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特開2023-151009熱源機システム、学習済みモデルの生成方法及び学習済みモデル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151009
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】熱源機システム、学習済みモデルの生成方法及び学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/62 20180101AFI20231005BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20231005BHJP
   F24F 11/47 20180101ALI20231005BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20231005BHJP
【FI】
F24F11/62
F24F11/64
F24F11/47
F24F11/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060394
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内村 知行
(72)【発明者】
【氏名】石原 慎也
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB07
3L260BA42
3L260BA75
3L260CB31
3L260CB32
3L260CB43
3L260CB45
3L260CB46
3L260EA04
3L260EA08
3L260EA22
3L260FA02
3L260FA15
3L260FA16
3L260FB23
3L260FB24
3L260FB32
3L260FB33
3L260FC40
(57)【要約】
【課題】演算負荷を軽減しつつ所定の指標の条件に適う運転を適切に行う熱源機システム、学習済みモデルの生成方法及び学習済みモデルを提供する。
【解決手段】熱源機システム1は、熱需要設備99に供給する熱媒体CHを冷却又は加熱する熱源機器11~13と、熱源補機21~23、31~33、41~43と、熱源機器及び熱源補機の運転状態を調節する制御装置70とを備える。制御装置70は学習済みの推定モデル80を有する。推定モデル80は、運転条件及び運転状態が入力されると、消費資源の消費量を出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されている。制御装置70は、推定モデル80から得た複数の消費資源の消費量の出力に基づいて所定の指標の値を演算し、所定の指標の値が条件に適うときの消費資源の消費量に対応する運転状態を特定し、当該特定した運転状態となるように、熱源機器及び熱源補機を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱需要設備に供給する熱媒体を冷却又は加熱する熱源機器と、
前記熱源機器の運転に付随して稼働する熱源補機と、
前記熱源機器及び前記熱源補機の運転状態を調節する制御装置であって、学習済みの推定モデルを有する制御装置と、を備え、
前記熱源補機は、前記熱源機器を通過する前記熱媒体を流動させる熱媒体ポンプと、前記熱源機器において前記熱媒体と直接又は間接的に熱交換を行う熱源流体を前記熱源機器に供給する熱源流体供給装置と、を含み、
前記運転状態は、前記熱源機器の稼働状況、前記熱媒体ポンプが吐出する前記熱媒体の流量、及び前記熱源流体供給装置が供給する前記熱源流体の流量、のうちの少なくとも1つを含み、
前記推定モデルは、前記運転状態と、前記運転状態に影響を及ぼす運転条件と、が入力されると、前記熱源機器及び前記熱源補機の作動により消費される消費資源の消費量を出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されており、
前記運転条件は、前記熱需要設備の需要熱量又はこれに相関する物理量、及び外気温度又はこれに相関する物理量、のうちの少なくとも1つを含み、
前記制御装置は、実際の前記運転条件及び仮定した複数の前記運転状態を前記推定モデルに入力することにより複数の前記消費資源の消費量の出力を得て、前記推定モデルから得た複数の出力に基づいて所定の指標の値を演算し、前記所定の指標の値が条件に適うときの前記消費資源の消費量に対応する前記運転状態を特定し、当該特定した前記運転状態となるように前記熱源機器及び前記熱源補機を制御するものであり、
前記所定の指標は、前記熱源機器及び前記熱源補機の消費動力、前記熱源機器及び前記熱源補機の運転コスト、並びに前記熱源機器及び前記熱源補機の二酸化炭素排出量、のうちの少なくとも1つを含む、
熱源機システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記推定モデルによる複数の前記消費資源の消費量の取得と、前記推定モデルから得た複数の出力に基づく前記所定の指標の値の演算と、前記所定の指標が条件に適うときの前記運転状態の特定と、の一連の処理を複数回繰り返した後に、最終的に特定した前記運転状態となるように前記熱源機器及び前記熱源補機を制御し、
前記推定モデルに入力される複数の前記運転状態は、前回特定された運転状態の値の前後で前回前記推定モデルに入力した前記運転状態の範囲よりも狭い範囲の値とする、
請求項1に記載の熱源機システム。
【請求項3】
前記運転条件は、前記熱需要設備の圧力損失係数を含む、
請求項1又は請求項2に記載の熱源機システム。
【請求項4】
熱需要設備に供給する熱媒体を冷却又は加熱する熱源機器と、前記熱源機器の運転に付随して稼働する熱源補機と、を備える熱源機システムの制御に用いられる学習済みモデルを生成する方法であって、
想定される運転条件の下で、前記熱源機システムの想定される運転状態のときの、前記熱源機器及び前記熱源補機の作動により消費される消費資源の消費量を、シミュレーションにより、前記運転状態を変えながら複数求め、これを複数の運転条件について行うことで、前記運転条件と前記運転状態と前記消費資源の消費量との関係の組みを複数得ることで教師データを生成する工程と、
前記教師データを用いて機械学習処理を施すことにより、前記運転条件及び前記運転状態を入力、前記消費資源の消費量を出力、とする学習済みモデルを生成する工程と、を備え、
前記熱源補機は、前記熱源機器を通過する前記熱媒体を流動させる熱媒体ポンプと、前記熱源機器において前記熱媒体と直接又は間接的に熱交換を行う熱源流体を前記熱源機器に供給する熱源流体供給装置と、を含み、
前記運転条件は、前記熱需要設備の需要熱量又はこれに相関する物理量、及び外気温度又はこれに相関する物理量、のうちの少なくとも1つを含み、
前記運転状態は、前記熱源機器の稼働状況、前記熱媒体ポンプが吐出する前記熱媒体の流量、及び前記熱源流体供給装置が供給する前記熱源流体の流量、のうちの少なくとも1つを含む、
学習済みモデルの生成方法。
【請求項5】
前記教師データを生成する工程は、シミュレーションを行う際の前記運転条件及び前記運転状態の少なくとも一方の決定を、ランダムに行う、
請求項4に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項6】
前記教師データを生成する工程は、想定される前記運転条件よりも広い範囲の前記運転条件の下で想定される前記運転状態よりも広い範囲の前記運転状態のときの前記消費資源の消費量のデータが既に存在する場合に、当該既に存在するデータから想定される前記運転条件の下で想定される前記運転状態のときの前記消費資源の消費量を抽出して前記教師データとする、
請求項4又は請求項5に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項7】
前記運転条件は、前記熱需要設備の圧力損失係数を含み、
前記教師データを生成する工程は、前記シミュレーションにおいて、前記圧力損失係数と前記熱媒体の流量とに基づいて前記熱需要設備における圧力損失を算出したうえで前記消費資源の消費量を求める、
請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の学習済みモデルの生成方法。
【請求項8】
熱需要設備に供給する熱媒体を冷却又は加熱する熱源機器と、前記熱源機器の運転に付随して稼働する熱源補機と、を備える熱源機システムの制御に用いられるコンピュータに搭載される学習済みモデルであって、
前記熱源機システムの運転条件及び運転状態が入力される入力層と、
前記熱源機器及び前記熱源補機の作動により消費される消費資源の消費量が出力される出力層と、
前記運転条件及び前記運転状態を入力、前記消費資源の消費量を出力、とする教師データを用いてパラメータが学習された中間層と、を備え、
前記熱源補機は、前記熱源機器を通過する前記熱媒体を流動させる熱媒体ポンプと、前記熱源機器において前記熱媒体と直接又は間接的に熱交換を行う熱源流体を前記熱源機器に供給する熱源流体供給装置と、を含み、
前記運転条件は、前記熱需要設備の需要熱量又はこれに相関する物理量、及び外気温度又はこれに相関する物理量、のうちの少なくとも1つを含み、
前記運転状態は、前記熱源機器の稼働状況、前記熱媒体ポンプが吐出する前記熱媒体の流量、及び前記熱源流体供給装置が供給する前記熱源流体の流量、のうちの少なくとも1つを含み、
前記運転条件及び前記運転状態を前記入力層に入力し、前記中間層にて演算し、前記消費資源の消費量を前記出力層から出力するようにコンピュータを機能させる、
学習済みモデル。
【請求項9】
請求項8に記載の学習済みモデルを有する制御装置と、
前記熱源機器と、
前記熱源補機と、を備え、
前記制御装置は、実際の前記運転条件及び仮定した複数の前記運転状態を前記学習済みモデルに入力することにより複数の前記消費資源の消費量の出力を得て、前記学習済みモデルから得た複数の出力に基づいて所定の指標の値を演算し、前記所定の指標が条件に適うときの前記消費資源の消費量に対応する前記運転状態を特定し、当該特定した前記運転状態となるように前記熱源機器及び前記熱源補機を制御するものであり、
前記所定の指標は、前記熱源機器及び前記熱源補機の消費動力、前記熱源機器及び前記熱源補機の運転コスト、並びに前記熱源機器及び前記熱源補機の二酸化炭素排出量、のうちの少なくとも1つを含む、
熱源機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は熱源機システム、学習済みモデルの生成方法及び学習済みモデルに関し、特に機械学習されたモデルを用いて機器を制御する熱源機システム、学習済みモデルの生成方法及び学習済みモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
空調機において空気を冷却又は加熱するための冷水又は温水を空調機に供給するため、一般に、熱源装置及びその補機等を適宜組み合わせた熱源機システムが構築される。熱源機システムは、空調機の負荷に応じて、熱源機システムを構成する機器の出力や運転台数の運転状態を調節している。熱源機システムを構成する機器の制御に役立ち得る装置として、実運転データを呼び出して再現させる再現システムと、過去の熱負荷データ及び設備環境データを利用しながらシミュレーションできるシステムとを有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-163727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱源機システムを構成する機器を応答よく制御するために、適切な運転状態を求める演算時間を短くすることが好ましい。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、演算負荷を軽減しつつ所定の指標の条件に適う運転を適切に行う熱源機システム、学習済みモデルの生成方法及び学習済みモデルを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る熱源機システムは、熱需要設備に供給する熱媒体を冷却又は加熱する熱源機器と、前記熱源機器の運転に付随して稼働する熱源補機と、前記熱源機器及び前記熱源補機の運転状態を調節する制御装置であって、学習済みの推定モデルを有する制御装置と、を備え、前記熱源補機は、前記熱源機器を通過する前記熱媒体を流動させる熱媒体ポンプと、前記熱源機器において前記熱媒体と直接又は間接的に熱交換を行う熱源流体を前記熱源機器に供給する熱源流体供給装置と、を含み、前記運転状態は、前記熱源機器の稼働状況、前記熱媒体ポンプが吐出する前記熱媒体の流量、及び前記熱源流体供給装置が供給する前記熱源流体の流量、のうちの少なくとも1つを含み、前記推定モデルは、前記運転状態と、前記運転状態に影響を及ぼす運転条件と、が入力されると、前記熱源機器及び前記熱源補機の作動により消費される消費資源の消費量を出力するように、教師データを用いた機械学習処理が施されており、前記運転条件は、前記熱需要設備の需要熱量又はこれに相関する物理量、及び外気温度又はこれに相関する物理量、のうちの少なくとも1つを含み、前記制御装置は、実際の前記運転条件及び仮定した複数の前記運転状態を前記推定モデルに入力することにより複数の前記消費資源の消費量の出力を得て、前記推定モデルから得た複数の出力に基づいて所定の指標の値を演算し、前記所定の指標の値が条件に適うときの前記消費資源の消費量に対応する前記運転状態を特定し、当該特定した前記運転状態となるように前記熱源機器及び前記熱源補機を制御するものであり、前記所定の指標は、前記熱源機器及び前記熱源補機の消費動力、前記熱源機器及び前記熱源補機の運転コスト、並びに前記熱源機器及び前記熱源補機の二酸化炭素排出量、のうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
このように構成すると、推定モデルを用いることで熱源機システム運転時の演算負荷が軽減されるため、所定の指標の条件に適う運転を適切に行うことができる。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る熱源機システムは、上記本開示の第1の態様に係る熱源機システムにおいて、前記制御装置は、前記推定モデルによる複数の前記消費資源の消費量の取得と、前記推定モデルから得た複数の出力に基づく前記所定の指標の値の演算と、前記所定の指標が条件に適うときの前記運転状態の特定と、の一連の処理を複数回繰り返した後に、最終的に特定した前記運転状態となるように前記熱源機器及び前記熱源補機を制御し、前記推定モデルに入力される複数の前記運転状態は、前回特定された運転状態の値の前後で前回前記推定モデルに入力した前記運転状態の範囲よりも狭い範囲の値とする。
【0009】
このように構成すると、適切な運転状態を複数段階で絞り込むことができ、計算負荷を抑制しながら精度の高い制御が可能となる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係る熱源機システムは、上記本開示の第1の態様又は第2の態様に係る熱源機システムにおいて、前記運転条件は、前記熱需要設備の圧力損失係数を含む。
【0011】
このように構成すると、熱媒体の流量が変化した場合でも適切な運転状態で熱源機システムを運転させることができる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る学習済みモデルの生成方法は、熱需要設備に供給する熱媒体を冷却又は加熱する熱源機器と、前記熱源機器の運転に付随して稼働する熱源補機と、を備える熱源機システムの制御に用いられる学習済みモデルを生成する方法であって、想定される運転条件の下で、前記熱源機システムの想定される運転状態のときの、前記熱源機器及び前記熱源補機の作動により消費される消費資源の消費量を、シミュレーションにより、前記運転状態を変えながら複数求め、これを複数の運転条件について行うことで、前記運転条件と前記運転状態と前記消費資源の消費量との関係の組みを複数得ることで教師データを生成する工程と、前記教師データを用いて機械学習処理を施すことにより、前記運転条件及び前記運転状態を入力、前記消費資源の消費量を出力、とする学習済みモデルを生成する工程と、を備え、前記熱源補機は、前記熱源機器を通過する前記熱媒体を流動させる熱媒体ポンプと、前記熱源機器において前記熱媒体と直接又は間接的に熱交換を行う熱源流体を前記熱源機器に供給する熱源流体供給装置と、を含み、前記運転条件は、前記熱需要設備の需要熱量又はこれに相関する物理量、及び外気温度又はこれに相関する物理量、のうちの少なくとも1つを含み、前記運転状態は、前記熱源機器の稼働状況、前記熱媒体ポンプが吐出する前記熱媒体の流量、及び前記熱源流体供給装置が供給する前記熱源流体の流量、のうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
このように構成すると、運転条件及び運転状態から消費資源の消費量を得ることが短時間で実現可能な学習モデルを得ることができる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係る学習済みモデルの生成方法は、上記本開示の第4の態様に係る学習済みモデルの生成方法において、前記教師データを生成する工程は、シミュレーションを行う際の前記運転条件及び前記運転状態の少なくとも一方の決定を、ランダムに行う。
【0015】
このように構成すると、取り扱うデータの量が必要以上に増加することを抑制することができると共に、教師データの追加作成を比較的簡便に行うことができる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る学習済みモデルの生成方法は、上記本開示の第4の態様又は第5の態様に係る学習済みモデルの生成方法において、前記教師データを生成する工程は、想定される前記運転条件よりも広い範囲の前記運転条件の下で想定される前記運転状態よりも広い範囲の前記運転状態のときの前記消費資源の消費量のデータが既に存在する場合に、当該既に存在するデータから想定される前記運転条件の下で想定される前記運転状態のときの前記消費資源の消費量を抽出して前記教師データとする。
【0017】
このように構成すると、既存のデータを利用して教師データを作成することができ、教師データの作成時間を短縮することができる。
【0018】
また、本開示の第7の態様に係る学習済みモデルの生成方法は、上記本開示の第4の態様乃至第6の態様のいずれか1つの態様に係る学習済みモデルの生成方法において、前記運転条件は、前記熱需要設備の圧力損失係数を含み、前記教師データを生成する工程は、前記シミュレーションにおいて、前記圧力損失係数と前記熱媒体の流量とに基づいて前記熱需要設備における圧力損失を算出したうえで前記消費資源の消費量を求める。
【0019】
このように構成すると、熱媒体の流量が変化した場合でも適切な運転状態を出力することができる学習済みモデルを生成することができる。
【0020】
また、本開示の第8の態様に係る学習済みモデルは、熱需要設備に供給する熱媒体を冷却又は加熱する熱源機器と、前記熱源機器の運転に付随して稼働する熱源補機と、を備える熱源機システムの制御に用いられるコンピュータに搭載される学習済みモデルであって、前記熱源機システムの運転条件及び運転状態が入力される入力層と、前記熱源機器及び前記熱源補機の作動により消費される消費資源の消費量が出力される出力層と、前記運転条件及び前記運転状態を入力、前記消費資源の消費量を出力、とする教師データを用いてパラメータが学習された中間層と、を備え、前記熱源補機は、前記熱源機器を通過する前記熱媒体を流動させる熱媒体ポンプと、前記熱源機器において前記熱媒体と直接又は間接的に熱交換を行う熱源流体を前記熱源機器に供給する熱源流体供給装置と、を含み、前記運転条件は、前記熱需要設備の需要熱量又はこれに相関する物理量、及び外気温度又はこれに相関する物理量、のうちの少なくとも1つを含み、前記運転状態は、前記熱源機器の稼働状況、前記熱媒体ポンプが吐出する前記熱媒体の流量、及び前記熱源流体供給装置が供給する前記熱源流体の流量、のうちの少なくとも1つを含み、前記運転条件及び前記運転状態を前記入力層に入力し、前記中間層にて演算し、前記消費資源の消費量を前記出力層から出力するようにコンピュータを機能させる。
【0021】
このように構成すると、運転条件及び運転状態から消費資源の消費量を短時間で得ることができる。
【0022】
また、本開示の第9の態様に係る熱源機システムは、上記本開示の第8の態様に係る学習済みモデルを有する制御装置と、前記熱源機器と、前記熱源補機と、を備え、前記制御装置は、実際の前記運転条件及び仮定した複数の前記運転状態を前記学習済みモデルに入力することにより複数の前記消費資源の消費量の出力を得て、前記学習済みモデルから得た複数の出力に基づいて所定の指標の値を演算し、前記所定の指標が条件に適うときの前記消費資源の消費量に対応する前記運転状態を特定し、当該特定した前記運転状態となるように前記熱源機器及び前記熱源補機を制御するものであり、前記所定の指標は、前記熱源機器及び前記熱源補機の消費動力、前記熱源機器及び前記熱源補機の運転コスト、並びに前記熱源機器及び前記熱源補機の二酸化炭素排出量、のうちの少なくとも1つを含む。
【0023】
このように構成すると、学習済みモデルを用いることで熱源機システム運転時の演算負荷が軽減されるため、所定の指標の条件に適う熱源機システムの運転を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、学習済みのモデルを用いることで熱源機システム運転時の演算負荷が軽減されるため、所定の指標の条件に適う運転を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施の形態に係る熱源機システムの模式的系統図である。
図2】一実施の形態に係る熱源機システムが備える推定モデルの機械学習処理に用いられる教師データを作成する手順を示すフローチャートである。
図3】教師データを作成する際に仮定する運転条件を例示する図である。
図4】教師データを作成する際に仮定する運転状態を例示する図である。
図5】一部の既存データを流用して教師データを作成する手順を説明するフローチャートである。
図6】推定モデルの概略構成図である。
図7】一実施の形態に係る熱源機システムの制御を説明するフローチャートである。
図8】一実施の形態に係る熱源機システムの制御装置の演算フローを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0027】
<熱源機システムの構成例>
まず図1を参照して、一実施の形態に係る熱源機システム1を説明する。図1は、熱源機システム1の模式的系統図である。熱源機システム1は、3台の熱源機11、12、13と、3台の冷温水ポンプ21、22、23と、3台の冷却塔31、32、33と、3台の冷却水ポンプ41、42、43と、制御装置70と、を主要な構成として備えている。熱源機システム1は、各熱源機11、12、13で冷却又は加熱した冷温水CHを、熱需要設備99に対して、要求に応じて供給するシステムである。熱需要設備99の例として、エアハンドリングユニットやファンコイルユニット等の空調機器が挙げられる。冷温水CHは、熱需要設備99に冷熱又は温熱を搬送する媒体であり、熱媒体に相当する。冷温水CHは、冷熱の媒体である冷水及び温熱の媒体である温水の総称であり、典型的には、熱需要設備99で冷房が行われるときは冷水となり、熱需要設備99で暖房が行われるときは温水となるものである。
【0028】
3台の熱源機11、12、13は、冷温水CHを冷却又は加熱する機器であり、熱源機器に相当する。以下、3台の熱源機を区別するために、それぞれ、第1熱源機11、第2熱源機12、第3熱源機13、と呼称することがある。各熱源機11、12、13は、種々の種類の機器を用いることができるが、本実施の形態では、第1熱源機11及び第2熱源機12が共に同じ特性を有する可変速ターボ冷凍機であり、第3熱源機13が固定速ターボ冷凍機であるとして説明する。各熱源機11、12、13は、入力された電力を利用して、冷温水CHを冷却又は加熱することができる装置になっている。各熱源機11、12、13が冷温水CHから奪う熱量又は冷温水CHに与える熱量を「処理熱量」ということとする。第1熱源機11及び第2熱源機12は、容量制御によって処理熱量を調節することができるようになっている。第3熱源機13は、運転状態と停止状態とを切り替えて運転するものであり、処理熱量は定格か0のどちらかになる。各熱源機11、12、13の運転台数並びに第1熱源機11及び第2熱源機12の運転容量を「稼働状況」ということとする。各熱源機11、12、13は、稼働状況によって処理熱量が決まる。各熱源機11、12、13は、流入及び流出する冷温水CHの温度差及び圧力差を検出することができるようになっている。また、各熱源機11、12、13は、冷温水CHを冷却するために冷温水CHから奪った熱を冷却水CDに与え、冷温水CHを加熱するための熱を冷却水CDから奪うように構成されている。冷却水CDは、各熱源機11、12、13において、冷温水CHとの間で冷媒(不図示)を介して間接的に熱交換を行う流体であり、熱源流体に相当する。
【0029】
3台の冷温水ポンプ21、22、23は、各熱源機11、12、13が作動することに付随して作動する機器であって熱源補機の一形態であり、かつ、冷温水CHを流動させる機器であって熱媒体ポンプに相当する。以下、3台の冷温水ポンプを区別するために、それぞれ、第1冷温水ポンプ21、第2冷温水ポンプ22、第3冷温水ポンプ23、と呼称することがある。各冷温水ポンプ21、22、23は、入力された電力を利用して、冷温水CHを流動させることができる装置になっている。各冷温水ポンプ21、22、23は、本実施の形態では、インバータを有していて、吐出する冷温水CHの流量を無段階に変化させることができるように構成されている。
【0030】
3台の冷却塔31、32、33は、各熱源機11、12、13が作動することに付随して作動する機器であって熱源補機の一形態であり、かつ、冷却水CDを各熱源機11、12、13に供給する機器であって熱源流体供給装置に相当する。以下、3台の冷却塔を区別するために、それぞれ、第1冷却塔31、第2冷却塔32、第3冷却塔33、と呼称することがある。各冷却塔31、32、33は、入力された電力を利用して、冷却水CDと大気(外気)との間で熱交換を行わせることができる装置になっている。各冷却塔31、32、33は、本実施の形態では、各熱源機11、12、13の運転/停止に合わせて運転/停止が行われるが、ファンの回転速度を無段階に又は段階的に調節できるように構成されていてもよい。
【0031】
3台の冷却水ポンプ41、42、43は、各熱源機11、12、13が作動することに付随して作動する機器であって熱源補機の一形態であり、かつ、冷却水CDを各熱源機11、12、13に供給する機器であって熱源流体供給装置の一形態である。以下、3台の冷却水ポンプを区別するために、それぞれ、第1冷却水ポンプ41、第2冷却水ポンプ42、第3冷却水ポンプ43、と呼称することがある。各冷却水ポンプ41、42、43は、入力された電力を利用して、冷却水CDを流動させることができる装置になっている。各冷却水ポンプ41、42、43は、本実施の形態では、インバータを有していて、吐出する冷却水CDの流量を無段階に変化させることができるように構成されている。
【0032】
第1熱源機11は、第1冷温水往管15を介して往ヘッダ19と接続されていると共に、第1冷温水還管25を介して還ヘッダ29と接続されている。第1冷温水ポンプ21は第1冷温水還管25に設けられている。また、第1熱源機11は、第1冷却水往管35及び第1冷却水還管45を介して第1冷却塔31と接続されている。第1冷却水ポンプ41は第1冷却水往管35に設けられている。第2熱源機12は、第2冷温水往管16を介して往ヘッダ19と接続されていると共に、第2冷温水還管26を介して還ヘッダ29と接続されている。第2冷温水ポンプ22は第2冷温水還管26に設けられている。また、第2熱源機12は、第2冷却水往管36及び第2冷却水還管46を介して第2冷却塔32と接続されている。第2冷却水ポンプ42は第2冷却水往管36に設けられている。第3熱源機13は、第3冷温水往管17を介して往ヘッダ19と接続されていると共に、第3冷温水還管27を介して還ヘッダ29と接続されている。第3冷温水ポンプ23は第3冷温水還管27に設けられている。また、第3熱源機13は、第3冷却水往管37及び第3冷却水還管47を介して第3冷却塔33と接続されている。第3冷却水ポンプ43は第3冷却水往管37に設けられている。
【0033】
往ヘッダ19は、各熱源機11、12、13で冷却又は加熱された冷温水CHを収集する部材である。往ヘッダ19は、供給管91を介して熱需要設備99に接続されており、往ヘッダ19に収集された冷温水CHを熱需要設備99に導くことができるようになっている。熱需要設備99と還ヘッダ29とは、回収管92を介して接続されている。還ヘッダ29は、熱需要設備99で熱が利用された冷温水CHを、回収管92を介して流入させることができるようになっている。還ヘッダ29に流入した冷温水CHは、各熱源機11、12、13の稼働状況に応じて、各熱源機11、12、13に分配されるようになっている。このように、還ヘッダ29は、冷熱又は温熱が利用された後の冷温水CHを、各熱源機11、12、13に分配する部材である。
【0034】
制御装置70は、熱源機システム1の動作を司る装置である。制御装置70は、各熱源機11、12、13と通信線で結ばれている。制御装置70は、各熱源機11、12、13から運転情報のデータを受信することができるように構成されている。受信可能な運転データの例として、冷温水CHの出口の温度及び圧力並びに入口の温度及び圧力、冷却水CDの出口の温度及び圧力並びに入口の温度及び圧力、並びに消費電力等の全部又は一部が挙げられる。なお、本実施の形態では、流体の出入圧力差から流量を演算可能であるが、流量を直接検出することとしてもよい。また、制御装置70は、各熱源機11、12、13に制御信号を送信して、各熱源機11、12、13の稼働状況を調節することができるように構成されている。また、制御装置70は、各熱源機11、12、13及び補機動力盤75を介して、熱源補機の動作を制御することができるように構成されている。補機動力盤75は、熱源補機の動作を制御する装置である。補機動力盤75は、各熱源補機と信号線で結ばれている。補機動力盤75は、各熱源機11、12、13から受信した制御信号に基づいて、各冷温水ポンプ21、22、23に対し、供給する動力を調節することで、発停及び吐出する冷温水CHの流量を制御することができるように構成されている。また、補機動力盤75は、各熱源機11、12、13から受信した制御信号に基づいて、各冷却塔31、32、33に対し、供給する動力を調節することで、発停を制御することができるように構成されている。また、補機動力盤75は、各熱源機11、12、13から受信した制御信号に基づいて、各冷却水ポンプ41、42、43に対し、供給する動力を調節することで、発停及び吐出する冷却水CDの流量を制御することができるように構成されている。
【0035】
制御装置70は、さらに、外気温度を検出する外気温度計61から温度情報の信号を受信して、外気温度を把握することができるように構成されている。なお、外気温度計61は、各冷却塔31、32、33の周囲の外気の温度を検出するように配置されていることが好ましい。また、制御装置70は、熱需要設備99における需要熱量の情報を信号として受け取ることで、熱需要設備99における需要熱量を把握することができるように構成されている。また、制御装置70には、設定値として、電力単価、水道料金、電力二酸化炭素排出係数、及び水道二酸化炭素排出係数が入力されて保持されている。なお、電力二酸化炭素排出係数は、単位消費動力当たりの二酸化炭素排出量であり、水道二酸化炭素排出係数は、単位消費水量当たりの二酸化炭素排出量である。制御装置70に設定値として入力されたこれらの値は、変動するとしても一般に数か月から数年の単位で変動するもので、数分から長くても数時間で変動する需要熱量や外気温度等とは性質を異にしている。
【0036】
また、制御装置70は、推定モデル80を有している。推定モデル80は、運転条件及び運転状態を入力して、消費資源の消費量を出力する、コンピュータに機械学習処理が施されたモデルである。ここで、運転条件とは、運転状態に影響を及ぼす条件であり、基本的には熱源機システム1では制御することができない条件である。運転条件として、例えば、熱需要設備99の需要熱量、外気温度、往ヘッダ19から熱需要設備99に向けて流出する冷温水CHの目標温度、熱需要設備99側の圧力損失係数等が挙げられる。他方、運転状態とは、熱源機システム1で制御することが可能な、熱源機器及び熱源補機の運転の状態であり、具体例として、まず、各熱源機11、12、13の発停の状態(換言すれば運転台数)及び処理熱量(換言すれば出力)が挙げられる。また、運転状態の他の例として、各冷温水ポンプ21、22、23における冷温水CHの吐出流量(流量0は停止状態)、各冷却塔31、32、33の発停、各冷却水ポンプ41、42、43における冷却水CDの吐出流量(流量0は停止状態)が挙げられる。また、消費資源は、熱源機システム1の作動の際に消費される資源であり、例えば、電気、水、燃料等が挙げられる。
【0037】
なお、運転条件に熱需要設備99側の圧力損失係数を含めることで、次のような利点がある。まず、前提として、熱需要設備99側の圧力損失は、熱需要設備99を構成する空調機器の運転台数に応じて変化する冷温水CHの総流量によって変化するが、これは冷温水CHの総流量の二乗に比例する。本実施の形態では、この比例定数(係数)を「圧力損失係数」とし、これにより、熱需要設備99側の圧力損失を、圧力損失係数に冷温水CHの総流量の二乗を乗じることで求めることができる。そして、求めた熱需要設備99側の圧力損失に基づいて、各冷温水ポンプ21、22、23の動力を算出することができる。このため、運転状態が変わって熱需要設備99側の冷温水CHの流量が変わっても、各冷温水ポンプ21、22、23の動力を正しく推定することができる。制御装置70が推定モデル80を有している理由として、以下の背景がある。
【0038】
従来のシステム制御の常套手段として、現に熱源機が運転している運転条件に対して様々な運転状態を仮定してシミュレーションを行ない、最適な運転状態を割り出して運転するものがある。しかし、制御できるパラメータが増えるに従い、演算の負荷が大きくなり、あらゆる運転状態を仮定して最適な運転状態を割り出すことはだんだんと難しくなっている。このため、実務的には、可変とするパラメータを絞ったり、様々な仮定を置いて演算量を減らしたり、あるいは演算周期を長くしたりといったことで対応している。このような制限された制御では、真に最適な運転状態で運転することは難しい。そこで、本実施の形態に係る熱源機システム1では、後述する機械学習処理を施した推定モデル80を利用して演算負荷を軽減させつつ、極力最適な運転状態とすることとしている。推定モデル80を生成する手順を概観すると、まず教師データを作成し、作成した教師データを用いてコンピュータに機械学習処理を施す、ということになる。
【0039】
<教師データの作成>
図2は、教師データを作成する手順を示すフローチャートである。以下の説明において熱源機システム1の構成に言及しているときは、適宜図1を参照することとする。また、各熱源機11、12、13を総称して熱源機器ということがある。また、各冷温水ポンプ21、22、23、各冷却塔31、32、33、及び各冷却水ポンプ41、42、43を総称して熱源補機ということがある。本実施の形態では、教師データを作成するためにシミュレーションを用いることとしている。本実施の形態におけるシミュレーションは、典型的には、熱源機システム1の設置場所とは異なる場所で行われる。本実施の形態におけるシミュレーションは、与えられた運転条件と仮定した運転状態における消費資源の消費量を見積もるために用いられる。なお、熱源機システム1のシミュレーション演算は、一般に再帰計算が必要であり、演算には一定の時間を要する。シミュレーションの結果を直接機器の制御に用いる従来の熱源機システムに搭載される演算装置は、設置スペース、消費電力、ノイズ環境、コスト等の問題から高性能の演算装置は採用しづらく、演算時間が長くなる傾向にある。しかし、図2に示す教師データの作成におけるシミュレーションに用いられる演算装置は、熱源機システム1が構築される現場に設置する必要がないことから高性能の演算装置を採用することができる。また、シミュレーション演算に十分な時間を取れるので、幅広い運転状態を仮定して最適な運転状態を探ることができるという利点もある。
【0040】
図2に示すように、教師データを作成するのに際し、まず、固定条件を用意する(S1)。固定条件とは、熱源機器及び熱源補機それぞれの消費エネルギ特性や圧力損失係数(熱需要設備99側の圧力損失係数とは異なる)等の変動しない要素であり、当該熱源機器及び熱源補機に固有のものである。固定条件は、概ね、各機器の特性資料や流体の諸式(例えば、流量と圧損の関係式など)により用意することができる。固定条件を用意したら、運転条件を仮定する(S2)。運転条件は、適用が想定される範囲において仮定することができる。適用が想定される範囲(想定される運転条件)とは、例えば、現実に起こりそうにない外気温70℃のような条件は除外されることを意図している。仮定する運転条件の具体例として、図3中の運転条件「1」に示すように、熱需要設備99の需要熱量6000kW、外気温度25℃、吐出される冷温水CHの目標温度7℃、熱需要設備99側の圧力損失係数200kPa/1000LPM、等が挙げられる。
【0041】
運転条件を仮定したら、運転状態を仮定する(S3)。運転状態も、適用が想定される範囲において仮定することができる。適用が想定される範囲(想定される運転状態)とは、例えば、熱源機の台数が3台のところ、実現不可能な5台運転のような状態は除外されることを意図している。仮定する運転状態の具体例として、図4中の運転状態「1」に示すように、3台の熱源機11、12、13のすべてを運転し、3台の冷温水ポンプ21、22、23における冷温水CHの流量を100%とすることが挙げられる。運転状態「1」では、加えて、3台の冷却塔31、32、33のすべてを運転し、3台の冷却水ポンプ41、42、43における冷却水CDの流量を100%とすることを仮定している。運転状態を仮定したら、仮定した運転条件及び仮定した運転状態の状況下での消費資源の消費量を、シミュレーションにより算出する(S4)。この消費資源の消費量の算出は、例えば以下の要領で行うことができる。
【0042】
まず、仮定した運転条件での各熱源機11、12、13の運転台数と、各冷温水ポンプ21、22、23の冷温水CHの流量とから、冷温水CHの総流量を求めることができる。そして、冷温水CHの総流量と、仮定した運転条件における冷温水CHの目標温度及び需要熱量から、冷温水CHの戻り温度(熱源機器に入る冷温水CHの温度)を求めることができる。次に、各熱源機11、12、13に対する冷温水CHの出入りの温度差と冷温水CHの流量とから、各熱源機11、12、13の負荷熱量を算出することができる。その後、各熱源機11、12、13の効率(COP)を仮定して、処理熱量を求める。そして、処理熱量、各冷却水ポンプ41、42、43における冷却水CDの流量、及び外気温度から、各熱源機11、12、13に入る冷却水CDの温度が求まる。冷却水CDの入口温度及び冷却水CDの流量、並びに冷温水CHの側の条件から、各熱源機11、12、13の効率が求まる。ここで、各熱源機11、12、13について、算出された効率と先に仮定された効率とが一致するように、反復計算(収束計算)を行う。これにより、各熱源機11、12、13の効率が求まり、それにより各熱源機11、12、13の消費電力、及び補給水量等を求めることができる。
【0043】
なお、熱源補機の動力に関し、例えば各冷温水ポンプ21、22、23の消費電力は、次のようにして求めることができる。まず、冷温水CHの流量と熱需要設備99の側の圧力損失係数とから熱需要設備99の側の圧力損失が求まり、さらに、固定条件として定義される各熱源機11、12、13の圧力損失データから各熱源機11、12、13の圧力損失が求められる。両方の圧力損失を合算することで各冷温水ポンプ21、22、23の必要ヘッド(圧力)が求まり、これと冷温水CHの流量とから、各冷温水ポンプ21、22、23の消費動力を推定することができる。これと同様に他の熱源補機の消費電力も推定してこれらを合算することで、熱源機システム1全体の消費電力を求めることができる。また、水道消費量については、各熱源機11、12、13における処理熱量を水の蒸発潜熱で除して求められる蒸発水量と、目標とする濃縮倍率とから計算することができる。なお、一般に行われているように冷却水CDの流量に一定の係数(5%程度)を掛けて水道消費量を求めてもよい。
【0044】
上述の要領で、仮定した運転条件及び仮定した運転状態における消費資源の消費量を算出したら、当該運転条件での消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する(S5)。ここで、消費資源の消費量を算出した数が充足しているか、というのは、比較するのに十分な数が揃っているかということである。つまり、当該運転条件の下ではどのような運転状態とすべきなのかを複数の消費資源の消費量に基づいて算出される指標を比較検討して決定すべきところ、好ましい運転状態を決定するのに足りる消費資源の消費量が存在するかを問うている。これは、すなわち、当該運転条件の下で、運転状態を変えて消費資源の消費量を算出する上述のシミュレーションを複数回行うことを意味している。ここまでの教師データを作成する手順の説明では、この運転条件において1つの運転状態でしか消費資源の消費量を算出していないので、消費資源の消費量を算出した数は充足していないこととなる。当該運転条件での消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程(S5)において、充足していない場合、この運転条件の下で未使用の運転状態を仮定する(S6)。
【0045】
未使用の運転状態の例として、図4中の運転状態「2」に示すように、各熱源機11、12、13及び第3冷温水ポンプ23の運転状態を変えず、第1冷温水ポンプ21及び第2冷温水ポンプ22における冷温水CHの流量を50%に変えることが挙げられる。加えて、図4中の運転状態「2」に示すように、各冷却塔31、32、33及び第3冷却水ポンプ43の運転状態を変えず、第1冷却水ポンプ41及び第2冷却水ポンプ42における冷却水CDの流量を50%とすることが挙げられる。あるいは、別の未使用の運転状態の例として、図4中の運転状態「3」に示すように、運転状態「1」に対して、第3熱源機13及び第3冷却塔33を停止すると共に、第3冷温水ポンプ23及び第3冷却水ポンプ43を停止(流量0)することが挙げられる。なお、可変速ターボ冷凍機とした第1熱源機11及び第2熱源機12のそれぞれを流れる冷温水CHの流量は、両熱源機11、12とも同じとすることが好ましい。その理由は、対称性を考えると両熱源機11、12を異なる条件で運転させることで省エネルギ化を図れる可能性が極めて小さいことなどから、演算負荷を抑えるためである。第1熱源機11及び第2熱源機12のそれぞれを流れる冷却水CDの流量についても同様である。
【0046】
このように、当該運転条件において運転状態を変えていくのに際し、各運転状態の適用を組み合わせ(総当たり)で行うことができる。このとき、各熱源機11、12、13及び各冷却塔31、32、33は、本実施の形態では、運転又は停止の二者択一のため組み合わせは限られる。他方、各冷温水ポンプ21、22、23の冷温水CHの流量及び各冷却水ポンプ41、42、43の冷却水CDの流量は、無段階で変化させることができるので組み合わせが極めて多くなり得る。この場合、例えば、各流量について、停止時(0%)以外の変化幅を、50%~100%の間で10%刻み又は5%刻み等として組み合わせの数を抑制することができる。あるいは、組み合わせ(総当たり)で行うことに代えて、後述する運転条件を変えるときのように、当該運転条件において運転状態をランダムに変えていくこととしてもよい。ただし、いずれの場合であっても、シミュレーションを行う前に、明らかに不適切な運転状態はシミュレーションを行う前、あるいは途中で除外するとよい。例えば、運転中の熱源機器の最大出力を合計しても当該運転条件の需要熱量を満たさなければ、シミュレーションを行わなくてよい。また、需要熱量、冷温水CHの供給温度(熱源機器を出る冷温水CHの温度)、及び冷温水CHの流量から導かれる冷温水CHの戻り温度(熱需要設備99の出口温度)が、仕様の温度を超えてしまう場合も除外できる場合となる。また、冷却水CDの温度が一定以上で冷却水CDの流量の変流量制御が不要な場合等も、除外できる場合となる。
【0047】
上述の要領で未使用の運転状態を仮定したら、消費資源の消費量を算出する工程(S4)に戻り、上述のフローに従う。このフローが繰り返されると、当該運転条件において、複数の運転状態に対する複数の消費資源の消費量の組みが算出される。その後、当該運転条件での消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程(S5)において、充足している場合、仮定した運転条件及び運転状態に対する消費資源の消費量の組みの数が必要数を充足しているか否かを判断する(S7)。ここで、当該組みの必要数は、推定モデル80の生成に必要な教師データの数に相当し、モデルの構成によるが、一般に数百組~数千組程度とするとよい。当該組みの数が必要数を充足しているか否かを判断する工程(S7)において、充足していない場合、未使用の運転条件を仮定する(S8)。未使用の運転条件は、これまでに運転条件及び運転状態に対する消費資源の消費量の組みの特定に用いられていない運転条件である。本実施の形態では、最終的に数百組~数千組程度の運転条件及び運転状態に対する消費資源の消費量の組みを特定するのに向けて、最終的に数百~数千程度の運転条件を仮定することとなる。
【0048】
このように比較的多くの運転条件を仮定する際に、すべての運転条件を仮定できればよいが、運転条件の項目が増えるのに従い、運転条件の数は掛け算で増大するため、膨大となる。また、運転条件はアナログ値であるために切り分けるステップにより生成される運転条件の数が決まってしまうため、一度生成した教師データで十分な機械学習ができなかった場合に、再度機械学習させる運転条件を作成するのが面倒である。そこで、本実施の形態では、シミュレーションを行うコンピュータが、運転条件をランダムに決定(乱数で作成)することとしている。すなわち、各運転条件を、変動し得る範囲で乱数により設定する。これを、未使用の運転条件を仮定する工程(S8)を行うたびに繰り返す。このようにすると、運転条件の数としては組み合わせ(総当たり)で特定する場合より少なくなっても、各項目(パラメータ)は満遍なく分布する。このため、運転条件を乱数により設定する場合は、組み合わせ(総当たり)で特定する場合よりデータ(データ作成時間)が少なくても、精度の高い推定モデル80を作成することが可能な教師データを得ることができる。また、教師データを事後的に追加するために新たに運転条件を仮定する際に、必要な数だけ再度乱数でデータを作成すればよい。
【0049】
上述の要領で、未使用の運転条件を仮定したら、運転状態を仮定する工程(S3)に戻り、以降、上述のフローに従う。そして、仮定した運転条件及び運転状態に対する消費資源の消費量の組みが複数特定され、当該組みの数が必要数を充足しているか否かを判断する工程(S7)において、充足している場合、教師データの作成を終了する。
【0050】
なお、図2に示すフローの変形例として、当該運転条件での消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程(S5)及び組みの数が必要数を充足しているか否かを判断する工程(S7)に代えて、これらを共通化した「消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程」を行うこととしてもよい。この「消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程」は、消費資源の消費量を算出する工程(S4)の後に行われることとなる。そして、「消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程」において、充足していない場合は、未使用の運転条件を仮定する工程(S8)を行った後、運転状態を仮定する工程(S3)に戻ることとなる。他方、「消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程」において、充足している場合は、教師データの作成を終了する。「消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程」を工程(S5)及び工程(S7)に代えて採用した場合、当該運転条件の下で未使用の運転状態を仮定する工程(S6)は省略されることとなる。工程(S6)が省略されるのは、運転状態を仮定する工程(S3)で代用可能だからである。「消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程」の判断基準は、教師データとして当該組みの必要数が用意されたか否かによればよい。このとき、特に運転条件を乱数で作成する場合、同じ運転条件で異なる運転状態の教師データの要素(組)がない場合が多くなるが、推定モデルの入力の種類や推定モデルの構成によってはその方が好ましい結果(高い予測精度)を生じることがある。すなわち、図2のフロー図に示す方法によるか、「消費資源の消費量を算出した数が充足しているか否かを判断する工程」を工程(S5)及び工程(S7)に代えて採用する方法によるかは、推定モデルの得失を踏まえて判断すればよい。
【0051】
このようにして教師データを作成することができるが、他のシステムで利用したデータが存在し、そのデータが利用可能な場合は、例えば以下のようにして、教師データの作成を省力化することができる。その概要は、既存の熱源機システムのために作成済みの教師データと、新たな熱源機システム1のために作成しようとしている教師データとの相違点が、運転条件の範囲の一部の相違である場合に、残りの共通部分を流用することである。以下、具体例を挙げて説明する。
【0052】
図5は、一部の既存データを流用して教師データを作成する手順を説明するフローチャートである。この具体例では、新規に作成する教師データ(以下「新規データ」という。)が、熱源機の最大運転台数が3台、需要熱量が200~6000kW、運転条件及び運転状態に対する消費資源の消費量の組み(以下「組データ」という。)が9000件であるとする。そして、既存の教師データ(以下「既存データ」という。)は、熱源機の最大運転台数が5台、需要熱量が200~10000kW、組データが9000件であったとする。まず、既存データから、新規データの内容に照らして、需要熱量が適合するものを抽出する(S11)。これにより、既存データから、熱源機の最大運転台数が5台で、需要熱量が200~6000kWのデータが抽出され、この例ではこのデータの数が6000件であったことにする。次に、需要熱量で抽出した既存データを、熱源機の運転台数で振り分ける(S12)。これにより、需要熱量は共に200~6000kWであるが、このうち、熱源機の運転台数が3台以下のものと、熱源機の運転台数が3台超のものとに分けられる。この例では、熱源機の運転台数が3台以下のものが5000件あり、熱源機の運転台数が3台超のものが1000件あったことにする。このうち、熱源機の運転台数が3台超のものは、熱源機の台数が3台である新規データには適合しないので、このままでは新規データとして利用できない。しかし、この例では、これを無条件に除外するのではなく、運転条件は引き継ぎ、運転状態を新規データに適合する値に変えたうえで、シミュレーションを行って組データを作成する(S13)。これにより、既存データを参考にして、熱源機の最大運転台数が3台で、需要熱量が200~6000kWのデータが1000件作成される。次に、既存データから抽出した5000件のデータと、既存データを参考にして作成された1000件のデータとを合計する(S14)。これにより、熱源機の最大運転台数が3台で、需要熱量が200~6000kWの、6000件のデータを得ることができる。この時点で、求める新規データには、3000件が不足している。そこで、熱源機の最大運転台数が3台で、需要熱量が200~6000kWの新たな組データを、新規に3000件作成する(S15)。この新たな3000件のデータを作成する際は、前述のように、運転条件をランダムに設定するとよい。最後に、この新たに作成した3000件のデータを、既存データに基づいて得られた6000件のデータに追加する(S16)。これにより、熱源機の最大運転台数が3台、需要熱量が200~6000kWの、組データが9000件得られる。これを新たな熱源機システム1の推定モデル80に適用するための教師データとして用いればよい。このようにして、新規データの作成負担を軽減することができる。
【0053】
なお、これまで説明した教師データの作成は、汎用的な計算機で、プログラムを作成して自動的に行うことができるのは言うまでもない。
【0054】
<推定モデル(学習済みモデル)の生成>
教師データを作成したら、その教師データを用いてコンピュータに機械学習処理を施して、推定モデル80を作成する。本実施の形態では、教師データとして多数(数百組~数千組程度)作成した、運転条件及び運転状態に対する消費資源の消費量の組みを、運転条件及び運転状態を入力、消費資源の消費量を出力としてコンピュータに機械学習処理を施し、推定モデル80を作成する。推定モデル80は、種類や機械学習の方法について、提唱されている多種多様な方法のうち適切なものを用いることができるが、本実施の形態ではニューラルネットワークを用いたものであるとして説明する。ニューラルネットワークは、一般に、入力層、中間層、出力層のパーセプトロン(演算子)を設け、前段のパーセプトロンの出力に、後段のパーセプトロンが重み係数を掛けて合算し、活性化関数を通して新たな出力とすることで演算が行われる。推定モデル80は、多数の数値入力から多数の数値を導出することができるモデルになっている。
【0055】
図6に、推定モデル80の概略構成を示す。図6に示すように、推定モデル80は、入力層と、中間層と、出力層とを備えており、入力層には運転条件及び運転状態が入力され、出力層からは消費資源の消費量が出力されるように構成されている。推定モデル80は、入力層に入力される運転条件として、図3に例示した、需要熱量、外気温度、冷温水CHの目標温度、熱需要設備99の側の圧力損失係数、を含んでいる。また、推定モデル80は、入力層に入力される運転状態として、固定速ターボ冷凍機の運転台数及び可変速ターボ冷凍機の運転台数に加え、これら各種冷凍機それぞれの冷温水CHの流量及び冷却水CDの流量を含んでいる。なお、前述のように、固定速ターボ冷凍機は図1中の第3熱源機13が対応し、可変速ターボ冷凍機は第1熱源機11及び第2熱源機12が対応する。したがって、固定速ターボ冷凍機の運転台数は0台又は1台となり、可変速ターボ冷凍機の運転台数は0台又は1台又は2台となる。また、各冷却塔31、32、33の運転台数は各熱源機11、12、13の運転台数と整合するため、図6では冷却塔の表示を省略している。つまり、各熱源機11、12、13の運転台数と各冷却塔31、32、33の運転台数とは、同じ整数値となる。また、図6に示す入力層の固定速ターボ冷凍機運転冷温水流量は、第3冷温水ポンプ23の流量であり、本実施の形態では、0%又は50~100%のうちのいずれかの値(連続値)となる。同様に、可変速ターボ冷凍機運転冷温水流量は第1冷温水ポンプ21及び第2冷温水ポンプ22の総流量である。また、固定速ターボ冷凍機運転冷却水流量は第3冷却水ポンプ43の流量であり、可変速ターボ冷凍機運転冷却水流量は第1冷却水ポンプ41及び第2冷却水ポンプ42の総流量である。これら各ポンプの流量のレンジは、本実施の形態では、0%又は50~100%のうちのいずれかの値(連続値)である。また、図6に示すように、推定モデル80は、出力層に出力される消費資源の消費量として、熱源機システム1を構成する機器(熱源機器及び熱源補機を含む)が消費する電力量及び補給水量を含んでいる。
【0056】
ニューラルネットワークの場合、モデルの学習とは、教師データの入力データと出力データとが一致するように、中間層のパーセプトロンの重み係数を調整することを意味する。その手順としては、まず教師データを「学習用」と「検証用」とに分離し、学習用のデータを用いて、逆伝播と呼ばれる手法で重み係数を調整し、検証用のデータを用いてその精度を確認し、不十分であれば再度重み係数を調整する、というのが一般的である。なお、学習を繰り返しても必要な精度が得られない場合、前述したように、運転条件をランダムに仮定して教師データを新たに生成し、新たな教師データを用いて追加学習を行うことができる。
【0057】
上述のように構成された(生成された)推定モデル80は、熱源機システム1の制御装置70に搭載される。推定モデル80が搭載された制御装置70は、推定モデル80が出力した消費資源の消費量を利用して、所定の指標を算出する。そして、制御装置70は、所定の指標の値が条件に適うときの消費資源の消費量に対応する運転状態を特定し、その運転状態となるように、熱源機システム1を構成する熱源機器や熱源補機の動作を制御するように構成されている。以下に、制御装置70の制御を含めた、熱源機システム1の作用を説明する。
【0058】
<熱源機システムの作用>
以下、図1を主に参照して、熱源機システム1の作用を説明する。熱源機システム1の運転中は、各熱源機11、12、13のうちの必要なものが稼働し、これに連動して各冷温水ポンプ21、22、23、各冷却塔31、32、33、各冷却水ポンプ41、42、43のうちの必要なものが作動する。差し当たり、状況の複雑化を回避するために、各熱源機11、12、13及びこれらに付随する熱源補機のすべてが作動するものとして説明する。
【0059】
各冷温水ポンプ21、22、23の作動により、還ヘッダ29から各冷温水還管25、26、27を介して冷温水CHが各熱源機11、12、13に流入する。各熱源機11、12、13に流入した冷温水CHは、冷却(冷房時)又は加熱(暖房時)され、典型的には周囲環境温度との差が大きくなる方向に温度が調節される。各熱源機11、12、13で温度が調節された冷温水CHは、各冷温水往管15、16、17を介して往ヘッダ19へ搬送される。往ヘッダ19に流入した冷温水CHは、二次ポンプ(不図示)によって、供給管91を流れて熱需要設備99に供給され、その後回収管92を流れて還ヘッダ29に流入するように、流動する。熱需要設備99に供給された冷温水CHは、熱負荷処理に利用されることで周囲環境温度との差が小さくなる方向に温度が変化する。
【0060】
他方、各冷却水ポンプ41、42、43の作動により、各冷却塔31、32、33から各冷却水往管35、36、37を介して冷却水CDが各熱源機11、12、13に流入する。各熱源機11、12、13に流入した冷却水CDは、各熱源機11、12、13内の冷媒と熱交換した後、各冷却水還管45、46、47を介して各冷却塔31、32、33に戻る。熱源機システム1を構成する各機器の動作は、前述のように、制御装置70が、各熱源機11、12、13の発停を制御している。そして、各熱源機11、12、13の動作に基づいて、補機動力盤75が、各冷却塔31、32、33の発停並びに各冷温水ポンプ21、22、23及び各冷却水ポンプ41、42、43の吐出流量を制御している。熱源機システム1がこのように運転している際、制御装置70は、運転状態が適切になるように(典型的には最適になるように)、以下の要領で制御する。
【0061】
図7は、熱源機システム1の制御を説明するフローチャートである。図8は、熱源機システム1の制御装置70の演算フローを示すブロック図である。制御装置70は、熱源機システム1の運転中、その時点での実際の運転条件(現在の運転条件)を収集する(S21)。運転条件の収集は、具体的には、例えば以下の要領で行うことができる。制御装置70は、外気温度計61から温度情報を受け取る。また、制御装置70は、各熱源機11、12、13から温度及び圧力の情報を受け取って、熱需要設備99の需要熱量、冷温水CHの流量、及び熱需要設備99の圧力損失を計測する。そして、制御装置70は、熱需要設備99の圧力損失と冷温水CHの流量とから、熱需要設備99の圧力損失係数を算出する。また、制御装置70は、熱需要設備99から冷温水CHの目標温度に関する情報を受け取る。制御装置70は、その時点での運転条件を収集したら、運転状態を仮定する(S22)。ここで仮定する運転状態は、先ほど運転条件を収集したときに計測した熱需要設備99の需要熱量や冷温水CHの流量等を参考にして当該計測した値に近い値を採用してもよい。次に、制御装置70は、収集した運転条件と仮定した運転状態とを推定モデル80に入力する(S23)。
【0062】
推定モデル80は、運転条件及び運転状態が入力されると、学習済みのアルゴリズムに基づいて処理を行い、消費資源の消費量を出力する(S24)。本実施の形態における推定モデル80は、前述のように、ニューラルネットワークを用いている。一般に、特にニューラルネットワークを用いた数理モデルの学習(逆伝播計算)には、いわゆるGPUのような計算素子など、非常に高い計算能力が要求されるが、学習済みモデルを用いた推論(順伝播計算)では、そこまで高い計算能力は要求されない。したがって、学習済みモデルを用いた推論では、専用の計算素子などを使用する場合であっても、比較的安価で消費電力等も小さな計算装置で十分に演算することができる。これを本実施の形態に照らせば、学習済みのアルゴリズムに基づいて推論を行う推定モデル80は、教師データ作成時にシミュレーションを行うのに比べて計算負荷が小さく、現場への設置にも適している。
【0063】
推定モデル80が消費資源の消費量を出力したら、制御装置70は、所定の指標を算出する(S25)。ここで、所定の指標は、熱源機システム1のユーザーが熱源機システム1の運転において着目する基準である。所定の指標の例として、熱源機システム1を運転したときの熱源機器及び熱源補機の、消費動力、運転コスト、二酸化炭素排出量、等が挙げられる。所定の指標は、推定モデル80が出力した消費資源の消費量と、制御装置70に設定値として保持されている電力単価、水道料金、電力二酸化炭素排出係数、及び水道二酸化炭素排出係数等と、に基づいて算出することができる。例えば、消費動力は、推定モデル80が出力した総消費電力をそのまま用いることができる。運転コストは、推定モデル80が出力した総消費電力及び補給水量に、電力単価及び水道料金(単価)をそれぞれ乗じたものを合計することで求めることができる。二酸化炭素排出量は、推定モデル80が出力した総消費電力及び補給水量に、電力二酸化炭素排出係数及び水道二酸化炭素排出係数をそれぞれ乗じたものを合計することで求めることができる。
【0064】
制御装置70は、所定の指標を算出したら、所定の指標を算出した数が充足しているか否かを判断する(S26)。ここで、所定の指標を算出した数が充足しているか、というのは、現在の運転条件の下ではどのような運転状態とすべきなのかを複数の所定の指標を比較検討して決定すべきところ、好ましい運転状態を決定するのに足りる所定の指標が存在するかを問うている。制御装置70は、所定の指標を算出した数が充足しているか否かを判断する工程(S26)において、充足していない場合は、絞り込み中であるか否かを判断する(S27)。ここで、絞り込みとは、最初は比較的広い範囲の複数の所定の指標を比較して適切な所定の指標の大まかな値を特定し、次にその周辺の値を前回よりも狭い範囲で算出し比較してより適切な所定の指標の値を特定するように、段階的に絞り込んでいくことである。本実施の形態では、この絞り込みを、従来の制御の不都合を解消するために取り入れている。従来の制御では、演算時間を短縮しようとする際に、そのとき(現在)の運転状態の近傍の条件、例えば運転台数のみを変化させたり、各種流量のみを変化させたりして、シミュレーションで最適な運転状態を探る範囲を限定するなどしていた。この場合、そのとき(現在)の運転状態との差異が大きな状態は検討の対象とならないので、真に最適な状態を見逃す可能性がある。これに対し、本実施の形態のように絞り込みを行うことで、真に最適な状態を見出す可能性を高めることができる。本実施の形態では、推定モデル80を利用して演算時間を短縮していることが、絞り込みを可能にする要因の1つとなっている。制御装置70は、絞り込み中であるか否かを判断する工程(S27)において、絞り込み中でない場合(運転状態を未だ一度も特定していない場合)、未使用の運転状態を仮定する(S28)。ここでの未使用の運転状態は、適切な所定の指標の値の大まかな位置を把握するために、比較的広範囲の中から仮定することができる。未使用の運転状態を仮定したら、収集した運転条件と仮定した運転状態とを推定モデル80に入力する工程(S23)に戻る。このときに推定モデル80に入力する運転条件は収集済みのその時点での運転条件(S21)であり、推定モデル80に入力する運転状態は仮定した未使用の運転状態(S28)である。
【0065】
収集した運転条件と仮定した運転状態とを推定モデル80に入力する工程(S23)に戻ったら、制御装置70は、上述のように、推定モデル80に消費資源の消費量を出力させ(S24)、所定の指標を算出する(S25)。そして、再び、所定の指標を算出した数が充足しているか否かを判断する工程(S26)に至る。制御装置70は、所定の指標を算出した数が充足するまで、上述の工程を繰り返す。このとき、本実施の形態では、推定モデル80を用いて消費資源の消費量を得ているため、比較的短時間で比較的多くの所定の指標を算出することができる。仮に、従来の熱源システムのシミュレーションを用いたとすると、収束計算(反復計算)が必要になることから、比較的長い演算時間を要する。例えば、1条件が1秒程度であっても、条件数が多ければ演算時間が長くなり、実用的な時間内に計算できないおそれがある。他方、本実施の形態のように、推定モデル80により演算すると、反復計算を擁しないので比較的早く演算が可能で、これにより、広範な条件から最適な運転状態を見つけることが可能となる。
【0066】
所定の指標を算出した数が充足しているか否かを判断する工程(S26)において、充足している場合、制御装置70は、所定の指標の値が条件に適うときの運転状態を特定する(S29)。ここで、所定の指標の値が条件に適うとは、合理的に考えて選択する価値がある値であり、典型的には最適な値である。例えば、所定の指標が運転コストの場合は小さいほど好ましく、二酸化炭素排出量の場合は少ないほど好ましく、省エネ度の場合は高いほど好ましい。最適な所定の指標の値の判断の仕方(運転状態を特定するための所定の指標の条件)は、いくつか考えられる。例えば、所定の指標が運転コストの場合、単純に最小のものを選んでもよく、最小のものから1~2%程度の範囲に入る(差異が誤差程度と考えられる)運転状態の中で、熱源機器及び冷却塔の運転台数が少ないなどの別の観点を加味してもよい。あるいは、所定の指標の適切な範囲の中の複数の値に加重平均をかけて、その所定の指標の値での運転状態を採用してもよい。あるいは、所定の指標の適切な範囲の中の複数の値(例えば上位3つ)に対応する運転状態の平均を運転状態として採用してもよい。そして、条件に適う所定の指標の値を選定したら、その所定の指標の算出に用いた消費資源の消費量に対応する運転状態を、推定モデル80の入力に見つけることができる。
【0067】
所定の指標の値が条件に適うときの運転状態を特定したら、制御装置70は、絞り込みが終了したか否かを判断する(S30)。例えば、2段階の絞り込みが予定されていた場合は、所定の指標の値が条件に適うときの運転状態の特定を2回行ったか否かを判断すればよい。なお、2段階の絞り込みを例示すると、以下のものが挙げられる。例えば、第一段階では、推定モデル80に入力する運転状態のうち、熱源機器の運転台数を変化させると共に、冷温水CHの流量及び冷却水CDの流量を10%刻みで探索したうえで、その中で最適とされる所定の指標を探索する。続く第二段階では、その条件から冷温水CHの流用や冷却水CDの流量を、1%刻みで±5%の範囲で変化させて、さらに最適な条件を探ることができる。なお、絞り込みは、2段階に限らず、3段階以上行ってもよい。
【0068】
絞り込みが終了したか否かを判断する工程(S30)において絞り込みが終了していない場合、制御装置70は、先に特定した運転状態の周辺で未使用の運転状態を仮定する(S31)。なお、前述の絞り込み中であるか否かを判断する工程(S27)において絞り込み中である場合も、先に特定した運転状態の周辺で未使用の運転状態を仮定する工程(S31)に進む。この工程(S31)は、未使用の運転状態を仮定する工程(S28)と類似しているが、ここで仮定する運転状態(S31)は、先に特定した運転状態(S29)の周辺の比較的狭い範囲としている点で、工程(S28)で仮定した運転状態と異なっている。換言すれば、工程(S31)で仮定した運転状態は、工程(S28)で仮定した運転状態に比べて、狭い範囲の中から選択された運転状態となっている。先に特定した運転状態の周辺で未使用の運転状態を仮定したら(S31)、収集した運転条件と仮定した運転状態とを推定モデル80に入力する工程(S23)に戻る。以降、上述の要領で図7に示すフローを進み、絞り込みが終了したか否かを判断する工程(S30)において絞り込みが終了した場合、制御装置70は、最後に特定した運転状態となるように、熱源機システム1を構成する機器を制御する(S32)。換言すれば、制御装置70は、最後に特定した運転状態となるように、各熱源機11、12、13の運転台数を制御し、各冷温水ポンプ21、22、23及び各冷却水ポンプ41、42、43の吐出流量を制御する。制御装置70がこのように熱源機システム1を構成する各機器を制御することにより、消費動力、運転コスト、二酸化炭素排出量等の所定の指標のうちユーザーが設定したものが条件に適うように(例えば最小になるように等)運転することができる。制御装置70によるこのような各機器の制御は、運転状態が急変することを避けるために、例えば台数の変化を段階的に行ったり、流量の指令値を徐々に変化させたりしてもよい。
【0069】
最後に特定した運転状態となるように熱源機システム1を構成する機器を制御したら、制御装置70は、熱源機システム1の運転を停止する指令を受けたか否かを判断する(S33)。運転を停止する指令を受けていない場合、制御装置70は、見直し条件が充足したか否かを判断する(S34)。ここで、見直し条件とは、前述のように需要熱量や外気温度等の運転条件は数分から長くても数時間で変動し得るところ、最後に特定した運転状態がその時点(現時点)での実際の運転条件に照らして適切かを見直すための条件である。見直し条件として、典型的には、所定の時間が経過することが挙げられる。所定の時間は、例えば10分としてもよく、あるいは、制御装置70の演算時間と熱源機システム1の制御の精度とを勘案して、10分以外の、3分、5分、15分、30分等、状況に応じて適宜決定することができる。また、見直し条件として、熱需要設備99の需要熱量が設定された以上の変化をした場合や、その他運転条件が大きく変化した場合を、所定の時間の経過に代えて、又は所定の時間の経過に重畳して、採用してもよい。見直し条件が充足したか否かを判断する工程(S34)において、見直し条件が充足した場合、その時点での運転条件を収集する工程(S21)に戻り、以降、上述のフローに従う。他方、見直し条件が充足していない場合、熱源機システム1の運転を停止する指令を受けたか否かを判断する工程(S33)に戻る。そして、熱源機システム1の運転を停止する指令を受けたか否かを判断する工程(S33)において、運転を停止する指令を受けた場合、制御装置70は、熱源機システム1の運転を停止する。
【0070】
以上で説明したように、本実施の形態に係る熱源機システム1によれば、推定モデル80を用いることで熱源機システム1の運転時の演算負荷が軽減されるため、所定の指標の条件に適う運転を適切に行うことができる。また、所定の指標の値が条件に適うときの運転状態の特定を、複数段階で絞り込んで行うので、計算負荷を抑制しながら精度の高い制御を行うことが可能となる。また、運転条件に熱需要設備99の側の圧力損失係数を含んでいる場合は、熱需要設備99に供給される冷温水CHの流量が変化した場合でも、適切な運転を行うことができる。
【0071】
<その他>
以上の説明では、熱源機器として、第1熱源機11及び第2熱源機12が可変速ターボ冷凍機であり、第3熱源機13が固定速ターボ冷凍機であるとした。しかしながら、熱源機器は、ターボ冷凍機以外の、吸収冷凍機、冷温水発生機、ヒートポンプ等、用途に応じて種々の熱源機器を用いることができる。また、以上の説明では、第1熱源機11及び第2熱源機12が共に同じ特性を有する同種の機器であるとしたが、異なる特性を有する同種の機器であってもよく、異種の機器であってもよい。また、以上の説明では、熱源機器として3台の熱源機11、12、13を備えることとしたが、熱源機器の合計台数は3台に限らず、用途に応じて3台よりも多くても少なくてもよい。例えば、異種の機器について3台を超えて備えることとしてもよく、同種の機器を複数台(例えば2台又は3台等)ずつ複数種類備えることとしてもよい。
【0072】
以上の説明では、各熱源機11、12、13が、流入及び流出する冷温水CHの温度差及び圧力差を検出することができるようになっていることとした。しかしながら、各熱源機11、12、13が温度及び圧力を検出する計器を備える代わりに、近傍の配管に温度及び圧力を検出する計器を設けることとしてもよい。
【0073】
以上の説明では、熱源流体供給装置として冷却塔31、32、33を備え、熱源流体が冷却水CDであるとした。しかしながら、熱源流体供給装置が空冷のヒートポンプチラーであり、熱源流体が空気であってもよい。この場合、空冷のヒートポンプチラーが熱源機器と熱源流体供給装置とを兼ねることとなり、換言すれば熱源機器と熱源流体供給装置とが典型的には物理的に一体に(1つの筐体に収容されて)構成されることとなる。
【0074】
以上の説明では、制御装置70が補機動力盤75を介して間接的に熱源補機を制御することとしたが、制御装置70が熱源補機を直接制御することとしてもよい。
【0075】
以上の説明では、制御装置70に、設定値として、電力単価、水道料金、電力二酸化炭素排出係数、及び水道二酸化炭素排出係数が入力されて保持されていることとしたが、設定値は適宜増減してもよい。例えば、油やガス等の燃料を燃焼させて熱源を得る熱源機器(例えば吸収冷凍機)を備える場合は、燃料単価を設定値に含めることとしてもよい。反対に、水道を利用しない場合は、水道料金を設定値から省いてもよい。
【0076】
以上の説明では、教師データを作成する際に、運転条件を仮定する前に固定条件を用意することとしたが、固定条件として例示列挙した項目を運転条件として扱うこととしてもよい。この場合、図2に示すフローチャート中の固定条件を用意する工程(S1)が省略されることとなる。
【0077】
以上の説明では、入力層に入力される運転条件に含まれる項目が、需要熱量、外気温度、冷温水CHの目標温度、及び熱需要設備99側の圧力損失係数であるとしたが、入力項目は適宜増減してもよい。例えば、熱需要設備99側の圧力損失係数やその他を入力項目から除外してもよい。しかしながら、熱需要設備99側の圧力損失係数を入力項目に含めると、熱需要設備99側の冷温水CHの流量が変わっても、各冷温水ポンプ21、22、23の動力を正しく推定することができるという利点がある。また、運転条件として入力される需要熱量は、これ自身の値に代えて、需要熱量に相関する物理量を運転条件として入力してもよい。需要熱量に相関する物理量として、例えば、冷温水CHの戻り温度(各熱源機11、12、13に流入する冷温水CHの温度)等が挙げられる。また、運転条件として入力される外気温度は、これ自身の値に代えて、外気温度に相関する物理量を運転条件として入力してもよい。外気温度に相関する物理量として、例えば、冷却水CDの入口温度(各熱源機11、12、13に流入する冷却水CDの温度)や、冷却塔31、32、33の下部水槽の温度等が挙げられる。
【0078】
以上の説明では、出力層に出力される消費資源の消費量に含まれる項目が、電力量及び補給水量であるとしたが、出力項目は適宜増減してもよい。例えば、油やガス等の燃料を燃焼させて又は蒸気を導入して熱源を得る熱源機器(例えば吸収冷凍機)を備える場合は、燃料消費量、蒸気消費量、及び/又はブロー水量(下水処理量)を適宜含めることとしてもよい。
【0079】
以上の説明では、熱源機システム1の運転の制御において、所定の指標の値が条件に適うときの運転状態の特定を、複数段階で絞り込んで行うこととした。しかしながら、複数段階の絞り込みを行わずに、最初に特定した、所定の指標の値が条件に適うときの運転状態になるように、熱源機システム1を制御することとしてもよい。この場合、図7に示すフローから、絞り込み中であるか否かを判断する工程(S27)、絞り込みが終了したか否かを判断する工程(S30)、及び先に特定した運転状態の周辺で未使用の運転状態を仮定する工程(S31)が省略されることとなる。そして、所定の指標を算出した数が充足しているか否かを判断する工程(S26)において充足していない場合に、未使用の運転状態を仮定する工程(S28)に進むこととなる。また、所定の指標の値が条件に適うときの運転状態を特定する工程(S29)の後に、特定した運転状態となるように熱源機システム1を構成する機器を制御する工程(S32)に進むこととなる。
【符号の説明】
【0080】
1 熱源機システム
11、12、13 熱源機(熱源機器)
21、22、23 冷温水ポンプ(熱源補機、熱媒体ポンプ)
31、32、33 冷却塔(熱源補機、熱源流体供給装置)
41、42、43 冷却水ポンプ(熱源補機、熱源流体供給装置)
70 制御装置
80 推定モデル(学習済みモデル)
99 熱需要設備
CD 冷却水(熱源流体)
CH 冷温水(熱媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8