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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150962
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】扉体、及び、扉構造
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/18 20060101AFI20231005BHJP
   G21F 3/00 20060101ALI20231005BHJP
   G21F 1/02 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E06B5/18
G21F3/00 S
G21F1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060325
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】河西 勉
(72)【発明者】
【氏名】有光 紀彦
(57)【要約】
【課題】遮蔽欠損を生じることなく、簡易な構成でコストを抑制し、また、扉体のはらみを抑制することができる、扉体及び扉構造を提供する。
【解決手段】扉体20は、壁体Wの壁開口Waに設置され、表扉板21と、裏扉板22と、表扉板21と裏扉板22との間の扉内部空間に配置される複数の内側部材23と、表扉板21と裏扉板22とを連結する連結部材40と、を備え、複数の内側部材23は扉体20の上下方向、及び、左右方向に隣接して並び、内側部材23は、放射線遮蔽性を有する素材で形成され、連結部材40は、扉内部空間の内部で扉体20の厚さ方向に延びて、表扉板21と裏扉板22とを連結する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体の開口に設置される扉体であって、
表扉板と、裏扉板と、前記表扉板と前記裏扉板との間の扉内部空間に配置される複数の内側部材と、前記表扉板と前記裏扉板とを連結する連結部材と、を備え、
複数の前記内側部材は前記扉体の上下方向、及び/又は、左右方向に隣接して並び、
前記内側部材は、放射線遮蔽性を有する素材で形成され、
前記連結部材は、前記扉内部空間の内部で前記扉体の厚さ方向に延びて、前記表扉板と前記裏扉板とを連結する、扉体。
【請求項2】
複数個の前記連結部材を備える、請求項1に記載の扉体。
【請求項3】
前記連結部材は、前記扉体の中央部分近傍に配置される、請求項1又は請求項2に記載の扉体。
【請求項4】
複数枚の前記内側部材が前記扉体の厚さ方向に積層される、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の扉体。
【請求項5】
前記連結部材が積層された前記内側部材を貫通する、請求項4に記載の扉体。
【請求項6】
前記連結部材が筒状に形成され、
前記連結部材の内部に、前記内側部材と同じ素材が充填される、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の扉体。
【請求項7】
前記連結部材が段付の筒状に形成される、請求項6に記載の扉体。
【請求項8】
前記連結部材の端部が前記表扉板と前記裏扉板とに溶接される、請求項1から請求項7の何れか一項に記載の扉体。
【請求項9】
前記扉内部空間には、前記内側部材を支持するフレームが配置されない、請求項1から請求項8の何れか一項に記載の扉体。
【請求項10】
請求項1から請求項9の何れか一項に記載の扉体と、前記扉体を支持する支持装置と、を備える、扉構造。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、放射線の遮蔽機能を備える、扉体、及び、扉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放射線の遮蔽機能を備えた扉構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-115897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の扉構造において、放射線遮蔽材であるポリエチレンを扉本体に充填する構成が知られている。この構成において、扉本体の表裏の鋼板をつなぐ鋼製のフレームを扉本体の内部に設けることによりポリエチレンを支持した場合、フレーム部分が遮蔽欠損になるとともに、コスト増の要因になっていた。一方、扉本体からフレームを除外してポリエチレンを充填した場合、扉のはらみが発生しやすく、経年とともに開閉動作等に不具合が生じる可能性があった。そこで、本開示は、上記に関する課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る扉体は、壁体の開口に設置される扉体であって、表扉板と、裏扉板と、前記表扉板と前記裏扉板との間の扉内部空間に配置される複数の内側部材と、前記表扉板と前記裏扉板とを連結する連結部材と、を備え、複数の前記内側部材は前記扉体の上下方向、及び/又は、左右方向に隣接して並び、前記内側部材は、放射線遮蔽性を有する素材で形成され、前記連結部材は、前記扉内部空間の内部で前記扉体の厚さ方向に延びて、前記表扉板と前記裏扉板とを連結する。
【0006】
上記第1観点に係る扉体によれば、遮蔽欠損を生じることなく、簡易な構成でコストを抑制し、また、扉体のはらみを抑制することができる。
【0007】
上記第1観点に係る扉体において、内側部材の素材として、ポリエチレン、コンクリート、モルタル、パラジウム等を採用することが可能である。また、内側部材が遮蔽できる放射線としては、中性子線、アルファ線、ガンマ線、エックス線等が考えられる。
【0008】
本発明の第2観点に係る扉体は、上記第1観点に係る扉体であって、複数個の前記連結部材を備える。
【0009】
上記第2観点に係る扉体によれば、複数個の連結部材によって扉体の剛性を高めることができる。
【0010】
本発明の第3観点に係る扉体は、上記第1観点又は第2観点に係る扉体であって、前記連結部材は、前記扉体の中央部分近傍に配置される。
【0011】
上記第3観点に係る扉体によれば、扉体のはらみを低コストで効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明の第4観点に係る扉体は、上記第1観点から第3観点の何れか一に係る扉体であって、複数枚の前記内側部材が前記扉体の厚さ方向に積層される。
【0013】
上記第4観点に係る扉体によれば、内側部材を扉体に挿入する際の作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第5観点に係る扉体は、上記第4観点に係る扉体であって、前記連結部材が積層された前記内側部材を貫通する。
【0015】
上記第5観点に係る扉体によれば、内側部材を連結部材で支持することができる。
【0016】
本発明の第6観点に係る扉体は、上記第1観点から第5観点の何れか一に係る扉体であって、前記連結部材が筒状に形成され、前記連結部材の内部に、前記内側部材と同じ素材が充填される。
【0017】
上記第6観点に係る扉体によれば、連結部材において遮蔽欠損が生じることを抑制できる。
【0018】
本発明の第7観点に係る扉体は、上記第1観点から第6観点の何れか一に係る扉体であって、前記連結部材が段付の筒状に形成される。
【0019】
上記第7観点に係る扉体によれば、ラビリンス構造により連結部材における放射線遮蔽性を向上させることができる。
【0020】
本発明の第8観点に係る扉体は、上記第1観点から第7観点の何れか一に係る扉体であって、前記連結部材の端部が前記表扉板と前記裏扉板とに溶接される。
【0021】
上記第8観点に係る扉体によれば、扉体の剛性をより高めることができる。
【0022】
本発明の第9観点に係る扉体は、上記第1観点から第8観点の何れか一に係る扉体であって、前記扉内部空間には、前記内側部材を支持するフレームが配置されない。
【0023】
上記第9観点に係る扉体によれば、フレームレス構造とすることにより、扉体の製造コストを抑制することができる。
【0024】
本発明の第10観点に係る扉構造は、上記第1観点からから第9観点の何れか一に記載の扉体と、前記扉体を支持する支持装置と、を備える。
【0025】
上記第10観点に係る扉構造によれば、遮蔽欠損を生じることなく簡易な構成でコストを抑制し、また、扉体のはらみを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】一実施形態に係る扉構造を示す正面図。
図2】扉体を示す正面図。
図3図2中のX-X線断面図。
図4図2中のY-Y線断面図。
図5】連結部材を示す拡大断面図。
図6】連結部材を示す斜視図。
図7】放射線の遮蔽距離を示す断面図。
図8】(a)及び(b)はそれぞれ、第一変形例及び第二変形例に係る内側部材を示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
まず、図1を用いて、本発明に係る扉構造の一実施形態である扉10の全体構成について説明する。本実施形態においては、図1における右側を扉10の右側方とし、図1における紙面手前側を扉10の前方とする。図1に示す如く、本実施形態に係る扉10は、床面に立設された構造物の壁体Wに設けられる。
【0028】
図1に示す如く、壁体Wには矩形の壁開口Waが形成されている。壁開口Waの前側下部にはレール12が固定される。扉体20及びレール12は扉10の構成要素であり、レール12は扉体20を支持する支持装置である。本実施形態に係る扉10においては、レール12に沿って扉体20が左右にスライド変位することにより、壁開口Waが開閉される。
【0029】
扉体20は金属製部材を組み合わせて構成された、前後方向に厚みのある板状に形成されている。具体的に扉体20は、複数本のH型鋼やL型鋼等、様々な材種とサイズの鋼材により形成された扉フレームに、鋼板が組付けられて構成される。扉体20の前面には表扉板21、後面には裏扉板22がそれぞれ設けられる。
【0030】
扉体20の左下部には駆動ケース32が設けられる。駆動ケース32の内部には駆動輪33及び駆動装置である図示しないモータが収容される。一方、扉体20の右下部には従動ケース34が設けられる。従動ケース34の内部には従動輪35が収容される。駆動ケース32内のモータが駆動することにより駆動輪33が回転し、駆動輪33及び従動輪35がレール12の上を転動する。これにより、扉体20がレール12に沿って左右にスライド変位可能とされる。
【0031】
図1に示す如く、壁開口Waの前側上部にはガイドレール14が固定される。また、扉体20の上部には、二個のガイドローラ36・36が設けられる。それぞれのガイドローラ36は上下方向に向けた回動軸を中心に回動可能とされ、ガイドレール14の内側に収容される。ガイドレール14はガイドローラ36を前後方向から挟持することにより、扉体20の前後方向への変位を規制するとともに、左右方向へのスライド変位をガイドする。
【0032】
本実施形態に係る扉体20においては図1から図4に示す如く、表扉板21と裏扉板22との間の扉内部空間には、板状部材である複数の内側部材23・23・・・が扉体20の上下方向、及び、左右方向に隣接して並ぶように配置される。本実施形態においては、内側部材23の端部と、隣接する他の内側部材23の端部とには、互いに扉体20の厚さ方向に重複する重複部23a・23a・・・が形成される。
【0033】
図3及び図4に示す如く、本実施形態において内側部材23・23・・・は扉体20の厚さ方向である前後方向に三枚積層される。また、図1及び図2に示す如く、扉体20の正面視で内側部材23・23・・・は左右方向に四枚、上下方向に四枚が隣接されて配置される。即ち、本実施形態に係る扉体20の扉内部空間には、合計48枚の内側部材23・23・・・が収容されている。
【0034】
なお、内側部材23の隣接配置の態様は本実施形態に限定されるものではなく、扉体20の上下方向のみ又は左右方向のみに内側部材23を隣接させる構成とすることも可能である。また、内側部材23を積層せずに扉内部空間に一層のみで配置する構成としても差し支えない。
【0035】
扉体20において、内側部材23は放射線(本実施形態においては中性子線等)の遮蔽性を有するポリエチレン素材で形成されている。内側部材の素材としては、ポリエチレンの他に、コンクリート、モルタル、パラジウム等を採用することが可能である。また、内側部材が遮蔽できる放射線としては、中性子線、アルファ線、ガンマ線、エックス線等が考えられる。
【0036】
図1から図4に示す如く、扉体20は、表扉板21と裏扉板22とを連結する連結部材40を備える。連結部材40は、扉内部空間の内部で扉体20の厚さ方向に延びる略円筒形状の金属製ピンである。連結部材40は図5に示す如く、両端部が表扉板21と裏扉板22とのそれぞれに溶接されることにより表扉板21と裏扉板22とを連結する。
【0037】
図1及び図2に示す如く、本実施形態に係る扉体20において、表扉板21と裏扉板22とは計四本の連結部材40によって連結される。また、連結部材40は、扉体20の中央部分近傍の四箇所に配置される。具体的には図3及び図4に示す如く、扉体20の中央部分近傍で積層された内側部材23を貫通するように連結部材40が設けられる。
【0038】
図5及び図6に示す如く、本実施形態に係る連結部材40は段付の筒状に形成される。具体的には、大径筒41の中に小径筒42を挿入した状態で互いに溶接することにより、連結部材40を大径部分(大径筒41が外面に露出する部分)と小径部分(小径筒42が外面に露出する部分)とが形成された段付形状とすることができる。
【0039】
図5及び図6に示す如く、連結部材40の内部には、内側部材23と同じ素材であるポリエチレンが充填された充填部43が配置される。これにより、連結部材40においても放射線の遮蔽性を有することができる。換言すれば、扉体20における連結部材40が設けられた部分で遮蔽欠損が生じることを抑制できる。
【0040】
図5及び図6に示す如く、連結部材40には大径筒41の開口側端部を閉塞する大蓋部材44が固定される。大径筒41の端部には挿通孔41aが形成され、大蓋部材44のうち大径筒41に挿入される部分には蓋挿通孔44aが形成されている。そして、図6に示す如く挿通孔41aと蓋挿通孔44aに挿通ピン45を挿通することにより、大径筒41の端部が大蓋部材44により閉塞される。同様に、小径筒42の端部は小蓋部材46及び挿通ピン47により閉塞される。
【0041】
図5に示す如く、連結部材40の大径部分が挿通される内側部材23には、大径部分の外径に対応する内径の大径孔23bが形成されている。また、連結部材40の小径部分が挿通される内側部材23には、小径部分の外径に対応する内径を有する小径孔23cが形成されている。このように、連結部材40の大径部分と大径孔23b、小径部分と小径孔23cは所定の間隔になるように構成されている。
【0042】
上記の如く、本実施形態に係る扉体20は、連結部材40の外面を段付形状とするとともに、内側部材23の内面を連結部材40の外面と対応した段付形状としている。これにより、連結部材40が設けられる部分の正面視において、内側部材23と充填部43との間隔を小さくすることができる。即ち、連結部材40が設けられる部分において、放射線遮蔽性を有しない部分をラビリンス構造とすることにより、放射線遮蔽性を向上させることが可能となる。
【0043】
上記の如く、本実施形態に係る扉体20は、扉内部空間には内側部材23を支持するフレームが配置されない。このように、扉体20をフレームレス構造とすることにより、扉体20の製造コストを抑制することができる。また、扉体20にフレームが配置されないため、フレーム部分が遮蔽欠損になることがない。
【0044】
また、本実施形態に係る扉体20によれば、連結部材40により表扉板21と裏扉板22とを連結する構成としている。このように、簡易な構成により低コストで扉体20のはらみ(表扉板21と裏扉板22とが離間する方向に扉体20が膨らむこと)を抑制でき、経年による開閉動作等の不具合を抑制することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態に係る扉体20によれば、複数個(本実施形態においては四個)の連結部材40を設けることにより、扉体20の剛性を高めている。また、扉体20においては、はらみが生じやすい扉体20の中央部分近傍に連結部材40を配置することにより、扉体20のはらみを低コストで効果的に抑制している。
【0046】
また、本実施形態に係る扉体20によれば、複数枚の内側部材23が扉体20の厚さ方向に積層される。これにより、軽量の内側部材23を扉体20に一枚ずつ挿入できるため、扉体20の内部空間に内側部材23を挿入する際の作業性を向上させることができる。また、扉体20においては、連結部材40が積層された内側部材23を貫通する。これにより、積層された内側部材23を連結部材40で支持することができる。
【0047】
また、本実施形態に係る扉体20によれば、連結部材40が筒状に形成され、連結部材40の内部に、内側部材23と同じ素材による充填部43が形成される。これにより、連結部材40において遮蔽欠損が生じることを抑制できる。また、連結部材40が段付の筒状に形成されることにより、放射線遮蔽性を有しない部分をラビリンス構造として放射線遮蔽性を向上させることが可能となる。また、連結部材40の端部を表扉板21と裏扉板22とに溶接することにより、扉体20の剛性をより高める構成としている。
【0048】
本実施形態に係る扉体20においては、図1から図4に示す如く、内側部材23の端部と、上下方向又は左右方向に隣接する他の内側部材23の端部とには、互いに扉体20の厚さ方向に重複する重複部23aが形成される。具体的に、それぞれの内側部材23における重複部23aは、互いに面接触可能な同形状に形成される。そして、それぞれの重複部23aが重複した際には、図7に示す如く重複部23a・23aが互いに当接する。
【0049】
より詳細には、それぞれの内側部材23における重複部23aは、図3図4及び図7に示す如く、同方向に傾斜する斜面形状に形成される。本実施形態において、重複部23aの斜面形状は内側部材23の表面から45度傾斜する角度で形成されている。そして、それぞれの重複部23aが重複した際には、図7に示す如く内側部材23と隣接する他の内側部材23とのそれぞれの斜面形状が同一面で当接する。
【0050】
上記の如く、本実施形態に係る扉体20においては、互いに隣接する内側部材23の端部に、扉体20の厚さ方向に重複する重複部23aが形成されるため、扉体20の正面視で内側部材23・23の間に隙間が生じない。これにより、放射線が扉体20に対して直交する方向に放射された場合に放射線を遮蔽できる。即ち、扉体20における内側部材23・23の間からの放射線の漏洩を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態に係る扉体20においては、隣接する内側部材23・23の重複部23aは、互いに面接触可能な同形状に形成され、それぞれの重複部23a・23aが重複した際には、重複部23a・23aが互いに当接する。これにより、重複部23a・23aの間に隙間を生じ難くできるため、扉体20における内側部材23・23の間からの放射線の漏洩をより抑制することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る扉体20においては、隣接する内側部材23における重複部23a・23aが重複した際には、重複部23a・23aの斜面形状が同一面で当接する。これにより、隣接する内側部材23・23の間からの放射線の漏洩を効果的に抑制することができる。
【0053】
具体的に、厚さTの内側部材23を三枚積層した実施例について説明する。図7に示す如く、裏扉板22側の内側部材23・23における重複部23a・23aに隙間が生じた場合、その隙間を放射線Rが通過した場合でも、他の二枚の内側部材23・23において少なくとも2√2Tの遮蔽長さを確保することができる。
【0054】
即ち、三枚の内側部材23に対して直交方向に放射線Rが放射された場合の遮蔽長さ3Tと同程度の遮蔽長さを確保することができる。このように、重複部23a・23aを斜面形状とすることにより、一部の内側部材23・23の間を放射線Rが通過した場合に、他の内側部材23・23による放射線Rの遮蔽長さを長くすることが可能となるのである。
【0055】
なお、隣接する内側部材に形成する重複部は、本実施形態の形状に限定されるものではない。例えば、図8(a)に示す第一変形例の如く、隣接する内側部材123・123における重複部123a・123aを、互い違いに傾斜する傾斜面として形成することも可能である。また、図8(b)に示す第二変形例の如く、隣接する内側部材223・223における重複部223a・223aを、互いに噛み合う段差形状として形成することも可能である。
【0056】
図8(b)に示す第二変形例の場合、厚さ方向に隣接する内側部材223同士で重複部223aをずらして配置している。これにより、一部の内側部材223・223の間を放射線Rが通過した場合でも、他の内側部材223・223によって放射線Rを遮蔽できるように構成している。
【0057】
上記の各変形例のような重複部の形状であっても、互いに面接触可能な同形状に形成されているため、それぞれの重複部が重複した際には、重複部が互いに当接する。即ち、重複部の間に隙間を生じ難くできるため、扉体における内側部材の間からの放射線の漏洩を抑制することができる。
【0058】
本実施形態に係る扉体20において、図3及び図4に示す如く、積層される内側部材23の重複部23aは、扉体20の正面視で同じ位置に、扉体20の奥行方向に重なって配置される。また、本実施形態に係る扉体20において、図1及び図2に示す如く、上下方向及び左右方向に互いに隣接する内側部材23の重複部23aは、扉体20の正面視で同じ高さ位置、及び、同じ水平位置に配置される。上記の如く構成することにより、内側部材23を共通化することができるため、扉体20の製造コストを抑制することができる。
【0059】
[他の変形例]
上記実施形態は、以下の変形例に示すように適宜変形が可能である。なお、各変形例は、矛盾が生じない範囲で他の変形例と組み合わせて適用されてもよい。
【0060】
本実施形態に係る扉10は、壁体Wに形成された開口部において扉体20を左右にスライド変位させて開閉するように構成されているが、本発明に係る大型扉は本実施形態に限定されるものではない。即ち、壁体Wに開口された壁開口Waを、上下方向に変位する扉体20で開閉する構成とすることも可能である。また、水平面に開口された壁開口Waを、水平方向又は上下方向に変位する扉体20で開閉するハッチタイプの構成とすることも可能である。
【0061】
本実施形態に係る扉10は、壁開口Waの下側に設けたレール12で扉体20を支持す構成としたが、扉体20の上部に車輪を設け、壁開口Waの上側に設けたレールで扉体20を支持する構成とすることも可能である。また、扉体20をチェーン等の吊下部材で吊下げることにより、扉体20を支持する構成とすることも可能である。また、本実施形態に係る扉10において、扉体20は駆動装置としてモータを採用したが、扉体20の駆動装置として、電動以外に油圧機構等の他の構成を採用することも可能である。
【0062】
扉体20において、連結部材40の個数は限定されるものではなく、1個又は4個以外の複数個をすることが可能である。また、連結部材40の配置態様を本実施形態と異なる構成とすることも可能である。
【0063】
また、扉体20において、連結部材40が内側部材23を貫通せず、内側部材23の間に連結部材40が挿通される構成とすることも可能である。また、連結部材40の形状は本実施形態に限定されるものではなく、段付形状ではない円柱形状、角柱形状等、他の形状とすることも可能である。また、扉体20において、連結部材40が表扉板21と裏扉板22とを連結する構成は溶接に限定されず、ボルト止め等の構成を採用することも可能である。
【0064】
また、扉体20において、内側部材23に形成される重複部の形状は、本実施形態又は各変形例と異なるものとすることが可能である。例えば、互いに突き合わせられる半円筒形状、波形状、山形(谷型)形状等、様々な形状を採用することが可能である。
【0065】
また、扉体20において、内側部材23に形成される重複部の配置構成は、扉体20の厚さ方向に異なる位置とすることも可能である。また、扉体20の正面視で異なる高さ位置又は異なる水平位置とすることも可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 扉構造 12 レール(支持装置)
14 ガイドレール 20 扉体
21 表扉板 21a 表開口部
22 裏扉板 22a 表開口部
23 内側部材(第一実施例)
23a 重複部 23b 大径孔
23c 小径孔
32 駆動ケース 33 駆動輪
34 従動ケース 35 従動輪
36 ガイドローラ
40 連結部材 41 大径筒
41a 挿通孔 42 小径筒
43 充填部 44 大蓋部材
44a 蓋挿通孔 45 挿通ピン
46 小蓋部材 47 挿通ピン
123 内側部材(第二実施例)
123a 重複部
223 内側部材(第三実施例)
223a 重複部
W 壁体 Wa 壁開口(開口)
R 放射線 T 厚さ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8