(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150949
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】非水系電解液及び該非水系電解液を含む非水系電解液電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20231005BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231005BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0568
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060311
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】320011605
【氏名又は名称】MUアイオニックソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深水 浩二
(72)【発明者】
【氏名】川上 大輔
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL07
5H029AM03
5H029AM07
5H029DJ08
5H029HJ01
5H029HJ02
(57)【要約】
【課題】放電電力容量に優れ、信頼性の高められた非水系電解液電池を与えることができる非水系電解液を提供すること。
【解決手段】電解質、非水系溶媒、明細書に記載の一般式(1)で表される化合物、及び明細書に記載の一般式(α)で表される化合物を含有する非水系電解液を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質、非水系溶媒、下記一般式(1)で表される化合物、及び下記一般式(α)で表される化合物を含有する非水系電解液。
【化17】
(一般式(1)中、R
aは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示し;R
x、R
y及びR
zは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は-SiR
1R
2R
3で表されるシリル基を示し;R
1~R
3は、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。)
【化18】
(一般式(α)中、R
89は、水素原子又は-SiR
8R
9R
10で表されるシリル基を示し;R
8~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示し;R
11は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は-SiR
dR
eR
fで表されるシリル基を示し;R
d、R
e及びR
fは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示し;Yは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、-NR
g-SiR
hR
iR
jで表される基、又は-NR
g-Hで表される基を示し;R
gは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示し;R
h、R
i及びR
jは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示す。R
11とR
gは互いに結合し環を形成していてもよい。)
【請求項2】
Rx、Ry及びRzのうち1つ以上が、-SiR1R2R3(R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。)で表されるシリル基である、請求項1に記載の非水系電解液。
【請求項3】
一般式(1)におけるRx、Ry及びRzのうち1つ以上が、-SiR1bR2bR3b(R1b~R3bは、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアリール基を示す。)で表されるシリル基である、請求項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項4】
一般式(1)におけるRx、Ry及びRzのうち1つ以上が、-SiR1cR2cR3c(R1c~R3cは、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基を示す。)で表されるシリル基である、請求項1又は2に記載の非水系電解液。
【請求項5】
式(1)におけるRaが水素原子である、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項6】
式(1)におけるRaが、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項7】
式(1)におけるRaが、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアリール基である、請求項6に記載の非水系電解液。
【請求項8】
式(α)におけるYが、-NRg-SiRhRiRjで表される基、又は-NRg-Hで表される基である、請求項1~7のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項9】
式(α)におけるYが、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基である、請求項1~7のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項10】
一般式(1)で表される化合物の含有量が、非水系電解液の全量に対して0.001~10質量%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項11】
一般式(α)で表される化合物の含有量が、非水系電解液の全量に対して0.001~10質量%である、請求項1~10のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項12】
前記電解質としてヘキサフルオロリン酸リチウムを含み、非水系電解液中における、一般式(α)で表される化合物及び一般式(1)で表される化合物の合計の含有量に対するヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量の比率が、質量基準で、50~30000である、請求項1~11のいずれか一項に記載の非水系電解液。
【請求項13】
正極、負極、及び非水系電解液を備える非水系電解液電池であって、
前記非水系電解液が、請求項1~12のいずれか1項に記載の非水系電解液である、非水系電解液電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解液及び該非水系電解液を含む非水系電解液電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン等のいわゆる民生用の電源から自動車用等の駆動用車載電源まで広範な用途に、リチウム二次電池等の非水系電解液電池が実用化されつつある。しかしながら、近年の非水系電解液電池に対する高性能化の要求はますます高くなっており、特に、高容量、低温使用特性、高温保存特性、サイクル特性等の種々の電池特性の改善が要望されている。
【0003】
これまで、非水系電解液電池の容量などの、各種の電池特性を改善するための手段として、正極や負極の活物質や、非水系電解液を始めとする様々な電池の構成要素について、数多くの技術が検討されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、特定の正極、負極、および正極と負極の間に配置された電解質を含むリチウム二次電池であって、前記電解質が、リチウム塩、非水系溶媒、及び特定のジシラン化合物を特定量含むリチウム二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/212281号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非水系電解液電池は、安全性の観点から、過充電状態を抑制するため、通常、電池電流遮断機構を備える。電池電流遮断機構としては、過充電時のガス発生を検知して作動するものがある。
【0007】
本発明者等は、非水系電解液電池におけるガス発生量に着目し、鋭意検討したところ、高温時などの、過充電以外の原因によるガス発生量と、過充電時のガス発生量との差が比較的大きいことにより、過充電以外の原因によるガス発生の誤検知を抑制しつつ、適切に、過充電時のガス発生を検知することができ、電池電流遮断機構を適切に作動させることができるため、電池の信頼性を高めることができることを見出した。
【0008】
このような知見に基づき、特許文献1に記載の技術について検討したところ、過充電以外の原因によるガス発生量と、過充電時のガス発生量との差を増大させる余地があり、したがって、電池の信頼性を改善させる余地があることを見出した。
【0009】
本発明は、放電電力容量に優れ、信頼性の高められた非水系電解液電池を与えることができる非水系電解液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、後述する一般式(1)で表される化合物と、後述する一般式(α)で表される化合物とを組み合わせて用いることにより、上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
本発明の非水系電解液を用いて作製された非水系電解液電池は、電池の電流遮断弁の誤作動を抑制し、放電電力容量を向上させることができる。その作用及び原理は、必ずしも明確ではないが、以下のように推察される。ただし、本発明は、以下に記述する作用及び原理に限定されるものではない。
一般式(1)で表される化合物が、求電子性の高い部分構造(たとえば、Si-HもしくはSi-Ph)を有する場合には、正極活物質に含まれる求核性を有する成分(たとえば、Li2CO3、LiF等)とケイ素原子上で求核置換反応を起こす。その結果、正極表面に保護被膜が形成され、他の電解液成分が正極表面に接触することを抑制でき、電解液の酸化分解反応を抑制することができる。一方で、電池が過充電状態となり、正極電位が通常使用電位より貴になった際に、本保護被膜成分は酸化分解を起こし、ガス発生を引き起こす。
ここで、電流遮断弁の圧力を適切に設定すれば、通常使用時の電流遮断弁誤作動を抑えつつ、過充電等の異常時には電流遮断弁を作動させることができるとも考えられるが、前記一般式(1)で表される化合物は負極における反応性も高いため、正極への作用以上に、負極で分解されやすい。このため、前記一般式(1)で表される化合物のみを電解液に添加しても、正極に殆ど適切に作用することができず、電池の電流遮断弁の誤作動を効果的に抑制することができない。
一方、一般式(α)で表される化合物はアミド構造を有する影響により負極表面において還元分解を受けやすい。還元分解により形成される負極保護被膜は非常に安定な形態となり、継続する電解液の分解を抑えることができる。
そこで、前記一般式(1)で表される化合物と一般式(α)で表される化合物を併用すると、前記一般式(1)で表される化合物が負極で分解され消費されることを抑制し、正極に効果的に作用することができる。その結果、電池が過充電状態となった場合にはガス発生を引き起こし、一方、通常使用時におけるガス発生を抑制できる。また、前記一般式(1)で表される化合物には、正極の界面抵抗を抑える効果があり、前記一般式(α)で表される化合物には、負極の界面抵抗を抑える効果があるため、各々を併用することにより、放電電力容量を向上させることができると推察される。
【0011】
即ち、本発明の要旨は、以下に存する。
【0012】
[1]
電解質、非水系溶媒、下記一般式(1)で表される化合物、及び下記一般式(α)で表される化合物を含有する非水系電解液。
【化1】
(一般式(1)中、R
aは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示し;R
x、R
y及びR
zは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は-SiR
1R
2R
3で表されるシリル基を示し;R
1~R
3は、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。)
【化2】
(一般式(α)中、R
89は、水素原子又は-SiR
8R
9R
10で表されるシリル基を示し;R
8~R
10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示し;R
11は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は-SiR
dR
eR
fで表されるシリル基を示し;R
d、R
e及びR
fは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示し;Yは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、-NR
g-SiR
hR
iR
jで表される基、又は-NR
g-Hで表される基を示し;R
gは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示し;R
h、R
i及びR
jは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示す。R
11とR
gは互いに結合し環を形成していてもよい。)
[2]
R
x、R
y及びR
zのうち1つ以上が、-SiR
1R
2R
3(R
1~R
3は、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。)で表されるシリル基である、[1]に記載の非水系電解液。
[3]
一般式(1)におけるR
x、R
y及びR
zのうち1つ以上が、-SiR
1bR
2bR
3b(R
1b~R
3bは、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアリール基を示す。)で表されるシリル基である、[1]又は[2]に記載の非水系電解液。
[4]
一般式(1)におけるR
x、R
y及びR
zのうち1つ以上が、-SiR
1cR
2cR
3c(R
1c~R
3cは、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基を示す。)で表されるシリル基である、[1]又は[2]に記載の非水系電解液。
[5]
式(1)におけるR
aが水素原子である、[1]~[4]のいずれかに記載の非水系電解液。
[6]
式(1)におけるR
aが、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基である、[1]~[4]のいずれかに記載の非水系電解液。
[7]
式(1)におけるR
aが、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアリール基である、[6]に記載の非水系電解液。
[8]
式(α)におけるYが、-NR
g-SiR
hR
iR
jで表される基、又は-NR
g-Hで表される基である、[1]~[7]のいずれかに記載の非水系電解液。
[9]
式(α)におけるYが、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基である、[1]~[7]のいずれかに記載の非水系電解液。
[10]
一般式(1)で表される化合物の含有量が、非水系電解液の全量に対して0.001~10質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載の非水系電解液。
[11]
一般式(α)で表される化合物の含有量が、非水系電解液の全量に対して0.001~10質量%である、[1]~[10]のいずれかに記載の非水系電解液。
[12]
前記電解質としてヘキサフルオロリン酸リチウムを含み、非水系電解液中における、一般式(α)で表される化合物及び一般式(1)で表される化合物の合計の含有量に対するヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量の比率が、質量基準で、50~30000である、[1]~[11]のいずれかに記載の非水系電解液。
[13]
正極、負極、及び非水系電解液を備える非水系電解液電池であって、
前記非水系電解液が、[1]~[12]のいずれかに記載の非水系電解液である、非水系電解液電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、放電電力容量に優れ、信頼性の高められた非水系電解液電池を与えることができる非水系電解液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書において、「α~β」又は「α-β」は、α以上、β以下の数値範囲を意味する。「Cn」は、炭素数がnであることを意味する。「炭化水素基」は、直鎖状又は分岐鎖状である炭素と水素からなる基を意味する。「ヘテロ原子」とは、酸素原子、硫黄原子、ケイ素原子又はハロゲン原子等、炭素原子及び水素原子以外の原子を表す。「ヘテロ原子で置換されていてもよい炭化水素基」は、非置換の炭化水素基、任意の水素原子がハロゲン原子に置換された炭化水素基、又は任意の原子がハロゲン原子以外のヘテロ原子を含む官能基で置換された炭化水素基を意味する。「ハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基」は、非置換の炭化水素基又は任意の水素原子がハロゲン原子に置換された炭化水素基を意味する。「脂肪族不飽和炭化水素基」は、少なくとも1つの炭素-炭素不飽和結合を有する脂肪族炭化水素基を意味する。「有機基」は、少なくとも1つの炭素原子を有する基を意味する。「アルケニル基」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素基を意味する。「アルキニル基」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する脂肪族炭化水素基を意味する。
【0015】
[1.非水系電解液]
本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、電解質、非水系溶媒、下記一般式(1)で表される化合物、及び下記一般式(α)で表される化合物を含有する。以下、各構成について説明する。
【0016】
[1-1.一般式(1)で表される化合物]
本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、下記一般式(1)で表される化合物を含有する。
【0017】
【化3】
(一般式(1)中、R
aは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示し;R
x、R
y及びR
zは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は-SiR
1R
2R
3で表されるシリル基を示し;R
1~R
3は、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。)
【0018】
一般式(1)で表される化合物は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。以下、Ra、Rx、Ry及びRz等について説明する。
【0019】
(Ra)
一般式(1)中、Raは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。
【0020】
Raに係る炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基及びアリール基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。中でも、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、3-メチル2-ブテニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、さらに好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、特に好ましくは、ビニル基、アリル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、さらに好ましくは、2-プロピニル基、3-ブチニル基、特に好ましくは、2-プロピニル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。中でも、フェニル基が好ましい。
【0021】
Raは、置換基を有する炭素数1~12の炭化水素基であってよく、置換基を有しない炭素数1~12の炭化水素基であってもよい。
ここで、Raに係る置換基としては、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Rs)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rs)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rs)、スルホニル基(-SO2-Rs)、スルホニルオキシ基(-O(SO2)-Rs)、アルコキシスルホニル基(-(SO2)-O-Rs)、アルコキシスルホニルオキシ基(-O-(SO2)-O-Rs)、アルコキシカルボニルオキシ基(-O-(C=O)-O-Rs)、エーテル基(-O-Rs)、アクリル基、メタクリル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、Rsは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基を示す。Rsがアルキレン基の場合は置換している炭化水素基の一部と結合し環を形成していてもよい。
これらの置換基の中でも好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rs)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、更に好ましくは、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rs)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、特に好ましくは、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rs)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、最も好ましくは、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)である。
【0022】
一般式(1)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、Raは、水素原子又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましく、水素原子又は(無置換の)炭素数1~12の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子、置換基を有しない炭素数1~12のアルキル基、又は置換基を有しない炭素数6~12のアリール基であることがさらに好ましく、水素原子、メチル基、又はフェニル基であることが特に好ましい。
【0023】
なお、Raに係る炭化水素基の炭素数は、1~12であればよく、特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~3、特に好ましくは1~2、最も好ましくは1である。ここで、当該炭化水素基が置換基を有している場合、置換基が含む炭素の数は、この炭素数には含まれない。
【0024】
(Rx、Ry、Rz)
一般式(1)中、Rx、Ry及びRzは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は-SiR1R2R3で表されるシリル基を示す。なお、Rx、Ry及びRzは、同一でも異なっていてもよい。
【0025】
Rx、Ry及びRzに係る炭化水素基としては、Raに係る炭化水素基として上述したものと同様のものを挙げることができ、中でも、アルキル基及びアリール基が好ましい。
Rx、Ry及びRzに係るアルキル基としては、好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
Rx、Ry及びRzに係るアリール基としては、好ましくはフェニル基が挙げられる。
【0026】
Rx、Ry及びRzは、それぞれ独立に、置換基を有する炭素数1~12の炭化水素基であってよく、置換基を有しない炭素数1~12の炭化水素基であってもよい。Rx、Ry及びRzに係る置換基としては、Raに係る置換基として上述したものと同様のものを挙げることができ、好適なものも同様である。
【0027】
Rx、Ry及びRzは、それぞれ独立に、-SiR1R2R3で表されるシリル基であってもよい。ここで、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。なお、-SiR1R2R3で表されるシリル基において、R1~R3は、同一でも異なっていてもよいが、化合物の合成が容易である観点から、少なくとも2つが同一であることが好ましい。
【0028】
R1~R3に係る炭化水素基としては、Rx、Ry及びRzに係る炭化水素基として上述したものと同様のものを挙げることができ、好適なものも同様である。
【0029】
R1~R3は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換された炭素数1~12の炭化水素基であってよく、無置換の炭素数1~12の炭化水素基であってもよい。ここで、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子が好ましい。
【0030】
一般式(1)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、R1~R3は、それぞれ独立に、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましく、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアリール基であることがより好ましく、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基であることがさらに好ましく、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基であることが特に好ましく、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~2のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基であることが最も好ましい。
【0031】
一般式(1)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、-SiR1R2R3で表されるシリル基において、R1~R3のうち1つ以上(好ましくは2つ以上)が、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基であることが好ましい。
また、ある態様ではR1~R3が、それぞれ、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基であることも好ましい。
【0032】
なお、R1~R3に係る炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、1~12であればよく、特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6である。R1~R3に係る炭化水素基が、アルキル基である場合には、当該アルキル基の炭素数は、それぞれ独立に、1~12であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6、殊更に好ましくは1~4、特に好ましくは1~2、最も好ましくは1である。
【0033】
Rx、Ry及びRzは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基又は-SiR1R2R3で表されるシリル基であることが好ましく、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基又は-SiR1R2R3で表されるシリル基であることがより好ましく、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアリール基、又は-SiR1R2R3で表されるシリル基であることがさらに好ましく、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、又は-SiR1R2R3で表されるシリル基であることが殊更に好ましく、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~4のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、又は-SiR1R2R3で表されるシリル基であることが特に好ましく、
ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~2のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよいフェニル基、又は-SiR1R2R3で表されるシリル基であることが最も好ましい。
【0034】
一般式(1)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、一般式(1)におけるRx、Ry及びRzのうち1つ以上(好ましくは2つ以上)が、
-SiR1R2R3で表されるシリル基であることが好ましく、
-SiR1aR2aR3a(R1a~R3aは、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。)で表されるシリル基であることがより好ましく、
-SiR1bR2bR3b(R1b~R3bは、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアリール基を示す。)で表されるシリル基であることがさらに好ましく、
-SiR1cR2cR3c(R1c~R3cは、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12のアルキル基を示す。)で表されるシリル基であることが特に好ましい。
【0035】
なお、Rx、Ry及びRzに係る炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、1~12であればよく、特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6である。Rx、Ry及びRzに係る炭化水素基が、アルキル基である場合には、当該アルキル基の炭素数は、それぞれ独立に、1~12であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~8、さらに好ましくは1~6、殊更に好ましくは1~4、特に好ましくは1~2、最も好ましくは1である。ここで、当該炭化水素基が置換基を有している場合、置換基が含む炭素の数は、この炭素数には含まれない。
【0036】
(一般式(1)で表される化合物の分子量)
一般式(1)で表される化合物の分子量は、特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、80~1000が好ましく、120~600がより好ましく、160~400がさらに好ましく、200~300が特に好ましい。
【0037】
(一般式(1)で表される化合物の含有量)
一般式(1)で表される化合物の含有量は、特に限定されないが、一般式(1)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、非水系電解液の全量に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.001~8質量%がより好ましく、0.001~6質量%がさらに好ましく、0.001~4質量%が特に好ましく、0.01~4質量%が最も好ましい。
【0038】
非水系電解液中の、一般式(1)で表される化合物の同定や含有量の測定は、核磁気共鳴(NMR)分光法により行う。
【0039】
[1-2.一般式(α)で表される化合物]
本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、上記一般式(1)で表される化合物に加えて、下記一般式(α)で表される化合物を含有する。
【0040】
【0041】
(一般式(α)中、R89は、水素原子又は-SiR8R9R10で表されるシリル基を示し;R8~R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示し;R11は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は-SiRdReRfで表されるシリル基を示し;Rd、Re及びRfは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示し;Yは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、-NRg-SiRhRiRjで表される基、又は-NRg-Hで表される基を示し;Rgは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示し;Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示す。R11とRgは互いに結合し環を形成していてもよい。)
【0042】
一般式(α)で表される化合物は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。以下、R89、R8~R11、Rg、及びY等について説明する。
【0043】
(R89)
一般式(α)に係るR89は、水素原子又は-SiR8R9R10で表されるシリル基を示し、R8~R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示す。
【0044】
R89に係るハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、電気化学的な副反応が少ない観点から、フッ素原子が好ましい。
【0045】
R89に係る炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基及びアリール基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。中でも好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ヘキシル基、さらに好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、特に好ましくはメチル基、エチル基、n-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。上述のアルキル基であると、正極活物質及び/又は負極活物質の表面近傍へ一般式(α)で表される化合物が局在化する傾向にあるため好ましい。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、3-メチル2-ブテニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、2-ブテニル基、さらに好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、特に好ましくは、ビニル基又はアリル基が挙げられる。上述のアルケニル基であると、正極活物質及び/又は負極活物質の表面近傍へ一般式(α)で表される化合物が局在化する傾向にあるため好ましい。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、4-ペンチニル基、5-ヘキシニル基等が挙げられる。中でも好ましくは、エチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、さらに好ましくは、2-プロピニル基、3-ブチニル基、特に好ましくは、2-プロピニル基が挙げられる。上述のアルキニル基であると、正極活物質及び/又は負極活物質の表面近傍へ一般式(α)で表される化合物が局在化する傾向にあるため好ましい。
アリール基の具体例としては、フェニル基、及びトリル基等が挙げられる。なかでも、正極活物質及び/又は負極活物質の表面近傍へ一般式(α)で表される化合物が局在化する傾向にある観点から、フェニル基が好ましい。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、及びフェネチル基等が挙げられる。
【0046】
炭素数1~12のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、及びイソプロポキシ基等が挙げられる。なかでも、化合物の立体障害が少なく活物質表面に好適に濃縮される観点から、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がさらに好ましい。
【0047】
R8~R10に係る炭化水素基及びアルコキシ基は、それぞれ独立に、置換基を有するものであってよく、置換基を有しないものであってもよい。
ここで、R8~R10に係る置換基としては、シアノ基、イソシアナト基、アシル基(-(C=O)-Rs)、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rs)、アルコキシカルボニル基(-(C=O)O-Rs)、スルホニル基(-SO2-Rs)、スルホニルオキシ基(-O(SO2)-Rs)、アルコキシスルホニル基(-(SO2)-O-Rs)、アルコキシスルホニルオキシ基(-O-(SO2)-O-Rs)、アルコキシカルボニルオキシ基(-O-(C=O)-O-Rs)、エーテル基(-O-Rs)、アクリル基、メタクリル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基等が挙げられる。なお、Rsは、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数2~10のアルケニル基、又は炭素数2~10のアルキニル基を示す。Rsがアルキレン基の場合は置換している炭化水素基の一部と結合し環を形成していてもよい。
これらの置換基の中でも好ましくは、シアノ基、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rs)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、更に好ましくは、イソシアナト基、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rs)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基であり、特に好ましくは、アシルオキシ基(-O(C=O)-Rs)、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)、トリフルオロメチル基である。
【0048】
R8~R10としては、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基及び置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基がさらに好ましい。
また、一般式(α)に係る化合物が電極表面に好適に局在化される傾向にある観点から、R8~R10のうち、少なくとも1つが炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、少なくとも2つが炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましく、R8~R10の全てが炭素数1~12のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0049】
なお、R8~R10に係る炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、1~12であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~2、特に好ましくは1である。ここで、当該炭化水素基が置換基を有している場合、置換基が含む炭素の数は、この炭素数には含まれない。
【0050】
-SiR8R9R10で表されるシリル基において、R8~R10は、同一でも異なっていてもよいが、好ましくは少なくとも2つが同一であることが化合物の合成が容易である点で好ましく、3つとも同一であることが先述の観点でさらに好ましい。
【0051】
(R11)
一般式(α)に係るR11は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は-SiRdReRfで表されるシリル基を示す。
【0052】
R11に係る、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基としては、R8~R10について上述したものと同様のものが挙げられ、好適なものも同様である。
【0053】
-SiRdReRfで表されるシリル基におけるRd~Rfは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示す。
ここで、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、及び、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基としては、R8~R10について上述したものと同様のものが挙げられ、好適なものも同様である。
【0054】
なお、Rd~Rfに係る炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、1~12であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~2、特に好ましくは1である。ここで、当該炭化水素基が置換基を有している場合、置換基が含む炭素の数は、この炭素数には含まれない。
【0055】
R11としては、水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基が好ましく、水素原子及び(無置換の)炭素数1~12の炭化水素基がより好ましく、水素原子及び炭素数1~6の炭化水素基がさらに好ましく、水素原子及び炭素数1~4の炭化水素基が特に好ましく、水素原子及び炭素数1~4のアルキル基が最も好ましい。
【0056】
なお、R11に係る炭化水素基の炭素数は、それぞれ独立に、1~12であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~6であり、より好ましくは1~4、さらに好ましくは1~2、特に好ましくは1である。ここで、当該炭化水素基が置換基を有している場合、置換基が含む炭素の数は、この炭素数には含まれない。
【0057】
(Y)
一般式(α)に係るYは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、-NRg-SiRhRiRjで表される基、又は-NRg-Hで表される基を示し、Rgは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示し、Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示す。
【0058】
ここで、Yに係るハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、及び置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基としては、R8~R10について上述したものと同様のものが挙げられ、好適なものも同様である。
【0059】
-NRg-SiRhRiRjで表される基において、Rgは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基である。ここで、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基は、R11で規定するものと同義であり、好適なものも同様である。また、-SiRhRiRjで表される基は、-SiRdReRfで表される基と同義であり、好適なものも同様である。
【0060】
-NRg-Hで表される基において、Rgは、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基である。ここで、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基は、R11で規定するものと同義である。-NRg-Hで表される基において、Rgとしては、水素原子及び(無置換の)炭素数1~12の炭化水素基が好ましく、水素原子及び炭素数1~6の炭化水素基がより好ましく、水素原子及び炭素数1~4の炭化水素基がさらに好ましい。
Yは、-NRg-SiRhRiRjで表される基、-NRg-Hで表される基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基であることが好ましい。
【0061】
一般式(α)で表される化合物は、一般式(α1)で表される化合物又は一般式(α2)で表される化合物であることが好ましい。
(一般式(α1)で表される化合物)
【0062】
【0063】
(一般式(α1)中、R8~R10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示す。R11は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は-SiRdReRfで表されるシリル基を示す。Rd、Re及びRfは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示す。Y’は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、又は-NRg-SiRhRiRjで表される基を示す。Rgは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。Rh、Ri及びRjは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基を示す。R11とRgは互いに結合し環を形成していてもよい。)
【0064】
一般式(α1)中の、R8~R11、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、Ri及びRjは、一般式(α)中のR8~R11、Rd、Re、Rf、Rg、Rh、Ri及びRjにそれぞれ対応し、一般式(α1)中のY’は、一般式(α)中のYのうち、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、又は-NRg-SiRhRiRjで表される基に対応する。
【0065】
一般式(α1)で表される、Si-N構造を有する化合物の、具体的な例としては以下の構造の化合物が挙げられる。
【0066】
【0067】
好ましくは以下の化合物が挙げられる。
【0068】
【0069】
より好ましくは以下の化合物が挙げられる。
【0070】
【0071】
特に好ましくは以下の化合物が挙げられる。
【0072】
【0073】
(一般式(α2)で表される化合物)
【0074】
【0075】
(一般式(α2)中、R111は、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。Y”は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、又は-NRg-Hで表される基を示す。Rgは、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基を示す。)
【0076】
一般式(α2)中のR111は、一般式(α)中のR11のうち、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基に対応し、一般式(α2)中のRgは、一般式(α)中のRgに対応し、一般式(α2)中のY”は、一般式(α)中のYのうち、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルコキシ基、又は-NRg-Hで表される基に対応する。一般式(α2)に係るR111としては、水素原子及び置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基が好ましく、水素原子及び(無置換の)炭素数1~12の炭化水素基がより好ましく、水素原子及び炭素数1~6の炭化水素基がさらに好ましく、水素原子及び炭素数1~4の炭化水素基が特に好ましく、水素原子及び炭素数1~4のアルキル基が最も好ましい。
【0077】
一般式(α2)で表される化合物の、具体的な例としては以下の構造の化合物が挙げられる。
【0078】
【0079】
一般式(α2)で表される化合物としては、好ましくは以下の化合物が挙げられる。
【0080】
【0081】
一般式(α2)で表される化合物としては、より好ましくは以下の化合物が挙げられる。
【0082】
【0083】
一般式(α2)で表される化合物としては、特に好ましくは以下の化合物が挙げられる。
【0084】
【0085】
(一般式(α)で表される化合物の含有量)
一般式(α)で表される化合物の含有量は、特に限定されないが、一般式(α)で表される化合物の作用効果をより高め得る観点から、非水系電解液の全量に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.001~8質量%がより好ましく、0.001~6質量%がさらに好ましく、0.001~4質量%が特に好ましく、0.01~4質量%が最も好ましい。
非水系電解液全量に対する一般式(α)で表される化合物の含有量の合計が、上記の範囲であれば、活物質への一般式(α)で表される化合物の濃縮が好適に進行し、初期コンディショニング時のガス発生が少ない電池の作製が可能となる。
【0086】
(一般式(α)で表される化合物の含有量に対する一般式(1)で表される化合物の含有量の比)
非水系電解液中における一般式(α)で表される化合物の含有量に対する、一般式(1)で表される化合物の含有量の比率は、特段の制限はないが、質量基準で、好ましくは0.1以上であり、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.4以上、特に好ましくは0.8以上であり、一方、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは300以下、特に好ましくは100以下である。
【0087】
非水系電解液中の、一般式(α)で表される化合物の同定や含有量の測定は、核磁気共鳴(NMR)分光法により行う。
なお、電解液に、一般式(α)で表される化合物、並びに一般式(1)で表される化合物を含有させる方法は、特に制限されない。上記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において上記化合物を発生させる方法が挙げられる。
【0088】
本明細書において、化合物の含有量とは、非水系電解液製造時、非水系電解液の電池への注液時点又は電池として出荷された何れかの時点での含有量を意味する。
【0089】
[1-3.電解質]
非水系電解液に含有される電解質は、通常、アルカリ金属塩であればよく、特に限定されないが、リチウム塩が好ましい。電解質は、電解液中で解離状態にあるため、アニオンが検出されればよい。電解質は、F-P=O結合を有するリン酸アニオン、アルキル硫酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン及びオキサラート錯体アニオンのいずれも含まないものであることが好ましい。電解質としてのリチウム塩は、例えば、LiBF4等のフルオロホウ酸リチウム塩;LiPF6等のフルオロリン酸リチウム塩;CH3SO3Li、CF3SO3Li等のスルホン酸リチウム塩;LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド等のリチウムイミド塩;LiC(C2F5SO2)3等のリチウムメチド塩;タングステン酸リチウム塩;カルボン酸リチウム塩;含フッ素有機リチウム塩;等であり得る。
【0090】
これらの中でも、前記電解質が、LiPF6、LiBF4及びLiN(CMF2M+1SO2)(CNF2N+1SO2)(0≦M≦4,0≦N≦4)からなる群から選択される少なくとも1種の電解質が好ましく、LiPF6がより好ましい。
【0091】
2種類以上の電解質の組み合わせとしては、特に限定されないがLiPF6及びLiN(FSO2)2の組み合わせ;LiPF6及びLiN(CF3SO2)2の組み合わせ;LiPF6及びLiBF4の組み合わせ;LiBF4及びLiN(FSO2)2の組み合わせ;LiBF4及びLiPF6及びLiN(FSO2)2の組み合わせが好ましい。これらの中でも、LiPF6及びLiN(FSO2)2;LiPF6及びLiBF4;LiBF4、LiPF6及びLiN(FSO2)2の組み合わせがより好ましい。
【0092】
(電解質の含有量)
電解質の含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常、0.001~18質量%であり、0.01~18質量%が好ましく、0.1~18質量%がより好ましく、1~18質量%がより好ましく、3~18質量%がより好ましく、5~18質量%がより好ましく、8~18質量%がより好ましく、8.5~18質量%がより好ましく、9~18質量%がより好ましい。この範囲であれば、その作用効果をより高め得る。
【0093】
(一般式(1)で表される化合物の含有量に対するヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量の比)
非水系電解液は、ヘキサフルオロリン酸アニオンを含有することが好ましい。この場合において、一般式(1)で表される化合物の含有量[g]に対するヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量[g]の比(ヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量/一般式(1)で表される化合物の含有量)は、特に限定されないが、好ましくは100~60000であり、より好ましくは200~20000であり、さらに好ましくは400~6000である。
【0094】
(一般式(α)で表される化合物の含有量に対するヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量の比)
非水系電解液が、ヘキサフルオロリン酸アニオンを含有する場合において、一般式(α)で表される化合物の含有量[g]に対するヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量[g]の比(ヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量/一般式(α)で表される化合物の含有量)は、特に限定されないが、好ましくは100~60000であり、より好ましくは200~20000であり、さらに好ましくは400~6000である。
【0095】
(一般式(α)で表される化合物及び一般式(1)で表される化合物の合計の含有量に対するヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量の比)
非水系電解液が、ヘキサフルオロリン酸アニオンを含有する場合において、一般式(α)で表される化合物及び一般式(1)で表される化合物の合計の含有量[g]に対するヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量[g]の比(ヘキサフルオロリン酸アニオンの含有量/一般式(α)で表される化合物及び一般式(1)で表される化合物の合計の含有量)は、特に限定されないが、好ましくは50~30000であり、より好ましくは100~10000であり、さらに好ましくは200~3000である。
【0096】
[1-4.非水系溶媒]
非水系電解液の非水系溶媒は、前記電解質を溶解すれば特に制限はなく、公知の非水系溶媒を用いることができる。前記非水系溶媒は、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の飽和環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、等の鎖状カルボン酸エステル;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル;ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサン等のエーテル系化合物;2-メチルスルホラン、ジメチルスルホン等のスルホン系化合物;等であり得る。
【0097】
これらの中でも、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種の非水系溶媒が好ましく、飽和環状カーボネート又は鎖状カーボネートがより好ましい。
【0098】
2種以上の非水系溶媒の組み合わせとしては、飽和環状カーボネート及び鎖状カーボネートの組み合わせ、飽和環状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルの組み合わせ、環状カルボン酸エステル及び鎖状カーボネートの組み合わせ、並びに、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルの組み合わせが挙げられる。
【0099】
これらの中でも、飽和環状カーボネート及び鎖状カーボネートの組み合わせ、並びに、飽和環状カーボネート、鎖状カーボネート及び鎖状カルボン酸エステルの組み合わせが好ましい。
【0100】
[1-5.助剤]
本発明の一実施形態に係る非水系電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、公知の助剤を含有し得る。
【0101】
助剤は、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、フッ素含有環状カーボネート、イソシアネート基を有する化合物、イソシアヌル酸骨格を有する有機化合物、硫黄含有有機化合物、リン含有有機化合物、シアノ基を有する有機化合物、ケイ素含有化合物(ただし、一般式(1)で表される化合物及び一般式(α)で表される化合物を除く)、芳香族化合物、エーテル結合を有する環状化合物、フッ素非含有カルボン酸エステル、カルボン酸無水物、三重結合含有化合物、ホスファゼン化合物、環状アセタール化合物、ホウ酸アニオン、F-P=O結合を有するリン酸アニオン、S=O結合を有するアニオンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。例えば、国際公開公報第2015/111676号に記載の化合物等が好ましく挙げられる。
助剤としては、F-P=O結合を有するリン酸アニオン、及びS=O結合を有するアニオン(以下、「特定のアニオン」ともいう)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物がより好ましく、F-P=O結合を有するリン酸アニオンから1種以上、かつ、S=O結合を有するアニオンから1種以上選択することがより好ましい。
また、電池電流遮断弁の誤作動抑制率を向上させる観点から、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート、及び/又はフッ素含有環状カーボネート(以下、「特定のカーボネート化合物」ともいう)を含むことが好ましい。
【0102】
助剤の含有量は特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全量に対して、通常、0.001~10質量%であり、0.001~8質量%が好ましく、0.001~6質量%がより好ましく、0.001~4質量%がさらに好ましく、0.001~3質量%が殊更に好ましい。この範囲であれば、その作用効果をより高め得る。
【0103】
(特定のアニオン)
前記助剤の中でも、F-P=O結合を有するリン酸アニオン、アルキル硫酸アニオン、フルオロスルホンスルホン酸アニオン及びオキサラート錯体アニオンから選ばれる少なくとも1種のアニオン(以下、「特定のアニオン」ともいう。)が、電極上に安定な被膜を容易に形成する観点で好ましい。
【0104】
前記特定のアニオンの中でも、ジフルオロリン酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、及びビスオキサラートボレートアニオンより好ましく、ジフルオロリン酸アニオン、フルオロスルホン酸アニオンがより好ましい。
【0105】
前記特定のアニオンは酸又は塩に由来し、系内で発生するアニオンも含む。前記特定のアニオンは、塩として非水系電解液に含有させることが好ましく、カウンターカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属カチオンが好ましく、リチウムカチオンがより好ましい。以下、特定のアニオンについて説明する。
【0106】
(特定のアニオンの含有量)
特定のアニオンの含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液の全量に対して、通常、0.001~10質量%であり、0.001~8質量%が好ましく、0.001~6質量%がより好ましく、0.001~4質量%がさらに好ましく、0.001~3質量%が殊更に好ましい。この範囲であれば、その作用効果をより高め得る。
【0107】
特定のアニオンの同定及び含有量の測定は、核磁気共鳴(NMR)分光法により行う。
【0108】
[1-5-1.F-P=O結合を有するリン酸アニオン]
F-P=O結合を有するリン酸アニオンは、例えば、PO3F-等のモノフルオロリン酸アニオン;PO2F2
-等のジフルオロリン酸アニオン;等であり得る。
前記F-P=O結合を有するリン酸アニオンは、モノフルオロリン酸アニオン及び/又はジフルオロリン酸アニオンであることが好ましく、ジフルオロリン酸アニオンであることがより好ましい。
【0109】
[1-5-2.S=O結合を有するアニオン]
S=O結合を有するアニオンは、分子内にS=O結合を少なくとも1つ有すれば特に制限されない。例えば、フルオロスルホン酸アニオン(FSO3
-)、アルキル硫酸アニオン(ClH2l+1OSO3
-,1≦l≦10)、ハロゲン化アルキル硫酸アニオン、スルホニルメチドアニオン((R5SO2)3C-)、又はスルホニルイミドアニオン((R6SO2)2N-)(R5又はR6は炭素数1~10の炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよい)であり得る。
前記S=O結合を有するアニオンは、フルオロスルホン酸アニオン、アルキル硫酸アニオン、スルホニルメチドアニオン、スルホニルイミドアニオンから選択される少なくとも1種であることが好ましく、
フルオロスルホン酸アニオン及びアルキル硫酸アニオンから選択される少なくとも1種、並びにスルホニルイミドアニオンから選択される少なくとも1種であることがより好ましく、
フルオロスルホン酸アニオン及びスルホニルイミドアニオンであることがより好ましい。
【0110】
[1-5-2-1.アルキル硫酸アニオン]
アルキル硫酸アニオンは、炭素数1~10のアルキル基を有する硫酸アニオンであれば特に制限されない。アルキル硫酸アニオンは、ClH2l+1OSO3
-(1≦l≦10)で表されるアニオンが好ましく、ClH2l+1OSO3
-(1≦l≦5)で表されるアニオンがより好ましく、メチル硫酸アニオン又はエチル硫酸アニオンがより好ましい。
【0111】
[1-5-2-2.スルホニルイミドアニオン]
スルホニルイミドアニオンは、スルホニル構造とイミド構造を有するアニオンであれば、特に制限されない。スルホニルイミドアニオンは、(R6SO2)2N-(R6はフッ素原子又はハロゲン原子を有していてもよい炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよい)で表されるアニオンが好ましく、(FSO2)2N-で表されるアニオンがより好ましい。
【0112】
(特定のカーボネート)
電池電流遮断弁の誤作動抑制率を向上させる観点から、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート及び/又はフッ素含有環状カーボネート(以下、「特定のカーボネート化合物」ともいう)を含むことが好ましく、炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート及びフッ素含有環状カーボネートを含むことが好ましい。
【0113】
(特定のカーボネートの含有量)
特定のカーボネートの含有量(2種以上の場合は合計量)は、非水系電解液の全量に対して、通常、0.001~10質量%であり、0.001~8質量%が好ましく、0.001~6質量%がより好ましく、0.001~4質量%がさらに好ましく、0.01~4質量%が殊更に好ましい。この範囲であれば、その作用効果をより高め得る。
【0114】
[1-5-3.炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート]
炭素-炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」ともいう)としては、炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する環状カーボネートであれば特に制限されない。本明細書において、芳香環を有する環状カーボネートも、不飽和環状カーボネートに包含されることとする。
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート等のビニレンカーボネート類;ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート等の芳香環もしくは炭素-炭素二重結合又は炭素-炭素三重結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類;等が挙げられる。
特に、安定な界面保護被膜形成の観点から、ビニレンカーボネート類が好ましく、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートがより好ましく、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートがさらに好ましく、ビニレンカーボネートが特に好ましい。
【0115】
[1-5-4.フッ素含有環状カーボネート]
フッ素含有環状カーボネートは、環状のカーボネート構造を有し、かつフッ素原子を含有するものであれば特に制限されない。
フッ素含有環状カーボネートとしては、炭素数2以上6以下のアルキレン基を有する環状カーボネートのフッ素化物、及びその誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネートのフッ素化物(以下、「フッ素化エチレンカーボネート」と記載する場合がある)、及びその誘導体が挙げられる。エチレンカーボネートのフッ素化物の誘導体としては、アルキル基(例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられる。中でもフッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート、及びその誘導体が好ましい。
フッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネート及びその誘導体としては、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート、4-フルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロ-4-メチルエチレンカーボネート、4-フルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロ-5-メチルエチレンカーボネート、4-(フルオロメチル)-エチレンカーボネート等が挙げられる。
特に、電解液に高イオン伝導性を与え、かつ安定な界面保護被膜形成の観点から、フッ素数1以上8以下のフッ素化エチレンカーボネートが好ましく、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4-ジフルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネートがより好ましく、モノフルオロエチレンカーボネートがさらに好ましい。
【0116】
[2.非水系電解液電池]
本発明の一実施態様である非水系電解液電池は、正極、負極、及び非水系電解液を備える。非水系電解液電池は、非水系電解液二次電池であることが好ましい。前記非水系電解液電池は、通常、正極、負極、セパレータ、及び非水系電解液等を外装体に収納して構成される。
【0117】
以下、各材料及び電池設計について説明する。
【0118】
[2-1.非水系電解液]
非水系電解液は、[1.非水系電解液]に記載の非水系電解液を含む。また、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、その他の非水系電解液をさらに含有し得る。
【0119】
[2-2.正極]
正極は、金属イオンを吸蔵及び放出しうる正極活物質を含み、前記正極活物質は集電体表面の少なくとも一部に接触し得る。
【0120】
[2-2-1.正極活物質]
前記正極活物質は、通常、リチウム遷移金属系化合物である。
リチウム遷移金属系化合物は、例えば、硫化物やリン酸塩化合物;ケイ酸化合物;ホウ酸化合物;リチウム遷移金属複合酸化物;等であり得る。これらの中でも、リン酸塩化合物、リチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、リチウム遷移金属複合酸化物がより好ましい。
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、三次元的拡散が可能なスピネル構造;リチウムイオンの二次元的拡散を可能にする層状構造;を有し得る。
【0121】
前記スピネル構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、下記組成式(1)で表される。
Lix’M’2O4・・・(1)
(式(1)中、x’は1≦x’≦1.5であり、M’は少なくとも1種の遷移金属元素を表す。)
前記組成式(1)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、LiMn2O4、LiCoMnO4、LiNi0.5Mn1.5O4、LiCoVO4等であり得る。
【0122】
前記層状構造を有するリチウム遷移金属複合酸化物は、下記組成式(2)で表される。
Li1+xMyO2・・・(2)
(式(2)中、xは-0.1≦x≦0.5であり、yは0.5≦y≦1.48であり、Mは少なくとも1種の遷移金属元素を表す。)
【0123】
式(2)中、xは、-0.1≦x≦0.5であり、特に限定されないが、-0.1≦x≦0.1であることが好ましく、-0.05≦x≦0.05であることがより好ましい。
式(2)中、yは、0.5≦y≦1.48であり、特に限定されないが、0.9≦y≦1.1であることが好ましく、0.98≦y≦1.02であることがより好ましく、y=1であることがさらに好ましい。
式(2)中、Mは、遷移金属元素であれば特に限定されないが、Ni、Co,Mn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることが好ましく、Ni、Co,Mn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることがより好ましく、Ni、Co及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることがさらに好ましい。
【0124】
前記組成式(2)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、Li1.05Ni0.33Co0.33Mn0.33O2、Li1.00Ni0.61Mn0.19Co0.20O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li1.05Ni0.5Co0.2Mn0.3O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2等であり得る。
これらの中でも、正極活物質は、LiCoO2であることが好ましい。
【0125】
また、リチウム遷移金属複合酸化物としては、前記組成式(2)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物であることが好ましく、下記組成式(3)で表される遷移金属複合酸化物であることがより好ましい。
Lia1Nib1Mc1O2・・・(3)
(式(3)中、a1、b1、及びc1はそれぞれ、0.90≦a1≦1.10、0.30≦b1≦0.98、0.01≦c1≦0.5を満たす数値を示し、0.50≦b1+c1≦1.48を満たす。MはCo,Mn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0126】
前記組成式(3)中、a1は、0.90≦a1≦1.10であり、特に限定されないが、0.95≦a1≦1.05であることが好ましい。
前記組成式(3)中、b1は、0.30≦b1≦0.98であり、特に限定されないが、0.50≦b1≦0.98であることが好ましく、0.60≦b1≦0.98であることがより好ましい。
前記組成式(3)中、c1は、0.01≦c1≦0.5であり、特に限定されないが、0.02≦c1≦0.5であることが好ましく、0.02≦c1≦0.4であることがより好ましい。
式(3)中、Mは、Co,Mn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であれば特に限定されないが、Co,Mn及びAlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることがより好ましく、Co及びMnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であることがさらに好ましい。
【0127】
また、前記組成式(3)で表される遷移金属複合酸化物は、下記組成式(4)で表される遷移金属複合酸化物であることが好ましい。
Lia2Nib2Coc2Md2O2・・・(4)
(式(4)中、a2、b2、c2及びd2はそれぞれ、0.90≦a2≦1.10、0.30≦b2≦0.98、0.01≦c2<0.50、0.01≦d2<0.50を満たす数値を示し、b2+c2+d2=1を満たす。MはMn、Al、Mg、Zr、Fe、Ti及びErからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表す。)
【0128】
前記組成式(4)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、LiNi0.85Co0.10Al0.05O2、LiNi0.80Co0.15Al0.05O2、LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li1.00Ni0.61Mn0.19Co0.20O2、Li1.05Ni0.50Co0.20Mn0.30O2、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2等であり得る。
【0129】
前記組成式(4)中、a2は、0.90≦a2≦1.10であり、特に限定されないが、0.95≦a2≦1.05であることが好ましい。前記組成式(4)中、b2は、0.30≦b2≦0.98であり、特に限定されないが、0.50≦b2≦0.98であることが好ましく、0.60≦b2≦0.98であることがより好ましい 。前記組成式(4)中、c2は、0.01≦c2<0.50であり、特に限定されないが、0.05≦c2≦0.30であることが好ましい。前記組成式(4)中、d2は、0.01≦d2<0.50であり、特に限定されないが、0.05≦d2≦0.30であることが好ましい。前記組成式(4)中、MはMn又はAlを含むことが好ましく、Mnを含むことがより好ましい。
【0130】
前記リチウム遷移金属複合酸化物は、前記組成式に含まれる元素以外の元素が導入されてもよいが、導入されていないことが好ましい。
【0131】
また、正極活物質の表面に、正極活物質とは異なる組成の物質(以下、表面付着物質という)が付着したものを用いてもよい。本開示では、前記表面付着物質が付着した正極活物質も「正極活物質」という。表面付着物質は、例えば、酸化アルミニウム等の酸化物;硫酸リチウム等の硫酸塩;炭酸リチウム等の炭酸塩;等であり得る。
これらは、例えば、表面付着物質を溶媒に溶解又は懸濁させ、前記正極活物質に含浸させる方法等により正極活物質表面に付着させ得る。
表面付着物質の量としては、前記正極活物質の全量に対して、通常、1μmol/g~1mmol/gであり、10μmol/g~1mmol/gが好ましい。
【0132】
なお、これらの正極活物質は一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0133】
[2-2-2.正極の構成と製造方法]
正極は、例えば、正極活物質と、結着剤並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等とを乾式で混合し、シート状にしたものを正極集電体に圧着する方法;これらの材料を溶媒に溶解又は分散させたスラリーを集電体に塗布する方法;等の公知の方法で製造し得る。
【0134】
スラリーを塗布し乾燥することによって得られた正極活物質層は、充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。集電体上の正極活物質層の密度は、通常、1.5~4.5g/cm3である。正極活物質層の厚さは、通常、10~500μmである。
【0135】
以下、正極の製造に使用される各材料について説明する。
【0136】
正極活物質の含有量は、正極の全量に対し、通常、80~99.5質量%である。
【0137】
導電材は、公知の材料を用いることができ、例えば、銅、ニッケル等の金属材料;黒鉛(グラファイト)、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、無定形炭素等の炭素系材料;等である。
前記導電材の含有量は、正極の全量に対し、通常、0.01~50質量%である。
【0138】
結着剤は、公知の材料を用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマー;等である。
前記結着剤の含有量は、正極の全量に対し、通常、0.1~80質量%である。
【0139】
集電体は、公知の材料を用いることができ、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料等である。
前記集電体の形状は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等である。また、前記集電体の厚さは、通常、1μm以上、1mm以下である。
【0140】
[2-3.負極]
負極は、金属イオンを吸蔵及び放出しうる負極活物質を含み、前記負極活物質は集電体表面の少なくとも一部に接触し得る。
【0141】
[2-3-1.負極活物質]
負極活物質は、通常、炭素系材料、Liと合金化可能な金属元素及び/若しくはLiと合金化可能な半金属元素を含有する材料(以下、「Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料」という場合がある)、リチウム含有金属複合酸化物、又はこれらの混合物である。これらの中でも、炭素系材料、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料、並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の負極活物質であることが好ましい。
【0142】
炭素系材料は、通常、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素、炭素被覆黒鉛、黒鉛被覆黒鉛、樹脂被覆黒鉛等である。
前記炭素系材料は、例えば、球形化又は緻密化等の処理を施した粒子状であり得る。粒子状の場合、平均粒子径(d50)は、通常1μm~100μmである。
【0143】
前記炭素系材料は、以下の(1)~(4)に示した物性又は形状等の内、少なくとも1つを満たしていることが好ましく、複数を同時に満たすことがより好ましい。
また、負極活物質は、下記特性又は形状を満たす複数種類の炭素系材料を用いることが好ましく、(i)X線回折パラメータが異なること、(ii)体積基準平均粒径の分布がメジアン径を中心としたときに左右対称にならないこと、及び(iii)ラマンR値が異なることからなる群より選択される少なくとも1種の物性又は形状を満たす2種以上の炭素系材料を含有することがより好ましい。
【0144】
(1)X線回折パラメータ
前記炭素系材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)は、通常0.335nm~0.360nmである。また、学振法によるX線回折で求めた炭素質材料の結晶子サイズ(Lc)は、通常1.0nm以上である。
【0145】
(2)体積基準平均粒径
前記炭素系材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折又は散乱法により測定された体積基準の平均粒径(メジアン径)であり、通常1~100μmである。
【0146】
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
前記炭素系材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法により測定された値であり、通常0.01~1.5である。
また、炭素系材料の1580cm-1付近のラマン半値幅は、通常10~100cm-1である。
【0147】
(4)BET比表面積
前記炭素系材料のBET比表面積は、BET法により測定された値であり、通常0.1~100m2・g-1である。
【0148】
Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料は、公知の材料を用いることができる。容量とサイクル寿命の点から、Sb、Si、Sn、Al、As、及びZnからなる群より選ばれる金属元素及び/又は半金属元素の単体;LiySi(0<y≦4.4)、Li2SiO2+z(0<z≦2)等のLiと前記金属元素及び/又は半金属元素の合金;前記金属元素及び/又は半金属元素の酸化物、窒化物又は炭化物であることが好ましく、金属Si(以下、Siと記載する)又はSi含有無機化合物が好ましく、Si、又はSiOx(0<x≦2)等のSi酸化物がより好ましい。
【0149】
Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料が粒子である場合、その平均粒子径(d50)は、サイクル寿命の観点から、通常0.01~10μmである。
【0150】
炭素系材料と、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料との混合物は、互いに独立な前記材料の混合体や、前記材料が互いの表面又は内部に存在している複合体を含む。
炭素系材料と、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料との混合物全量に対する、Liと合金化可能な金属元素及び/若しくは半金属元素を含有する材料の粒子の含有量は、通常1~99質量%であり、1~50質量が好ましく、1~25質量%がより好ましい。
【0151】
リチウム含有金属複合酸化物は、リチウム及びチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」という)がより好ましく、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物がより好ましい。前記リチウムチタン複合酸化物は、例えば、Li4/3Ti5/3O4、Li1Ti2O4、Li4/5Ti11/5O4等であり得る。
【0152】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウム及び/又はチタンは、他の金属元素、例えば、Al、Ga、Cu及びZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されていてもよい。前記リチウム及び/又はチタンの一部が他の元素で置換されたリチウムチタン複合酸化物は、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3O4であり得る。
【0153】
また、炭素系材料、Liと合金化可能な金属元素及び/又は半金属元素を含有する材料、リチウム含有金属複合酸化物、並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の負極活物質は、その表面に、異なる組成の物質が付着したもの(表面付着物質)を用いてもよい。前記表面付着物質は、例えば、酸化アルミニウム等の酸化物;硫酸リチウム等の硫酸塩;炭酸リチウム等の炭酸塩;等であり得る。
【0154】
[2-3-2.負極の構成と製造方法]
負極は、例えば、負極活物質と、結着剤並びに必要に応じて増粘剤、結着剤等とを溶媒に溶解又は分散させたスラリーを集電体に塗布する方法等の公知の方法で製造し得る。
スラリーを塗布し乾燥することによって得られた負極活物質層は、充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。集電体上の負極活物質層の密度は、通常1.0~2.2g・cm-3である。負極活物質層の厚さは、通常、15~300μmである。
【0155】
以下、負極の製造に使用される各材料について説明する。
【0156】
負極活物質の、負極活物質層中の含有量は、通常80~99.5質量%である。
【0157】
増粘剤は、公知の材料を用いることができ、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール等である。
前記増粘剤の含有量は、負極の全量に対し、通常0.1~5質量%である。
【0158】
結着剤は、公知の材料を用いることができ、例えば、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、エチレン-プロピレンゴム等のゴム状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等のフッ素系高分子;等である。
ゴム状高分子を主成分とする結着剤の含有量は、負極の全量に対し、通常0.1~5質量%である。ゴム状高分子を主成分とする含有量は、負極の全量に対し、通常1~15質量%である。
【0159】
集電体は、公知の材料を用いることができ、例えば、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料等である。
また、集電体の形状は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等である。また、前記集電体の厚さは、通常、1μm以上、1mm以下である。
【0160】
[2-4.セパレータ]
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常セパレータを介在させる。この場合、非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知の材料を用いることができる。
【0161】
[2-5.電池設計]
前記正極、前記セパレータ、前記負極の順で積層させた電極群、又は前記積層させた電極群を渦巻き状に捲回させた電極群等、任意の電極群を用いることができる。電池内容積に対し、電極群の体積が占める割合は、通常40~90%以下である。
【0162】
前記積層構造の電極群は、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減する構造も好適に用いられる。前記捲回構造の電極群は、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0163】
また、保護素子として、過大電流等による発熱とともに抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)素子、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等を用いることができる。
【0164】
外装体は、公知の材料を用いることができ、本発明の効果を著しく損なわない限り、特に限定されない。前記外装体は、軽量化の観点から、アルミニウム若しくはアルミニウム合金の金属、又はラミネートフィルムを用いることが好ましい。また、前記外装体の形状は、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等を用いることができる。
【実施例0165】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。実施例および比較例で用いた化合物は以下の通り。
【0166】
【0167】
A3 トリエチルシラン(Et3SiH)
【0168】
【0169】
<実施例1>
[非水系電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート、及びエチルメチルカーボネートからなる混合溶媒(混合体積比30:70)に、電解質として十分に乾燥させたLiPF6を濃度1.0mol/Lで溶解させ、更に助剤としてモノフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ジフルオロリン酸リチウム、フルオロスルホン酸リチウム、及びリチウムビスフルオロスルホニルイミドを、電解液全量に対し、それぞれ0.5質量%(最終的に得られる、実施例1に係る非水系電解液全量を100質量%とした場合の、それぞれの含有量が0.5質量%ずつとなる量)加えたものを基準電解液とした。
更に、化合物A1を1.0質量%、及び化合物B1を、0.2質量%(最終的に得られる、実施例1に係る非水系電解液全量を100質量%とした場合の、化合物A1の含有量が1.0質量%、化合物B1の含有量が0.2質量%となる量)、助剤と同時に加えて、実施例1に係る非水系電解液を調製した。
【0170】
[正極の作製]
正極活物質として遷移金属酸化物(LiCoO2)97質量部と、導電材としてアセチレンブラック1.5質量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデン1.5質量部とを、N-メチルピロリドン溶媒中で、ディスパーザーで混合してスラリー化した。これを厚さ21μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして正極とした。
【0171】
[負極の作製]
負極活物質として天然黒鉛粉末、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)、及び結着剤としてスチレン・ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン・ブタジエンゴムの濃度50質量%)を用い、ディスパーザーで混合してスラリー化した。このスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布、乾燥した後、プレスして負極とした。なお、乾燥後の負極において、天然黒鉛:カルボキシメチルセルロースナトリウム:スチレン・ブタジエンゴム=98:1:1の質量比となるように作製した。
【0172】
[非水系電解液電池(パウチ型)の製造]
上記の正極、負極、及びポリプロピレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。
この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子が突設するように挿入した後、上記で得られた非水系電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、パウチ型電池を作製し、非水系電解液電池とした。
【0173】
<実施例2~7、比較例1~6>
実施例1において、表1に示す条件以外は、実施例1と同様に基準電解液を用いて非水系電解液電池を作製した。
【0174】
<非水系電解液電池の評価>
[試験前充放電と放電電力容量]
実施例及び比較例で得られた各非水系電解液電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.05Cに相当する定電流で4時間充電を行い、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。ここで、1Cとは電池の基準容量を1時間で放電する電流値を表し、0.5Cとはその1/2倍の電流値を、また0.2Cとはその1/5の電流値を表す。
次に0.1Cに相当する定電流で4.1Vまで充電し、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電し、更に0.2Cで4.1Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。その後、0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)した後、0.2Cの定電流で3.0Vまで放電した。その後、0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)した後、1.0Cの定電流で3.0Vまで放電した。
この時の1.0C放電時の電力容量を放電電力容量とした。結果を表1に示す。
なお、表1には比較例1の放電電力容量を100として規格化した相対値で表す。
その後、0.2Cで4.2Vまで定電流-定電圧充電(0.05Cカット)した。
【0175】
[電池電流遮断弁の誤作動抑制率]
下記の方法により過充電時発生ガス量と高温連続充電時発生ガス量を測定し、両者の差(過充電時発生ガス量から高温連続充電時発生ガス量を引いた値)を、電池電流遮断弁の誤作動抑制率とした。
電池電流遮断弁の誤作動抑制率が高いほど、過充電以外の原因によるガス発生の誤検知が少なく、適切に、過充電時のガス発生を検知することができ、電池電流遮断機構を適切に作動させることができるため、電池の信頼性に優れると判断できる。
結果を表1に示す。なお、表1には比較例1の電池電流遮断弁の誤作動抑制率を100として規格化した相対値で表す。
【0176】
(過充電時発生ガス量の測定)
試験前充放電が終わった各非水系電解液電池の体積をアルキメデスの原理を用いて測定した。その後、再びガラス板に挟んだ状態で45℃において0.5Cに相当する定電流で5.0Vまで充電した。その後ガラス板を外し、各非水系電解液電池の体積をアルキメデスの原理を用いて測定した。試験前後の体積変化を過充電時発生ガス量とした。
【0177】
(高温連続充電時発生ガス量の測定)
試験前充放電が終わった各非水系電解液電池の体積をアルキメデスの原理を用いて測定した。その後、再びガラス板に挟んだ状態で45℃において0.2Cで4.25Vまで定電流-定電圧充電(72時間カット)した。その後ガラス板を外し、各非水系電解液電池の体積をアルキメデスの原理を用いて測定した。試験前後の体積変化を高温連続充電時発生ガス量とした。
【0178】
【0179】
表1から、化合物A及び化合物Bを含む電解液を含有する実施例1~7の電池は、化合物A及び化合物Bを含まない電解液を含有する比較例1の電池、化合物A、化合物Bのうち、いずれかを含まない電解液を備える比較例2、3、4の電池と比較し、放電電力容量を改善させ、かつ電池電流遮断弁の誤作動抑制率を向上させることから、電池としての性能に優れることが分かる。