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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151010
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/24 20060101AFI20231005BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20231005BHJP
   E02F 3/43 20060101ALI20231005BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
E02F9/24 H
E02F9/26 B
E02F3/43 M
E02F9/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060395
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】成川 理優
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 哲平
(72)【発明者】
【氏名】小谷 匡士
(72)【発明者】
【氏名】伊東 英明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】石本 英史
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AC09
2D003BA01
2D003BA07
2D003BB11
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB04
2D003DB05
2D003FA02
2D015GA03
2D015GB04
2D015GB07
2D015HA03
2D015HB02
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】ベッセルの側部に作業装置が接近した後に、オペレータの意図を反映してベッセルとの干渉を防止しつつ作業装置の姿勢を調整可能な作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械の制御装置は、旋回操作が行われた場合、アームの先端部の動作開始位置、及びその位置とベッセルの側部との間の干渉防止位置を特定し、動作開始位置から干渉防止位置までの範囲において、干渉防止位置に近いほど大きくかつ干渉防止位置で干渉防止高さとなる下限値を演算する。制御装置は、旋回体の動作中は、アームの操作を無効にするとともにアームの先端部の高さが下限値を下回らないようにブーム及び旋回体の動作を制御する。制御装置は、アームの先端部が干渉防止位置を越えた場合、アームの操作を有効にする。制御装置は、アームの操作に応じて動作するアームの先端部の高さが干渉防止高さを下回らないように、ブーム及びアームの少なくとも一方の動作を制御する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体に対して旋回可能に設けられる旋回体と、
前記旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、
前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出装置と、
前記作業装置により掘削された掘削物が積み込まれる被積込機械のベッセルの位置を取得するベッセル位置取得装置と、
前記アームを操作するためのアーム操作装置と、
前記旋回体を操作するための旋回操作装置と、
前記作業装置及び前記旋回体の動作を制御する制御装置と、を備え、
底部及び複数の側部を有し上面が開放された前記ベッセルに掘削した対象物を積み込む作業機械において、
前記制御装置は、
前記ベッセル位置取得装置により取得される前記ベッセルの位置に基づいて、前記ベッセルと前記作業装置とが干渉しない前記アームの先端部の高さを干渉防止高さとして演算し、
前記バケットが前記ベッセルの前記側部に近づく方向の旋回操作が行われたことを含む干渉防止制御実行条件が成立したか否かを判定し、
前記干渉防止制御実行条件が成立したと判定された場合、前記姿勢検出装置により検出される前記作業装置の姿勢に基づいて、前記アームの先端部の旋回動作前の周方向の位置である動作開始位置を特定するとともに、前記動作開始位置と前記ベッセルの前記側部との間で前記ベッセルと前記作業装置とが干渉しない前記アームの先端部の旋回方向の角度位置である干渉防止位置を特定し、
当該特定された前記動作開始位置から前記干渉防止位置までの前記旋回体の動作範囲において、前記干渉防止位置に近いほど大きくかつ前記干渉防止位置で前記干渉防止高さとなる、前記アームの先端部の旋回方向の角度位置に応じた前記作業装置の高さ方向の下限値を演算し、
前記動作開始位置から前記干渉防止位置までの前記旋回体の動作中は、前記アーム操作装置による前記アームの操作を無効にするとともに、前記アームの先端部の高さが前記下限値を下回らないように前記ブーム及び前記旋回体の動作を制御し、
前記アームの先端部が前記干渉防止高さを越える高さに達している状態で前記干渉防止位置を越える旋回方向の角度位置に達したことを含む前記アームの操作の有効化条件が成立したか否かを判定し、
前記有効化条件が成立した場合、前記アーム操作装置による前記アームの操作を有効にし、
前記バケットが前記干渉防止位置を越えて旋回した後に平面視で前記ベッセルの前記側部を通過したか否かを判定し、
前記バケットが前記ベッセルの前記側部を通過したと判定されていない場合、前記アーム操作装置による前記アームの操作に応じて動作する前記アームの先端部の高さが前記干渉防止高さを下回らないように、前記ブーム及び前記アームの少なくとも一方の動作を制御し、
前記バケットが前記ベッセルの前記側部を通過したと判定された場合、前記干渉防止高さよりも低い位置への前記アームの先端部の動作を許容する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記干渉防止制御実行条件には、前記作業装置の姿勢が運搬姿勢であることが含まれ、
前記制御装置は、前記姿勢検出装置の検出結果に基づいて、前記作業装置の姿勢が運搬姿勢であるか否かを判定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記バケット内の運搬対象物の情報を取得する対象物情報取得装置を備え、
前記干渉防止制御実行条件には、前記バケット内に運搬対象物が存在していることが含まれ、
前記制御装置は、前記対象物情報取得装置により取得された前記バケット内の運搬対象物の情報に基づいて、前記バケット内に運搬対象物が存在しているか否かを判定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記ベッセルは、互いに対向して配置される一対の前記側部としての第1側部及び第2側部を有し、
前記ベッセル位置取得装置は、前記作業機械に対する前記ベッセルの相対位置を取得し、
前記制御装置は、
前記ベッセル位置取得装置により取得された前記作業機械に対する前記ベッセルの相対位置に基づいて、平面視で前記バケットが前記ベッセルの外側から前記第1側部に近づく方向の旋回操作が行われたことを含む前記干渉防止制御実行条件が成立したか否かを判定し、
前記有効化条件が成立した場合には、前記アーム操作装置による前記アームの操作を有効にし、
前記バケットが前記干渉防止位置を越えて旋回した後に平面視で前記第1側部を通過したか否かを判定し、
前記バケットが前記第1側部を通過したと判定されていない場合、前記アーム操作装置による前記アームの操作に応じて動作する前記アームの先端部の高さが前記干渉防止高さを下回らないように、前記ブーム及び前記アームの少なくとも一方の動作を制御し、
前記バケットが前記第1側部を通過したと判定された場合、前記干渉防止高さよりも低い位置への前記アームの先端部の動作を許容し、
前記第1側部と前記第2側部との間において、前記底部と前記バケットとが接触しない前記アームの先端部の高さ位置であるベッセル内下限値を設定し、
前記バケットが前記第1側部を通過して前記ベッセル内の前記第1側部と第2側部との間を移動している場合、前記アームの先端部の高さが前記ベッセル内下限値を下回らないように、前記ブーム及び前記アームの少なくとも一方の動作を制御する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機械において、
前記ベッセル位置取得装置により取得された前記作業機械に対する前記ベッセルの相対位置に基づいて、平面視で前記バケットが前記ベッセルの内側から前記第1側部に近づく方向の旋回操作が行われたことを含む前記干渉防止制御実行条件が成立したか否かを判定し、
前記有効化条件が成立した場合には、前記アーム操作装置による前記アームの操作を有効にし、
前記バケットが平面視で前記第1側部を通過したか否かを判定し、
前記バケットが前記第1側部を通過したと判定されていない場合、前記アーム操作装置による前記アームの操作に応じて動作する前記アームの先端部の高さが前記干渉防止高さを下回らないように、前記ブーム及び前記アームの少なくとも一方の動作を制御し、
前記バケットが前記第1側部を通過したと判定された場合、前記干渉防止高さよりも低い位置への前記アームの先端部の動作を許容する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
走行体に旋回可能に取り付けられた旋回体と、旋回体に取り付けられた多関節型の作業装置と、を備えた、例えば油圧ショベルなどの作業機械が知られている。この油圧ショベルなどに設けられた作業装置は、旋回体に回動可能に取り付けられるブームと、ブームに回動可能に取り付けられるアームと、アームに回動可能に取り付けられるバケットと、を有する。
【0003】
油圧ショベルは、作業装置により掘削した土砂等の掘削物をダンプトラック等の被積込機械の荷台(ベッセル)の上方まで運搬する運搬動作と、掘削物をダンプトラックの荷台に放出する放出動作と、を行って掘削物の積込作業を行う。
【0004】
積込作業を行う際、ダンプトラックに対してバケットの位置が低いと、運搬動作において、バケットがダンプトラックに干渉するおそれがある。一方で、ダンプトラックに対してバケットが過度に高い位置から放出動作を行うと、放出された掘削物によってダンプトラックがダメージを受けるおそれがある。そのため、積込作業を行う際、油圧ショベルのオペレータは、ダンプトラックの位置を確認しながら、旋回体の動作と作業装置の動作を連動させる必要があり、作業には習熟が必要である。また、放出動作後に、再度、掘削動作を行うために、掘削対象物に向けて作業装置を移動させる準備動作においても、バケットとダンプトラックとの干渉を避ける必要がある。
【0005】
特許文献1には、旋回体の旋回によってバケットがダンプトラックに接触することを防止する制御を実行可能な制御装置を備えた油圧ショベルが開示されている。特許文献1に記載の油圧ショベルの制御装置は、ダンプトラックの位置情報と方位情報に基づき放出位置を特定し、特定した放出位置に基づき、干渉回避位置を特定する。特許文献1に記載の制御装置は、高さが放出位置(排土位置)と等しく、かつ旋回体の旋回中心からの距離が旋回中心から放出位置までの距離と等しく、かつバケットの下方にダンプトラックが存在しない位置である干渉回避位置を特定し、バケットが干渉回避位置に到達した後、旋回体のみを駆動させるように操作信号を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-65661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
油圧ショベルのオペレータは、バケットが荷台の近くに位置しているときに、作業装置の姿勢の調整をすることがある。例えば、積込作業において、バケットからダンプトラックに対して掘削物の放出を行うのに適した位置は、ダンプトラックに放出された掘削物の状況に応じて異なる。そのため、油圧ショベルのオペレータは、積込作業において、バケットがダンプトラックの上方に位置した後に、バケットが所望の放出位置に到達するよう作業装置の姿勢を調整することがある。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の油圧ショベルの制御装置は、干渉回避位置から放出位置へバケットを移動させる際に旋回体のみを動作させる。特許文献1に記載の技術では、バケットがダンプトラックの荷台に接近した後に、オペレータの意図を反映させて作業装置を動作させて放出位置を調整することができないため、オペレータに違和感を与えるおそれがある。
【0009】
本発明は、積込作業などにおいて、作業装置と被積込機械のベッセルとの干渉を防止可能な作業機械であって、ベッセルの側部に作業装置が接近した後にオペレータの意図を反映して作業装置の姿勢を調整可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による作業機械は、走行体と、前記走行体に対して旋回可能に設けられる旋回体と、前記旋回体に取り付けられ、ブーム、アーム及びバケットを有する作業装置と、前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出装置と、前記作業装置により掘削された掘削物が積み込まれる被積込機械のベッセルの位置を取得するベッセル位置取得装置と、前記アームを操作するためのアーム操作装置と、前記旋回体を操作するための旋回操作装置と、前記作業装置及び前記旋回体の動作を制御する制御装置と、を備え、底部及び複数の側部を有し上面が開放された前記ベッセルに掘削した対象物を積み込む。前記制御装置は、前記ベッセル位置取得装置により取得される前記ベッセルの位置に基づいて、前記ベッセルと前記作業装置とが干渉しない前記アームの先端部の高さを干渉防止高さとして演算し、前記バケットが前記ベッセルの前記側部に近づく方向の旋回操作が行われたことを含む干渉防止制御実行条件が成立したか否かを判定し、前記干渉防止制御実行条件が成立したと判定された場合、前記姿勢検出装置により検出される前記作業装置の姿勢に基づいて、前記アームの先端部の旋回動作前の周方向の位置である動作開始位置を特定するとともに、前記動作開始位置と前記ベッセルの前記側部との間で前記ベッセルと前記作業装置とが干渉しない前記アームの先端部の旋回方向の角度位置である干渉防止位置を特定し、当該特定された前記動作開始位置から前記干渉防止位置までの前記旋回体の動作範囲において、前記干渉防止位置に近いほど大きくかつ前記干渉防止位置で前記干渉防止高さとなる、前記アームの先端部の旋回方向の角度位置に応じた前記作業装置の高さ方向の下限値を演算し、前記動作開始位置から前記干渉防止位置までの前記旋回体の動作中は、前記アーム操作装置による前記アームの操作を無効にするとともに、前記アームの先端部の高さが前記下限値を下回らないように前記ブーム及び前記旋回体の動作を制御し、前記アームの先端部が前記干渉防止高さを越える高さに達している状態で前記干渉防止位置を越える旋回方向の角度位置に達したことを含む前記アームの操作の有効化条件が成立したか否かを判定し、前記有効化条件が成立した場合、前記アーム操作装置による前記アームの操作を有効にし、前記バケットが前記干渉防止位置を越えて旋回した後に平面視で前記ベッセルの前記側部を通過したか否かを判定し、前記バケットが前記ベッセルの前記側部を通過したと判定されていない場合、前記アーム操作装置による前記アームの操作に応じて動作する前記アームの先端部の高さが前記干渉防止高さを下回らないように、前記ブーム及び前記アームの少なくとも一方の動作を制御し、前記バケットが前記ベッセルの前記側部を通過したと判定された場合、前記干渉防止高さよりも低い位置への前記アームの先端部の動作を許容する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積込作業などにおいて、作業装置と被積込機械のベッセルとの干渉を防止可能な作業機械であって、ベッセルの側部に作業装置が接近した後にオペレータの意図を反映して作業装置の姿勢を調整可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る油圧ショベルの側面図である。
図2図2は、油圧ショベルの油圧駆動システムの概略構成図である。
図3図3は、第1実施形態に係る制御装置の機能ブロック図である。
図4図4は、Y軸方向から見たショベル基準座標系を示す図である。
図5図5は、Z軸方向から見たショベル基準座標系を示す図である。
図6図6は、第1実施形態に係る制御装置が、積込動作の際に用いる相関マップMaを示す図である。
図7図7は、油圧ショベルと被積込機械の側面図であり、通過用下限高さZamta1を示す。
図8図8は、油圧ショベルと被積込機械の平面図であり、制御開始旋回角度θswsa1及び干渉防止角度θswta1を示す。
図9図9は、油圧ショベルと被積込機械の平面図であり、荷台内到達角度θswta2を示す。
図10図10は、第1実施形態に係る制御装置により実行される積込動作支援制御の処理の流れの一例について示すフローチャートであり、ステップS101~S122の処理について示す。
図11図11は、第1実施形態に係る制御装置により実行される積込動作支援制御の処理の流れの一例について示すフローチャートであり、ステップS125~S166の処理について示す。
図12図12は、油圧ショベル1の主な動作について説明する図である。
図13図13は、第2実施形態に係る制御装置が、準備動作の際に用いる相関マップMbを示す図である。
図14図14は、第2実施形態に係る制御装置により実行される準備動作支援制御の処理の流れの一例について示すフローチャートであり、ステップS201~S222の処理について示す。
図15図15は、第2実施形態に係る制御装置により実行される準備動作支援制御の処理の流れの一例について示すフローチャートであり、ステップS231~S269の処理について示す。
図16図16は、油圧ショベルと被積込機械の平面図であり、荷台内限界角度θswta3を示す。
図17図17は、油圧ショベルと被積込機械の側面図であり、ベッセル内下限高さZamta2を示す。
図18図18は、第3実施形態に係る制御装置が、積込動作の際に用いる相関マップMa´を示す図である。
図19A図19Aは、支援制御実行スイッチの配置の一例について示す図である。
図19B図19Bは、支援制御実行スイッチの配置の別の例について示す図である。
図20図20は、変形例1-1に係る制御装置により実行される積込動作支援制御の処理の流れについて示すフローチャートである。
図21図21は、変形例1-2に係る制御装置の機能ブロック図である。
図22図22は、変形例1-2に係る制御装置により実行される積込動作支援制御の処理の流れについて示すフローチャートである。
図23図23は、変形例3に係る制御装置により実行される積込動作支援制御の処理の流れの一例について示すフローチャートであり、ステップS125~S166の処理について示す。
図24図24は、変形例4に係る油圧ショベルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、作業機械が油圧ショベルである例について説明する。以下の説明では、同一の構成要素が複数存在する場合、符号の末尾にアルファベットの小文字を付すことがあるが、当該アルファベットの小文字を省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。例えば、同一の2つの走行油圧モータ4a,4bが存在するとき、これらをまとめて走行油圧モータ4と表記することがある。また、以下の説明では、オペレータの操作に応じた積込動作を支援するために、制御装置により実行される制御を「積込動作支援制御」と記す。また、オペレータの操作に応じた準備動作を支援するために、制御装置により実行される制御を「準備動作支援制御」と記す。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル1の側面図である。図1に示すように、本実施形態に係る油圧ショベル1は、アーム9の先端部にバケット10を後向きに取り付けたバックホウショベルである。油圧ショベル1は、地面等の掘削対象面を掘削する掘削作業と、掘削した土砂等の掘削物を、ダンプトラックをはじめとする運搬車両等の被積込機械200の荷台201に積み込む積込作業とを行う。
【0015】
油圧ショベル1は、積込作業において、上部旋回体7を旋回させてバケット10内の掘削物を被積込機械200の上方まで運搬する運搬動作と、バケット10をダンプ方向に動作させて掘削物を被積込機械200の荷台201に放出する放出動作とを行う。荷台201は、左右一対の側部202l,202r(図8参照)と、前側の側部202fと、これら複数の側部202l,202r,202fが接続される底部203(図8参照)と、を有する上面が開放されたベッセル(トレイ)である。左側の側部202l及び右側の側部202rは、互いに対向して配置される。
【0016】
油圧ショベル1は、車体(機械本体)3と、車体3に取り付けられる多関節型の作業装置2とを備える。車体3は、下部走行体5と、下部走行体5に対して旋回可能に設けられる上部旋回体7と、を備える。下部走行体5は、右側のクローラを駆動する右クローラ駆動用の走行油圧モータ4a(図2参照)、及び左側のクローラを駆動する左クローラ駆動用の走行油圧モータ4b(図2参照)により走行する。上部旋回体7は、下部走行体5の上部に旋回装置を介して取り付けられ、旋回装置の旋回油圧モータ6により旋回する。なお、本実施形態では、右クローラ駆動用の走行油圧モータ4a及び左クローラ駆動用の走行油圧モータ4bを総称して、走行油圧モータ4とも記す。
【0017】
作業装置2は、回動可能に連結される複数の駆動対象部材(8,9,10)及び駆動対象部材を駆動する複数の油圧シリンダ(11,12,13)を有する。本実施形態では、複数の油圧シリンダ(11,12,13)によって駆動される3つの駆動対象部材としてのブーム8、アーム9及びバケット10が、直列的に連結される。
【0018】
ブーム8は、その基端部が上部旋回体7の前部においてブームピン8a(図4参照)によって回動可能に連結される。アーム9は、その基端部がブーム8の先端部においてアームピン9aによって回動可能に連結される。バケット10は、アーム9の先端部においてバケットピン10aによって回動可能に連結される。ブームピン8a、アームピン9a、バケットピン10aは、互いに平行に配置され、各駆動対象部材(8,9,10)は同一面内で相対回転可能とされている。
【0019】
ブーム8は、ブームシリンダ11の伸縮動作によって上下方向に回動する。アーム9は、アームシリンダ12の伸縮動作によって前後方向(ダンプ方向及びクラウド方向)に回動する。バケット10は、バケットシリンダ13の伸縮動作によって前後方向(ダンプ方向及びクラウド方向)に回動する。ブームシリンダ11は、その一端側がブーム8に接続され他端側が上部旋回体7のフレームに接続されている。アームシリンダ12は、その一端側がアーム9に接続され他端側がブーム8に接続されている。バケットシリンダ13は、その一端側がバケットリンク16を介してバケット10に接続され他端側がアーム9に接続されている。
【0020】
図2は、油圧ショベル1の油圧駆動システム50の概略構成図である。図2に示すように、油圧駆動システム50は、上部旋回体7に搭載された原動機であるエンジン103と、エンジン103により駆動される油圧ポンプであるメインポンプ102及びパイロットポンプ104と、を備える。メインポンプ102及びパイロットポンプ104は、エンジン103により駆動され、作動油を吐出する。
【0021】
油圧駆動システム50は、メインポンプ102から吐出される作動油の流量及び流れ方向を制御する流量制御弁101と、流量制御弁101に操作信号としての操作圧を出力する複数の電磁比例弁51と、電磁比例弁51に制御信号を出力する制御装置40と、オペレータにより操作され操作量及び操作方向に応じた信号を制御装置40に出力する操作装置20,21と、を備える。操作装置20,21は、上部旋回体7に設けられた運転室71(図1参照)内に設置されている。
【0022】
作業用の操作装置20は、ブーム8及びバケット10を操作するための作業操作右レバー22aと、アーム9及び上部旋回体7を操作するための作業操作左レバー22bとを備える。つまり、操作装置20は、ブーム操作装置、バケット操作装置、アーム操作装置及び旋回操作装置としての機能を有する。走行用の操作装置21は、右クローラを操作するための走行操作右レバー23aと、左クローラを操作するための走行操作左レバー23bと、を備える。なお、本実施形態では、作業操作右レバー22a及び作業操作左レバー22bを総称して操作レバー22と記し、走行操作右レバー23a及び走行操作左レバー23bを総称して操作レバー23と記す。
【0023】
本実施形態に係る操作システムは、操作装置20から制御装置40に操作量及び操作方向を表す電気信号が入力され、制御装置40から電磁比例弁51に制御信号が出力され、電磁比例弁51から流量制御弁101に操作圧が出力される電気レバー方式の操作システムである。
【0024】
油圧ショベル1は、操作レバー22,23の操作量及び操作方向を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する操作検出装置56を有する。操作検出装置56は、作業操作左レバー22bによるアームクラウド操作量及びアームダンプ操作量を検出する操作量センサ52aと、作業操作左レバー22bによる右旋回操作量及び左旋回操作量を検出する操作量センサ52bと、作業操作右レバー22aによるブーム上げ操作量及びブーム下げ操作量を検出する操作量センサ52cと、作業操作右レバー22aによるバケットクラウド操作量及びバケットダンプ操作量を検出する操作量センサ52dと、走行操作右レバー23aによる右クローラ前進操作量及び右クローラ後退操作量を検出する操作量センサ52eと、走行操作左レバー23bによる左クローラ前進操作量及び左クローラ後退操作量を検出する操作量センサ52fと、を有する。
【0025】
複数の操作量センサ52は、例えば、操作レバー22,23の操作量及び操作方向を検出可能なロータリエンコーダ、あるいはポテンショメータである。
【0026】
本実施形態に係る制御装置40は、オペレータによる操作レバー22,23の操作情報(操作量及び操作方向)に応じて、作業装置2の回動動作、下部走行体5の走行動作、及び、上部旋回体7の旋回動作を制御する。
【0027】
具体的には、制御装置40は、オペレータによる操作レバー22,23の操作量及び操作方向に応じた制御信号を電磁比例弁51(51a~51l)に出力する。電磁比例弁51は、パイロットポンプ104から圧油が供給されるパイロットライン100に設けられている。電磁比例弁51は、制御装置40からの制御信号が入力されると作動し、パイロットライン100の一次圧を減圧して生成した二次圧を操作圧として流量制御弁101に出力する。流量制御弁101は、複数の油圧アクチュエータ(旋回油圧モータ6、アームシリンダ12、ブームシリンダ11、バケットシリンダ13、走行油圧モータ4a及び走行油圧モータ4b)毎に設けられた複数のスプール弁を有している。電磁比例弁51により出力された操作圧は、スプール弁の受圧室に導かれ、スプールが動作する。これにより、メインポンプ102から吐出された作動油が、スプール弁を通じて対応する油圧アクチュエータに供給され、その油圧アクチュエータを動作させる。
【0028】
電磁比例弁51a,51bは、旋回油圧モータ6に供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101の旋回油圧モータ6駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51c,51dは、アームシリンダ12に供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101のアームシリンダ12駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51e,51fは、ブームシリンダ11に供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101のブームシリンダ11駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51g,51hは、バケットシリンダ13に供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101のバケットシリンダ13駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51i,51jは、走行油圧モータ4aに供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101の走行油圧モータ4a駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。電磁比例弁51k,51lは、走行油圧モータ4bに供給される圧油を制御するための操作圧を流量制御弁101の走行油圧モータ4b駆動用のスプール弁の受圧室に出力する。
【0029】
ブームシリンダ11、アームシリンダ12及びバケットシリンダ13は、それぞれ、供給された圧油によって伸縮し、ブーム8、アーム9及びバケット10を回動させる。これにより、バケット10の位置及び作業装置2の姿勢が変化する。旋回油圧モータ6は、供給された圧油によって回転し、上部旋回体7を旋回させる。走行油圧モータ4a及び走行油圧モータ4bは、供給された圧油によって回転し、下部走行体5を走行させる。なお、オペレータによる操作レバー22,23の操作が無い場合であっても、制御装置40からの制御信号によって電磁比例弁51a~51lを作動させ、流量制御弁101を作動させることによって、油圧アクチュエータ(4a,4b,6,11,12,13)を駆動させることが可能である。
【0030】
油圧ショベル1は、作業装置2及び車体3の姿勢を検出する姿勢検出装置53を備えている。姿勢検出装置53は、複数の姿勢センサとしての、ブーム角度センサ14、アーム角度センサ15、バケット角度センサ17、傾斜角度センサ18及び旋回角度センサ19を含んで構成される。ブーム角度センサ14は、ブームピン8aに取り付けられ、上部旋回体7に対するブーム8の回動角度を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。アーム角度センサ15は、アームピン9aに取り付けられ、ブーム8に対するアーム9の回動角度を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。バケット角度センサ17は、バケットリンク16に取り付けられ、アーム9に対するバケット10の回動角度を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。制御装置40は、各角度センサ14,15,17によって、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度を取得する。
【0031】
なお、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度を取得する方法は、これに限定されない。制御装置40は、水平面等の基準面に対するブーム8、アーム9及びバケット10の各角度を慣性計測装置(IMU: Inertial Measurement Unit)により検出し、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度に換算することによって、各回動角度を取得してもよい。また、制御装置40は、ブームシリンダ11、アームシリンダ12及びバケットシリンダ13の各ストロークをストロークセンサにより検出し、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度に換算することによって、各回動角度を取得してもよい。
【0032】
傾斜角度センサ18は、上部旋回体7に取り付けられ、水平面等の基準面に対する上部旋回体7(車体3)の傾斜角を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。旋回角度センサ19は、下部走行体5と上部旋回体7との間の旋回装置に取り付けられ、下部走行体5に対する上部旋回体7の旋回角度を検出し、検出結果を表す信号を制御装置40に出力する。
【0033】
ここで、ブーム8、アーム9及びバケット10の各回動角度は、作業装置2の姿勢を表すパラメータである。つまり、ブーム角度センサ14、アーム角度センサ15、及び、バケット角度センサ17は、作業装置2の姿勢を検出する姿勢センサとして機能している。また、上部旋回体7の傾斜角度及び下部走行体5に対する上部旋回体7の旋回角度は、上部旋回体7(車体3)の姿勢を表すパラメータである。つまり、傾斜角度センサ18及び旋回角度センサ19は、上部旋回体7(車体3)の姿勢を検出する姿勢センサとして機能している。
【0034】
油圧ショベル1は、油圧ショベル1の周囲に存在する物体の種別及びその位置を検出する物体位置検出装置54を備えている。物体位置検出装置54は、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)やステレオカメラであり、運転室71の上部などに取り付けられる。物体位置検出装置54は、作業装置2により掘削された掘削物が積み込まれる被積込機械200の荷台(ベッセル)201を検出するとともに、上部旋回体7に設けられた物体位置検出装置54に対する被積込機械200の荷台201の相対位置を検出する。なお、物体位置検出装置54は、油圧ショベル1に複数取り付けられていてもよい。
【0035】
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などの処理装置、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの内部記憶装置、及び外部I/F(Interface)などがバスにより互いに接続されたコンピュータである。制御装置40の外部I/Fには、操作検出装置56、姿勢検出装置53、物体位置検出装置54及びハードディスクドライブや大容量フラッシュメモリなどの外部記憶装置(不図示)が接続されている。
【0036】
ROMには、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、ROMは、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体である。処理装置は、ROMに記憶されたプログラムをRAMに展開して演算実行する演算装置であって、プログラムに従って外部I/F、及び記憶装置(内部記憶装置及び外部記憶装置)から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。
【0037】
外部I/Fの入力部は、各種装置(操作検出装置56、姿勢検出装置53、物体位置検出装置54等)から入力された信号を処理装置で演算可能なように変換する。また、外部I/Fの出力部は、処理装置での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を各種装置(電磁比例弁51等)に出力する。
【0038】
姿勢検出装置53は、上述した作業装置2の姿勢を検出する姿勢センサ(14,15,17)と、上部旋回体7(車体3)の姿勢を検出する姿勢センサ(18,19)と、を含んで構成される。
【0039】
図3は、制御装置40の機能ブロック図である。図3に示すように、制御装置40は、ROMに記憶されているプログラムを実行することにより、姿勢演算部41、被積込機械位置演算部42、速度演算部43、速度ベクトル演算部44、条件判定部45、目標角度演算部46、姿勢比較部47、目標速度演算部48、相関マップ生成部49、及び、アクチュエータ制御部39として機能する。
【0040】
制御装置40のROMには、油圧ショベル1の構成要素の位置及び姿勢の特定に用いられるショベル基準座標系が予め記憶されている。本実施形態のショベル基準座標系は、図4及び図5に示すように、旋回中心軸と地面Gとが交差する点を原点Oとする右手座標系として定義されている。ショベル基準座標系は、下部走行体5の前進方向をX軸の正方向として定義されている。本実施形態のショベル基準座標系は、原点Oから旋回中心軸と平行に上方に延びる方向をZ軸の正方向として定義されている。本実施形態のショベル基準座標系は、X軸及びZ軸のそれぞれに直交し、下部走行体5の左方をY軸の正方向として定義されている。このように本実施形態のショベル基準座標系は、下部走行体5を基準に設定される座標系であり、XY平面は下部走行体5が接する地面(走行面)Gに固定されている。
【0041】
本実施形態のショベル基準座標系において上部旋回体7の旋回角度θswは、油圧ショベル1が基準姿勢のとき、すなわち作業装置2がX軸と平行となる状態のときに、0度となる。上部旋回体7の旋回角度θswが0度の状態において、作業装置2の動作平面はXZ平面に平行であり、ブーム8の上げ動作方向はZ軸の正方向であり、アーム9及びバケット10のダンプ方向はX軸の正方向である。
【0042】
姿勢演算部41は、姿勢検出装置53の検出信号から、ショベル基準座標系における油圧ショベル1の構成要素の姿勢を演算する。具体的には、姿勢演算部41は、ブーム角度センサ14から出力されたブーム8の回動角度の検出信号から、X軸に対するブーム8の回動角度(以下、ブーム角度とも記す)θbmを演算する。姿勢演算部41は、アーム角度センサ15から出力されたアーム9の回動角度の検出信号から、ブーム8に対するアーム9の回動角度(以下、アーム角度とも記す)θamを演算する。姿勢演算部41は、バケット角度センサ17から出力されたバケット10の回動角度の検出信号から、アーム9に対するバケット10の回動角度(以下、バケット角度とも記す)θbkを演算する。姿勢演算部41は、旋回角度センサ19から出力された上部旋回体7の旋回角度の検出信号から、X軸(下部走行体5)に対する上部旋回体7の旋回角度θswを演算する。
【0043】
姿勢演算部41は、演算された作業装置2の各回動角度θbm,θam,θbk及び上部旋回体7の旋回角度θswと、ブーム長さLbm、アーム長さLam及びバケット長さLbkとに基づいて、ブーム8、アーム9及びバケット10のそれぞれのショベル基準座標系における位置、すなわちX座標及びY座標により特定される平面位置並びにZ座標により特定される地面Gからの高さを演算する。なお、ブーム長さLbmは、ブームピン8aからアームピン9aまでの長さである。アーム長さLamは、アームピン9aからバケットピン10aまでの長さである。バケット長さLbkは、バケットピン10aからバケット10の先端部(爪先)までの長さである。なお、ブームピン8aは、旋回角度を0度としたとき、旋回中心軸(Z軸)からX軸方向にLoxだけオフセットした位置に設けられている。
【0044】
また、図示しないが、姿勢演算部41は、傾斜角度センサ18から出力された車体3の傾斜角度の検出信号から、基準面に対する車体3(下部走行体5)の傾斜角(ピッチ角及びロール角)を演算する。基準面は、例えば、重力方向に直交する水平面である。姿勢演算部41は、作業装置2の各回動角度θbm,θam,θbkから、地面Gに対するバケット10の角度である対地角γを演算する。バケット10の対地角γは、バケット10の先端部とバケットピン10aとを通る直線が地面Gに対して成す角度である。
【0045】
図3に示す被積込機械位置演算部42は、物体位置検出装置54により検出された物体位置検出装置54に対する被積込機械200の荷台201の相対的な位置の情報と、姿勢演算部41により演算された上部旋回体7の旋回角度θswと、ショベル基準座標系での物体位置検出装置54の取付位置とに基づき、当該被積込機械200の荷台201のショベル基準座標系における位置(X座標及びY座標により特定される平面位置、及び、Z座標により特定される地面Gからの高さ)を演算する。このように、本実施形態に係る制御装置40は、物体位置検出装置54を用いて、油圧ショベル1に対する荷台201の相対位置(ショベル基準座標系でのX,Y,Z座標)を取得する。制御装置40が取得する荷台201の位置情報は、例えば、荷台201の上面の四隅の位置座標、すなわち、荷台201の左側の側部202lの上縁の前端及び後端、並びに右側の側部202rの上縁の前端及び後端の位置座標などである。
【0046】
速度演算部43は、操作検出装置56からの検出信号に基づき、各油圧アクチュエータ6,11,12,13の操作指令速度を演算する。具体的には、制御装置40のROMには、操作レバー22,23の操作量と、油圧アクチュエータ6,11,12,13の操作指令速度との対応関係を示す速度テーブルが予め記憶されている。速度演算部43は、この速度テーブルを参照し、操作検出装置56から出力された操作レバー22,23の操作情報に含まれる操作量から、各油圧アクチュエータ6,11,12,13の操作指令速度を演算する。
【0047】
速度演算部43は、旋回油圧モータ6の操作指令速度を、上部旋回体7の旋回速度ωswに換算する。速度演算部43は、ブームシリンダ11の操作指令速度を、ブーム8の回動速度に換算する。速度演算部43は、アームシリンダ12の操作指令速度を、アーム9の回動速度に換算する。速度演算部43は、バケットシリンダ13の操作指令速度を、バケット10の回動速度に換算する。
【0048】
なお、速度演算部43は、姿勢演算部41により演算された作業装置2の回動角度θbm,θam,θbkの時間変化から作業装置2の実際の回動速度を演算する。速度演算部43は、姿勢演算部41により演算された上部旋回体7の旋回角度θswの時間変化から、上部旋回体7の実際の旋回速度ωswrを演算する。
【0049】
速度ベクトル演算部44は、姿勢演算部41の演算結果及び速度演算部43の演算結果に基づいて、作業装置2に生じる速度ベクトルを演算する。具体的には、速度ベクトル演算部44は、姿勢演算部41により演算された作業装置2の各回動角度θbm,θam,θbk及び上部旋回体7の旋回角度θswと、速度演算部43により演算された作業装置2の各回動速度及び上部旋回体7の旋回速度とに基づいて、アーム9の先端部の速度ベクトルを演算する。
【0050】
条件判定部45は、後述する干渉防止制御としての積込動作支援制御を実行させる条件である積込動作支援制御実行条件(第1の干渉防止制御実行条件)が成立したか否かを判定する。積込動作支援制御実行条件は、以下の(条件1)及び(条件2)を含む。積込動作支援制御実行条件は、(条件1)及び(条件2)のいずれも満たされると成立し、(条件1)及び(条件2)のいずれかが満たされていない場合には成立しない。
(条件1)平面視でバケット10が荷台201の外側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたこと。
(条件2)作業装置2の姿勢が運搬姿勢であること。
(条件1)及び(条件2)のいずれもが満たされた場合、オペレータに掘削物を運搬する運搬動作を行うための操作の意思が有ると判断することができる。
【0051】
条件判定部45は、油圧ショベル1に対する荷台201の相対位置及び作業装置2の移動方向に基づいて、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の外側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたか否かを判定する。例えば、条件判定部45は、被積込機械位置演算部42により演算される被積込機械200の荷台201の位置(平面位置及び高さ)と、速度ベクトル演算部44により演算されるアーム9の先端部の速度ベクトル(バケット10の移動方向を示すパラメータ)とに基づき、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の外側から荷台201の側部に近づく方向の旋回操作が行われたか否かを判定する。
【0052】
なお、平面視でバケット10が荷台201の外側から荷台201の側部に近づく方向の旋回操作が行われたか否かの判定方法はこれに限定されない。例えば、条件判定部45は、被積込機械位置演算部42により演算される荷台201の位置と、姿勢演算部41により演算されるアーム9の先端部の位置と、操作検出装置56により検出される旋回操作の操作方向(左旋回方向または右旋回方向)とに基づき、平面視でバケット10が荷台201の外側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたか否かを判定してもよい。
【0053】
また、条件判定部45は、被積込機械200の荷台201の位置と油圧ショベル1の位置との間の距離が所定値未満であって、かつ旋回操作が行われた場合に、(条件1)が成立したと判定し、被積込機械200の荷台201の位置と油圧ショベル1の位置との間の距離が所定値以上である場合、あるいは、旋回操作が行われていない場合には、(条件1)は成立していないと判定してもよい。
【0054】
条件判定部45は、姿勢演算部41の演算結果に基づいて、作業装置2の姿勢が運搬姿勢であるか否かを判定する。例えば、条件判定部45は、姿勢演算部41により演算されるバケット10の対地角γの絶対値と、対地角閾値γtとを比較する。対地角閾値γtは、作業装置2の姿勢が運搬姿勢であるか否かを判定するための閾値であり、予め制御装置40のROMに記憶されている。対地角閾値γtは、例えば、10度から20度程度の値が採用される。
【0055】
条件判定部45は、姿勢演算部41により演算されたバケット10の対地角γの絶対値が、対地角閾値γt以下である場合には、作業装置2の姿勢が運搬姿勢であると判定する。条件判定部45は、姿勢演算部41により演算されたバケット10の対地角γの絶対値が、対地角閾値γtよりも大きい場合には、作業装置2の姿勢が運搬姿勢でないと判定する。
【0056】
条件判定部45により、積込動作支援制御実行条件(第1の干渉防止制御実行条件)が成立したと判定されると、積込動作時の干渉防止制御である積込動作支援制御が実行される。干渉防止制御とは、バケット10が荷台201に干渉することを防止するための制御である。本実施形態では、油圧ショベル1が積込動作を行う際に、バケット10が荷台201に干渉することを防止するための干渉防止制御である積込動作支援制御が実行される。
【0057】
積込動作支援制御において、制御装置40は、オペレータによってバケット10を荷台201の上方の放出位置(放土位置)まで移動させるための旋回操作が行われた場合に、バケット10が被積込機械200の荷台201に干渉することなく放出位置まで移動するように、オペレータの操作を支援するための相関マップMa(図6参照)を生成し、記憶装置に記憶する。
【0058】
図6は、制御装置40が積込動作の際に用いる相関マップMaを示す図である。図6に示すように、相関マップMaは、旋回角度に応じたアーム先端高さの下限値を規定するマップである。なお、アーム先端高さとは、地面Gからアーム9の先端部(例えば、バケットピン10aの中心)までの高さ(Z軸方向の距離)である。縦軸は、アーム先端高さの下限値を示している。Zamta1は、図7に示すように、作業装置2が、荷台201の側部202の上方に位置したときに、側部202とバケット10とが干渉しないアーム9の先端部の高さ(干渉防止高さ)であり、以下、通過用下限高さとも記す。通過用下限高さZamta1は、バケット10を荷台201の側部202の上方を通過させるためにアーム9の先端部が到達するべきショベル基準座標系での高さである。したがって、アーム先端高さが通過用下限高さZamta1よりも大きければ、上部旋回体7の旋回動作により、バケット10を荷台201に干渉させることなく荷台201の外側から内側に移動させることができる。
【0059】
図6に示すように、相関マップMaの横軸は旋回角度を示し、油圧ショベル1が基準姿勢のときの旋回角度を0度として、左旋回すると旋回角度が増加する。θswsa1は、図8に示すように、積込作業における運搬動作が開始される位置(動作開始位置)、すなわち積込動作支援制御が開始される位置(制御開始位置)での旋回角度であり、以下、制御開始旋回角度とも記す。θswtaは、平面視でアーム9の先端部の予測移動軌跡Lと、被積込機械200の荷台201の側部202rの外側表面とが交差する位置、すなわちバケット10が平面視で荷台201の側部202rと重なる位置(ラップ位置)での旋回角度であり、以下、ラップ旋回角度とも記す。なお、予測移動軌跡Lは、アーム先端高さが通過用下限高さZamta1であるときのアーム9の先端部の移動軌跡である。
【0060】
θswta1は、作業装置2が干渉防止位置に位置したときの旋回角度であり、以下、干渉防止角度とも記す。干渉防止位置は、アーム先端高さが干渉防止高さよりも低い場合であっても、バケット10が荷台201に干渉しない荷台201近傍の位置である。干渉防止角度θswta1は、干渉防止位置を特定するための旋回角度ともいえる。θswta2は、図9に示すように、バケット10が荷台201の外側から側部202rを越えて、バケット10の全体が荷台201の内側に位置したときの旋回角度であり、以下では、荷台内到達角度とも記す。
【0061】
制御装置40は、図6に示す相関マップMaを参照し、アーム先端高さが、相関マップMaで規定される下限値を下回らないように作業装置2及び上部旋回体7の動作を制御する。以下、相関マップMaの生成方法及び作業装置2の制御方法の詳細について説明する。
【0062】
積込動作支援制御実行条件が成立すると、図3に示す姿勢演算部41が、条件成立時に姿勢検出装置53により検出された作業装置2の姿勢に基づいて、アーム9の先端部の旋回動作前の周方向の位置である動作開始位置を特定する。具体的には、姿勢演算部41は、積込動作支援制御開始時の上部旋回体7の旋回角度θswを制御開始旋回角度θswsa1として演算する。なお、姿勢演算部41は、積込動作支援制御開始時のアーム9の先端部の高さを制御開始高さZamsa1として演算する。
【0063】
また、目標角度演算部46は、図7に示すように、被積込機械位置演算部42により演算される荷台201のショベル基準座標系でのZ軸方向の位置である高さZvと、予め定められた設定値Zaとを加算することにより、通過用下限高さZamta1を演算する。荷台201の高さZvは、具体的には、ショベル基準座標系における地面Gから荷台201の側部202の上縁までの高さである。設定値Zaは、バケット長さLbkと、マージンとを加算することにより設定される。
【0064】
さらに、姿勢演算部41は、積込動作支援制御開始時のアーム角度θamを制御開始アーム角度θamsa1として演算する。積込動作支援制御実行条件が成立すると、目標角度演算部46は、制御開始アーム角度θamsa1及び通過用下限高さZamta1に基づき、アーム先端高さが通過用下限高さZamta1となるブーム角度である通過用下限ブーム角度θbmta1を演算する。
【0065】
また、図8に示すように、積込動作支援制御実行条件が成立すると、目標角度演算部46は、通過用下限ブーム角度θbmta1に基づいて、荷台201の外側において特定された動作開始位置と、荷台201の複数の側部202のうち上部旋回体7の動作後に最初に作業装置2が到達し得る側部202(図8に示す例では右側の側部202r)との間で荷台201と作業装置2とが干渉しないアーム9の先端部の旋回方向の角度位置である干渉防止位置を特定する干渉防止角度θswta1を演算する。
【0066】
通過用下限ブーム角度θbmta1及び干渉防止角度θswta1の具体的な算出方法について説明する。以下の式(1)~(4)では、作業装置2の幅方向の寸法は無視できるものとして説明する。ショベル基準座標系におけるアーム9の先端部の地面Gからの高さであるアーム先端高さZamは、以下の式(1)により求められる。
【0067】
【数1】
Lozは、ショベル基準座標系におけるブームピン8aの地面Gからの高さである。Lbmはブーム長さ、Lamはアーム長さ、θbmはブーム角度、θamはアーム角度である。なお、後述するように、アーム角度θamは、積込動作支援制御が開始されてからアーム9の操作の有効化条件が成立するまでの間、制御開始アーム角度θamsa1に保持される。
【0068】
アーム9の先端部が通過用下限高さZamta1にあるときのブーム角度である通過用下限ブーム角度θbmta1は、以下の式(2)により求められる。
【0069】
【数2】
式(2)において、ata1、bta1、αta1は三角関数の合成に関する係数である。
【0070】
通過用下限ブーム角度θbmta1が定まると、平面視した際の旋回中心軸(Z軸)からアーム9の先端部までの距離(以下、アーム先端距離とも記す)Rta1は、以下の式(3)により求められる。
【0071】
【数3】
Loxは、旋回中心軸(Z軸)からブームピン8aまでの距離(オフセット)である。
【0072】
アーム先端距離Rta1で旋回動作した際のアーム9の先端部の予測移動軌跡Lと、被積込機械200の荷台201の側部202の外側表面を示す線分との交点Pのショベル基準座標系での位置をXta1,Yta1(図8参照)とすると、ラップ旋回角度θswtaは以下の式(4)により求められる。
【0073】
【数4】
ラップ旋回角度θswtaは、側部202の直上にバケット10が位置し、平面視で側部202とバケット10とが重なっている状態での旋回角度である。
【0074】
目標角度演算部46は、ラップ旋回角度θswtaに所定のマージンθswtamを加算し干渉防止角度θswta1を演算する(θswta1=θswta+θswtam)。なお、ここで所定のマージンθswtamは、作業装置2が荷台201の外側に向かって側部202から遠ざかる位置に配置されるように加算されるマージンである。例えば、基準姿勢から左旋回方向のラップ旋回角度θswtaが正の値で表される場合、マージンθswtamは負の値となる。マージンの絶対値は、少なくともバケット10の幅の半分よりも大きい値である。
【0075】
目標角度演算部46は、ラップ旋回角度θswtaに所定のマージンθswtam2を加算し荷台内到達角度θswta2を演算する(θswta2=θswta+θswtam2)。なお、ここで所定のマージンθswtam2は、作業装置2が荷台201の内側に向かって側部202から遠ざかる位置に配置されるように加算されるマージンである。例えば、基準姿勢から左旋回方向のラップ旋回角度θswtaが正の値で表される場合、マージンθswtam2は正の値となる。マージンの絶対値は、少なくともバケット10の幅の半分よりも大きい値である。
【0076】
図3に示す相関マップ生成部49は、目標角度演算部46の演算結果に基づいて、図6に示すような積込動作支援時の相関マップMaを生成する。相関マップMaは、制御開始旋回角度θswsa1から干渉防止角度θswta1までは、旋回角度の増加に伴って、アーム先端高さの下限値が制御開始高さZamsa1から単調に増加し、干渉防止角度θswta1までにアーム先端高さの下限値が通過用下限高さZamta1となるよう生成される。また、相関マップMaは、旋回角度が干渉防止角度θswta1から荷台内到達角度θswta2までは、アーム先端高さの下限値が通過用下限高さZamta1となるように生成される。
【0077】
このように、制御装置40は、制御開始旋回角度θswsa1により特定された動作開始位置から干渉防止角度θswta1により特定された干渉防止位置までの上部旋回体7の動作範囲において、干渉防止位置に近いほど大きくかつ干渉防止位置で通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamta1となる、アーム9の先端部の旋回方向の角度位置に応じた作業装置2の高さ方向の下限値を演算する。
【0078】
なお、後述するように、旋回角度が干渉防止角度θswta1以上になると、アーム9の操作が有効になる。このため、旋回角度が干渉防止角度θswta1以上では、オペレータの操作によってアーム角度θamが変化する場合がある。アーム角度θamが変化すると、平面視した際の作業装置2のリーチ(アーム先端距離)が変化するため、バケット全体が荷台201内に収まる位置での旋回角度である荷台内到達角度θswta2は動的に変化する。つまり、目標角度演算部46は、アーム角度θamが変化すると、荷台内到達角度θswta2を再演算する。相関マップ生成部49は、再演算された荷台内到達角度θswta2に基づき、相関マップMaを更新する。
【0079】
図3に示す姿勢比較部47は、姿勢演算部41により演算された旋回角度θswと、目標角度演算部46により演算された干渉防止角度θswta1とを比較し、その比較結果に基づき、アーム9の操作の有効化条件が成立したか否かを判定する。アーム9の操作の有効化条件は、アーム9の先端部が干渉防止高さを超える高さに達している状態で干渉防止位置を越える旋回方向の角度位置に達したことを含む。姿勢比較部47は、旋回角度θswが干渉防止角度θswta1未満であるときには、アーム9の先端部が干渉防止位置を越えていないと判定する。つまり、姿勢比較部47は、有効化条件が成立していないと判定する。姿勢比較部47は、旋回角度θswが干渉防止角度θswta1以上であるときには、アーム9の先端部が干渉防止位置を越えていると判定する。なお、干渉防止位置での作業装置2の高さ方向の下限値は、通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamta1である。したがって、姿勢比較部47は、旋回角度θswが干渉防止角度θswta1以上であるときには、有効化条件が成立していると判定する。
【0080】
また、姿勢比較部47は、姿勢演算部41により演算されたアーム先端高さZamと、目標角度演算部46により演算された通過用下限高さZamta1とを比較する。
【0081】
姿勢比較部47は、アーム先端高さZamと通過用下限高さZamta1との比較結果に基づき、ブーム上げ動作を自動で行う制御の実行条件(以下、自動ブーム上げ制御実行条件とも記す)が成立したか否かを判定する。
【0082】
自動ブーム上げ制御実行条件は、少なくとも以下の(条件3)を含む。自動ブーム上げ制御実行条件は、干渉防止制御が実行されているときにおいて、以下の(条件3)が満たされた場合に成立し、(条件3)が満たされていない場合には成立しない。
(条件3)アーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1以下であること。
【0083】
また、姿勢比較部47は、姿勢演算部41により演算された旋回角度θswと、目標角度演算部46により演算された荷台内到達角度θswta2とを比較し、バケット10が干渉防止位置を越えて旋回した後に平面視で荷台201の側部202(側部202r及び202lのうち、最初に到達し得る側部202rのみ)を通過したか否か、すなわち平面視でバケット10の全体が側部202rを越えかつ側部202lの手前の旋回方向の位置である荷台201の内側に到達したか否かを判定する。姿勢比較部47は、旋回角度θswが荷台内到達角度θswta2未満のときには、バケット10の全体が荷台201の内側に到達していないと判定する。姿勢比較部47は、旋回角度θswが荷台内到達角度θswta2以上になると、バケット10の全体が荷台201の内側に到達したと判定する。
【0084】
目標速度演算部48は、速度演算部43により演算された操作指令速度に基づき、ブーム8、アーム9、バケット10及び上部旋回体7等を駆動する油圧アクチュエータの目標速度を演算する。アクチュエータ制御部39は、目標速度演算部48により演算された目標速度で各油圧アクチュエータ(ブームシリンダ11、アームシリンダ12、バケットシリンダ13及び旋回油圧モータ6等)が動作するように、電磁比例弁51に制御信号を出力する。
【0085】
また、目標速度演算部48は、積込動作支援制御実行条件が成立すると、姿勢演算部41により演算される油圧ショベル1の姿勢及び相関マップMaに基づき、各油圧アクチュエータの目標速度を演算する。
【0086】
積込動作支援制御における目標速度演算部48による各油圧アクチュエータの目標速度の演算方法の詳細は、以下のとおりである。
【0087】
積込動作支援制御実行条件が成立すると、目標速度演算部48は、姿勢演算部41により演算される旋回角度θswが干渉防止角度θswta1に至るまでの間、すなわち姿勢比較部47によりアーム9の操作の有効化条件が成立していないと判定されている間、オペレータによるアーム操作を無効化する無効化処理を実行する。無効化処理において、目標速度演算部48は、速度演算部43により演算されたアームシリンダ12の操作指令速度が0(ゼロ)でない場合であっても、アームシリンダ12の目標速度を0(ゼロ)に設定する。このように、本実施形態に係る制御装置40は、積込動作支援制御において、上部旋回体7の動作中であって有効化条件が成立するまでは、操作装置20によるアーム9の操作を無効にする。換言すれば、制御装置40は、動作開始位置から干渉防止位置までの上部旋回体7の動作中は、アーム操作装置(操作装置20)によるアーム9の操作を無効にする。
【0088】
目標速度演算部48は、姿勢比較部47によりアーム9の操作の有効化条件が成立したと判定されると、無効化処理を実行しない。つまり、目標速度演算部48は、速度演算部43により演算されたアームシリンダ12の操作指令速度をアームシリンダ12の目標速度として設定する。このように、本実施形態に係る制御装置40は、積込動作支援制御において、有効化条件が成立した場合には、操作装置20によるアーム9の操作を有効にする。
【0089】
目標速度演算部48は、姿勢比較部47により自動ブーム上げ制御実行条件が成立していると判定されているときには、オペレータによるブーム操作に関わらず、ブームシリンダ11の目標速度に予め定められたブーム自動上げ速度を設定する。ブーム自動上げ速度は、予め制御装置40のROMに記憶されている。なお、目標速度演算部48は、姿勢比較部47により自動ブーム上げ制御実行条件が成立していないと判定されているときには、ブームシリンダ11の目標速度に上記ブーム自動上げ速度を設定する処理は行わない。
【0090】
目標速度演算部48は、姿勢演算部41により演算されたアーム先端高さZamと、相関マップ生成部49により生成された相関マップMaとを比較し、旋回動作によってアーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回らないように、目標旋回速度を設定する。
【0091】
具体的には、目標速度演算部48は、速度演算部43により演算されるブーム8の回動速度(角速度)ωbmから、相関マップMaの傾きαを満たす制限旋回速度ωswtを演算する。
【0092】
目標速度演算部48は、オペレータの旋回操作に応じて速度演算部43により演算される旋回速度ωswと、制限旋回速度ωswtとを比較し、その比較結果に基づき、オペレータの旋回操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回るか否かを判定する。
【0093】
目標速度演算部48は、旋回速度ωswが制限旋回速度ωswt以下である場合には、オペレータの旋回操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回らないと判定する。目標速度演算部48は、旋回速度ωswが制限旋回速度ωswtよりも大きい場合には、オペレータの旋回操作によって、アーム先端高さZamは相関マップMaにより規定される下限値を下回ると判定する。
【0094】
目標速度演算部48は、オペレータの旋回操作によってアーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回ると判定されていない場合には、速度演算部43により演算された旋回油圧モータ6の操作指令速度を旋回油圧モータ6の目標速度に設定する。これにより、上部旋回体7は、オペレータの旋回操作に応じた旋回速度ωswで動作する。目標速度演算部48は、オペレータの旋回操作によってアーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回ると判定された場合には、旋回油圧モータ6の目標速度を制限旋回速度ωswtに対応する速度に設定する。これにより、上部旋回体7は、オペレータの旋回操作に応じた旋回速度よりも低い制限旋回速度ωswtで動作する。すなわち、上部旋回体7の旋回動作が減速される。
【0095】
このように、本実施形態に係る制御装置40は、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回らないように、ブーム8の自動上げ動作の制御及び上部旋回体7の動作制限の制御を行う。
【0096】
また、目標速度演算部48は、旋回角度θswが干渉防止角度θswta1以上荷台内到達角度θswta2未満のときには、オペレータのアーム操作によってアーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値(通過用下限高さZamta1)を下回るか否かを判定する。目標速度演算部48は、速度ベクトル演算部44により演算されたアーム先端部の速度ベクトルに下方向の成分が含まれていない場合には、オペレータのアーム操作によってアーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値(通過用下限高さZamta1)を下回らないと判定する。目標速度演算部48は、速度ベクトル演算部44により演算されたアーム先端部の速度ベクトルに下方向の成分が含まれている場合には、オペレータのアーム操作によってアーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値(通過用下限高さZamta1)を下回ると判定する。
【0097】
目標速度演算部48は、オペレータのアーム操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値(通過用下限高さZamta1)を下回らないと判定された場合には、ブームシリンダ11の目標速度を0(ゼロ)に設定する。また、目標速度演算部48は、速度演算部43により演算されたアームシリンダ12の操作指令速度をアームシリンダ12の目標速度として設定する。
【0098】
目標速度演算部48は、オペレータのアーム操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値(通過用下限高さZamta1)を下回ると判定された場合には、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回らないように、ブームシリンダ11の伸長方向(ブーム8の上げ方向)の目標速度を演算する。なお、目標速度演算部48は、ブームシリンダ11の伸長方向の目標速度を演算することに代えて、あるいは、ブームシリンダ11の伸長方向の目標速度を演算するとともに、アームシリンダ12の目標速度を0(ゼロ)に設定してもよい。
【0099】
このように、本実施形態に係る制御装置40は、バケット10が平面視で荷台201の側部202を通過したと判定されていない場合、操作装置20によるアーム9の操作に応じて動作するアーム9の先端部の高さが通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamta1を下回らないように、ブーム8及びアーム9の少なくとも一方の動作を制御する。
【0100】
本実施形態に係る制御装置40は、旋回角度θswが荷台内到達角度θswta2以上になると、積込動作支援制御を終了する。つまり、目標速度演算部48は、旋回角度θswが荷台内到達角度θswta2以上になると、速度演算部43により演算されたアームシリンダ12の操作指令速度をアームシリンダ12の目標速度として設定する。
【0101】
つまり、本実施形態に係る制御装置40は、バケット10が平面視で荷台201の側部202を通過したと判定された場合、通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamta1よりも低い位置へのアーム9の先端部の動作を許容する。
【0102】
図10及び図11を参照して制御装置40により実行される積込動作支援制御の処理の流れの一例について説明する。図10及び図11のフローチャートに示す処理は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされることにより開始され、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0103】
図10に示すように、ステップS101において、被積込機械位置演算部42は、物体位置検出装置54の検出結果に基づいて、油圧ショベル1に対する被積込機械200の荷台201の相対的な位置を演算する。
【0104】
次のステップS104において、条件判定部45は、ステップS101で演算された荷台201の位置と、速度ベクトル演算部44によって算出されるアーム先端部の速度ベクトルとに基づき、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の外側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたか否かを判定する。
【0105】
ステップS104において、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の外側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたと判定されると、処理がステップS107へ進む。ステップS104において、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の外側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われていないと判定されると、図10及び図11のフローチャートに示す処理が終了する。
【0106】
ステップS107において、条件判定部45は、姿勢演算部41により演算されたバケット10の対地角γに基づき、作業装置2の姿勢が運搬姿勢であるか否かを判定する。ステップS107において、作業装置2の姿勢が運搬姿勢であると判定されると、処理がステップS110へ進む。ステップS107において、作業装置2の姿勢が運搬姿勢でないと判定されると、図10及び図11のフローチャートに示す処理が終了する。
【0107】
ステップS104及びステップS107の判定処理のそれぞれにおいて肯定判定されると、積込動作支援制御実行条件が成立するため、積込動作支援制御が開始される。積込動作支援制御では、まず、ステップS110において、姿勢演算部41が、制御開始旋回角度θswsa1、制御開始アーム角度θamsa1及び制御開始高さZamsa1を演算する。
【0108】
次のステップS113において、目標角度演算部46は、通過用下限高さZamta1を演算する。次のステップS116において、目標角度演算部46は、通過用下限ブーム角度θbmta1及びラップ旋回角度θswtaを演算する。次のステップS119において、目標角度演算部46は、干渉防止角度θswta1及び荷台内到達角度θswta2を演算する。
【0109】
次のステップS122において、相関マップ生成部49は、ステップS110,S113,S119での演算結果に基づき、相関マップMa(図6参照)を生成する。
【0110】
次のステップS125において、姿勢比較部47は、姿勢演算部41により演算される現在の旋回角度θswが、ステップS119で演算された干渉防止角度θswta1未満であるか否かを判定する。ステップS125において、現在の旋回角度θswが干渉防止角度θswta1未満であると判定されると、処理がステップS128へ進む。ステップS125において、現在の旋回角度θswが干渉防止角度θswta1以上であると判定されると、アーム9の操作の有効化条件が成立し、処理がステップS145へ進む。
【0111】
ステップS128において、姿勢比較部47は、姿勢演算部41により演算される現在のアーム先端高さZamが、ステップS113で演算された通過用下限高さZamta1以下であるか否かを判定する。ステップS128において、現在のアーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1以下であると判定されると、処理がステップS131へ進む。ステップS128において、現在のアーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1よりも大きいと判定されると、処理がステップS134へ進む。
【0112】
ステップS128の判定処理において肯定判定されると、自動ブーム上げ制御実行条件が成立する。これにより、ステップS131において、目標速度演算部48は、ブームシリンダ11の目標速度を予め定められたブーム自動上げ速度に設定する。ステップS131の処理が終了すると、処理がステップS134へ進む。
【0113】
ステップS134において、目標速度演算部48は、オペレータの旋回操作に応じた旋回速度ωswと、制限旋回速度ωswtとに基づき、オペレータの旋回操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回るか否かを判定する。ステップS134において、オペレータの旋回操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回ると判定されると、処理がステップS137へ進む。ステップS134において、オペレータの旋回操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回らないと判定されると、処理がステップS140へ進む。
【0114】
ステップS137において、目標速度演算部48は、旋回油圧モータ6の目標速度を制限旋回速度ωswtに対応する速度に設定する。ステップS131,S137の処理が行われることにより、アーム先端高さが相関マップMaにより規定される下限値を下回らないように旋回動作とブーム上げ動作とが複合して行われることになる。なお、図示しないが、ステップS134において否定判定された場合には、オペレータによる旋回操作量に応じた操作指令速度が旋回油圧モータ6の目標速度として設定される。ステップS137の処理が終了すると、処理がステップS140へ進む。
【0115】
ステップS140において、目標速度演算部48は、速度演算部43により演算されたアームシリンダ12の操作指令速度に基づき、オペレータによるアーム操作があるか否かを判定する。目標速度演算部48は、アームシリンダ12の操作指令速度が0(ゼロ)でない場合には、オペレータによるアーム操作があると判定し、アームシリンダ12の操作指令速度が0(ゼロ)である場合には、オペレータによるアーム操作がないと判定する。ステップS140において、オペレータによるアーム操作があると判定されると、処理がステップS143へ進む。ステップS140において、オペレータによるアーム操作がないと判定されると、処理がステップS160へ進む。
【0116】
ステップS143において、目標速度演算部48は、目標アーム速度を0(ゼロ)に設定する。つまり、ステップS143の処理は、オペレータによるアーム操作を無効にするための無効化処理といえる。ステップS143の処理が終了すると、処理がステップS160へ進む。
【0117】
ステップS145において、目標角度演算部46は、ステップS140と同様の処理を行う。ステップS145において、オペレータによるアーム操作があると判定されると、処理がステップS147へ進む。ステップS145において、オペレータによるアーム操作がないと判定されると、処理がステップS150へ進む。
【0118】
ステップS147において、目標角度演算部46は、荷台内到達角度θswta2を再演算し、相関マップ生成部49は、相関マップMaを更新する。ステップS147の処理が終了すると、処理がステップS150へ進む。
【0119】
ステップS150において、姿勢比較部47は、姿勢演算部41により演算された現在の旋回角度θswと、荷台内到達角度θswta2とに基づき、平面視でバケット10の全体が荷台201の内側に到達したか否かを判定する。ステップS150において、平面視でバケット10の全体が荷台201の内側に到達していないと判定されると、処理がステップS153へ進む。ステップS150において、平面視でバケット10の全体が荷台201の内側に到達したと判定されると、図10及び図11のフローチャートに示す処理が終了する。
【0120】
ステップS153において、目標速度演算部48は、速度ベクトル演算部44により演算されたアーム先端部の速度ベクトルに基づき、オペレータのアーム操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値(通過用下限高さZamta1)を下回るか否かを判定する。ステップS153において、オペレータのアーム操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回ると判定されると、処理がステップS156へ進む。ステップS153において、オペレータのアーム操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回らないと判定されると、処理がステップS160へ進む。
【0121】
ステップS156において、目標速度演算部48は、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回らないように、ブーム8を上げ動作させるためのブームシリンダ11の目標速度を演算する。これにより、アーム先端高さが通過用下限高さZamta1を下回らないように、アーム動作とブーム上げ動作とが複合して行われることになる。ステップS156の処理が終了すると、処理がステップS160へ進む。
【0122】
ステップS160において、アクチュエータ制御部39は、目標速度演算部48により演算された目標速度に応じた制御信号を電磁比例弁51に出力する。次のステップS163において、条件判定部45は、速度ベクトル演算部44の演算結果、あるいは速度演算部43の演算結果に基づき、オペレータによる旋回操作が継続されているか否かを判定する。
【0123】
例えば、条件判定部45は、速度ベクトル演算部44により演算されたアーム9の先端部の速度ベクトルに旋回方向の成分が含まれている場合には、オペレータによる旋回操作が継続されていると判定し、アーム9の先端部の速度ベクトルに旋回方向の成分が含まれていない場合には、オペレータによる旋回操作が継続されていないと判定する。
【0124】
なお、条件判定部45は、速度演算部43により演算された旋回油圧モータ6の操作指令速度が0(ゼロ)でない場合には、オペレータによる旋回操作が継続されていると判定し、速度演算部43により演算された旋回油圧モータ6の操作指令速度が0(ゼロ)である場合には、オペレータによる旋回操作が継続されていないと判定してもよい。
【0125】
ステップS163において、オペレータによる旋回操作が継続されていると判定されると、処理がステップS125に戻る。ステップS163において、オペレータによる旋回操作が継続されていないと判定されると、処理がステップS166へ進む。
【0126】
ステップS166において、条件判定部45は、速度演算部43により演算された実際の旋回速度ωswrが速度閾値ωswr0以上であるか否かを判定する。ステップS166の処理は、慣性により、上部旋回体7が動作しているか否かを判定する処理に相当する。ステップS166において、実際の旋回速度ωswrが速度閾値ωswr0以上であると判定されると、処理がステップS125に戻る。ステップS166において、実際の旋回速度ωswrが速度閾値ωswr0未満であると判定されると、図10及び図11のフローチャートに示す処理が終了する。
【0127】
図12を参照して、本実施形態に係る油圧ショベル1の主な動作について説明する。図12に示すように、掘削物を被積込機械200に運搬するために、オペレータが左旋回操作を開始すると、上部旋回体7が左旋回動作を開始する。アーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1未満である場合、上部旋回体7の左旋回動作とブーム8の上げ動作とが複合して行われる。なお、オペレータの左旋回操作に応じた旋回速度では、アーム先端高さZamが相関マップMaにより規定される下限値を下回ってしまうような場合には、自動で、旋回速度が減速する。
【0128】
少なくとも干渉防止位置に作業装置2が到達したときには、アーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1よりも高い位置に配置される。これにより、荷台201の側部202に干渉することなく、バケット10が側部202の上方を通過する。バケット10の全体が荷台201の内側に収まっている状態では、アーム9の操作が有効となっている。これにより、図12の二点鎖線で示すように、アーム9をダンプ動作させてアーム9の先端部を運転室71から離れる方向に移動させることにより、掘削物の放出位置を調整することができる。その結果、油圧ショベル1による積込作業の効率の向上を図ることができる。
【0129】
第1実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0130】
(1)制御装置40は、物体位置検出装置(ベッセル位置取得装置)54により取得される荷台(ベッセル)201の位置に基づいて、荷台201と作業装置2とが干渉しないアーム9の先端部の高さを通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamta1として演算する。制御装置40は、バケット10が荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたことを含む積込動作支援制御実行条件(干渉防止制御実行条件)が成立したか否かを判定する。制御装置40は、積込動作支援制御実行条件(干渉防止制御実行条件)が成立したと判定された場合、姿勢検出装置53により検出される作業装置2の姿勢に基づいて、アーム9の先端部の旋回動作前の周方向の位置である動作開始位置を特定するとともに、動作開始位置と荷台201の側部202との間で荷台201と作業装置2とが干渉しないアーム9の先端部の旋回方向の角度位置である干渉防止位置を特定する。
【0131】
制御装置40は、特定された動作開始位置から干渉防止位置までの上部旋回体7の動作範囲(制御開始旋回角度θswsa1から干渉防止角度θswta1までの動作範囲)において、干渉防止位置に近いほど大きくかつ干渉防止位置で通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamta1となる、アーム9の先端部の旋回方向の角度位置に応じた作業装置2の高さ方向の下限値を演算する。制御装置40は、動作開始位置から干渉防止位置までの上部旋回体7の動作中は、操作装置(アーム操作装置)20によるアーム9の操作を無効にするとともに、アーム9の先端部の高さが下限値を下回らないようにブーム8及び上部旋回体7の動作を制御する。
【0132】
制御装置40は、アーム9の先端部が干渉防止位置を越える高さに達している状態で干渉防止位置を越える旋回方向の角度位置に達したことを含むアーム9の操作の有効化条件が成立したか否かを判定する。制御装置40は、有効化条件が成立した場合、操作装置(アーム操作装置)20によるアーム9の操作を有効にする。
【0133】
制御装置40は、バケット10が干渉防止位置を越えて旋回した後に平面視で荷台201の側部202を通過したか否かを判定する。制御装置40は、バケット10が平面視で荷台201の側部202を通過したと判定されていない場合、操作装置(アーム操作装置)20によるアーム9の操作に応じて動作するアーム9の先端部の高さが通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamta1を下回らないように、ブーム8及びアーム9の少なくとも一方の動作を制御する。制御装置40は、バケット10が平面視で荷台201の側部202を通過したと判定された場合、通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamta1よりも低い位置へのアーム9の先端部の動作を許容する。
【0134】
この構成によれば、積込作業において、作業装置2と被積込機械200の荷台201などのベッセルとの干渉を防止可能な油圧ショベル1であって、荷台201の側部202に作業装置2が接近した後にオペレータの意図を反映して作業装置2の姿勢を調整可能な油圧ショベル1を提供することができる。
【0135】
(2)積込動作支援制御実行条件(干渉防止制御実行条件)には、作業装置2の姿勢が運搬姿勢であることが含まれる。制御装置40は、姿勢検出装置53の検出結果に基づいて、作業装置2の姿勢が運搬姿勢であるか否かを判定する。
【0136】
作業装置2の姿勢が運搬姿勢であることを積込動作支援制御実行条件に含めない場合、バケット10の爪先が下方を向いているときなど、掘削作業中に、オペレータの意図に反して積込動作支援制御が実行される可能性がある。したがって、本実施形態によれば、よりオペレータの意図を反映させて積込動作支援制御を実行することができる。
【0137】
<第2実施形態>
図3及び図13図15を参照して、本発明の第2実施形態に係る油圧ショベル1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第1実施形態では、積込動作を行う場合の干渉防止制御としての積込動作支援制御について説明したが、本発明はこれに限定されない。被積込機械200への積込動作の後に、再度、掘削対象物(地山等)が存在する掘削地に向けて作業装置2を移動させる準備動作を行う場合に、干渉防止制御が実行されることとしてもよい。第2実施形態では、干渉防止制御実行条件が成立すると、油圧ショベル1が準備動作を行う際に、バケット10が荷台201に干渉することを防止するための干渉防止制御である準備動作支援制御が実行される。
【0138】
準備動作は、平面視でバケット10の全体が被積込機械200の荷台201の内側に収まっている状態で、バケット10のダンプ動作が行われた状況から開始される。第2実施形態では、図3に示す条件判定部45は、準備動作支援制御を実行させる条件である準備動作支援制御実行条件(第2の干渉防止制御実行条件)が成立したか否かを判定する。準備動作支援制御実行条件は、少なくとも以下の(条件1B)を含む。
(条件1B)平面視でバケット10が荷台201の内側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたこと。
【0139】
条件判定部45は、被積込機械位置演算部42により演算される被積込機械200の荷台201の位置と、速度ベクトル演算部44により演算されるアーム9の先端部の速度ベクトル(バケット10の移動方向を示すパラメータ)とに基づき、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の内側から被積込機械200の荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたか否かを判定する。
【0140】
したがって、掘削物が荷台201に放出された後、オペレータにより、掘削地に向かう旋回操作が行われると、条件判定部45は、準備動作支援制御実行条件が成立したと判定する。
【0141】
なお、平面視でバケット10が荷台201の内側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたか否かの判定方法はこれに限定されない。例えば、条件判定部45は、被積込機械位置演算部42により演算される被積込機械200の荷台201の位置と、姿勢演算部41により演算されるアーム9の先端部の位置と、操作検出装置56により検出される旋回操作の操作方向とに基づき、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の内側から被積込機械200の荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたか否かを判定してもよい。
【0142】
また、制御装置40は、オペレータの操作に応じて掘削地の位置を設定し、バケット10と掘削地との間の側部202に向かって、バケット10が移動することが検出された場合に、準備動作支援制御実行条件が成立したと判定してもよい。なお、オペレータは、複数のスイッチを有する入力装置(不図示)を操作することにより、掘削地の位置を制御装置40に入力することができる。
【0143】
なお、掘削地は、オペレータにより手動で設定される場合に限定されない。例えば、制御装置40は、作業装置2の姿勢の変化、及び、作業装置2の姿勢が変化した際の油圧アクチュエータの圧力に基づき、掘削地の位置を特定し、記憶してもよい。なお、油圧アクチュエータの圧力は、圧力センサ(不図示)によって検出され、制御装置40に入力される。
【0144】
準備動作支援制御実行条件が成立すると、図3に示す姿勢演算部41が、準備動作支援制御開始時の上部旋回体7の旋回角度θswを、動作開始位置を特定する制御開始旋回角度θswsb1として演算する。また、姿勢演算部41は、準備動作支援制御開始時のアーム9の先端部の高さを制御開始高さZamsb1として演算する。
【0145】
準備動作支援制御実行条件が成立すると、目標角度演算部46が、被積込機械位置演算部42により演算される被積込機械200の荷台201のショベル基準座標系での位置(X,Y,Z座標)に基づき、通過用下限高さZamtb1を演算する。通過用下限高さZamtb1は、荷台201のショベル基準座標系での高さZvと、予め定められた設定値Zaとを加算することにより演算される。積込作業において、油圧ショベル1及び被積込機械200の位置に変更がなければ、通過用下限高さZamtb1は、第1実施形態で説明した通過用下限高さZmata1として設定してもよい。
【0146】
さらに、姿勢演算部41は、準備動作支援制御開始時のアーム角度θamを制御開始アーム角度θamsb1として演算する。準備動作支援制御実行条件が成立すると、目標角度演算部46は、制御開始アーム角度θamsb1及び通過用下限高さZamtb1に基づき、アーム先端高さが通過用下限高さZamtb1となるブーム角度である通過用下限ブーム角度θbmtb1を演算する。
【0147】
目標角度演算部46は、第1実施形態と同様、通過用下限ブーム角度θbmtb1に基づいて、ラップ旋回角度θswtbを演算し、ラップ旋回角度θswtbに所定のマージンを加味して、荷台201の内側において特定された動作開始位置と荷台201の側部202との間の干渉防止位置を特定する干渉防止角度θswtb1を演算する。なお、ラップ旋回角度θswtbは、平面視でアーム9の先端部の予測移動軌跡Lと、被積込機械200の荷台201の側部202の内側表面とが交差する位置、すなわちバケット10が平面視で荷台201の側部202と重なる位置(ラップ位置)での旋回角度である。
【0148】
また、目標角度演算部46は、ラップ旋回角度θswtbに所定のマージンを加味して、バケット10が荷台201の内側から側部202を越えて、バケット10の全体が荷台201の外側に位置したときの旋回角度である荷台外到達角度θswtb2を演算する。
【0149】
相関マップ生成部49は、目標角度演算部46の演算結果に基づいて、図13に示すような準備動作支援時の相関マップMbを生成し、記憶装置に記憶する。なお、図13に示す相関マップMbの横軸は旋回角度を示している。相関マップMbは、基準姿勢のときの旋回角度を0度として、左旋回すると旋回角度が増加するマップ、すなわち、左旋回した後に基準姿勢に戻るときには旋回角度が減少するマップである。
【0150】
相関マップMbは、制御開始旋回角度θswsb1から干渉防止角度θswtb1までは、旋回角度の減少に伴って、アーム先端高さの下限値が制御開始高さZamsb1から単調に増加し、干渉防止角度θswtb1までにアーム先端高さの下限値が通過用下限高さZamtb1となるよう生成される。また、相関マップMbは、旋回角度が干渉防止角度θswtb1から荷台外到達角度θswtb2までは、アーム先端高さの下限値が通過用下限高さZamtb1となるように生成される。
【0151】
図3に示す姿勢比較部47は、姿勢演算部41により演算されたアーム先端高さZamと、目標角度演算部46により演算された通過用下限高さZamtb1とを比較し、その比較結果に基づき、アーム9の操作の有効化条件が成立したか否かを判定する。第2実施形態では、アーム9の操作の有効化条件は、アーム9の先端部が通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamtb1を越えた場合に成立する。
【0152】
姿勢比較部47は、アーム先端高さZamが通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamtb1以下であるときには、アーム9の先端部が通過用下限高さ(干渉防止高さ)を越えていないと判定する。つまり、姿勢比較部47は、有効化条件が成立していないと判定する。
【0153】
姿勢比較部47は、アーム先端高さZamが通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamtb1よりも大きいときには、アーム9の先端部が通過用下限高さ(干渉防止高さ)Zamtb1を越えていると判定する。つまり、姿勢比較部47は、有効化条件が成立していると判定する。
【0154】
図14及び図15を参照して制御装置40により実行される準備動作支援制御の処理の流れの一例について説明する。図14及び図15は、図10及び図11と同様の図であり、制御装置40により実行される準備動作支援制御の処理の流れの一例について示すフローチャートである。図14及び図15のフローチャートに示す処理において、図10及び図11のフローチャートに示す処理と同様の処理については、適宜、説明を省略する。図14及び図15のフローチャートに示す処理は、イグニッションスイッチ(不図示)がオンされることにより開始され、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0155】
図14に示すように、ステップS201において、被積込機械位置演算部42は、物体位置検出装置54の検出結果に基づいて、油圧ショベル1に対する被積込機械200の荷台201の相対的な位置を演算する。
【0156】
次のステップS204において、条件判定部45は、ステップS201で演算された荷台201の位置と、速度ベクトル演算部44によって算出されるアーム先端部の速度ベクトルとに基づき、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の内側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたか否かを判定する。
【0157】
ステップS204において、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の内側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたと判定されると、処理がステップS210へ進む。ステップS204において、オペレータによって、平面視でバケット10が荷台201の内側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われていないと判定されると、図14及び図15のフローチャートに示す処理が終了する。
【0158】
ステップS204の判定処理において肯定判定されると、準備動作支援制御実行条件が成立するため、準備動作支援制御が開始される。準備動作支援制御では、まず、ステップS210において、姿勢演算部41が、制御開始旋回角度θswsb1、制御開始アーム角度θamsb1及び制御開始高さZamsb1を演算する。
【0159】
次のステップS213において、目標角度演算部46は、通過用下限高さZamtb1を演算する。次のステップS215において、姿勢比較部47は、姿勢演算部41により演算される現在のアーム先端高さZamが、ステップS213で演算された通過用下限高さZamtb1以下であるか否かを判定する。ステップS215において、現在のアーム先端高さZamが通過用下限高さZamtb1以下であると判定されると、処理がステップS216へ進む。ステップS215において、現在のアーム先端高さZamが通過用下限高さZamtb1よりも大きいと判定されると、アーム9の操作の有効化条件が成立し、処理がステップS245へ進む。
【0160】
ステップS216において、目標角度演算部46は、通過用下限ブーム角度θbmtb1及びラップ旋回角度θswtbを演算する。次のステップS219において、目標角度演算部46は、干渉防止角度θswtb1及び荷台外到達角度θswtb2を演算する。
【0161】
次のステップS222において、相関マップ生成部49は、ステップS210,S213,S219での演算結果に基づき、相関マップMb(図13参照)を生成する。
【0162】
ステップS215の判定処理において肯定判定されると、自動ブーム上げ制御実行条件が成立する。これにより、図15に示すように、ステップS231において、目標速度演算部48は、ブームシリンダ11の目標速度を予め定められたブーム自動上げ速度に設定する。ステップS231の処理が終了すると、処理がステップS234へ進む。
【0163】
ステップS234において、目標速度演算部48は、オペレータの旋回操作に応じた旋回速度ωswと、制限旋回速度ωswtとに基づき、オペレータの旋回操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMbにより規定される下限値を下回るか否かを判定する。ステップS234において、オペレータの旋回操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMbにより規定される下限値を下回ると判定されると、処理がステップS237へ進む。ステップS234において、オペレータの旋回操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMbにより規定される下限値を下回らないと判定されると、処理がステップS240へ進む。
【0164】
ステップS237において、目標速度演算部48は、旋回油圧モータ6の目標速度を制限旋回速度ωswtに対応する速度に設定する。ステップS231,S237の処理が行われることにより、アーム先端高さが相関マップMbにより規定される下限値を下回らないように旋回動作とブーム上げ動作とが複合して行われることになる。なお、図示しないが、ステップS234において、否定判定された場合には、オペレータによる旋回操作量に応じた操作指令速度が旋回油圧モータ6の目標速度として設定される。ステップS237の処理が終了すると、処理がステップS240へ進む。
【0165】
ステップS240,S243の処理は、それぞれ図11に示すステップS140,S143と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0166】
図15に示すように、ステップS245において、目標角度演算部46は、ステップS240と同様の処理を行う。ステップS245において、オペレータによるアーム操作があると判定されると、処理がステップS247へ進む。ステップS245において、オペレータによるアーム操作がないと判定されると、処理がステップS250へ進む。
【0167】
ステップS247において、目標角度演算部46は、荷台外到達角度θswtb2を再演算し、相関マップ生成部49は、相関マップMbを更新する。ステップS247の処理が終了すると、処理がステップS250へ進む。
【0168】
ステップS250において、姿勢比較部47は、姿勢演算部41により演算された現在の旋回角度θswと、荷台外到達角度θswtb2とに基づき、平面視でバケット10の全体が荷台201の外側に到達したか否かを判定する。ステップS250において、平面視でバケット10の全体が荷台201の外側に到達していないと判定されると、処理がステップS253へ進む。ステップS250において、平面視でバケット10の全体が荷台201の外側に到達したと判定されると、図14及び図15のフローチャートに示す処理が終了する。
【0169】
ステップS253において、目標速度演算部48は、速度ベクトル演算部44により演算されたアーム先端部の速度ベクトルに基づき、オペレータのアーム操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMbにより規定される下限値(通過用下限高さZamtb1)を下回るか否かを判定する。ステップS253において、オペレータのアーム操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMbにより規定される下限値を下回ると判定されると、処理がステップS256へ進む。ステップS253において、オペレータのアーム操作によって、アーム先端高さZamが相関マップMbにより規定される下限値を下回らないと判定されると、処理がステップS260へ進む。
【0170】
ステップS256において、目標速度演算部48は、アーム先端高さZamが相関マップMbにより規定される下限値を下回らないように、ブーム8を上げ動作させるためのブームシリンダ11の目標速度を演算する。これにより、アーム先端高さが通過用下限高さZamtb1を下回らないように、アーム動作とブーム上げ動作とが複合して行われることになる。ステップS256の処理が終了すると、処理がステップS260へ進む。
【0171】
ステップS260,S263,S266の処理は、図11のステップS160,S163,S166と同様の処理である。なお、図15に示すように、ステップS263において肯定判定されると、処理がステップS269へ進む。また、ステップS266において肯定判定されると、処理がステップS269へ進む。
【0172】
ステップS269において、姿勢比較部47は、ステップS215と同様の処理を行う。ステップS269において、現在のアーム先端高さZamが通過用下限高さZamtb1以下であると判定されると、処理がステップS231へ戻る。ステップS269において、現在のアーム先端高さZamが通過用下限高さZamtb1よりも大きいと判定されると、アーム9の操作の有効化条件が成立し、処理がステップS245へ進む。
【0173】
このように、第2実施形態では、制御装置40が準備動作を支援することで、対象物の荷台201への放出動作が完了した後、バケット10が荷台201の側部202の上縁よりも低い位置にある状況から準備動作を行う場合に、バケット10と荷台201の側部202との干渉を防ぐことができる。なお、準備動作支援制御開始時に、バケット10が荷台201の側部202の上縁よりも高い位置にある場合には、干渉する可能性のあるオペレータの操作に対してのみ、制御装置40による支援を行うことができる。また、バケット10が荷台201の側部202を超えて荷台201の外側に位置すると、干渉防止高さZamtb1よりも低い位置へのアーム9の先端部の動作が許容されるため、バケット10を速やかに掘削対象物に近づけ、掘削作業に移行することができる。
【0174】
準備動作では、アーム先端高さは、動作開始時に干渉防止高さを越えていたり、動作開始後直ちに干渉防止高さを越えたりすることが多い。本第2実施形態では、有効化条件が、アーム9の先端部が干渉防止高さを越えることを含む条件としたことにより、準備動作の開始後、直ちにアーム9の操作を有効な状態にすることができる。これにより、掘削作業の準備動作をよりオペレータの意図を反映して行うことができる。
【0175】
<第3実施形態>
図3及び図16図18を参照して、本発明の第3実施形態に係る油圧ショベル1について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照番号を付し、相違点を主に説明する。第1実施形態では、平面視でバケット10の全体が荷台201の内側に到達した場合には、積込動作支援制御が終了し、オペレータが自由にアーム9を操作できる状態になる例について説明した。これに対して、第3実施形態では、平面視でバケット10の全体が荷台201の内側に到達した後も積込動作支援制御が継続される。以下、第3実施形態に係る油圧ショベル1の制御装置40による制御内容について、詳しく説明する。
【0176】
第3実施形態に係る制御装置40は、被積込機械200の荷台201内にバケット10が存在する場合に、荷台201の底部203とバケット10とが接触しないアーム9の先端部の高さ位置であるベッセル内下限高さ(ベッセル内下限値)Zamta2(図17参照)を設定する。
【0177】
図3に示す目標角度演算部46は、姿勢演算部41での演算結果に基づいて、アーム先端距離Rta1を演算する。目標角度演算部46は、図16に示すように、アーム先端距離Rta1で旋回動作した際のアーム9の先端部の予測移動軌跡L´と、荷台201の側部202lの内側表面を示す線分との交点P´のショベル基準座標系での位置を演算する。目標角度演算部46は、点P´の位置に基づき、ラップ旋回角度θswta´を演算する。
【0178】
図8に示すように、ラップ旋回角度θswtaは、左右一対の側部202のうちの一方(例えば、右側の側部202r)とアーム9の先端部の予測移動軌跡Lとが重なる位置(点P)に作業装置2が位置したときの旋回角度であった。これに対し、図16に示すように、ラップ旋回角度θswta´は、左右一対の側部202のうちの他方(例えば、左側の側部202l)とアーム9の先端部の予測移動軌跡L´とが重なる位置(点P´)に作業装置2が位置したときの旋回角度である。
【0179】
目標角度演算部46は、ラップ旋回角度θswta´に所定のマージンθswtam´を加算し荷台内限界角度θswta3を演算する(θswta3=θswta´+θswtam´)。なお、ここで所定のマージンθswtam´は、作業装置2が荷台201の内側に向かって側部202lから遠ざかる位置であって、平面視で荷台201の内側にバケット10の全体が収まるように加算されるマージンである。例えば、基準姿勢から左旋回方向のラップ旋回角度θswta´が正の値で表される場合、マージンθswtam´は負の値となる。マージンの絶対値は、少なくともバケット10の幅の半分よりも大きい値である。
【0180】
荷台内到達角度θswta2及び荷台内限界角度θswta3は、平面視でバケット10の全体を荷台201内に配置可能な範囲を表す旋回角度である。
【0181】
図17に示すように、目標角度演算部46は、被積込機械位置演算部42により演算される荷台201のショベル基準座標系での高さZvから高さhbを差し引いて底板高さZvbを演算する。高さhbは、底部203から荷台201の上縁までの高さである。目標角度演算部46は、底板高さZvbに、予め定められた設定値Zbを加算することにより、ベッセル内下限高さZamta2を演算する。なお、底部203が水平に対して傾斜している場合、高さhbは、底部203から荷台201の上縁までの高さの最小値hbminに設定される。また、高さhbは、一定値とする場合に限定されない。この場合、目標角度演算部46は、バケット10と荷台201の位置関係に基づき、高さhbを演算する。設定値Zbは、バケット長さLbkと、マージンとを加算することにより設定される。
【0182】
相関マップ生成部49は、目標角度演算部46の演算結果に基づいて、図18に示すような積込動作支援時の相関マップMa´を生成し、記憶装置に記憶する。図18に示すように、相関マップMa´は、制御開始旋回角度θswsa1から荷台内到達角度θswta2までは、第1実施形態で説明した相関マップMa(図6参照)と同じである。相関マップMa´は、荷台内到達角度θswta2から荷台内限界角度θswta3までの範囲で、アーム先端高さの下限値が設定される点が、第1実施形態で説明した相関マップMa(図6参照)と異なっている。相関マップMa´は、荷台内到達角度θswta2から荷台内限界角度θswta3までは、アーム先端高さの下限値がベッセル内下限高さZamta2となるように生成される。
【0183】
目標速度演算部48は、旋回角度θswが荷台内到達角度θswta2から荷台内限界角度θswta3までの範囲内にある場合、すなわちバケット10が右側の側部(第1側部)202rを通過して荷台201内の右側の側部(第1側部)202rと左側の側部(第2側部)202lとの間を移動している場合、オペレータによるアーム9の操作で、アーム先端高さZamがベッセル内下限高さZamta2を下回らないように、ブームシリンダ11の伸長方向(ブーム8の上げ方向)の目標速度を演算する。なお、目標速度演算部48は、ブームシリンダ11の伸長方向の目標速度を演算することに代えて、あるいは、ブームシリンダ11の伸長方向の目標速度を演算するとともに、アームシリンダ12の目標速度を0(ゼロ)に設定してもよい。これにより、被積込機械200の荷台201内にバケット10が到達した後も、バケット10と被積込機械200の荷台201との干渉を防ぐことができる。
【0184】
このように、第3実施形態に係る油圧ショベル1の制御装置40は、積込動作において、バケット10が右側の側部(第1側部)202rと重なってからさらに旋回を継続し、両者が重ならない位置まで移動した(側部202rをバケット10の全体が通過した)と判定された場合、干渉防止高さZamta1よりも低い位置へのアーム9の先端部の動作を許容する。また、制御装置40は、右側の側部(第1側部)202rと左側の側部(第2側部)202lとの間において、底部203とバケット10とが接触しないアーム9の先端部の高さ位置であるベッセル内下限高さ(ベッセル内下限値)Zamta2を設定する。そして、制御装置40は、バケット10が右側の側部(第1側部)202rを通過して荷台201内の右側の側部(第1側部)202rと左側の側部(第2側部)202lとの間を移動している場合、アーム9の先端部の高さ(アーム先端高さ)Zamがベッセル内下限高さZamta2を下回らないように、ブーム8及びアーム9の少なくとも一方の動作を制御する。
【0185】
この構成によれば、積込動作において、バケット10の全体が荷台201の内側に配置された後において、バケット10と荷台201の底部203との干渉を適切に防止することができる。
【0186】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0187】
<変形例1>
第1実施形態では、積込動作支援制御実行条件が、(条件1)平面視でバケット10が荷台201の外側から荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたこと、及び、(条件2)作業装置2の姿勢が運搬姿勢であることを含む例について説明したが、本発明はこれに限定されない。積込動作支援制御実行条件には、少なくとも「バケット10が荷台201の側部202に近づく方向の旋回操作が行われたこと」が含まれていればよい。また、積込動作支援制御実行条件に、さらに条件を追加してもよい。
【0188】
<変形例1―1>
図19A図19B、及び図20を参照して、第1実施形態で説明した積込動作支援制御実行条件に以下の(条件A)を追加した変形例1-1について説明する。
【0189】
本変形例1-1において、積込動作支援制御実行条件は、(条件1)、(条件2)及び(条件A)のいずれもが満たされると成立し、(条件1)、(条件2)及び(条件A)のいずれかが満たされていない場合には成立しない。
(条件A)支援制御実行スイッチ90がオン操作されていること。
【0190】
図19Aは、支援制御実行スイッチ90の配置の一例について示す図であり、図19Bは、支援制御実行スイッチ90の配置の別の例について示す図である。図19A及び図19Bに示すように、支援制御実行スイッチ90は、例えば、操作レバー22に設けられる。
【0191】
図19Aに示す例では、支援制御実行スイッチ90は、操作レバー22の前側に設けられている。この構成によれば、オペレータは、操作レバー22を把持して操作しながら、人差し指などで支援制御実行スイッチ90を容易に操作することができる。
【0192】
また、図19Bに示す例では、支援制御実行スイッチ90は、操作レバー22の後側に設けられている。この構成によれば、オペレータは、操作レバー22を把持して操作しながら、親指などで支援制御実行スイッチ90を容易に操作することができる。
【0193】
支援制御実行スイッチ90は、オフ位置から押し込まれることによりオン位置に切り替えられる。なお、支援制御実行スイッチ90の動作方式は、モーメンタリ動作方式であってもよいしオルタネイト動作方式であってもよい。支援制御実行スイッチ90は、オフ位置ではオフ信号を制御装置40に出力し、オン位置ではオン信号を制御装置40に出力する。
【0194】
本変形例1-1では、図20及び図11に示す積込動作支援制御が実行される。図20は、図10のフローチャートにおけるステップS101とステップS104の間に、ステップS103Aの処理が追加されたフローチャートである。
【0195】
本変形例1-1では、ステップS101の処理が終了すると、処理がステップS103Aに進む。ステップS103Aにおいて、条件判定部45は、支援制御実行スイッチ90がオン操作されているか否かを判定する。ステップS103Aにおいて、支援制御実行スイッチ90がオン操作(押し込み操作)されていると判定されると、ステップS104へ進む。ステップS103Aにおいて、支援制御実行スイッチ90がオン操作されていないと判定されると、図20及び図11のフローチャートに示す処理が終了する。
【0196】
本変形例1-1によれば、積込動作支援制御実行条件に(条件A)が含まれているため、オペレータは、任意のタイミングで、積込動作支援制御を実行させたり、解除させたりすることができる。オペレータの意図をより反映させて積込動作支援制御が実行されるため、積込作業の効率をさらに向上することができる。
【0197】
なお、本変形例1-1では、積込動作支援制御実行条件に(条件A)が含まれる例について説明したが、第2実施形態で説明した準備動作支援制御実行条件に(条件A)が含まれるようにしてもよい。第3実施形態で説明した積込動作支援制御実行条件に(条件A)が含まれるようにしてもよい。
【0198】
<変形例1-2>
次に、図21及び図22を参照して、第1実施形態で説明した積込動作支援制御実行条件に以下の(条件B)を追加した変形例1-2について説明する。
【0199】
本変形例1-2において、積込動作支援制御実行条件は、(条件1)、(条件2)及び(条件B)のいずれもが満たされると成立し、(条件1)、(条件2)及び(条件B)のいずれかが満たされていない場合には成立しない。
(条件B)バケット10内に運搬対象物(掘削物)が存在していること。
【0200】
図21に示すように、本変形例1-2に係る油圧ショベル1は、バケット10内の運搬対象物の情報を取得する対象物情報取得装置55を備えている。対象物情報取得装置55は、例えば、バケット10内の対象物(積荷)の荷重を取得する装置である。対象物情報取得装置55は、例えば、ブームシリンダ11の圧力を検出する圧力センサと、圧力センサの検出結果に基づいてバケット10内の対象物の重量を演算するコントローラと、によって構成される重量検出装置である。
【0201】
条件判定部45は、対象物情報取得装置55により取得されたバケット10内の対象物の重量Wと重量閾値W0とを比較する。重量閾値W0は、予め実験等により定められ、制御装置40の記憶装置に記憶されている。重量閾値W0は、運搬動作が行われる程度に十分な量の運搬対象物の重量に相当する。
【0202】
本変形例1-2では、図22及び図11に示す積込動作支援制御が実行される。図22は、図10のフローチャートにおけるステップS107とステップS110の間に、ステップS109Bの処理が追加されたフローチャートである。
【0203】
本変形例1-2では、ステップS107において肯定判定されると、ステップS109Bへ進む。ステップS109Bにおいて、条件判定部45は、対象物情報取得装置55により取得された重量Wに基づき、バケット10内に運搬対象物が存在しているか否かを判定する。ステップS109Bにおいて、条件判定部45は、対象物情報取得装置55により取得された重量Wが重量閾値W0よりも大きい場合には、バケット10内に運搬対象物が存在していると判定し、ステップS110へ進む。ステップS109Bにおいて、条件判定部45は、対象物情報取得装置55により取得された重量Wが重量閾値W0以下である場合には、バケット10内に運搬対象物が存在していないと判定し、図22及び図11のフローチャートに示す処理を終了する。
【0204】
このように本変形例1-2では、干渉防止制御実行条件に、「バケット10内に運搬対象物が存在していること」が含まれる。制御装置40は、対象物情報取得装置55により取得された情報(重量)に基づいて、バケット10内に運搬対象物が存在しているか否かを判定する。本変形例1-2によれば、オペレータに運搬動作を行う意図があるか否かをより正確に判断することができる。オペレータの意図をより正確に把握することができるため、オペレータに違和感を与えずに、積込作業を支援することができる。その結果、積込作業の効率をより向上することができる。
【0205】
なお、対象物情報取得装置55は、バケット10内の対象物の重量を検出する重量検出装置とすることに限定されない。対象物情報取得装置55は、バケット10を撮影するカメラなどの撮影装置と、撮影装置により撮影された画像から対象物を認識する画像認識コントローラと、によって構成されていてもよい。制御装置40は、対象物情報取得装置により取得されたバケット10内の運搬対象物の情報(画像)に基づいて、バケット10内に運搬対象物が存在しているか否かを判定する。
【0206】
<変形例2>
第1実施形態では、平面視で、作業装置2が荷台201の側部202に重なるラップ旋回角度θswtaを演算し、ラップ旋回角度θswtaにバケット10の幅を考慮したマージンθswtamを加算し、干渉防止角度θswta1を演算する例について説明した。しかし、干渉防止角度θswta1の演算方法は、この方法に限定されない。例えば、理論上、荷台201とバケット10との干渉を防止可能な基準防止角度θswta0を以下の式(5)により演算し、式(5)により演算された基準防止角度θswta0に所定のマージンを加算することにより、干渉防止角度θswta1を演算してもよい。
【0207】
【数5】
Wbkは、バケット10の幅であり、Rta1は式(3)により求められるアーム先端距離である。Xta1,Yta1は、アーム先端距離Rta1で旋回動作した際のアーム9の先端部の予測移動軌跡と荷台201の側部202を示す線分との交点の位置座標である。
【0208】
なお、上記実施形態で説明したアーム先端距離Rta1に代えて、平面視した際の旋回中心軸(Z軸)からバケット10の先端部までの距離(以下、バケット先端距離とも記す)Rta1aを用いて、各種の演算を行ってもよい。バケット先端距離Rta1aは、以下の式(6)により求められる。
【0209】
【数6】
θbkは、姿勢演算部41により演算されるバケット角度であり、θamは、姿勢演算部41により演算されるアーム角度である。θbmta1は式(2)により求められる通過用下限ブーム角度である。Loxは、旋回中心軸(Z軸)からブームピン8aまでの距離(オフセット)であり、Lbmはブーム長さ、Lamはアーム長さ、Lbkはバケット長さである。
【0210】
基準防止角度θswta0は、バケット先端距離Rta1aを用いて、以下の式(7)により求められる。
【0211】
【数7】
Xta1a,Yta1aは、バケット先端距離Rta1aで旋回動作した際のバケット10の先端部の予測移動軌跡と荷台201の側部202を示す線分との交点の位置座標である。
【0212】
本変形例2の演算方法を採用することにより、上記実施形態よりも精度よく、干渉防止角度θswta1,θswtb1、荷台内到達角度θswta2、荷台外到達角度θswtb2及び荷台内限界角度θswta3を演算することができる。
【0213】
<変形例3>
第1実施形態では、アーム9の操作の有効化条件が、旋回方向においてアーム9の先端部が干渉防止位置を越えた場合、すなわち旋回角度θswが干渉防止角度θswta1以上になった場合にのみ成立する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。第1実施形態において、アーム9の操作の有効化条件は、旋回方向においてアーム9の先端部が干渉防止位置を越えた場合だけでなく、アーム9の先端部が干渉防止高さ(通過用下限高さ)を越えた場合に成立するようにしてもよい。
【0214】
以下、図23を参照して、本変形例3に係る制御装置40により実行される積込動作支援制御の処理の流れの一例について説明する。本変形例3は、第1実施形態の変形例であり、第1実施形態との相違点について説明する。図23は、図11と同様、本変形例3に係る制御装置40により実行される積込動作支援制御の処理の流れの一例について示すフローチャートであり、ステップS125~S166の処理について示す。図11のフローチャートと図23のフローチャートとでは、ステップS128で否定判定された場合に実行される処理が異なっている。図11のフローチャートでは、ステップS128において否定判定されると、処理がステップS134へ進む。これに対して、図23のフローチャートでは、ステップS128において、現在のアーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1よりも大きいと判定されると、処理がステップS145へ進む。
【0215】
この構成によれば、オペレータによる旋回操作量が小さく、旋回角度θswが干渉防止角度θswta1に達する前に自動ブーム上げによってアーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1よりも大きくなった場合には、アーム9の操作が有効になる。このような変形例によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ゆっくり上部旋回体7を動作させる場合において、旋回角度θswが干渉防止角度θswta1に達する前であっても、アーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1を越えれば、アーム9の操作が許容されるため、よりオペレータの意図を反映して積込動作を行うことができる。
【0216】
なお、制御装置40は、ステップS128において、現在のアーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1よりも大きいと判定された場合には、干渉防止角度θswta1未満においてもアーム先端高さの下限値を通過用下限高さZamta1とする相関マップMaを生成してもよい。この構成では、旋回角度θswが干渉防止角度θswta1に達する前にアーム先端高さZamが通過用下限高さZamta1を超えた場合には、それ以降、旋回角度θswが干渉防止角度θswta1に達する前でもアーム先端高さが通過用下限高さZamta1を下回らないようにブーム上げ動作が行われる。これにより、旋回角度θswが干渉防止角度θswta1に達する前にアーム操作が有効になった場合でも、アーム先端高さが通過用下限高さZamta1を下回ることが防止され。したがって、積込動作において、より適切に荷台201とバケット10との干渉を防止することができる。
【0217】
<変形例4>
上記実施形態では、アーム9の先端部にバケット10を後向きに取り付けたバックホウショベルを作業機械の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。図24に示すように、作業機械は、アーム9の先端部にバケット10を前向きに取り付けたローディングショベルであってもよい。
【0218】
<変形例5>
上記実施形態では、油圧ショベル1に対する被積込機械200の荷台(ベッセル)201の相対位置を取得するベッセル位置取得装置が、物体位置検出装置54である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0219】
ベッセル位置取得装置は、作業現場において管理事務所等のサーバで取得されている被積込機械200の荷台201の位置情報を通信装置を介して取得する構成であってもよい。制御装置40は、グローバル座標系における被積込機械200の荷台201の位置座標(Xg,Yg,Zg)を通信装置を介して取得する。制御装置40は、油圧ショベル1に取り付けられたGNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナを含む測位装置から、グローバル座標系における油圧ショベル1の位置座標(Xg,Yg,Zg)及び方位を取得する。制御装置40は、グローバル座標系における荷台201及び油圧ショベル1の位置座標を油圧ショベル1のショベル基準座標系における位置座標(X,Y,Z)に変換してもよい。なお、本変形例において、物体位置取得装置が、グローバル座標系に基づく位置座標を取得する例について説明したが、現場基準の座標系(ローカル座標系)に基づく位置座標を取得してもよい。
【0220】
<変形例6>
上記実施形態では、操作システムが、電気レバー方式の操作システムである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。図示しないが、操作システムは、操作装置20,21が操作レバー22,23の操作量及び操作方向に応じた操作圧を生成する減圧弁を有する油圧パイロット方式の操作システムとしてもよい。
【0221】
<変形例7>
上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせの一例として、第1実施形態あるいは第3実施形態で説明した積込動作支援制御と第2実施形態で説明した準備動作支援制御とを実行可能な油圧ショベル1が考えられる。
【0222】
本変形例に係る油圧ショベル1の制御装置40は、物体位置検出装置(ベッセル位置取得装置)54により取得された油圧ショベル1に対する荷台201の相対位置に基づいて、平面視でバケット10が荷台201の外側から右側の側部(第1側部)202rに近づく方向の旋回操作が行われたことを含む第1の干渉防止制御実行条件が成立したか否かを判定する。制御装置40は、有効化条件が成立した場合には、操作装置(アーム操作装置)20によるアーム9の操作を有効にする。制御装置40は、バケット10が干渉防止位置を越えて旋回した後に平面視で右側の側部(第1側部)202rを通過したか否かを判定する。制御装置40は、バケット10が右側の側部(第1側部)202rを通過したと判定されていない場合、操作装置(アーム操作装置)20によるアーム9の操作に応じて動作するアーム9の先端部の高さが干渉防止高さZamta1を下回らないように、ブーム8及びアーム9の少なくとも一方の動作を制御する。制御装置40は、バケット10が右側の側部(第1側部)202rを通過したと判定された場合、干渉防止高さZamta1よりも低い位置へのアーム9の先端部の動作を許容する。
【0223】
また、本変形例に係る油圧ショベル1の制御装置40は、物体位置検出装置(ベッセル位置取得装置)54により取得された油圧ショベル1に対する荷台201の相対位置に基づいて、平面視でバケット10が荷台201の内側から右側の側部(第1側部)202rに近づく方向の旋回操作が行われたことを含む第2の干渉防止制御実行条件が成立したか否かを判定する。制御装置40は、有効化条件が成立した場合には、操作装置(アーム操作装置)20によるアーム9の操作を有効にする。制御装置40は、バケット10が平面視で右側の側部(第1側部)202rを通過したか否かを判定する。制御装置40は、バケット10が右側の側部(第1側部)202rを通過したと判定されていない場合、操作装置(アーム操作装置)20によるアーム9の操作に応じて動作するアーム9の先端部の高さが干渉防止高さZamtb1を下回らないように、ブーム8及びアーム9の少なくとも一方の動作を制御する。制御装置40は、バケット10が右側の側部(第1側部)202rを通過したと判定された場合、干渉防止高さZamtb1よりも低い位置へのアーム9の先端部の動作を許容する。
【0224】
この構成によれば、掘削動作、積込動作、準備動作の一連の動作を繰り返し行う際に、荷台201とバケット10との干渉を防止しつつ、オペレータの意図に沿った動作となるように、油圧ショベル1の動作が支援される。その結果、油圧ショベル1による作業の効率の向上を図ることができる。
【0225】
<変形例8>
上記実施形態では、作業装置2により掘削された掘削物が積み込まれるベッセルが、ダンプトラックの荷台201である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、クローラ式の走行体を備える不整地運搬車の荷台(ベッセル)に掘削物を積み込む場合に適用してもよい。また、本発明は、ベルトコンベア上に載置されるベッセルに掘削物を積み込む場合に適用してもよい。
【0226】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。なお、図中に示した制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上で必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0227】
1…油圧ショベル、2…作業装置、3…車体、4…走行油圧モータ(油圧アクチュエータ)、5…下部走行体(走行体)、6…旋回油圧モータ(油圧アクチュエータ)、7…上部旋回体(旋回体)、8…ブーム、8a…ブームピン、9…アーム、9a…アームピン、10…バケット、10a…バケットピン、11…ブームシリンダ、12…アームシリンダ、13…バケットシリンダ、14…ブーム角度センサ(姿勢センサ)、15…アーム角度センサ(姿勢センサ)、17…バケット角度センサ(姿勢センサ)、18…傾斜角度センサ(姿勢センサ)、19…旋回角度センサ(姿勢センサ)、20…操作装置(アーム操作装置、旋回操作装置)、39…アクチュエータ制御部、40…制御装置、41…姿勢演算部、42…被積込機械位置演算部、43…速度演算部、44…速度ベクトル演算部、45…条件判定部、46…目標角度演算部、47…姿勢比較部、48…目標速度演算部、49…相関マップ生成部、50…油圧駆動システム、51…電磁比例弁、52…操作量センサ、53…姿勢検出装置、54…物体位置検出装置(ベッセル位置取得装置)、55…対象物情報取得装置、56…操作検出装置、90…支援制御実行スイッチ、100…パイロットライン、101…流量制御弁、102…メインポンプ(油圧ポンプ)、103…エンジン、104…パイロットポンプ(油圧ポンプ)、200…被積込機械、201…荷台(ベッセル)、202…側部(第1側部、第2側部)、203…底部、Rta1…アーム先端距離、Rta1a…バケット先端距離、W…重量、W0…重量閾値、Zamata1,Zamtb1…通過用下限高さ(干渉防止高さ)、Zamta2…ベッセル内下限高さ(ベッセル内下限値)、γ…対地角、γt…対地角閾値、θam…アーム角度、θamsa1,θamsb1…制御開始アーム角度、θbk…バケット角度、θbm…ブーム角度、θbmta1,θbmtb1…通過用下限ブーム角度、θsw…旋回角度、θswsa1,θswsb1…制御開始旋回角度、θswta…ラップ旋回角度、θswta0…基準防止角度、θswta1…干渉防止角度、θswta2…荷台内到達角度、θswta3…荷台内限界角度、θswtb…ラップ旋回角度、θswtb1…干渉防止角度、θswtb2…荷台外到達角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
図19A
図19B
図20
図21
図22
図23
図24