IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特開2023-150970信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム
<>
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図1
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図2
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図3
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図4
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図5
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図6
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図7
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図8
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図9
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図10
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図11
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図12
  • 特開-信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150970
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/08 20090101AFI20231005BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20231005BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20231005BHJP
【FI】
H04W24/08
H04W16/28 130
H04W24/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060335
(22)【出願日】2022-03-31
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目3 端末拡張型無線通信システム構築・制御技術 副題:Beyond5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】相原 直紀
(72)【発明者】
【氏名】伊神 皓生
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067DD44
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】UEの移動速度を見積もることで適切なAPクラスタ形成をすることに関連した信号処理装置等を提供する。
【解決手段】オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)仕様に則して、信号処理装置(O-DU)及び第2制御装置(Near-RT RIC)並びに複数のアクセスポイント(AP)及びユーザ端末(UE)を含むネットワークにおける信号処理装置であって、前記第2制御装置において、前記UEの移動速度を考慮したうえで、前記UEごとにAPクラスタを形成可能にするための情報として、前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を、前記信号処理装置から前記第2制御装置へと送信する処理を行う。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)仕様に則して、信号処理装置(O-DU)及び第2制御装置(Near-RT RIC)並びに複数のアクセスポイント(AP)及びユーザ端末(UE)を含むネットワークにおける信号処理装置であって、
前記第2制御装置において、前記UEの移動速度を考慮したうえで、前記UEごとにAPクラスタを形成可能にするための情報として、
前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を、前記信号処理装置から前記第2制御装置へと送信する処理を行うことを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記RSRP差分の情報を前記信号処理装置から前記第2制御装置へと送信する処理は定期的に実行されるものであり、
前記RSRP差分の情報は、当該定期的に送信する各回のうち、隣接する回での差分として取得されるものであることを特徴とする信号処理装置。
【請求項3】
オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)仕様に則して、信号処理装置(O-DU)及び第2制御装置(Near-RT RIC)並びに複数のアクセスポイント(AP)及びユーザ端末(UE)を含むネットワークにおける第2制御装置であって、
前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を、前記信号処理装置より定期的に受信し、
当該定期的に受信したRSRP差分の情報に基づいて、APクラスタを区別した複数データベースとして管理し、
当該区別された複数データベースのうち、前記信号処理装置から受信する各UEについてのAPクラスタごとのRSRP差分が該当するデータベースを参照することにより、各UEについて再形成するAPクラスタを得ることを特徴とする第2制御装置。
【請求項4】
前記RSRP差分の情報を前記信号処理装置から前記第2制御装置へと送信する処理は定期的に実行されるものであり、
前記RSRP差分の情報は、当該定期的に送信する各回のうち、隣接する回での差分として取得されるものであることを特徴とする請求項3に記載の第2制御装置。
【請求項5】
オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)仕様に則して、信号処理装置(O-DU)及び第2制御装置(Near-RT RIC)並びに複数のアクセスポイント(AP)及びユーザ端末(UE)を含むネットワークにおける信号処理装置が実行する方法であって、
前記第2制御装置において、前記UEの移動速度を考慮したうえで、前記UEごとにAPクラスタを形成可能にするための情報として、
前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を、前記信号処理装置から前記第2制御装置へと送信する処理を行うことを特徴とする方法。
【請求項6】
オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)仕様に則して、信号処理装置(O-DU)及び第2制御装置(Near-RT RIC)並びに複数のアクセスポイント(AP)及びユーザ端末(UE)を含むネットワークにおける第2制御装置が実行する方法であって、
前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を、前記信号処理装置より定期的に受信し、
当該定期的に受信したRSRP差分の情報に基づいて、APクラスタを区別した複数データベースとして管理し、
当該区別された複数データベースのうち、前記信号処理装置から受信する各UEについてのAPクラスタごとのRSRP差分が該当するデータベースを参照することにより、各UEについて再形成するAPクラスタを得ることを特徴とする方法。
【請求項7】
オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)仕様に則して、信号処理装置(O-DU)及び第2制御装置(Near-RT RIC)並びに複数のアクセスポイント(AP)及びユーザ端末(UE)を含むネットワークにおける信号処理装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記第2制御装置において、前記UEの移動速度を考慮したうえで、前記UEごとにAPクラスタを形成可能にするための情報として、
前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を、前記信号処理装置から前記第2制御装置へと送信する処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)仕様に則して、信号処理装置(O-DU)及び第2制御装置(Near-RT RIC)並びに複数のアクセスポイント(AP)及びユーザ端末(UE)を含むネットワークにおける第2制御装置としてとしてコンピュータを機能させるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を、前記信号処理装置より定期的に受信し、
当該定期的に受信したRSRP差分の情報に基づいて、APクラスタを区別した複数データベースとして管理し、
当該区別された複数データベースのうち、前記信号処理装置から受信する各UEについてのAPクラスタごとのRSRP差分が該当するデータベースを参照することにより、各UEについて再形成するAPクラスタを得る処理を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、O-RAN仕様に則したネットワークにおける信号処理装置、第2制御装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
5G(第5世代移動通信システム)のMassive MIMO(Massive Multi Input Multi Output、マッシブマイモ)では、1つのRU(Raidio Unit、基地局無線機)上の複数のアレイアンテナにより、ビームを形成し、UE(User equipment、ユーザ端末)とRUが1体1で通信する。これに対する「Beyond 5G」技術として、ユーザセントリックRAN(Radio Access Network、無線アクセスネットワーク)では、分散配置された複数のAP(Access Point、アクセスポイント)を用いて、UE(User equipment、ユーザ端末)との送受信を行い、CPU(Central processing unit、信号処理装置)で集中的に信号処理する、CF-mMIMO(Cell-free Massive MIMO、セルフリーマッシブマイモ)を用いる。このCF-mMIMO技術については例えば非特許文献1に記載されている。
【0003】
図1は、5GのMassive MIMO技術と「Beyond 5G」のCF-mMIMO技術とを対比で示す模式図である。例EX10として示すように、前者についてはUEとRUの接続が例えばUE#1-RU#1のように1対1のみであるのに対し、例EX20として示すように、後者についてはUEとAPの接続が例えばUE#1:AP#1,2のように、UEが複数のAPに接続することができる。
【0004】
また、O-RAN(Open Radio Access Network)アライアンス(O-RAN Alliance)によって、5G等の次世代の無線アクセスネットワークのオープン化及びインテリジェント化が検討されている(例えば、非特許文献2参照)。O-RANアライアンスが策定するO-RAN仕様のうち、非特許文献2には、「Massive MIMO」技術に用いられるパラメータ情報等に関するインターフェースが規定されている。この非特許文献2には、「Non-RT RIC」(Non-Real Time RAN Intelligent Controller、非リアルタイムRANインテリジェントコントローラー)や「Near-RT RIC」(Near-Real Time RAN Intelligent Controller、ニアリアルタイムRANインテリジェントコントローラー)」などを用いて「Massive MIMO」のパラメータ情報をO-DU(O-RAN Distributed Unit、分散ユニット)へ指示するための制御方法やインターフェースなどが記載されている。
【0005】
「Non-RT RIC」は、1秒以上の周期で制御を行うコントローラーである。「Near-RT RIC」は、10ミリ秒から1秒くらいの周期で制御を行うコントローラーである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Scalable Cell-Free Massive MIMO Systems", IEEE Transactions on Communications, Volume 68, Issue 7, July 2020
【非特許文献2】O-RAN WG1、"Use Cases Detailed Specification"、v06.00.02
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
CF-mMIMOについては以下のように種々の検討点が存在する。
【0008】
(1) APクラスタの形成に関して
CF-mMIMOの広域の展開を考えると、UEがすべてのAPを利用して通信を行うのは、信号処理に係る計算負荷が増大し、スケーラビリティの面で課題がある。この解決に向けて、UEと信号の送受信を行う、必要最低限のAP群であるAPクラスタをUEごとに形成する必要がある。
【0009】
(2) APクラスタの再形成に関して
UEが移動すると、UEとAPの位置関係の変化により、UE-AP間のSINR(Signal to Noise Interference. Ratio、信号対雑音干渉比)が変化するので、CF-mMIMOで得られるAPクラスタでのUEのSINRが変化する。そのため、UEが移動したときでも、UEが必要とするSINRを確保できるように、APクラスタを再形成する必要がある。
【0010】
図2は、SINR等が変化することの模式図であり、異なるエリアA1,A2等に見て取ることができる通り、エリアによってAPやUEの分布は異なるため、適切にAPクラスタを形成する必要がある。また、同じUEでも時刻t1から時刻t2までの間で移動するとエリアも変わるため、UEの移動によりUEから各APまでの位置関係が変化し、APクラスタを形成後であっても、適切にAPクラスタを再形成する必要がある。
【0011】
APクラスタの形成や再形成に関して、既存技術では以下(1)~(4)のような個別の問題がある。
【0012】
(1) ルール設定の困難さ
非特許文献で1は、RSRP(Reference Signal Received Power、基準信号受信電力)などの収集した無線情報を用いて、ルールベースにAPクラスタを形成する手法が提案されている。UEが必要とする無線品質を満たしつつ、UEやAPの位置関係の変化によるSINRの変化すべてに対応するには、考慮するパターンが多岐にわたるため、全てのルールを作るのは困難である。
【0013】
(2) 計算量の増大
非特許文献2では、RSRPやチャネル情報などの収集した無線情報を用いて、無線品質に関する最適化問題によりAPクラスタを決定する手法が提案されている。UEの必要なSINRを確保できるAPクラスタを探索するには、各APに対して、UEが利用するかを決定する必要があるため、2L (LはAP数)通りの組み合わせを比較する必要があるため、RANの信号処理で一般的に用いられる、汎用の計算機ではAPクラスタを探索する計算時間が長くなり、UEの移動に対応してAPクラスタを形成し続けることができない恐れがある。
【0014】
(3) 既存技術では、UEの移動速度を見積もることで適切なAPクラスタ形成をすることは考慮されていなかった。
【0015】
(4) 既存技術では、適切なAPクラスタを形成するために参照するデータベースサイズを適切な範囲に保つことで、計算量を妥当な範囲に保ってAPクラスタを形成するようにすることは考慮されていなかった。
【0016】
本発明は、従来技術における上記(3)の課題に鑑み、UEの移動速度を見積もることで適切なAPクラスタ形成をすることに関連した信号処理装置(O-DU)、第2制御装置(Near-RT RIC)、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)仕様に則して、信号処理装置(O-DU)及び第2制御装置(Near-RT RIC)並びに複数のアクセスポイント(AP)及びユーザ端末(UE)を含むネットワークにおける信号処理装置であって、前記第2制御装置において、前記UEの移動速度を考慮したうえで、前記UEごとにAPクラスタを形成可能にするための情報として、前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を、前記信号処理装置から前記第2制御装置へと送信する処理を行うことを特徴とする。
また、本発明は、オープン無線アクセスネットワーク(O-RAN)仕様に則して、信号処理装置(O-DU)及び第2制御装置(Near-RT RIC)並びに複数のアクセスポイント(AP)及びユーザ端末(UE)を含むネットワークにおける第2制御装置であって、前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を、前記信号処理装置より定期的に受信し、当該定期的に受信したRSRP差分の情報に基づいて、APクラスタを区別した複数データベースとして管理し、
当該区別された複数データベースのうち、前記信号処理装置から受信する各UEについてのAPクラスタごとのRSRP差分が該当するデータベースを参照することにより、各UEについて再形成するAPクラスタを得ることを特徴とする。
また、本発明は、前記信号処理装置及び前記第2制御装置に対応する方法及びプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記UEごとに形成されるAPクラスタに関して、当該APクラスタごとの基準信号受信電力(RSRP)差分の情報を活用することにより、UEの移動速度を見積もることで適切なAPクラスタ形成をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】5GのMassive MIMO技術と「Beyond 5G」のCF-mMIMO技術とを対比で示す模式図である。
図2】SINR等が変化することの模式図である。
図3】一実施形態に係る無線アクセスネットワークの構成例を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係る通信制御システムの構成例を示すブロック図である。
図5】一実施形態に係る通信制御システムの機能ブロック図である。
図6】一実施形態に係る通信制御システムの動作のフローチャートとして、一実施形態に係る通信制御方法を示す図である。
図7図5,6で形式的に説明した、第2制御部(「Near-RT RIC」)の各部の処理内容の説明図である。
図8】一実施形態に係る、E2インターフェースによるSINR分布情報収集の手順を示す図である。
図9】本実施形態によるSINR分布情報収集のフォーマット例を示す図である。
図10】一実施形態に係る、E2インターフェースによるRSRP情報収集の手順を示す図である。
図11】第1実施形態においてRSRP差分情報を利用するための追加処理を設けることで実現される第2実施形態を説明する図である。
図12】一実施形態に係る、A1インターフェースによるDB形成ポリシー変更のための制御情報の利用手順を示す図である。
図13図12のステップS123の詳細を示すフローチャートであり、図5の再計算部の処理内容の詳細を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図3は、一実施形態に係る無線アクセスネットワークの構成例を示すブロック図である。図3に示される無線アクセスネットワーク(RAN)1は、O-RAN仕様が適用される。
【0021】
RAN1において、複数のアクセスポイント(AP)2(AP#1,AP#2,…)が分散配置される。RAN1において分散配置された複数のAP2の中から、ユーザ端末(UE)毎に無線信号を送受信するAPクラスタ(アクセスポイント群)が形成される。図1の例では、例えばUE#1に対して、2台のAP2(AP#1,AP#2)からAPクラスタが形成される。UE#2等のその他のUEについても同様に、各UEに応じたAPクラスタが形成される。(当該形成されることは前述した図1の模式例と同様である。)
【0022】
ただし、図3の例は、ある特定の1時刻(瞬間)についてUEごとに形成される特定のAPクラスタの例であり、前述した図2の模式例でも示したように、時間進行に伴いUE等が移動することで、本実施形態のRAN1によって構成されるAPクラスタ群も時々刻々と動的に変化することとなる。
【0023】
あるUEのAPクラスタの各AP2は、自己のアンテナ3により、当該UEとの間で無線信号を送受信する。例えばUE#1のアクセスポイント群の2台のAP2(AP#1,AP#2)が、それぞれのアンテナ3によりUE#1との間で無線信号を送受信する。
【0024】
各APクラスタは、自己を受け持つO-DU(分散ユニット)6に通信接続される。O-DU6は、自己が受け持つAPクラスタに関する信号処理を実行する。図3の例では、例えばO-DU#1は、UE#3のAPクラスタ(AP#4,AP#5,AP#6)に関する信号処理を実行する。その他のO-DU#2等も同様に、各自が受け持つAPクラスタに関する信号処理を実行する。
【0025】
O-DU6が実行するアクセスポイント群に関する信号処理は、例えばSU-MIMO(Single User MIMO、シングルユーザMIMO)やMU-MIMO(Multi-User MIMO、マルチユーザMIMO)等の信号処理である。
【0026】
O-DU#1は、セントラルサイト(Central site)4に設けられており、コアネットワークCNWに接続される。O-DU#2は、エッジサイト(Edge site)#1_5(ここで、識別番号#1と参照符号5とを区別するための区切りとしてアンダーバーを用いており、以下同様とする。)に設けられており、セントラルサイト4を介してコアネットワークCNWに接続される。エッジサイト#1_5には、MEC(Multi-access Edge Computing、マルチアクセスエッジコンピューティング)サーバ7が設けられる。O-DU#3は、エッジサイト#2_5に設けられている。エッジサイト#2_5には、MECサーバ7が設けられる。
【0027】
通信制御システム10は、各サイト4,5に通信接続する。通信制御システム10は、各O-DU6に対する制御を行う。通信制御システム10は、UEに対応するAPクラスタを形成するための情報をO-DU6へ提供する。O-DU6は、通信制御システム10から提供された情報に基づいて、自己が受け持つUEに対応するAPクラスタを形成する。
【0028】
図4は、一実施形態に係る通信制御システム10の構成例を示すブロック図である。通信制御システム10は、「Non-RT RIC(非リアルタイムRANインテリジェントコントローラー)」11と、「Near-RT RIC(ニアリアルタイムRANインテリジェントコントローラー)」12とを備える。「Non-RT RIC」11は、SMO(Service and Management Orchestration)フレームワークを用いて実現される。
【0029】
「Non-RT RIC」11及び「Near-RT RIC」12は、O1インターフェースを介して、O-DU6から、例えばKPI(主要性能指標)等の情報を収集する。O1インターフェースは、O-RAN(前掲の非特許文献2)仕様で規定される。O1インターフェースによって収集可能なパラメータは、以下の非特許文献3に規定されるパラメータに対応する。例えば、「DL PRB usage」、「UL PRB usage」、「Average DL UE throughput」、「Average UL UE throughput」、「Number of PDU Sessions requested」等のパラメータである。
[非特許文献3] 3GPP TS28.552、"5G performance measurements"、v16.1.0
【0030】
「Non-RT RIC」11は、O-DU6から収集した情報を解析し、解析結果に基づいて「Near-RT RIC」12に対する設定変更を行う。ここで、「Non-RT RIC」11は、A1インターフェースを介して、「Near-RT RIC」12へ設定変更情報を提供する。A1インターフェースは、O-RAN仕様で規定される。
【0031】
「Near-RT RIC」12は、O-DU6から収集した情報を解析し、解析結果に基づいてO-DU6に対する設定変更を行う。ここで、「Near-RT RIC」12は、E2インターフェースを介して、O-DU6へ設定変更情報を提供する。E2インターフェースは、O-RAN仕様で規定される。
【0032】
図5は、一実施形態に係る通信制御システム10の機能ブロック図であり、機能的な構成として、「Non-RT RIC」11は第1制御部11(第1制御装置11)を構成し、「Near-RT RIC」12は第2制御部12(第2制御装置12)を構成し、また、O-DU6は信号処理部12(信号処理装置12)を構成する。図示するように、第1制御部11は再計算部111を備え、第2制御部12はAPクラスタ候補抽出部121(「候補抽出部121」と略称する)、APクラスタ候補DB122(「候補DB122と略称する」)及びAPクラスタ探索部123(「探索部123」と略称する)を備える。
【0033】
図6は、一実施形態に係る通信制御システム10の動作のフローチャートである。この図6のフローの全体は、予めスケジューリングされた所定の周期等に従って一定期間ごとの各時刻t= t0,t1,t2,…において繰り返されることにより、各UEが形成するAPクラスタを現時刻に適したものへと再形成(更新)する、一実施形態に係る通信制御方法に関するものである。
【0034】
以下の説明では適宜、図6のフローが実行されている現時刻が時刻t=tnであるものとし、過去時刻t= t0,t1,t2,…,tnでの図6のフローの実行結果が履歴として適宜、通信制御システム10において管理されているものとして説明する。(その詳細は以下で説明する。)
【0035】
なお、以下では図6の各ステップを説明することで、主に、図5の機能ブロック構成における情報の授受に関して形式的に説明する。これらの処理内容の具体的な意義や詳細については図6の各ステップの説明を終えた後に、図7等を参照して後述する。
【0036】
ステップS1では、各々の信号処理部6(O-DU6)が、自身が管理しているAPクラスタに属する各UE kについて、APクラスタ再形成に必要となる情報を、E2インターフェースを介して報告する。(なお、以降、k=1,2,…がUE#1,UE#2,…を識別する(kがUEの識別子である)ものとして説明する。また、APクラスタについてもkを識別子として用いて説明するが、これはUEの識別子とは別途のものである。)
【0037】
図5中にも示される通り具体的に、以下の情報が報告される。
●信号処理部6から候補抽出部121に報告される情報
・降順にソートされた、UE-各AP間のSINRのリストxk
・SINRの値に対応する、APのインデックスのリストAPk
・UE-各AP間の受信電力
・UEに必要なSINR
●信号処理部6から候補DB122に報告される情報
・APクラスタ候補のSINRのリスト
・UE-各AP間の受信電力
・そのAPクラスタ候補で達成されたSINR
【0038】
オプション(追加可能な実施形態)として、ステップS1ではさらにステップS101として、各々の信号処理部6が、自身が管理しているAPクラスタについて、APクラスタごとのSINR分布の情報を、O1インターフェースを介して再計算部111へと報告するようにしてもよい。
【0039】
ステップS2では、候補DB122が、次のステップS3での候補抽出部121の処理を可能とすべく、候補抽出部121に対して、過去に形成されたAPクラスタ候補の情報を参照に供するように出力する。具体的に、以下の情報を候補抽出部121に出力する。
・APクラスタ候補のSINRのリスト
・UE-各AP間の受信電力
・そのAPクラスタ候補で達成されたSINR
【0040】
オプション(追加可能な実施形態)として、ステップS2ではさらにステップS201として、再計算部111が再計算の処理を行ってその結果をA1インターフェースを介して候補DB122へと報告し、候補DB122において、当該報告結果(図12で後述する最大時間・忘却係数)に応じて、記憶しておいるデータベース情報からから不要と判定されるデータを削除して、データベースを更新してスリム化を図るようにしてもよい。
【0041】
なお、オプションとしてのステップS101,S201を適用する場合、この両ステップはペアで適用される。(ステップS101,S201のいずれか片方のみを適用することはできない。)
【0042】
ステップS3では、候補抽出部121が、ステップS1,S2で報告された情報を用いて候補DB122から検索を行うことにより、現在のUEの速度と、必要な無線品質と達成品質が近いAPクラスタ候補を抽出し、各APクラスタのSINR分布を探索部123へと出力する。具体的に、以下の情報を探索部123へと出力する。
・xk
・APk
・要求品質と、前回のAP クラスタ形成時のUE-各AP間の受信電力の差分が近いAP クラスタ候補群のSINRのリスト
【0043】
ステップS4では、ステップS3での上記出力を受け取った探索部124が、各APクラスタ候補のAP数の分だけ、xkの先頭から要素を抽出したx'kと、各APクラスタ候補のSINRリスト間の、ユークリッド距離が最小となるAPクラスタを選択し、選択されたAPクラスタ候補内のAP数の分だけ、APkの先頭からAPのインデックスを抽出し、この抽出結果を、UE kのAPクラスタに組み込まれるAPのインデックスの集合として、(すなわち、UE kにおいて再形成されるべきAPクラスタの結果であるものとして、)として、E2インターフェースを介して信号処理部6(O-DU6)に報告する。
【0044】
こうして、各UEにおいては、APクラスタを再形成することが可能となる。
【0045】
図7は、以上の図5,6で形式的に説明した、第2制御部12(「Near-RT RIC」12)の各部121,122,123の処理内容の説明図である。以下、図7を参照しながら、各部121,122,123の処理内容の詳細を説明する。
【0046】
<候補DB122…説明欄EX1…ステップS1>
説明欄EX1に示されるように、候補DB122では、ステップS1で信号処理部6(O-DU6)から報告される情報を各時刻tにおいて取得することで、自身のデータベース情報を以下のように記録して管理する。
【0047】
すなわち、候補DB122では、現在時刻tnよりも前までに形成したAPクラスタについて、達成されたSINRと、APクラスタ内の各APのSINRを、降順にソートして記録する。
【0048】
<候補DB122及び抽出部121…説明欄EX2…ステップS2,S3>
さらに、説明欄EX2に示されるように、候補DB122及び抽出部121では、ステップS2及びS3において、候補DB122で記録しているデータベース情報から抽出部121が以下のような抽出処理を行う。
【0049】
すなわち、達成SINRがUEの要求SINRを満たすと判定されるものとして、達成SINRが以下のような範囲Rに収まるAPクラスタ候補を候補DB122から抽出する。(なお、範囲Rの幅は1dBとなっているが、これは例示としての数値であり、その他の幅を予め設定してもよい。)この抽出は、UEごとに行われるものとなる。
範囲R=[UEの要求SINR, UEの要求SINR+1dB]
【0050】
以上の説明欄EX1,EX2の処理に対応する模式的なデータ例として、図7ではデータD1として現時刻t=tnよりも前の各時刻t=t0,t1,t2,…,tn-1について、候補DB122に信号処理部6(O-DU6)から報告される情報の模式例が示される。
【0051】
また、データ例D2として、候補DB122に合計K個の候補1,2,…,K-1,Kとなる、「AP-SINRグラフ」(APクラスタ内の各APのSINRを降順にソートしたもの)及びその「達成SINR」の模式例が示される。(すなわち、この模式例D2では過去履歴の蓄積として、合計K個の過去に形成済みクラスタに関する情報が記録されている。)なお、「達成SINR」は、非特許文献1に開示されている既存の信号処理アルゴリズム(例えばpartial-minimum mean square errorの手法)を用いて算出できる。
【0052】
さらに、抽出処理例P3として、上記データD2から範囲R=[UEの要求SINR, UEの要求SINR+1dB]に達成SINRが収まるものとして、合計K個の候補の中から2つの候補1,2(達成SINRがそれぞれ15.1dB,15.2dB)が抽出される例が示されている。
【0053】
<抽出部121…説明欄EX3,EX4…ステップS3>
説明欄EX3,EX4に示されるように、抽出部121ではさらに、ステップS3での処理として、以下を行う。
【0054】
すなわち、UEが必要とするSINRと、UEから各APまでのSINRを収集し、降順にソートする。このソート例は、あるUE#1についての模式的データ例D4として示される通りである。
【0055】
また、候補DB122から抽出したAPクラスタ候補(候補nとする)のSINRのリストynと、APクラスタ候補nに含まれるAP数の分だけ、UE周辺のSINRが高い順に抽出したSINRのリストxnを作成する。この作成例は、当該UE#1についての候補1,2のリスト(抽出処理P3の出力)y1,y2と、データD4の当該UE#1のSINRのリストx1と、を、同じ「AP-SINRグラフ」上に列挙する形で、模式的なデータ例D5として示される通りである。すなわち、データ例D5では、候補1のリストy1と、降順でこれにAP数を合わせたUE#1のSINRのリストx1とを列挙した「AP-SINRグラフ」x1,y1と、候補2のリスト y2と、降順でこれにAP数を合わせたUE#1のSINRのリストx2とを列挙した「AP-SINRグラフ」x2,y2とが示されている。
【0056】
<抽出部121が奏する効果…少ないパターンのルールで済む>
探索部123の以上のような処理によれば、従来手法にような特定のUE-APの位置関係ではなく、UE周辺の無線環境の分布をもとにAPクラスタを選択することで、考慮すべき位置関係のパターンを減らすことができるため、少ないパターンのルールでUEの必要なSINRを満足できるAPクラスタを形成できる。
【0057】
<探索部123…説明欄EX5…ステップS4>
説明欄EX5に示されるように、探索部123では、ステップS4での処理として、以下を行う。
【0058】
すなわち、リスト間のユークリッド距離d(xn,yn)が最小となるAPクラスタ候補nのAP数の分だけ、SINRが高いAPを選択して、当該UEについて再形成されたAPクラスタの結果とする。
【0059】
この探索例は、データD5の2つのリストから探索処理P6として模式的に示される。すなわち、候補1について「d(x1,y1)=0.8」であり、候補2について「d(x2,y2)=2.0」であり、候補1の「d(x1,y1)=0.8」が最小値であるため、候補1のAPクラスタを、当該UE#1の再形成クラスタの結果とする。
【0060】
<探索部123が奏する効果…高速なAPクラスタ選択による再形成>
探索部123の以上のような処理によれば、従来手法による計算量がAPクラスタ内のAP個数の3乗に比例するMIMOの重み計算の代わりに、計算量がAPクラスタ内のAP個数に比例するユークリッド距離を基準として用いることで、計算量が線形回数で済むため、UEの必要なSINRを確保できるAPクラスタ候補を高速に選択して、クラスタ再形成結果を得ることができる。
【0061】
すなわち、DB(候補DB122)に格納された中からAPクラスタを探索するため、探索する組み合わせ数は、最大でもDBに格納された要素数Kで抑えられる。さらに、(探索部123の前段側に候補抽出部121の抽出処理があることから、)無線品質が近いものを抽出してからAPクラスタを探索するため、より探索する組み合わせ数が小さくなる。そのため、最適化問題により広い範囲からAPクラスタを探索するよりも、APクラスタ候補を高速に選択できる。
【0062】
以上の通り、図5図7の実施形態は、従来手法の問題点を解消することのできる新規のAPクラスタ形成アルゴリズムを提供するものであるが、O-RAN仕様(非特許文献2)では、当該アルゴリズムを実現するためのO-RANインターフェースが規定されていないので、以下では、本実施形態(本実施形態の追加的実施形態が適用される場合も含む)によるAPクラスタ形成アルゴリズムに必要となるO-RANインターフェースに関して説明する。
【0063】
<SINR分布情報収集 (E2インターフェース)>
図8は、一実施形態に係る、E2インターフェースによるSINR分布情報収集の手順を示す図である。
【0064】
ステップS81では、各O-DU6が、APクラスタごとのSINR分布の情報を含む「Performance measurements」メッセージを、E2インターフェースを介して、「Near-RT RIC」12へと送信する。ステップS82では、「Near-RT RIC」12が、APクラスタごとのSINR情報を基に、APクラスタを再計算してUEごとのAPクラスタの再形成の結果を得る。ステップS83では、「Near-RT RIC」12が、UEごとのAPクラスタの再形成の結果の情報を含む「Updated Configuration」メッセージを、E2インターフェースを介して、各O-DU6へと送信する。
【0065】
なお、図8のステップS81,S82,S83はそれぞれ、図5及び図6でのステップS1と、ステップS2,S3,S4と、ステップS4における結果送信処理と、によって実現することができる。
【0066】
図8のSINR分布情報収集 (E2インターフェース)が奏する効果>
従来手法では課題として、APクラスタ単位のSINR分布はO-RAN規格上で定義されていないため、RICがAPクラスタ毎のSINR分布情報を収集できず、APクラスタ候補の中から、無線環境の近いAP クラスタを選択することができなかった。
【0067】
上記課題に対して、図8の手順によれば、ステップS81において「O-DU6→Near RT RIC 12」間(E2)のインターフェースに、基地局から収集する情報として、APクラスタ毎に集計したSINRの度数分布を追加する。従って、その効果として、APクラスタのSINR分布を把握できるようになり、現在のUEの無線環境と類似したAPクラスタ候補を選択することができるようになるため、UEの必要な無線品質を確保できるAPクラスタを形成できる。
【0068】
図9は、本実施形態によるSINR分布情報収集のフォーマット例を示す図であり、このようなフォーマットに従い、各O-DU6は、各UEのAPクラスタ内のAPに対し、以下の非特許文献4で規定されたSINRの範囲(欄C91,C92,C93として示す)に対応するAP数を集計(欄C94として示す)し、「Near-RT RIC」12へ報告することができる。すなわち、既存規格で規定されている欄C91,C92,C93の情報に対して、本実施形態では集計結果としての欄C94の情報を新規に追加する。
[非特許文献4] 3GPP TS38.133、"Requirements for support of radio resource management"、v17.4.0
【0069】
<RSRP分布情報収集 (E2インターフェース)>
図10は、一実施形態に係る、E2インターフェースによるRSRP(基準信号受信電力)情報収集の手順を示す図である。
【0070】
図10の実施形態によれば、従来手法の次の課題に対処することができる。すなわち、従来手法では、UEの移動によるSINRの変化に対応してAPクラスタを形成するということが、そもそも考慮されていなかった。これを考慮したAPクラスタ形成のためには、UEの移動速度を見積もる必要がある。しかしながら、UEの移動速度の見積もりに必要なUE-AP間のRSRPの差分の分布は規格上、定義されていないため、従来手法では、UEの移動速度に応じた、無線品質が一定となるAPクラスタの形成ができない。
【0071】
上記課題を解決する図10の各手順を説明する。ステップS101では、各O-DU6が、APクラスタごとのRSRP差分の情報を含む「Performance measurements」メッセージを、E2インターフェースを介して、「Near-RT RIC」12へと送信する。ステップS102では、「Near-RT RIC」12が、APクラスタごとのSINR情報を基に、APクラスタを再計算してUEごとのAPクラスタの再形成の結果を得る。ステップS103では、「Near-RT RIC」12が、UEごとのAPクラスタの再形成の結果の情報を含む「Updated Configuration」メッセージを、E2インターフェースを介して、各O-DU6へと送信する。
【0072】
なお、RSRP差分は、各時刻t=t0,t1,…で繰り返される図6のフローにおいて、現時刻tnと、その1つ前の過去時刻tn-1とのRSRP差分として取得する。
【0073】
なお、図10のステップS101,S102,S103はそれぞれ、図5及び図6でのステップS1と、ステップS2,S3,S4と、ステップS4における結果送信処理と、によって実現することができる。ただし、以上説明してきた図5図7の実施形態を第1実施形態と呼び、図10の実施形態を第2実施形態と呼ぶことにすると、第1実施形態は、RSRP差分情報の利用を前提としないものであるため、第2実施形態は、第1実施形態に対して、RSRP差分情報を利用するための追加処理を設けることで実現できる。
【0074】
図11は、第1実施形態においてRSRP差分情報を利用するための追加処理を設けることで実現される第2実施形態を説明する図である。第2実施形態は、第1実施形態における候補DB122を、RSRP差分の範囲ごとに区別して設け、候補抽出部121からの抽出処理に、該当UEのRSRP差分が対応する範囲のデータベースを供することで実現でき、以下の処理(1)~(4)等を第1実施形態に対して追加すればよい。
【0075】
処理(1) 「Near-RT RIC」12は、RSRPの差分の平均値ごとにAP クラスタのDBを分離して保存することで、候補DB122を構築する。図11の例では、候補DB122を、RSRP差分の平均が[0~1]dB範囲か、[1~10]dB範囲か、10dB以上の範囲か、の3通りの範囲で分離した、3つの部分データベース122-1,122-2,122-3として構築している。
【0076】
処理(2) E2インターフェースから、UEの形成したAPクラスタのRSRPの差分の分布を取得する。当該追加で取得することは図10のステップS91に示される通りである。
【0077】
処理(3) 上記の処理(2)で取得した差分の平均値を計算し、処理(1)で保存された中から、該当するAPクラスタ候補のDBを選択する。
【0078】
処理(4) 第1実施形態のインターフェースからSINRの分布を取得し、SINR分布が類似したAPクラスタを選択し、O-DU6へ通知する。
【0079】
以上の通り、第2実施形態は、候補DB122をRSRPの差分平均で使い分ける以外は、第1実施形態と同様である。
【0080】
<DB形成ポリシー変更のための制御情報(A1インターフェイス)>
図12は、一実施形態に係る、A1インターフェースによるDB形成ポリシー変更のための制御情報の利用手順を示す図である。この図12の実施形態は、図5図7の実施形態でオプションとしたステップS101,S201を追加するものであり、次の課題を解決するものである。
【0081】
すなわち、既存手法においては、「Near-RT RIC」に設置されるDBの大きさや、類似した要素の削除といった制御情報は定義されていない。このため、課題として、APクラスタ候補の情報がDBに蓄積することでDBが肥大化し、APクラスタを探索する時間が長くなり、UEの移動に対応してUEの必要とする無線品質を確保できるAPクラスタを選択できなくなる。
【0082】
この課題に対処すべく、図12の実施形態では、ステップS121において、「Non-RT-RIC」11→「Near-RT RIC」12間(A1)のインターフェースに、候補DB122のAPクラスタ候補の最大要素数と、DBの要素を保持する最大時間(忘却係数)を通知するメッセージを追加する。候補DB122では、記憶しているAPクラスタ候補の数がこの最大要素数に到達した場合や、記憶しているAPクラスタ候補におけるDB要素の継続保持時間がこの最大時間に到達した場合は、ステップS201において該当データを削除することで、DBが肥大化することを防止することができる。
【0083】
図12の形成ポリシー変更のための制御情報(A1インターフェイス)が奏する効果>
すなわち、効果として、「Near-RT RIC」12に適切なAPクラスタ候補のDBの要素数のDBを構築することで、APクラスタの探索時間を短縮しつつ、UEの移動に対応して、UEの必要とする無線品質を確保できるAP クラスタを選択できる。
【0084】
具体的に、図12の各手順は次の通りである。
【0085】
ステップS121では、各O-DU6が、APクラスタごとのSINR分布の情報を含む「Performance measurements」メッセージを、O1インターフェースを介して、「Non-RT RIC」11へと送信する。ステップS122では、「Non-RT RIC」11が、APクラスタ毎の干渉電力情報を基にDB形成ポリシーを再計算する。ステップS123では、「Non-RT RIC」11が、当該再計算の結果により得られた、APクラスタ候補のDBの要素数の最大数と、DBに要素を記録できる最大の時間の情報を含む、「Updated Configuration」メッセージを、A1インターフェースを介して、「Near-RT RIC」12へと送信する。当該送信結果を受けて、「Near-RT RIC」12内の候補DB122は、自身のデータベース情報のサイズが過度に肥大化しないように適切に更新することが可能となる。
【0086】
なお、図12のステップS121とS123,S124とはそれぞれ、図5及び図6でのステップS1でのオプションのステップS101と、ステップS2でのオプションのステップS201と、によって実現することができる。
【0087】
図13は、図12のステップS123の詳細を示すフローチャートであり、図5の再計算部111の処理内容の詳細を示すものである。
【0088】
ステップS131では、候補DB122に現時刻tnのものとして新しく入力されたAPクラスタ候補のSINRの要素から、各APクラスタ候補内のAP数の分だけ、SINRが高い要素を選択したもののSINR分布と、過去時刻のものとして既に候補DB122に格納されている各APクラスタ候補のSINR分布間の、ユークリッド距離の平均を計算する。(なお、ここで「各APクラスタ候補内のAP数の分だけ、SINRが高い要素を選択」する処理は、図7のデータD5の例と同様に、各APクラスタ候補と要素数を合わせることで、ユークリッド距離を計算可能とするための処理である。)
【0089】
ステップS132では、最小値を、既定の閾値と比較する。具体的に、小さい閾値Γ_low未満となることが連続するかと、大きい閾値Γ_high以上となることが連続するかを判定する。
【0090】
ステップS132の比較結果において、類似度(最小値)が閾値Γ_low未満のAPクラスタ候補が連続して入力された場合(現時刻tnに至るまでの所定k+1回の各時刻tn-1,tn-2,…,tn-kにおいて連続して入力されている場合)は、ステップS133へ進んで、候補DB122に十分以上な数のAPクラスタ候補の情報が格納されていると判断し、DBの最大要素数および要素の保持時間を小さくする更新を行う。
【0091】
ステップS132の比較結果において、類似度(最小値)が閾値Γ_high 以上のAPクラスタ候補が連続して入力された場合(現時刻tnに至るまでの所定k+1回の各時刻tn-1,tn-2,…,tn-kにおいて連続して入力されている場合)は、無線環境を認識するために必要なAPクラスタ候補が不足していると判断し、DBの最大要素数および要素の保持時間を大きくする更新を行う。
【0092】
なお、図13では場合分けを描くのを省略しているが、ステップS132において小さい閾値Γ_low未満となることが連続するかと、大きい閾値Γ_high以上となることが連続するかを判定し、いずれにも該当しない場合は、DBの最大要素数および要素の保持時間については更新せずに、そのままの値を保つようにする。
【0093】
<ハードウェア構成や本実施形態をプログラムとして提供することについて>
通信制御システム10の各機能は、通信制御システム10がCPU及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、通信制御システム10として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、通信制御システム10は、通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、通信制御システム10の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、通信制御システム10は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又は通信制御システム10の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。
【0094】
本実施形態の通信制御システム10によれば、情報通信技術のインフラ整備に寄与することができる。これにより、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0095】
10…通信制御システム、11…Non-RT RIC(第1制御部、第1制御装置)、12…Near-RT RIC(第2制御部、第2制御装置)、6…O-DU(信号処理部、信号処理装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13