(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151046
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20231005BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
B60P3/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060446
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】今井 征典
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB08
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA03
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB03
2B043DA04
2B043DA17
2B043EA06
2B043EA08
2B043EA11
2B043EA16
2B043EA37
2B043EB04
2B043EB05
2B043EB08
2B043EB10
2B043EB17
2B043EB18
2B043EB23
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC14
2B043EC19
2B043ED03
2B043ED05
2B043ED12
(57)【要約】
【課題】傾斜地において、走行車体の前部又は後部が、予定走行経路上から外れてしまうことを良好に防止しながら自動走行できる作業車両を提供する。
【解決手段】
作業車両の制御装置75の自動走行部32は、自動走行中、後部測位装置12により測位される走行車体2の後部が予定走行経路から離脱した距離である後部離脱距離D3を算出し、操舵アクチュエータ20を制御して、後部離脱距離D3が短くなる方向へ前輪13を自動操舵し、制御装置75の離脱防止部34は、自動走行中、前部測位装置11により測位される走行車体2の前部が予定走行経路から離脱した距離である前部離脱距離D1を算出し、前部離脱距離D1が所定距離Dpよりも長くなると、走行車体2を一時停止させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪と、前記前輪を操舵する操舵装置と、前記操舵装置を駆動する操舵アクチュエータと、前記前輪又は前記後輪の少なくとも一方に供給される回転動力を変速する変速装置とを有する走行車体と、
前記変速装置及び前記操舵アクチュエータを制御する制御装置と、
前記走行車体の前部に配置された前部測位装置と、
前記走行車体の後部に配置された後部測位装置と、
前記走行車体に取り付けられ、農作業を行う作業機とを備え、
前記制御装置は、前記操舵アクチュエータを制御し予め設定された予定走行経路に沿って前記走行車体を自動走行させる自動走行部と、前記走行車体の前部が予定走行経路から離脱することを防止する離脱防止部とを備え、
前記自動走行部は、自動走行中、前記後部測位装置により測位される前記走行車体の後部が予定走行経路から離脱した距離である後部離脱距離を算出し、前記操舵アクチュエータを制御して、前記後部離脱距離が短くなる方向へ前記前輪を自動操舵し、
前記離脱防止部は、自動走行中、前記前部測位装置により測位される前記走行車体の前部が予定走行経路から離脱した距離である前部離脱距離を算出し、前記前部離脱距離が所定距離よりも長くなると、前記走行車体を一時停止させるよう前記変速装置を制御することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記離脱防止部は、前記前部離脱距離が所定距離よりも長くなったことにより前記走行車体を一時停止させると、前記操舵アクチュエータを制御して前記前輪の切れ角を小さくし、前記前部離脱距離が閾値以下になるまで前記走行車体を後進させた後、前記自動走行部により自動走行を再開させるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記自動走行部は、自動走行中、前記前部測位装置により測位される前記走行車体の前部の移動軌跡と前記後部測位装置により測位される前記走行車体の後部の移動軌跡との距離を示す前後軌跡間距離を算出し、前記前後軌跡間距離が長いほど、前記走行車体を減速するよう前記変速装置を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記自動走行部は、自動走行中、前記前部離脱距離が長いほど、前記走行車体を減速するよう前記変速装置を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行が可能な農業用の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を自動走行可能な走行車体と、農作業を行う作業機とを備え、予め設定された予定走行経路に沿って、農作業しながら圃場を自動走行するよう構成された作業車両が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、走行車体の前後方向略中央部に、位置情報を取得する測位装置を備え、自動走行中、この測位装置の位置が、予定走行経路上を移動するように、ステアリングホイールを自動操舵する作業車両が開示されている。この従来の作業車両は、自動走行時、後輪のみを駆動する2輪駆動式と、前輪と後輪の両方を駆動する4輪駆動式とを適宜切り換えるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、通常、作業車両が傾斜地を自動走行時、傾斜方向と略平行に走行する場合(すなわち、斜面を上るか下るように走行する場合)を除き、予定走行経路に対して車体が斜面下方へと横滑りし易い。このため、特許文献1に記載の作業車両によれば、横滑り時に、測位装置の位置を予定走行経路上に復帰させるため、車体が斜面上方へ進行するようにステアリングホイールが自動的に操舵される。その結果、予定走行経路に対し、車体の前部が上側、後部が下側に位置する姿勢となりやすい。なお、車体の横滑りを防止するため、ステアリングホイールの舵角を、予め斜面の上側に進む角度に保持させるよう構成した場合も同様である。
【0006】
横滑りの程度によっては、車体が、予定走行経路の伸長方向に対して過度に斜めとなり、車体の前部又は後部が、予定走行経路上から大幅に離脱してしまうおそれがあった。例えば、施肥作業や防除作業のように、栽培中の作物の条間を縫うように自動走行する場合、前輪又は後輪が圃場の作物に接触してしまったり、圃場の作物の有無に拘わらず、作業機が予定走行経路に対して斜めとなった状態で走行することで作業幅が短くなってしまうなどの不都合が生じうる。
【0007】
したがって、本発明は、傾斜地において、走行車体の前部又は後部が、予定走行経路上から外れてしまうことを良好に防止しながら自動走行できる作業車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のかかる目的は、
前輪および後輪と、前記前輪を操舵する操舵装置と、前記操舵装置を駆動する操舵アクチュエータと、前記前輪又は前記後輪の少なくとも一方に供給される回転動力を変速する変速装置とを有する走行車体と、
前記変速装置及び前記操舵アクチュエータを制御する制御装置と、
前記走行車体の前部に配置された前部測位装置と、
前記走行車体の後部に配置された後部測位装置と、
前記走行車体に取り付けられ、農作業を行う作業機とを備え、
前記制御装置は、前記操舵アクチュエータを制御し予め設定された予定走行経路に沿って前記走行車体を自動走行させる自動走行部と、前記走行車体の前部が予定走行経路から離脱することを防止する離脱防止部とを備え、
前記自動走行部は、自動走行中、前記後部測位装置により測位される前記走行車体の後部が予定走行経路から離脱した距離である後部離脱距離を算出し、前記操舵アクチュエータを制御して、前記後部離脱距離が短くなる方向へ前記前輪を自動操舵し、
前記離脱防止部は、自動走行中、前記前部測位装置により測位される前記走行車体の前部が予定走行経路から離脱した距離である前部離脱距離を算出し、前記前部離脱距離が所定距離よりも長くなると、前記走行車体を一時停止させるよう前記変速装置を制御することを特徴とする作業車両。
【0009】
本発明によれば、走行車体の後部に配置された後部測位装置により測位される走行車体の後部の位置と、予め設定された予定走行経路との距離である後部離脱距離が短くなる方向に前輪が操舵されるから、傾斜地において、車体の後部が予定走行経路から大幅に離間してしまうことを抑制することができる。
【0010】
さらに、本発明によれば、走行車体の前部に配置された前部測位装置により測位される走行車体の前部と予定走行経路との距離である前部離脱距離が所定距離よりも長くなると、走行車体が一時停止されるよう構成されているから、傾斜地において自動走行する場合でも、走行車体の前部が予定走行経路から大幅に離間してしまうことを防止できる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記離脱防止部は、前記前部離脱距離が所定距離よりも長くなったことにより前記走行車体を一時停止させると、前記操舵アクチュエータを制御して前記前輪の切れ角を小さくし、前記前部離脱距離が閾値以下になるまで前記走行車体を後進させた後、前記自動走行部により自動走行を再開させるよう構成されている。
【0012】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、前部離脱距離が所定距離よりも長くなり、走行車体を一時停止させると、制御装置の離脱防止部は、前輪の切れ角を小さくし、前部離脱距離が閾値以下になるまで走行車体を後進させるよう構成されているから、傾斜地において、過度に斜面の上側に向いた車体の姿勢を容易に修正できる。
【0013】
加えて、離脱防止部は、前輪の切れ角を小さくした後に、走行車体を後進させるよう構成されているから、後進後に車体が予定走行経路よりも過度に斜面の上側へ位置してしまうことを防ぎ、自動走行を再開した直後に、前部離脱距離が所定の距離よりも長くなることを防止できる。したがって、走行車体の前部が予定走行経路から大幅に離間してしまうことを防止しつつ、頻繁な車体の停止により作業効率が下がることを防ぐことができる。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記自動走行部は、自動走行中、前記前部測位装置により測位される前記走行車体の前部の移動軌跡と前記後部測位装置により測位される前記走行車体の後部の移動軌跡との距離を示す前後軌跡間距離を算出し、前記前後軌跡間距離が長いほど、前記走行車体を減速するよう前記変速装置を制御する。
【0015】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、自動走行部は、予定走行経路に垂直な方向における走行車体の前部の移動軌跡と後部の移動軌跡との間の距離が長いほど、すなわち、走行車体の姿勢が予定走行経路に対して傾くほど、走行車体の車速を低く制御するよう構成されているから、車体の傾きが大きいときに、車速を低くして予定走行経路Rに沿って精確に自動走行できるとともに、車体の姿勢の傾きが小さいときに、車速を高くして作業を効率的に進めることができる。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記自動走行部は、自動走行中、前記前部離脱距離が長いほど、前記走行車体を減速するよう前記変速装置を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両。
【0017】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、自動走行中に、前部離脱距離が長いほど(すなわち、車体の姿勢が予定走行経路に対してヨー方向に傾くほど)、走行車体の車速を低くするよう構成されているから、車体の傾きが大きいときに、車速を低くして予定走行経路Rに沿って精確に自動走行できるとともに、車体の姿勢の傾きが小さいときに、車速を高くして作業を効率的に進めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、傾斜地において、走行車体の前部又は後部が、予定走行経路上から外れてしまうことを良好に防止しながら自動走行できる作業車両を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る作業車両の略左側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された作業車両の制御ブロック図である。
【
図4】
図4は、傾斜地にある圃場に設定された予定走行経路を示す模式図である。
【
図5】
図5は、走行車体の前部及び後部と、予定走行経路との位置関係を示す作業車両の近傍の模式的平面図である。
【
図6】
図6は、自動走行中に行われる離脱防止部の制御に係るフローチャートである。
【
図7】
図7(a)は、傾斜の小さい圃場で作業車両が一時停止した状態を示す模式図であり、
図7(b)は、傾斜の小さい圃場で一時停止した作業車両の姿勢を修正する手順を示す模式図であり、
図7(c)は、姿勢が修正された後の作業車両の状態を示す模式図である。
【
図8】
図8(a)は、傾斜の大きな圃場で作業車両が一時停止した状態を示す模式図であり、
図8(b)は、傾斜の大きな圃場で一時停止した作業車両の姿勢を修正する手順を示す模式図であり、
図8(c)は、姿勢が修正された後の作業車両の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る作業車両1の略左側面図であり、
図2は、
図1に示された作業車両1の略平面図である。
【0022】
本明細書においては、特に断りがない限り、作業車両1の進行方向となる側を「前」、その反対側を「後」とし、作業車両1の進行方向である前方に向かって左側を「左」といい、その反対側を「右」という。
【0023】
作業車両1は、走行用の車体である走行車体2と、3点リンク機構7により走行車体2の後部に取り付けられた作業機3と、走行車体2の前部に配置され、作業車両1を制御する制御装置5と、走行車体2の前部に取り付けられた前部測位装置11と、走行車体2の後部に取り付けられた後部測位装置12を備えている。
【0024】
走行車体2は、転舵輪である左右一対の前輪13と、左右一対の後輪14と、操縦者が着座する操縦席18と、ステアリングシャフト21の上端部に固定されたステアリングホイール17と、操縦席18及びステアリングホイール17が内部に配置されたキャビン51と、作業車両1の動力源としてのエンジン4と、エンジン4を覆うボンネット10と、エンジン4から出力される回転動力を変速するミッションケース19を備えている。
【0025】
本実施形態においては、走行車体2はトラクタにより構成されているが、走行車体の種類はこれに限定されるものではない。例えば、コンバインのように、作業機3を走行車体2の前部に配したものであってもよい。
【0026】
ステアリングシャフト21及びステアリングホイール17は、前輪13を操舵する部材であり、本発明の「操舵装置」の一例である。
【0027】
ミッションケース19は、静油圧式無段変速機(以下、「HST」という。)と副変速機構(不図示)を内部に備えている。
【0028】
ミッションケース19内で変速された回転動力は、前輪車軸23と後輪車軸24を通じて前輪13、後輪14に伝達されるとともに、
図1に示されるPTO軸25を介して作業機3に伝達(供給)される。
【0029】
HSTは、トラニオン開度を調整することにより、副変速機構への出力回転を増減させ、逆転させ、又は停止させることができる。
【0030】
また、操縦席17の近傍に配置された切替レバーの操作により、一対の後輪14のみが駆動される二輪駆動の状態と、前輪13及び後輪14が駆動される四輪駆動の状態との間で切り換え可能に構成されている。
【0031】
ミッションケース19は、本発明の「変速装置」の一例である。
【0032】
作業機3は、本実施形態においては圃場に肥料を散布するブロードキャスタとして構成されており、タンク15内に収容された肥料が、左右に揺動される散布筒16の先端部から圃場に供給されるように構成されている。
【0033】
なお、作業機はブロードキャスタに限定されるものではなく、ロータリー耕耘機、草刈機、レーザーレベラー、カルチベータ、畝立て機などであってもよい。
【0034】
3点リンク機構7は、トップリンク8と、走行車体2の後部から延びるリフトアーム27が取り付けられた左右一対のロアリンク9を備えている。
【0035】
走行車体2の後部に設けられた昇降シリンダ26に作動油が供給されると、左右に延びる軸AXまわりにリフトアーム27が後ろ上がりに回動されるのに伴ってトップリンク8及び一対のロアリンク9が後ろ上がりに回動され、作業機3が上昇される。
【0036】
これに対して、昇降シリンダ26から作動油が排出されると、リフトアーム27が軸AXまわりに後ろ下がりに回動されるのに伴ってトップリンク8及び一対のロアリンク9が後ろ下がりに回動され、作業機3が下降される。
【0037】
前部測位装置11は、
図1及び
図2に示されるように、走行車体2の前部、より具体的には前輪車軸23の前方かつ車体幅方向略中央部に取り付けられている。
【0038】
前部測位装置11はGNSS衛星からのGNSS信号を増幅し、GNSS信号の送信時刻の情報を取得した後、三角測量法を用いて自己の位置、すなわち、走行車体2の前部の位置を測定(測位)することができる。
【0039】
後部測位装置12は、
図1及び
図2に示されるように、走行車体2の後部、より具体的には後輪車軸24の後方かつ車体幅方向略中央部に取り付けられている。
【0040】
後部測位装置12は前部測位装置11と同様にして、後部測位装置12の自己の位置、すなわち、走行車体2の後部の位置を測定(測位)することができる。
【0041】
なお、前部測位装置11及び後部測位装置12により取得された情報に基づく車体2の位置の演算は、制御装置5において行われるよう構成してもよい。
【0042】
図3は、
図1に示された作業車両1の制御ブロック図である。
【0043】
制御装置5は、作業車両1の走行を制御する車両ECU40と、車両ECU40に制御信号を送信する自動運転ECU30を備えている。
【0044】
自動運転ECU30は、予定走行経路や作業機3の作業幅の情報、圃場形状情報、車体2の前部及び後部の位置情報等の種々の情報が格納される記録部33と、予定走行経路を算定する経路算出部31と、自動走行時における前輪13の操向と車体2の走行の制御を行う自動走行部32と、走行車体2の前部が予定走行経路から大きく離間してしまうのを防止する制御を行う、離脱防止部34を備えている。
【0045】
作業機3の作業幅の情報は、作業機3に搭載された作業機ECU6より取得される識別情報に基づき制御装置5に読み出され、設定される。
【0046】
経路算出部31は、いわゆるティーチングにおいて、操縦者の操縦に基づき、車両1が圃場を1周することにより取得された圃場形状情報と、作業機3の作業幅の情報に基づき、予定走行経路を算出する。
【0047】
なお、予定走行経路は、経路算出部31により算出され、設定される他、制御装置5が別途設けられるサーバーから取得し、設定することも可能である。
【0048】
自動走行部32は、予め設定された予定走行経路と、後部測位装置12により測定された車体2の後部の位置との間の距離である後部離脱距離を算出し、後部離脱距離を零にする方向へステアリングホイール17を操舵するよう操舵情報を生成し、車両ECU40に送信する。
【0049】
なお、操舵情報とはステアリングホイール17がとるべき目標となる舵角である。
【0050】
予定走行経路と車体2の後部の位置との間の距離である後部離脱距離は、予定走行経路に対して垂直な方向における後部離脱距離である(
図5のD3参照)。また、後部離脱距離を零にする方向とは、換言すれば、予定走行経路と車体2の後部の位置との間の距離を短くする方向である。
【0051】
自動走行部32から操舵情報を取得すると、車両ECU40は、ステアリングホイール17の舵角を検出するエンコーダ44の検出信号と上記操舵情報に基づき、ステアリングシャフト21及びステアリングホイール17を一体的に回転させるステアリングモータ20を駆動する。
【0052】
ステアリングモータ20は、車両ECU40からの入力パルス信号に応じた動作量で駆動し、その結果、ステアリングシャフト21が回転されるのに伴って、ピットマンアーム(不図示)が回動され、前輪13が操向される。
【0053】
その結果、走行車体2の後部が予定走行経路に沿って移動する。ステアリングモータ20は本発明の「操舵アクチュエータ」の一例である。
【0054】
ここで、特許文献1に記載の作業車両においては、上述のように、走行車体の前後方向略中央部に配置された測位装置により測位される車体の位置を基準にしてステアリングホイールを自動操舵するように構成されている。
【0055】
このため、特に傾斜地において、車体の姿勢が予定走行経路に対してヨー方向に過度に傾いた場合には、走行車体の前後方向略中央部が予定走行経路上に位置していても、車体の後部が予定走行経路から大きく離間してしまうことがある。
【0056】
これに対して、本実施形態においては、制御装置5は後部測位装置12により測位される車体2の後部の位置を基準にしてステアリングホイール17を自動操舵するよう構成されている。
【0057】
このように構成することにより、予定走行経路に対する車体2のヨー方向の傾きにより、車体2の後部が予定走行経路から大きく離間してしまうことを抑制できる。
【0058】
したがって、一般的な作業車両と同様に前輪13よりも大径に構成された後輪14を、圃場に栽培されている作物の条間を通すように走らせることができ、作物の損害を抑制できる。
【0059】
さらに、車両ECU40は、自動走行部32から出力される目標車速についての情報と、走行車体2の走行速度を検出する車速センサ41の検出信号に基づき、エンジン4の吸気量を調節するスロットルモータ42と、HSTのトラニオン開度を調整するHSTサーボモータ43を駆動させて、実車速を目標車速に制御する。以下、自動走行部32から出力される目標車速についての情報を、「車速情報」という。
【0060】
加えて、車両ECU40は、後に詳述するように、離脱防止部34から出力される走行停止信号に基づき、HSTサーボモータ43を駆動させてHSTの走行出力を切ると同時に、ブレーキを操作するブレーキシリンダ(不図示)への作動油の供給と排出を制御するブレーキ制御機構47に制御信号を送信し、走行車体2の走行を停止させることができる。
【0061】
また、車両ECU40は、
図1に示されるリフトアーム27の回動角度を検出するリフトアームセンサ28の検出信号に基づき、昇降シリンダ26への作動油の供給と排出を制御する昇降シリンダ制御機構46に制御信号を送信し、作業機3を昇降する。
【0062】
さらに、車両ECU40は、携帯端末50と無線通信可能に構成されており、携帯端末50から受信した開始信号に基づき、走行車体2の自動走行を開始できるよう構成されている。
【0063】
図4は、傾斜地にある圃場に設定された予定走行経路Rを示す模式図であり、
図5は、走行車体2の前部及び後部と、予定走行経路Rとの位置関係を示す作業車両1の近傍の模式的平面図である。なお、
図5並びに後に詳述する
図7及び
図8においては、作業車両1の作業機3は省略されており、
図5において、車体2の後部の移動軌跡T2が、説明の便宜上、予定走行経路Rから多めにずらして描かれている。
【0064】
予定走行経路Rは、
図4に示されるように、直線状に形成された複数の直進経路R1と、各直進経路R1から隣接する直進経路R1に折り返すように旋回する旋回経路R2とを含むように経路算出部31により算出される。以下においては、特に断りがない限り、「予定走行経路R」は直進経路R1を指すものとして説明を行う。
【0065】
なお、図中の例では、予定走行経路Rのそれぞれの直進経路R1は、おおよそ等高線に沿うように伸び、一本の直進経路R1の全長における高度は略同一となっている。
<自動走行開始時の処理>
操縦者の操縦に基づき、作業車両1が自動走行の開始位置S(
図4参照)に配置された状態で、予定走行経路Rに沿った自動走行開始の操作が携帯端末50上で行われると、自動走行部32は、まず、車両ECU40に操舵情報を送信し、車体2の後部と予定走行経路Rとの間の距離を零にする方向にステアリングホイール17の舵角を調整する。
【0066】
本実施形態においては、車体2が直進する中立位置を起点としたステアリングホイール17の舵角は、上記の後部離脱距離D3に比例した大きさに制御される。
【0067】
次いで、自動走行部32は、車速情報を車両ECU40に送信し、作業車両1(走行車体2)を発進させる。なお、舵角の調整と、作業車両1の発進とは、順序を逆に構成してもよい。
<自動走行中の処理>
作業車両1の走行中においては、自動走行部32は、自動走行開始時と同様に、予め設定された予定走行経路Rと、後部測位装置12により測定された車体2の後部の位置との間の後部離脱距離D3を零にする方向にステアリングホイール17を自動操舵し続ける。
【0068】
このように、後部測位装置12により測位される車体2の後部の位置を基準にしてステアリングホイール17の自動操舵を行うことにより、走行車体2の後部が予定走行経路Rから大幅に離間してしまうことを抑制できる。
【0069】
一方、制御装置5の離脱防止部34は、自動走行中に、以下に詳述する制御を行うことにより、走行車体2の前部が予定走行経路から大きく離間してしまうのを防止することができる。
【0070】
図6は、自動走行中に行われる離脱防止部34の制御に係るフローチャートである。
【0071】
離脱防止部34は、前部測位装置11により測定される車体2の前部の位置と、予定走行経路Rとの間の距離である前部離脱距離D1を算出する(ステップs1)。
【0072】
なお、車体2の前部の位置とは
図5に示される前部測位装置11の位置であり、前部離脱距離D1は、より詳細には、予定走行経路Rに対して垂直な方向における予定走行経路Rと車体2の前部との間の距離である。
【0073】
次いで、離脱防止部34は、算出した前部離脱距離D1が離脱限界距離Dpよりも長いか否かを判定する(ステップs2)。
【0074】
離脱限界距離Dpは、車体2の前部が予定走行経路Rからこれ以上離間することが許容されない距離(所定距離)である。
【0075】
判定の結果、前部離脱距離D1が離脱限界距離Dp以下である場合には、前部離脱距離D1が離脱限界距離Dpよりも長くなるまで、前部離脱距離D1の算出と判定が繰り返し行われる。
【0076】
これに対して、判定の結果、前部離脱距離D1が離脱限界距離Dpよりも長い場合には、車体2の前部が予定走行経路Rから大きく離間していることが認められるので、離脱防止部34は、車両ECU40に走行停止信号を送信する(ステップs3)。
【0077】
その結果、HSTサーボモータ43が駆動してトラニオン軸が中立位置に変更されると同時にブレーキが作動し、走行車体2の走行(及び走行車体2の走行による作業車両1の走行)が一時的に停止される(ステップs3)。
【0078】
このとき、自動走行部32による前輪13の操向と車体2の走行の制御も停止される。
【0079】
なお、車両ECU40はトラニオン軸を中立位置に変更することのみによって、走行車体2の走行を停止させるよう構成してもよく、この場合には制動距離は長くなるが、HSTの出力をなくすことができるため、車体2を停止させることができる。
【0080】
このように、車体2の前部の位置が予定走行経路Rから大きく外れると、車体2の走行を一時停止させるよう構成することにより、前輪13が予定走行経路Rから大きく外れた状態で走行し続けてしまう事態を防止できる。
【0081】
したがって、圃場に栽培される作物に接触してしまう事態を防止することができる。
【0082】
こうして車体2を停止(停車)させると、離脱防止部34は、車体2の傾斜角度を検出するIMU(慣性計測装置)45の検出信号に基づき、車体2のロール方向の傾斜角度が閾値以上であるか否かを判定する(ステップs4)。
【0083】
判定の結果、車体2のロール方向の傾斜角度が閾値未満である場合には、停止位置の圃場の傾斜が小さい(換言すれば、傾斜がなだらかである)ことが認められるので、離脱防止部34は以下のようにして走行車体2の姿勢を修正する。
【0084】
図7(a)は、傾斜の小さい圃場で作業車両1が一時停止した状態を示す模式図であり、
図7(b)は、傾斜の小さい圃場で一時停止した作業車両1の姿勢を修正する手順を示す模式図であり、
図7(c)は、姿勢が修正された後の作業車両1の状態を示す模式図である。
【0085】
なお、
図7(b)に示される各ステップの数字は、
図6に示されるステップの数字に対応している。
【0086】
傾斜地を自動走行する間、走行車体2は斜面の下側へ横滑りする傾向にあるため、予定走行経路R上を走行すべく、ステアリングホイール17は斜面の上側(山側)へ自動操舵される(
図7においては右側に切られる)。
【0087】
加えて、車体2の後部には作業機3(
図1及び
図2参照)が取り付けられているため、車体2の後部が作業機3の重みにより自然と斜面の下側へ移動する傾向にある。
【0088】
したがって、車体2の前部の位置が予定走行経路Rから離脱限界距離Dpより大きく離れて走行車体2が一時停止されたときには、通常、前輪13がやや斜面の上側に向いている。
【0089】
同時に、車体2は
図7(a)に示されるように、予定走行経路Rに対して車体2が過度に斜めの姿勢をとっている。より詳細には、走行車体2は、車体2の前部が後部よりも過度に斜面上側に位置する姿勢にある。
【0090】
作業車両1が一時停止すると、離脱防止部34は、まず、車両ECU40に操舵情報を送信してステアリングホイール(
図6内のハンドル)17を所定の角度だけ中立位置側に切り戻し(換言すれば、ステアリングホイール17の切れ角を小さくし)、操舵輪である前輪13の切れ角(車体2が直進する状態を基準にした前輪の角度)を所定の角度だけ小さくする(ステップs5)。
【0091】
次いで、離脱防止部34は、車両ECU40に車速情報を送信して、前部離脱距離D1(
図5参照)が閾値以下になるまで走行車体2を後進させる(ステップs6)。
【0092】
その結果、走行車体2の姿勢が、
図7(c)に示されるように予定走行経路Rに略沿う(換言すれば、略平行な)状態に修正される。なお、この場合の閾値は、上述の離脱限界距離Dpよりも小さい値である。
【0093】
このように、前輪13の切れ角を小さくしてから車体2を後進させることにより、後進後に過度に斜面の上側へ位置してしまうことを防ぎ、
図5に示される前部離脱距離D1が、自動走行再開直後に離脱限界距離Dpよりも長くなってしまうことを防止できる。したがって、車体2の前部が予定走行経路Rから大幅に離間する事態を防止しつつも、頻繁な車体2の停止により作業効率が下がることを防止することができる。
【0094】
一方で、車体2を一時停止させた後に、車体2のロール方向の傾斜角度が閾値以上であるか否かを判定した結果、車体2のロール方向の傾斜角度が閾値以上である場合には、停止位置の圃場の傾斜角度が大きい(換言すれば、傾斜が急である)ことが認められるので、離脱防止部34は以下のようにして、走行車体2の姿勢を修正する。
【0095】
図8(a)は、傾斜の大きな圃場で作業車両1が一時停止した状態を示す模式図であり、
図8(b)は、傾斜の大きな圃場で一時停止した作業車両1の姿勢を修正する手順を示す模式図であり、
図8(c)は、姿勢が修正された後の作業車両1の状態を示す模式図である。
【0096】
なお、
図8(b)に示される各ステップの数字は、
図6に示されるステップの数字に対応している。
【0097】
作業車両1が一時停止すると、離脱防止部34は、まず、車両ECU40に操舵情報を送信し、ステアリングホイール(
図6中のハンドル)17を、車体2が直進する中立位置を超えて反対側、すなわち傾斜下側に回転させる(ステップs7)。
【0098】
ここにいう傾斜下側に回転とは、
図8に示される状況においては左回りの回転である。
【0099】
次いで、離脱防止部34は、車両ECU40に目標車速情報を送信し、前部離脱距離D1(
図5参照)が閾値以下になるまで走行車体2(車両1)を前進させる(ステップs8)。
【0100】
その結果、走行車体2の姿勢が、
図8(c)に示されるように予定走行経路Rに略沿う(換言すれば、略平行な)状態に修正される。
【0101】
ここで、傾斜が急な地点で走行車体2が一時停止したときに、仮に、
図7(b)に示される手順で姿勢の修正を図った場合には、姿勢を修正するため後進する間に斜面の下側に滑ってしまい、姿勢修正後の車体2の後部の位置が予定走行経路Rから著しく斜面の下側に離れてしまうおそれがある。
【0102】
これに対して、本実施形態においては、停止位置の圃場の傾斜が急である場合、はみだし防止部34は、車体2を前進させて車体2の姿勢を修正するよう構成されている。
【0103】
したがって、車体2の姿勢を修正しつつも、車体2の後部を着実に予定走行経路Rの近傍に留めることができる。
【0104】
なお、ステアリングホイール17を傾斜下側に回転させる量は、車体2が直進する中立位置を起点に所定の角度として構成してもよく、一時停止した時点での舵角を起点に所定の角度として構成してもよい。
【0105】
こうして一時停止時の圃場の傾斜角度に応じた手順で走行車体2の姿勢を修正すると、自動走行部32による前輪13の操向と車体2の走行の制御が再開されて、ステアリングホイール17の舵角の調整後に、作業車両1が発進される。
【0106】
以下、同様にして、自動走行部32が、車体2の後部が予定走行経路Rに沿って移動するようにステアリングホイール17を自動操舵しつつ走行車体2を走行させ、前部離脱距離D1が離脱限界距離Dpよりも長くなると、離脱防止部34が走行を一時停止させて、
図7(b)又は
図8(b)に示される手順で車体2の姿勢を修正するという流れを繰り返しながら、予定走行経路Rに沿った作業車両1の自動走行を行う。
<自動走行時の車速制御>
一方、自動走行部32は、自動走行中に、走行車体2の直進性を検出し、その直進性に応じて走行速度を調整するよう構成されている。
【0107】
具体的には、自動走行部32は、
図5に示されるように、前部測位装置11により所定のデータ測定周期で測位される走行車体2の前部の位置11及び11’を結ぶことにより得られる走行車体2の前部の移動軌跡T1と、後部測位装置12により所定のデータ測定周期で測位される車体2の後部の位置12及び12’を結ぶことにより得られる走行車体2の後部の移動軌跡T2との間の(予定走行経路R1に垂直な方向における)距離である前後軌跡間距離D2を算出する。この前後軌跡間距離D2が長いほど、斜面の下側への横滑り量が多い。
【0108】
横滑り量が多い場合には、予定走行経路Rに復帰するため斜面の上側に進むようにステアリングホイール17が自動的に操舵されたことにより、又は/及び作業機3の重みにより、車体2の姿勢が予定走行経路Rに対してヨー方向に大きく傾いたことが認められるので、直進性が低い。
【0109】
したがって、自動走行部32は、自動走行中に、前後軌跡間距離D2を算出し、前後軌跡間距離D2が長いほど目標車速を低く設定して走行車体2の走行速度を低く調整する。換言すれば、自動走行部32は、前後軌跡間距離D2が短いほど目標車速を高く設定して走行車体2の走行速度を高く調整する。
【0110】
すなわち、自動走行部32は前後軌跡間距離D2の長さの値に反比例するように、目標車速の高さの値を設定して車速情報を車両ECU40に送信し、車両ECU40は、HSTサーボモータ43を駆動してHSTのトラニオン開度を調整し、走行車体2の走行速度を制御する。
【0111】
このように、本実施形態に係る自動走行部32は、車体2の姿勢の傾きが小さく、直進性が良好であるときには車速を上げるよう構成されているから、効率よく作業を行うことができる。
【0112】
反対に、車体2の姿勢の傾きが多く、直進性が低いときには、予定走行経路Rに沿うように走行することが難しいため、自動走行部32は車速を下げるよう構成されているから、予定走行経路Rに沿って精確に走行できる。
【0113】
したがって、傾斜地において等高線に沿うように自動走行する場合でも、前輪13又は後輪14が作物に接触してしまう事態を効果的に抑制することができる。
【0114】
ここで、
図1及び
図2に示されるように、走行車体2の前部の位置を測定する前部測位装置11は前輪車軸23の前方に、走行車体2の後部の位置を測定する後部測位装置12は後輪車軸24の後方に各々配置されている。
【0115】
したがって、前後の測位装置11,12同士の距離を大きくとることができ、車体2の直進性を精度よく検出することができる。
【0116】
また、
図5内の符号「11’」は、自動走行中に所定のデータ測定周期で前部測位装置11により測定される走行車体2の前部の(過去の)各位置を各々示し、符号「12’」は、自動走行中に所定のデータ測定周期で後部測位装置12により測定される走行車体2の後部の(過去の)各位置を各々示している。
【0117】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0118】
例えば、
図1ないし
図8に示された前記実施形態においては、自動走行部32は、予め設定された予定走行経路Rと、後部測位装置12により測定された車両1の後部の位置との間の後部離脱距離D3を算出し、この後部離脱距離D3を0にする方向にステアリングホイール17
を操舵するよう操舵情報を生成し、車両ECU40は、上記操舵情報に基づき、ステアリングモータ20を駆動するよう構成されているが、自動走行中のステアリングホイールの目標舵角を、後部離脱距離D3に加えて車体の傾斜角度を加味した舵角に補正するよう構成してもよい。傾斜が大きいほど、ステアリングホイールの舵角を山側に補正するよう構成することにより、走行車体の姿勢を予定走行経路に対してやや斜めにでき、斜面の下側への横滑りを防止することができる。
【0119】
また、
図1ないし
図8に示された前記実施形態においては、制御装置5の車両ECU40は、走行車体2の前部の移動軌跡T1と、後部の移動軌跡T2との間の前後軌跡間距離D2を算出し、前後軌跡間距離D2が短いほど走行車体2の走行速度を高くするよう構成されているが、前部測定装置11により測定される走行車体2の前部の位置と、予定走行経路R(より具体的には直進経路R1)との間の距離である前部離脱距離D1が短いほど、走行車体2の速度を高くし、前部離脱距離D1が長いほど、車速を低く制御するよう構成してもよい。この場合にも、予定走行経路Rに対する車体2の姿勢の傾きが小さいときに車速を上げて効率よく作業を進めることができるとともに、予定走行経路Rに対する車体2の姿勢の傾きが大きいときに車速を下げ、予定走行経路Rに沿って精確に走行することができる。
【0120】
さらに、
図1ないし
図8に示された前記実施形態においては、一対の後輪14のみが駆動される二輪駆動の状態と、前輪13及び後輪14が駆動される四輪駆動の状態との間で切り換え可能に構成されているが、自動走行時に、一対の前輪のみが駆動されるよう構成してもよい。
【0121】
加えて、
図1ないし
図8に示された前記実施形態においては、走行車体2のロール方向の傾斜角度に基づき、圃場の傾斜角度を判断し、車体2の姿勢の修正方法を選択するよう構成されているが、ヨー方向又はピッチ方向の車体2の傾斜角度の大小に基づき、車体の姿勢の修正方法を選択するよう構成してもよく、ロール方向、ヨー方向、及びピッチ方向も含めたあらゆる方向における車体2の傾斜角度の大小に基づき、車体2の姿勢の修正手順を決定するように構成してもよい。
【0122】
また、
図1ないし
図8に示された前記実施形態においては、走行車体2を一時停止させたときの圃場の傾斜角度に基づき、ステアリングホイール17を切り戻して後進するか(
図7(b)参照)、又はステアリングホイール17を斜面下側に進むように反対側へ切って前進するか(
図8(b)参照)を選択するよう構成されているが、走行車体を一時停止させたときに、ステアリングホイールを切り戻して後進した後に、ステアリングホイールを斜面下側に進むように反対側へ切って前進するよう構成してもよい。このように構成することにより、予定走行経路から大幅に離間することなく、車体のヨー方向の姿勢を予定走行経路に略沿った姿勢に修正することができる。加えて、走行車体を一時停止させた位置の近傍に、姿勢を修正した状態で戻ることが可能になる。
【0123】
さらに、
図1ないし
図8に示された前記実施形態において、
図4に示された傾斜地にある圃場上で自動走行する場合を例に説明を進めたが、平地においても、同様に、
図6に示された制御を行うよう構成してもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 作業車両
2 走行車体
3 作業機
4 エンジン
5 制御装置
6 作業機ECU
7 3点リンク機構
8 トップリンク
9 ロアリンク
10 ボンネット
11 前部測位装置
12 後部測位装置
13 前輪
14 後輪
15 タンク
16 散布筒
17 ステアリングホイール
18 操縦席
19 ミッションケース
20 ステアリングモータ
21 ステアリングシャフト
23 前輪車軸
24 後輪車軸
25 PTO軸
26 昇降シリンダ
27 リフトアーム
28 リフトアームセンサ
29 車速センサ
30 自動運転ECU
31 経路算定部
32 自動走行部
40 車両ECU
41 車速センサ
42 スロットルモータ
43 HSTサーボモータ
44 エンコーダ
45 IMU
46 昇降シリンダ制御機構
47 ブレーキ制御機構
50 携帯端末
51 キャビン