(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150968
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】シュガーレス冷菓
(51)【国際特許分類】
A23G 9/38 20060101AFI20231005BHJP
A23G 9/34 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A23G9/38
A23G9/34
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060333
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-18
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】一政 洋子
(72)【発明者】
【氏名】横田 善廣
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅規
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 純子
(72)【発明者】
【氏名】河又 由子
(72)【発明者】
【氏名】坂口 正和
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 駿
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GK03
4B014GL03
4B014GL08
4B014GL09
4B014GL10
(57)【要約】
【課題】ボディ感に優れ、かつ、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味が抑えられたシュガーレスの冷菓の提供。
【解決手段】アイスミックスと、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料と、ゼラチンと、を含む、冷菓であって、前記ゼラチンの量が、前記冷菓を基準として、0.3~1.6質量%であり、前記冷菓に含まれる糖類の量が、前記冷菓を基準として、0.5質量%未満である、冷菓。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイスミックスと、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料と、ゼラチンと、を含む、冷菓であって、
前記ゼラチンの量が、前記冷菓を基準として、0.3~1.6質量%であり、
前記冷菓に含まれる糖類の量が、前記冷菓を基準として、0.5質量%未満である、冷菓。
【請求項2】
前記ゼラチンの量が、前記冷菓を基準として、0.3~1.2質量%である、請求項1に記載の冷菓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュガーレス冷菓に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康意識やダイエット意識の高まりから、低カロリーやカロリーゼロ、砂糖不使用などといった商品が数多く開発されている。これらの商品には、砂糖の代わりの甘味料として体内で消化吸収されにくい糖アルコールや、砂糖の数十~数百倍もの甘味を発現できる高甘味度甘味料が用いられている。
【0003】
シュガーレス食品では、糖類の代わりに糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料が使用されることが多いが、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味が問題となることがある。また、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料に限らず、アイスミックス由来の不快な風味が問題となることもある。このような不快な風味を改善する方法として、マスキング剤を使用して、不快な風味をマスキングする方法が知られている。例えば、特許文献1には、風味物質を含有する飲食品の風味を改善するためにゼラチンを添加する方法が開示されている。特許文献1では、ゼラチン量が多くなるとゼラチン臭が強くなるなどの問題が生じるため、ゼラチン量を飲食品の0.2重量%以下に抑えることが教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料を含む冷菓では、上述のとおり、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味が問題となることがある。また、シュガーレスの冷菓では、冷菓本来のボディ感が出にくいという問題も存在する。さらに、ボディ感が無い又は弱い冷菓では、香料による着香の悪さやコクの出づらさも問題となる。
【0006】
そのため、本発明は、ボディ感に優れ、かつ、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味が抑えられたシュガーレスの冷菓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討した結果、ゼラチンを所定の量で使用することによって、シュガーレスの冷菓のボディ感を向上させ、かつ、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味を抑制できることを見出した。
【0008】
本発明は以下の実施形態を含む。
[1]
アイスミックスと、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料と、ゼラチンと、を含む、冷菓であって、
前記ゼラチンの量が、前記冷菓を基準として、0.3~1.6質量%であり、
前記冷菓に含まれる糖類の量が、前記冷菓を基準として、0.5質量%未満である、冷菓。
[2]
前記ゼラチンの量が、前記冷菓を基準として、0.3~1.2質量%である、[1]に記載の冷菓。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボディ感に優れ、かつ、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味が抑えられたシュガーレスの冷菓を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
本発明の一実施形態は、アイスミックスと、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料と、ゼラチンと、を含む、冷菓であって、前記ゼラチンの量が、前記冷菓を基準として、0.3~1.6質量%であり、前記冷菓に含まれる糖類の量が、前記冷菓を基準として、0.5質量%未満である、冷菓に関する。
【0012】
本実施形態に係る冷菓では、所定の量のゼラチンを含むことによって、ボディ感を向上させ、かつ、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味を抑制することができる。
【0013】
本明細書における冷菓の「ボディ感」とは、冷菓の組織の緻密さ、充実さ、濃厚さ、及び滑らかさに基づく総合的な感覚を意味する。「ボディ感」は、冷菓の分野において一般的に使用されている表現である。
【0014】
本明細書における糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の「不快な後味」とは、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の種類に応じて異なるが、例えば不快な甘さが挙げられる。なお、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味を抑制できる理由としては、ゼラチンを配合して冷菓の口どけを少し遅らせることによって、ラストの好まれない甘さをうまくマスキングし、後に残る不快な甘さが出にくくなっていることが想定されるが、本発明は前記想定理由によって何ら限定されるものではない。
【0015】
本明細書において「甘味料」は、糖類、糖アルコール、及び高甘味度甘味料に分類される。
【0016】
本明細書における「糖類」としては、例えば、アラビノース、ガラクトース、キシロース、ブドウ糖、プシコース、ソルボース、タガトース、果糖、マンノース、ラムノース、リボース、異性化液糖などの単糖類;砂糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、トレハルロース、セロビオース、ニゲロース、パラチノース、メリビオース、ラクツロースなどの二糖類;イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、ラフィノース、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖などのオリゴ糖類;単糖類、二糖類、デキストリンなどの混合物である水飴;などが挙げられる。
【0017】
本明細書における「糖アルコール」としては、例えば、イソマルチトール、エリスリトール、キシリトール、グリセロール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、ラクチトール、還元パラチノース、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元麦芽糖水飴、還元水飴などが挙げられる。
【0018】
本明細書における「高甘味度甘味料」としては、例えば、アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、アドバンテーム、アセスルファムカリウム、アリテーム、ネオテーム、ステビア、酵素処理ステビア、カンゾウ抽出物(グリチルリチン)、サッカリン、スクラロース、ソーマチン、ラカンカ抽出物などが挙げられる。
【0019】
本明細書における「シュガーレス」とは、冷菓に含まれる糖類の量が、冷菓を基準として、0.5質量%未満であることを意味する。特に限定するものではないが、冷菓に含まれる砂糖、異性化液糖、及びブドウ糖の量が、冷菓を基準として、0.5質量%未満であることが好ましい。
【0020】
本明細書における「冷菓」は、アイスクリーム類、氷菓等の冷凍下で保管する菓子であり、プリン等のチルド温度帯で保管する菓子は含まない。
アイスクリーム類には、アイスクリーム、アイスミルク、及びラクトアイスが包含される。本明細書における「アイスクリーム類」、「アイスクリーム」、「アイスミルク」、及び「ラクトアイス」は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(平成30年8月8日厚生労働省令第106号)における定めに従う。
【0021】
具体的には、アイスクリーム類は、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであつて、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く。)である。
アイスクリームは、乳固形分が15.0%以上であって、乳脂肪分が8.0%以上のものである。
アイスミルクは、乳固形分が10.0%以上であって、乳脂肪分が3.0%以上のもの(アイスクリームを除く。)である。
ラクトアイスは、乳固形分が3.0%以上のもの(アイスクリーム及びアイスミルクを除く。)である。
【0022】
氷菓は、糖液若しくはこれに他の食品を混和した液体を凍結したもの、又は、食用氷を粉砕し、これに糖液若しくは他の食品を混和し再凍結したものであって、凍結状のまま食用に供されるものである。
【0023】
[アイスミックス]
本実施形態に係る冷菓は、アイスミックスを含む。アイスミックスの種類は特に限定されないが、糖類を含まないことが好ましい。アイスミックスの成分は、冷菓の種類に応じて変更されるが、例えば、油脂、(乳たんぱくやバターなどの、乳糖が含まれない又は乳糖を除去した)乳製品、乳化剤、安定剤、香料、着色料、酸味料、pH調整剤、水、卵、及び塩、並びにカカオや抹茶等の風味を呈する副原料を挙げることができる。
【0024】
アイスミックスの量は、冷菓の質量を基準として、例えば、70~95質量%、75~90質量%、又は80~90質量%とすることができる。
【0025】
[糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料]
本実施形態に係る冷菓は、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料を含む。糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料を使用することにより、糖類の使用を抑え、冷菓のカロリーを低減することができる。糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の種類は特に限定されず、食用に適したものであればよい。糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の具体例については上述したとおりである。特に限定するものではないが、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料が、還元水飴、ラクチトール、マルチトール、アスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、及びスクラロースからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0026】
糖アルコールの量は、冷菓の質量を基準として、例えば、5~30質量%、10~25質量%、又は10~20質量%とすることができる。高甘味度甘味料の量は、冷菓の質量を基準として、例えば、0.001~1.0質量%、0.005~0.5質量%、0.01~0.2質量%とすることができる。
【0027】
[ゼラチン]
本実施形態に係る冷菓は、ゼラチンを含む。ゼラチンを使用することにより、シュガーレスの冷菓のボディ感を向上させ、かつ、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味を抑制することができる。ゼラチンの種類は特に限定されず、食用に適したものであればよい。ゼラチンとしては、例えば、牛骨由来、牛皮由来、豚皮由来、又は魚鱗由来のゼラチンが挙げられる。
【0028】
ゼラチンの量は、冷菓の質量を基準として、0.3~1.6質量%であり、好ましくは0.3~1.2質量%であり、より好ましくは0.4~1.2質量%であり、更に好ましくは0.5~1.2質量%である。ゼラチンをこのような量で使用することにより、ボディ感を更に向上させ、かつ、糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の不快な後味を更に抑制することができる。また、ゼラチンをこのような量で使用することにより、くちどけ、コク、余韻、アイス表面の光沢、及び鋭い甘味質の抑制を向上させることができる。
【実施例0029】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0030】
<冷菓の製造>
表1に記載の成分を混合し、フリージングして、各種の冷菓を製造した。なお、糖アルコールとしては還元水飴、ラクチトール、及びマルチトールを使用し、高甘味度甘味料としてはアスパルテーム・L-フェニルアラニン化合物、及びスクラロースを使用した。
【表1】
【0031】
<冷菓の評価>
-18℃に温調した実施例及び比較例の冷菓を試食し、評価を行った。評価項目は、ボディ感とその他とに大別した。具体的には、ボディ感の要素として、組織の緻密さ、充実さ、濃厚さ、及び滑らかさ、について評価を行い、その他の要素として、くちどけ、コク、後味、余韻、アイス表面の光沢、及び鋭い甘味質の抑制、について評価を行った。各項目の判定基準及び合格基準は以下のとおりである。評価結果は表2に示す。
【0032】
[ボディ感]
(組織の緻密さ)
判定基準
3:組織が緻密である
2:組織の緻密さがややない
1:組織の緻密さがない
合格基準
「3」が合格
【0033】
(充実さ)
判定基準
3:充実さがしっかり感じられる
2:充実さが感じられる
1:充実さが感じられない
合格基準
「3」又は「2」が合格
【0034】
(濃厚さ)
判定基準
3:濃厚さが感じられる
2:濃厚さがやや感じられる
1:濃厚さが感じられない
合格基準
「3」又は「2」が合格
【0035】
(滑らかさ)
判定基準
3:とてもきめが細かく滑らか
2:ある程度の滑らかさがある
1:滑らかさにかける
合格基準
「3」が合格
【0036】
(ボディ感の総合評価)
判定基準
3:滑らかでアイスとしてちょうどよいボディ感がある
2:ボディ感が弱い
1:ボディ感が全くない
合格基準
「3」が合格
【0037】
[その他]
(くちどけ)
判定基準
3:くちどけが良い
2:くちどけがやや良い
1:くちどけが悪い
合格基準
「3」又は「2」が合格
【0038】
(コク)
判定基準
3:コクがある
2:コクがややある
1:コクがない
合格基準
「3」が合格
【0039】
(後味)
判定基準
3:後味がすっきりしており糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の好まれない甘さが残らない
2:糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の好まれない甘さが感じる程度に後に残る
1:糖アルコール及び/又は高甘味度甘味料の甘ったるい甘さが後に残る
合格基準
「3」又は「2」が合格
【0040】
(余韻)
判定基準
3:後味に乳の風味がしばらく残り、溶けた後の余韻を楽しめる
2:後味に乳の風味が若干残る
1:アイスが溶けるのと同時に風味もさっとなくなりもの足りない
合格基準
「3」又は「2」が合格
【0041】
(アイス表面の光沢)
判定基準
3:きめが細かく、表面がとても滑らかでつやがある
2:表面はきれいだが、つやが出るほどではない
1:きめの細かさが感じられない
合格基準
「3」が合格
【0042】
(鋭い甘味質の抑制)
判定基準
3:好まれない鋭い甘味質が抑えられ、自然な甘味質に感じる
2:好まれない鋭い甘味質がやや抑えられている
1:鋭い甘味質がそのまま残っている
合格基準
「3」又は「2」が合格
【0043】