求項1または請求項2に記載の絞り位置確認治具。
【請求項4】
前記ゲージ体は、前記調整絞り体を前記流量制御バルブに固定する固定ナットに取り付けられる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の絞り位置確認治具。
【請求項5】
前記ゲージ体は、前記固定ナットの中心から前記固定ナットに隣接する別の固定ナットまでの距離よりも小さい半径を有する円盤状に形成された請求項4に記載の絞り位置確認治具。
【請求項6】
前記指示体を前記レンチに対して着脱可能に固定する固定体、
を更に備えた請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の絞り位置確認治具。
【請求項7】
回転位置を示す目盛りを有するゲージ体を、油圧エレベーターの流量制御バルブの設定流量を調整する調整絞り体の周りに取り付ける第1取付工程と、
前記調整絞り体を回転させるレンチに指示体を取り付ける第2取付工程と、
前記指示体が前記ゲージ体に向かって延びるように前記レンチを前記調整絞り体に取り付けるレンチ取付工程と、
前記第1取付工程と前記第2取付工程と前記レンチ取付工程との後に行われ、前記目盛りの基準位置を前記指示体の端部が指し示すよう前記ゲージ体の位置を調整する調整工程と、
前記調整工程の後に行われ、前記指示体が前記調整絞り体の回転軸を中心にして前記調整絞り体と同期して移動するよう前記レンチを回転させる回転工程と、
を備えた絞り調整方法。
【請求項8】
前記回転工程において、前記基準位置に規定の回転量だけ加えた前記目盛りの目標位置を前記指示体の端部が指し示すまで前記レンチを回転させる請求項7に記載の絞り調整方法。
【請求項9】
前記回転工程の後に行われ、前記指示体の端部が指し示す前記目盛りの読取位置を読み取る読取工程、
を更に備えた請求項7または請求項8に記載の絞り調整方法。
【請求項10】
前記第1取付工程の後であって前記回転工程の前に行われ、前記調整絞り体が回転しないように前記レンチを前記回転工程で回転させる方向とは反対方向に回転させた後、前記指示体の端部が指し示す前記目盛りの遊び位置を読み取ることで、前記調整絞り体と前記レンチとの遊び代を測定する遊び代測定工程、
を更に備えた請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の絞り調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧エレベーターの絞り位置確認治具および絞り位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、油圧エレベーターの調整部材位置調節装置を開示する。当該調整部材位置調節装置は、油圧エレベーターの流量制御バルブの油圧制御弁の調節に用いられる。当該油圧制御弁の調整部材である調整絞り体は、回転することで流量制御バルブからの高さが変化する。調整値部材位置調節装置は、適切な調整位置にある調整絞り体の高さを示すことで、当該油圧制御弁を簡単に調節し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の調整部材位置調節装置において、調整絞り体は、調整部材位置調節装置の適切な高さを示す位置規制体に当たるまで、適切な回転量であるかがわからない。このため、調整絞り体の回転量を定量的に把握することができない。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、調整絞り体の回転量を定量的に確認できる絞り位置確認治具および絞り位置調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る絞り位置確認治具は、油圧エレベーターの流量制御バルブの調整絞り体を調整する際に調整絞り体の回転位置を確認する絞り位置確認治具であって、回転位置を示す目盛りを有し、目盛りが調整絞り体の回転軸を囲うよう流量制御バルブに取り付けられるゲージ体と、調整絞り体に取り付けられたレンチから流量制御バルブに取り付けられたゲージ体へ向かって延びる指示体と、を備え、指示体は、レンチによって調整絞り体が回転される際に調整絞り体の回転軸を中心にして調整絞り体と同期して回転するように、レンチに取り付けられる。
【0007】
本開示に係る絞り位置調整方法は、回転位置を示す目盛りを有するゲージ体を、油圧エレベーターの流量制御バルブの設定流量を調整する調整絞り体の周りに取り付ける第1取付工程と、調整絞り体を回転させるレンチに指示体を取り付ける第2取付工程と、指示体がゲージ体に向かって延びるようにレンチを絞り体に取り付けるレンチ取付工程と、第1取付工程と第2取付工程とレンチ取付工程との後に行われ、目盛りの基準位置を指示体の端部が指し示すようゲージ体の位置を調整する調整工程と、調整工程の後に行われ、指示体が調整絞り体の回転軸を中心にして調整絞り体と同期して移動するようレンチを回転させる回転工程と、を備えた。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、指示体は、目盛りが設けられたゲージ体へむかって延びる。指示体は、レンチによって調整絞り体が回転される際に調整絞り体の回転軸を中心にして調整絞り体と同期して回転する。このため、調整絞り体の回転量を定量的に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1における絞り位置指示治具が適用される油圧エレベーターの構成図である。
【
図2】実施の形態1における絞り位置指示治具が適用される流量調整バルブの側面図である。
【
図3】実施の形態1における絞り位置指示治具が適用される流量調整バルブの要部の側面図である。
【
図4】実施の形態1における絞り位置指示治具が流量調整バルブに取り付けられた状態の斜視図である。
【
図5】実施の形態1における絞り位置指示治具の概要を示す模式図である。
【
図6】実施の形態1における絞り位置指示治具が流量調整バルブに取り付けられた状態の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0011】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における絞り位置指示治具が適用される油圧エレベーターの構成図である。
【0012】
図1には、油圧エレベーターが適用される建築物1が示される。建築物1には、機械室2と昇降路3とが設けられる。
【0013】
機械室2には、ポンプ4とモータ5と流量制御バルブ6と油タンク7とサイレンサー8とが設けられる。ポンプ4は、プーリ4aを備える。モータ5は、ポンプ4に隣接する。モータ5とプーリ4aとには、無端状のベルトが巻き掛けられる。流量制御バルブ6は、ポンプ4の上端に設けられる。流量制御バルブ6は、ポンプ4の圧油の流量を制御し得る。油タンク7は、駆動用の圧油を蓄える。油タンク7は、ポンプ4の上方に設けられる。油タンク7は、流量制御バルブ6と配管で接続される。サイレンサー8は、流量制御バルブ6と配管で接続される。
【0014】
昇降路3には、かご用油圧ジャッキ9とかご10とが設けられる。かご用油圧ジャッキ9は、昇降路3の底面に設けられる。かご用油圧ジャッキ9は、サイレンサー8と配管で接続される。かご10は、かご用油圧ジャッキ9によって昇降路3の内部を昇降し得るよう設けられる。
【0015】
油圧エレべーターが上昇運転する場合、モータ5は、プーリ4aを回転させる。ポンプ4は、プーリ4aの回転に応じて、油タンク7に蓄えられた圧油に圧力を加える。圧油の圧力値が規定の値を超えた場合、圧油は、油タンク7、流量制御バルブ6、サイレンサー8および各配管を経てかご用油圧ジャッキ9に送り出される。この際、流量制御バルブ6は、かご用油圧ジャッキ9に送り出される圧油の流量を制御する。かご用油圧ジャッキ9は、圧油が送り出されることで上昇する。かご10は、かご用油圧ジャッキ9の上昇に伴って上昇する。
【0016】
油圧エレベーターが下降運転する場合、かご用油圧ジャッキ9は、かご10の重さを受け、サイレンサー8と各配管と流量制御バルブ6とを介して油タンク7へ圧油を戻しながら下降する。流量制御バルブ6は、かご用油圧ジャッキ9、サイレンサー8および各配管から油タンク7へ戻る圧油の流量を制御する。かご10は、かご用油圧ジャッキ9の下降に伴って下降する。
【0017】
流量制御バルブ6は、油圧エレベーターの上昇加速運転、下降加速運転、等の各運転における圧油の流量を制御する。当該流量は、各運転におけるかご10の加速度、等のかご10の乗り心地に影響を及ぼす。油圧エレベーターの点検において、作業員は、流量制御バルブ6が制御する圧油の設定流量を調整する。この際、作業員は、油圧エレベーターの各運転に関連する設定流量をそれぞれ調整する。
【0018】
次に、
図2と
図3とを用いて、流量制御バルブ6を説明する。
図2は実施の形態1における絞り位置指示治具が適用される流量調整バルブの側面図である。
図3は実施の形態1における絞り位置指示治具が適用される流量調整バルブの要部の側面図である。
【0019】
図2に示されるように、流量制御バルブ6は、コントロールブロック11を備える。コントロールブロック11の側面には、複数の調整ユニット12が設けられる。
【0020】
複数の調整ユニット12は、流量制御バルブ6の内部に設けられた複数の制御弁をそれぞれ調整する。油圧エレベーターの各運転に関与する制御弁はそれぞれ異なる。そのため、複数の調整ユニット12は、油圧エレベーターの各運転における圧油の流量に対応する。例えば、6つ調整ユニット12がコントロールブロック11の一側面11aに並んで設けられる。
【0021】
例えば、6つの調整ユニット12は、「UA」と「UT」と「US」と「DA」と「DT」と「DS」との運転にそれぞれ対応する。「UA」の調整ユニット12は、
図2には図示されないかご10が上昇する際の加速時間を調整するユニットである。「UA」に対応する調整ユニット12を調整することで、かご10が上昇する際の加速時間が変化する。同様に、「UT」および「US」のユニットは、かご10が上昇する際の減速時間および停止までの停止時間をそれぞれ調整するユニットである。「DA」、「DT」および「DS」のユニットは、かご10が下降する際の加速時間、減速時間および停止時間をそれぞれ調整するユニットである。
【0022】
図3に示されるように、複数の調整ユニット12の各々は、同様の構成を備える。調整ユニット12は、調整絞り体20と固定ナット21と絞りナット22とを備える。
【0023】
調整絞り体20は、回転軸を中心に回転可能に設けられる。例えば、調整絞り体20は、六角穴を有し、六角レンチによって回転される。調整絞り体20が回転することで、対応する運転における圧油の流量が変化する。
【0024】
固定ナット21は、調整絞り体20の周囲に設けられる。固定ナット21の中心位置は、調整絞り体20の回転軸と一致する。固定ナット21は、調整絞り体20をコントロールブロック11に固定する。
【0025】
絞りナット22は、固定ナット21に対してコントロールブロック11とは反対側に設けられる。絞りナット22は、固定ナット21よりも小径である。絞りナット22の中心位置は、調整絞り体20の回転軸と一致する。例えば、調整絞り体20を回転させる際に、絞りナット22が緩められる。絞りナット22が緩められた場合、調整絞り体20が回転軸を中心に回転可能となる。調整絞り体20の調整が終了した後、絞りナット22が締められる。絞りナット22が締められた場合、調整絞り体20は回転できなくなる。
【0026】
次に、
図4と
図5とを用いて、調整絞り体20を調整する際に用いる治具を説明する。
図4は実施の形態1における絞り位置指示治具が流量調整バルブに取り付けられた状態の斜視図である。
図5は実施の形態1における絞り位置指示治具の概要を示す模式図である。
【0027】
図4には、絞り位置確認治具30が示される。絞り位置確認治具30は、レンチ31とゲージ体32と指示体33と固定体34とを備える。
【0028】
例えば、レンチ31は、六角レンチである。例えば、レンチ31は、L字型に形成される。レンチ31の一端部は、調整絞り体20の六角穴に挿入されることで、調整絞り体20に取り付けられる。
【0029】
ゲージ体32は、円盤の中心に穴が空いた形状に形成される。即ち、ゲージ体32は、環状に形成される。ゲージ体32の材質は、ゴム状の弾性を有する樹脂である。具体的には、例えば、ゲージ体32の材質は、軟質塩化ビニルである。ゲージ体32は、目盛り32aを有する。
【0030】
目盛り32aは、円盤を一周するよう設けられる。例えば、目盛り32aは、円盤の中心から放射状に延びる黒い線である。目盛り32aは、円盤の一周を60分割する幅で設けられる。なお、目盛り32aは、円盤を一周するように1mm間隔で設けられてもよい。目盛り32aは、円盤の一周を360分割する幅で設けられてもよい。例えば、目盛り32aは、ゲージ体32に貼りつけられたシールであってもよい。目盛り32aには、第1基準目盛り32bと複数の第2基準目盛り32cとが含まれる。第1基準目盛り32bは、他の目盛り32aよりも太い青色の線で記される。複数の第2基準目盛り32cは、他の目盛り32aよりも太い赤色の線で記される。円盤における第1基準目盛り32bを時計の0時の位置とみなした場合、複数の第2基準目盛り32cは、それぞれ時計の3時、6時、9時に相当する位置に設けられる。
【0031】
ゲージ体32の内側の円は、固定ナット21の六角形に外接する半径を有する。ゲージ体32は、内側の円が固定ナット21に接するよう固定ナット21にはめられる。この際、ゲージ体32の弾性および粘着性によって、ゲージ体32と固定ナット21との間に摩擦力が発生する。ゲージ体32は、当該摩擦力によって固定ナット21に取り付けられる。そのため、ゲージ体32は、外力の作用がない限り固定ナット21に対して移動しない。
【0032】
指示体33は、棒状に形成される。例えば、指示体33の材質は、ゴム状の弾性を有する樹脂である。具体的には、例えば、指示体33の材質は、軟質塩化ビニルである。指示体33は、レンチ31に取り付けられる。例えば、指示体33は、六角レンチであるレンチ31において調整絞り体20に挿入された側とは逆の側に取り付けられる。レンチ31およびゲージ体32が流量制御バルブ6に取り付けられた状態において、指示体33は、レンチ31からゲージ体32の目盛り32aに向かって延びる。指示体33のゲージ体32の側の指示部33aは、ゲージ体32の目盛り32aの近傍に位置する。なお、指示部33aは、目盛り32aに接触していてもよい。例えば、指示体33の長手方向は、調整絞り体20の回転軸と平行である。
【0033】
例えば、固定体34は、クリップ状に形成される。固定体34は、指示体33をレンチ31に着脱可能に取り付ける。この際、固定体34は、指示体33がレンチ31に対して相対的に移動しないように指示体33を取り付ける。具体的には、固定体34は、レンチ31の一部と指示体33とを同時に挟む。
【0034】
調整絞り体20が調整される際、調整絞り体20は、レンチ31を介して回転される。レンチ31は、調整絞り体20と同期して回転する。指示体33は、調整絞り体20の回転軸を中心として回転移動する。この際、指示体33は、調整絞り体20の回転と同期して回転移動する。指示部33aが指し示す目盛り32aは、指示体33の移動量に応じて変化する。即ち、指示部33aが指し示す目盛り32aは、調整絞り体20の回転量に対応して変化する。
【0035】
図5に示されるように、指示体33は、取付部33bを有する。取付部33bは、指示部33aとは反対側の端部である。例えば、取付部33bは、レンチ31に巻き付けられる。取付部33bとレンチ31との間には、取付部33bの粘着性に起因する摩擦力が発生する。固定体34は、取付部33bがレンチ31に巻き付いた状態において指示体33を挟む。このため、指示体33は、レンチ31に対して位置を固定される。
【0036】
ゲージ体32は、目盛り32aが調整絞り体20を囲むように固定ナット21に取り付けられる。例えば、固定ナット21の寸法がM8の規格である場合、ゲージ体32の内側の半径であるゲージ体32の穴の半径は、15.6mmである。ゲージ体32の外径であるゲージ体32の円盤の半径は、20.6mmである。ゲージ体32の外径は、複数の固定ナット21の間の距離のうち最も短い距離よりも小さい値に設定される。例えば、
図5において、ゲージ体32が取り付けられている固定ナット21aの中心から、固定ナット21aに隣接する別の固定ナット21bまでの距離は、20.6mmよりも遠い。
【0037】
調整絞り体20を調整する作業は、絞り調整方法に基づいて行われる。絞り調整方法において、まず第1取付工程と第2取付工程とレンチ取付工程とが行われる。
【0038】
第1取付工程において、作業員は、ゲージ体32を固定ナット21に取り付ける。第2取付工程において、作業員は、指示体33をレンチ31に取り付ける。レンチ取付工程において、作業員は、レンチ31の一端部を調整絞り体20の六角穴に挿入することで、レンチ31を調整絞り体20に取り付ける。なお、第2取付工程は、レンチ取付工程の後に行われてもよい。その後、絞り調整方法の後の工程が行われる。
【0039】
次に、
図6を用いて、絞り調整方法の後の工程を説明する。
図6は実施の形態1における絞り位置指示治具が流量調整バルブに取り付けられた状態の上面図である。
【0040】
第2取付工程およびレンチ取付工程の後、調整工程が行われる。調整工程において、作業員は、指示体33がレンチ31から延びる長さおよび角度を調整する。具体的には、作業員は、指示体33の指示部33aがゲージ体32の目盛り32aを指し示すように指示体33などを調整する。また、作業員は、レンチ31と調整絞り体20の六角穴との遊び代を無くす。具体的には、作業員は、調整絞り体20が回転しないようにレンチ31を一方向に回転させる。一方向は、調整を行うためにこれから調整絞り体20を回転させる回転方向である。作業員は、これ以上レンチ31を回転させると調整絞り体20が回転される位置でレンチ31の回転を止め、遊び代が無い状態にする。この状態において、作業員は、ゲージ体32を固定ナット21に対して回転させる。作業員は、指示部33aが第1基準目盛り32bを指し示す基準位置までゲージ体32を回転させる。この状態が基準状態とみなされる。
【0041】
その後、遊び代測定工程が行われる。遊び代測定工程において、作業員は、遊び代を測定するために、調整絞り体20が回転しないようにレンチ31を一方向とは反対方向である他方向に回転させる。作業員は、他方向への遊び代が無くなるまでレンチ31を回転させる。作業員は、他方向への遊び代が無くなった状態において指示部33aが指し示す目盛り32aの遊び位置を読み取る。作業員は、この遊び位置の値を、レンチ31と調整絞り体20の六角穴との遊び代の値として記録する。遊び代の値は、調整絞り体20の劣化状態によって変化する。
【0042】
その後、回転工程が行われる。作業員は、レンチ31を用いて調整絞り体20を回転させる。この際、指示体33は、調整絞り体20の回転軸を中心として回転移動する。事前に計算された規定の回転量だけ調整絞り体20が回転した場合、作業員の経験に基づいた回転量だけ調整絞り体20が回転した場合、等の調整絞り体20の調整が終了した場合、作業員は、レンチ31の回転を止める。
【0043】
この際、作業員は、回転位置として、指示部33aが指し示す目盛り32aの値を参考にしてもよい。作業員は、指示部33aが指し示す目盛り32aの値を記録しながらレンチ31を回転させてもよい。例えば、作業員は、レンチ31を数回転だけ回転させた後、数度から数十度の回転量でレンチ31を回転させる微調整を行う。
【0044】
その後、読取工程が行われる。作業員は、調整絞り体20の調整が終了した時に指示部33aが示す目盛り32aの回転位置である読取位置を読み取る。作業員は、当該読取位置の値を記録する。例えば、作業員は、読取位置の値を規定の回転量として計算してもよい。また、作業員は、読取位置を読み取る際に、遊び代を考慮した目盛り32aを読み取る。具体的には、作業員は、遊び代が無い状態で目盛り32aを読み取ってもよい。作業員は、読み取った目盛り32aの値に遊び代を加えるまたは減じてもよい。
【0045】
その後、作業員は、絞り調整方法による調整作業を終了する。
【0046】
以上で説明した実施の形態1によれば、絞り位置確認治具30は、ゲージ体32と指示体33とを備える。絞り位置確認治具30を用いた絞り調整方法において、指示体33は、調整絞り体20の回転軸を中心に移動する。作業員は、指示体33が示すゲージ体32の目盛りを読み取る。このため、調整絞り体20の回転量を定量的に確認することができる。また、数度単位の回転量を定量化可能であるため、細かい調整量でも定量化することができる。調整絞り体20の調整作業は、かご10の乗り心地に影響を及ぼす。従来、調整絞り体20を調整する際の回転量は、数度から数十度の微調整が行われる場合、作業者の感覚および経験によって決められることが多かった。本実施の形態の絞り位置確認治具30を用いることで、調整絞り体20の回転量を、目盛り32aによって客観的に把握することができる。また、本実施の形態における絞り位置確認治具30は、先行技術文献に記載された装置に対して構造がシンプルかつ軽量であり、低コストで作成が可能である。
【0047】
また、指示体33は、長手方向が調整絞り体20の回転軸と平行になるようにレンチ31に取り付けられる。このため、指示体33は、調整ユニット12に干渉することなくゲージ体32まで延びるよう取り付けられ得る。
【0048】
また、指示体33の材質は、軟質塩化ビニルである。軟質塩化ビニルは、本実施の形態において、弾性およびレンチ31に対する粘着性に優れる。また、指示体33を容易に取り扱うことができる。このため、調整絞り体20の調整作業の作業性を向上することができる。
【0049】
また、ゲージ体32は、固定ナット21に取り付けられる。固定ナット21は、調整絞り体20の周囲に位置し、調整絞り体20に対して相対的に移動しない。このため、ゲージ体32を安定して取り付けることができる。
【0050】
また、ゲージ体32は、固定ナット21の中心から隣接する別の固定ナット21までの距離よりも小さい半径を有する。コントロールブロック11において、固定ナット21と隣接する別の固定ナット21との間隔は、比較的狭い。ゲージ体32は、このような狭い位置でも、調整絞り体20を目盛り32aが囲うように取付けられることができる。
【0051】
また、絞り位置確認治具30は、固定体34を更に備える。固定体34は、レンチ31に対して指示体33を着脱可能に固定する。このため、他の作業で使用していたレンチ31に対して指示体33を取り付けることができる。その結果、作業員の作業性を向上することができる。
【0052】
また、絞り調整方法の回転工程において、作業員は、目盛り32aの目標位置を指示部33aが指し示すまで調整絞り体20を回転させる。このため、調整絞り体20を正確に調整することができる。
【0053】
また、絞り調整方法において、読取工程が更に行われる。このため、作業後の回転量を客観的に記録することができる。また、例えば、作業員を指導する指導員が存在する場合、指導員は、作業員の作業内容を客観的かつ定量的に把握することができる。また、当該読取位置に基づいて、次回の作業時の目標位置を算出することができる。このため、作業者によって作業時の回転量がばらつくことを抑制することができる。
【0054】
また、絞り調整方法において、遊び代測定工程が更に行われる。調整絞り体20の六角穴とレンチ31との遊び代は、各調整絞り体20によって異なる。調整絞り体20の微調整は、数度単位で行われる。遊び代を加味した調整が行われることで、調整絞り体20を正確に調整することができる。
【0055】
なお、本実施形態では、絞り位置確認治具30を用いた絞り調整方法が、実際の現場作業に適用される形態が示された。絞り位置確認治具30を用いた絞り調整方法は、教育センターにおける研修に適用され得る。具体的には、絞り位置確認治具30を用いた絞り調整方法は、調整作業の技能を教える研修、調整作業の技能試験、等の他の作業形態に適用されてもよい。例えば、当該研修において、講師、試験管、等の調整を行った研修生ではない第三者が、調整絞り20の回転量を客観的かつ定量的に把握することができる。また、当該第三者は、当該研修生に対して調整のための回転量を定量的に教えることができる。また、従来では、研修または試験の終了後に、回転させた調整絞り体20の位置を戻すことを忘れる事象が発生し得る。指示部33aが指し示す目盛り32aを確認することで、当該位置の戻し忘れの発生を抑制することができる。
【0056】
なお、レンチ31は、L字型でなくてもよい。例えば、レンチ31は、ドライバの様に直線の形状を有していてもよい。この場合、指示体33は、レンチ31の一部からゲージ体32に向かって延びるよう取り付けられる。この場合であっても、レンチ31によって調整絞り体20を回転される際、指示体33は、調整絞り体20の回転軸を中心に回転移動する。
【0057】
なお、ゲージ体32の材質は、軟質塩化ビニルでなくてもよい。例えば、ゲージ体32の材質は、アルミニウム金属であってもよい。この場合、ゲージ体32は、接着用のシール等によって固定ナット21に取り付けられてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 建築物、 2 機械室、 3 昇降路、 4 ポンプ、 4a プーリ、 5 モータ、 6 流量制御バルブ、 7 油タンク、 8 サイレンサー、 9 かご用油圧ジャッキ、 10 かご、 11 コントロールブロック、 11a 一側面、 12 調整ユニット、 20 調整絞り体、 21,21a,21b 固定ナット、 22 ナット、 30 位置確認治具、 31 レンチ、 32 ゲージ体、 32a 目盛り、 32b 第1基準目盛り、 32c 第2基準目盛り、 33 指示体、 33a 指示部、 33b 取付部、 34 固定体