(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150945
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B60K 13/02 20060101AFI20231005BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B60K13/02 A
B60K11/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060303
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】正円 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 友香理
【テーマコード(参考)】
3D038
【Fターム(参考)】
3D038AB05
3D038AC01
3D038AC12
3D038AC14
3D038AC15
3D038AC21
3D038BA03
3D038BA12
3D038BA19
3D038BB06
3D038BC01
3D038BC14
(57)【要約】
【課題】雪によりエアクリーナのフィルタが詰まるのを抑制することが可能な作業車を提供する。
【解決手段】エンジンの冷却水を冷却するラジエータ23と、前記エンジンに供給される空気を浄化するエアクリーナ40と、前記ラジエータ23の後側に配置されると共に、前記ラジエータ23を通過する空気を案内する開口部120、前記エアクリーナ40へと空気を案内する吸気路、及び、後側面における前記開口部120の中心より低い位置に形成され、前記吸気路に空気を導入する導入口133を具備するシュラウド100と、前記エアクリーナ40と前記吸気路とを接続すると共に、前記吸気路から前記エアクリーナ40へと空気を案内するインレットホース50と、を具備した。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、
前記エンジンに供給される空気を浄化するエアクリーナと、
前記ラジエータの後側に配置されると共に、前記ラジエータを通過する空気を案内する開口部、前記エアクリーナへと空気を案内する吸気路、及び、後側面における前記開口部の中心より低い位置に形成され、前記吸気路に空気を導入する導入口を具備するシュラウドと、
前記エアクリーナと前記吸気路とを接続すると共に、前記吸気路から前記エアクリーナへと空気を案内する接続部材と、
を具備する作業車。
【請求項2】
前記吸気路は、
前記シュラウドを前後方向一側に向かって凹ませることで形成された凹状部と、
前記凹状部を前後方向他側から閉塞するように設けられるカバー部と、
によって規定される、
請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記凹状部は、
前記シュラウドを後側に向かって凹ませることで形成されると共に、前記エアクリーナに向かって空気を排出する排出口を具備する、
請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記吸気路は、
第一吸気路と、
前記第一吸気路よりも前後幅が広く形成された第二吸気路と、
を含む、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記第二吸気路は、
前記開口部よりも後方まで膨出するように形成されている、
請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記導入口は、
下方に向かって開口すると共に、水平方向に対して傾斜した端面を有する、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアクリーナを具備する作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアクリーナを具備する作業車の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のトラクタ(作業車)は、ラジエータと、ラジエータの後方に配置されるエアクリーナと、エアクリーナから前方へ延出される吸気管(インレットホース)と、を具備する。吸気管は、ラジエータの上方を通過してラジエータの前方で開口するように設けられる。
【0004】
特許文献1に記載のトラクタは、吸気菅を介して、ラジエータよりも前方の空間からエアクリーナへと空気を導入するようにしている。しかし、このような構成においては、雪の中(例えば、寒冷地等)でトラクタを使用する際に、ボンネット内に入り込んだ雪が吸気菅に吸い込まれ、エアクリーナのフィルタが詰まってしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の一態様は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、雪によりエアクリーナのフィルタが詰まるのを抑制することが可能な作業車を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
本開示の一態様に係る作業車は、エンジンの冷却水を冷却するラジエータと、前記エンジンに供給される空気を浄化するエアクリーナと、前記ラジエータの後側に配置されると共に、前記ラジエータを通過する空気を案内する開口部、前記エアクリーナへと空気を案内する吸気路、及び、後側面における前記開口部の中心より低い位置に形成され、前記吸気路に空気を導入する導入口を具備するシュラウドと、前記エアクリーナと前記吸気路とを接続すると共に、前記吸気路から前記エアクリーナへと空気を案内する接続部材と、を具備するものである。
本開示の一態様によれば、エアクリーナのフィルタに雪が詰まるのを抑制することができる。
【0009】
また、本開示の一態様に係る前記吸気路は、前記シュラウドを前後方向一側に向かって凹ませることで形成された凹状部と、前記凹状部を前後方向他側から閉塞するように設けられるカバー部と、によって規定されるものである。
本開示の一態様によれば、吸気路を簡素な構成とすることができる。
【0010】
また、本開示の一態様に係る前記凹状部は、前記シュラウドを後側に向かって凹ませることで形成されると共に、前記エアクリーナに向かって空気を排出する排出口を具備するものである。
本開示の一態様によれば、エアクリーナと接続される排出口を凹状部に形成することで、凹状部(シュラウド)とエアクリーナとの位置決めを容易に行うことができる。
【0011】
また、本開示の一態様に係る前記吸気路は、第一吸気路と、前記第一吸気路よりも前後幅が広く形成された第二吸気路と、を含むものである。
本開示の一態様によれば、吸気路の断面積が確保し易くなる。
【0012】
また、本開示の一態様に係る前記第二吸気路は、前記開口部よりも後方まで膨出するように形成されているものである。
本開示の一態様によれば、吸気路の断面積が確保し易くなる。
【0013】
また、本開示の一態様に係る前記導入口は、下方に向かって開口すると共に、水平方向に対して傾斜した端面を有するものである。
本開示の一態様によれば、導入口の開口面積が確保し易くなる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一態様によれば、エアクリーナのフィルタに雪が詰まるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の一態様に係るトラクタの全体的な構成を示した左側面図。
【
図4】シュラウド、ファン及びエアクリーナを示した後下方斜視図。
【
図10】シュラウド及びエアクリーナを示した右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0017】
以下では、
図1を参照して、本開示の一態様に係るトラクタ1について説明する。
【0018】
トラクタ1は、主として機体フレーム2、エンジン3、ボンネット4、トランスミッションケース5、前輪6、後輪7、フェンダ8、昇降装置9、キャビン10、座席11、ステアリングホイール12等を具備する。
【0019】
機体フレーム2は、複数の板材を適宜組み合わせて形成される枠状の部材である。機体フレーム2は、平面視略矩形状に形成される。機体フレーム2は、その長手方向を前後方向に向けてトラクタ1の前部に設けられる。エンジン3は、機体フレーム2の後部に配置され、ボンネット4に覆われる。ボンネット4は、エンジン3の上方に配置される天板4aやエンジン3の左右外側方に配置される側板4bやエンジン3の前方に配置される前板4c等を具備し、開閉可能に設けられる。ボンネット4は、側板4b及び前板4cから外気を導入可能に構成される。エンジン3の後部には、トランスミッションケース5が固定される。
【0020】
機体フレーム2の前部は、フロントアクスル機構(不図示)を介して左右一対の前輪6に支持される。トランスミッションケース5の後部は、リアアクスル機構(不図示)を介して左右一対の後輪7に支持される。左右一対の後輪7は、概ね上方からフェンダ8によって覆われる。
【0021】
トランスミッションケース5の後部には、昇降装置9が設けられる。昇降装置9には、各種の作業装置(例えば、耕運機等)を装着することができる。昇降装置9は油圧シリンダ等のアクチュエータによって、装着された作業装置を昇降させることができる。当該昇降装置9には、図示せぬPTO軸を介してエンジン3の動力を伝達することができる。
【0022】
エンジン3の動力は、トランスミッションケース5に収容された変速装置(不図示)で変速された後、前記フロントアクスル機構を経て前輪6に伝達可能とされると共に、前記リアアクスル機構を経て後輪7に伝達可能とされる。エンジン3の動力によって前輪6及び後輪7が回転駆動され、トラクタ1は走行することができる。またエンジン3の動力によって、昇降装置9に装着された作業装置を駆動させることができる。
【0023】
エンジン3の後方にはキャビン10が設けられる。キャビン10の内部には、作業者が搭乗する居住空間が形成される。キャビン10の略中央には、作業者が着座するための座席11が配置される。キャビン10の前部には、前輪6の切れ角を調節するためのステアリングホイール12が配置される。また、キャビン10には、前記居住空間に空調空気を送るためのエアコンユニット(不図示)が設けられる。
【0024】
以下では、ボンネット4内の各部材の配置について説明する。
【0025】
図2及び
図3に示すように、ボンネット4内には、エンジン3、バッテリ21、整流板22、ラジエータ23、シュラウド100、冷却水ホース24、エアクリーナ40、インレットホース50、アウトレットホース61、DPF62、オルタネータ64及び燃料タンク66等が配置される。
【0026】
エンジン3は、ボンネット4の後部に配置され、機体フレーム2に支持される。エンジン3は、シャフト3a、ファン3b、吸気口3c及び排気口3dを具備する。
【0027】
シャフト3aは、後述するファン3bに動力を伝達するためのものである。シャフト3aは、エンジン3から前方へ突出する。
【0028】
ファン3bは、後方へと空気を送るものである。ファン3bは、後述するラジエータ23の後方において当該ラジエータ23と対向するように配置される。ファン3bは、シャフト3a等を介してエンジン3からの動力が伝達されることで駆動する。
【0029】
吸気口3cは、外気を吸引するためのものである。また、排気口3dは、排気ガスを排出するためのものである。吸気口3c及び排気口3dは、エンジン3の左側に形成される。
【0030】
バッテリ21は、トラクタ1の給電対象(例えば、エアコンや作業灯等)へ電力を供給するためのものである。バッテリ21は、ボンネット4の前部に配置される。
【0031】
整流板22は、ボンネット4内の空気の流れを整えるためのものである。整流板22は、側面視略矩形状に形成される。整流板22は、左右一対設けられる。整流板22は、バッテリ21の後方、かつ左右外側方に配置される。
【0032】
ラジエータ23は、エンジン3の冷却水とボンネット4内を流通する空気との間で熱交換を行い、エンジン3の冷却水を冷却するためのものである。ラジエータ23は、整流板22の後方、かつ左右内側方に配置される。ボンネット4の内部空間は、ラジエータ23を境界として前後に仕切られる。以下では、ボンネット4の内部空間のうち、ラジエータ23よりも前側の空間を「前側空間S1」、ラジエータ23よりも後側の空間を「後側空間S2」と称する。
【0033】
なお、本実施形態には示されていないが、ラジエータ23の周囲(上部及び側部)には、ボンネット4の内部空間を前後に仕切る仕切り部材を設けてもよい。当該仕切り部材としては、例えばラジエータ23とボンネット4との間の隙間を埋めるような可撓性を有する部材(スポンジ、ゴム等)を用いることが可能である。
【0034】
シュラウド100は、ファン3bに空気を導くためのものである。シュラウド100は、ラジエータ23の後部に配置される。
図4及び
図5に示すように、シュラウド100は、自身を前後に貫通する開口部120を具備する。開口部120の内側には、エンジン3のファン3bが配置される。
【0035】
また、シュラウド100には、後述するエアクリーナ40へと空気を案内する吸気路C(
図9参照)が形成される。なお、シュラウド100の詳細な構成については後述する。
【0036】
ファン3bの駆動によって、ラジエータ23の前方の空気(ボンネット4内を流通する空気)は吸引されてラジエータ23を後方へと通過する。ラジエータ23は、当該空気と冷却水との間で熱交換を行って冷却水を冷却する。またファン3bは、熱交換を行った空気を、シュラウド100の開口部120を介して当該シュラウド100の後方へ送る。
【0037】
図2及び
図3に示す冷却水ホース24は、エンジン3とラジエータ23との間で冷却水を流通させるためのものである。冷却水ホース24は、上側ホース24a及び下側ホース24bを具備する。
【0038】
上側ホース24aは、エンジン3からコア23aへと冷却水を導くものである。上側ホース24aは、コア23aの上端部及びエンジン3の前部と接続される。
【0039】
下側ホース24bは、コア23aからエンジン3へと冷却水を導くものである。下側ホース24bは、コア23aの下端部及びエンジン3の前部(上側ホース24aとの接続部分よりも下方)と接続される。
【0040】
図2から
図4に示すエアクリーナ40は、空気を浄化してエンジン3へと送るためのものである。エアクリーナ40は、軸線方向を略左右方向に向けた略円柱状に形成される。エアクリーナ40内には、空気を除塵するためのフィルタ(不図示)等が設けられる。エアクリーナ40は、ラジエータ23よりも後方、かつエンジン3の上方に配置される。エアクリーナ40は、吸引口41及び排出口42を具備する。
【0041】
吸引口41は、後述するインレットホース50と接続される部分である。吸引口41は、エアクリーナ40の外周面の左端部から突出するように形成される。吸引口41は、前下方に向かって開口する筒状に形成される。
【0042】
排出口42は、後述するアウトレットホース61と接続される部分である。排出口42は、エアクリーナ40の左端面から突出するように形成される。排出口42は、後下方に向かって開口する筒状に形成される。
【0043】
インレットホース50は、シュラウド100に形成された吸気路Cを流通した空気をエアクリーナ40へと導くための筒状の部材である。インレットホース50は、可撓性を有する材料(例えば、ゴム等)により形成される。インレットホース50は、エアクリーナ40の吸引口41と、後述するシュラウド100の排出口134と、を接続するように配置される。
【0044】
図2に示すアウトレットホース61は、エアクリーナ40で浄化した空気をエンジン3へと導くためのものである。アウトレットホース61は、エアクリーナ40の排出口42及びエンジン3の吸気口3cと接続される。
【0045】
DPF(Diesel Particulate Filter)62は、エンジン3から排出される排気ガス中のPMを捕集するためのものである。DPF62は、軸線方向を左右方向に向けた略円柱状に形成される。DPF62内には、PMを捕集するフィルタ等が設けられる。DPF62は、エアクリーナ40の後方、かつ、エンジン3の上方に配置される。DPF62は、導入管62aを介してエンジン3の排気口3dと接続され、当該エンジン3から排気ガスが導入される。DPF62でPMが捕集された排気ガスは、図示せぬマフラを介して外部へと排出される。
【0046】
オルタネータ64は、エンジン3からの動力によって発電するもの(発電機)である。オルタネータ64は、ラジエータ23の後方、かつ、エンジン3の左方に配置される。
【0047】
燃料タンク66は、燃料を貯溜するための中空状の部材である。燃料タンク66は、エンジン3及びDPF62の後方に配置される。
【0048】
以下では、シュラウド100の構成について説明する。シュラウド100は、主として本体部110及びカバー部150を具備する。
【0049】
図4から
図6に示す本体部110は、シュラウド100の主たる構造体を成す部分である。本体部110は、厚さ方向を前後に向けた略矩形板状に形成される。本体部110には、主として開口部120、凹状部130及び収容部140が形成される。
【0050】
開口部120は、本体部110を前後に貫通する筒状の部分である。開口部120は、正面視略円状に形成される。開口部120の内径は、ファン3bの外径より一回り大きくなるように形成される。
【0051】
図6及び
図7に示す凹状部130は、後述するカバー部150と共に、エアクリーナ40へと空気を案内する吸気路C(
図9参照)を規定する部分である。凹状部130は、本体部110の前側面を後方に向かって凹ませるようにして形成される。言い換えると、
図5及び
図8に示すように、凹状部130は、本体部110の後側面を後方に向かって膨出させるようにして形成される。
図8に示すように、凹状部130は、本体部110の上部から下部に亘って開口部120の周囲に沿うように形成される。具体的には、凹状部130は、開口部120の左側において、開口部120の中心(背面視における開口部120の形状(円)の重心位置)より高い位置から低い位置に亘って上下に延びるように形成される。凹状部130には、第一凹状部131及び第二凹状部132が含まれる。
【0052】
図8及び
図9に示す第一凹状部131は、凹状部130のうち、概ね上半分を形成する部分である。具体的には、第一凹状部131は、凹状部130の上端部から、上下中途部(開口部120の中心よりもやや高い位置)に亘って形成される。
【0053】
第二凹状部132は、凹状部130のうち、概ね下半分を形成する部分である。具体的には、第二凹状部132は、凹状部130の上下中途部(開口部120の中心よりもやや高い位置)から、下端部に亘って形成される。第二凹状部132の前後幅(深さ)は、第一凹状部131よりも大きくなるように形成される。
【0054】
図10に示すように、凹状部130は、開口部120よりも後方まで膨出するように形成される。特に第二凹状部132は、第一凹状部131よりもさらに後方に膨出するように形成される。凹状部130には、導入口133及び排出口134が形成される。
【0055】
図8及び
図9に示す導入口133は、凹状部130の下部において、当該凹状部130の内側と外側(後側空間S2)とを連通する部分である。導入口133は、凹状部130(第二凹状部132)の下端部を貫通するように形成される。具体的には、導入口133は、第二凹状部132のうち、水平方向に対して傾斜した下端面(後下方を向く面)に形成される。これによって導入口133は、下方に向かって開口すると共に、水平方向に対して傾斜した端面133a(
図9参照)を有している。
【0056】
排出口134は、凹状部130の上部において、当該凹状部130の内側と外側とを連通する部分である。排出口134は、凹状部130(第一凹状部131)の上端部から後方に向かって突出するように形成される。排出口134は、後方に向かって開口する円筒状に形成される。
【0057】
図7及び
図9に示す収容部140は、本体部110の前側面において、凹状部130の周囲を若干凹ませるようにして形成される部分である。収容部140の外形は、後述するカバー部150の外形と対応する形状(略同一形状)となるように形成される。収容部140の前後幅(深さ)は、後述するカバー部150の厚さと略同一となるように形成される。このように形成することによって、カバー部150を収容部140に収まるように配置することができる。またカバー部150を収容部140に収容した際、本体部110及びカバー部150の前側面が面一となる。
【0058】
図5から
図7に示すカバー部150は、本体部110に形成された凹状部130を閉塞する部分である。カバー部150は、厚さ方向を前後に向けた略板状に形成される。カバー部150は、凹状部130に対応した形状(正面視において、凹状部130より一回り大きい形状)に形成される。カバー部150には、突起部151が形成される。
【0059】
突起部151は、カバー部150から後方へと突出する略円柱状の部分である。突起部151は、カバー部150の外周部分(本体部110の収容部140と対向する部分)に形成される。本実施形態では、突起部151はカバー部150の上端部に2つ、カバー部150の下端部に1つ、形成される。
【0060】
カバー部150は、凹状部130を前方から閉塞するように配置される。この際、カバー部150は収容部140に収まるように配置される。また突起部151は、本体部110を貫通するように配置され、適宜の固定部材により固定される。これによって、カバー部150が本体部110に固定される。
【0061】
図9に示すように、凹状部130とカバー部150によって、エアクリーナ40へと空気を案内する吸気路Cが規定される。なお以下では、吸気路Cのうち、第一凹状部131によって規定される部分を「第一吸気路C1」、第二凹状部132によって規定される部分を「第二吸気路C2」とそれぞれ称する。吸気路Cは、導入口133を介して後側空間S2と連通する。
【0062】
次に、以上の如く構成されたトラクタ1において、ボンネット4外の空気(外気)がエンジン3へ供給される様子について説明する。
【0063】
図2に示すエンジン3が駆動すると、当該エンジン3の駆動に伴ってファン3bが駆動する。これに伴って、ボンネット4外の空気は、前板4c等から前側空間S1へと流入する。当該空気は、整流板22によって流れが整えられて、ファン3bにより後側空間S2へと送られる。こうして後側空間S2へ送られた空気は、
図9に示すように、シュラウド100の下部に形成された導入口133から吸気路C内へと吸い込まれ、排出口134を介してエアクリーナ40へ導かれる。当該空気は、エアクリーナ40によってダストが分離され、アウトレットホース61を介してエンジン3へ送られる。これによって、エンジン3には、エアクリーナ40で除塵した空気が供給される。
【0064】
ここで、雪の中(例えば、寒冷地等)でトラクタ1を運転する場合、ボンネット4内には空気だけではなく、雪が流入する場合がある。本実施形態では、導入口133を後側空間S2に配置することで、ボンネット4内へ流入した雪がエアクリーナ40に到達するのを抑制し、エアクリーナ40のフィルタが詰まるのを抑制している。
【0065】
具体的には、ボンネット4内へ流入する雪は、空気と同様に、まず前側空間S1へと流入するため、後側空間S2にはボンネット4外からの雪が入り込み難くなっている。また、前側空間S1に入った雪は、ファン3bの駆動により後側空間S2へと送られる際に、ラジエータ23を通過することとなる。当該雪は、ラジエータ23を流通する冷却水との間で熱交換が行われると溶融する。このように、後側空間S2には直接雪が入り込み難く、かつ、後側空間S2に流入する前に雪が溶融し易いため、後側空間S2における雪の量は、前側空間S1よりも少なくなる。
【0066】
また、後側空間S2にはエンジン3が配置されているため、後側空間S2は前側空間S1よりも高温となる。よって、後側空間S2に雪が侵入したとしても、当該雪の溶融を促進させることができる。
【0067】
シュラウド100の吸気路Cは、このような後側空間S2から空気を吸い込むことにより、前側空間S1から空気を吸い込む場合よりも雪を吸い込み難くすることができる。これにより、雪がエアクリーナ40に到達するのを抑制することができるため、エアクリーナ40のフィルタに雪が詰まるのを抑制することができる。
【0068】
特に、吸気路Cの導入口133は、比較的低い位置(開口部120の中心よりも低い位置)に、下方に向かって開口するように形成されている。これによって、後側空間S2内で風に舞っている雪が導入口133へと侵入し難くすることができる。
【0069】
また本実施形態では、
図8に示すように、円状に形成された開口部120の側部を上下に亘るように吸気路C(凹状部130)が形成されているため、開口部120の中心と同じ高さ位置付近において、吸気路Cの左右幅が狭く絞られている。そこで本実施形態では、吸気路Cの断面積(流路面積)を確保するために、開口部120の中心と同じ高さ位置における吸気路C(第二吸気路C2)の前後幅が大きくなるように形成している(
図9参照)。これによって本実施形態では、吸気路Cにおける流路面積が空気の流通方向に亘って略一定となるように形成している。このように吸気路Cの流路面積を確保する(局所的に流路面積が小さくならないようにする)ことで、エアクリーナ40へと空気を取り込みやすくすることができる。
【0070】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車)は、
エンジン3の冷却水を冷却するラジエータ23と、
前記エンジン3に供給される空気を浄化するエアクリーナ40と、
前記ラジエータ23の後側に配置されると共に、前記ラジエータ23を通過する空気を案内する開口部120、前記エアクリーナ40へと空気を案内する吸気路C、及び、後側面における前記開口部120の中心より低い位置に形成され、前記吸気路Cに空気を導入する導入口133を具備するシュラウド100と、
前記エアクリーナ40と前記吸気路Cとを接続すると共に、前記吸気路Cから前記エアクリーナ40へと空気を案内するインレットホース50(接続部材)と、
を具備するものである。
【0071】
このように構成することにより、エアクリーナ40のフィルタに雪が詰まるのを抑制することができる。また、エアクリーナ40へと吸気を案内する吸気路Cをシュラウド100に形成することで、部品点数の削減を図ることができる。これによって、組み立てのための作業工程やコストの削減を図ることができる。また、インレットホース50を介してエアクリーナ40と吸気路C(シュラウド100)とを接続することで、組み立てやメンテナンス作業を行い易くすることができる。特に、可撓性を有する材料(ゴム等)によりインレットホース50を形成することで、シュラウド100とエアクリーナ40の相対的な位置関係が調節し易くなり、組み立て等を行い易くすることができる。
【0072】
また、前記吸気路Cは、
前記シュラウド100を前後方向一側(後側)に向かって凹ませることで形成された凹状部130と、
前記凹状部130を前後方向他側(前側)から閉塞するように設けられるカバー部150と、
によって規定されるものである。
【0073】
このように構成することにより、吸気路Cを簡素な構成とすることができる。
【0074】
また、前記凹状部130は、
前記シュラウド100を後側に向かって凹ませることで形成されると共に、前記エアクリーナ40に向かって空気を排出する排出口134を具備するものである。
【0075】
このように構成することにより、エアクリーナ40と接続される排出口134を凹状部130に形成することで、凹状部130(シュラウド100)とエアクリーナ40との位置決めを容易に行うことができる。
【0076】
また、前記吸気路Cは、
第一吸気路C1と、
前記第一吸気路C1よりも前後幅が広く形成された第二吸気路C2と、
を含むものである。
【0077】
このように構成することにより、吸気路Cの断面積が確保し易くなる。これによって、エアクリーナ40へ効率的に空気を供給することができる。すなわち、吸気路Cの左右幅を確保し難い部分(本実施形態では、開口部120の中心と同じ高さ位置(
図8参照))においては、吸気路C(第二吸気路C2)の前後幅を広く形成することで、吸気路Cの流路面積が局所的に小さくなるのを防止し、空気の流通方向において吸気路Cの流路面積を略一定とすることができる。
【0078】
また、前記第二吸気路C2は、
前記開口部120よりも後方まで膨出するように形成されているものである。
【0079】
このように構成することにより、吸気路C(第二吸気路C2)の断面積が確保し易くなる。
【0080】
また、前記導入口133は、
下方に向かって開口すると共に、水平方向に対して傾斜した端面133aを有するものである。
【0081】
このように構成することにより、導入口133の開口面積が確保し易くなる。これによって、エアクリーナ40へ効率的に空気を供給することができる。また、導入口133を下方に向かって開口させることで、雪が吸気路Cに侵入し難くなる。
【0082】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るインレットホース50は、本発明に係る接続部材の実施の一形態である。
【0083】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、本実施形態に係る作業車はトラクタ1であるものとしたが、本発明に係る作業車の種類はこれに限定されるものでない。本発明に係る作業車は、その他の農業車両、建設車両、産業車両等であってもよい。
【0085】
また、本実施形態では、開口部120の中心を基準として、導入口133は当該開口部120の中心より低い位置に形成されるものとした。本実施形態における開口部120の中心とは、開口部120の形状(本実施形態では、円形)の重心位置を意味しているが、本発明における中心とは、形状の重心だけでなく、所定方向寸法(幅)における中心位置を意味するものであってもよい。例えば、開口部120の上下幅における中間位置を開口部120の中心とし、当該中心を基準として導入口133の位置を設定してもよい。
【0086】
また、本実施形態では、シュラウド100(本体部110)を後側に向かって凹ませた凹状部130と、当該凹状部130を前側から覆うカバー部150と、によって吸気路Cを規定する例を示したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、本体部110を前側に向かって凹ませた凹状部130と、当該凹状部130を後側から覆うカバー部150と、によって吸気路Cを規定する構成であってもよい。この場合、カバー部150に導入口133や排出口134を形成することも可能である。
【0087】
また、本実施形態では、吸気路C(凹状部130)がシュラウド100の上部から下部に亘るように形成された例を示したが、吸気路Cの形状、配置等は特に限定するものではない。すなわち、任意の箇所から空気を導入し、エアクリーナ40へと案内することが可能である。
【0088】
また、本実施形態では、吸気路Cが第一吸気路C1と第二吸気路C2を含む例を示したが、本発明はこれに限るものではなく、吸気路C(凹状部130)の形状は任意に変更することが可能である。例えば、吸気路Cの配置等に応じて凹状部130の前後幅や左右幅を任意に変更することができる。この際、エアクリーナ40へ供給される空気の量を確保するために、局所的に吸気路Cの流路面積が小さくならないように(例えば、吸気路Cにおける流路面積が略一定となるように)当該吸気路Cの形状を設定することが望ましい。
【0089】
また、本実施形態では、インレットホース50は可撓性を有するものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、可撓性を有さない材料によってインレットホース50を形成することも可能である。
【0090】
また、エアクリーナ40は、ラジエータ23よりも後側に配置されるものとしたがエアクリーナ40とラジエータ23との位置関係はこれに限定されるものではなく、任意の位置関係とすることができる。エアクリーナ40は、例えば、ラジエータ23よりも前側に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 トラクタ
3 エンジン
40 エアクリーナ
50 インレットホース
100 シュラウド
120 開口部
130 凹状部
133 導入口
134 排出口
140 エアクリーナ