(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151055
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】気泡緩衝シート
(51)【国際特許分類】
B65D 81/03 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
B65D81/03 100A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060456
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000199979
【氏名又は名称】川上産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】畑 明子
(72)【発明者】
【氏名】油井 雅光
(72)【発明者】
【氏名】松宮 吉房
(72)【発明者】
【氏名】嵐田 剛成
(72)【発明者】
【氏名】角井 大士
(72)【発明者】
【氏名】三宅 喜之
(72)【発明者】
【氏名】大槻 佳代
(72)【発明者】
【氏名】物袋 卓也
【テーマコード(参考)】
3E066
【Fターム(参考)】
3E066AA22
3E066CA01
3E066JA23
3E066KA20
3E066LA30
3E066MA05
(57)【要約】
【課題】被包装物を気泡緩衝材によって包装した状態で輸送するのに適しており、また容易に再利用することができる気泡緩衝材を提供する。
【解決手段】独立した多数の気泡を有する気泡シートと、外装シートとを備えた気泡緩衝シートであって、気泡シートは、中空状に膨出する多数の突起部が成形されたキャップフィルムと、突起部の開口側に積層されたバックフィルムとを含み、外装シートは、少なくとも黒色系樹脂層と白色系樹脂層とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立した多数の気泡を有する気泡シートと、外装シートとを備えた気泡緩衝シートであって、
前記気泡シートは、中空状に膨出する多数の突起部が成形されたキャップフィルムと、前記突起部の開口側に積層されたバックフィルムとを含み、
前記外装シートは、少なくとも黒色系樹脂層と白色系樹脂層とを含む
ことを特徴とする気泡緩衝シート。
【請求項2】
前記外装シートの前記黒色系樹脂層は、カーボンブラックを練り込んだポリオレフィンフィルムである、請求項1に記載の気泡緩衝シート。
【請求項3】
前記気泡シートは、前記キャップフィルムの前記突起部の頂面側に積層されたライナーフィルムをさらに含む、請求項1又は2に記載の気泡緩衝シート。
【請求項4】
前記外装シートは、前記気泡シートの前記バックフィルム側に設けられている、請求項1~3のいずれか一項に記載の気泡緩衝シート。
【請求項5】
前記気泡緩衝シートは、表面に凹凸形状を有するエンボスフィルムをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の気泡緩衝シート。
【請求項6】
前記エンボスフィルムは、前記気泡シートの前記バックフィルム側に設けられている、請求項5に記載の気泡緩衝シート。
【請求項7】
前記外装シートは、前記白色系樹脂層が前記気泡シートを挟んで前記エンボスフィルム側に配置されるように設けられている、請求項5又は6に記載の気泡緩衝シート。
【請求項8】
前記エンボスフィルムの表面は、算術平均粗さRaが3.5~13.5μm、最大高さRzが14.0~47.0μmである、請求項5~7のいずれか一項に記載の気泡緩衝シート。
【請求項9】
前記外装シートは、前記白色系樹脂層側に積層された印刷層をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の気泡緩衝シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡緩衝シートに関し、より具体的には、輸送用気泡緩衝シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空状に膨出する多数の突起部が成形されたキャップフィルムに、突起部内に空気を封入するバックフィルムを積層することによって製造された、独立した多数の気泡を有する気泡シートが、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用されている。
【0003】
このような、いわゆる気泡緩衝材は、近年の通信販売の普及に伴って商品等を輸送する際の緩衝材として日常的に用いられている。商品等の被包装物は、一般的には、気泡緩衝材によって包装され、さらに段ボールや封筒等の資材によって梱包された状態で輸送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、気泡緩衝材によって被包装物を包装した後、段ボール等の梱包資材に納める場合、被包装物と梱包資材との間にできた隙間を埋めるように、さらに緩衝材を必要とすることが多い。被包装物の大きさはその都度異なるため、適切な大きさの梱包資材を常時用意しておくことは、発送側にとって手間や費用等の面で困難である。また、受取側では、緩衝材や梱包材が増えた分だけ処分に手間を要することとなり、輸送側にとっては、梱包サイズが大きくなることは積載効率の点で不利である。
一方、近年では、環境への配慮から、資材の過度な使用を控えることが期待されている。
【0006】
ここで、被包装物を、気泡緩衝材によって包装した状態のまま輸送することを検討するに、従来の気泡緩衝材では、被包装物が外部から視認可能であり、見た目の問題だけではなく、輸送時におけるプライバシー保護の観点からも好ましくない。また、隠蔽性を有する気泡緩衝材であっても、近年の社会的な要請により、使用後に容易に再利用できるものであることが好ましい。
【0007】
このような事情に鑑みて、本発明では、被包装物を気泡緩衝材によって包装した状態で輸送するのに適した気泡緩衝材を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る気泡緩衝シートは、独立した多数の気泡を有する気泡シートと、外装シートとを備えた気泡緩衝シートであって、前記気泡シートは、中空状に膨出する多数の突起部が成形されたキャップフィルムと、前記突起部の開口側に積層されたバックフィルムとを含み、前記外装シートは、少なくとも黒色系樹脂層と白色系樹脂層とを含む構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の気泡緩衝シートによれば、被包装物を包装した状態で、さらなる梱包資材を用いなくても、輸送時の外部の衝撃から被包装物を保護することができるとともにプライバシー保護が図れるため、梱包資材の削減に貢献することが可能となる。また、本発明の気泡緩衝シートによれば、分別の手間がなく、使用後に容易に再利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る気泡緩衝シートの第一実施形態の要部を斜視して示す説明図である。
【
図2】本発明に係る気泡緩衝シートの第一実施形態の断面を模式的に示した説明図である。
【
図3】本発明に係る気泡緩衝シートの第一実施形態の製造方法を示す説明図である。
【
図4】本発明に係る気泡緩衝シートの第二実施形態の要部を斜視して示す説明図である。
【
図5】本発明に係る気泡緩衝シートの第二実施形態の断面を模式的に示した説明図である。
【
図6】本発明に係る気泡緩衝シートの第二実施形態の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<第一実施形態>
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る気泡緩衝シート1の要部を斜視して示す説明図であり、
図2は、本実施形態に係る気泡緩衝シート1の断面を模式的に示した説明図である。
【0013】
本実施形態において、気泡緩衝シート1は、独立した多数の気泡を有する気泡シート2と、外装シート3とを備えている。
【0014】
図示する例では、気泡シート2は、中空状に膨出する多数の突起部21aが成形されたキャップフィルム21と、突起部21aの開口側に積層された平面状のバックフィルム22とから構成された二層構造となっている。ただし、気泡シート2はこのような二層構造に限定されず、キャップフィルム21の突起部21aの頂面側にライナーフィルム23がさらに積層された三層構造としてもよい。
【0015】
気泡シート2のキャップフィルム21の突起部21aの大きさは、利用時の取り扱い容易性を考慮しつつ、被包装物を保護できる緩衝性が得られるように適宜選択することができる。例えば、キャップフィルム21の突起部21aの直径Dは、2.0mm~35.0mm、高さHは、0.5~15.0mmに設計することができる。
【0016】
キャップフィルム21、バックフィルム22、ライナーフィルム23のそれぞれを形成する樹脂材料としては、後述する製造方法において熱融着によって積層できれば特に限定されず、気泡シートを製造するために通常用いられる材料を、適宜選択することができる。例えば、分岐状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-ブテンブロック共重合体、エチレン-ブテンランダム共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン-ブテンランダム共重合体、ポリブテン、ポリペンテン、プロピレンーエチレンーブテン三元共重合体、プロピレン-アクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体などのポリオレフィン系樹脂が用いられ、これらのポリオレフィン系樹脂は、単独又は二種以上混合して用いてもよい。さらに、バージン原料にリサイクル原料を混合して用いてもよく、リサイクル原料だけで用いてもよい。リサイクル材料としては、本実施形態に係る気泡緩衝シート1のような、この種の気泡緩衝シートを回収して再生したものを用いる外、例えば、PETボトルのキャップ、牛乳瓶の飲み口を覆うキャップのような、ポリオレフィン系樹脂製の飲料用容器のキャップを回収して再生したものなど、食品容器に由来するリサイクル材料を用いるのが品質面から好ましい。
【0017】
外装シート3は、少なくとも黒色系樹脂層と白色系樹脂層とを含む。
黒色系樹脂層を含むことで、隠蔽性や遮光性に優れた外装シート3とすることができる。また、白色系樹脂層を含むことで、包装資材としての用いる場合の意匠性を持たせることができる。例えば、白色系樹脂層自体の色彩によって、包装資材の外観に白色系の色彩を持たせることができる。さらには、外装シートは、白色系樹脂層側に積層された印刷層をさらに含んでもよく、このように白色系樹脂層の上に色彩や模様を付する印刷層を設ける場合、白色系樹脂層は、いわゆる「白引き印刷」のための白色印刷層として機能するため、外装シート3上に所望の意匠を綺麗に印刷することができる。
【0018】
外装シート3は、隠蔽フィルムを製造するために通常用いられる材料を、適宜選択することができるが、例えば、カーボンブラックを練り込んだ黒色系樹脂層に、酸化チタンを練り込んだ白色系樹脂層を重ねた多層遮光ポリオレフィンフィルムとすることが好ましい。隠蔽フィルムとして知られているアルミニウムを含んだフィルムを含む場合、気泡緩衝シート1をリサイクル利用する際に、外装シート3を分離除去したうえでリサイクルプラスチック材料として再利用する必要があるが、本実施形態の外装シート3によれば、遮蔽フィルムとしてアルミニウムを要しないため、いわゆるアルミレスの隠蔽フィルムとして、気泡緩衝シート1から外装シート3を分離して分別する手間を要することなく、リサイクルプラスチック材料としての再利用が容易である。
【0019】
図示する例では、外装シート3は、気泡シート2のバックフィルム22側に設けられている。キャップフィルム21の突起部21aの頂面側よりも、平面状のバックフィルム22側に外装シート3を設けた方が、シート同士の接着性に優れるため、好ましい。
また、外装シート3を気泡シート2のバックフィルム22側に積層すると、気泡緩衝シート1の気泡シート2側が内側となるように折り返す際に、柔軟性に優れるため好ましい。このような構成によれば、気泡緩衝シート1を被包装物の包装に用いる場合、最外層となる外装シート3によって、輸送時の気泡緩衝シート1の破損を減少させるなど、気泡緩衝シート1の強度が増すように構成することができるとともに、様々な形状の被包装物を包装し易くなる。
気泡シート2がライナーフィルム23を含む三層構造の場合、外装シート3は、ライナーフィルム23側に設けることもできるが、外装シート3を気泡シート2のバックフィルム22側に積層すると、前述の二層構造の気泡シート2と同様に、気泡緩衝シート1の気泡シート2側が内側となるように折り返す際の柔軟性に優れ、外装シート3が外側に面する状態で包装し易くなるため、好ましい。
【0020】
また、外装シート3の白色系樹脂層が、最外層となるように、白色系樹脂層(外装シート3)/黒色系樹脂層(外装シート3)/バックフィルム22/キャップフィルム21の順で積層された構成とすると、外装シート3が外側に面し、気泡シート2が内側になるように被包装物を包装した場合、白色系樹脂層や前述したような白色系樹脂層上の印刷層が外観として視認され、意匠性の観点から好ましい。また、白色系樹脂層上にマジックなどで「ワレモノ注意」や「天地無用」などをサインペンなどで書き込むことにより、容易に配送業者等に対しての注意事項を喚起することもできる。
【0021】
本実施形態の気泡緩衝シート1によれば、遮光性及び隠蔽性に優れ、被包装物を気泡緩衝シート1で包装した場合、被包装物は外部から視認することができず、輸送時のプライバシーを保護することができる。
また、本実施形態の気泡緩衝シート1はアルミニウムを含まない、いわゆるアルミレスの遮光フィルムであるため、分別の手間を要することなく、リサイクルプラスチック材料としての再利用が容易であり、リサイクル性にも優れている。
【0022】
<第一実施形態にかかる気泡緩衝シート1の製造方法>
このような気泡緩衝シート1は、次のようにして作製することができる。
【0023】
図3は、本実施形態に係る気泡緩衝シートの製造方法を示す説明図である。
図3に示すように、気泡緩衝シート1を製造するには、まず、図示しない押し出し機に取り付けられたフラットダイ20から、樹脂材料をフィルム状に押し出すことによって樹脂フィルム21fを製膜しつつ、成形ロール50の外周面に接触させる。
【0024】
成形ロール50の外周面には、概ね円柱状又は円錐台状などとされた多数の吸引キャビティー51が設けられている。特に図示しないが、吸引キャビティー51のそれぞれは真空ポンプにつながっており、吸引キャビティー51内を真空吸引することによって真空成形がなされるようになっている。これにより、成形ロール50の外周面に樹脂フィルム21fが密着して、中空状に膨出する多数の突起部21aが成形されて、キャップフィルム21に成形される。
【0025】
真空成形によって多数の突起部21aが成形されたキャップフィルム21には、成形ロール50に密着した状態のまま、突起部21aの開口側にバックフィルム22が積層される。バックフィルム22は、図示しない押し出し機に取り付けられたれたフラットダイ30からフィルム状に押し出され、成形ロール50に密着するキャップフィルム21と押圧ロール60との間に溶融状態で供給されて、熱融着によってキャップフィルム21と積層される。これにより、キャップフィルム21に成形された突起部21a内に空気が封入される。
【0026】
キャップフィルム21とバックフィルム22とが熱融着によって積層されると、これらは剥離ロール70によって成形ロール50から剥離されて、必要に応じて図示しない搬送ロールを介してニップロール90,91に搬送される。その際、バックフィルム22側には、外装シート3が供給され、ニップロール90,91により押圧されながら、熱融着によってバックフィルム22に積層される。
【0027】
このような工程を経ることによって、
図1及び
図2に示すような気泡緩衝シート1を製造することができ、製造された気泡緩衝シート1は、図示しない巻き取りロールに巻き取られる。
【0028】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図4は、本実施形態に係る気泡緩衝シート1の要部を斜視して示す説明図であり、
図5は、本実施形態に係る気泡緩衝シート1の断面を模式的に示した説明図である。
【0029】
前述した第一実施形態では、独立した多数の気泡を有する気泡シート2と、外装シート3とを備えた気泡緩衝シート1とした。
これに対して、本実施形態の気泡緩衝シート1は、表面に凹凸形状を有するエンボスフィルム4をさらに備えている。
【0030】
また、第一実施形態では、キャップフィルム21とバックフィルム22とからなる二層構造の気泡シート2を備えた気泡緩衝シート1を例示したが、本実施形態では、中空状に膨出する多数の突起部21aが成形されたキャップフィルム21と、突起部21aの開口側に積層された平面状のバックフィルム22と、キャップフィルム21の突起部21aの頂面側に積層された平面状のライナーフィルム23とを含む三層構造の気泡シート2を備えた気泡緩衝シート1について説明する。
【0031】
エンボスフィルム4を備えることで、気泡緩衝シート1に粘着テープや配送用の送り状等のシール材をエンボスフィルム4側に張り付けた場合、配送用に用いた後、これらが剥がしやすく、粘着材やシール跡が残りにくいため、気泡緩衝シート1を再利用に用いることが容易となる。
【0032】
エンボスフィルム4を形成する樹脂材料としては、エンボス加工可能であり、後述する製造方法において熱融着によって積層できるものであれば特に限定されないが、分別の手間を要することなく、リサイクルプラスチック材料としての再利用が容易となる樹脂材料を用いるのが好ましく、例えば、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0033】
エンボスフィルム4表面の凹凸形状は、期待される効果が有効に奏されるよう適宜設計することができ、例えば、エンボスフィルム4の算術平均粗さRaが3.5~13.5μmであるのが好ましく、さらに好ましくは5.5~9.5μmである。また、エンボスフィルム4の凹凸形状は、最大高さRzが14.0~47.0μmであるのが好ましく、さらに好ましくは22.0~32.0μmである。
【0034】
また、エンボスフィルム4は、曲面状に突出した天面を有する複数の凸部から構成された凹凸形状を有するのが好ましい。
このような凹凸形状を有するエンボスフィルム4の表面に配送用の送り状等のシール材をエンボスフィルム4上に張り付けた場合、シール材は凸部の最も突出している一部を含む範囲において、凸部天面の曲面に沿って接着するが、接着している範囲内においても曲面形状によって互いの距離に差が生じることから、凸部天面の最も突出している頂点での接着は強く、その周囲の接着は弱い状態での張り付きとなる。そのため、シール材を剥がす際には、接着が弱い状態の部分、接着が強い状態の部分、接着が弱い状態の部分、の順に剥がすことになり、シール材を剥がし易く、綺麗に剥がすことが可能となる。
【0035】
このようにして、エンボスフィルム4が、曲面状に突出した天面を有する複数の凸部を有するように形成されていると、表面に配送用の送り状等のシール材をエンボスフィルム4上に張り付けた場合、平面状の天面を有する凸部から構成された凹凸形状と比べて、エンボスシート4表面に残留するシール材の接着剤も少なく、シール材がより剥がし易く、より綺麗に剥がすことが可能となるため、好ましい。また、いわゆる梨地加工などの粗面では、微細な凹凸形状の凹部にシール材の接着剤が入り込み、シール材を剥がした後も接着剤が残留してしまうことは避けられないが、本実施形態の凹凸形状によれば、凹部にシール材が入り込んでしまうことを最小限に抑えることができるため、好ましい。
【0036】
エンボスフィルム4の凹凸形状のより具体的な態様としては、複数の半球状に突出した微細な凸部が規則的に配列されている形状を含む態様を、好ましく例示することができる。この場合、隣り合わせた凸部と凸部の距離は約1mm、凸部の粒径は、0.7~1.1mmであるのが好ましい。このような凹凸形状によれば、表面に配送用の送り状等のシール材をエンボスフィルム4上に張り付けた場合、シール材は各凸部の頂点において点接触でエンボスフィルム4と接着するため、シール材がより剥がしやすく、シール材をより綺麗にはがすことが可能となり、より好ましい。
【0037】
図示する例では、エンボスフィルム4は、気泡シート2のバックフィルム22側に設けられている。気泡シート2のライナーフィルム23側に設けることもできるが、バックフィルム22側にエンボスシート4を設けると、気泡緩衝シート1の気泡シート2側が内側となるように折り返しやすく、エンボスシート4が外側になるように被包装物を包装する際に、好ましい。
【0038】
また、外装シート3は、黒色系樹脂層及び白色系樹脂層を含む多層構造のうち、白色系樹脂層がエンボスフィルム4側に配置されるように設けられると、エンボスシート4側から、白色系樹脂層や前述したような白色系樹脂層上の印刷層が透けて見える構成とすることができるため、エンボスシート4が外側になるように被包装物を包装した場合、外観の意匠性の観点から好ましい。
また、表面に凹凸形状を有するエンボスフィルム4にサインペンなどで文字などを書き込みにくい場合であっても、印刷層に、「ワレモノ注意」や「天地無用」などを印刷しておくことにより、容易に配送業者等に対しての注意事項を喚起することができる。
【0039】
外装シート3は、図示するように、気泡シート2を挟んでエンボスシート4の反対側に設けられるようにすると、後述する本実施形態の気泡緩衝シート1の製造にも適するため、好ましい。例えば、前述したように、外装シート3の白色系樹脂層がエンボスフィルム4側から視認できる構成とする場合は、白色系樹脂層が気泡シート2を挟んでエンボスフィルム4側に配置されるように、エンボスシート4/バックフィルム22/キャップフィルム21/ライナーフィルム23/白色系樹脂層(外装シート3)/黒色系樹脂層(外装シート3)の順で積層される構成とすると好ましい。
【0040】
本実施形態は、上記の点で第一実施形態と異なっているが、他の構成は第一実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0041】
本実施形態の気泡緩衝シート1によれば、前述の通り輸送時のプライバシーを保護することができるとともに、分別の手間を要することなく、リサイクルプラスチック材料としての再利用が容易である。さらに、配送時に用いられるシール材も容易に綺麗にはがすことができるため、再度気泡緩衝シートとしてリサイクルするにも好ましく、リサイクル性に優れている。
【0042】
<第二実施形態にかかる気泡緩衝シート1の製造方法>
このような気泡緩衝シート1は、次のようにして作製することができる。
【0043】
図6は、本実施形態に係る気泡緩衝シート1の製造方法を示す説明図である。
前述の第一実施形態の気泡緩衝シート1の製造方法と同様にしてキャップフィルム21とバックフィルム22とが熱融着によって積層されると、これらは剥離ロール70によって成形ロール50から剥離されて、必要に応じて搬送ロール71,72を介してニップロール80に搬送される。その際、ニップロール80に密着した状態のまま、積層されるキャップフィルム21の突起部21aの頂面側にライナーフィルム23が積層される。ライナーフィルム23は、図示しない押し出し機に取り付けられたれたフラットダイ40からフィルム状に押し出され、ニップロール80に密着するキャップフィルム21とバックフィルム22とからなる二層シートとニップロール81との間に溶融状態で供給されて、熱融着によってキャップフィルム21と積層される。キャップフィルム21とバックフィルム22とライナーフィルム23とからなる三層構造の気泡シート2が作製されると、バックフィルム22側にエンボスフィルム4が供給されるとともに、ライナーフィルム23側に外装シート3が供給され、ニップロール90、91により押圧されながら、熱融着によって気泡シート2に積層される。
【0044】
このようにして
図4及び
図5に示すような気泡緩衝シート1を製造することができ、製造された気泡緩衝シート1は、図示しない巻き取りロールに巻き取られる。
【0045】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0046】
例えば、外装シート3は、黒色層と白色系樹脂層の二層構造としたが、内層/黒色系樹脂層/白色系樹脂層の三層構造としてもよい。内層を白色系樹脂層や印刷層と同様の構成とすることで、隠蔽性及び遮光性を有しながらも、包装した際の外観だけでなく、被包装物を包装する際の内側についても所望の色彩や模様を付して、気泡緩衝シート1による包装を解いた際の意匠性についても優れた気泡緩衝シート1とすることができるため好ましい。
【0047】
また、気泡緩衝シート1の使用態様は限定されず、被包装物を包む外、任意の大きさに製袋して使用するなどの使用態様を例示することができる。
【0048】
また、前述の説明では、外装シート3やエンボスシート4は、熱融着によって気泡シート2に接着されているが、これらが互いに分離しないように接着されていれば、接着剤などを用いた接着でもよく、周知の方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 気泡緩衝シート
2 気泡シート
21 キャップフィルム
21a 突起部
21f 樹脂フィルム
22 バックフィルム
23 ライナーフィルム
3 外装シート
4 エンボスフィルム