(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151021
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】建設物の施工管理装置、建設物の施工管理方法及び建設物の施工管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20231005BHJP
G06T 19/00 20110101ALI20231005BHJP
G16Y 10/30 20200101ALI20231005BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20231005BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20231005BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20231005BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06T19/00 A
G16Y10/30
G16Y20/20
G16Y40/10
G16Y40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060409
(22)【出願日】2022-03-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ・第46回土木情報学シンポジウム 講演集(令和3年9月17日発行 公益社団法人土木学会 土木情報学委員発行) ・第46回土木情報学シンポジウム 講演会(令和3年9月27日 オンライン開催 公益社団法人土木学会土木情報学委員主催)
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】000135771
【氏名又は名称】株式会社パスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高尾 篤志
(72)【発明者】
【氏名】宮田 岩往
(72)【発明者】
【氏名】大塚 義一
(72)【発明者】
【氏名】平井 崇
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 善一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 陽哉
【テーマコード(参考)】
5B050
5L049
【Fターム(参考)】
5B050AA07
5B050BA09
5B050BA19
5B050BA20
5B050CA07
5B050EA26
5B050FA02
5B050FA05
5B050FA12
5B050FA14
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】日々変化する現場状況を反映させて、施工現場の4次元モデルにおいて、センサによる計測データを管理値と共に容易に管理できる建設物の施工管理装置を提供する。
【解決手段】施工管理装置10の計測管理部11は、センサモデル31を配置した建設物の3次元設計モデル30の3次元設計データと、所定の工程項目33と関連付けする施工紐付け部15と、建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況を画面上に表示させる現場状況表示部16と、計測センサによるセンシングデータを参照する計測データ参照部19と、工程項目33毎に設定されたセンシングデータの管理値を記憶する管理値記憶部26と、工程項目33毎にセンシングデータの管理値を取り出して変換する管理値自動変換部27と、センシングデータと管理値を比較する計測値管理値比較部24とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理装置であって、
3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物の3次元設計モデルの3次元設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された、建設物を施工する際の工程データと、計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理部を備えており、
建設物の前記3次元設計モデルの前記3次元設計データは、各々の計測センサを用いた計測機器と紐付けされることで各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデルを、当該計測センサによる計測を必要とする前記3次元設計モデルの所定の箇所に配置した状態で作成されており、
前記計測管理部は、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の前記3次元設計データと、前記工程データにおける所定の工程項目とを関連付けする施工紐付け部と、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示部とを備えており、
前記計測管理部は、さらに、管理値記憶部と管理値自動変換部とを備えており、前記管理値記憶部は、前記所定の工程項目毎に、当該工程項目において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関して設定された管理値を記憶するようになっており、前記管理値自動変換部は、一の工程項目が次の工程項目に切り替わる所定のタイミングで、前記管理値記憶部に記憶された次の工程項目で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目において、取り出した管理値と、次の工程項目の実績開始時点に関するデータに基づいて参照された、次の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータとを比較させるようになっており、
前記現場状況表示部は、表示させた前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能な前記センサモデルと共に、比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を可視化することで、建設物の施工を管理できるようにしている建設物の施工管理装置。
【請求項2】
前記管理値自動変換部によって次の工程項目で用いる管理値が自動的に取り出される所定のタイミングは、作業員によって前記計測管理部に一の工程項目の実績終了時点が入力されたタイミングである請求項1記載の建設物の施工管理装置。
【請求項3】
前記管理値自動変換部によって次の工程項目で用いる管理値が自動的に取り出される所定のタイミングは、作業員によって前記計測管理部に次の工程項目の実績開始時点が入力されたタイミングである請求項1記載の建設物の施工管理装置。
【請求項4】
前記工程データにおける所定の工程項目の実績開始日時に関するデータに基づいて、当該所定の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴うセンシングデータを参照する、計測データ参照部を備えている請求項1~3のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項5】
計測値管理値比較部を備えており、該計測値管理値比較部は、前記工程データにおける所定の工程項目の実績開始日時に関するデータに基づいて前記計測データ参照部によって参照された、当該所定の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータを、管理値と比較するようになっている請求項4記載の建設物の施工管理装置。
【請求項6】
所定の工程項目毎に設定された管理値は、複数段階の比較管理値からなるものを含んでいる請求項1~5のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項7】
前記計測データ参照部によって参照される前記センシングデータは、計測管理システムにおけるデータである請求項4~6のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項8】
前記センサモデルは、各々の前記計測センサを用いた計測機器の形状を模したアイコンである請求項1~7のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項9】
前記計測センサは、沈下計、傾斜計、ひずみ計、変位計、水位計、距離計、又は温度計を構成するセンサである請求項1~8のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項10】
前記計測センサは、IoTセンサである請求項1~9のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項11】
前記計測センサによって計測されるセンシングデータは、変位、変化又は荷重に関するデータである請求項1~10のいずれか1項記載の建設物の施工管理装置。
【請求項12】
3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理方法であって、
3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物の3次元設計モデルの3次元設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された、建設物を建設する際の工程データと、計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理ステップを含んでおり、
建設物の前記3次元設計モデルの前記3次元設計データは、各々の計測センサを用いた計測機器と紐付けされることで各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデルを、当該計測センサによる計測を必要とする前記3次元設計モデルの所定の箇所に配置した状態で作成されており、
前記計測管理ステップにおいて、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の設計データと、前記工程データにおける所定の工程項目とを関連付けする施工紐付けステップと、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示ステップとを含んでおり、
前記計測管理ステップにおいて、さらに、管理値記憶ステップ部と管理値自動変換ステップとを含んでおり、前記管理値記憶ステップは、前記所定の工程項目毎に、当該工程項目において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関して設定された管理値を記憶するようになっており、前記管理値自動変換ステップは、一の工程項目が次の工程項目に切り替わる所定のタイミングで、前記管理値記憶ステップで記憶された次の工程項目で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目において、取り出した管理値と、次の工程項目の実績開始時点に関するデータに基づいて参照された、次の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータとを比較させるようになっており、前記現場状況表示ステップにおいて、表示させた前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能な前記センサモデルと共に、比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を可視化することで、建設物の施工を管理できるようにする建設物の施工管理方法。
【請求項13】
3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理プログラムであって、
3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物の3次元設計モデルの3次元設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された、建設物を建設する際の工程データと、計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理ステップをコンピュータに実行させ、
建設物の前記3次元設計モデルの前記3次元設計データは、各々の計測センサを用いた計測機器と紐付けされることで各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデルを、当該計測センサによる計測を必要とする前記3次元設計モデルの所定の箇所に配置した状態で作成されており、
前記計測管理ステップにおいて、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の設計データと、前記工程データにおける所定の工程項目とを関連付けする施工紐付けステップと、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示ステップとを、コンピュータに実行させ、
前記計測管理ステップにおいて、さらに、所定の工程項目毎に、当該工程項目において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関して設定された管理値を記憶させる管理値記憶部ステップと、一の工程項目が次の工程項目に切り替わる所定のタイミングで、前記管理値記憶部に記憶された次の工程項目で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目において、取り出した管理値と、次の工程項目の実績開始時点に関するデータに基づいて参照された、次の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータとを比較させる管理値自動変換部ステップとを、コンピュータに実行させ、
前記現場状況表示ステップにおいて、表示させた前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能な前記センサモデルと共に、比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を可視化することで、建設物の施工を管理できるようにする建設物の施工管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する、建設物の施工管理装置、建設物の施工管理方法、及び建設物の施工管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば橋梁、トンネル、ダム、土工、河川等の土木公共工事の分野では、各種の建設物を建設する際に、2次元図面から3次元モデルへの移行による業務変革や、或いは初期の工程(フロント)において負荷をかけて事前に集中的に検討し、後工程で生じそうな手戻りを未然に防いで、品質の向上や工期の短縮化を図ることを可能にするフロントローディングによって、合意形成の迅速化、業務の効率化、品質の向上、ひいては生産性の向上等を図ることを目的として、国土交通省では、CIM(Construction Information Modeling/Management)を円滑に導入できるように、ガイドラインを整備して、体系的な推進を試みている。このため、3次元のCIMモデルを作成するための種々の3次元モデル解析プログラムやソフトウェアが開発されている。
【0003】
また、主に、建築構造物を対象として、2次元の図面を作成してから3次元の形状を組み立て、CGでシミュレーションするといった従来の3DCADとは異なり、当初から3次元で設計して3次元モデルを作成することが可能な、BIM(Building Information Modeling)によって作成されるBIMモデルが開発されている。BIMモデルでは、3次元オブジェクトの集合体であることから、これらのオブジェクトにコストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加することが可能であり、建築物の設計、施工から維持管理に至るまでの、建築物のライフサイクルの全体で、モデルに蓄積された情報を活用することが可能になる。BIMモデルを作成可能なBIMツールとして、「ArchiCAD」や「Revit」等の、種々の3次元CADソフトが知られている。
【0004】
さらに、定められた工期内に工事が完了するように、例えば公共工事における工程の計画と実施を管理するための種々の工程管理ソフトが知られている。またBIMモデルやCIMモデルを作成可能な3次元CADソフトと、工程管理ソフトとを組み合わせることによって、例えば施工現場において、3Dグラフィック表示された建設物の3次元モデルに時間軸の要素を加味した4次元モデルを形成して容易に4次元シミュレートすることを可能にする、建設物の施工管理装置も開発されている(例えば、特許文献1参照)。国土交通省では、このような4次元モデルによる、時間の経過に伴って4次元シミュレートする機能を、3次元のBIMモデルやCIMモデルにも適用して、土木公共工事の分野に広げる試みがなされている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】設計-施工間の情報連携を目的とした4次元モデル活用の手引き(案)、令和3年3月、国土交通省発行
【非特許文献2】橋梁とセンサの連携データモデルに基づくデータベースの構築と検証,小山誠稀,矢吹信喜,福田知弘:土木学会論文集F3(土木情報学),Vol.77,No.2,pp.1_97-1_113,2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、建設物の施工分野においては、生産性を向上させることが喫緊の課題となっており、そのためICTの活用、とりわけ、BIM/CIM(Building /Construction Information Modeling,Management)や、IoTセンサ等の計測センサを活用することによって、施工情報の一元管理及び3次元可視化を可能として、効率性の向上を図る取り組みがなされている。
【0008】
ここで計測センサとして好ましくはIoTセンサは、ネットワークに接続して情報を収集・管理することが可能なセンサであり、様々な現場の状況をリアルタイムで監視したり、予知保全、予兆監視、データ蓄積、品質の向上等に、収集した情報を活用することを可能にするものとなっている。土木公共工事等の建設物の施工現場においても、好ましくはIoTセンサ等の計測センサを用いることによって、種々の計測作業の省力化を図ることが可能になると共に、センサによる計測データ(センシングデータ)を自動的に収集することで、建設物やこれの周囲の現場状況の管理や監視に費やす労力を、大幅に削減することが可能になると考えられるが、その一方で、建設物の施工現場においては、IoTセンサ等の計測センサによる計測データの管理業務に、新たな労力を要するようになることが懸念される。
【0009】
すなわち、建設物の施工現場では、工事の進捗に伴って、日々の施工により現場状況が時間の経過と共に変化し、時にはIoTセンサ等の計測センサの取り替え等による、センサの設置位置の移動や変更によって、計測項目とは無関係の要因による計測データの変動が発生し易い。このようなことから、技術者は、計測データの値の変動から現場状況を適切に把握して対応策を判断する際に、IoTセンサ等の計測センサによる計測データのみでは、時間の経過と共に変化している現場状況と計測データとの関連性を読み解いて、適切に対応策を判断することが難しくなる。また、例えば計測データが管理値を超えると、技術者に対して警告が発せられるように設定されているような計測項目の場合には、IoTセンサ等の計測センサによる計測データを日常的に管理して、施工の進捗に伴って当該計測項目の管理値を再設定する必要を生じることになり、このためのデータ整理等の作業にも、多大な労力を要することになる。
【0010】
これに対して、例えばBIM/CIMによる3次元モデル上で、各種のセンサによる計測データを一元管理することで、建設物の所定の箇所や部材でのセンサ情報を可視化することによって、センサ情報と現場状況との関連性を、技術者が視覚的に容易に把握できるようにすることが検討されている(例えば、非特許文献2参照)。非特許文献2によれば、3次元モデルとセンサ情報との関連付けに関して、橋梁データモデル及びセンサデータモデルと、これらを連携する連携データモデルとの開発が行われており、開発された連携データモデルを利用することによって、3次元モデル上において、センサデータを、建設物である橋梁のデータモデルと関連付けして管理できるようになっている。
【0011】
しかしながら、非特許文献2に記載のセンサデータを建設物のデータモデルと関連付けして管理する方法によれば、連携データモデルは、既に完成している建設物に設置されるセンサを対象として、主に維持管理のためのモニタリングにセンサを利用することを想定したものとなっている。したがって、モニタリングの途中において時間の経過と共に頻繁に現場状況が変化する、建設物の施工現場を想定したものとはなっていないため、日々変化する現場状況を反映させて、建設物の施工現場の4次元モデルにおいて、IoTセンサ等の計測センサによる計測データを管理値と共に適切に把握して現場状況を管理できるようにすることは困難である。
【0012】
本発明は、日々変化する現場状況を反映させて、建設物の施工現場の4次元モデルにおいて、IoTセンサ等の計測センサによる計測データを管理値と共に容易に且つ適切に把握して現場状況を管理することを可能にする、建設物の施工管理装置、建設物の施工管理方法、及び建設物の施工管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理装置であって、3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物の3次元設計モデルの3次元設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された、建設物を施工する際の工程データと、計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理部を備えており、建設物の前記3次元設計モデルの前記3次元設計データは、各々の計測センサを用いた計測機器と紐付けされることで各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデルを、当該計測センサによる計測を必要とする前記3次元設計モデルの所定の箇所に配置した状態で作成されており、前記計測管理部は、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の前記3次元設計データと、前記工程データにおける所定の工程項目とを関連付けする施工紐付け部と、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示部とを備えており、前記計測管理部は、さらに、管理値記憶部と管理値自動変換部とを備えており、前記管理値記憶部は、所定の工程項目毎に、当該工程項目において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関して設定された管理値を記憶するようになっており、前記管理値自動変換部は、一の工程項目が次の工程項目に切り替わる所定のタイミングで、前記管理値記憶部に記憶された次の工程項目で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目において、取り出した管理値と、次の工程項目の実績開始時点に関するデータに基づいて参照された、次の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータとを比較させるようになっており、前記現場状況表示部は、表示させた前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能な前記センサモデルと共に、比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を可視化することで、建設物の施工を管理できるようにしている建設物の施工管理装置を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0014】
そして、本発明の建設物の施工管理装置は、前記管理値自動変換部によって次の工程項目で用いる管理値が自動的に取り出される所定のタイミングが、作業員によって前記計測管理部に一の工程項目の実績終了時点が入力されたタイミングであることが好ましい。
【0015】
また、本発明の建設物の施工管理装置は、前記管理値自動変換部によって次の工程項目で用いる管理値が自動的に取り出される所定のタイミングが、作業員によって前記計測管理部に次の工程項目の実績開時点が入力されたタイミングであることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の建設物の施工管理装置は、前記工程データにおける所定の工程項目の実績開始日時に関するデータに基づいて、当該所定の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴うセンシングデータを参照する、計測データ参照部を備えていることが好ましい。
【0017】
さらにまた、本発明の建設物の施工管理装置は、計測値管理値比較部を備えており、該計測値管理値比較部は、前記工程データにおける所定の工程項目の実績開始日時に関するデータに基づいて前記計測データ参照部によって参照された、当該所定の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータを、管理値と比較するようになっていることが好ましい。
【0018】
また、本発明の建設物の施工管理装置は、所定の工程項目毎に設定された管理値が、複数段階の比較管理値からなるものを含んでいることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の建設物の施工管理装置は、前記計測データ参照部によって参照される前記センシングデータが、計測管理システムにおけるデータであることが好ましい。
【0020】
さらにまた、本発明の建設物の施工管理装置は、前記センサモデルが、各々の前記計測センサを用いた計測機器の形状を模したアイコンであることが好ましい。
【0021】
また、本発明の建設物の施工管理装置は、前記計測センサが、沈下計、傾斜計、ひずみ計、変位計、水位計、距離計、又は温度計を構成するセンサであることが好ましい。
【0022】
さらに、本発明の建設物の施工管理装置は、前記計測センサが、IoTセンサであることが好ましい。
【0023】
さらにまた、本発明の建設物の施工管理装置は、前記計測センサによって計測されるセンシングデータは、変位、変化又は荷重に関するデータであることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理方法であって、3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物の3次元設計モデルの3次元設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された、建設物を建設する際の工程データと、計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理ステップを含んでおり、建設物の前記3次元設計モデルの前記3次元設計データは、各々の計測センサを用いた計測機器と紐付けされることで各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデルを、当該計測センサによる計測を必要とする前記3次元設計モデルの所定の箇所に配置した状態で作成されており、前記計測管理ステップにおいて、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の設計データと、前記工程データにおける所定の工程項目とを関連付けする施工紐付けステップと、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示ステップとを含んでおり、前記計測管理ステップにおいて、さらに、管理値記憶ステップ部と管理値自動変換ステップとを含んでおり、前記管理値記憶ステップは、所定の工程項目毎に、当該工程項目において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関して設定された管理値を記憶するようになっており、前記管理値自動変換ステップは、一の工程項目が次の工程項目に切り替わる所定のタイミングで、前記管理値記憶ステップで記憶された次の工程項目で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目において、取り出した管理値と、次の工程項目の実績開始時点に関するデータに基づいて参照された、次の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータとを比較させるようになっており、前記現場状況表示ステップにおいて、表示させた前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能な前記センサモデルと共に、比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を可視化することで、建設物の施工を管理できるようにする建設物の施工管理方法を供することにより、上記目的を達成したものである。
【0025】
さらに、本発明は、3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理プログラムであって、3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物の3次元設計モデルの3次元設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された、建設物を建設する際の工程データと、計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理ステップをコンピュータに実行させ、建設物の前記3次元設計モデルの前記3次元設計データは、各々の計測センサを用いた計測機器と紐付けされることで各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデルを、当該計測センサによる計測を必要とする前記3次元設計モデルの所定の箇所に配置した状態で作成されており、前記計測管理ステップにおいて、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の設計データと、前記工程データにおける所定の工程項目とを関連付けする施工紐付けステップと、前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示ステップとを、コンピュータに実行させ、前記計測管理ステップにおいて、さらに、所定の工程項目毎に、当該工程項目において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関して設定された管理値を記憶させる管理値記憶部ステップと、一の工程項目が次の工程項目に切り替わる所定のタイミングで、前記管理値記憶部に記憶された次の工程項目で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目において、取り出した管理値と、次の工程項目の実績開始時点に関するデータに基づいて参照された、次の工程項目の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータとを比較させる管理値自動変換部ステップとを、コンピュータに実行させ、前記現場状況表示ステップにおいて、表示させた前記センサモデルを配置した前記3次元設計モデルの所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能な前記センサモデルと共に、比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を可視化することで、建設物の施工を管理できるようにする建設物の施工管理プログラムを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の建設物の施工管理装置、建設物の施工管理方法、又は建設物の施工管理プログラムによれば、日々変化する現場状況を反映させて、建設物の施工現場の4次元モデルにおいて、IoTセンサ等の計測センサによる計測データを管理値と共に容易に且つ適切に把握して現場状況を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置の構成を説明するブロック図である。
【
図2】画面上に表示された、鉄道用の函体を建設物とする3次元設計モデルの説明図である。
【
図3】鉄道用の函体を建設物とする3次元設計モデルにおける、センサモデルが配置された所定の施工部位の画面を例示する説明図である。
【
図4】鉄道用の函体を建設物とする3次元設計モデルにおける、センサモデルが配置され所定の施工部位の画面を例示する他の説明図である。
【
図5】本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置の計測管理部による処理手順を説明するフローチャートである。
【
図6】施工紐付け部の工程・ステータス紐付け部による処理手順を説明するフローチャートである。
【
図7】施工紐付け部の工程・モデル紐付け部による処理手順を説明するフローチャートである。
【
図8】施工紐付け部において、建設物の所定の部位を建設する際の工程項目毎に、工程期間中および工程期間経過後の部材ステータスを設定する画面を例示する説明図である。
【
図9】施工紐付け部において、建設物の3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、工程データとを関連付けする画面を例示する説明図である。
【
図10】鉄道用の函体を建設物とする3次元設計モデルにおけるセンサモデルが配置された所定の施工部位を、可視化したセンシングデータと共に表示した画面を例示する説明図である。
【
図11】鉄道用の函体を建設物とする3次元設計モデルにおけるセンサモデルが配置された所定の施工部位を、可視化したセンシングデータと共に表示した画面を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示す本発明の好ましい一実施形態に係る建設物の施工管理装置10は、例えば鉄道地下化事業として、供用中の軌道40の近傍に併設される鉄道用の函体41を、建設物として地下に築造する工事(
図2参照)において、特に工事による供用中の軌道40への影響をいち早く確認できるようにするために、施工現場の各所に好ましくはIoTセンサ等の計測センサを用いた各種の計測機器42(
図3、
図4参照)を設置して、例えば仮土留めの変位、軌道の施工基面の変位、既設の電車線設備の変位、周辺の構築物や地盤の変位等を、計測日時とともに計測項目として計測することで、施工現場の現場状況を適切に把握して管理するための、好ましくはコンピュータによる管理装置として用いられる。本実施形態の建設物の施工管理装置10は、施工現場において所定の箇所や所定の部材に設置された、好ましくはIoTセンサを用いた計測機器42によって計測されたデータを一括して管理している計測管理システム20(
図1参照)から、例えばCSV形式で出力したセンシングデータ(計測データ)を計測日時とともに参照し、或いは変換後データとしてセンシングデータ記憶部14に取り込み、好ましくBIM/CIMによる3次元モデルと工程管理プログラムによる工程データとの関連付けを行った4次元モデルにおいて、センシングデータを管理値と共に可視化しながら、現場状況のリアルタイムでの表示や、再現を行うことができるようになっている。本実施形態の建設物の施工管理装置10は、日々変化する現場状況を工程データにより反映させた、建設中の建設物の施工現場の4次元モデルにおいて、好ましくはIoTセンサによる計測データ(センシングデータ)を、管理値と比較させて容易に且つ適切に管理できるようにする機能を備えている。
【0029】
そして、本実施形態の建設物の施工管理装置10は、コンピュータに組み込まれた3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する管理装置であって、
図1に示すように、3次元CADプログラムを用いて作成された、好ましくは仮設構築物のモデル30b(
図4参照)を含む建設物の3次元設計モデル30の3次元設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された、建設物を施工する際の工程データと、好ましくはIoTセンサによる計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理部11を含んで構成されている。
【0030】
建設物の3次元設計モデル30の3次元設計データは、各々のIoTセンサによる計測センサを用いた計測機器42と紐付けされることで、各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデル31を、当該計測センサによる計測を必要とする建設物の3次元設計モデル30の所定の箇所に配置した状態で作成されている。
【0031】
計測管理部11は、センサモデル31を配置した建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位の3次元設計データと、例えば計測センサによる計測が必要とされる、工程データにおける所定の工程項目33(
図8、
図9参照)とを関連付けする施工紐付け部15と、センサモデル31を配置した建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示部16とを備えている。また、計測管理部11は、さらに、管理値記憶部26と管理値自動変換部27とを備えており、管理値記憶部26は、例えば計測センサによる計測が必要とされる所定の工程項目33毎に、当該工程項目33において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関して設定された管理値を記憶するようになっている。管理値自動変換部27は、一の工程項目33が次の工程項目33に切り替わる所定のタイミングで、管理値記憶部26に記憶された次の工程項目33で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目33において、取り出した管理値と、次の工程項目33の実績開始日時に関するデータに基づいて参照された、次の工程項目33の施工中における時間軸の進行に伴う計測センサによるセンシングデータとを比較させるようになっている。現場状況表示部は、表示させたセンサモデル31を配置した建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能なセンサモデル31と共に、比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を可視化することで、建設物の施工を管理できるようにしている。
【0032】
また、本実施形態では、好ましくは計測管理部11は、計測データ参照部19と計測値管理値比較部24とを備えており、計測データ参照部19は、工程データにおける所定の工程項目33の実績開始日時に関するデータに基づいて、当該所定の工程項目33の施工中における時間軸の進行に伴うセンシングデータを参照するようになっている。計測値管理値比較部24は、工程データにおける所定の工程項目33の実績開始日時に関するデータに基づいて計測データ参照部19によって参照された、当該所定の工程項目33の施工中における時間軸の進行に伴う計測センサによるセンシングデータを、管理値と比較するようになっている。
【0033】
さらに、本実施形態では、計測データ参照部19によって参照される好ましくはIoTセンサによるセンシングデータは、例えば後述する計測管理システム20におけるデータとなっている。
【0034】
さらにまた、本実施形態の建設物の施工管理装置10は、好ましくは3次元設計データを記憶する3次元設計データ記憶部12と、工程データを記憶する工程データ記憶部13と、各々の計測センサで計測されたセンシングデータを記憶する、センシングデータ記憶部14とを備えている。施工管理装置10は、3次元設計データと工程データとセンシングデータの全部またはいずれかを取得するデータ取得部17を、さらに備えていても良い。
【0035】
本実施形態では、施工管理装置10は、情報処理装置として、例えばパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータを含んで構成されている。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/F(Interface)、HDD(Hard Disk Drive)、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を備えている。CPUは、ROMに組み込まれた各種の制御プログラムに従って、RAMをワークエリアとして使用しながら、施工管理装置10の全体の動作を制御する。また、CPUは、各種のコンピュータプログラムがROMに組み込まれていることにより、記憶手段、入力手段、表示手段、出力手段等を機能させると共に、例えば建設物の本体構築物のモデル30a(
図3参照)、仮設構築物のモデル30b(
図4参照)、既存構築物のモデル30c(
図3参照)、周辺地盤のモデル30d(
図3参照)等を、3次元オブジェゥトとして含む建設物の3次元設計モデル30の3次元設計データや、工程データや、センシングデータ等の、各種のデータを、記憶部12,13,14を形成するデータベース部に、記憶手段によって記憶させたり、所定の情報を、表示手段によってディスプレイ等の画面上に表示させたり、出力手段によってプリンタ等から出力させたりできるようになっている。
【0036】
そして、本実施形態では、コンピュータによる施工管理装置10に、公知の3次元モデル解析プログラムが組み込まれており、3次元モデル解析プログラムは、3次元モデルの作成や点群表示、情報の取得や解析等を行なう機能を備えている。3次元モデル解析プログラムは、後述する各種の記憶部12,13,14、データ取得部17、施工紐付け部15、計測データ参照部19、現場状況表示部16、管理値設定部23、計測値管理値比較部24、注意情報発出部25、管理値記憶部26、及び管理値自動変換部27を備える計測管理部11等を実装するための開発環境を、ソフトウェア側に提供できるものとなっている。このような開発環境をソフトウェア側に提供できる3次元モデル解析プログラム(3次元モデル解析ソフト)として、例えばパスコ社製ソフト「PADMS」を用いることができる。
【0037】
本実施形態では、施工管理装置10は、上述のように、好ましくは3次元設計データ記憶部12を備えており、3次元設計データ記憶部12は、3次元CADプログラムを用いて作成された、供用中の軌道40の近傍に併設される建設物である鉄道用の函体41を本体構築物として施工する際の、当該本体構築物のモデル30a(
図3参照)、仮設構築物のモデル30b(
図4参照)、既存構築物のモデル30c(
図3参照)、周辺地盤のモデル30d(
図3参照)等を含む、現場状況の建設物の3次元設計モデル30の設計データを記憶する。仮設構築物のモデル30bを含む現場状況の建設物の3次元設計モデル30の設計データは、施工管理装置10とは別の3次元設計装置21に組み込まれた、公知の3次元CADプログラムによる3次元設計モデル作成部21aで作成されたものを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して施工管理装置10に取り込んで、3次元設計データ記憶部12に記憶させることができる。仮設構築物のモデル30bを含む現場状況の建設物の3次元設計モデル30の設計データは、施工管理装置10に組み込まれた公知の3次元CADプログラムによる3次元設計モデル作成部21aで作成されたものを、3次元設計データ記憶部12に記憶させても良い。
【0038】
好ましくは3次元設計装置21に3次元設計モデル作成部21aを組み込むための3次元CADプログラム(3次元CADソフト)としては、例えばBIMモデルを作成可能なBIMツールである、Autodesk社製の「Revit」を好ましく用いることができる。3次元設計モデル作成部21aで作成された仮設構築物のモデル30bを含む現場状況の建設物の3次元設計モデル30には、後述するように、計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能な、好ましくは各々の計測センサを用いた計測機器42の形状を模したアイコンによるセンサモデル31(
図3、
図4参照)が、3次元オブジェクトとして。当該計測センサによる計測を必要とする所定の箇所に配置されている。
【0039】
また、本実施形態では、施工管理装置10は、工程データ記憶部13を備えており、工程データ記憶部13は、工程管理プログラムを用いて作成された、供用中の軌道40の近傍に併設される建設物である鉄道用の函体41を本体構築物として施工する際の、工程データを記憶する。建設物である鉄道用の函体41を施工する際の工程データは、施工管理装置10とは別の工程管理装置22に組み込まれた公知の工程管理プログラムによる工程データ作成部22aで作成されたものを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して施工管理装置10に取り込んで、工程データ記憶部13に記憶させることができる。建設物である鉄道用の函体41を施工する際の工程データは、施工管理装置10に組み込まれた公知の工程管理プログラムによる工程データ作成部22aで作成されたものを、工程データ記憶部13に記憶させても良い。
【0040】
好ましくは工程管理装置22に工程データ作成部22aを組み込むための工程管理プログラム(工程管理ソフト)としては、例えばCCPM(Critical Chain Project Management)機能を備えるプログラムである、株式会社ビーイング製の「Being Project-CCPM」を好ましく用いることができる。工程データ作成部22aで作成される工程データは、例えば工区分けされた各々の施工部位を施工する際の複数の工程項目33(
図8参照)について、少なくともそれぞれの工程項目33の順序や、工程の開始予定日及び終了予定日からなる工程期間の情報を含んでいる。工程項目33は、所定の施工部位毎の、例えば鉄筋組立、足場組立、支保工組立、型枠組立、仮設材(足場、支保工、型枠)の撤去等の項目からなっている。
【0041】
ここで、好ましくはCCPM機能を備える工程管理プログラムは、制約条件の理論であるTOC(Theory of Constraints)の考えに基づいて、全体最適の視点で開発されたクリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)を採用した工程管理ソフト(工程管理プログラム)である。クリティカルチェーンは、プロジェクトにおいて各タスクの実行順序を考えた時に、作業工程上の従属関係を考慮するクリティカルパス法による従来の手法に加えて、必要リソースが限られているために発生する従属関係をも考慮する手法である。プロジェクトマネジメントは、要員の人間心理や行動特性、及び社会的・組織的問題も考慮して、工期の短縮、納期の順守を目的としてプロジエクト管理を行う実践的手法であり、各々のタスクから除去した安全余裕を、「バッファ」に集約して管理するようになっている。CCPM機能を備える工程管理プログラムは、好ましくは積算情報を反映させたり、一日当たりの施工量や休工日を設定したり、CP(クリティカル・パス)を設定したりする機能も備えている。好ましくは工程管理装置22に工程データ作成部22aを組み込むための工程管理プログラムとして、CCPM機能を備えていない工程管理プログラムを用いることもできる。
【0042】
さらに、本実施形態では、施工管理装置10は、センシングデータ記憶部14を備えており、センシングデータ記憶部14は、好ましくは計測管理システム20によって管理される計測情報に含まれるセンシングデータとして、計測センサによって計測された、供用中の軌道40の近傍に併設される建設物である鉄道用の函体41を本体構築物として施工する際の、周辺地盤、仮設構築物、既存構築物等に関する計測データを、計測日時と共に計測管理システム20から取り込んで記憶する。建設物である鉄道用の函体41を本体構築物として施工する際のセンシングデータ(計測データ)は、施工管理装置10とは別に設けられた、各々の計測センサと有線又は無線で接続する計測管理装置を含んで構成される計測管理システム20において蓄積されたものを、例えば記憶媒体や有線又は無線の通信網を介して施工管理装置10に取り込んで、センシングデータ記憶部14に記憶させることができる。建設物である鉄道用の函体41を本体構築物として施工する際のセンシングデータ(計測データ)は、施工管理装置10に組み込まれた公知の計測管理プログラムによる、例えば各々の計測センサと接続する計測管理部11において蓄積されたものを、センシングデータ記憶部14に記憶させても良い。
【0043】
建設物である鉄道用の函体41を本体構築物として施工する際に、好ましくはIoTセンサによる計測センサによって計測されるセンシングデータ(計測データ)を取得して、管理するための計測管理システム20としては、好ましくは計測テクノ株式会社製の管理システムを用いることができる。好ましくはIoTセンサによる計測センサによって計測される、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、既存構築物等の、変位、変化又は荷重に関するデータとしては、例えば施工基面沈下、架線柱沈下、切梁軸力、土留壁水平変位、リバウンド、構内地下水位、構外地下水位、中間区変位、土留壁内空変位、切梁温度等を挙げることができる。これらのセンシングデータを計測するための、計測センサとして好ましくはIoTセンサを用いた計測機器42としては、例えば水盛式沈下計、小型傾斜計、ひずみ計、多段式傾斜計、岩盤傾斜計、間隙水圧計、水位計、レーザー距離センサ、温度計等を使用することができる。
【0044】
そして、本実施形態では、好ましくは3次元設計データ記憶部12に記憶されている、例えば3次元設計装置21の3次元設計モデル作成部21aで作成された建設物の3次元設計モデル30の設計データは、上述のように、建設物である鉄道用の函体41をモデル化した本体構築物のモデル30a、仮設構築部のモデル30b、既存構築物のモデル30c、周辺盤のモデル30d等に関するデータを、3次元オブジェクトとして含んでおり、これらの各々の構築物のモデル30a、30b、30cや周辺地盤のモデル30d等の設計データには、各々のモデル(オブジェクト)のID番号やファイルパス、ノードパス等の管理情報が与えられている。3次元設計モデル作成部21aで3次元オブジェクトとして作成されたセンサモデル31の各々の設計データにもまた、計測機器42のID番号やファイルパス、ノードパス等の管理情報が与えられている(
図1参照)。
【0045】
また、本実施形態では、好ましくは工程データ記憶部13に記憶されている、例えば工程管理装置22の工程データ作成部22aで作成された、建設物である鉄道用の函体41を本体構築物として構築する際の好ましくは工区分けされた各々の施工部位における、例えば鉄筋組立、足場組立、支保工組立、型枠組立、仮設材(足場、支保工、型枠)の撤去等の複数の工程項目33に関する各々の工程データには、各々の工種に対して、工程項目33のID番号や工程名、計画開始日、計画終了日等の管理情報が割り当てられている(
図1参照)。建設物である鉄道用の函体41を本体構築物として構築する際の好ましくは工区分けされた各々の施工部位における、複数の工程項目33に関する各々のデータには、実際に施工を行った際に、実績開始時点や実績終了時点である実績開始日時や実績終了日時に関する情報を、例えば作業員が、工程データにおける所定の工程項目33の実績開始日時に関するデータとして、施工管理装置10に入力して付与できるようになっている。実際に施工を行った際の実績開始時点及び実績終了時点に関する情報のうち、特に実績開始日時(実績開始時点)に関するデータを、各々の所定の工程項目33のデータに付与することによって、付与した実績開始日時に関するデータに基づいて、後述する計測管理部11の計測データ参照部19によって、計測管理システム20において管理されていたり、計測管理システム20から送られてセンシングデータ記憶部14に記憶されていたりする、各々の計測機器42による計測情報の計測値情報に計測日時と共に含まれているセンシングデータを、参照することが可能になる。これによって、計測値情報に含まれる好ましくはIoTセンサによるセンシングデータを、当該所定の工程項目33の施工中の時間軸の進行に伴う現場状況のデータに含めることが可能になって、施工中の建設物の時間軸上で表示可能な経時的なデータとして、画面上で可視化することが可能になる。
【0046】
さらに、本実施形態では、例えば計測管理システム20で管理されていたり、計測管理システム20から送られてセンシングデータ記憶部14に記憶されていたりする、各々の計測機器42によるセンシングデータを含む計測情報には、例えば計測データと管理値データとの2種類のデータが含まれている。計測データは、計測機器情報と計測値情報とからなり、計測機器情報には、計測機器42のID番号、計測項目の名称、距離程や深度等による設置位置、単位、モデルレイヤのファイルパス、ノードパス等の情報が含まれている。計測値情報には、計測機器42のID番号、計測日時、計測値(センシングデータ)等の情報が含まれている。計測値情報は、各々の計測センサが、例えば数分から1日程度の間の特定の時間間隔で取得している情報であり、計測機器42によって計測頻度が異なっているため、センサモデル31と連携する際に、代表値を決定する必要がある。計測値情報を施工管理装置10において表現する際は、最新の施工の進捗状況に合わせた状態が望ましいため、計測値情報の代表値は、計測センサによる最新の計測値を採用することが好ましい。
【0047】
また、計測値(センシングデータ)は、計測管理システム20からCSV形式で出力されることが好ましい。計測値(センシングデータ)は、計測機器情報を基にした属性情報と共に、好ましくは計測データ参照部19によって参照されたり、計測管理システム20のセンシングデータ記憶部14に格納されたりすることが好ましい。
【0048】
一方、管理値データは、計測センサによる計測値(センシングデータ)の閾値を示すものであり、例えば計測値が管理値を超過した際に、警告を発するなどの管理を行うために用いることができる。
【0049】
また、管理値データは、計測データと同様の計測機器情報を含んでいると共に、管理値情報を含んでおり、計測機器情報には、上述のように、計測機器42のID番号、計測項目の名称、距離程や深度等による設置位置、単位、モデルレイヤのファイルパス、ノードパス等の情報が含まれている。管理値情報には、計測機器42のID番号、適用日、管理値等の情報が含まれている。管理値については、施工の進捗に伴って変更や追加があるため、後述する管理値設定部23において、参照する日時に従って、適用する管理値の値を適宜設定したり変更したりすることができる。
【0050】
本実施形態によれば、好ましくはIoTセンサを計測センサとして用いた各々の計測機器42による計測データに含まれる、センシングデータ等の計測値情報や、管理値データに含まれる管理値等の管理値情報は、計測機器情報における計測機器42のID番号を介することで、同様の計測機器42のID番号が与えられたセンサモデル31を所定の箇所に配置して作成された現場状況の建設物の3次元設計モデル30における、当該センサモデル31に紐付けすることが可能になる。またこれによって、計測管理システム20において管理されていたり、計測管理システム20から取り込まれて好ましくはセンシングデータ記憶部14に記憶されていたりする、センシングデータ等を含む計測値情報や、参照する日時である適用時点、管理値等を含む管理値情報を、鉄道用の函体41を本体構築物とする現場状況の建設物の3次元設計モデル30の3次元設計データにおける、当該センサモデル31に関連付けさせることで、表示されたセンサモデル31と共に、画面上に反映させることが可能になる。
【0051】
したがって、本実施形態では、鉄道用の函体41を本体構築物とする建設物の3次元設計モデル30の3次元設計データは、各々の計測センサ(IoTセンサ)を用いた計測機器42と紐付けされることで各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデル31を、当該計測センサによる計測を必要とする建設物の3次元設計モデル30の所定の箇所に配置した状態で、作成されるようになっている。
【0052】
そして、本実施形態の建設物の施工管理装置10は、上述のように、仮設構築物のモデル30bを含む建設物の3次元設計モデル30の3次元設計データと、建設物を施工する際の工程データと、計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理部11を備えている。計測管理部11は、センサモデル31を配置した建設物の3次元設計モデル30の好ましくは工区分けされた所定の施工部位の3次元設計データと、工程データにおける所定の工程項目33とを関連付けする施工紐付け部15と、センサモデル31を配置した建設物の3次元設計モデル30の好ましくは工区分けされた所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示部16と、工程データにおける所定の工程項目33の実績開始日時に関するデータに基づいて、所定の工程項目33の施工中における時間軸の進行に伴う計測センサによるセンシングデータを参照する計測データ参照部19と、管理値設定部23と、計測値管理値比較部24と、管理値記憶部26と、管理値自動変換部27とを、さらに備えている。
【0053】
本実施形態では、計測管理部11の施工紐付け部15は、好ましくは3次元設計データ記憶部12に記憶されている、建設物である鉄道用の函体41のモデルを本体構築物のモデル30aとする、仮設構築部のモデル30bを含むセンサモデル31が配置された建設物の3次元設計モデル30の設計データや、好ましくは工程データ記憶部13に記憶されている工程データを、好ましくはデータ取得部17を介して取得することにより取り込んで、これらを関連付けすることで4次元モデルを作成すると共に、建設物である鉄道用の函体41の計画時の施工状況を4次元シミュレートして、例えばディスプレイの画面上に表示させることができるようになっている。すなわち、施工紐付け部15は、センサモデル31が配置された建設物の3次元設計モデル30の設計データと工程データとを関連付けして4次元モデルを作成することによって、建設物の施工の開始から終了までの、計画時の施工状況を画面上に表示することを可能にする。
【0054】
ここで、計測管理部11の施工紐付け部15は、工程・ステータス紐付け部15aと、工程・モデル紐付け部15bとを備えている。工程・ステータス紐付け部15aでは、
図8に示すように、部材ステータス32として、例えば「鉄筋」、「型枠」、「コンクリ打設」、「養生」、「施工中」、「完成」、「仮設」、「撤去中」、「撤去済み」、「未着手」、「待ち」、「完成後非表示」、「ケレン処理」、「施工中―透かし」等のステータスの項目毎に、例えば作業員が異なる色32aを与えて編集することができるようになっている。編集結果は、計測管理部11の部材ステータス記憶部18に記憶されるようになっている。また工程・ステータス紐付け部15aでは、建設物の好ましくは工区分けされた所定の施工部位を建設する際の工程データを構成する工程項目33毎に、例えば工程期間中の部材ステータス33aと工程期間経過後の部材ステータス33bとで、さらに異なる色32aを与えて色分けした状態で設定して、これらの工程項目33と工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33a、33bとを紐付けすることもできる。工程・ステータス紐付け部15aでは、後述する部材ステータス編集ステップS4及び工程・ステータス紐付けステップS5が行われるようになっている。
【0055】
工程・モデル紐付け部15bでは、
図8に示すように、画面上に階層構造をとった状態で表示されている、仮設構築物のモデル30bを含む建設物の3次元設計モデル30の好ましくは工区分けされた所定の施工部位のデータ毎に、工程表として表示されている、建設物の工程データを構成する工程項目33のうちの一または複数を選択し、これらの建設物の3次元設計モデル30における所定の施工部位のデータと、これらの工程項目33とを紐付けする。このような仮設構築物のモデル30bを含む建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位と、工程項目33との紐付けは、例えば各々の工程項目33に関するデータが含まれる工程項目33のID番号と、建設物の3次元設計モデル30を構成する各々の構築物のモデル30a、30b、30cや周辺地盤のモデル30d等に関するデータに含まれるモデル(オブジェクト)のID番号とに、共通の番号や記号等を含ませることで、これらのID番号を介することによって、容易に行なうことができる。さらに、工程項目33は、工程・ステータス紐付け部15aにおいて、工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33a、33bと紐付けられているため(
図6、
図9参照)、所定の施工部位のデータ毎に、各工程項目33における工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33a,33bを紐付けることができる。また、所定の施工部位の工程着手前における初期ステータスも併せて設定することができる。その結果、各々の工程の経過に伴い、建設物の3次元設計モデル30の所定の各施工部位における、施工の進捗状況を、例えば色の変化によって、それぞれ設定することが可能になる。工程・モデル紐付け部15bでは、後述する工程・モデル紐付けステップS6が行われるようになっている。
【0056】
そして、本実施形態では、計測管理部11の計測データ参照部19は、工程データにおける所定の工程項目33の実績開始時点に関するデータに基づいて、より具体的には、例えば各々の計測機器42による計測値情報に含まれる計測日時に関するデータに基づいて、好ましくは所定の工程項目33の施工中における所定の日時毎に、例えば計測管理システム20において管理されているセンシングデータを参照する。これにより計測データ参照部19は、後述する現場状況表示部16によって、計測値情報に含まれる当該計測データ参照部19により参照されたセンシングデータを、所定の工程項目33の施工中の時間軸の進行に伴う現場状況の経時的なデータとして、管理値設定部23で設定された当該工程項目33における管理値と共に、センサモデル31が配置された建設物の3次元設計モデル30を表示した画面上おいて、リアルタイムで可視化したり、過去のデータとして可視化したりできるようにする機能を備えている。計測データ参照部19では、後述する計測データ参照ステップS10が行われるようになっている。
【0057】
また、本実施形態では、計測管理部11は、計測管理システム20によって管理された各々の計測機器42による管理値データに含まれる、管理値情報の一又は二以上の管理値とは別に、例えば工程管理装置22の工程データ作成部22aで作成された複数の工程項目33の各々と関連付けして、これらの工程項目33毎に、管理値を新たに設定したり、変更したりすることが可能な管理値設定部23を備えている。例えば各々の工程項目33に対応させて、当該工程項目33の施工中に計測データを得ることが必要な、所定の計測機器42の計測センサ(IoTセンサ)毎に、管理値を見直して、好ましくは作業員により管理値データが入力されることによって、管理値設定部23は、工程項目33毎に管理値を設定し直したり、変更したりするようになっている。また、管理値設定部23で設定されたり、変更されたりした、所定の工程項目33毎に関連付けされた、一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関する管理値のデータは、管理値記憶部26に記憶して保存しておくことができる。管理値記憶部26に保存された管理値のデータは、後述するように、一の工程項目33が次の工程項目33に切り替わる所定のタイミングで、管理値自動変換部27により自動的に取り出されて、次の工程項目33において、計測センサによるセンシングデータと比較される管理値として用いられることになる。管理値設定部23では、後述する管理値設定ステップS7が行われるようになっている。
【0058】
ここで、所定の計測センサを用いた計測機器42による計測値(センシングデータ)の管理値は、施工の進捗に伴って、工程項目33毎に設定したり変更したりする必要を生じる場合がある。例えば
図4に示すような、好ましくは工区分された所定の施工部位の工程項目33が、掘削山留工であって、建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位における3次元オブジェクトが、仮設構築物30bとしての切梁のモデルである場合に、所定の設置箇所として例えば一段目の切梁に取り付けたひずみ計による計測データの管理値は、1段目の切梁を施工する際の地山の掘削時と、2段目や3段目の切梁を施工する際の地山の掘削時とで、これらのより細分化された工程項目33毎に、その設定値を変更する必要がある。このため、本実施形態では、例えば作業員が、上述のように、各々の工程項目33における所定の計測センサを用いた計測機器42について、管理値データを入力することによって、管理値設定部23は、これらのより細分化した工程項目33毎に設定したり変更したりした管理値を、管理値記憶部26に記憶させて保存させることになる。
【0059】
また、各々の計測センサを用いた計測機器42について、所定の工程項目33毎に設定された管理値は、好ましくは複数段階(レベル)の比較管理値からなるものを含んでいても良い。複数段階(レベル)の比較管理値は、例えば「+1次管理値」、「+2次管理値」、「+3次管理値」、「-1次管理値」、「-2次管理値」、「-3次管理値」とした6種類のものを使用することができる。好ましくは比較管理値は、設計管理値に対して、例えば設計管理値×0.8を1次管理値、設計管理値そのものを2次管理値、設計管理値×1.2を3次管理値(限界管理値)とすることができる。比較管理値は、例えば1次管理値を、対策を直ちに必要としない注意値として、好ましくは前もって対策を施すように促すことができる。例えば2次管理値を、設定値に対する許容値として、好ましくは直ちに対策を施すように促すことができる。例えば3次管理値を、許容値をオーバーしたNG値として、好ましくは作業をストップするように促すことができる。
【0060】
そして、本実施形態では、計測管理部11は、管理値記憶部26と管理値自動変換部27とを備えている。管理値記憶部26は、例えば上述の管理値設定部23において、所定の工程項目33毎に設定された、当該工程項目33において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関する管理値を、記憶して保存するようになっている。管理値記憶部26では、後述する管理値記憶ステップS8が行われるようになっている。
【0061】
管理値自動変換部27は、一の工程項目33が次の工程項目33に切り替わる所定のタイミングで、管理値記憶部26に記憶された次の工程項目33で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目33において、取り出した管理値と、次の工程項目33の実績開始日時に関するデータに基づいて計測データ参照部19によって参照された、次の工程項目33の施工中における時間軸の進行に伴う計測センサによるセンシングデータとを、比較させるようになっている。ここで、管理値自動変換部27によって次の工程項目33で用いる管理値が自動的に取り出される所定のタイミングは、例えば作業員によって計測管理部11に一の工程項目33の実績終了日時が実績終了時点として入力されたタイミングであることが好ましい。管理値自動変換部27によって次の工程項目33で用いる管理値が自動的に取り出される所定のタイミングは、例えば作業員によって計測管理部11に次の工程項目33の実績開始日時が実績開始時点として入力されたタイミングとすることもできる。管理値自動変換部27では、後述する管理値自動変換ステップS9が行われるようになっている。
【0062】
また、本実施形態では、計測管理部11は、計測値管理値比較部24を備えており、計測値管理値比較部24は、上述のように、工程データにおける所定の工程項目33の実績開始日時に関するデータに基づいて計測データ参照部19によって参照された、所定の工程項目33の施工中における時間軸の進行に伴う計測センサによるセンシングデータを、好ましくは上述の管理値記憶部26に予め保存されていて管理値自動変換部27によって所定のタイミングで取り出された管理値と、比較するようになっている。計測値管理値比較部24で比較された各々の工程項目33におけるセンシングデータと、管理値との比較結果は、例えば現場状況表示部16によって、センサモデル31を配置した建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能な前記センサモデル31と共に、可視化されることによって、建設物の施工をより適切に管理することが可能になる。計測値管理値比較部24では、後述する計測値管理値比較ステップS11が行われるようになっている。
【0063】
計測管理部11の現場状況表示部16は、建設物の好ましくは工区分けされた所定の施工部位における、施工の開始から終了までの施工状況を、建設物の3次元設計モデル30を4次元モデルとして画面上に表示させて、4次元シミュレートできるようにする。また現場状況表示部16は、センシングデータの情報を反映可能なセンサモデル31と共に、計測データ参照部19によって計測管理システム20やセンシングデータ記憶部14で参照された計測センサによるセンシングデータを、時間軸の進行に伴う現場状況のデータとして、管理値のデータと合わせて可視化する機能を備えている(
図3、
図4参照)。これによって、建設物の好ましくは工区分けされた所定の施工部位毎に設定されている、各々の工程項目33における工程着手前、工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33a、33bに基づいて、現場状況表示部16は、各々の工程項目33の進捗による時間軸の進行に伴う、建設物の好ましくは工区分けされた所定の施工部位における、建設物の3次元設計モデル30の施工状況を、センサモデル31と共に画面上にシミュレート表示することが可能になる。またこれによって、作業員は、現場状況表示部16により画面上に4次元シミュレート表示された、建設物の所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う経時的な施工状況を適切に把握することが可能になる。また作業員は、センサモデル31が配置された建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位の画面上で、例えばセンサモデル31をクリックして指定することで、センシングデータの情報を反映可能な当該センサモデル31と共に、計測機器42を形成する好ましくはIoTセンサによる計測センサで計測されて、計測データ参照部19によって参照されたセンシングデータが、時間軸の進行に伴う現場状況のデータとして可視化されることになるので、計測機器42による計測位置を容易に確認しつつ、建設物であるの鉄道用の函体41を本体構築物として施工する際の現場状況を、より適切に把握して、管理することが可能になる。さらに、現場状況表示部16は、計測値管理値比較部24によって比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を、例えばセンシングデータが設定された管理値を超えた場合と超えない場合とで、センシングデータを異なる色32aで表示したり、好ましくはセンシングデータが設定された管理値を超えた場合と超えない場合とで、センサモデル31の色を変えて表示したりすることによって、比較結果を可視化することができるようになっている。これによって、上述のように、建設物の施工状況を好ましくはリアルタイムで、より適切に管理することが可能になる。
【0064】
すなわち、本実施形態によれば、供用中の軌道40の近傍に併設される鉄道用の函体41を本体構築物とする、仮設構築物のモデル30bを含む建設物の3次元設計モデル30の、工程データと紐付けられた3次元設計データ(4次元設計データ)は、各々の計測センサを用いた計測機器42と紐付けされることで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデル31を、当該計測センサによる計測を必要とする建設物の3次元設計モデル30の、好ましくは工区分けされた所定の施工部位における所定の箇所に配置した状態で、作成されている。これにより例えばセンサモデル31を指定することによって、好ましくはIoTセンサによる計測センサで計測されて、計測データ参照部19によって参照されたセンシングデータを、当該センサモデル31と共に、計測位置を容易に把握可能な状態で、施工管理装置10のディスプレイによる画面上に、経時図や一覧表等として管理値と共に表示して、表示した計測データによって、施工現場の現場状況を、容易に且つ適切に管理することが可能になる(
図10、
図11参照)。また、計測値が管理値を超えたか否を容易に把握して、施工現場の現場状況を、さらに適切に管理することが可能になる。
【0065】
したがって、本実施形態の建設物の施工管理装置10によれば、日々変化する現場状況を反映させて、鉄道用の函体41を本体構築物とする建設物の施工現場の画面上の4次元モデル(3次元モデルに工程データによる時間軸の要素を加味したモデル)において、IoTセンサ等の計測センサによる計測データを、管理値と共に容易に且つ適切に把握して、現場状況を管理することが可能になる。
【0066】
また、本実施形態によれば、好ましくは計測データ参照部19によって、例えば計測センサから計測管理システム20に取り込まれたセンシングデータを、直接参照することで、当該所定の工程項目33の施工中の時間軸の進行に伴う現場状況の、リアルタイムのデータとして、画面上にセンシングデータを表示できるようになっている。これによって、各々の計測センサを用いた計測機器42によるセンシングデータを介して、センサモデル31によって画面上で計測位置を把握しつつ、現場の状況を、施工の進捗に応じて、管理値設定部23で設定又は変更されて管理値自動変換部27で変換された各々の工程項目33での管理値を用いながら、リアルタイムで管理することが可能になる。またこれによって、例えば計測機器42を設置した施工現場の所定の箇所において、施工の進捗に伴って変化したセンシングデータが、各々の工程項目33で変換された管理値に近づいたり、管理値を超えたりした場合に、好ましくは後述する注意情報発出部25によって注意喚起情報を発出して、注意を促したり、作業を中断して対応策を施したりできるようにすることが可能になる。
【0067】
さらに、本実施形態では、各々の工程項目33の工程データと紐付けされた仮設構築物のモデル30bを含む3次元設計モデル(4次元設計モデル)30の、所定の施工部位を表示する画面に、例えばタイムバーを設定することができる。これによって、タイムバーによる時間軸に沿って、所定の施工部位の進捗に伴う現場状況を、センシングデータの推移と共に画面上に表示して、センシングデータの経時的な変化を好ましくは管理値を用いながら画面上で把握し易いように可視化することが可能になると共に、好ましくはタイムバーにおいて日時を指定することにより、措定された日時におけるセンシングデータを、好ましくは管理値と共に画面上に表示することが可能になる。
【0068】
さらにまた、本実施形態の建設物の施工管理装置10では、例えば計測管理システム20によって管理されている計測情報のセンシングデータを含む計測値情報は、計測機器情報や管理値情報と共に、センシングデータ記憶部14に取り込んで、記憶しておくことができる。これによって、センシングデータを含む計測値情報は、管理値情報と共に、再現可能なデータとして計測データ参照部19によって参照して、好ましくは他の同様の施工現場において建設物を施工する際の、参考資料として参酌することが可能になる。
【0069】
また、本実施形態では、例えばセンサモデル31をクリックして指定することによって、管理値と共に表示される、当該センサモデル31に関する好ましくはIoTセンサによる計測センサで計測されたセンシングデータは、計測データ参照部19で参照されて、施工管理装置10のディスプレイによる画面上に、例えば経時図や一覧表等として管理値と共に可視化できるようになっている(
図10、
図11参照)。ここで、施工管理装置10のディスプレイによる画面上における経時図による表示は、対象となる各々の計測センサのセンシングデータを、時間軸に沿った折れ線グラフの形式で、管理値のラインと共に表示するものである。一覧表による表示は、計測項目ごとに時間軸に沿って計測値(センシングデータ)を表示し、例えば計測値が管理値を超過する場合は、段階的に該当する欄のセルの色を変更させることができるようになっている。計測値の一覧から所定の計測値を選択することで、画面上のモデル空間において、選択した計測値に対応するセンサモデル31へ、計測値を遷移させることもできる。
【0070】
本実施形態では、建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位に配置されたセンサモデル31は、計測機器42を模した形態のセンサモデル31として、好ましくはアイコンとなっており、また好ましくは計測管理部11は、注意情報発出部25をさらに備えている。注意情報発出部25は、計測センサで計測されたセンシングデータが、上述の計測値管理値比較部24によって設定又は変更された管理値と比較されて、例えば比較管理値の2次管理値や3次管理値を超えた際に、好ましくは現場状況表示部16によって、センサモデル31であるアイコンの色を例えば黄色や赤色に段階的に変えて表示させることで、注意喚起情報をリアルタイムで発出できるようになっている。また、注意情報発出部25は、計測センサで計測されたセンシングデータが、例えば比較管理値の2次管理値や3次管理値を超えた際に、警報音等の音による注意喚起情報を、リアルタイムで発出させるようにすることも可能である。
【0071】
アイコン31は、本実施形態では、好ましくは実際の計測機器42の外観形状よりもよりも大きな、種別や設置位置が一見して判別できるように誇張された形態で表示されるようになっている。計測機器42の形態を模したセンサモデル31であるアイコンは、これと紐付けされた計測センサで計測されたセンシングデータや管理値の値に応じて、現場状況表示部16によって、その色を変化させることができるようになっている。
【0072】
これらによって、技術者である作業員は、画面上に表示されている、工程データによる時間軸の要素を加味した、鉄道用の函体41を本体構築物のモデル30aとする建設物の3次元設計モデル(4次元モデル)30と、計測センサによる計測値であるセンシングデータやこれの時間的変化の傾向とから、施工現場の現場状況を、管理値と比較しながら容易に把握して、技術的な判断を適切に行うことが可能になる。またこれによって、建設物の3次元設計モデル30上で各種の計測センサによるセンシングデータを一元管理することが可能になるので、計測機器42の設置個所や設置した部材などに関するセンサの情報を容易に共有することができ、また工程情報と連動してセンシングデータを見える化することによって、技術者がセンシングデータと施工現場の現場状況との関連性を視覚的に容易に把握することが可能になるので、これらの関連性を読み解き易くして、技術的な判断を迅速に行うための助けとすることが可能になる。
【0073】
そして、上述の構成を備える本実施形態の建設物の施工管理装置10では、計測管理部11において、例えば
図5のフローチャートに示す処理手順に従って、鉄道用の函体41を本体構築物のモデル30aとする建設物の3次元設計モデル30の、好ましくは工区分けされた所定の施工部位の施工状況を、時間軸の進行に伴って、好ましくはIoTセンサによる計測センサで計測されたセンシングデータと共に、画面上に表示可能とすることができるようになっている。これによって、これを見た作業員に、施工現場の施工状況を適切に管理させることが可能になる。計測管理部11では、好ましくはデータ取得ステップS1と、3次元設計モデル取込みステップS2と、工程データ取込みステップS3と、部材ステータス編集ステップS4と、工程・ステータス紐付けステップS5と、工程・モデル紐付けステップS6と、管理値設定ステップS7と、管理値記憶ステップS8と、管理値自動変換ステップS9と、計測データ参照ステップS10と、計測値管理値比較ステップS11と、現場状況表示ステップS12とによる処理手順を経て、時間軸の進行に伴う建設物の好ましくは工区分けされた所定の施工部位の施工状況を、センサモデル31であるアイコンと関連して表示可能な計測センサによるセンシングデータと共に、画面上に表示できるようになっている。また、現場状況表示ステップS12において、好ましくは注意情報発出ステップS12’を実施することもできる。
【0074】
3次元設計モデル取込みステップS2では、3次元設計データ記憶部12に記憶されている、3次元CADソフトを用いて作成された、鉄道用の函体41を本体構築物とする建設物の、好ましくは工区分けされた施工部位の建設物の3次元設計モデル30の設計データを、好ましくはデータ取得部17によるデータ取得ステップS1によって、3次元設計データ記憶部12から取得して、計測管理部11に取り込むようになっている。取り込まれた建設物の3次元設計モデル30の設計データは、各々の計測センサを用いた計測機器と紐付けされることでセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデル31を、当該計測センサによる計測を必要とする建設物の3次元設計モデル30の所定の箇所に配置した状態で、作成されている。
【0075】
工程データ取込みステップS3では、工程データ記憶部13に記憶されている、工程管理ソフトを用いて作成された、鉄道用の函体41を本体構築物とする建設物を構築する際の、好ましくは工区分けされた施工部位の全ての工程項目33を、工程データとして、例えばデータ取得部17によるデータ取得ステップS1によって、工程データ記憶部13から取得して、計測管理部11に取り込むようになっている。
【0076】
部材ステータス編集ステップS4では、上述の施工紐付け部15の工程・ステータス紐付け部15aにおいて、
図8に示すように、部材ステータス32として、例えば「鉄筋」、「型枠」、「コンクリ打設」、「養生」、「施工中」、「完成」、「仮設」、「撤去中」、「撤去済み」、「未着手」、「待ち」、「完成後非表示」、「ケレン処理」、「施工中―透かし」、「工程期間中」、「工程期間経過後」、「工程着手前における初期ステータス」等の項目毎に、作業員が画面を見ながら操作することで、異なる色32aを与えることによって、建設物の所定の部位の施工状況を建設物の3次元設計モデル30により画面上に表示する際の、部材ステータス32に応じて表示される色を設定して、これらの部材ステータス32を編集する。
【0077】
工程・ステータス紐付けステップS5では、上述の施工紐付け部15の工程・ステータス紐付け部15aにおいて、
図6に示す処理手順に従って、鉄道用の函体41を本体構築物とする建設物の、好ましくは工区分けされた所定の施工部位を建設する際の工程データを構成する工程項目33毎に、部材ステータス32を設定する。すなわち、工程・ステータス紐付けステップS5では、例えば作業員は、各々の工程項目33を指定して、これらの指定された工程項目33毎に、工程期間中の部材ステータス33aを設定し(
図9参照)、さらに工程期間経過後の部材ステータス33bを設定することによって、これらの工程項目33と工程期間中及び工程期間経過後の部材ステータス33a、33bとを紐付けする。
【0078】
工程・モデル紐付けステップS6では、上述の施工紐付け部15の工程・モデル紐付け部15bにおいて、
図7に示す処理手順に従って、鉄道用の函体41を本体構築物とする建設物の3次元設計モデル30の、選択した所定の施工部位の設計データ毎に、工程項目33の割り当てを実施する。すなわち、工程・モデル紐付けステップS6では、例えば計測管理部11に取り込んだ、複数の工程項目33からなる工程データを読み込むと共に、鉄道用の函体41を本体構築物とする建設物の3次元設計モデル30の、所定の施工部位の設計データを読み込む。これらのデータを読み込んだら、読み込んだ建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位の設計データから、例えば作業員は、工程項目33を紐付けしたい建設物の所定の施工部位を選択し、工程項目33の割り当てを実施すると共に、該当する工程項目33の施工前における、割当工程になる前の初期状態である初期の部材ステータス32を設定する。建設物の全ての3次元設計モデルの所定の部位に対して、工程項目33の割り当てが、繰り返し実施されることになる。
【0079】
管理値設定ステップS7は、上述の管理値設定部23において行われるようになっており、管理値設定ステップS7では、例えば工程管理装置22の工程データ作成部22aで作成された複数の工程項目33の各々と関連付けして、当該工程項目33における一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関する管理値を、新たに設定したり変更したりするようになっている。
【0080】
管理値記憶ステップS8は、上述の管理値記憶部26において行われるようになっており、管理値記憶ステップS8では、管理値設定ステップS7で設定されたり、変更されたりした、所定の工程項目33毎に関連付けされた、各々の工程項目33で用いる一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関する管理値のデータを、記憶して保存する。
【0081】
管理値自動変換ステップS9は、上述の管理値自動変換部27において行われるようになっており、管理値自動変換ステップS9では、例えば複数の連続する工程項目33において、一の工程項目33が次の工程項目33に切り替わる所定のタイミングとして、好ましくは例えば作業員によって計測管理部11に一の工程項目33の実績終了日時が実績終了時点として入力されたタイミングで、管理値記憶ステップS8で記憶された次の工程項目33で用いる管理値を自動的に取り出して、一の工程項目33における管理値と変換する。これによって、次の工程項目33において、取り出して変換した管理値と、次の工程項目33の好ましくは実績開始日時に関するデータに基づいて計測データ参照部19によって参照された、次の工程項目33の施工中における時間軸の進行に伴う計測センサによるセンシングデータとを、計測値管理値比較ステップS11において比較させることが可能になる。管理値自動変換ステップS9と後述する計測データ参照ステップS10は、順序を入れ替えて実施することもできる。
【0082】
計測データ参照ステップS10は、上述の計測データ参照部19において実施されるようになっており、計測データ参照ステップS10では、工程データにおける所定の工程項目33の実績開始日時(実績開始時点)に関するデータに基づいて、好ましくは施工中の所定の工程項目33における所定の日時毎の、計測管理システム20において管理されていたりセンシングデータ記憶部14に記憶されているセンシングデータを参照する。これによって、好ましくは後述する現場状況表示ステップS12において、参照されたセンシングデータを、施工中の所定の工程項目33の時間軸の進行に伴う現場状況の経時的なデータとして、管理値設定ステップS7で設定されると共に管理値自動変換ステップS9で自動的に取り出されて変換された管理値と共に、センサモデル31が配置された建設物の3次元設計モデル30を表示した画面上で、リアルタイムで可視化したり、過去のデータとして可視化したりすることが可能となる。
【0083】
計測値管理値比較ステップS11は、上述の計測値管理値比較部24において実施されるようになっており、計測値管理値比較ステップS11では、工程データの各々の工程項目33における、当該工程項目33の施工中に計測データを得ることが必要な、所定の計測機器42の計測センサ(IoTセンサ)毎に設定された、一又は二以上の比較管理値(1次管理値~n次管理値)を有する管理値を、取り込むようになっている。また取り込んだ管理値の一又は二以上の比較管理値を、計測データ参照ステップS10で参照された、当該工程項目33の施工中に計測された所定の計測機器42のセンシングデータと、順次比較して、例えば一又は二以上の比較管理値の各々を超えているか否かを判断する。いずれかの比較管理値を超えたと判断された場合には、好ましくは後述する現場状況表示ステップS12の注意情報発出ステップS12’を介して、例えばセンサモデル31であるアイコンの色を変化させることで、好ましくは注意喚起情報をリアルタイムで適宜速やかに発出させて、例えば施工現場において必要に応じて対策を施したり作業を中止したりするように、促すことが可能になる。
【0084】
現場状況表示ステップS12は、上述の現場状況表示部16によって実施されるようになっており、現場状況表示ステップS12では、鉄道用の函体41を本体構築物とする建設物の、好ましくは工区分けされた所定の施工部位における、工程データと関連付けされた施工の開始から終了までの時間軸の進行に伴う施工状況を、建設物のセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデル31を含む建設物の3次元設計モデル30によって再生して、可視化されたセンシングデータや管理値データと共に、画面上に表示できるようになっている(
図10、
図11参照)。
【0085】
本実施形態では、管理値自動変換ステップS9~現場状況表示ステップS12までのステップは、工程データにおける複数の工程項目33毎に、繰り返し行われることになる。
【0086】
注意情報発出ステップS12’は、注意情報発出部25において実施されるようになっており、例えばセンシングデータの値が、各々の工程項目33と関連付けされて設定された管理値を超えた際や、センシングデータが設定された管理値に近づいた際に、現場状況表示部16によって、センサモデル31を介して注意喚起情報をリアルタイムで速やかに発出させたり、警報音を速やかに発出させたりできるようになっている。
【0087】
したがって、本実施形態の3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理方法は、3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物の3次元設計モデル30の3次元設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された、建設物を建設する際の工程データと、計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理ステップ(S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,S11,S12)を含んでおり、建設物の3次元設計モデルの3次元設計データは、各々の計測センサを用いた計測機器42と紐付けされることで各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデル31を、当該計測センサによる計測を必要とする建設物の3次元設計モデル30の所定の箇所に配置した状態で作成されており、計測管理ステップ(S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,S11,S12)において、センサモデル31を配置した建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位の設計データと、工程データにおける所定の工程項目33とを関連付けする施工紐付けステップ(S4,S5,S6)と、センサモデル31を配置した建設物の3次元設計モデル30の所定の施工部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示ステップ(S12)とを含んでおり、計測管理ステップ(S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,S11,S12)において、さらに、管理値記憶ステップ(S8)と管理値自動変換ステップ(S9)とを含んでおり、管理値記憶ステップ(S8)は、所定の工程項目33毎に、当該工程項目33において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関して設定された管理値を記憶するようになっており、管理値自動変換ステップ(S9)は、一の工程項目33が次の工程項目33に切り替わる所定のタイミングで、管理値記憶ステップ(S8)で記憶された次の工程項目33で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目33において、取り出した管理値と、次の工程項目33の実績開始日時に関するデータに基づいて参照された、次の工程項目33の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータとを比較させるようになっており、現場状況表示ステップ(S12)において、表示させたセンサモデル31を配置した3次元設計モデルの所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能な前記センサモデル31と共に、比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を可視化することで、建設物の施工を管理できるようになっている。
【0088】
また、本実施形態の施工管理装置10は、3次元モデル解析プログラムを用いて建設物の施工を管理する建設物の施工管理プログラムであって、3次元CADプログラムを用いて作成された、建設物の3次元設計モデルの3次元設計データと、工程管理プログラムを用いて作成された、建設物を建設する際の工程データと、計測センサによって計測された、建設物を施工する際の周辺地盤、仮設構築物、又は既存構築物に関するセンシングデータとから、建設物の施工を管理可能とする計測管理ステップ(S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,S11,S12)をコンピュータに実行させ、建設物の前記3次元設計モデルの前記3次元設計データは、各々の計測センサを用いた計測機器と紐付けされることで各々の計測センサで計測されたセンシングデータの情報を反映可能なセンサモデル31を、当該計測センサによる計測を必要とする3次元設計モデルの所定の部位に配置した状態で作成されており、前記計測管理ステップ(S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,S11,S12)において、センサモデル31を配置した3次元設計モデルの所定の部位の設計データと、工程データにおける所定の工程項目33とを関連付けする施工紐付けステップ(S4,S5,S6)と、センサモデル31を配置した前記3次元設計モデルの所定の部位の、時間軸の進行に伴う現場状況のデータを画面上に表示させる現場状況表示ステップ(S12)とを、コンピュータに実行させ、計測管理ステップ(S4,S5,S6,S7,S8,S9,S10,S11,S12)において、さらに、所定の工程項目33毎に、当該工程項目33において一又は複数の計測センサによって計測されるセンシングデータに関して設定された管理値を記憶させる管理値記憶部ステップ(S8)と、一の工程項目33が次の工程項目33に切り替わる所定のタイミングで、管理値記憶部26に記憶された次の工程項目33で用いる管理値を自動的に取り出して、次の工程項目33において、取り出した管理値と、次の工程項目33の実績開始日時に関するデータに基づいて参照された、次の工程項目33の施工中における時間軸の進行に伴う前記計測センサによるセンシングデータとを比較させる管理値自動変換部ステップ(S9)とを、コンピュータに実行させ、現場状況表示ステップ(S12)において、表示させたセンサモデル31を配置した3次元設計モデルの所定の施工部位の画面上で、センシングデータの情報を反映可能な前記センサモデル31と共に、比較されたセンシングデータと管理値との比較結果を可視化することで、建設物の施工を管理できるようになっている。
【0089】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば建設物の施工管理装置は、3次元設計データ記憶部や工程データ記憶部やセンシングデータ記憶部を備えている必要は必ずしもなく、データ取得部によって、3次元設計装置や工程管理装置や計測管理システムから、3次元設計データや工程データを直接に取得することもできる。データ取得部を介することなく、3次元設計データや工程データを計測管理部に取り込むこともできる。計測センサは、IoTセンサである必要は必ずしもなく、各種の計測機器を構成する公知の他の種々のセンサであっても良い。
【符号の説明】
【0090】
10 建設物の施工管理装置
11 計測管理部
12 3次元設計データ記憶部
13 工程データ記憶部
14 センシングデータ記憶部
15 施工紐付け部
15a 工程・ステータス紐付け部
15b 工程・モデル紐付け部
16 現場状況表示部
17 データ取得部
18 部材ステータス記憶部
19 計測データ参照部
20 計測管理システム
21 3次元設計装置
21a 3次元設計モデル作成部
22 工程管理装置
22a 工程データ作成部
23 管理値設定部
24 計測値管理値比較部
25 注意情報発出部
26 管理値記憶部
27 管理値自動変換部
30 建設物の3次元設計モデル
30a 本体構築物のモデル
30b 仮設構築物のモデル
30c 既存構築物のモデル
30d 周辺地盤のモデル
31 センサモデル(アイコン)
32 部材ステータス
32a 異なる色
33 工程項目
33a 工程期間中の部材ステータス
33b 工程期間経過後の部材ステータス
40 供用中の軌道(既存構築物)
41 鉄道用の函体(本体構築物)
42 計測機器