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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023151063
(43)【公開日】2023-10-16
(54)【発明の名称】長繊維不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/16 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
D04H3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060480
(22)【出願日】2022-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 有信
(72)【発明者】
【氏名】稲富 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】峯村 慎一
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】藤田 卓也
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA21
4L047AB03
4L047AB07
4L047BA09
4L047BB06
4L047BD00
4L047CA19
4L047CB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金型成型性に優れ、任意の山高さにプリーツ加工できる長繊維不織布及びその製造方法を提供する。
【解決手段】目付150~300g/mの長繊維不織布で、基準方向に100~200℃の温度下で5%伸長させた時の中間応力が20N/5cm以下、破断点伸度が400%以上の長繊維不織布であって、構成する繊維が基準方向に対して0~20°の角度で配向していることを特徴とする長繊維不織布。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
目付150~300g/mの長繊維不織布で、基準方向に100~200℃の温度下で5%伸長させた時の中間応力が20N/5cm以下、破断点伸度が400%以上の長繊維不織布であって、構成する繊維が基準方向に対して0~20°の角度で配向していることを特徴とする長繊維不織布。
【請求項2】
100~200℃の温度下で1分間加熱後の基準方向の破断点伸度が直交方向の破断点伸度の1.2倍以上であることを特徴とする、請求項1に記載の金型成型性に優れた長繊維不織布。
【請求項3】
前記長繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径が40μm以上60μm以下である、請求項1または2に記載の金型成型性に優れた長繊維不織布。
【請求項4】
吐出線速度と牽引速度の比(紡糸ドラフト)を150以下で溶融紡糸する工程、および前記紡糸後に得られた繊維ウェブを仮圧着した後に、面拘束しながら本圧着する工程を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の長繊維不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型成型性に優れた長繊維不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルを主体とするスパンボンド長繊維不織布は、力学的物性が良好で、通気性、通水性もあり、多くの用途で用いられている。このようなスパンボンド長繊維不織布を成型体として用いる場合、広い温度領域で凹凸を有する金型に追従することができ、様々な形状に成型できる特性等が求められている。
【0003】
そこで、スパンボンド不織布も成型性を向上させるための技術が種々提案されている。
例えば、スパンボンド不織布の熱成型性を向上したものとして、特許文献1には、ポリエチレンテレフタレートにスチレン系共重合体を少量添加して、紡糸して得られたウェブをエンボス加工する技術が開示されている。この技術により成型性と意匠性に優れる熱圧着長繊維不織布が得られることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、低い紡糸速度で紡糸して、得られたウェブに対して仮圧着を行なった後に、面拘束しながら本圧着することで、熱成型後に収縮し難いスパンボンドが得られることが記載されている。
【0005】
成型体をより安価に製造する方法として、特許文献3に示されるように、ポリエステルスパンボンド不織布を金型成型にセットし、圧力をかけて熱プレス成型をする方法が知られている。しかしながら、複数の山谷構造を有するプリーツ加工したエアフィルターを金型一体成型する場合、長繊維不織布が容易に破断する等の問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-91875号公報
【特許文献2】特開2017-222950号公報
【特許文献3】特開平7-144105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を解決することにあり、金型成型性に優れ、任意の山高さにプリーツ加工できる長繊維不織布及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決することができる本発明の長繊維不織布は、下記の通りである。
[1]目付150~300g/mの長繊維不織布で、基準方向に100~200℃の温度下で5%伸長させた時の中間応力が20N/5cm以下、破断点伸度が400%以上の長繊維不織布であって、構成する繊維が基準方向に対して0~20°の角度で配向していることを特徴とする長繊維不織布。
[2]100~200℃の温度下で1分間加熱後の基準方向の破断点伸度が直交方向の破断点伸度の1.2倍以上であることを特徴とする、[1]に記載の金型成型性に優れた長繊維不織布。
[3]前記長繊維不織布を構成する繊維の平均繊維径が40μm以上60μm以下である、[1]または[2]に記載の金型成型性に優れた長繊維不織布。
【0009】
前記の課題を解決することができる本発明の長繊維不織布の製造方法は、下記の通りである。
[4]吐出線速度と牽引速度の比(紡糸ドラフト)を150以下で溶融紡糸する工程、および前記紡糸後に得られた繊維ウェブを仮圧着した後に、面拘束しながら本圧着する工程を含むことを特徴とする[1]または[2]に記載の長繊維不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、上記構成により、金型成型性に優れ、任意の山高さにプリーツ加工できる長繊維不織布を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
前記の長繊維不織布は、安価で力学特性に優れた汎用性熱可塑性樹脂である融点が250℃以上のポリエステル系樹脂からなる繊維で構成される長繊維不織布であることが好ましい。
【0012】
前記の融点が250℃以上のポリエステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と称する)を主成分とする樹脂が好ましい。一方、ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系素材は、PETに比べ耐熱性、保型成、難燃性が低く、好ましくない。
【0013】
本発明で使用されるポリエステル系樹脂は、融点が250℃以上であり、好ましくはPETを98.0質量%以上含有する。また、他の樹脂を2.0質量%以内で混合しても良い。混合可能な樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリスチレン系共重合体が例示できる。中でも、スチレン・メタクリル酸メチル・無水マレイン酸共重合体やスチレン・マレイン酸共重合体が好ましい。
【0014】
本発明の長繊維不織布は、目付が20~300g/mである。目付が20g/m以上であると繊維が分散しやすくなる。そのため、目付は、好ましくは20g/m以上、より好ましくは80g/m以上、さらに好ましくは150g/m以上である。一方、目付が300g/m以下であると成型加工しやすくなるため、目付は、好ましくは300g/m以下である。目付が150g/m以下だと破断し易くなり、且つ、捕集効率が著しく低いフィルターとなる。300g/m以上だと任意の山高さに成型し難くなり、且つ圧力損失が高いフィルターとなる。
【0015】
本発明の長繊維不織布を構成する繊維の繊維径は、好ましくは40~60μmである。繊維径が40μmより小さいと、繊維が細いため、上範囲の目付の長繊維不織布を製造すると、繊維の構成本数が多くなり、その結果圧着されやすい状態となる。その結果、熱成形時の初期応力が向上してしまい金型成型性は悪くなる。また、エアフィルター性能である圧力損失の増加、操業性の悪化によるコストアップにもつながる。また繊維径が60μmを超えると、圧着時に繊維が潰れやすくなり、長繊維不織布表面に緻密層が形成され、金型成型性が悪くなる。
【0016】
本発明の長繊維不織布を構成する繊維の複屈折率(Δn)は、好ましくは0.010以下である。複屈折率(Δn)が低いほど、熱成型時の伸長応力が小さくなり、破断伸度が高くなるため、熱成型性が向上する。そのため、複屈折率(Δn)は、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.007以下、更に好ましくは0.005以下である。一方で、熱圧着時の緻密層の形成を抑えるために、好ましくは0.002以上、より好ましくは0.003以上とすることが重要である。
【0017】
本発明の長繊維不織布の金型成型性を向上させるためには、熱成型時の基準方向の伸長時応力が低く、破断点伸度を高くすることが好ましい。具体的には、100~200℃の温度下で1分加熱後の基準方向の破断点伸度が400%以上であり、加熱後の基準方向の5%伸長時応力が20N/5cm以下であることが好ましい。
【0018】
100~200℃の温度下で1分加熱後の破断点伸度が400%未満である場合、金型に追従できない場合がある。そのため、上記破断点伸度は好ましくは400%以上、より好ましくは420%以上である。
【0019】
本発明の長繊維不織布は、構成する繊維の配向角度が基準方向に対して0~20度であることが重要である。繊維が基準方向に対して0~20度の角度で配向していることにより、基準方向の破断点伸度が高くなり、基準方向の金型成型性が良好となる。
【0020】
本発明の長繊維不織布は、100~200℃の温度下で1分加熱後の5%伸長時応力が20N/5cm以下であることが好ましい。上記伸長時応力を20N/5cm以下にすることにより、熱成型時の金型追従性を向上することができる。
【0021】
本発明の長繊維不織布は、100~200℃の温度下で1分加熱後の基準方向の破断点伸度は、直交方向の破断点伸度の1.2倍以上であることが重要である。1.2倍より小さい場合、熱成型時の金型追従性が低下する。
【0022】
本発明の長繊維不織布は、好ましくは面拘束長繊維不織布である。面拘束とは、繊維ウェブを厚さ方向に挟んで、面状に圧力をかけることである。
面拘束は、例えば、フラットロール、フェルトベルト、ゴムベルト、スチールベルト等のシート状体によって、繊維ウェブのシート全面をプレス処理することにより行うことができる。
【0023】
本発明では、仮圧着後の繊維ウェブを、面拘束しながら本圧着(熱セット)を行なうが、これは、フラットロールと彫刻ロール、または彫刻ロール同士で圧着を行なう部分圧着や、フラットロール同士で線的(線状)に圧着を行なう面圧着(いわゆるカレンダー加工)と異なる。
【0024】
部分圧着の場合は、繊維は部分的に固定されており、圧着部分に変型時の応力が集中して、高い破断伸度が得られにくくなる。
また、面圧着の場合は、全体が過剰に圧着されているため、不織布の変形が困難であり、破断伸度が低下する。
【0025】
一方、面拘束しながら圧着を行えば、繊維ウェブの面内方向の熱収縮を抑制することができる。その結果、得られた面拘束スパンボンド不織布は、シート全面で繊維が互いに固定化されており、熱成型後の収縮を抑制し易くすることができる。
また、熱成型時の応力が部分的に集中しにくく、全体に伝播されて、不織布の変形が全面に影響するため、破断伸度に優れる。
さらに、面拘束スパンボンド不織布は、ニードルパンチ加工や水流交絡加工等の機械的交絡加工が施された不織布よりも、表面の毛羽立ちが少なく、耐磨耗性に優れる。
【0026】
次に、本発明の長繊維不織布の製造方法について説明する。
【0027】
本発明の長繊維不織布は、スパンボンド法により製造される長繊維不織布であることが好ましい。不織布の製造方法として、一般的には、スパンボンド法、フラッシュ紡糸法、湿式法、カード方およびエアレイド法等を挙げることができる。これらのうち、スパンボンド法は、生産性や機械的強度に優れている他、短繊維不織布で起こりやすい毛羽立ちや繊維の脱落を防ぐことができる。
【0028】
本発明では、吐出線速度と牽引速度の比(紡糸ドラフト)を150以下にすることが重要である。上記紡糸ドラフトが150を超えると、繊維の配向結晶化度が高くなって、熱成型時の伸長応力が高くなり、破断点伸度が低くなる。そのため、紡糸ドラフトは、150以下、好ましくは130以下、より好ましくは110以下である。また、紡糸性・生産性の観点から吐出線速度と牽引速度の比(紡糸ドラフト)は50以上にすることが好ましい。
【0029】
紡糸ドラフト(Ψ)は、下記式(1)~(3)に基づき求めることが出来る。
Ψ=h/V(1)
:牽引速度[m/s]
:吐出線速度[m/s]
【0030】
=A/Q(2)
A:紡糸口金孔断面積[m
Q:単孔吐出量[m/s]
【0031】
Vs=(10000×Q)/T/60 (3)
:単孔吐出量[g/min]
T:単繊度[dtex]
【0032】
固有粘度が0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート100質量%をスパンボンド法により溶融紡糸機にて紡糸を行なう。単孔吐出量Qは、好ましくは0.5~7.0g/minである。単孔吐出量Qを上記範囲に制御することにより、牽引速度を所望の範囲に制御しやすくなる。より好ましくは1.0~6.0g/minである。
【0033】
その他の紡糸条件は、特に限定されないが、例えば、オリフィス径0.2~0.5mmの紡糸口金より紡出し、エジェクタに0.3~15N/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給し、延伸することが好ましい。オリフィス径を上記範囲に制御することで所望の繊維径が得られやすくなる。また、乾燥エアの供給圧力を上記範囲に制御することにより、牽引速度を所望の範囲に制御しやすくなると共に、適度に乾燥させることができる。
【0034】
牽引工程および開繊工程を通過する時の平均糸条速度Vに対して、搬送速度Cが下記式(4)を満たす条件で繊維ウェブの縦横方向の配列を制御することができる。
【0035】
0.0056≦C/V≦0.0080 (4)
【0036】
前記の範囲で調整することにより、金型成型性に優れ、任意の山高さにプリーツ加工できる長繊維不織布を得ることができる。
【0037】
前記の式(4)の搬送速度と平均糸条速度の比が0.0056未満の場合、伸度が著しく劣る長繊維不織布となり好ましくない。一方で、式1の搬送速度と平均糸条速度の比が0.008以上の場合、縦方向の配向が進むために繊維ウェブが形成されにくくなり好ましくない。
【0038】
次いで、吐出糸条を冷却し、下方のコンベア上へ繊維を開繊させつつ捕集して、繊維ウェブ(繊維フリース)を得ればよい。
【0039】
得られた繊維ウェブに対して、通常のスパンボンド不織布の製造方法では、フラットロールと彫刻ロールや、彫刻ロール同士の部分圧着を行うエンボス加工等が施される。しかし、本発明のように低牽引速度で紡糸して得られた繊維ウェブは、低配向であり収縮しやすいため、エンボス加工等を施すと幅入りや皺などの問題が生じる。そのため、本発明では、以下の通り、仮圧着を行って、その後に面拘束しながら本圧着を行うことにより、幅入りや皺等の発生を抑制し易くすることができる。更に、熱成型後の収縮を抑えることができる。
【0040】
仮圧着は、繊維ウェブを、厚さ方向に圧力をかけて圧着することである。仮圧着は、本圧着における面拘束を行い易くするために行うものであり、例えば、2つのフラットロールからなる1対の仮熱圧着ロールを用い、それぞれの表面温度を60~140℃とし、押し圧を5~30kN/mとして熱圧着加工を行うことが好ましい。フラットロールの表面温度と押し圧を上記範囲に制御することにより、適度に仮圧着することができ、仮圧着後に行われる面拘束を行い易くなる。フラットロールの表面温度は、より好ましくは70~130℃である。押し圧は、より好ましくは7~20kN/mである。
【0041】
次に、本圧着を行う。本圧着は、仮圧着後の繊維ウェブを、面拘束しながら、熱セットを行って圧着することである。面拘束は、上述の通り、フラットロールと、フェルトベルト、ゴムベルト、スチールベルト等のシート状体を用いて行うことが好ましい。このうち、フェルトベルトは、表面が繊維状であり繊維ウェブを面内方向に拘束し易いため、特に好ましい。
【0042】
面拘束は、ロールの表面温度を120~180℃として、押し圧:1.0~39N/cm、加工時間:3~30秒、加工速度:1~30m/minの条件で行うことが好ましい。
【0043】
ロールの表面温度を好ましくは120℃以上とすることにより、圧着し易くなる。より好ましくは130℃以上である。一方、ロールの表面温度を好ましくは180℃以下とすることにより、過剰に圧着しにくくなる。より好ましくは160℃以下である。ロール表面温度が120℃以下だとシートが収縮し、金型成型性が悪くなる。ロール表面温度が180℃以上だと不織布表面に緻密層が形成され、金型成型性が悪くなる。
【0044】
押し圧を好ましくは1.0N/cm以上とすることにより、面拘束し易くなる。より好ましくは2.9N/cm以上、更に好ましくは4.9N/cm以上、更により好ましくは9.8N/cm以上、最も好ましくは20N/cm以上である。一方、押し圧を好ましくは39N/cm以下とすることにより、過剰に圧着しにくくなる。より好ましくは34N/cm以下、更に好ましくは29N/cm以下である。押し圧が1.0N/cm以下だと幅入りや皺が発生し、39N/cm以上だと不織布表面に緻密層が形成され、金型成型性が悪くなる。
【0045】
熱処理時間を、好ましくは3秒以上20秒以下とすることにより、圧着し易くなる。より好ましくは、5秒以上20秒以下である。熱処理時間が3秒以下だとシートが収縮し、金型成型性が悪くなる。熱処理時間が20秒以上だと不織布表面に緻密層が形成され、金型成型性が悪くなる。
【0046】
熱処理速度を好ましくは1m/以上とすることにより、過剰に圧着しにくくなる。より好ましくは5m/min以上である。一方、加工速度を好ましくは30m/min以下とすることにより、圧着し易くなる。より好ましくは20m/min以下である。
【0047】
このようにして得られた本発明のスパンボンド不織布を熱成型することにより、フィルター材等の金型成型体が得られる。
【実施例0048】
以下、実施例をもとに本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0049】
〈1〉固有粘度
ポリエチレンテレフタレート樹脂0.1gを秤量し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン(60/40;質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で3回測定し、その平均値を求めた。なお、固有粘度の単位はdl/gである。
【0050】
(2)目付
JIS L1913 (2000)5.2に準拠し、不織布の単位面積当たりの質量を測定した。なお、目付の単位はg/mである。
【0051】
(3)繊維径
試料(仮圧着前の長繊維フリース)の任意の場所3点を選び、ニコン偏光顕微鏡ECLIPSE LV100N POL型を用いて単繊維の径をn=10で測定し、平均値を求めた。
【0052】
(4)複屈折率(Δn)
試料(仮圧着前の長繊維フリース)の任意の場所10点を選択し、単繊維をとりだし、ニコン偏向顕微鏡ECLIPSE LV100N POL型を用いて、繊維径とレターゼーションを読み取り、複屈折率(Δn)を求めた。
【0053】
(5)牽引速度
紡糸速度V(m/min)は、上記繊度T(dtex)と設定の単孔吐出量Q(g/min)から下記式に基づいて求めた。
=(10000×Q)/T
【0054】
(6)100~150℃で1分加熱後の破断伸度、および5%伸長時応力
幅5cm、長さ13cmの試料片を縦方向および横方向にそれぞれ不織布から5枚ずつ切り出し、チャック間距離5cmで試料をセットし、100~150℃に加熱した炉に投入して1分経過後に、加熱炉内にてオリエンテック性万能引張試験機を用い、引張速度10cm/minで変型させて歪-応力曲線を得た。破断時の伸度および5%伸張時の応力を読み取り、縦方向と横方向の各5点の平均値を測定値とした。
【0055】
(7)配向角度
幅10cm角の試料片を不織布から1枚ずつ切り出し、分子配向計MOA6004を用いて、繊維配向角度を得た。
【0056】
(8)成型性
200℃の恒温槽で金型を30分間加熱し、常温の不織布を金型で挟み、変形速度5mm/秒の条件で7mm成型させた。変形時に不織布に全体的な破れがあったものを×、部分的な破れがあったものを△、破れがなかったものを〇と判断した。なお、成型性の評価が〇である不織布を金型成型性に優れると判断した。
【0057】
(実施例1)
スパンボンド紡糸設備を用い、固有粘度0.63dl/gのポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)を、オリフィス径0.45mmの、532Hからなる紡糸口金からノズル面温度283℃で単孔吐出量4.9g/minで吐出した。吐出された糸条を18℃、0.7m/秒のクエンチで冷却後、エジェクタに10N/cmの圧力(ジェット圧)で乾燥エアを供給し、1段階で延伸し、下方のコンベア上へ繊維を開繊させつつ捕集し長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は45μm、複屈折率は0.0034、換算紡糸速度は2180m/minであった。
【0058】
得られた長繊維フリースを、2つのフラットロールからなる1対の仮熱圧着ロールを用い、それぞれの表面温度120℃とし、押し圧を0.79kgf/cmとして仮圧着した後ロールの表面温度:145℃で、押し圧:3.0N/cm、加工時間:9.3秒、加工速度8.4m/minの条件でフェルトカレンダーにより面拘束をしながら本圧着を行ない、スパンボンド不織布を得た。
【0059】
(実施例2)
目付を260g/mとしたこと以外は実施例1と同じ条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行ない、スパンボンド不織布を得た。
【0060】
(比較例1)
単孔吐出量3.5g/min、ジェット圧力を10N/cmとしたこと以外は実施例3と同じ条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は46μm、複屈折率は0.0035、換算紡糸速度は1610m/minであり、実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行ない、スパンボンド不織布を得た。
【0061】
(比較例2)
平均糸条速度を1540m/minとしたこと以外は実施例2と同じ条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースを実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行ない、スパンボンド不織布を得た。
【0062】
(比較例3)
ジェット圧力を11N/cmとしたこと以外は比較例1と同じ条件で長繊維フリースを得た。得られた長繊維フリースの繊維径は37μm、複屈折率は0.0085、換算紡糸速度は2360m/minであり、実施例1と同様に仮圧着した後、フェルトカレンダーにより面拘束しながら本圧着を行ない、スパンボンド不織布を得た。
【0063】
【表1】