(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150972
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20231005BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20231005BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W30/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060339
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣田 篤人
(72)【発明者】
【氏名】寺川 浩史
(72)【発明者】
【氏名】三木 あや
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA08
3D241CC02
3D241CC08
3D241CD12
3D241CD29
3D241CE05
3D241DA03Z
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA49Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DC49Z
3D241DD12Z
(57)【要約】
【課題】走行中の車両で一定速度維持制御を実行する場合に、走行経路上に凸部や凹部があるときにでも安定した速度維持制御を実現する。
【解決手段】走行制御装置は、走行中の車両の進行方向を撮影部によって撮影することによって取得した撮影画像、および、前記車両の進行方向について物体検知センサによって取得したセンサ情報、の少なくともいずれかに基づいて、前記車両の進行方向の走行経路上にある所定高さ以上の凸部を検出する検出部と、走行中の前記車両の駆動力と制動力とを制御して車速を所定範囲内で維持する一定速度維持制御を実行し、そのときに、前記検出部によって凸部が検出された場合、前記車両が前記凸部に達する前の所定タイミングから、前記凸部の高さを含む構造特徴と現在の車速に基づいて駆動力の増加、および、制動力の減少の少なくとも一方を実行する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両の進行方向を撮影部によって撮影することによって取得した撮影画像、および、前記車両の進行方向について物体検知センサによって取得したセンサ情報、の少なくともいずれかに基づいて、前記車両の進行方向の走行経路上にある所定高さ以上の凸部を検出する検出部と、
走行中の前記車両の駆動力と制動力とを制御して車速を所定範囲内で維持する一定速度維持制御を実行し、そのときに、前記検出部によって凸部が検出された場合、前記車両が前記凸部に達する前の所定タイミングから、前記凸部の高さを含む構造特徴と現在の車速に基づいて駆動力の増加、および、制動力の減少の少なくとも一方を実行する制御部と、を備える走行制御装置。
【請求項2】
走行中の車両の進行方向を撮影部によって撮影することによって取得した撮影画像、および、前記車両の進行方向について物体検知センサによって取得したセンサ情報、の少なくともいずれかに基づいて、前記車両の進行方向の走行経路上にある所定高さ以上の凹部を検出する検出部と、
走行中の前記車両の駆動力と制動力とを制御して車速を所定範囲内で維持する一定速度維持制御を実行し、そのときに、前記検出部によって前記凹部が検出された場合、前記車両が前記凹部に達する前の所定タイミングから、前記凹部の高さを含む構造特徴と現在の車速に基づいて、駆動力の減少、および、制動力の増加の少なくとも一方を実行する制御部と、を備える走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、走行中の車両の駆動力と制動力を制御して車速を所定範囲内で維持する一定速度維持制御の開発が進められている。この一定速度維持制御は、例えば、オフロードを走行中の車両にも適用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0217767号明細書
【特許文献2】特開2021-37804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、オフロードを走行中の車両で一定速度維持制御を実行する場合、障害物(岩など)を乗り越えるときに、次のような問題がある。まず、車両が障害物を乗り越え始めてから駆動力を増加させるので一旦かなり減速してしまうことになり、運転者に停滞感を与えてしまう。また、車両が障害物を乗り越えた後に制動力を与え始めるので必要以上に加速してしまうことになり、運転者に飛び出し感を与えたり、車両がオーバーランしてしまったりする。つまり、安定した速度維持制御ができていない。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、走行中の車両で一定速度維持制御を実行する場合に、走行経路上に凸部や凹部があるときにでも安定した速度維持制御を実現可能な走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一例としての走行制御装置は、走行中の車両の進行方向を撮影部によって撮影することによって取得した撮影画像、および、前記車両の進行方向について物体検知センサによって取得したセンサ情報、の少なくともいずれかに基づいて、前記車両の進行方向の走行経路上にある所定高さ以上の凸部を検出する検出部と、走行中の前記車両の駆動力と制動力とを制御して車速を所定範囲内で維持する一定速度維持制御を実行し、そのときに、前記検出部によって凸部が検出された場合、前記車両が前記凸部に達する前の所定タイミングから、前記凸部の高さを含む構造特徴と現在の車速に基づいて駆動力の増加、および、制動力の減少の少なくとも一方を実行する制御部と、を備える。
【0007】
また、走行制御装置は、走行中の車両の進行方向を撮影部によって撮影することによって取得した撮影画像、および、前記車両の進行方向について物体検知センサによって取得したセンサ情報、の少なくともいずれかに基づいて、前記車両の進行方向の走行経路上にある所定高さ以上の凹部を検出する検出部と、走行中の前記車両の駆動力と制動力とを制御して車速を所定範囲内で維持する一定速度維持制御を実行し、そのときに、前記検出部によって前記凹部が検出された場合、前記車両が前記凹部に達する前の所定タイミングから、前記凹部の高さを含む構造特徴と現在の車速に基づいて、駆動力の減少、および、制動力の増加の少なくとも一方を実行する制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態の車両システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、(a)従来技術と(b)実施形態において、車両が障害物を乗り越える場合の制駆動力と車速の変化の様子を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の走行制御装置による第1の処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態において車両に対して設定される所定領域を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の走行制御装置による第2の処理を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態の走行制御装置による第3の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、以下の構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0010】
図1は、実施形態の車両システムSの機能構成を示すブロック図である。車両システムSが搭載される車両は、例えばオフロード車両であるが、これに限定されず、オフロード車両以外の車両であってもよい。以下では、オフロード車両を例にとって説明する。
【0011】
車両のオフロード走行時の安全性、利便性を向上させるための技術として、一定速度維持制御がある。一定速度維持制御は、岩石路、雪道、急勾配の坂道などの微妙な速度調整を必要とする路面で、運転者の運転操作をサポートするための技術である。
【0012】
一定速度維持制御においては、運転者により設定された速度(例えば1~5km/h)で走行するために、駆動力と制動力を最適に制御することにより、車輪の空転をできる限り小さくすることを可能としている。
【0013】
図1に示すように、車両システムSは、走行制御装置100と、車両制御に関係する情報を検出するセンサ110と、カメラ115と、車両の挙動を制御するアクチュエータ120と、出力部130と、を備える。
【0014】
走行制御装置100は、例えば、プロセッサやメモリなどのハードウェアを備えたコンピュータ(例えば、ECU(Electronic Control Unit)など)として構成される。走行制御装置100は、例えば、センサ110の出力値としてのセンサ情報を取得し、取得したセンサ情報に基づいてアクチュエータ120を制御することで、車両制御を実行する。
【0015】
センサ110は、例えば、速度センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサ、ステアリングセンサ、アクセル開度センサ、ステアリングトルクセンサ、エンジン回転数センサ、油圧センサ、ブレーキセンサ、物体検出センサ(レーダなど)などである。
【0016】
カメラ115は、車両の周辺を撮影する。
【0017】
アクチュエータ120は、操舵装置121と、前輪操舵装置122と、後輪操舵装置123と、制動装置124と、駆動装置125と、を備える。
【0018】
操舵装置121は、操舵(ステアリング)を制御する。操舵装置121は、例えば、EPS(Electric Power Steering)により実現される。
【0019】
前輪操舵装置122は、車両の前輪の操舵を制御する。前輪操舵装置122は、例えば、車速と舵角に応じてステアリングのギア比を変更することで、前輪の切れ角を最適に制御する。これにより、例えば、駐車時などではステアリングを少し切るだけで大きく曲がり、操作が容易になる。また、高速走行時などではハンドルの操作量に対して切れ角が小さくなり、走行安定性が高まる。
【0020】
後輪操舵装置123は、車両の後輪の操舵を制御する。後輪操舵装置123は、例えば前輪操舵装置122と同様の構造によって実現される。
【0021】
制動装置124は、車両に制動力を与えるブレーキ機構を制御する。駆動装置125は、車両に駆動力を与える駆動機構を制御する。
【0022】
出力部130は、表示装置や音声出力装置である。出力部130は、報知部104からの指示に基づいて、メッセージを表示したり音声出力したりする。
【0023】
走行制御装置100は、機能構成として、取得部101と、検出部102と、制御部103と、報知部104と、を備える。これらの機能は、例えば、走行制御装置100のプロセッサがメモリに記憶されたプログラムを読み出して実行した結果として実現される。なお、走行制御装置100の機能の一部または全部が、専用のハードウェア(回路)のみによって実現されてもよい。
【0024】
取得部101は、センサ110から各種センサ情報を取得する。取得部101は、例えば、物体検知センサから、車両の進行方向の物体検出情報を取得する。
【0025】
また、取得部101は、カメラ115から撮影画像を取得する。取得部101は、例えば、カメラ115から、走行中の車両の進行方向を撮影した撮影画像を取得する。
【0026】
検出部102は、取得部101が取得した撮影画像、および、物体検出情報の少なくともいずれかに基づいて、車両の進行方向の走行経路上にある所定高さ以上の凸部を検出する。
【0027】
ここで、所定高さ以上の凸部は、例えば、所定高さ以上の高さを有する物体(岩など。以下、障害物ともいう。)である。また、所定高さ以上の凸部は、例えば、路面における所定高さ以上の高さを有する隆起部分であってもよい。以下、所定高さ以上の凸部(または障害物)を単に「凸部(または障害物)」ともいう。
【0028】
また、検出部102は、取得部101が取得した撮影画像、および、物体検出情報の少なくともいずれかに基づいて、車両の進行方向の走行経路上にある所定高さ以上の凹部を検出する。
【0029】
ここで、所定高さ以上の凹部は、例えば、所定高さ以上の高さを有する障害物のピークポイント(一番高い部分)から見た場合の路面である。また、所定高さ以上の凹部は、例えば、路面における所定高さ以上の高さ(深さ)を有する沈降部分であってもよい。以下、所定高さ以上の凹部を単に「凹部」ともいう。
【0030】
制御部103は、各種制御を実行する。制御部103は、制動装置124と駆動装置125とを制御することで、走行中の車両の駆動力と制動力とを制御して、車速を所定範囲内で維持する一定速度維持制御を実行する。
【0031】
制御部103は、一定速度維持制御実行中に、検出部102によって凸部が検出された場合、車両が凸部に達する前の所定タイミング(例えば、前輪から凸部までの距離が第1閾値(例えば50cm)以下になったとき)から、凸部の高さを含む構造特徴と現在の車速に基づいて駆動力の増加、および、制動力の減少の少なくとも一方を実行する。例えば、凸部の高さが高いほど、駆動力の増加率を高くする。
【0032】
また、制御部103は、一定速度維持制御実行中に、検出部102によって凹部が検出された場合、車両が凹部に達する前の所定タイミング(例えば、前輪から凹部までの距離が第2閾値(例えば50cm)以下になったとき)から、凹部の高さを含む構造特徴と現在の車速に基づいて、駆動力の減少、および、制動力の増加の少なくとも一方を実行する。なお、第1閾値と第2閾値は、同じでもよいし、異なっていてもよい。また、第1閾値と第2閾値は、車速に応じて変化させてもよい。
【0033】
ここで、
図2は、(a)従来技術と(b)実施形態において、車両が障害物を乗り越える場合の制駆動力(制動力と駆動力)と車速の変化の様子を示す図である。(a)に示すように、従来技術の場合、一定速度維持制御実行中の車両Cが障害物O(岩)を乗り越えるときに、まず、車両Cが障害物を乗り越え始めて(時刻t11)から駆動力((a2))を上げるので一旦かなり減速してしまう((a3)の車速の時刻t12)。これにより、運転者に停滞感を与えてしまう。
【0034】
また、車両Cが障害物を乗り越えた(時刻t13)後に制動力((a2))を与え始めるので、必要以上に加速してしまう((a3)の車速の時刻t14)。これにより、運転者に飛び出し感を与える。また、車両Cがオーバーランしてしまう。つまり、従来技術では、安定した速度維持制御ができていない。
【0035】
一方、(b)に示すように、本実施形態の場合、一定速度維持制御実行中の車両Cが障害物O(岩)を乗り越えるときに、まず、車両Cが障害物を乗り越え始める時刻t22の少し前の時刻t21から駆動力((b2))を上げるのであまり減速しない((b3)の車速の時刻t22以降)。これにより、運転者に停滞感を与えることがない。
【0036】
また、車両Cが障害物を乗り越える時刻t24の少し前の時刻t23に制動力((b2))を与え始めるとともに駆動力を低下させるので、必要以上に加速してしまうことがない((a3)の車速の時刻t24以降)。これにより、運転者に飛び出し感を与えることがない。また、車両Cがオーバーランしてしまうこともない。つまり、本実施形態では、安定した速度維持制御ができている。
【0037】
図1に戻って、報知部104は、出力部130に指示信号を送信することで、出力部130によってメッセージを表示したり音声出力したりする。
【0038】
次に、
図3を参照して、実施形態の走行制御装置100による第1の処理について説明する。
図3は、実施形態の走行制御装置100による第1の処理を示すフローチャートである。この第1の処理は、一定速度維持制御実行中の車両が障害物を乗り越えるときに、車両が障害物を乗り越え始める少し前から駆動力を上げ、車両が障害物を乗り越える(障害物のピークポイントを前輪が通過する)少し前から制動力を与え始めるとともに駆動力を低下させる処理である。
【0039】
まず、ステップS1において、制御部103は、一定速度維持制御の実行中か否かを判定し、Yesの場合はステップS2に進み、Noの場合は処理を終了する。
【0040】
ここで、検出部102が車両の前方(進行方向)の走行経路上にある障害物(岩など)を検出したものとする。そうすると、ステップS2において、制御部103は、前方の障害物が大きいか、つまり、所定高さ以上の障害物であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS3に進み、Noの場合は処理を終了する。
【0041】
ステップS3において、制御部103は、障害物の高さを含む構造特徴と現在の車速に基づいて駆動力の増加率を決定する。
【0042】
次に、ステップS4において、制御部103は、車両の前輪から障害物までの距離が第1閾値(例えば50cm)以下であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS5に進み、Noの場合はステップS4に戻る。
【0043】
ステップS5において、制御部103は、ステップS3で決定した増加率などに基づいて、駆動力の増加、および、制動力の減少の少なくとも一方を実行する。
【0044】
次に、ステップS6において、制御部103は、車両の前輪から障害物のピークポイントまでの距離が第2閾値(例えば50cm)以下であるか否かを判定し、Yesの場合はステップS7に進み、Noの場合はステップS6に戻る。
【0045】
ステップS7において、制御部103は、駆動力の減少、および、制動力の増加の少なくとも一方を実行する。
【0046】
このようにして、一定速度維持制御実行中の車両が障害物を乗り越えるときに、障害物を事前に検出し、車両が障害物を乗り越え始める少し前から駆動力を上げたり制動力を下げたりするのであまり減速しない。これにより、運転者に停滞感を与えることがない。
【0047】
また、車両が障害物を乗り越える少し前から制動力を上げたり駆動力を下げたりするので、必要以上に加速してしまうことがない。これにより、運転者に飛び出し感を与えることがない。また、車両がオーバーランしてしまうこともない。つまり、安定した速度維持制御ができる。
【0048】
次に、車両のタイヤ回転による飛び石の発生などの抑制等について説明する。従来技術として、自車両の周囲に存在する障害物を検知し、自車両が障害物と衝突する可能性が高いと判定した場合に、運転者のブレーキ操作がなくても制動装置によって制動力を発生させることにより自車両が障害物と衝突することを回避する技術がある。そのとき、例えば、衝突回避のためのこの制御は、アクセル操作によってキャンセル不可とする。
【0049】
しかし、この従来技術では、自車両のタイヤが路面から物体(石など)を掻き出したり巻き上げたりして飛び散らせること(「飛び石の発生」などともいう。)により、車両周辺にいる人へ損害を加えることは想定されていない。そのため、物体が飛び散る可能性のある所定領域に人が存在していてもその対策のための制御は行われない。
【0050】
ここで、
図4は、実施形態において車両Cに対して設定される所定領域Rを示す図である。所定領域Rは、車両Cのタイヤ回転によって物体(石など)を飛び散らせる可能性のある範囲である。
図4に示す所定領域Rは、車両Cが前方に進むことを想定した場合のものであり、車両Cの横の領域と後ろの領域である。
【0051】
この所定領域Rにいる人を検出した場合、制御部103は、運転者がブレーキ操作を行っていなくても、制動装置124によって制動力を発生させることにより、タイヤが物体を飛び散らせることを回避することができる。また、そのときに、この制御は、アクセル操作によって原則的にキャンセル不可とする。しかし、車両と障害物との衝突回避の場合と異なり、絶対的にキャンセル不可とする必然性はないので、所定の条件下で、アクセル操作によってキャンセル可とする。これについて、以下、
図5,
図6を参照して説明する。
【0052】
図5は、実施形態の走行制御装置100による第2の処理を示すフローチャートである。まず、ステップS11において、制御部103は、オフロード走行モードがONになっているか否かを判定し、Yesの場合はステップS12に進み、Noの場合はステップS15に進む。例えば、運転者が所定のスイッチによってオフロード走行モードを選択している場合、ステップS11でYesとなる。
【0053】
ステップS12において、制御部103は、例えば、カメラ115による撮影画像を解析することで、所定領域内(
図4の所定領域R内)に人を検知したか否かを判定し、Yesの場合はステップS13に進み、Noの場合はステップS15に進む。
【0054】
ステップS13において、制御部103は、シフトポジションがN(ニュートラル)、P(パーキング)以外(例えば、D(ドライブ)、R(リバース)など)か否かを判定し、Yesの場合はステップS14に進み、Noの場合はステップS15に進む。
【0055】
ステップS14において、制御部103は、走行制限状態をONにする。
ステップS15において、制御部103は、走行制限状態をOFFにする。
【0056】
図6は、実施形態の走行制御装置100による第3の処理を示すフローチャートである。ステップS21において、制御部103は、走行制限状態がONか否かを判定し、Yesの場合はステップS22に進み、Noの場合はステップS26に進む。
図5の処理でステップS14を経由した場合はこのステップS21でYesとなり、
図5の処理でステップS15を経由した場合はこのステップS21でNoとなる。
【0057】
ステップS22で、制御部103は、ブレーキリリース操作がONか否かを判定し、Yesの場合はステップS28に進み、Noの場合はステップS23に進む。ブレーキリリース操作とは、運転者がブレーキペダルを踏んでいる場面で、ブレーキペダルの踏み込みを解除する操作、つまり、制動操作量を減らす操作である。ブレーキリリース操作があったことは、例えば、ペダルストロークセンサが検出するペダルストロークがゼロに向かって小さくなることや、ブレーキマスタシリンダ圧センサが検出するブレーキマスタシリンダ圧が減少することなどから認識できる。
【0058】
ステップS23において、制御部103は、アクセルONか否かを判定し、Yesの場合はステップS24に進み、Noの場合はステップS26に進む。制御部103は、例えば、アクセルペダル開度率やアクセルペダルストローク変化からアクセルペダルの踏み込み操作があったか(アクセルONか)否かを判定する。
【0059】
ステップS24において、制御部103は、カウンタの値をアップする。
次に、ステップS25において、制御部103は、カウンタの値がキャンセル閾値未満か否かを判定し、Yesの場合はステップS28に進み、Noの場合はステップS27に進む。
【0060】
ステップS26において、制御部103は、カウンタの値をリセットする。
ステップS27において、制御部103は、走行制限を終了する。
【0061】
ステップS28において、制御部103は、飛び石などの発生を防止するために、タイヤ回転を制限する走行制限を実行する。なお、ブレーキリリース操作がONの場合(ステップS22でYesの場合)も、タイヤが回転開始したり、あるいは、車輪速度が増加したりする可能性のある状況であるため、ステップS28において、制御部103は、飛び石などの発生を防止するために、タイヤ回転を制限する走行制限を実行する。
【0062】
また、ステップS23でYesの後のステップS28において、制御部103は、アクセル操作によって要求された駆動力を打ち消すように、制動装置124を制御して制動力を発生させる。また、制御部103は、タイヤ回転を制限するため、各タイヤのホイールシリンダへの加圧制御を実行する。
【0063】
なお、ステップS28において、併せて、制御部103は、出力部130(ブザー、ランプ、ディスプレイ、音声案内)を用いて、人検知により走行制限がされている旨を運転者へ告知する。
【0064】
このようにして、所定領域内に人を検知したときに、飛び石などが発生しないように、タイヤの回転を抑制することができる。この制御は、例えば、
図3のステップS5で駆動力を増加させるときに適用することができるが、これに限定されず、他の任意の場面に適用できる。
【0065】
このような走行制限の制御は、例えば、運転者によるブレーキ操作が行われるまで、路面勾配や駆動力に応じたブレーキ油圧を一定時間保持することで実現する。
【0066】
また、走行制限状態は、運転者によるアクセルペダル踏み込み状態の一定時間継続や、所定のスイッチ操作によってキャンセルすることができる。
【0067】
なお、
図5のステップS1において、オフロード走行モードか否かの判定は、上述の手法に限定されず、ほかに、例えば、トランスファの状態や車輪スリップ状況に基づいて行ったり、カーナビシステムにおける地図情報(地形情報)に基づいて行ったり(例えば悪路走行時はオフロード走行モードONと判定)してもよい。
【0068】
また、この
図5、
図6の処理は、飛び石発生の防止だけでなく、車両が雪や泥等をはねて車両外部にいる人へ損害を加えることの防止としても活用することができる。
【0069】
以上、本開示の実施形態を説明したが、上述した実施形態はあくまで例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上述した新規な実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、または変更を行うことができる。また、上述した実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0070】
例えば、
図3の処理について、車両の左側と右側で障害物の高さが異なる場合、左側の車輪と右側の車輪で駆動力や制動力を異ならせてもよい。
【0071】
また、
図3の処理について、上述の例では、前輪と障害物の位置関係に基づいた制御について説明したが、同様に、後輪と障害物の位置関係に基づいた制御を行うようにしてもよい。
【0072】
また、
図3の処理について、複数の岩を連続して乗り越える場合、それぞれの岩ごとに一連の処理を実行すればよい。
【符号の説明】
【0073】
100…走行制御装置、101…取得部、102…検出部、103…制御部、104…報知部、110…センサ、115…カメラ、120…アクチュエータ、121…操舵装置、122…前輪操舵装置、123…後輪操舵装置、124…制動装置、125…駆動装置、130…出力部、S…車両システム