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  • 特開-ミシンの糸調子機構 図1
  • 特開-ミシンの糸調子機構 図2
  • 特開-ミシンの糸調子機構 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151040
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ミシンの糸調子機構
(51)【国際特許分類】
   D05B 47/04 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
D05B47/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060435
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000113229
【氏名又は名称】株式会社PEGASUS
(72)【発明者】
【氏名】向井 裕親
(72)【発明者】
【氏名】前田 祐輝
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150AA08
3B150CB06
3B150CD03
3B150CD07
3B150CE23
3B150FD07
3B150FD15
3B150JA11
(57)【要約】
【課題】
糸に付与される張力が小さい場合でも安定した張力を糸に付与することができるミシンの糸調子機構を提供する。
【解決手段】
糸調子装置2はブラケット16、ブラケット16に取り付けられる糸調子器15を含み、糸調子器15は電磁ソレノイド3、電磁ソレノイドによって駆動される駆動軸4、駆動軸4に固定される可動皿8、ブラケット16に固定される固定皿7で構成される。ブラケット16の取付面6aとミシン本体1aとの間に防振材11を介在させて、ミシン本体1aに糸調子装置2を固定する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミシン本体に取り付けられる糸調子装置を備えたミシンの糸調子機構であって、糸調子装置はミシンに取り付けるためのブラケットとブラケットに取り付けられる糸調子器を含み、糸調子器はアクチュエータと、アクチュエータによって駆動される駆動軸と、駆動軸に固定される可動皿と、可動皿に対向して配置されると共にブラケットに固定される固定皿で構成され、ミシン本体とブラケットの間に介在する防振材を備えていることを特徴とする、ミシンの糸調子機構。
【請求項2】
前記防振材はゲル状の素材からなることを特徴とする、請求項1に記載のミシンの糸調子機構置。
【請求項3】
前記ブラケットはミシン本体の上面と平行な取付面を有し、前記防振材はミシン本体の上面と当該ミシン本体の上面の上方に位置するブラケットの取付面との間に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のミシンの糸調子機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸に張力を付与するミシンの糸調子機構に関する。
本発明において、前後左右とはミシンを正面から見たときの前後左右方向をいう。また上下とはミシンの上下方向をいう。
【背景技術】
【0002】
この種のミシンの糸調子機構として、アクチュエータの駆動によって糸に付与する張力を調整できるようにした糸調子装置を備えたものが従来より知られている(例えば、特許文献1参照。)。
電磁ソレノイド(アクチュエータ)に連結される駆動軸に一対の糸調子皿が挿通されている。制御部によって電磁ソレノイドを駆動させ前記駆動軸を駆動させると、一方の糸調子皿に他方の糸調子皿が接近することによって、一対の糸調子皿の間に通された糸に張力が付与される。駆動軸の駆動量を制御することによって糸に付与される張力が調整される。
【0003】
【特許文献1】特開2009-285266号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術をオーバーロックミシンや二重環縫いミシンなどの環縫いミシンに適用する場合、環縫いミシンの下糸(ルーパ糸)に付与される張力が安定しないという問題があった。
【0005】
環縫いミシンのルーパ糸に付与される張力は小さく設定されるので、アクチュエータが駆動軸や糸調子皿を拘束するための力は非常に弱い。そうするとミシンが駆動する際にミシンから生じる振動が糸調子装置の駆動軸や糸調子皿に伝わり、張力が安定しない恐れがあった。
【0006】
従って、本発明の課題は、設定される張力が小さくても安定した張力を糸に付与することができるミシンの糸調子機構を提供することにある。
【0007】
上記目的を達成する為に、請求項1の発明は、ミシン本体に取り付けられる糸調子装置を備えたミシンの糸調子機構であって、糸調子装置はミシンに取り付けるためのブラケットとブラケットに取り付けられる糸調子器を含み、糸調子器はアクチュエータと、アクチュエータによって駆動される駆動軸と、駆動軸に固定される可動皿と、可動皿に対向して配置されると共にブラケットに固定される固定皿で構成され、ミシン本体とブラケットの間に介在する防振材を備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、前記防振材はゲル状の素材からなることを特徴とする。
請求項3の発明は、前記ブラケットはミシン本体の上面と平行な取付面を有し、前記防振材はミシン本体の上面と当該ミシン本体の上面の上方に位置するブラケットの取付面との間に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、ミシンから生じる振動が防振材によって除去され、糸調子装置の駆動軸や可動皿に振動が伝わり難くなるため、駆動軸や可動皿の位置が安定することによって糸に付与される張力が安定する。
【0010】
請求項2の発明によれば、防振材をゲル状の素材で構成することによって、一般的なゴム素材よりも振動をより除去することができる。
請求項3の発明によれば、ミシンから生じる縦(上下)方向の振動をより大きく除去できるため、駆動軸が縦振動によって拗れてスムースに駆動されないことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る糸調子装置を取り付けたミシンの全体斜視図。
図2】本発明に係る糸調子装置を左側面から見た図。
図3】本発明に係る糸調子装置の構成を示す部分分解斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に示すように、糸調子装置2はミシン1のミシン本体1aの上方に位置している。
糸調子装置2はミシン1に取り付けるためのブラケット16、ブラケット16に取り付けられる糸調子器15,糸調子器15を駆動,制御するための図示しない制御部を含む。
【0013】
糸調子器15はアクチュエータである電磁ソレノイド3と、駆動軸4と、可動皿8と、固定皿7とで構成される。ブラケット16は主に糸調子器15が取り付けられる糸調子器用取付板14と、ミシン本体1に取り付けるための取付板6とで構成され、糸調子用取付板14と取付板6とはネジ18,18・・で固定されている。
【0014】
図2に示すように、電磁ソレノイド3は糸調子器用取付板14の後面に固定されている。電磁ソレノイド3の駆動軸4は軸線方向が水平(前後)方向に沿うように配置されると共に、糸調子器用取付板14の軸部14aの中空部を通じて前端が糸調子器用取付板14の前方に露出している。駆動軸4の前端に可動皿7が固定されている。糸調子器用取付板14の軸部14aの前端には固定皿7が固定されている。可動皿8と固定皿7とは互いが前後方向に対向するように配置されている。
【0015】
図示しない制御部により駆動軸4を軸線方向に駆動させることによって、可動皿8と固定皿7との距離や応接力が変更される。これによって可動皿8と固定皿7との間に挟持される糸にかかる張力を調節できる。
【0016】
図2図3に示すように、ミシン本体1aの上面に土台板5がネジ17,17で固定されている。土台板5は水平面5aを有し水平面5aが水平になるよう配置されている。取付板6は取付面6aが土台板5の水平面5aと対向しかつ水平になるよう配置されている。
【0017】
取付板6の取付面6aが土台板5の水平面5aとの間に左右一対の防振材11,11が介在している。防振材11は輪状の上部材12と凸形状の下部材13で構成される。下部材13は取付板6の取付面6aと土台板5の水平面5aとの間に配置され、上部材12は取付面6aの上面に配置される。下部材13の凸部13aが取付面6aに穿設された取付穴6bを貫通すると共に上部材12の内穴12aに挿通している。つまり取付板6の取付面6aは防振材11を構成する上部材12と下部材13によって上下に挟み込まれている状態となっている。そしてブラケット16の取付板14は防振材11を介して土台板5に、座金10とネジ9によって取り付けられている。
【0018】
防振材11にはゴム、樹脂など減振効果を有する種々の材料を用いることができるが、シリコンなどのゲル状素材を用いることによってミシンの振動を大幅に除去できる。
【0019】
上述した実施例では糸調子装置2を防振材11、土台板5を介してミシン本体1aの上面に取り付けているが、土台板5を省略してもよい。しかし防振材11の下部材13の底面は土台板5の水平面に当接させた方が防振材11の防振効果が高いため、実施例のような形態が好適となる。また、実施例ではブラケット16を左右一対の防振材11,11による2点支持としているが、更に左右一対の防振材11,11を前後方向に加えた4点支持とすれば、防振材11による防振効果がより高まる。
【0020】
振動源であるミシン本体と防振対象である糸調子装置、両者の間に介在する防振材の配置については種々の様態を採用することができ、例えばミシン本体、防振材、糸調子装置(のブラケット)を前後方向に並べて配置、取り付けてもよい。しかし特に防振材11にゲル状素材を採用した場合は上記実施例のように上下方向に下からミシン本体1a、防振材11、糸調子装置2の順に配置、取り付けると、水平方向の振動が除去されて駆動軸4や可動皿8のがたつきがなくなり、糸に付与される張力がより安定する。また縦(上下)方向の振動についても振動の除去効果が高く、上下方向の振動によって駆動軸4の駆動が拗れてスムースに行えなくなることを防止でき、糸に付与される張力の調節がスムースに行える。
【符号の説明】
【0021】
1 ミシン
1a ミシン本体
2 糸調子装置
3 電磁ソレノイド
4 駆動軸
5 土台板
5a 水平面
6 取付板
6a 取付面
7 固定皿
8 可動皿
11 防振材
14 糸調子器用取付板
15 糸調子器
16 ブラケット
図1
図2
図3