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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151047
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
A01C11/02 303C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060447
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】村並 昌実
(72)【発明者】
【氏名】山根 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】東 幸太
(72)【発明者】
【氏名】田崎 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘喜
(72)【発明者】
【氏名】周防 僚太
(72)【発明者】
【氏名】川崎 優太
【テーマコード(参考)】
2B060
【Fターム(参考)】
2B060AA10
2B060AB01
2B060AC01
2B060AC08
2B060AD01
2B060AE01
2B060BA03
2B060CA19
2B060CB06
2B060CB22
2B060CC05
2B060CC13
2B060DA02
2B060DA09
2B060DA10
(57)【要約】
【課題】植付装置に確実に植付物を供給でき、且つ、簡潔に構成することができる1条植えの移植機を提供する。
【解決手段】
植付物を圃場に植え付ける1条植えの移植機は、走行車体に取り付けられ、植付物を前後方向に搬送する搬送装置と、搬送装置の搬送方向下手側に配置され、搬送装置により搬送された植付物を受けて圃場に植え付ける植付装置とを備え、搬送装置と植付装置は、機体幅方向略中央部に配置され、搬送装置は、作業者により植付物が投入され、搬送装置の搬送方向に沿って一定のピッチで並ぶ複数の投入部を備え、植付装置が一連の植付動作を行う度に、各投入部に投入された植付物を、1ピッチ分ずつ搬送する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付物を圃場に植え付ける1条植えの移植機であって、
圃場を走行する走行車体と、
前記走行車体に取り付けられ、植付物を前後方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の搬送方向下手側に配置され、前記搬送装置により搬送された植付物を受けて圃場に植え付ける植付装置とを備え、
前記搬送装置と前記植付装置は、機体幅方向略中央部に配置され、
前記搬送装置は、作業者により植付物が投入され、前記搬送装置の搬送方向に沿って一定のピッチで並ぶ複数の投入部を備え、前記植付装置が一連の植付動作を行う度に、各投入部に投入された植付物を、1ピッチ分ずつ搬送することを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記走行車体は、作業者が搭乗するフロアステップを備え、
前記搬送装置は、前記フロアステップよりも上方で、且つ、作業者が着座する座席の下面よりも下方の高さ範囲に配置され、
前記座席は、機体幅方向略中央部に配置されており、
前記搬送装置の前端部が、前記座席の後端部よりも前方に位置することを特徴とする請求項1に記載の移植機。
【請求項3】
前記植付装置は、圃場に植付物を植え付ける植付ホッパと、前記搬送装置により搬送された植付物を受けて前記植付ホッパへ案内するガイド部材とを備え、
前記植付ホッパが上死点に位置する状態において、前記植付ホッパの少なくとも一部が前記搬送装置の後端部の下方に位置するように植付動作するよう構成され、
前記ガイド部材は、平面視で、前記搬送装置の後端部と重なる部分が切り欠かれるように略C字状に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の移植機。
【請求項4】
前記搬送装置は、一連の植付動作において、前記植付ホッパが上死点付近に到達したタイミングで、前記投入部を1ピッチ分動作させるよう構成されたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の移植機。
【請求項5】
前記走行車体の走行距離を検出する走行距離センサと、前記植付ホッパに植付物が収容されたことを検出する検出手段とを備え、
前記植付ホッパに植付物が収容されたことが検出され、且つ、前記走行車体が、前回の一連の植付動作時から所定の距離以上走行したことが検出されると、一連の植付動作が開始され、
前記植付ホッパに植付物が収容されたことが検出されず、且つ、前記走行車体が、前回の一連の植付動作時から所定の距離以上走行したことが検出されると、前記走行車体の走行が停止されてから、一連の植付動作が行われ、その後に、前記搬送装置が前記投入部を1ピッチ分動作させ、前記植付ホッパに植付物が収容されたことが検出されると、一連の植付動作が行われた後に、前記走行車体の走行が再開されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の移植機。
【請求項6】
前記走行距離センサとして、植付物を植え付けた圃場面を転がりながら土を鎮圧する鎮圧輪を備え、
前記鎮圧輪は、外周縁部に突起を備えており、
前記鎮圧輪の回転数に基づき、前記走行車体の走行距離が算出されることを特徴とする請求項5に記載の移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜の苗や芋類の種芋、ラッキョなどの球根類を圃場に植え付ける移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜の苗や、種芋、球根などを圃場に植え付ける植付装置と、この植付装置に種芋や球根類を落下供給する供給装置を備えた移植機が知られている。以下において、移植機により圃場に移植される苗や種芋、球根等を「植付物」という。
【0003】
例えば特許文献1には、植付物を収容する供給カップが周回可能に設けられた供給装置を有する移植機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-48570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された移植機は、単一の植付装置を備えた1条植えの構成であるが、供給装置は、複数条用に構成されており、図2に示されているように供給カップが周回する経路が機体幅方向に長く延び、植付物が落下供給される位置が複数設けられている。したがって、2つ又は4つの供給カップのうちの1つに収容された植付物のみが、単一の植付装置に落下供給される。
【0006】
このため、作業者は、植付物を供給カップに収容するときに、多数の供給カップに対し、1つ置き又は3つ置きに植付物を投入する必要がある。誤って別の供給カップに投入してしまった場合に、植付物が植付装置に供給されず、圃場上に落下してしまうという問題があった。
【0007】
加えて、多数の供給カップを備えた供給装置は、ミッションケース等から動力を受ける伝動系を含めると部品点数が多く、移植機の構成が複雑になってしまうという問題があった。
【0008】
したがって、本発明は、植付装置に確実に植付物を供給でき、且つ、簡潔に構成することができる1条植えの移植機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のかかる目的は、
植付物を圃場に植え付ける1条植えの移植機であって、
圃場を走行する走行車体と、
前記走行車体に取り付けられ、植付物を前後方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置の搬送方向下手側に配置され、前記搬送装置により搬送された植付物を受けて圃場に植え付ける植付装置とを備え、
前記搬送装置と前記植付装置は、機体幅方向略中央部に配置され、
前記搬送装置は、作業者により植付物が投入され、前記搬送装置の搬送方向に沿って一定のピッチで並ぶ複数の投入部を備え、前記植付装置が一連の植付動作を行う度に、各投入部に投入された植付物を、1ピッチ分ずつ搬送することを特徴とする移植機。
【0010】
また、本発明によれば、搬送装置と植付装置が機体幅方向略中央部に配置されており、搬送装置から植付装置が配置された前後一方へ直線的に植付物を搬送するよう構成されているから、簡潔に構成することができる。
【0011】
本発明によれば、搬送装置が、植付物の投入間隔である1ピッチ分ずつ植付装置に搬送されるよう構成されているから、確実に植付物を植付装置に供給することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態においては、
前記走行車体は、作業者が搭乗するフロアステップを備え、
前記搬送装置は、前記フロアステップよりも上方で、且つ、作業者が着座する座席の下面よりも下方の高さ範囲に配置され、
前記座席は、機体幅方向略中央部に配置されており、
前記搬送装置の前端部が、前記座席の後端部よりも前方に位置する。
【0013】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、作業者が着座する座席と、搬送装置と、植付装置がいずれも機体幅方向略中央部に配置されているから、機体の幅をコンパクトに構成することができる。
【0014】
加えて、本発明のこの好ましい実施形態によれば、植付物を投入するのに不適な搬送装置の前端部が、座席下に配置されているから、機体の前後長をコンパクトに構成することができる。
【0015】
さらに、本発明のこの好ましい実施形態によれば、搬送装置がフロアステップよりも上方で、且つ、作業座席の下面よりも下方の高さ範囲に配置されているから、機体の高さを抑えることができるとともに、作業者が機体幅方向に移動する際に、搬送装置を容易に跨いで移動することができる。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記植付装置は、圃場に植付物を植え付ける植付ホッパと、前記搬送装置により搬送された植付物を受けて前記植付ホッパへ案内するガイド部材とを備え、
前記植付ホッパが上死点に位置する状態において、前記植付ホッパの少なくとも一部が前記搬送装置の後端部の下方に位置するように植付動作するよう構成され、
前記ガイド部材は、平面視で、前記搬送装置の後端部と重なる部分が切り欠かれるように略C字状に形成されている。
【0017】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、ガイド部材が搬送装置の後端部と重なる部分を切り欠いた形状をなし、植付ホッパの少なくとも一部が搬送装置の後端部の下方に位置しているから、植付物がガイド部材まで飛ばずに搬送装置の後端部からすぐ下方へ落下した場合でも、植付物を植付ホッパ内へ直接送ることができる。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記搬送装置は、一連の植付動作において、前記植付ホッパが上死点付近に到達したタイミングで、前記投入部を1ピッチ分動作させるよう構成されている。
【0019】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、搬送装置は、植付ホッパが上死点付近に到達したタイミングで、投入部を1ピッチ分動作させるよう構成されているから、植付物を植付ホッパ内に確実に供給することができる。
【0020】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記走行車体の走行距離を検出する走行距離センサと、前記植付ホッパに植付物が収容されたことを検出する検出手段とを備え、
前記植付ホッパに植付物が収容されたことが検出され、且つ、前記走行車体が、前回の一連の植付動作時から所定の距離以上走行したことが検出されると、一連の植付動作が開始され、
前記植付ホッパに植付物が収容されたことが検出されず、且つ、前記走行車体が、前回の一連の植付動作時から所定の距離以上走行したことが検出されると、前記走行車体の走行が停止されてから、一連の植付動作が行われ、その後に、前記搬送装置が前記投入部を1ピッチ分動作させ、前記植付ホッパに植付物が収容されたことが検出されると、一連の植付動作が行われた後に、前記走行車体の走行が再開される。
【0021】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、植付ホッパに植付物が収容されたことが検出され、且つ、走行車体が、一連の植付動作時から所定の距離以上走行したことが検出されると、植付装置が一連の植付動作を開始するよう構成されているから、植付物の株間を一定にすることができる。
【0022】
さらに、本発明のこの好ましい実施形態によれば、植付ホッパに植付物が収容されたことが検出されず、走行車体が、前回の一連の植付動作時から所定の距離以上走行したことが検出されると、走行車体の走行が停止されてから、一連の植付動作が行われ、その後に、植付ホッパに植付物が収容されたことが検出されると、一連の植付動作が行われた後に、走行車体の走行が再開されるよう構成されているから、投入ミスによりいずれかの投入部に植付物が投入されなかった場合でも、植付けが行われていない圃場の領域が発生せず、一定の株間で確実に植付けを行うことができる。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態においては、
前記走行距離センサとして、植付物を植え付けた圃場面を転がりながら土を鎮圧する鎮圧輪を備え、
前記鎮圧輪は、外周縁部に突起を備えており、
前記鎮圧輪の回転数に基づき、前記走行車体の走行距離が算出される。
【0024】
本発明のこの好ましい実施形態によれば、圃場面の土を鎮圧する鎮圧輪を走行距離センサとして用いることにより、移植機の部品点数を削減することができる。
【0025】
加えて、本発明のこの好ましい実施形態によれば、鎮圧輪が外周縁部に突起を備えているため、圃場面を転がる間にスリップしてしまうことを防止でき、したがって、正確な走行距離を算出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、植付装置に確実に植付物を供給でき、且つ、簡潔に構成することができる1条植えの移植機を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態に係る移植機の略左側面図である。
図2図2は、図1に示された移植機の略平面図である。
図3図3は、図1に示された移植機の制御ブロック図である。
図4図4は、図1に示された搬送装置の拡大側面図である。
図5図5は、図1に示された植付装置の略背面図である。
図6図6は、図1に示された植付装置の上部の部分拡大斜視図である。
図7図7は、図1に示されたモータケース20の近傍の略左側面図である。
図8図8は、植付け作業が開始されたときの制御装置による搬送装置から植付装置への植付物Pの供給と、植付動作についての制御を示すフローチャートである。
図9図9(a)は、左側の前輪の近傍の模式的正面図であり、図9(b)は、前輪に取り付けられた前輪フレームと前輪シャフトとの連結部の模式的部分断面左側面図であり、図9(c)は、図9(b)に示された連結部の模式的平面図である。
図10図10は、図1に示された移植機のうね終い検知センサの近傍を示す略左側面図である。
図11図11(a)は、本発明の他の好ましい実施形態に係る左側の前輪に取り付けられた前輪フレームと前輪シャフトとの連結部の模式的左側面図であり、図11(b)は、図11(a)に示された連結部の模式的平面図である。
図12図12は、図11に示された実施形態に係るうね終い検知センサの略左側面図である。
図13図13(a)は、図10の別実施例のうね終い検知センサとうね終いセンサステーの取付関係を示す要部左側面図であり、図13(b)は、図13(a)に示された各部材を組み付けた状態を示す要部左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好ましい実施形態につき、詳細に説明を加える。
【0029】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る移植機1の略左側面図であり、図2は、図1に示された移植機1の略平面図である。
【0030】
また、図3は、図1に示された移植機1の制御ブロック図である。
【0031】
本明細書においては、特に断りがない限り、移植機1の進行方向となる側を「前」、その反対側を「後」とし、移植機1の進行方向である前方に向かって左側を「左」といい、その反対側を「右」という。
【0032】
移植機1は、機体を前進させる走行車体2と、移植機1全体を制御する制御装置75と、植付物Pを圃場に植え付ける植付ホッパ62を有する植付装置3と、植付ホッパ62に植付物Pを搬送する搬送装置6と、植付ホッパ62を昇降させるホッパ昇降モータ41(図3参照)が収容されたモータケース20と、モータケース20から後方へ延びるハンドルフレーム23と、ハンドルフレーム23に設けられた移植機1の操縦部76と、ハンドルフレーム23に取り付けられた植付物Pの載置台105と、植付装置3により植え付けられた植付物Pのまわりの土を鎮圧する左右一対の鎮圧輪90を備えている。以下において、走行車体2を単に「車体」ともいう。なお、図2においては、便宜上、載置台105及び鎮圧輪90は省略されている。
【0033】
本実施形態においては、移植機1は種芋を圃場に植え付ける移植機として構成されているが、圃場に植え付ける植付物Pの種類は種芋に限定されるものではない。
【0034】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の後輪14および遊転輪である左右一対の前輪13(図2参照)と、一対の後輪14の回転動力源であるエンジン9と、エンジン9から出力された回転動力を変速するミッションケース10と、一対の後輪14に回転動力を伝達する左右一対の走行伝動ケース16と、作業者が搭乗し、作業したり移動したりするフロアステップ37と、作業者が搬送装置6に植付物Pを投入する際に着座する作業座席18を備えている。
【0035】
ミッションケース10から出力される変速済みの動力は、左右一対の走行伝動ケース16内の伝動機構を通じて後輪車軸15に伝達される。その結果、後輪14が回転し、車体2が前進する。
【0036】
ミッションケース10内には、一対の走行伝動ケース16への動力伝達を断接するクラッチ(図示)が設けられている。制御装置75は、必要に応じて当該クラッチの断接を切り替えるクラッチモータ94(図3参照)を駆動してクラッチを遮断し、走行を停止させることができる。
【0037】
制御装置75は、CPU(Central Processing Unit)を有する処理部79と、主記憶装置及び補助記憶装置を有する記憶部80を備え、記憶部80には、種々のデータやプログラム等が格納されている。
【0038】
左右一対の鎮圧輪90は、走行車体2が圃場上を走行するのに伴い、畝上における植付装置3による植付箇所の左右両側を前方へ回転移動することにより、植付箇所の近傍の土を鎮圧することができる。
【0039】
図4は、図1に示された搬送装置6の拡大左側面図である。
【0040】
搬送装置6は、駆動プーリ39と、駆動プーリ39の前方に配置された従動プーリ40と、駆動プーリ39及び従動プーリ40に巻き掛けられた無端ベルト(閉ループ状をなすベルト)45と、駆動プーリ39を回転駆動する搬送モータ56(図3参照)と、無端ベルト45にテンションを与えるテンションプーリ49を備えている。
【0041】
無端ベルト45の外側の面には等間隔に配置された多数且つ板状の桟45aが設けられており、無端ベルト45の上部であって、隣り合う桟45aの間に、各々、作業者により植付物Pが投入される投入部A(A1ないしAn)が形成されている。換言すれば、植付物Pが投入される多数の投入部Aが、無端ベルト45の上部に、前後方向に一定のピッチで並べて形成されている。
【0042】
制御装置75から出力される駆動信号に基づき搬送モータ56が駆動されると、駆動プーリ39が回転されるのに伴い、無端ベルト45が左側面視(図1及び図4参照)右回りに回転され、各投入部Aに投入された植付物Pが後方へ搬送される。
【0043】
ここで、搬送モータ56の1度の駆動量は、桟45aの配置間隔の長さ(=投入部Aの配置間隔)だけ無端ベルト45が回転する量に制御装置75により制御される。すなわち、搬送モータ56が1度駆動される度に、無端ベルト45は、桟45aの配置間隔の長さだけ回転され、各投入部Aが桟45aの配置間隔の長さ(=投入部Aの配置間隔の長さ)だけ搬送方向下手側(後方)へ移動される。
【0044】
例えば、後ろ側から2番目に位置する投入部An-1は、駆動後に、図1に示される投入部Anの位置まで移動され、搬送モータ56の駆動前に図1に示されるAnの位置にあった投入部は、駆動後に、後に詳述するガイド部材38に面する位置まで移動される。以下において、搬送モータ56の1度の駆動により無端ベルト45が回転される長さ(量)を「1ピッチ」という。
【0045】
搬送モータ56の1度の駆動により無端ベルト45が1ピッチ回転されると、作業者によって、投入部A1ないしAn-1に投入された各植付物Pが、後方へ1ピッチだけ後方へ搬送されると同時に、搬送モータ56の駆動前に図4に示される投入部Anの位置にあった植付物Pが慣性力により後方へ放たれ、植付ホッパ62内に落下供給される。
【0046】
搬送モータ56の駆動は、以下に詳述する植付装置3の植付動作に同期して行われるよう制御され、植付装置3の植付ホッパ62が上死点の近くまで上昇される度に、搬送モータ56が1度だけ駆動されて、図1に示される投入部Anの位置にある植付物Pが植付ホッパ62内に落下供給される。
【0047】
本実施形態においては、搬送装置6は、前側フレーム43及び後側フレーム44により走行車体2のフロアステップ37に取り付けられており、図1に示されるように、作業座席18の下面18aより下方であって、前側フレーム43及び後側フレーム44が装着されたフロアステップ37の上面よりも上方の高さ範囲に配置されている。
【0048】
このように、作業座席18とフロアステップ37との間の高さ範囲に搬送装置6を配置することにより、機体の高さを抑えることができるとともに、作業者が機体幅方向に移動する際に、搬送装置6を容易に跨いで移動することができる。
【0049】
また、搬送装置6の前端部は、作業座席18の後端部よりも前方に位置しており、植付物Pを投入するのに不適な搬送装置6の前端部を座席18下に配置することで、移植物投入のし易さを保ちつつ、機体1の前後長をコンパクトに構成することができる。
【0050】
さらに、搬送装置6と作業座席18は、図1に示されるように、機体幅方向略中央部に配置されており、作業者は、搬送装置6を跨いだ状態で、作業座席18に着座して作業ができるから、搬送装置6が邪魔にならず、コンパクトな機体ながらも、搬送装置6への植付物Pの投入作業を快適に行うことができる。
【0051】
加えて、本実施形態においては、従動プーリ40は、前側フレーム43と一体的に前後方向にスライド可能に構成されており、従動プーリ40の前後位置を変更することにより、無端ベルト45のテンションを調整することができる。
【0052】
図5は、図1に示された植付装置3の略背面図であり、図6は、図1に示された植付装置3の上部の部分拡大斜視図である。
【0053】
植付装置3は、圃場に挿し込まれる左右一対のホッパ構成体60を有する植付ホッパ62と、各回動支軸66に取り付けられた左右一対の回動アーム67と、回動アーム67とホッパ構成体60を連結する左右一対の回動プレート68と、搬送装置6により搬送された植付物Pを植付ホッパ62内へ案内するガイド部材38を備えている。植付ホッパ62は、本発明の「植付具」の一例である。
【0054】
本実施形態においては、植付装置3は機体幅方向略中央部に配置されており、したがって、植付装置3、搬送装置6及び作業座席18は前後方向に一直線上に配置されている。なお、機体幅方向略中央部とは、換言すれば、左右一対の前輪13のトレッド幅の略中央部であり、一対の前輪13のトレッド幅の略中央部とは、より詳細には、左右の各前輪13の幅方向中央部同士の左右幅であるトレッド幅の幅方向略中央部である。
【0055】
また、図6においては、回動アーム67、回動支軸66及び回動プレート68は説明の便宜上省略されている。
【0056】
一対の回動アーム67にはそれぞれ、後に詳述する開閉ワイヤ63が取り付けられており、この開閉ワイヤ63が引っ張られ、又は緩められることにより、一対の回動アーム67が回動支軸66を中心に回動されるのに伴い、回動プレート68及びホッパ構成体60が回動されて、植付ホッパ62が開閉される。
【0057】
ガイド部材38は、搬送装置6により搬送された植付物Pを内面(前面)で受けて植付ホッパ62に案内する部材であり、図2及び図6に示されるように、上面視において搬送装置6の後端部と重なる部分を切り欠いた平面視略C字状をなすプレートにより構成されている。
【0058】
ガイド部材38をこのように上面視略C字状をなす形状に構成することにより、搬送装置6の搬送終端部(後端部)において遠心力(慣性力)で植付物Pが後方へ勢いよく飛んだ場合でも、植付物Pをガイド部材38で受けて植付ホッパ62内に案内できる。
【0059】
加えて、ガイド部材38が搬送装置6の後端部と重なる部分を切り欠いた形状をなしていることにより、図1及び図2に示されるように、上死点に位置する植付ホッパ62を搬送装置6の後端部と平面視で一部重なる位置に配置できる。換言すれば、植付ホッパ62は、上死点付近で、その一部が、搬送装置6の後端部の下方に位置するように植付動作するよう構成されている。したがって、植付物Pが搬送装置6の後端部から後方へ飛ばずにすぐ下方へ落下した場合でも、植付物Pを植付ホッパ62内へ直接送ることができる。
【0060】
ガイド部材38は変形しにくい剛性の高い樹脂により形成されており、植付物Pが、ガイド部材38に接触した際に、植付ホッパ62の外側へ弾んでしまうことを抑制できる。
【0061】
一方、図7は、図1に示されたモータケース20の近傍の略左側面図である。
【0062】
モータケース20の左側面には、植付装置3を上下動(昇降)させるホッパ昇降モータ41の駆動力により作動する植付操作部21が接続されている。
【0063】
植付操作部21は、植付装置3を昇降させる上側リンクアーム47及び下側リンクアーム48を含む昇降リンク機構19と、植付ホッパ62を開閉させる開閉機構を備えている。
【0064】
具体的には、植付操作部21は、図7に示されるように、ホッパ昇降モータ41により回転駆動される昇降駆動軸51と、昇降駆動軸51に装着された不等円形状の昇降カム50と、一端部が昇降カム50から機体外側に向かう回動軸に取り付けられ、上側リンクアーム47を上下に回動させる昇降クランク52と、昇降クランク52の他端部に装着され、上側リンクアーム47の機体内側に取り付けられた連結プレート53と、ホッパ昇降モータ41から出力された動力を受けて回転するホッパ開閉カム46であって、非円形(非真円状)をなすホッパ開閉カム46と、植付装置3を開閉する開閉ワイヤ63が上端部に取り付けられた開閉アーム64を備えている。
【0065】
以下において、植付装置3に植付け動作をさせる機構、すなわち、植付装置3を昇降させるとともに開閉させる昇降リンク機構19及び開閉機構を併せて「植付動作機構」という。
【0066】
ホッパ昇降モータ41により昇降駆動軸51が回転されると、昇降カム50、昇降クランク52および連結プレート53が駆動され、上側リンクアーム47及び下側リンクアーム48が後ろ上がりに回動される動作と後ろ下がりに回動される動作とが繰り返される。その結果、植付装置3が昇降される。なお、図5においては、縦断面が非円形のホッパ開閉カム46を露出させるため、上側リンクアーム47の前部が省略されている。
【0067】
下側リンクアーム48は上側リンクアーム47に連動して上下に回動するものであり、下側リンクアーム48の前端部には、開閉アーム64の下端部が回動可能に装着されている。
【0068】
上側リンクアーム47の前端部は調節プレート54を介してホッパ開閉カム46に装着されている。装着位置は、植付装置3の静軌跡(走行停止時の軌跡、図1にホッパ62下端部の軌跡T図示)において、搬送装置6から植付物Pを受けてから下死点に向かうまでの間に植付ホッパ62が後傾姿勢から圃場面に対して略垂直な姿勢に変化するとともに、下死点から上昇し始めると略垂直な姿勢から前傾姿勢に変化する位置に設定されている。
【0069】
ホッパ昇降モータ41の駆動により上下一対のリンクアーム47,48が上下すると、植付装置3は、無端ベルト45のすぐ前下方の位置まで上昇し(図1参照)、植付ホッパ62が畝に挿入される位置まで下降する。
【0070】
ここで、図7に示される開閉アーム64の上端部に一端部が取り付けられた開閉ワイヤ63の他端部は、図5及び図7に示される回動アーム67に取り付けられている。
【0071】
開閉アーム64には接触ローラ65が取り付けられており、この接触ローラ65に、ホッパ昇降モータ41から受ける動力により回転するホッパ開閉カム46の大径部の外周面が接触すると、開閉アーム64が回動支点70まわりに前側(前下がり)に回動される。その結果、開閉ワイヤ63が引っ張られ、植付ホッパ62が閉じられる。
【0072】
また、ホッパ開閉カム46の大径部の外周面が接触ローラ65に接触しなくなると、開閉アーム64が後ろ側に回動されて開閉ワイヤ63が緩み、植付ホッパ62が開く。開閉ワイヤ63による植付ホッパ62の開閉動作は、上下一対のリンクアーム47,48の上下動(上下回動)に伴う植付ホッパ62の昇降動作(上下動)に連動して行われる。
【0073】
具体的には、植付ホッパ62が搬送装置6より植付物Pを受けて下降し、圃場に形成された畝に挿し込まれたときから、下死点を通過して上昇し始めるまでの間、植付ホッパ62が開かれて畝に植付物Pが植え付けられ、植付物Pの植付け後に上昇し始めてから、搬送装置より植付物Pを受けて再び下降し畝に差し込まれるまでの間、植付ホッパ62が閉じられて、搬送装置6より受けた植付物Pが植付ホッパ62の内部に保持される。ホッパ開閉カム46の形状は、以上の開閉動作および昇降動作に対応するものである。以下において、植付ホッパ62を、上死点付近から下降させ、下死点に至るまでに開き、再び上昇させて上死点付近に至るまでに閉じた後に、上死点付近まで上昇させる動作を、一連の植付動作と呼び、説明を進める。なお、図1には、植付装置3及びその植付ホッパ62が上死点にある状態が示されている。
【0074】
以上、植付装置3の一連の植付動作について詳述したが、以下に、搬送装置6から植付装置3への植付物Pの供給と、一連の植付動作に関する制御について詳細に説明を加える。
【0075】
図8は、植付け作業が開始されたときの制御装置75による搬送装置6から植付装置3への植付物Pの供給と、植付動作についての制御を示すフローチャートである。
【0076】
本実施形態においては、植付物Pの植付け作業の終了時に、植付装置3が上死点付近で停止するよう構成されており、植付け作業を開始する際には、植付装置3は上死点付近に位置する。
【0077】
操縦部76が操作されて植付物Pの植付けを伴う走行が開始されると、制御装置75はまず、搬送モータ56を駆動して無端ベルト45を1ピッチ回転させ、各投入部Aを1ピッチ移動させる(ステップs1)。
【0078】
次いで、制御装置75は、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されたか否かを判定する(ステップs2)。
【0079】
本実施形態においては、植付ホッパ62の内部に超音波センサ78(図3参照)が配置されており、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されると、超音波センサ78により植付物Pが検出され、検出信号が制御装置75に出力される。
【0080】
なお、超音波センサ78に代えて、例えば植付ホッパ62又はガイド部材38に、植付物Pが接触したときの振動を検出するセンサを設けることによっても、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されたか否かを判定することが可能になる。
【0081】
判定の結果、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されていない場合、投入された植付物Pが搬送装置6の後端部に至っていないことが認められるので、超音波センサ78により植付物Pが検出されるまで、無端ベルト45の回転駆動と、植付物Pが収容されたか否かの判定とが繰り返される。
【0082】
これに対して、判定の結果、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されたことが検出されると、制御装置75は、ホッパ昇降モータ41を駆動して植付装置3の一連の植付動作を開始する(ステップs3)。
【0083】
次いで、制御装置75は、植付装置3が所定の高さ以上の位置にあるか否かを判定する(ステップs4)。
【0084】
詳細には、昇降リンク機構19の近傍に、昇降リンク機構19の傾斜角度を検出するリンクセンサ77が設けられており、制御装置75は昇降リンク機構19の傾斜角度の検出信号に基づき、植付装置3が所定の高さ以上であるか否かを判定することができる。
【0085】
判定の結果、植付装置3が所定の高さ未満の位置にある場合、植付装置3が所定の高さ以上の位置に上昇するまで判定が繰り返される。
【0086】
これに対して、判定の結果、植付装置3が所定の高さ以上の位置にある場合、制御装置75は、搬送モータ56を駆動して無端ベルト45を1ピッチ回転させ、各投入部Aを1ピッチ移動させる(ステップs5)。
【0087】
本実施形態では、所定の高さとは、植付装置3の上死点より僅かに下方の位置に構成されている。すなわち、植付装置3の植付動作が開始されて、植付装置3が上死点付近から下死点まで下降し、再び上昇に転じて、上死点の僅かに下方の位置まで上昇した時点で、搬送装置6が植付物Pを後方へ搬送させるよう構成されている。
【0088】
このように構成することにより、植付装置3がその後にさらに上死点付近へ上昇したタイミングで、搬送装置6から植付物Pを植付ホッパ62内へ落下供給することができるから、植付ホッパ62への植付物Pの供給ミスを防止することができる。なお、植付装置3が上死点付近へ上昇したとき、搬送装置6の搬送モータ56及びホッパ昇降モータ41の駆動は終了しており、植付装置3も上死点付近で一旦停止される。
【0089】
こうして、無端ベルト45を1ピッチ回転させると、制御装置75は、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されたか否かを判定する(ステップs6)。
【0090】
判定の結果、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されていない場合には、搬送装置6に、植付物Pが投入されていない投入部Aが存在したことが認められるので、制御装置75は、記憶部80に未投入回数Mの情報として値1を格納する(ステップs8)。
【0091】
次いで、制御装置75は、ステップs3にて植付装置3の植付動作を開始した時点での走行車体2の位置から、所定の距離以上走行したか否かを判定し(ステップs9)、所定の距離以上走行していない場合は所定の距離以上となるまで判定を繰り返す。
【0092】
これに対して、判定の結果、所定の距離以上走行している場合、制御装置75は、クラッチモータ94を駆動して走行車体2の走行を停止させた(ステップs10)後に、ホッパ昇降モータ41を駆動して植付装置3の植付動作を開始する(ステップs11)。
【0093】
このように、本実施形態においては、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されていない場合でも、植付装置3の植付動作を行うことにより、後に搬送装置6が実際に植付物Pを後方へ搬送した際に、上死点付近で植付ホッパ62が植付物Pを受け取ることができる。したがって、植付ホッパ62への植付物Pの供給ミスを防止することができる。
【0094】
こうして植付装置3の植付動作を開始すると、制御装置75は、植付装置3が所定の高さ以上の位置にあるか否かを判定する(ステップs12)。
【0095】
判定の結果、植付装置3が所定の高さ未満の位置にある場合、植付装置3が所定の高さ以上の位置に上昇するまで判定が繰り返される。
【0096】
これに対して、判定の結果、植付装置3が所定の高さ以上の位置にある場合、制御装置75は、搬送モータ56を駆動して無端ベルト45を1ピッチ回転させ、各投入部Aを1ピッチ移動させる(ステップs13)。
【0097】
次いで、制御装置75は、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されたか否かを判定する(ステップs14)。
【0098】
判定の結果、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されていない場合には、搬送装置6に、植付物Pが投入されていない投入部Aが存在したことが認められるので、未投入回数Mの情報として格納されている値を1だけインクリメントする(ステップs15)。
【0099】
次いで、未投入回数Mが所定の回数Mrefを超えているか否かを判定する(ステップs16)。
【0100】
判定の結果、未投入回数Mが所定の回数Mref以下である場合には、上述のステップs11へ進む。
【0101】
これに対し、判定の結果、未投入回数Mが所定の回数Mrefを上回る場合、制御装置75は、報知装置(図示せず)の圧電振動板95にパルス信号を印加してブザーを鳴らし、作業者に警告した後(ステップs17)、植付作業を終了する(ステップs18)。
【0102】
このように構成することにより、搬送装置6に植付物Pが投入されていない状態で、植付装置3のみが駆動され続けることを防止できるとともに、植付作業を終了させたことを作業者に報知することができる。
【0103】
一方、ステップs14の判定の結果、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されている場合、制御装置75は、ホッパ昇降モータ41を駆動して植付装置3の植付動作を開始させる(ステップs19)。
【0104】
次いで、制御装置75は、走行車体2の走行を再開させ(ステップs20)、ステップs4の判定に戻る。
【0105】
一方で、上述のステップs6の判定の結果、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されている場合、制御装置75は、ステップs3にて植付装置3の植付動作を開始した時点での走行車体2の位置から、所定の距離以上走行したか否かを判定する(ステップs7)。
【0106】
本実施形態においては、図1に示される左側の鎮圧輪90に、その回転数を検出する鎮圧輪回転センサ96(図3参照)が設けられており、鎮圧輪回転センサ96は、検出結果を制御装置75に出力するよう構成されている。
【0107】
制御装置75は、鎮圧輪回転センサ96から出力される鎮圧輪90の回転数と、鎮圧輪の円周の長さとを乗算することにより、走行車体2の走行距離を算出することができる。
【0108】
ここで、図1に示されるように、左側の鎮圧輪90の外周縁部かつ鎮圧輪90の幅方向(左右方向)中央部には、鎮圧輪90の径方向に突出する突起(スパイク)が形成されている。
【0109】
このため、走行車体2が圃場上を走行するのに伴い、左側の鎮圧輪90が畝上を回転しながら前方へ移動する際にスリップしてしまうことを防止でき、走行車体2の正確な走行距離を算出することができる。
【0110】
なお、鎮圧輪90は回動アーム97の後端部に取り付けられており、回動アーム97は、図示しないスプリングにより、後ろ下がりに回動するよう付勢されている。したがって、鎮圧輪90が畝上を回転移動する間にバウンドしてしまうことを防止でき、この点からも、制御装置75は、走行車体2の正確な走行距離を算出することができる。左側の鎮圧輪90は、本発明の「走行距離センサ」の一例である。
【0111】
ステップs7の判定の結果、ステップs3にて植付装置3の植付動作を開始したときから、走行車体2が所定の距離以上走行していない場合には、走行距離が所定の距離以上となるまで判定が繰り返される。
【0112】
これに対して、ステップs7の判定の結果、ステップs3にて植付装置3の植付動作を開始したときから、走行車体2が所定の距離以上走行している場合、制御装置75はステップs3に進み、ホッパ昇降モータ41を駆動して植付装置3の植付動作を開始する。
【0113】
このように、本実施形態においては、前回に植付動作が開始された時点から所定の距離以上走行した時点で次の植付動作を開始するよう構成されているから、前回の植付動作時に植え付けた植付物Pとの間の株間を一定にすることができる。
【0114】
以後、制御装置75は、同様にして、植付装置3の植付動作を開始して、植付装置3が上死点より僅かに下方の位置まで上昇した時点で搬送装置6から植付ホッパ62へ植付物Pを供給し、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されると、所定の距離を走行した時点で植付動作を開始し、植付ホッパ62内に植付物Pが収容されていない場合には、走行車体2の走行を停止して、植付物Pが収容されるまで、植付動作と搬送装置6の駆動とを繰り返す。これにより、移植機1は、植付漏れなく、所定の株間で、確実に植付物Pを圃場の畝に植え付けることができる。
【0115】
一方、走行車体2の車高は、昇降用油圧シリンダ(図示せず)の伸縮により調整可能に構成されており、走行車体2の車高に合わせて、以下のようにして前輪13と前輪13を支持する前輪シャフト57との相対高さを変更し、車体のピッチ方向の姿勢を調整することができる。
【0116】
図9(a)は、左側の前輪13の近傍の模式的正面図であり、図9(b)は、前輪13に取り付けられた前輪フレーム61と前輪シャフト57との連結部の模式的部分断面左側面図であり、図9(c)は、図9(b)に示された連結部の模式的平面図である。
【0117】
左側の前輪13は、回転可能に前輪フレーム61に固定されている。前輪フレーム61は図9(a)に示されるように、上下方向に延びる部分と、この部分の下端部から前輪13へ僅かに延びる部分とを有するL字状の形状をなしている。
【0118】
前輪13を支持する前輪シャフト57は、車体2の機体幅方向中央部から外側へ延び、前輪フレーム61に連結されている。前輪シャフト57は走行車体2に取り付けられている。
【0119】
前輪シャフト57の左側の端部には中空の連結ケース82が取り付けられており、連結ケース82の前面及び後面には、前後方向に貫通する挿入孔84,85が形成され、上面及び下面には、前輪フレーム61を挿入するフレーム孔86が形成されている。
【0120】
前輪フレーム61には、前後方向に貫通する複数の挿入孔83が形成されている。この挿入孔83のいずれかと、連結ケース82に形成された挿入孔84,85の位置を重ね合わせた状態で、ピン87が挿入孔83ないし85に前後一方から挿入され、ピン87の端部にRピン88が取り付けられることにより、機体に対する前輪13の上下位置が固定される。
【0121】
連結ケース82の内部の前部と後部には、各々、板部材99と、板部材99の前輪フレーム61側の面に回転自在に取り付けられた上下一対のベアリング98が設けられており、各板部材99は連結ケース82の内面から前後方向に延びるバネ100に固定されている。
【0122】
ここで、ベアリング98は、前輪フレーム61に形成された挿入孔83よりも大径に構成されている。そのため、ピン87が連結ケース82から抜かれた状態で前輪フレーム61が上下にスライドされると、挿入孔84,85と、上下方向に並ぶ各挿入孔83とが重なる位置で、図9(b)に示されるように、ベアリング98が挿入孔83の入り口に嵌る。その結果、機体に対する前輪13の上下位置が各前後位置で仮固定される。
【0123】
したがって、スタンド等を用いて機体を持ち上げなくても、容易にピン87を挿入孔83ないし85に挿入し、Rピン88をピン87の端部に取り付けて、機体に対する前輪13の上下位置を固定することができる。
【0124】
加えて、このように、連結ケース82内の各ベアリング98が前輪フレーム61に形成された挿入孔83の入り口付近に嵌るため、前輪フレーム61がヨー方向に回転することが防止される。
【0125】
さらに、ベアリング98が嵌る孔と、ピン87が挿入される孔とが共有されているため、前輪フレーム61に形成する孔の数を減らすことができるため、前輪フレーム61を容易に製作することが可能になる。
【0126】
また、ピン87を挿入する挿入孔83が機体の前後方向に延びているため、前輪13を狭める際に干渉することがない。
【0127】
さらに、本実施形態においては、上下方向に並ぶ各挿入孔83の間に、各挿入孔83を結ぶように上下方向に延びる浅い溝が形成されている。
【0128】
このため、ピン87が連結ケース82から抜かれた状態で前輪フレーム61が上下にスライドされた際に、各ベアリング98と前輪フレーム61との接触面積が増えて、ベアリング98と前輪フレーム61が摩耗しづらくなっている。
【0129】
また、ベアリング98は、回転自在に板部材99に取り付けられているため、前輪フレーム61を軽い力で上下にスライドできるとともに、ベアリング98の付け根に負担がかからず、ベアリング98の耐久性が向上する。
【0130】
以上、左側の前輪13の上下位置の調整機構について説明を加えたが、本実施形態においては、右側の前輪13の上下位置の調整機構も同様に構成されており、左側の前輪13の場合と同様にして、上下位置を変更することができる。
【0131】
一方、図10は、図1に示された移植機1のうね終い検知センサ30の近傍を示す略左側面図である。
【0132】
図3に示されたうね終い検知センサ30は、走行車体2のフロアステップ37の下面に取り付けられたうね終いセンサステー102と、うね終いセンサステー102に取り付けられたセンサスイッチ103と、うね終いセンサステー102にプレート31を介して回動可能に取り付けられたセンサアーム104と、センサアーム104の後部に取り付けられたうね面接地ローラ32を備えている。センサスイッチ103には、うね面接地ローラ32が接地状態となり、センサアーム104が上方に回動すると、プレート31との接触で所定位置以上に押し上げられて通電状態とする、金属端子でもあるスイッチアーム103aが設けられている。
【0133】
うね面接地ローラ32は、自重により圃場のうね面に当接し、走行車体2がうねの端部に達した時点でうね面接地ローラ32が下がり、センサアーム104が後ろ下がりに回動する。このとき、センサスイッチ103のスイッチアーム103aからプレート31が離間し、スイッチアーム103aがセンサスイッチ103から離間することで非通電状態、即ちオフになるため、制御装置75は、圧電振動板95にパルス信号を印加してブザーを鳴らし、作業者に警告する構成である。
【0134】
従来の構成では、うね終いセンサステー102のセンサスイッチ103の取付部の下方に空間があるので、走行車体2の車高が下がる際にうね面に土塊等があると、下方から土が入り込み、スイッチアーム103aがセンサスイッチ103側に押し上げられたままになり、うね端に到達してうね面接地ローラ32が非接地状態になると共に、センサアーム104が下方回動しても、センサスイッチ103がオフにならず、ブザーが鳴らない問題があった。
【0135】
上記の問題を防止すべく、うね終いセンサステー102の機体前側には、機体後方へ向けて折り曲げられた曲げ部102aが形成されており、この曲げ部102aによって、走行中に車高が下がる際、うね終いセンサステー102の下方に土塊があっても曲げ部102aに押し均されるので、センサスイッチ103に向かって土が入り込むことを防止できる。
【0136】
このため、センサスイッチ103の電気抵抗に不具合が生じる、あるいはスイッチアーム103aが変形して通電と非通電の切替ができなくなるなどの事態を防ぎ、うね終い検知センサ30が正常に作動しなくなってしまうことを防止することができる。
<本実施形態の技術的意義>
図1ないし図10に示された本実施形態によれば、搬送装置6と植付装置3が機体幅方向略中央部に配置されており、搬送装置6から植付装置3が配置された後方へ直線的に植付物Pを搬送するよう構成されているから、移植機1を簡潔に構成することができる。
【0137】
さらに、本実施形態によれば、搬送装置6が、植付物Pの投入間隔である1ピッチ分ずつ植付装置3に搬送されるよう構成されているから、確実に植付物Pを植付装置3に供給することができる。
【0138】
また、本実施形態によれば、植付物Pを投入するのに不適な搬送装置6の前端部が、作業座席18の下に配置されているから、機体の前後長をコンパクトに構成することができる。
【0139】
さらに、本実施形態によれば、搬送装置6がフロアステップ37よりも上方で、且つ、作業座席18の下面18aよりも下方の高さ範囲に配置されているから、機体1の高さを抑えることができるとともに、作業者が機体幅方向に移動する際に、搬送装置6を容易に跨いで移動することができる。
【0140】
また、本実施形態によれば、植付ホッパ62内に植付物Pを案内するガイド部材38が搬送装置6の後端部と重なる部分を切り欠いた形状をなし、植付ホッパ62の少なくとも一部が搬送装置6の後端部の下方に位置しているから、植付物Pがガイド部材38まで飛ばずに搬送装置6の後端部からすぐ下方へ落下した場合でも、植付物Pを植付ホッパ62内へ直接送ることができる。
【0141】
加えて、本実施形態によれば、搬送装置6は、植付ホッパ62が上死点付近(より詳細には上死点の僅かに下の位置)に到達したタイミングで、投入部Aを1ピッチ分動作させるよう構成されているから、植付物Pを植付ホッパ62内に確実に供給することができる。
【0142】
さらに、本実施形態によれば、植付ホッパ62に植付物Pが収容されたことが超音波センサ78により検出され、且つ、走行車体2が、一連の植付動作時(より詳細には植付動作の開始時)から所定の距離以上走行したことが検出されると、植付装置3が一連の植付動作を開始するよう構成されているから、植付物Pの株間を一定にすることができる。
【0143】
また、本実施形態によれば、植付ホッパ62に植付物Pが収容されたことが検出されず、走行車体2が、前回の一連の植付動作時から所定の距離以上走行したことが検出されると、走行車体2の走行が停止されてから、一連の植付動作が行われ、その後に、植付ホッパ62に植付物Pが収容されたことが検出されると、一連の植付動作が行われた後に、走行車体2の走行が再開されるよう構成されているから、投入ミスによりいずれかの投入部Aに植付物Pが投入されなかった場合でも、植付けが行われていない圃場の領域が発生せず、一定の株間で確実に植付けを行うことができる。
【0144】
加えて、本実施形態によれば、圃場面の土を鎮圧する鎮圧輪90を走行距離センサとして用いるため、移植機1の部品点数を削減することができる。
【0145】
また、本実施形態によれば、鎮圧輪90が図1に示されるように、外周縁部に突起を備えているため、圃場面を転がる間にスリップしてしまうことを防止でき、したがって、制御装置75は、正確な走行距離を算出することができる。
【0146】
図11(a)は、本発明の他の好ましい実施形態に係る左側の前輪13に取り付けられた前輪フレーム61と前輪シャフト57との連結部の模式的左側面図であり、図11(b)は、図11(a)に示された連結部の模式的平面図である。
【0147】
なお、図11及び後に詳述する図12に示された実施形態においては、以下に述べる点を除き、図1に示された前記実施形態と同様に構成されており、したがって、同様の効果を得ることができる。
【0148】
本実施形態においては、図9(a)ないし図9(c)に示された前記実施態様の場合と異なり、ベアリング98が嵌る多数の窪み101が前輪フレーム61の前面及び後面に、ピン87を挿入する挿入孔83とは別途に形成されている。多数の窪み101は上下方向に並ぶように形成されており、窪み101同士を結ぶように、上下方向に延びる浅い溝が形成されている。
【0149】
また、連結ケース82に形成された挿入孔84,85は、前輪フレーム61の左右に位置しており、ピン87は連結ケース82の左側から挿入される。
【0150】
このように、前輪フレーム61において挿入孔83と窪み101とを90度異なる位相で各々形成することで、挿入孔83ないし85に挿入されるピン87の長さを前記実施態様の場合に比して短く構成することができる。加えて、前輪13を縮める際に、バネ100等が再干渉しないため、作業性が良好である。
【0151】
以上、左側の前輪13の上下位置の調整機構について説明を加えたが、前記実施形態と同様に、右側の前輪13の上下位置の調整機構も同様に構成されており、左側の前輪13の場合と同様にして、上下位置を変更することができる。
【0152】
図12は、図11に示された実施形態に係るうね終い検知センサ30の略左側面図である。
【0153】
本実施形態においては、センサスイッチ103が下向きになるように地面と水平に配置されており、プレート31に、センサスイッチ103をオンオフするピン69が溶接されている。
【0154】
センサアーム104がうね面の土塊等に押されて後ろ上がりに回動すると、ピン69が後ろ上がりに回動されるため、センサアーム104の破損を防止できるとともに、センサスイッチ103が、ピン69により回動されるよう構成されているから、センサスイッチ103をうね終いセンサステー102の下面よりも大きく上方の位置に配置することができ、センサスイッチ103をうね面の土塊から保護することができる。
【0155】
図13は、図10に示された実施形態の変形例であり、うね終いセンサステー102の下部に曲げ部102aを形成せず、うね終いセンサステー102の機体左右一側にガードプレート106を装着し、うね終いセンサステー102の下端部よりも機体下方に突出する上下長のガードプレート106の下部には、うね終いセンサステー102の下方を通過して左右他側方向に向かうよう、ガード曲げ部106aを形成する。
【0156】
これにより、センサスイッチ103の下方を左右方向に亘って長く覆うことができるので、うね終いセンサステー102の下方に土塊があってもセンサスイッチ103を故障させる、あるいは誤動作させることが防止される。
【0157】
なお、うね終いセンサステー102には、ガードプレート106を装着する取付長孔102b,102bを上下一対形成し、ガードプレート106を水平な地面に対して平行になる姿勢だけでなく、水平な地面に対して前傾、または後傾する姿勢で装着可能とする。
【0158】
これにより、山間地等の傾斜している圃場において、ガードプレート106を取り付ける姿勢を変更することで、ガード曲げ部106aとうね終いセンサステー102の間にある土塊の進入し得る隙間を狭くできるので、センサスイッチ103を故障させる、あるいは誤動作させることが防止される。
【0159】
また、ガードプレート106にはセンサスイッチ103の取付孔部106b、106bを形成し、機体左右一側からセンサスイッチ103を装着するものとする。
【0160】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0161】
例えば、図1ないし図13に示された各実施形態においては、搬送装置6は、植付物Pを後方に配置された植付装置3へ向けて搬送するよう構成されているが、作業座席を前方へ向けて配置し、搬送装置の前方に配置された植付装置へ向けて植付物を搬送するよう構成してもよい。
【0162】
さらに、図1ないし図13に示された各実施形態においては、植付ホッパ62が搬送装置6の後端部と上面視で一部重なる位置に配置されているが、植付ホッパの全部が搬送装置の下方に位置するように構成してもよい。
【0163】
加えて、図1ないし図13に示された各実施形態においては、図8のステップs11に示されるように、植付物Pが植付ホッパ62内に収容されていない場合でも、制御装置75は、植付装置3の植付動作を行うよう構成されているが、植付物が植付ホッパ内に収容されていない場合、昇降モータ56の駆動を停止し、植付装置の動作を停止させるよう構成してもよい。
【0164】
さらに、図11(a)及び図11(b)に示された実施形態においては、各ベアリング98が板部材99に回転自在に取り付けられているが、ベアリングに代えて、球状の部材を板部材に溶接して取り付けてもよい。この場合には、前輪の上下位置の調整機構をより安価に製作できるとともに、球状の部材への圧力のかかり方が略均等になる。
【符号の説明】
【0165】
1 移植機
2 走行車体
3 植付装置
6 搬送装置
9 エンジン
10 ミッションケース
11 操作パネル
12 操縦ハンドル
13 前輪
14 後輪
15 後輪車軸
16 走行伝動ケース
18 作業座席
19 昇降リンク機構
20 モータケース
21 植付操作部
23 ハンドルフレーム
27 主変速レバー
28 昇降用油圧シリンダ
29 アーム
30 うね終い検知センサ
31 プレート
32 うね面接地ローラ
33 リンク機構
34 バネ
35 カム
36 ケーブル
37 フロアステップ
38 ガイド部材
39 駆動プーリ
40 従動プーリ
41 ホッパ昇降モータ
42 畝面センサ
43 前側フレーム
44 後側フレーム
45 無端ベルト
46 ホッパ開閉カム
47 上側リンクアーム
48 下側リンクアーム
49 テンションプーリ
50 昇降カム
51 昇降駆動軸
52 昇降クランク
53 連結プレート
54 調節プレート
55 リンクホルダ
56 搬送モータ
57 前輪シャフト
58 ホッパホルダ
60 ホッパ構成体
61 前輪フレーム
62 植付ホッパ
63 開閉ワイヤ
64 開閉アーム
65 接触ローラ
66 回動支軸
67 回動アーム
68 回動プレート
69 ピン
70 下側リンクアームの回動支点
71 シャッタ開閉アーム
72 凸部
73 シャッタ開閉ケーブル
74 小径部
75 制御装置
76 操縦部
77 リンクセンサ
78 超音波センサ
79 処理部
80 記憶部
82 連結ケース
83 挿入孔
84 挿入孔
85 挿入孔
86 フレーム孔
87 ピン
88 Rピン
89 角度調節機構
90 鎮圧輪
91 鎮圧アーム
92 回避部分
93 鎮圧輪フレーム
94 クラッチモータ
95 圧電振動板
96 鎮圧輪回転センサ
97 回動アーム
98 ベアリング
99 板部材
100 バネ
101 窪み
102 うね終いセンサステー
103 センサスイッチ
104 センサアーム
105 載置台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13