(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151045
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】発電装置運転システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20231005BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231005BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231005BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231005BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J13/00 311R
H02J3/00 180
H02J3/38 170
H02J3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060445
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514020389
【氏名又は名称】TIS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 崇之
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ ゆかり
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA05
5G066HA15
5G066HB07
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力を適切に供出する。
【解決手段】発電装置と、発電装置と通信可能なサーバ100とを備える発電装置運転システムであって、サーバ100は、電力の出力指令である応動指令を発する発令者からの応動指令に応じて発電装置が所定の電力を出力可能となるまでに要する応動所要時間に基づいて、発令者からの応動指令を受けサーバ100が発電装置に発する応動指令よりも前に発電装置に事前準備を指示する応動準備指令を発電装置に送信する情報送信部168を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置と、前記発電装置と通信可能なサーバとを備える発電装置運転システムであって、
前記サーバは、電力の出力指令である応動指令を発する発令者からの前記応動指令に応じて前記発電装置が所定の電力を出力可能となるまでに要する応動所要時間に基づいて、前記発令者からの前記応動指令を受け前記サーバが前記発電装置に発する応動指令よりも前に前記発電装置に事前準備を指示する応動準備指令を前記発電装置に送信する情報送信部を備える、
発電装置運転システム。
【請求項2】
前記応動準備指令は、前記発電装置の起動有無、および、前記発電装置の運転計画の更新有無のうち少なくとも1つに関する情報を含む、
請求項1に記載の発電装置運転システム。
【請求項3】
前記応動準備指令は、電力の取引が行われる電力取引市場の種別が需要家の所定時刻において推定される電力の需要値を示す基準値の提出が義務づけられる種別であり、かつ、前記発電装置が前記基準値の導出を行う場合、前記発電装置の起動有無、前記発電装置の運転計画の更新有無、および、前記基準値の導出有無のうち少なくとも1つに関する情報を含む、
請求項2に記載の発電装置運転システム。
【請求項4】
前記応動準備指令は、前記応動指令の識別子と区別するために設けられた応動準備識別子を含む、
請求項1に記載の発電装置運転システム。
【請求項5】
前記情報送信部は、
電力の取引が行われる電力取引市場ごとに定められる前記応動指令の送信時点から前記電力取引市場で取引された電力の供給開始時点である実需給開始時点までの応動指令時間よりも前記発電装置の前記応動所要時間の方が長い場合、前記応動準備指令を前記発電装置に送信する、
請求項1に記載の発電装置運転システム。
【請求項6】
前記情報送信部は、
電力の取引が行われる電力取引市場で取引された電力の供給開始時点である実需給開始時点から前記電力取引市場の種別によって需要家の所定時刻において推定される電力の需要値を示す基準値の提出が義務づけられる時点までの基準値要求時間よりも前記応動所要時間の方が短い場合、前記応動準備指令を前記発電装置に送信する、
請求項1に記載の発電装置運転システム。
【請求項7】
前記情報送信部は、
電力の取引が行われる電力取引市場で約定処理が行われる約定処理時点から前記電力取引市場で取引された電力の供給開始時点である実需給開始時点に対し所定時間前の所定時点までの間に、前記応動準備指令を前記発電装置に送信し、
前記所定時点は、前記実需給開始時点から前記応動所要時間前の時点である、
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の発電装置運転システム。
【請求項8】
前記所定時点は、前記電力取引市場の種別が需要家の所定時刻において推定される電力の需要値を示す基準値の提出が義務づけられる種別であり、かつ、前記発電装置が前記基準値の導出を行う場合、前記実需給開始時点から前記応動所要時間前の時点、および、前記実需給開始時点から前記電力取引市場の種別によって前記基準値の提出が義務づけられる時点までの基準値要求時間に前記発電装置の出力調整にかかる調整時間および前記発電装置と前記サーバとの通信にかかる通信時間を加算した時間前の時点のうち、いずれか早い方の時点である、
請求項7に記載の発電装置運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、需要家に燃料電池ユニットが設けられ、都市ガスやLPガス等を用いた発電が行われている。例えば、特許文献1には、需要家の過去の消費電力と熱需要に基づいて、燃料電池ユニットの運転計画を決定することについて開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、地域内の複数の分散型エネルギーリソースを、IoT(Internet of Things)機器によって遠隔で制御し、あたかも一つの発電所のように機能させるVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)と呼ばれる仕組みが実用化されている。VPPでは、例えば、各需要家に設置された燃料電池ユニットにおいて発電された電力を取りまとめて基幹電力系統に供給することができる。
【0005】
また、VPPにおいて複数の分散型エネルギーリソースを統合制御し、エネルギーサービスを提供する事業が行われている。このようなサービスを提供する事業者をアグリゲータという。例えば、アグリゲータは、電気事業者からの応動指令を受け、実需給開始時点までに所定の電力を供出する。
【0006】
ところが、需要家に設置される燃料電池ユニットは、起動および出力上昇までに時間を要し、電気事業者の応動指令を受けた時点から実需給開始時点までの間に所定の電力を供出することが困難な場合がある。
【0007】
本発明は、電力を適切に供出することが可能な発電装置運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の発電装置運転システムは、発電装置と、発電装置と通信可能なサーバとを備え、サーバは、電力の出力指令である応動指令を発する発令者からの応動指令に応じて発電装置が所定の電力を出力可能となるまでに要する応動所要時間に基づいて、発令者からの応動指令を受けサーバが発電装置に発する応動指令よりも前に発電装置に事前準備を指示する応動準備指令を発電装置に送信する情報送信部を備える。
【0009】
応動準備指令は、発電装置の起動有無、および、発電装置の運転計画の更新有無のうち少なくとも1つに関する情報を含んでもよい。
【0010】
応動準備指令は、電力の取引が行われる電力取引市場の種別が需要家の所定時刻において推定される電力の需要値を示す基準値の提出が義務づけられる種別であり、かつ、発電装置が基準値の導出を行う場合、発電装置の起動有無、発電装置の運転計画の更新有無、および、基準値の導出有無のうち少なくとも1つに関する情報を含んでもよい。
【0011】
応動準備指令は、応動指令の識別子と区別するために設けられた応動準備識別子を含んでもよい。
【0012】
情報送信部は、電力の取引が行われる電力取引市場ごとに定められる応動指令の送信時点から電力取引市場で取引された電力の供給開始時点である実需給開始時点までの応動指令時間よりも発電装置の応動所要時間の方が長い場合、応動準備指令を発電装置に送信してもよい。
【0013】
情報送信部は、電力の取引が行われる電力取引市場で取引された電力の供給開始時点である実需給開始時点から電力取引市場の種別によって需要家の所定時刻において推定される電力の需要値を示す基準値の提出が義務づけられる時点までの基準値要求時間よりも応動所要時間の方が短い場合、応動準備指令を発電装置に送信してもよい。
【0014】
情報送信部は、電力の取引が行われる電力取引市場で約定処理が行われる約定処理時点から電力取引市場で取引された電力の供給開始時点である実需給開始時点に対し所定時間前の所定時点までの間に、応動準備指令を発電装置に送信し、所定時点は、実需給開始時点から応動所要時間前の時点であってもよい。
【0015】
所定時点は、電力取引市場の種別が需要家の所定時刻において推定される電力の需要値を示す基準値の提出が義務づけられる種別であり、かつ、発電装置が基準値の導出を行う場合、実需給開始時点から応動所要時間前の時点、および、実需給開始時点から電力取引市場の種別によって基準値の提出が義務づけられる時点までの基準値要求時間に発電装置の出力調整にかかる調整時間および発電装置とサーバとの通信にかかる通信時間を加算した時間前の時点のうち、いずれか早い方の時点であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電力を適切に供出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る発電装置運転システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るサーバの機能を説明するための機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る発電装置の機能を説明するための機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、本実施形態にかかる発電装置の運転計画の第1の例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本実施形態にかかる発電装置の運転計画の第2の例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、発電装置運転方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
[1.発電装置運転システムの全体構成]
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る発電装置運転システム1000の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る発電装置運転システム1000を示す概略図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る発電装置運転システム1000は、サーバ100と、複数の発電装置200とを含む。複数の発電装置200は、それぞれ需要家300に設けられる。サーバ100と複数の発電装置200は、ネットワークNWを介して相互に通信可能に接続される。
【0021】
サーバ100は、例えば、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、大型コンピュータ、マイクロコンピュータなどの各種のコンピュータ装置で構成される。サーバ100は、複数の発電装置200から送信される各種情報を収集、蓄積、処理する。
【0022】
発電装置200は、需要家300に設けられた太陽光発電または燃料電池ユニットや、蓄電池、電気自動車、自家用発電設備、ネガワット(節電した電力)等の電力を生成する装置の総称である。本実施形態では、発電装置200は、例えば、燃料電池ユニットである。
【0023】
本実施形態において、燃料電池ユニットは、家庭用燃料電池コージェネレーションシステムであり、所謂、エネファーム(登録商標)である。本実施形態の燃料電池ユニットは、不図示の燃料電池、熱交換器、および、貯湯タンクを備える。燃料電池は、例えば、都市ガスやLPガス等の燃料から改質された改質ガス中の水素と空気中の酸素を反応させて電気と熱を発生させる。熱交換器は、燃料電池で発生した熱を用いて水を加熱させ、水を湯にする。熱交換器により加熱された湯は、貯湯タンクに貯められる。燃料電池により生成された電気および貯湯タンクに貯められた湯は、需要家300で使用される。また、燃料電池により生成された電気は、基幹電力系統に供出することもできる。
【0024】
ネットワークNWは、サーバ100と、複数の発電装置200とを通信可能に接続するための無線または有線の通信回線網である。ネットワークNWは、例えば、LPWA(Low Power Wide Area)、衛星通信ネットワーク、携帯電話ネットワーク、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、その他の専用回線網などの各種のネットワークで構成される。ネットワークNWの少なくとも一部は、無線ネットワークを含んでいる。ただし、ネットワークNWの少なくとも一部は、有線ネットワークを含んでいてもよい。このように、ネットワークNWは、無線ネットワークおよび有線ネットワークの双方を含んでもよい。
【0025】
本実施形態において、サーバ100は、ネットワークNWを介して、複数の発電装置200を遠隔で制御し、VPPの一部として機能させる。サーバ100を管理するアグリゲータは、複数の発電装置200を統合制御し、エネルギーサービスを提供する事業を行う。
【0026】
アグリゲータは、アグリゲーションコーディネータ(AC)、リソースアグリゲータ(RA)の総称である。アグリゲータは、例えば、電力の取引が行われる電力取引市場にて電気事業者と電力の取引を行う。
【0027】
電力取引市場は、例えば、容量市場、スポット市場、時間前市場(卸電力市場)、需給調整市場等である。容量市場は、国全体で将来必要となる電力の供給力を取引する市場であり、例えば、オークション形式で4年後の供給力が取引される。スポット市場は、発電事業者や小売事業者が翌日に発電または販売する電力を実需給日の前日までに売買する市場である。時間前市場は、電力需要の急増や発電の不調など需給のミスマッチに対応すべく、電力取引市場で取引された電力の供給開始時点である実需給開始時点から最短一時間前まで電力の取引が可能な市場である。スポット市場や時間前市場のように、発電事業者と小売事業者が取引する市場を総称して卸電力市場と呼ぶ。需給調整市場は、電力の需要と供給の同時同量を実需給断面で一致させ、電力の安定供給を担うための調整力を取引する市場である。
【0028】
アグリゲータが管理するサーバ100は、電力取引市場ごとに定められる電力の出力指令である応動指令を発する発令者(以下、単に発令者という)からの応動指令を受け、複数の発電装置200に所定の電力を発電させるように応動指令を送信する。ただし、発令者は、電力取引市場ごとに定められたものでなくてもよく、例えば、電力取引市場を介さずに電力の出力指令を発するものであってもよい。
【0029】
ここで、発令者は、電力取引市場の種別に応じて異なる。発令者は、例えば、電力取引市場の種別が容量市場である場合、電力広域的運営推進機関である。また、発令者は、時間前市場等の卸電力市場である場合、発電事業者、小売電気事業者、他のアグリゲータ等である。また、発令者は、需給調整市場である場合、一般送配電事業者である。なお、以下では、一般送配電事業者、小売電気事業者、発電事業者等をまとめて電気事業者ともいう。
【0030】
本実施形態において応動は、発令者あるいはサーバ100からの指令を受け発電装置200が所定の電力を発電するよう動くことである。つまり、応動指令は、発電装置200に所定の電力を発電させるように、発令者あるいはサーバ100から発せられる指令である。ここで、応動指令には、発令者からサーバ100に発せられる第1応動指令と、サーバ100から発電装置200に発せられる第2応動指令の2種類ある。以下では、第1応動指令および第2応動指令をまとめて応動指令という。本実施形態において、第1応動指令と第2応動指令は同じである。ただし、第1応動指令と第2応動指令は異なっていてもよい。応動指令の詳細な内容については後述する。
【0031】
アグリゲータは、複数の発電装置200により生成する電力を束ねて、電気事業者と取引を行う。アグリゲータは、電気事業者との取引が成立すると、実需給開始時点において約定した電力量の供出が可能な状態にすることが義務づけられる。アグリゲータは、電気事業者からの応動指令を受け、実需給開始時点までに所定の電力を供出できるように複数の発電装置200を統合制御する。
【0032】
電気事業者は、電力取引市場における落札金額に応じた対価をアグリゲータに支払う。アグリゲータは、供給電力量に応じた対価を需要家に支払う。以下では、一例として、需給調整市場において調整力が取引され、アグリゲータのサーバ100が複数の発電装置200を統合制御し、実需給開始時点に所定の電力を供出する例について説明する。
【0033】
[2.サーバ100の機能構成]
図2は、本実施形態に係るサーバ100の機能を説明するための機能ブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係るサーバ100は、サーバ通信部110と、サーバ記憶部130と、サーバ制御部150とを有する。
【0034】
サーバ通信部110は、ネットワークNWを通じて複数の発電装置200に搭載される発電通信部210(
図3参照)との通信を確立する。サーバ記憶部130は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、サーバ100に用いられるプログラムや各種データを記憶する。サーバ記憶部130は、複数の発電装置200から収集した各種情報を蓄積する。
【0035】
サーバ制御部150は、CPU(Central Processing Unit)で構成され、サーバ記憶部130に格納されたプログラムを用い、サーバ100全体を制御する。また、サーバ制御部150は、情報受信部152、起動時間導出部154、処理時間導出部156、基準値導出部158、調整時間導出部160、通信時間導出部162、応動所要時間導出部164、応動準備指令決定部166、情報送信部168としても機能する。かかる機能部の動作については後程詳述する。
【0036】
[3.発電装置200の機能構成]
図3は、本実施形態に係る発電装置200の機能を説明するための機能ブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係る発電装置200は、発電通信部210と、発電記憶部230と、発電制御部250とを有する。
【0037】
発電通信部210は、ネットワークNWを通じてサーバ100に搭載されるサーバ通信部110(
図2参照)との通信を確立する。発電記憶部230は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、発電装置200に用いられるプログラムや各種データを記憶する。
【0038】
発電記憶部230には、需要家300に設けられた発電装置200に関するリソース情報が記憶される。リソース情報は、発電装置200の種別(本実施形態では、燃料電池)、設置場所(需要家300の住所)、発電装置200の定格電力および定格容量を含む。
【0039】
発電制御部250は、CPUで構成され、発電記憶部230に格納されたプログラムを用い、発電装置200全体を制御する。また、発電制御部250は、情報受信部252、運転計画決定部254、情報送信部256としても機能する。かかる機能部の動作については後程詳述する。
【0040】
ところで、電力取引市場で取引される対象物(商品)には、複数の種別がある。例えば、需要供給市場で取引される商品区分は、大きく分けて一次調整力、二次調整力1、二次調整力2、三次調整力1、三次調整力2の5つがある。
【0041】
一次調整力は、基幹電力系統の系統周波数を一定に維持するための調整力である。例えば、発電装置200が系統周波数の変化を自動で検知し、系統周波数が一定となるように自動的に出力を制御する自端制御(パワーコンディショナ等で周波数を調整)が行われることで、この一次調整力が調整される。一次調整力の応動時間は、10秒以内に定められている。二次調整力1、2は、発令者の応動指令に対する応動指令時間(応動時間)が、5分以内に定められ、発令者の応動指令から5分以内の電力の供出が要求される。ここで、応動指令時間は、電力取引市場ごとに定められる応動指令の送信時点から実需給開始時点までの時間である。この二次調整力1、2では、応動指令時間は最大5分に定められている。
【0042】
三次調整力1は、発令者の応動指令に対する応動指令時間が、15分以内に定められ、発令者の応動指令から15分以内の電力の供出が要求される。この三次調整力1では、応動指令時間は最大15分に定められている。三次調整力2は、発令者の応動指令に対する応動指令時間が、45分以内に定められ、発令者の応動指令から45分以内の電力の供出が要求される。この三次調整力2では、応動指令時間は最大45分に定められている。
【0043】
このように、需給調整市場で取引される商品の種別に応じて、発令者の応動指令に対する応動指令時間が異なる。また、電力取引市場の種別に応じても、この応動指令時間が異なる。ここで、本実施形態のように発電装置200が燃料電池ユニットにより構成される場合、起動および出力上昇までに時間を要するため、発令者の応動指令に対する応動指令時間内に所定の電力を供出することが困難な場合がある。
【0044】
そこで、本実施形態では、サーバ100は、発令者からの応動指令に応じて発電装置200が所定の電力を出力可能となるまでに要する応動所要時間に基づいて、発令者からの応動指令を受けサーバ100が発電装置200に発する応動指令よりも前に、発電装置200に事前準備を指示する応動準備指令を送信する。具体的に、一例として、電力取引市場の市場ごとに定められる応動指令時間よりも発電装置200の応動所要時間の方が長い場合、サーバ100は、発電装置200に前もって応動準備指令を送信する。発電装置200は、サーバ100からの応動準備指令を受け、実需給開始時点前の起動、運転計画の更新、および、基準値の計算のうち少なくともいずれかの前準備を実行する。ここで、基準値は、発電計画値を持たない需要家エネルギーリソース(DSR)が、調整力を供出しなかった場合に想定される需要値(なかりせば需要)である。具体的に、この基準値は、もし発電装置200が何も指令を受けなかった場合に、所定時刻(例えば、明日のこの時間)に需要家300が電力系統から購入するであろう電力量として推定される。本実施形態の発電装置200は、もし何も指令を受けなかったら当該所定時刻に需要家300が電力系統から購入するであろう電力の推定値を、基準値として計算する。以下、需給調整市場において三次調整力2の調整力が取引された場合を例に、サーバ100および発電装置200の動作の一例について説明する。
【0045】
サーバ100の情報受信部152は、発電装置200から各種情報を受信する。各種情報は、例えば、リソース情報、発電装置200の起動に関する情報、発電装置200の運転計画に関する情報、需要家300の所定時刻において推定される電力の需要値を示す基準値に関する情報、発電装置200の出力調整に関する情報、発電装置200の通信に関する情報を含む。
【0046】
サーバ100の起動時間導出部154は、発電装置200の起動に関する情報に基づいて、発電装置200の起動にかかる起動時間を導出する。例えば、起動時間導出部154は、事前に発電装置200の起動時間を計時し、発電装置200の起動時間に関するデータとしてサーバ記憶部130に記憶しておく。具体的に、起動時間導出部154は、発電装置200の起動開始時点から起動完了時点までの起動時間を計時する。また、起動時間導出部154は、計時した発電装置200の起動時間をサーバ記憶部130に記憶する。その後、発電装置200の起動時間を導出する際に、起動時間導出部154は、サーバ記憶部130に記憶された起動時間に関するデータを参照し、当該データに基づいて発電装置200の起動時間を導出する。
【0047】
なお、起動時間導出部154は、サーバ記憶部130に記憶された起動時間の平均値を導出し、該起動時間の平均値を発電装置200の起動にかかる起動時間としてもよい。また、起動時間導出部154は、予め発電装置200の種別に応じて設定された起動時間を、発電装置200の起動にかかる起動時間として導出してもよい。また、起動時間導出部154は、サーバ100を管理する管理者が設定した発電装置200の起動時間を、発電装置200の起動にかかる起動時間として導出してもよい。
【0048】
サーバ100の処理時間導出部156は、発電装置200の運転計画に関する情報に基づいて、発電装置200の運転計画を更新するための処理時間を導出する。例えば、処理時間導出部156は、事前に発電装置200の運転計画の更新にかかる処理時間を計時し、発電装置200の処理時間に関するデータとしてサーバ記憶部130に記憶しておく。具体的に、処理時間導出部156は、発電装置200の運転計画の更新開始時点から更新完了時点までの処理時間を計時する。ここで、発電装置200においてまだ運転計画が作成されていない場合、発電装置200の運転計画の生成開始時点から生成完了時点までの時間、および、更新開始時点から更新完了時点までの時間の合計時間を処理時間として計時してもよい。また、処理時間導出部156は、計時した処理時間をサーバ記憶部130に記憶する。その後、発電装置200の処理時間を導出する際に、処理時間導出部156は、サーバ記憶部130に記憶された処理時間に関するデータを参照し、当該データに基づいて発電装置200の処理時間を導出する。
【0049】
なお、処理時間導出部156は、サーバ記憶部130に記憶された処理時間の平均値を導出し、該処理時間の平均値を発電装置200の運転計画の更新にかかる処理時間としてもよい。また、処理時間導出部156は、予め発電装置200の種別に応じて設定された処理時間を、発電装置200の運転計画の更新にかかる処理時間として導出してもよい。また、処理時間導出部156は、サーバ100を管理する管理者が設定した処理時間を、発電装置200の運転計画の更新にかかる処理時間として導出してもよい。
【0050】
サーバ100の基準値導出部158は、需要家300の所定時刻において推定される電力の需要値を示す基準値に関する情報に基づいて、発電装置200の基準値を導出するための基準値導出時間を導出する。本実施形態では、基準値導出部158は、アグリゲータが電気事業者と取引した電力取引市場の種別が当該基準値の提出が義務づけられる種別であり、かつ、発電装置200が基準値の導出を行う場合、基準値導出時間を導出する。ここで、電力取引市場のうち基準値の提出が義務づけられる種別は、需給調整市場である。例えば、基準値導出部158は、事前に発電装置200の基準値導出時間を計時し、発電装置200の基準値導出時間に関するデータとしてサーバ記憶部130に記憶しておく。具体的に、基準値導出部158は、発電装置200の基準値の導出開始時点から導出完了時点までの導出時間を計時する。また、基準値導出部158は、計時した基準値導出時間をサーバ記憶部130に記憶する。その後、発電装置200の基準値導出時間を導出する際に、基準値導出部158は、サーバ記憶部130に記憶された基準値導出時間に関するデータを参照し、当該データに基づいて発電装置200の基準値導出時間を導出する。
【0051】
なお、基準値導出部158は、サーバ記憶部130に記憶された基準値導出時間の平均値を導出し、該基準値導出時間の平均値を発電装置200の基準値の導出にかかる導出時間としてもよい。また、基準値導出部158は、予め発電装置200の種別に応じて設定された基準値導出時間を、発電装置200の基準値の導出にかかる基準値導出時間として導出してもよい。また、基準値導出部158は、サーバ100を管理する管理者が設定した基準値導出時間を、発電装置200の基準値の導出にかかる基準値導出時間としてもよい。
【0052】
サーバ100の調整時間導出部160は、発電装置200の出力調整に関する情報に基づいて、発電装置200の出力調整にかかる調整時間を導出する。例えば、調整時間導出部160は、事前に発電装置200の調整時間を計時し、発電装置200の調整時間に関するデータとしてサーバ記憶部130に記憶しておく。具体的に、調整時間導出部160は、発電装置200の出力調整開始時点から出力調整完了時点までの調整時間を計時する。また、調整時間導出部160は、計時した調整時間をサーバ記憶部130に記憶する。その後、発電装置200の調整時間を導出する際に、調整時間導出部160は、サーバ記憶部130に記憶された調整時間に関するデータを参照し、当該データに基づいて発電装置200の調整時間を導出する。
【0053】
なお、調整時間導出部160は、サーバ記憶部130に記憶された調整時間の平均値を導出し、該調整時間の平均値を発電装置200の出力調整にかかる調整時間としてもよい。また、調整時間導出部160は、予め発電装置200の種別に応じて設定された調整時間を、発電装置200の出力調整にかかる調整時間として導出してもよい。また、調整時間導出部160は、サーバ100を管理する管理者が設定した調整時間を、発電装置200の出力調整にかかる調整時間として導出してもよい。
【0054】
サーバ100の通信時間導出部162は、発電装置200の通信に関する情報に基づいて、発電装置200との必要な情報を伝達するための通信にかかる通信時間を導出する。例えば、通信時間導出部162は、事前に発電装置200の通信時間を計時し、発電装置200の通信時間に関するデータとしてサーバ記憶部130に記憶しておく。具体的に、通信時間導出部162は、サーバ100と発電装置200との通信開始時点から通信完了時点までの通信時間を計時する。
【0055】
一例として、通信時間導出部162は、発電装置200からサーバ100に情報を送信する送信時間を、サーバ100と発電装置200との通信時間として計時する。ただし、これに限定されず、通信時間導出部162は、サーバ100から発電装置200に情報を送信する送信時間と、発電装置200からサーバ100に情報を送信する送信時間との合計時間を、サーバ100と発電装置200との通信時間として計時してもよい。
【0056】
また、通信時間導出部162は、計時した通信時間をサーバ記憶部130に記憶する。その後、発電装置200の通信時間を導出する際に、通信時間導出部162は、サーバ記憶部130に記憶された通信時間に関するデータを参照し、当該データに基づいて発電装置200の通信時間を導出する。なお、通信時間導出部162は、サーバ記憶部130に記憶された通信時間の平均値を導出し、該通信時間の平均値をサーバ100と発電装置200との通信にかかる通信時間としてもよい。
【0057】
また、通信時間導出部162は、予め発電装置200の種別に応じて設定された通信時間を、サーバ100と発電装置200との通信にかかる通信時間として導出してもよい。また、通信時間導出部162は、サーバ100を管理する管理者が設定した通信時間を、サーバ100と発電装置200との通信にかかる通信時間として導出してもよい。
【0058】
サーバ100の応動所要時間導出部164は、上述した発電装置200の起動時間、処理時間、基準値導出時間、調整時間、通信時間のうち少なくとも1つに基づいて、発電装置200の応動所要時間を導出する。本実施形態では、上述した発電装置200の起動時間、処理時間、基準値導出時間、調整時間、通信時間の総和が応動所要時間である。
【0059】
サーバ100の応動準備指令決定部166は、応動所要時間導出部164にて導出された応動所要時間に基づいて、応動準備指令の内容を決定する。ここで、応動準備指令は、応動準備識別子、実需給開始時点に関する情報、発電供給電力量に関する情報を含む。ここで、サーバ100から送信される発電装置200に対する指令には、応動指令(第2応動指令、本指令)と応動準備指令がある。応動指令と応動準備指令を区別するために、応動指令と応動準備指令にはそれぞれ別々の識別子が付される。応動準備識別子は、当該応動指令と区別するために応動準備指令に付された識別子である。応動準備識別子は、応動指令よりも前に送信され、発電装置200を事前準備させるために設定される。
【0060】
また、応動準備指令は、発電装置200の起動有無、運転計画の更新有無、基準値の導出有無のうち少なくとも1つに関する情報を含む。なお、基準値の導出有無に関する情報は、電力取引市場の種別が発電装置200の基準値の提出が義務づけられる種別であり、かつ、発電装置200が基準値の導出を行う場合に、応動準備指令に含められる。発電装置200の起動有無に関する情報は、例えば、実需給開始時点および応動指令よりも前に、発電装置200を起動させる、あるいは、起動させない指令を含む。運転計画の更新有無に関する情報は、例えば、実需給開始時点および応動指令よりも前に、発電装置200の運転計画を更新させる、あるいは、更新させない指令を含む。基準値の導出有無に関する情報は、例えば、実需給開始時点および応動指令よりも前に、発電装置200に基準値を導出させる、あるいは、導出させない指令を含む。
【0061】
応動準備指令決定部166は、応動所要時間と応動指令時間とを比較し、比較結果に基づいて応動準備指令の内容を決定する。
【0062】
応動準備指令決定部166は、例えば、応動所要時間が応動指令時間よりも長い場合、応動指令よりも前に発電装置200を起動させ、運転計画を更新させ、基準値を導出させるように、応動準備指令の内容を決定する。
【0063】
また、需給調整市場においては、実需給開始時点の1時間前までに基準値を需給調整市場あるいは発令者に提出する義務がある。つまり、電力取引市場の種別によって、実需給開始時点よりも前に発電装置200の基準値の提出が要求される場合がある。ここで、実需給開始時点から電力取引市場の種別によって基準値の提出が義務づけられる最短時点(以下、基準値要求最短時点という)までの時間を基準値要求時間とする。本実施形態では、基準値要求時間は、例えば1時間である。
【0064】
応動準備指令決定部166は、応動所要時間と基準値要求時間とを比較し、比較結果に基づいて応動準備指令の内容を決定する。応動準備指令決定部166は、例えば、応動所要時間が基準値要求時間よりも短い場合、基準値要求最短時点よりも前に発電装置200に基準値を導出させるように、応動準備指令の内容を決定する。
【0065】
サーバ100の情報送信部168は、応動指令、あるいは、応動準備指令決定部166により決定された応動準備指令を発電装置200に送信する。応動準備指令が送信されるタイミングは、電力取引市場で約定処理が行われる約定処理時点から実需給開始時点に対し所定時間前の所定時点までの間である。約定処理時点は、例えば、需給調整市場の三次調整力2の場合、実需給開始時点の前日の15時である。
【0066】
所定時点は、実需給開始時点から応動所要時間前の時点、および、実需給開始時点から基準値要求時間に発電装置200の調整時間および通信時間を加算した時間前の時点のうち、いずれか早い方の時点である。
【0067】
発電装置200の情報受信部252は、サーバ100から各種情報を受信する。各種情報には、応動指令や応動準備指令が含まれる。
【0068】
発電装置200の運転計画決定部254は、発電装置200の運転計画を決定する。運転計画決定部254は、発電記憶部230に記憶された需要家300における過去の消費電力と熱需要に関するデータに基づいて、運転計画を決定する。例えば、運転計画決定部254は、過去に取得された需要家300の消費電力と熱需要に関する複数日分のデータを抽出し、抽出した複数日分の消費電力と熱需要のデータの平均値に基づいて運転計画を導出する。運転計画には、発電開始時刻、発電停止時刻、時間毎の発電量等が含まれる。
【0069】
また、運転計画決定部254は、応動準備指令に基づいて、発電装置200の運転計画を更新する。例えば、応動準備指令に発電装置200の運転計画を更新させる指令が含まれる場合、運転計画決定部254は、発電装置200の運転計画を更新する更新処理を実行する。
【0070】
図4は、本実施形態にかかる発電装置200の運転計画の第1の例を説明するための図である。
図5は、本実施形態にかかる発電装置200の運転計画の第2の例を説明するための図である。
図4および
図5中、縦軸は発電装置200の発電出力を示し、横軸は時刻を示し、破線は更新前の運転計画を示し、実線は更新後の運転計画を示す。また、
図4および
図5中、ハッチング部は電力取引市場で取引された電力の供給開始時点である実需給開始時点から電力の供給終了時点である実需給終了時点までの実需給時間帯を示す。
【0071】
図4中、破線で示すように、更新前の運転計画では、実需給時間帯の実需給開始時点において発電装置200が停止されている。この場合、運転計画決定部254は、実需給開始時点において発電装置200が所定の電力を生成できるように、運転計画を更新する。更新後の運転計画では、
図4中、実線で示すように、実需給時間帯よりも前に発電装置200が起動し、実需給開始時点に所定の電力を生成できるようにしている。
【0072】
図5中、破線で示すように、更新前の運転計画では、実需給時間帯の前あるいは途中で発電装置200が停止される。この場合、運転計画決定部254は、実需給時間帯の実需給開始時点において発電装置200が所定の電力を生成できるように、運転計画を更新する。更新後の運転計画では、
図5中、実線で示すように、更新前の運転計画よりも発電装置200の起動時刻を遅らせ、実需給時間帯に発電装置200が停止しないようにしている。
【0073】
発電装置200の情報送信部256は、サーバ100に対し各種情報を送信する。各種情報は、例えば、リソース情報、発電装置200の起動に関する情報、発電装置200の運転計画に関する情報、需要家300の所定時刻において推定される電力の需要値を示す基準値に関する情報、発電装置200の出力調整に関する情報、発電装置200の通信に関する情報を含む。
【0074】
つぎに、本実施形態にかかる発電装置運転方法について説明する。
図6は、発電装置運転方法のフローチャート図である。
【0075】
図6に示すように、サーバ100の応動準備指令決定部166は、発電装置200の事前起動有無をセットする(S100)。一例として、応動準備指令決定部166は、アグリゲータが電気事業者と取引した電力取引市場の種別に応じて、発電装置200の事前起動有無をセットする。例えば、応動準備指令決定部166は、電気事業者と取引した電力取引市場の種別が需給調整市場、スポット市場、容量市場である場合、発電装置200の事前起動有りにセットし、時間前市場である場合、事前起動無しにセットする。
【0076】
また、応動準備指令決定部166は、発電装置200の運転計画の更新有無をセットする(S110)。一例として、応動準備指令決定部166は、アグリゲータが電気事業者と取引した電力取引市場の種別に応じて、発電装置200の運転計画の更新有無をセットする。例えば、応動準備指令決定部166は、電気事業者と取引した電力取引市場の種別が需給調整市場あるいはスポット市場である場合、発電装置200の運転計画の更新有りにセットし、容量市場あるいは時間前市場である場合、運転計画の更新無しにセットする。
【0077】
また、応動準備指令決定部166は、発電装置200の基準値の事前導出有無をセットする(S120)。一例として、応動準備指令決定部166は、アグリゲータが電気事業者と取引した電力取引市場の種別に応じて、発電装置200の基準値の事前導出有無をセットする。例えば、応動準備指令決定部166は、電気事業者と取引した電力取引市場の種別が需給調整市場であり、かつ、発電装置200が基準値の導出を行う場合、基準値の事前導出有りにセットする。また、応動準備指令決定部166は、電気事業者と取引した電力取引市場の種別が容量市場あるいは卸電力市場である場合、基準値の事前導出無しにセットする。ただし、これに限定されず、応動準備指令決定部166は、電力取引市場の種別によらず、アグリゲータの指示により発電装置200の事前起動有無、運転計画の更新有無、基準値の事前導出有無をセットしてもよい。例えば、容量拠出金を抑制する目的で、需要ピークが予想される時間帯に小売電気事業者自身で系統需要を抑えるように調整する場合があり、この場合に電力取引市場を介した取引や指令がないことがある。このとき、例えば、前日時点で翌日15時頃に需要ピークが生じるという予測がある場合、応動準備指令決定部166は、「運転計画の更新有り」のみを前日等にセットする。
【0078】
サーバ100の調整時間導出部160は、発電装置200の出力調整にかかる調整時間を導出する(S130)。また、サーバ100の通信時間導出部162は、発電装置200との必要な情報を伝達するための通信にかかる通信時間を導出する(S140)。この調整時間および通信時間の導出方法については上述したとおりである。
【0079】
サーバ100の応動所要時間導出部164は、S100~S120のセット情報およびS130~S140の調整時間および通信時間に関する情報に基づいて、発電装置200の応動所要時間を導出する(S150)。具体的に、応動所要時間導出部164は、S100~S120でセットされた発電装置200の事前起動有無、運転計画の更新有無、基準値の事前導出有無に関する情報に基づいて、発電装置200の応動所要時間を導出する。例えば、S100で発電装置200の事前起動有りにセットされている場合、応動所要時間導出部164は、上述した起動時間が含まれるように応動所要時間を導出する。同様に、S110で発電装置200の運転計画の更新有りにセットされている場合、応動所要時間導出部164は、上述した処理時間が含まれるように応動所要時間を導出する。同様に、S120で発電装置200の基準値の事前導出有りにセットされている場合、応動所要時間導出部164は、上述した基準値導出時間が含まれるように応動所要時間を導出する。
【0080】
このように、応動所要時間導出部164は、上述した発電装置200の起動時間、処理時間、基準値導出時間、調整時間、通信時間のうち少なくとも1つに基づいて、発電装置200の応動所要時間を導出する。本実施形態では、上述した発電装置200の起動時間、処理時間、基準値導出時間、調整時間、通信時間の総和が応動所要時間である。
【0081】
応動準備指令決定部166は、応動所要時間と応動指令時間とを比較し、応動所要時間が応動指令時間よりも長いか否か判定する(S160)。応動所要時間が応動指令時間よりも長い場合(S160のYES)、応動準備指令決定部166は、S100~S120でセットされた発電装置200の事前起動有無、運転計画の更新有無、基準値の事前導出有無に関する情報を含む応動準備指令を決定する。例えば、応動準備指令決定部166は、応動指令よりも前に発電装置200を起動させ、運転計画を更新させ、基準値を導出させるように、応動準備指令の内容を決定する。なお、応動準備指令決定部166は、発電装置200の事前起動有無、運転計画の更新有無、あるいは、基準値の事前導出有無がアグリゲータの指示によりセットされた場合、ステップS150、S160の処理をスキップして、セットされた発電装置200の事前起動有無、運転計画の更新有無、基準値の事前導出有無に関する情報を含む応動準備指令を決定する。そして、サーバ100の情報送信部168は、応動準備指令決定部166により決定された応動準備指令を発電装置200に送信する(S170)。
【0082】
発電装置200の運転計画決定部254は、サーバ100からの応動準備指令に基づいて、発電装置200の事前起動処理、運転計画の更新処理、および、基準値の事前導出処理を含む各種処理を実行する。その後、発電装置200の情報受信部252は、サーバ100から応動指令を受信する。
【0083】
一方、ステップS160において、応動所要時間が応動指令時間より短い場合(S160のNO)、応動準備指令決定部166は、応動所要時間と基準値要求時間とを比較し、応動所要時間が基準値要求時間よりも短いか否か判定する(S180)。応動所要時間が基準値要求時間よりも短い場合(S180のYES)、応動準備指令決定部166は、基準値要求最短時点よりも前に発電装置200に基準値を事前導出させるように、基準値の事前導出有りに関する情報を含む応動準備指令を決定する。また、応動準備指令決定部166は、S100~S110でセットされた発電装置200の事前起動有無、運転計画の更新有無に関する情報を含む応動準備指令を決定する。そして、サーバ100の情報送信部168は、応動準備指令決定部166により決定された応動準備指令を発電装置200に送信する(S190)。
【0084】
発電装置200の運転計画決定部254は、サーバ100からの応動準備指令に基づいて、発電装置200の事前起動処理、運転計画の更新処理、および、基準値の事前導出処理のうち、少なくとも基準値の事前導出処理を含む各種処理を実行する。その後、発電装置200の情報受信部252は、サーバ100から応動指令を受信する。
【0085】
一方、ステップS180において、応動所要時間が基準値要求時間より長い場合(S180のNO)、応動準備指令決定部166は、応動指令よりも前における発電装置200の事前起動、運転計画の更新、基準値の事前導出の不実行を決定する。つまり、このとき応動準備指令決定部166は、応動準備指令を発電装置200に送信させないことを決定する。そのため、サーバ100の情報送信部168は、応動準備指令を発電装置200に送信せずに(S200)、発令者の応動指令のタイミングで、発電装置200の情報受信部252は、サーバ100から応動指令を受信する。
【0086】
以上のように、本実施形態のサーバ100は、発電装置200の応動所要時間に基づいて、発令者の応動指令よりも前に応動準備指令を発電装置200に送信する情報送信部168を備える。これにより、発電装置200が起動および出力上昇までに時間を要する燃料電池ユニットであっても、応動指令を受けた時点から実需給開始時点までの間に所定の電力を供出することが容易になる。
【0087】
本実施形態において、応動準備指令は、発電装置200の起動有無、および、運転計画の更新有無に関する情報を含む。なお、電力取引市場の種別が基準値の提出が義務づけられる種別であり、かつ、発電装置200が基準値の導出を行う場合、応動準備指令は、さらに基準値の導出有無に関する情報を含む。これにより、応動指令前に発電装置200の起動処理、運転計画の更新処理、および、基準値の導出処理を発電装置200に実行させることができる。
【0088】
また、応動準備指令は、発令者あるいはサーバ100からの応動指令の識別子と区別するために設けられた応動準備識別子を含む。これにより、応動指令前に不必要に発電装置200の起動処理、運転計画の更新処理、および、基準値の導出処理が実行されることを防止することができる。
【0089】
また、情報送信部168は、電力取引市場ごとに定められる応動指令時間よりも発電装置200の応動所要時間の方が長い場合、応動準備指令を発電装置200に送信する。これにより、応動指令後に発電装置200の起動処理および出力上昇処理を実行させた場合、実需給開始時点までに所定の電力の確保が間に合わない発電装置200に対し、応動準備指令を送信することができる。
【0090】
また、情報送信部168は、電力取引市場の種別によって発電装置200の基準値の提出が義務づけられる基準値要求時間よりも応動所要時間の方が短い場合、応動準備指令を発電装置200に送信する。これにより、特に、需給調整市場において基準値の提出が要求される場合に、応動指令前に不必要に発電装置200の起動処理および運転計画の更新処理を実行させることなく、基準値の導出処理のみを実行させることができる。
【0091】
また、情報送信部168は、電力取引市場で約定処理が行われる約定処理時点から実需給開始時点に対し所定時間前の所定時点までの間に、応動準備指令を発電装置200に送信する。ここで、所定時点は、実需給開始時点から応動所要時間前の時点である。なお、電力取引市場の種別が基準値の提出が義務づけられる種別であり、かつ、発電装置200が基準値の導出を行う場合、所定時点は、実需給開始時点から応動所要時間前の時点、および、実需給開始時点から基準値要求時間に発電装置200の調整時間および通信時間を加算した時間前の時点のうち、いずれか早い方の時点である。これにより、実需給開始時点までに確実に発電装置200による所定の電力を確保することができる。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0093】
上記実施形態では、応動準備指令が発電装置200の起動有無、運転計画の更新有無、基準値の導出有無に関する情報を含む例について説明した。しかし、これに限定されず、応動準備指令は、発電装置200の起動有無、運転計画の更新有無、基準値の導出有無に関する情報を含まなくてもよい。
【0094】
上記実施形態では、応動準備指令が応動準備識別子を含む例について説明した。しかし、これに限定されず、応動準備指令は、応動準備識別子を含まなくてもよい。
【0095】
上記実施形態では、情報送信部168が電力取引市場ごとに定められる応動指令時間よりも発電装置の応動所要時間の方が長い場合、応動準備指令を発電装置に送信する例について説明した。しかし、これに限定されず、情報送信部168は電力取引市場ごとに定められる応動指令時間よりも発電装置の応動所要時間の方が長い場合に、応動準備指令を発電装置に送信しなくてもよい。
【0096】
上記実施形態では、情報送信部168が基準値要求時間よりも応動所要時間の方が短い場合、応動準備指令を発電装置に送信する例について説明した。しかし、これに限定されず、情報送信部168は、基準値要求時間よりも応動所要時間の方が短い場合に、応動準備指令を発電装置に送信しなくてもよい。
【0097】
上記実施形態では、情報送信部168が実需給開始時点から応動所要時間前の時点、および、実需給開始時点から基準値要求時間に発電装置200の調整時間および通信時間を加算した時間前の時点のうち、いずれか早い方の時点までの間に、応動準備指令を発電装置200に送信する例について説明した。しかし、これに限定されず、情報送信部168は、実需給開始時点から応動所要時間前の時点、および、実需給開始時点から基準値要求時間に発電装置200の調整時間および通信時間を加算した時間前の時点のうち、いずれか遅い方の時点までの間に、応動準備指令を発電装置200に送信してもよい。
【符号の説明】
【0098】
100 サーバ
110 サーバ通信部
130 サーバ記憶部
150 サーバ制御部
152 情報受信部
154 起動時間導出部
156 処理時間導出部
158 基準値導出部
160 調整時間導出部
162 通信時間導出部
164 応動所要時間導出部
166 応動準備指令決定部
168 情報送信部
200 発電装置
210 発電通信部
230 発電記憶部
250 発電制御部
252 情報受信部
254 運転計画決定部
256 情報送信部
300 需要家
1000 発電装置運転システム