(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151014
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】モールド製品
(51)【国際特許分類】
D21J 3/00 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
D21J3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060399
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】大石 正淳
(72)【発明者】
【氏名】松本 寛人
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA02
4L055AC06
4L055AF09
4L055AF33
4L055AG04
4L055AG17
4L055AG26
4L055AG56
4L055AG96
4L055AH01
4L055BF06
4L055EA03
4L055EA05
4L055EA07
4L055EA13
4L055EA31
4L055EA32
4L055FA13
4L055FA18
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、セルロース繊維と無機粒子を含むモールド製品について、湿潤強度と寸法安定性を向上させることである。
【解決手段】本発明に係るモールド製品は、セルロース繊維、無機粒子、及び、熱可塑性樹脂を含んでなり、JIS P-8135に基づいて15分間浸水させた後の湿潤引張強度が1.90kN/m以上であり、30℃、90%RHの条件で20時間静置した場合の寸法変化率が0.400%以下であり、灰分が15%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維、無機粒子、及び、熱可塑性樹脂を含むモールド製品であって、
JIS P-8135に基づいて15分間浸水させた後の湿潤引張強度が1.90kN/m以上であり、30℃、90%RHの条件で20時間静置した場合の寸法変化率が0.400%以下であり、灰分が15%以上である、前記モールド製品。
【請求項2】
無機粒子がセルロース繊維表面の15%以上を被覆している複合繊維を含んでなる、請求項1に記載のモールド製品。
【請求項3】
灰分が20%以上である、請求項1または2に記載のモールド製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維と無機粒子を含んでなるモールド製品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、繊維と無機粒子の複合体を含んでなるモールド製品が記載されている。また、特許文献2には、セルロース繊維成形体を過熱水蒸気で処理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2018/097312
【特許文献2】特開2009-052159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、セルロース繊維と無機粒子を含むモールド製品について、湿潤強度と寸法安定性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、これに限定されるものでないが、以下の発明を包含する。
[1] セルロース繊維、無機粒子、及び、熱可塑性樹脂を含むモールド製品であって、JIS P-8135に基づいて15分間浸水させた後の湿潤引張強度が1.90kN/m以上であり、30℃、90%RHの条件で20時間静置した場合の寸法変化率が0.400%以下であり、灰分が15%以上である、前記モールド製品。
[2] 無機粒子がセルロース繊維表面の15%以上を被覆している複合繊維を含んでなる、[1]に記載のモールド製品。
[3] 灰分が20%以上である、[1]または[2]に記載のモールド製品。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、セルロース繊維と無機粒子を含むモールド製品について、湿潤強度と寸法安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係るモールド製品は、セルロース繊維、無機粒子、熱可塑性樹脂を含み、無機粒子を15%以上含有する。本発明においてモールド製品とは、モールド(型)を用いて成形したものを意味し、公知の方法によって製造することができる。
【0008】
本発明に係るモールド製品は、15分間浸水させた後の湿潤引張強度(JIS P-8135)が1.90kN/m以上であり、且つ、高温高湿条件(30℃、90%RH)下に20時間晒された後の寸法変化率が、高温高湿条件処理前の0.400%以下に抑制される。
【0009】
セルロースの例としては、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)、未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)、未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹の晒サルファイトパルプ(NBSP)又は未晒サルファイトパルプ(NUSP)、広葉樹の晒サルファイトパルプ(LBSP)、広葉樹の未晒サルファイトパルプ(LUSP)等の化学パルプ、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP等)等の機械パルプ 、脱墨パルプ(DIP)に由来するセルロース、又はそれらの混合物を挙げる事ができる。特に、針葉樹晒クラフトパルプ由来のセルロースは繊維が長く、強度が向上する傾向があり好ましい。モールド製品中の配合率は50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0010】
無機粒子の例としては、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等を挙げる事ができる。このうち、モールド製品への無機粒子の配合率は、好ましくは15%以上、より好ましくは18%以上、特に好ましくは、20%以上である。配合率が高いほど、無機粒子由来の機能性、例えば水酸化アルミニウムであれば優れた難燃性を発揮する。上限は限定されないが、50%以下、40%以下、30%と以下とすることができる。例えば、モールド製品の強度を重要視する場合、無機粒子の配合量を少なくするとパルプ同士の結合が阻害されることがなく、強度に優れたモールド製品が得られやすくなる。なお、モールド製品に含まれる無機粒子の量は、製品の灰分を測定することによって評価することができる。
【0011】
熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタラート繊維、ポリ乳酸繊維等を挙げる事ができる。モールド製品への熱可塑性樹脂の配合率は、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。配合率が25%以下であると、プレス加工時に熱可塑性合成樹脂繊維の溶融によって金型へ張り付くことがないため、好ましい。
【0012】
本発明に係るモールド製品は、一つの態様において、セルロース繊維、無機粒子、熱可塑性樹脂を含む水性懸濁液からモールド(型)を用いて製造することができ、例えば、型を用いて吸引成型した後、熱風乾燥やプレス加工などによって得ることができる。セルロース繊維と無機粒子、熱可塑性樹脂の水性懸濁液は、公知の方法で調製すればよいが、原料を混合する場合、どの順に混合してもよい。また、モールド製品の形状は特に制限されず、例えば、シートやボードのような形状とすることができる。
【0013】
好ましい態様において、成型時の無機粒子の脱離を防ぐ面から、無機粒子がセルロース繊維表面の15%以上を被覆し定着している複合繊維の水性懸濁液に、熱可塑性樹脂の水性懸濁液を混合する事が好ましい。無機粒子とセルロース繊維との複合繊維は、公知の方法によって調製することができ、例えば、国際公開WO2018/097312(特許文献1)などを参照すればよい。
【0014】
繊維と無機粒子の重量比は、5/95~95/5とすることができ、10/90~90/10、20/80~80/20、30/70~70/30、40/60~60/40としてもよい。また、無機粒子によってセルロース繊維表面が被覆されている面積率は、15%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、60%以上や80%以上としてもよい。
【0015】
複合繊維を構成する繊維は、セルロース繊維であれば特に制限されず、例えば、パルプ繊維(木材パルプや非木材パルプ)、セルロースナノファイバー、バクテリアセルロース、ホヤなどの動物由来セルロースなどが例示される。木材パルプとしては、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の方法により蒸解した化学パルプ;リファイナー、グラインダーなどの機械力によってパルプ化して得られる機械パルプ;薬品による前処理の後、機械力によるパルプ化を行って得られるセミケミカルパルプ;古紙パルプ;脱墨パルプ等が挙げられる。木材パルプは、未晒(漂白前)の状態であってもよいし、晒(漂白後)の状態であってもよい。また、パルプ繊維は、未叩解及び叩解のいずれでもよく、繊維複合体シートの物性に応じて選択すればよいが、叩解を行う方が好ましい。
【0016】
複合繊維を構成する無機粒子は、平均一次粒子径を、例えば、1μm以下とすることができ、500nm以下、200nm以下、100nm以下、50nm以下とすることができる。ここで、平均一次粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置や電子顕微鏡写真で測定することができる。
【0017】
本発明の複合繊維は、例えば、繊維の存在下で無機粒子を合成することによって得ることができる。繊維表面が、無機粒子の析出における好適な場となるため、無機粒子と繊維との複合繊維を合成しやすいためである。無機粒子の合成法は公知の方法によることができ、気液法と液液法のいずれでも良い。気液法の一例としては炭酸ガス法があり、例えば水酸化マグネシウムと炭酸ガスを反応させることで、炭酸マグネシウムを合成することができる。液液法の例としては、酸(塩酸、硫酸など)と塩基(水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなど)を中和によって反応させさたり、無機塩と酸もしくは塩基を反応させたり、無機塩同士を反応させたりする方法が挙げられる。例えば、水酸化バリウムと硫酸を反応させることで硫酸バリウムを得たり、硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウムを反応させることで水酸化アルミニウムを得たり、炭酸カルシウムと硫酸アルミニウムを反応させることでカルシウムとアルミニウムが複合化した無機粒子を得ることができる。また、このようにして無機粒子を合成する際、反応液中に任意の金属や金属化合物を共存させることもでき、この場合はそれらの金属もしくは金属化合物が無機粒子中に効率よく取り込まれ、複合化できる。例えば、炭酸カルシウムにリン酸を添加してリン酸カルシウムを合成する際に、二酸化チタンを反応液中に共存させることで、リン酸カルシウムとチタンの複合粒子を得ることができる。
【0018】
本発明において複合繊維を合成する場合、反応条件は特に制限されず、用途に応じて適宜設定することができる。例えば、合成反応の温度は0~90℃とすることができ、10~80℃とすることが好ましく、50~70℃がより好ましく、60℃程度とすると特に好ましい。反応温度は、反応液の温度を温度調節装置によって制御することができ、温度が低いと反応効率が低下しコストが高くなる一方、90℃を超えると粗大な無機粒子が多くなる傾向がある。
【0019】
モールド製品を成型する際の熱風乾燥温度は100~160℃が好ましい。熱風乾燥の温度が低すぎる場合、乾燥工程にて水分が蒸発するまでに時間を要する可能性があり好ましくない。また、熱風乾燥の温度が高すぎる場合は、過乾燥による収縮や変色の懸念があり好ましくない。
【0020】
モールド製品を成型する際のプレス加工は、一つの態様において、100~160℃、4~10秒で実施することが望ましい。このような条件であると、熱可塑性樹脂が溶融して型へ張り付きにくくなる。
【0021】
本発明に係るモールド製品は寸法安定性に優れており、具体的には、恒温恒湿条件(30℃、90%RH)に20時間暴露した際の寸法変化率が、0.400%以下である。このような寸法安定性に優れたモールド製品は、一つの態様において、過熱水蒸気処理によって得ることができる。
【0022】
過熱水蒸気処理とは、100℃以上に加熱された飽和水蒸気(過熱水蒸気)を用いて対象物を急速加熱処理することを意味する。過熱水蒸気の温度は、好ましくは120~500℃、より好ましくは130~300℃、特に好ましくは、140℃~160℃である。また、過熱水蒸気による処理時間は、1~8分間が好ましく、2~6分間がより好ましい。過熱水蒸気の温度が高すぎたり、処理時間が長すぎたりする場合、セルロースの過乾燥による変色や物性変化の懸念があり好ましくない。また、処理温度が低すぎたり、処理時間が短すぎたりする場合、モールド製品の寸法安定性を十分に向上できないおそれがある。
【0023】
本発明に係るモールド製品は、湿潤した状態での強度に優れており、具体的には、JIS P-8135に基づいて測定した湿潤引張強度が1.90kN/m以上である。このような湿潤引張強度に優れたモールド製品は、一つの態様において、過熱水蒸気処理によって得ることができる。
【実施例0024】
以下、具体例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において、特に断らない限り、「%」はすべて「重量%」であり、数値範囲はその端点を含むものとする。
【0025】
実験1:複合繊維の製造
1-1.製造例1:水酸化アルミニウム粒子とセルロース繊維の複合繊維
水酸化アルミニウムを合成するための溶液を準備した。アルカリ溶液として、NaOH水溶液(A溶液)を調製した。また、酸溶液として、市販の硫酸アルミニウム水溶液(硫酸バンド、朝日化学工業製)をそのまま使用した。NaOHは、富士フイルム和光純薬製の試薬を使用した。
・アルカリ溶液(水酸化ナトリウム濃度:25%)
・酸溶液(硫酸アルミニウム濃度:約27%)
針葉樹晒クラフトパルプを含む水性懸濁液(パルプ繊維濃度:2.8%、パルプ繊維固形分:550g、CSF:500mL)にアルカリ溶液を加えて得られた混合水性懸濁液(pH:14.4)を30L容の反応容器に入れた。この水性懸濁液を撹拌しながら、酸溶液を滴下して水酸化アルミニウム粒子とセルロース繊維との複合繊維を合成した。反応温度は25~30℃、酸溶液の滴下時間は35分であり、反応液のpHが約6~7になった段階で滴下を停止した。滴下終了後、30分間、反応液を撹拌した。その後、脱水・水洗を繰り返して塩を除去し、複合繊維を含むスラリーを得た(無機粒子によるセルロース繊維表面の被覆率:約50%)。
【0026】
複合繊維のスラリー(固形分換算で3g)について、ろ紙を用いて吸引濾過した後、残渣をオーブンで乾燥し(105℃、2時間)、JIS P 8251:2003に基づいて灰分を測定し、複合繊維の繊維:無機粒子の重量比を算出した。ただし、525℃での灰化処理によって重量減少が生じるため、灰化処理後の実測重量から重量減少分を踏まえて算出した。その結果、灰分は43%であった。
【0027】
1-2.製造例2:銅亜鉛系ハイドロタルサイト粒子とセルロース繊維の複合繊維
銅亜鉛系ハイドロタルサイト化合物(CuZn5Al2(OH)16CO3・4H2O)を合成するための溶液を準備した。アルカリ溶液(A溶液)として、Na2CO3およびNaOHの混合水溶液を調製した。また、酸溶液(B溶液)として、ZnSO4、CuSO4およびAl2(SO4)3・16H2Oの混合水溶液を調製した。なお、アルカリ溶液と酸溶液は、いずれも、富士フイルム和光純薬製の試薬を使用して調製した。
・アルカリ溶液(A溶液、Na2CO3濃度:0.05M、NaOH濃度:0.8M)
・酸溶液(B溶液、Zn系、ZnSO4濃度:0.6M、CuSO4濃度:0.6M、Al2(SO4)3・16H2O濃度:0.12M)
複合体化する繊維として、セルロース繊維を使用した。具体的には、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP、日本製紙製、繊維幅:50μm)を、シングルディスクリファイナー(SDR)を用いてカナダ標準濾水度を300mlに調整したパルプ繊維を用いた。
【0028】
アルカリ溶液をパルプ繊維へ添加し、パルプ繊維を含む水性懸濁液を準備した(パルプ繊維濃度:3.0%、pH:約12.8)。この水性懸濁液(パルプ固形分20kg)を1000L容の反応容器に入れ、水性懸濁液を撹拌しながら、酸溶液を滴下してハイドロタルサイト微粒子と繊維との複合繊維を合成した。反応温度は50℃であり、反応液のpHが約7.5になった段階で滴下を停止した。滴下終了後は、30分間、反応液を撹拌して熟成した。熟成後のサンプルは、遠心脱水機にて脱水し、さらに2~10倍量の水を添加し、電気伝導度が100mS/m以下になるまで脱水を繰り返して複合繊維を洗浄した(無機粒子によるセルロース繊維表面の被覆率:約60%)。
【0029】
実験2:モールド製品の製造
2-1.サンプル1
製造例1で製造した複合繊維95%、ポリエチレンテレフタラート繊維5%の水性懸濁液に、底が金属メッシュ(50メッシュ)になっている四角柱の型(350mm×350mm×50mm)を浸漬し、吸引成形した。6秒程度吸引したところで型を引き上げ、そのまま30秒間吸引を続けた。型から内容物をはずし、約130℃で熱風乾燥した後、約130℃に加熱したステンレス板に挟み、プレス機(熊谷理機製)で1MPa、1分間プレス加工した(プレス後の厚み:850~860μm)。
【0030】
得られたモールド製品を対象として、過熱水蒸気処理装置を用いて、下表に示す条件で過熱水蒸気処理を行った。すなわち、処理装置の外でサンプルを網に乗せて固定した後、予め加熱しておいた処理装置の扉を開け、サンプルを乗せた網を素早く処理装置内に入れてから扉を閉じ、水蒸気を装置内に吹き込んでサンプルを処理した。
【0031】
最終的に得られたモールド製品を分析したところ、灰分は24.3%であった(モールド製品の大きさ:284mm×253.5mm)。
2-2.サンプル2
製造例1で製造した複合繊維の代わりに、製造例2で製造した複合繊維を用いた以外は、サンプル1と同様にしてモールド製品を製造した。
【0032】
2-3.サンプル3
配合を、製造例1で製造した複合繊維60%、針葉樹晒クラフトパルプを35%、ポリエチレンテレフタラート繊維5%に変更した以外は、サンプル1と同様にしてモールド製品を製造した。
【0033】
2-4.サンプル4
過熱水蒸気処理の温度を130℃とした以外は、サンプル1と同様にしてモールド製品を製造した。
【0034】
2-5.サンプル5
過熱水蒸気処理の温度を160℃とした以外は、サンプル1と同様にしてモールド製品を製造した。
【0035】
2-6.サンプル6
過熱水蒸気処理の処理時間を3分間にした以外は、サンプル1と同様にしてモールド製品を製造した。
【0036】
2-7.サンプル7(比較例)
過熱水蒸気処理を行わなかった以外は、サンプル1と同様にしてモールド製品を製造した。
【0037】
2-8.サンプル8(比較例)
複合繊維の代わりに、針葉樹晒クラフトパルプ(パルプ繊維濃度:2.8%、CSF:500mL)を用いた以外は、サンプル1と同様にしてモールド製品を製造した。
【0038】
実験3:モールド製品の評価
上記のようにして製造したサンプルについて、23℃、相対湿度50%の条件で12時間静置し調湿した後、下記の手順に基づいて湿潤引張強度および寸法変化率を評価した。
【0039】
3-1.湿潤引張強度
JIS P-8135に基づいて湿潤引張強度を測定した。具体的には、所定の大きさに切り出したサンプル(150×15mm)を23℃の水中に15分間浸漬し、水分を取り除いた後、ただちに引張強度を測定した。引張強度は、JIS P-8113に規定された方法でサンプルが破断するまで引っ張った場合における最大引張荷重を幅1mあたりに換算したものである。本実施例では、4つのサンプルについて湿潤引張強度を測定し、その平均値を算出した。
【0040】
3-2.寸法変化率
所定の大きさに切り出したサンプル(100×100mm)を、23℃、50%RHに調節された部屋に20時間放置後、同方向6箇所の長さを測定し、その後、30℃、90%RHに温湿度調節された部屋に20時間放置後、同箇所の長さを測定する。測定した長さに基づいて下式より寸法変化率(伸び率)を算出し、6箇所の平均値を算出する。
寸法変化率(%) = ((30℃、90%R、20時間放置後の長さ)-(23℃、50%RH、20時間放置後の長さ))/ (23℃、50%RH、20時間放置後の長さ)
【0041】
【0042】
表に示したように、本発明に基づいて過熱水蒸気処理を施すことによって、モールド製品の湿潤引張強度および寸法変化率が向上した。