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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023150974
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】冷菓及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/32 20060101AFI20231005BHJP
   A23G 9/38 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A23G9/32
A23G9/38
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060342
(22)【出願日】2022-03-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】307013857
【氏名又は名称】株式会社ロッテ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】一政 洋子
(72)【発明者】
【氏名】横田 善廣
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅規
(72)【発明者】
【氏名】藤堂 純子
(72)【発明者】
【氏名】河又 由子
(72)【発明者】
【氏名】坂口 正和
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 駿
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB18
4B014GG11
4B014GG12
4B014GG14
4B014GK05
4B014GK07
4B014GK08
4B014GL01
4B014GL09
4B014GL10
4B014GP12
4B014GP13
4B014GY04
(57)【要約】
【課題】冷菓の大量生産の現場でエージングの時間が長時間となる場合においてもタンク内で冷却中に冷菓ミックスがゲル化するリスクが無く、冷菓の製造ラインで製造することができ、かつ、十分な保形性を有し、口どけが良く、冷たさを感じられ、ボディ感が良好な冷菓及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ゼラチン含量が0.4質量%以上0.5質量%以下であり、不飽和乳化剤含量が0.075質量%以上0.1質量%以下である冷菓ミックスからなる冷菓及びゼラチンを0.4質量%以上0.5質量%以下、かつ不飽和乳化剤を0.075質量%以上0.1質量%以下配合して冷菓ミックスを調製する工程と、前記冷菓ミックスから冷菓を製造する工程と、を含む冷菓の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン含量が0.4質量%以上0.5質量%以下であり、不飽和乳化剤含量が0.075質量%以上0.1質量%以下である冷菓ミックスからなる冷菓。
【請求項2】
前記冷菓ミックスは、安定剤(ゼラチンを除く)及び/又は飽和乳化剤を含有する請求項1に記載の冷菓。
【請求項3】
前記冷菓ミックスは、前記安定剤(ゼラチンを除く)含量が0.05質量%以上0.25質量%以下である請求項2に記載の冷菓。
【請求項4】
前記冷菓ミックスは、前記飽和乳化剤含量が0.1質量%以上0.4質量%以下である請求項2に記載の冷菓。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷菓を構成の一部として含む冷菓。
【請求項6】
ゼラチンを0.4質量%以上0.5質量%以下、かつ不飽和乳化剤を0.075質量%以上0.1質量%以下配合して冷菓ミックスを調製する工程と、
前記冷菓ミックスから冷菓を製造する工程と、
を含む冷菓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷菓及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷菓市場の伸長に伴い、味、外観、食感など、消費者の冷菓に対する嗜好性が高まっており、そのような消費者ニーズに応えるべくメーカー側は品質向上に努めなければならない。冷菓を室温に放置しても長時間その形状を保ち、楽しみながら食べることのできる冷菓もその一つである。
【0003】
保形性(保型性)を付与することを目的としてゼラチンを含有した冷菓が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1には、冷凍状態ではアイスクリーム類特有のスプーン通りの良い物性と食感を有し、且つ解凍状態では保型性に優れ、適度な物性とムース様の食感を有するアイスクリーム類を提供することを目的とした、ゼラチンと微結晶セルロースとを含有することを特徴とする解凍状態ではムース様となるアイスクリーム類が開示されている。
【0005】
また、保形性(保型性)を付与することを目的としてオレイン酸モノグリセリドなどの不飽和乳化剤を含有した冷菓が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-223090号公報
【特許文献2】特開平8-180号公報(段落〔0003〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおり、冷菓にゼラチンを加えることで、冷菓の保形性が向上することはすでに知られている。しかしながら、十分に保形性を持たせようとすると、ゼラチンを多く配合する必要があるため、冷菓の大量生産の現場でエージングの時間が長時間となる場合にはタンク内で冷却中に冷菓ミックスがゲル化してしまい、冷菓の製造ライン(大量生産用の製造ラインを意味する。以下、同じ)では製造できないという問題が起こる。詳しくは、ゼラチンを0.5質量%よりも多く配合すると、上記の場合にタンク内でエージング中に冷菓ミックスがゲル化するリスクが高まることを本発明者らが発見した。
【0008】
また、冷菓に不飽和乳化剤を加えることで、冷菓の保形性を向上させ、ボディ感を出すことができるが、口どけが悪い、冷たさを感じづらいといった問題がある。
【0009】
従って、本発明の目的は、冷菓の大量生産の現場でエージングの時間が長時間となる場合においてもタンク内で冷却中に冷菓ミックスがゲル化するリスクが無く、冷菓の製造ラインで製造することができ、かつ、十分な保形性を有し、口どけが良く、冷たさを感じられ、ボディ感が良好な冷菓及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、下記の冷菓及びその製造方法を提供する。
【0011】
[1]ゼラチン含量が0.4質量%以上0.5質量%以下であり、不飽和乳化剤含量が0.075質量%以上0.1質量%以下である冷菓ミックスからなる冷菓。
[2]前記冷菓ミックスは、安定剤(ゼラチンを除く)及び/又は飽和乳化剤を含有する前記[1]に記載の冷菓。
[3]前記冷菓ミックスは、前記安定剤(ゼラチンを除く)含量が0.05質量%以上0.25質量%以下である前記[2]に記載の冷菓。
[4]前記冷菓ミックスは、前記飽和乳化剤含量が0.1質量%以上0.4質量%以下である前記[2]に記載の冷菓。
[5]前記[1]~[4]のいずれか1つに記載の冷菓を構成の一部として含む冷菓。
[6]ゼラチンを0.4質量%以上0.5質量%以下、かつ不飽和乳化剤を0.075質量%以上0.1質量%以下配合して冷菓ミックスを調製する工程と、前記冷菓ミックスから冷菓を製造する工程と、を含む冷菓の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、冷菓の大量生産の現場でエージングの時間が長時間となる場合においてもタンク内で冷却中に冷菓ミックスがゲル化するリスクが無く、冷菓の製造ラインで製造することができ、かつ、十分な保形性を有し、口どけが良く、冷たさを感じられ、ボディ感が良好な冷菓及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
なお、本発明の実施形態において、X(数値)~Y(数値)との記載は、特に明記していない限り、X以上Y以下を意味する。
【0015】
〔冷菓〕
本発明の実施の形態に係る(以下、「本実施形態の」という)冷菓は、ゼラチン含量が0.4質量%以上0.5質量%以下であり、不飽和乳化剤含量が0.075質量%以上0.1質量%以下である冷菓ミックスからなる。以下、詳細に説明する。
【0016】
本実施形態の冷菓とは、乳固形分を含有し冷凍下で保管される菓子(発酵乳を除く。)であり、アイスクリーム類を包含する。
【0017】
アイスクリーム類には、アイスクリーム、アイスミルク及びラクトアイスが包含される。アイスクリーム類、アイスクリーム、アイスミルク及びラクトアイスは、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年12月27日厚生省令第52号、最終改正:令和2年12月4日厚生労働省令第194号)における定めに従う。例えば、上記省令において、「アイスクリーム類」とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであつて、乳固形分3.0%以上を含むもの(発酵乳を除く。)をいう、と規定されている。
【0018】
本実施形態の冷菓は、下記の冷菓ミックスを材料として製造される。
【0019】
本実施形態における冷菓ミックスには、アイスクリーム類の製造において一般的に用いられる冷菓ミックスが包含される。例えば、アイスクリームミックス、アイスミルクミックス、ラクトアイスミックスが挙げられる。
【0020】
本実施形態における冷菓ミックスは、ゼラチンを0.4質量%以上0.5質量%以下含有する。ゼラチン含有量の下限値は、好ましくは0.41質量%であり、より好ましくは0.42質量%である。ゼラチン含有量の上限値は、好ましくは0.47質量%であり、より好ましくは0.45質量%である。
【0021】
ゼラチンとしては、特に限定されず、食用に適したものであればよく、例えば、牛骨由来、牛皮由来、豚皮由来、又は魚鱗由来のゼラチンを使用できる。
【0022】
また、本実施形態における冷菓ミックスは、不飽和乳化剤を0.075質量%以上0.1質量%以下含有する。不飽和乳化剤含有量の下限値は、好ましくは0.08質量%であり、より好ましくは0.085質量%である。不飽和乳化剤含有量の上限値は、好ましくは0.095質量%であり、より好ましくは0.09質量%である。
【0023】
不飽和乳化剤とは、不飽和脂肪酸を構成要素として含む乳化剤(ヨウ素価10以上が好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上)である。具体的には、不飽和脂肪酸が結合した、モノグリセリド(モノアシルグリセロールともいう)、ジグリセリド(ジアシルグリセロールともいう)から選択されるグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどが挙げられるが、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、HLBが3~10、ヨウ素価が20~24のグリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。不飽和乳化剤は、市販の物を使用することができ、例えば理研ビタミン株式会社製の「エマルジーMIF-20」、「エマルジーMI-12」を挙げることができる。これらの不飽和乳化剤は、1種で用いても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
また、本実施形態における冷菓ミックスは、安定剤(ゼラチンを除く)及び/又は飽和乳化剤を含有することが好ましく、両方を含有することがより好ましい。
【0025】
安定剤(ゼラチンを除く)とは、冷菓ミックス原料の品質安定を目的に添加される一般的な成分である。具体的には、キサンタンガム、ジェランガム、グアガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、カラギーナン、ペクチン等の増粘多糖類、寒天、粉末セルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びその誘導体、水溶性大豆多糖類、小麦グルテン分解物などが挙げられるが、ローカストビーンガム、グアガム、タマリンドシードガム、寒天、粉末セルロースが好ましく、ローカストビーンガム、タマリンドシードガムがより好ましい。安定剤は、市販の物を使用することができ、例えば三栄源エフ・エフ・アイ社製の「サンベストNN-620」、「サンベストNN-647」を挙げることができる。これらの安定剤は、1種で用いても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
安定剤(ゼラチンを除く)の含量は、0.05質量%以上0.25質量%以下であることが好ましく、0.07質量%以上0.2質量%以下であることがより好ましく、0.09質量%以上0.15質量%以下であることがさらに好ましく、0.11質量%以上0.13質量%以下であることが最も好ましい。
【0027】
飽和乳化剤とは、冷菓ミックス原料を乳化させることを目的に添加される一般的な成分であり、不飽和脂肪酸を実質的に含まず、飽和脂肪酸を構成要素として含む乳化剤(ヨウ素価が5以下であり、好ましくは3以下)である。具体的には、飽和脂肪酸が結合した、モノグリセリド(モノアシルグリセロールともいう)、ジグリセリド(ジアシルグリセロールともいう)から選択されるグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられるが、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルが好ましく、HLBが3~10、ヨウ素価が0~2のグリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルがより好ましい。飽和乳化剤は、市販の物を使用することができ、例えば理研ビタミン株式会社製の「エマルジーMP」、「エマルジーMS」、「エマルジーSNP」、「ポエムV-100」を挙げることができる。これらの飽和乳化剤は、1種で用いても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
飽和乳化剤の含量は、0.1質量%以上0.4質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以上0.35質量%以下であることがより好ましく、0.18質量%以上0.3質量%以下であることがさらに好ましく、0.2質量%以上0.25質量%以下であることが最も好ましい。
【0029】
冷菓ミックス中の上記以外の配合材料は、特に限定されるものではなく、一般的に用いられる冷菓ミックスの材料を使用できる。例えば、アイスクリームミックス、アイスミルクミックス、ラクトアイスミックスで通常使用される材料を使用できる。具体的には、例えば、砂糖、異性化糖、水あめ、粉末水あめなどの糖質及び甘味料(糖類及び上記安定剤以外の多糖類を含む。);果汁;果肉;油脂;生乳;クリームや脱脂粉乳などの乳製品;香料;着色料;酸味料;調味料;製造用剤;pH調整剤;水(氷を含む);アルコール;卵;塩;チョコレート、抹茶、ナッツ、あん、キャラメル等の風味を呈する副原料を挙げることができる。各材料の配合量は、特に限定されるものではなく、冷菓の種類等に合わせて、適宜、決めることができる。
【0030】
冷菓ミックスに含まれる固形分の量は、冷菓ミックスの質量を基準として、例えば、15~55質量%とすることができ、20~50質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましく、30~40質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
本実施形態の冷菓は、オーバーランが0~150%であることが好ましく、10~100%であることがより好ましく、20~90%であることがさらに好ましい。なお、オーバーランとは、冷菓ミックスに空気を抱き込ませることにより冷菓ミックスの容積以上になった冷菓における冷菓ミックスに対する空気含量であり、次の式で算出される数値である。
オーバーラン(%)=[(冷菓ミックスの質量-冷菓ミックスと同容積の冷菓の質量)/冷菓ミックスと同容積の冷菓の質量]×100
【0032】
本実施形態の冷菓は、製品としての冷菓の全部を構成する実施形態である場合のほか、製品としての冷菓の一部を構成する実施形態であってもよい。本実施形態の冷菓を構成の一部として含む冷菓としては、例えば、本実施形態の冷菓が上記冷菓ミックスとは異なる材料からなるセンターを被覆する被覆層を構成する実施形態やその逆の実施形態(すなわち、本実施形態の冷菓がセンターを構成し、その被覆層が上記冷菓ミックスとは異なる材料からなる実施形態)が挙げられる。
【0033】
上記冷菓ミックスとは異なる材料としては、例えば、上記冷菓ミックスとは異なる冷菓ミックス(例えばゼラチン含量が0.4質量%未満の冷菓ミックスや不飽和乳化剤含量が0.075質量%未満の冷菓ミックス)、チョコレート、キャラメル、練乳、果汁、果実などを挙げることができ、1種に限られず、2種以上を使用してもよい。
【0034】
本実施形態の冷菓の形状は、特に限定されるものではなく種々の形状とすることができ、例えば、カップ形状、バー形状、コーン形状、モナカ形状、サンドアイス形状、ケーキ形状(ホール形状、カット形状、ノエル形状)、球状、半球状とすることができる。
【0035】
〔冷菓の製造方法〕
本実施形態の冷菓の製造方法は、上記本実施形態の冷菓の製造方法であって、ゼラチンを0.4質量%以上0.5質量%以下、かつ不飽和乳化剤を0.075質量%以上0.1質量%以下配合して冷菓ミックスを調製する工程と、前記冷菓ミックスから冷菓を製造する工程と、を含む。冷菓、冷菓ミックス、ゼラチン、不飽和乳化剤及びその他の冷菓ミックス材料の詳細については、前述したとおりである。
【0036】
上記冷菓のより具体的な製造工程としては、例えば、上記冷菓ミックスの材料を混合及び溶解して冷菓ミックスを調製する工程、冷菓ミックスのろ過工程、殺菌工程、均質化工程、冷却工程、エージング工程(例えば10℃以下)、フリージング工程、充填工程、包装工程、急速凍結工程が挙げられる。
【0037】
一般的な冷菓の製造ラインは、冷菓ミックスをつくる調合工程と冷菓ミックスをフリージングし、充填、硬化、包装する製品化工程に大別され、各工程は機械的に制御され、連続的に配管やコンベアを使って流れ作業的に行われるものであり、本実施形態においては、当該製造ラインを使用して冷菓を製造することができる。
【0038】
〔本実施形態の効果〕
本実施形態によれば、冷菓の大量生産の現場でエージングの時間が長時間(例えば1~3時間以上)となる場合においても上記エージング工程においてタンク内で冷菓ミックスがゲル化するリスクが無く、一般的な冷菓の製造ラインで製造することができ、かつ、十分な保形性を有する冷菓及びその製造方法を提供できる。
ここで、「十分な保形性」とは、例えば、室温(例えば23℃)で、30分以上、網上に置いた冷菓から溶けた冷菓が滴下せず、形状が変化しないことをいう。
【0039】
また、本実施形態によれば、上記効果に加え、口どけが良く、冷たさが感じられ、フレーバーリリースが良く、アイスらしいボディ感が有る冷菓及びその製造方法を提供できる。
【0040】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例0041】
<冷菓の製造>
ゼラチン、不飽和乳化剤、安定剤、飽和乳化剤、乳製品、砂糖、水あめ、植物油脂、食塩、着色料、香料及び水を表1~3に記載の配合量にて混合及び溶解して12種類の冷菓ミックスを調製した。冷菓ミックスにおける固形分含量は、約35%であった。不飽和乳化剤、安定剤、飽和乳化剤は、下記の製品を使用した。
不飽和乳化剤:理研ビタミン株式会社製の「エマルジーMIF-20」(HLB=3~4、ヨウ素価約20、ステアリン酸含有量約42%、オレイン酸含有量約17%)
安定剤:市販品(ローカストビーンガム、タマリンド、寒天を含有)
飽和乳化剤:理研ビタミン株式会社製の「エマルジーMP」(HLB3~4、ヨウ素価0.5、パルミチン酸含有量約45%、ステアリン酸含有量約53%)
【0042】
調製した各冷菓ミックスについて、一般的に使用されているアイスクリーム類の製造ラインを使用して、原料混合後、ホモゲナイザーによる均質化、高温短時間殺菌法(HTST:High temperature short-time pasteurization)により、72~85℃、15秒以上の加熱殺菌、冷却(HTSTのプレート間を数秒で通過)、エージング(10℃以下、3~12時間程度)、フリージング、充填の順に行い、冷菓(直径:65mm×高さ:40mm、90mlカップ容器、58.2g、オーバーラン70%)を製造し、-35℃で急速凍結した。
なお、ゼラチン含量0.7質量%の冷菓ミックスについては、上記のエージング工程において冷菓ミックスがゲル化してエージングタンクから冷菓ミックスが流れ出てこなかったため、上記製造ラインは使用せずに、実験者による人手を介して、加熱殺菌、均質化、約30℃になるまで冷却、フリージング、充填の順に行い、冷菓(直径:65mm×高さ:40mm、90mlカップ容器、58.2g、オーバーラン70%)を製造した。
【0043】
【表1】
【0044】
<製造工程中のゲル化の有無>
上記冷菓製造の際、エージング工程における冷菓ミックスのゲル化の有無を確認した。結果を下記の表2~3に示す。なお、ここで、「ゲル化有り」とは、冷菓ミックスがゲル化してエージングタンクから冷菓ミックスが流れ出てこないことをいい、「ゲル化無し」とは、冷菓ミックスがゲル化することなくエージングタンクから冷菓ミックスが流れ出てくることをいう。
【0045】
<保形性の評価(ドリップテスト)>
製造した上記冷菓を-20℃で3時間以上保管後、カップ容器から冷菓を出して室温(23℃)で目開き4.0m/mの網の上に載せて、載せた時点(0分)から30分経過までに滴下したか否か(ドリップの有無)及び形状の変化を確認した。結果を下記の表2~3に示す。
(保形性の基準)
3:ドリップがなく、形状に変化なし(外観上の形状を保っている状態)
2:ドリップはないが、高さが沈む
1:ドリップがあり、溶けて半球状になる
【0046】
<官能評価>
製造した上記冷菓を-20℃で3時間以上保管後、各試験品について、専門パネラー7名により官能評価を実施した。事前に各評価項目(口どけ、冷たさ、フレーバーリリース、アイスらしいボディ感)の基準についてすり合わせを行ない、下記評価基準に従って評価した。評価結果を下記の表2~3に示す。
(官能評価の基準:各3段階評価)(普通2は悪くはないが許容範囲外)
口どけ(口の中での溶けるスピード):良い3、普通2、悪い1
冷たさ(アイスのおいしさとして必須の、冷たさがあるかどうか):冷たい3、普通2、冷たさがない1
フレーバーリリース(口に入れたとき、ミルク感や乳脂肪感の広がりやすさ):良い3、普通2、悪い1
ボディ感(口の中に入れた後の、舌で感じる硬さや緻密さ、濃厚さの総合評価):良い3、普通2、悪い1
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2022-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼラチン含量が0.4質量%以上0.5質量%以下であり、不飽和乳化剤含量が0.075質量%以上0.1質量%以下であり、安定剤(ゼラチンを除く)含量が0.05質量%以上であり、飽和乳化剤含量が0.1質量%以上である冷菓ミックスからなる冷菓。
【請求項2】
前記冷菓ミックスは、前記安定剤(ゼラチンを除く)含量が0.25質量%以下である請求項に記載の冷菓。
【請求項3】
前記冷菓ミックスは、前記飽和乳化剤含量が0.4質量%以下である請求項に記載の冷菓。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の冷菓を構成の一部として含む冷菓。
【請求項5】
ゼラチンを0.4質量%以上0.5質量%以下、不飽和乳化剤を0.075質量%以上0.1質量%以下、安定剤(ゼラチンを除く)を0.05質量%以上、かつ飽和乳化剤を0.1質量%以上配合して冷菓ミックスを調製する工程と、
前記冷菓ミックスから冷菓を製造する工程と、
を含む冷菓の製造方法。